説明

計量コンベア装置

【課題】搬送面のフルフラット化が可能なプーリを備えた計量コンベア装置を提供する。
【解決手段】フレーム部材のプーリに対向する面に軸受が固定され、プーリは、両端に有底円筒状の凹部を有し、凹部の底部の中心から突出する軸心70が軸受で支承され、凹部の底部には、円環状の第1のバランスリング61が固定位置に固定され、錘63が固定された円環状の第2のバランスリング62が、第1のバランスリング61に対して選択された回転角度だけ回転した位置で同心状に固定され、軸受の一部が、凹部の開口から凹部の内部に入り込んでいる。このプーリの軸心70は、フレーム部材の間で支承され、フレーム部材から突出しない。動バランス調整機構は、可逆的に、且つ連続的に動バランスを調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計量物を搬送しながら計量する計量コンベア装置に関し、特に、プーリを改善して、搬送面の周囲に搬送面より高い部材が存在しないように構成したものである。
【背景技術】
【0002】
計量コンベア装置は、例えば搬送コンベアのライン中に配置され、上流の搬送コンベアから送り込まれた物品を下流側に送り出す過程で、その物品の重量を測定する。
計量コンベア装置は、被計量物を搬送するために、一対のプーリと、プーリの間に掛け渡された無終端ベルトとを備えている。
プーリは、軸心が偏心していたり、構成部材の質量分布が不均一であったりすると、モーメントのバランスが崩れ、回転時にブレが生じ、このブレにより計量時に低周波の機械振動成分が発生する。
計量装置は、計量センサの検出信号に含まれる不要信号成分をフィルタで除去した後、検出信号から計量値を演算するが、検出信号に低周波の不要信号成分が含まれていると、フィルタでの除去に時間が掛かり、迅速で精確な測定ができない。
そのため、計量コンベア装置では、プーリに調整分銅(バランサ)を付加してモーメントのアンバランスを修正し、動バランスを安定化させている。
【0003】
図10は、下記特許文献1に記載されたプーリ11の動バランス調整機構を示している。この機構では、軸心14に対して円環状のベース35が移動しないように固定され、ベース35に固定した棒状体31に動バランス微調整用錘38を装着して、動バランスの調整が行われる。
このプーリは、図11に示すように、軸心14が軸支持部材15で支持され、軸心14の先端が軸支持部材15を超えて延びている。そのため、図12に示すように、計量コンベア装置の設置に際して、軸心14の先端部分を覆う危険防止用のカバー200が付加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−66013公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、計量コンベア装置は、搬送面の高さを低く抑える「搬送面の低床化」とともに、搬送面の側方や上方に出っ張った部材が存在しない「搬送面のフルフラット化」が求められている。
「搬送面の低床化」の要請は、物流分野などで使用されている物品搬送ベルトの多くが、30cm程度と、かなり低い高さに設定されていることに起因している。
「搬送面のフルフラット化」は、コンベアの幅から多少はみ出た物品でも支障なく計量できるようにするための要請である。搬送面の脇に搬送面より上方に突出した部材がある場合は、物品の幅がコンベア幅を超えてしまうと、コンベアからはみ出た部分が、移動中に突出部材に衝突して計量できなくなる。
また、計量コンベア装置が配置される物流現場では、例えば、作業員が搬送する物品に手を添えてコンベアに沿って移動する場合があるが、コンベアの脇に突出部材が存在すると、コンベアに沿って移動するときの邪魔になる。
しかし、特許文献1に記載されたプーリは、軸心14の先端が軸支持部材15を超えて突出し、また、搬送面より上方に突出する危険防止用カバー200が必要であるため、「搬送面のフルフラット化」に応えることができない。
【0006】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、「搬送面のフルフラット化」を可能にするプーリを備えた計量コンベア装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被計量物を搬送する無終端ベルトと、この無終端ベルトが掛け渡される一対のプーリと、被計量物を無終端ベルトの裏から支えるためにプーリ間に配置された天板と、を有する計量コンベア装置であって、天板の搬送方向に平行な両側面を固定支持する並行な一対のフレーム部材を備え、フレーム部材のプーリに対向する面に軸受が固定され、プーリは、両端に有底円筒状の凹部を有し、凹部の底部の中心から突出する軸心が軸受で支承され、凹部の底部には、円環状の第1のバランスリングが固定位置に固定され、錘が固定された円環状の第2のバランスリングが、第1のバランスリングに対して選択された回転角度だけ回転した位置で同心状に固定され、軸受の一部が、凹部の開口から凹部の内部に入り込んでいることを特徴とする。
