説明

計量装置

【課題】本発明は、テンレス製のカバー部材により筐体を防水レベルで密閉した構造において荷重変換器に対する結露の影響を防止することができる計量装置を提案する。
【解決手段】
本発明のデジタル秤1は、物品から加えられた荷重を電気信号に変換するロードセル40と、物品を載置する計量皿2を支持し、物品の荷重をロードセル40に加える皿受31と、断熱材により形成された底板5、ならびにロードセル40、皿受31のロードセル40に近い側の部分、および電装品を、皿受31を挿通させるようにして覆うステンレス製のカバー部材6を有し、かつカバー部材6と皿受31との間をこの皿受31が上下動可能なようにシールして所定の防水レベルに密閉された筐体4と、筐体4内において、ロードセル40を覆うように底板5上に立設された断熱カバー13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品から加えられた荷重を電気信号に変換する荷重変換器を備え、この電気信号により物品の重量を計量する計量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
秤の計量技術として様々な種類の技術が知られている。近年よく利用される計量技術としては、歪ゲージ式ロードセルを用いたロードセル式計量技術が挙げられる。この歪ゲージ式ロードセルは、起歪体と、この起歪体に取り付けられる歪ゲージとを備えてなる構成である。起歪体は、被計量物の重量が荷重として加えられるように構成される可動部を有している。そして、被計量物の重量が荷重としてこの可動部に加えられると、当該可動部は起歪体の固定位置から見て変位し、その変位を歪ゲージにより検出して電気信号に変換することで被計量物の重量を計測することができる。
【0003】
このようなロードセル式計量技術を用いたロードセル式計量装置は、さまざまな種類の被計量物の計量に使用されている。このため、被計量物の種類、計測環境に応じて、ロードセル式計量装置の筐体には様々な工夫が必要となる。
【0004】
特に、農水産品または生鮮食品等を計量する場合、ロードセル式計量装置に対して高度な食品衛生管理が求められる。このため、このような用途で利用されるロードセル式計量装置に対しては、洗浄を頻繁に行ったり、消毒を行ったりする必要がある。それゆえ、農水産品または生鮮食品等を計量する場合、洗浄に対する利便性を高めるために、ロードセル式計量装置の筐体を形成するカバー部材に耐食性が高いステンレスが用いられる。さらにまた、ロードセル計量装置に対して洗浄に対応可能な防水性も求められる。
【0005】
例えば、筐体をステンレス製とし、防水性を有する計量装置としては、特許文献1に開示された防水秤が挙げられる。この防水秤は、ロードセル収容室を形成した合成樹脂製下ケースと、このロードセル収容室の上方を覆うステンレス製の防水カバーとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−322556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示された防水秤では、秤の筐体内に汚れが溜まるという問題が生じる。
【0008】
より具体的には、特許文献1に開示された防水秤では、ロードセルなどの荷重変換器や電子回路基板が収用されるロードセル収用室は防水ダイヤフラムで水密性が確保されている。一方、ステンレス製の上ケースは下ケースに対してフックで係合されているだけであり、水密性が不十分である。すなわち、特許文献1に開示された防水秤では、上ケースと下ケースとから構成される筐体が防水レベルで密閉された構成となっていない。なお、ここで防水レベルに密閉されているとは、この筐体において外部からの浸水を防止できる程度に密封されているということである。このように特許文献1に示す防水秤のように上ケースと下ケースとから構成される筐体において水密性が不十分である構成の場合、汚れ等が筐体内に侵入し、そこに溜まって不衛生となる。このため、この筐体は防水レベルで密閉された構造であることが好ましい。
【0009】
ところで、ステンレス製のカバー部材により筐体を防水レベルで密閉した構造とした場合、ステンレスは熱伝導率が高いため、外界の温度変化の影響を受けやすくロードセル式計量装置の内部が結露しやすくなる。さらにまた、防水レベルで密閉された構造であるため、発生した結露がなかなか乾燥せず、筐体内に水分が溜まりロードセルにおいて絶縁不良、計量誤差、または起歪体の腐食などの支障が発生するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ステンレス製のカバー部材により筐体を防水レベルで密閉した構造において荷重変換器に対する結露の影響を防止する計量装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るデジタル秤は、上記した課題を解決するために、物品から加えられた荷重を電気信号に変換する荷重変換器と、前記物品を載置する載置皿を支持し、載置された物品の荷重を前記荷重変換器に加える皿受部と、断熱材により形成された底部、ならびに前記荷重変換器、前記皿受部の当該荷重変換器に近い側の部分、および計量値を数値化して電気的に表示するための電装品を、前記皿受部を挿通させるようにして覆うステンレス製のカバー部材を有し、かつ前記ステンレス製のカバー部材と前記皿受部との間を当該皿受部が上下動可能なようにシールして所定の防水レベルに密閉された筐体と、前記筐体内において、前記皿受部が挿通された開口を有して前記荷重変換器を覆うように前記底部上に立設され、かつ断熱材により形成された断熱壁部材と、を備える。
【0012】
ここで、所定の防水レベルに密閉されているとは、前記筐体に収容される荷重変換器、皿受部の荷重変換器に近い側の部分、および電装品が水気により