このプーリの軸心は、フレーム部材の間で支承され、モータと駆動ベルトで連結される軸心を除いては、フレーム部材から突出しない。そのため、安全性が高く、特別の防護手段を必要としない。また、プーリの端部が軸受の位置まで延びているため、無終端ベルトの幅を広く設定することができる。また、動バランス調整機構がコンパクトであり、可逆的に、且つ連続的に動バランスを調整することができる。また、動バランス調整機構は、プーリ端部の凹部の底に配置されており、錘が露出していないため、ごみ等が付着し難い。そのため、ごみ等の付着による動バランスの再調整が避けられる。
【0008】
また、本発明の計量コンベア装置では、第2のバランスリングが、第1のバランスリングの外径に略等しい内径を有し、第1のバランスリングを固定するネジにより第2のバランスリングも固定できるように構成している。
そのため、動バランスの調整処理が容易である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の計量コンベア装置では、プーリの改善により搬送面のフルフラット化を実現している。そのため、物流現場での作業が遣り易くなり、また、コンベアの幅からはみ出す物品の計量が可能である。
また、プーリの安全性が高く、特別の防護手段を講じる必要がない。また、従来の計量コンベア装置に比べて、無終端ベルトの幅を広く設定することができ、物品の搬送を安定化できる。
また、プーリの動バランス調整を精密、且つ、容易に行うことができ、また、ごみ等の付着による動バランスの再調整が避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る計量コンベア装置の分解斜視図
【図2】図1の計量コンベア装置の組立図
【図3】本発明の実施形態に係るプーリを示す図
【図4】図3のプーリの拡大図
【図5】図3のプーリの動バランス調整機構の平面図
【図6】図5の動バランス調整機構の平面図(ネジを外した状態)
【図7】図5の動バランス調整機構の構成部品を示す図
【図8】本発明の実施形態に係る多連秤装置の斜視図
【図9】図8の多連秤装置の側面図
【図10】従来のプーリの動バランス調整機構を示す図
【図11】図10のプーリを用いた計量コンベア装置の平面図
【図12】図10のプーリを用いた計量コンベア装置の設置状況を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る計量コンベア装置の分解斜視図を図1に、その組立図を図2に示している。
この計量コンベア装置20は、駆動プーリ21及び従動プーリ22の間に掛け渡された無終端ベルト23と、被計量物を無終端ベルト23の裏から支えるためにプーリ間に配置された天板24と、天板24の搬送方向に平行な両側面を固定支持する並行な一対のフレーム部材25と、一対のフレーム部材25の間に固定されたモータケース28と、ロードセル26を介してフレーム部材25を支持する枠状ベース部材27とを有している。
【0012】
なお、フレーム部材25のロードセル26への当接箇所には、フレーム部材25の撓みで生じる水平方向の分力を逃がすため、分力緩衝装置32が取り付けられる。
フレーム部材25のプーリ21、22に対向する面には、プーリ21、22の軸受211、221が固定され、この軸受211、221にプーリ21、22の軸心が回転可能に支持される。モータから駆動力が伝達される駆動プーリ21の軸心212は、フレーム部材25から突出する。
【0013】
図2に示すように、フルフラット化を図るため、天板24は、その上面がフレーム部材25の上に出るようにフレーム部材25に取り付けられる。
モータは、モータケース28から駆動軸321が突出するようにモータケース28内に固定される。モータの駆動軸321と駆動プーリ21の軸心212との間には、駆動ベルトが掛け渡される。
【0014】
図3は、駆動プーリ21の全体形状を示している。駆動プーリ21(従動プーリ22も同様)は、両端に有底円筒状の凹部214を有し、凹部214の底部の中心から突出する軸心70が、フレーム部材25に固定された軸受211、213で支承される。
図4は、プーリ21の端部を拡大して示している。凹部214の底部には、動バランス調整機構60を構成するバランスリング61、62、錘63、ネジ64、65が配置されている。
【0015】
図5は、動バランス調整機構60の正面図である。図6は、図5のネジ64、65を取り外した状態を示し、図7は、動バランス調整機構の構成部品を示している。
動バランス調整機構60は、円環状の第1バランスリング61と、円環状の第2バランスリング62と、円弧状の錘63と、ネジ64、65とで構成される。
第2バランスリング62は、第1バランスリング61の外径に略等しい内径を有し、プーリ21の凹部214の内径に略等しい外径を有している。
錘63は、第2バランスリング62の幅よりも細い幅の弧状であり、弧の外縁の曲率半径は第2バランスリング62の外径の半径に等しい。錘63は、必要に応じて複数の枚数が使用される。
【0016】
第2バランスリング62と錘63とは、それらを重ね、図4に示すように、第2バランスリング62の側から挿通したネジ65にナットを螺合して固定される。
第1バランスリング61は、図7に示すように、外縁の3箇所にU字状の切欠部611を有しており、図6に示すように、軸心70と同心状であって、切欠部611が、プーリ21の凹部214の底に設けられたネジ孔と一致する位置に配置する。
錘63が固定された第2バランスリング62は、第1バランスリング61と同心状に配置する。この状態で凹部214の底に設けられたネジ孔にネジ64を途中まで螺合し、第2バランスリング62を第1バランスリング61の周りに回転して錘63の位置を調整する。錘63の位置が確定すると、ネジ64を完全に締めて、第1バランスリング61及び第2バランスリング62を固定する。
なお、錘63は、プーリ21の動バランスを動バランス測定装置で予め測定し、動バランスの崩れが補償できる重さの錘63を選択して使用する。
【0017】
図8は、こうしたプーリを用いて構成した計量コンベア装置の一例として、搬送距離が短い計量コンベア装置10と、搬送距離が長い計量コンベア装置20とを縦列配置した多連秤装置を示している。また、図9は、その側面図を示している。
なお、多連秤装置は、移動中の被計量物が一つの計量コンベアに単独で載る状態のとき、その計量コンベアで被計量物の重量を測定し、被計量物が複数の計量コンベアに跨る長さを有するとき、複数の計量コンベアの測定値を加算して被計量物の重量を算出する。
【0018】
この多連秤装置では、プーリの軸心が、フレーム部材25の間で支承され、モータと駆動ベルトで連結される軸心を除いては、フレーム部材25から突出しない。そのため、特別の防護手段が不要であり、搬送面のフルフラット化が実現できる。また、プーリの端部がフレーム部材25に近接する位置まで延びているため、無終端ベルト23の幅を広く設定することができる。また、動バランス調整機構がコンパクトであり、可逆的に、且つ連続的に調整することができる。また、動バランス調整機構は、プーリ端部の凹部の底に配置されており、錘が露出していないため、ごみ等が付着し難い。そのため、ごみ等の付着に起因する動バランスの再調整が避けられる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の計量コンベア装置は、各種形状の物品を搬送しながら計量することが可能であり、物流施設や、荷物を仕分ける輸送施設、原材料の搬入や製品の搬出を行う製造工場など、幅広い分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 搬送距離が短い計量コンベア装置
11 プーリ
14 軸心
20 搬送距離が長い計量コンベア装置
21 駆動プーリ
22 従動プーリ
23 無終端ベルト
24 天板
25 フレーム部材
26 ロードセル
27 枠状ベース部材
28 モータケース
31 棒状体
32 分力緩衝装置
35 ベース
38 動バランス微調整用錘
60 動バランス調整機構
61 第1バランスリング
62 第2バランスリング
63 錘
64 ネジ
65 ネジ
70 軸心
200 危険防止用カバー
211 軸受
213 軸受
214 凹部
221 軸受
611 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物を搬送する無終端ベルトと、該無終端ベルトが掛け渡される一対のプーリと、被計量物を前記無終端ベルトの裏から支えるためにプーリ間に配置された天板と、を有する計量コンベア装置であって、
前記天板の搬送方向に平行な両側面を固定支持する並行な一対のフレーム部材を備え、
前記フレーム部材の前記プーリに対向する面に軸受が固定され、
前記プーリは、両端に有底円筒状の凹部を有し、前記凹部の底部の中心から突出する軸心が前記軸受で支承され、
前記凹部の底部には、円環状の第1のバランスリングが固定位置に固定され、錘が固定された円環状の第2のバランスリングが、前記第1のバランスリングに対して選択された回転角度だけ回転した位置で同心状に固定され、
前記軸受の一部が、前記凹部の開口から前記凹部の内部に入り込んでいることを特徴とする計量コンベア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計量コンベア装置であって、前記第2のバランスリングが、前記第1のバランスリングの外径に略等しい内径を有し、前記第1のバランスリングを固定するネジにより前記第2のバランスリングも固定されることを特徴とする計量コンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−58216(P2012−58216A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204911(P2010−204911)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(390041346)新光電子株式会社 (38)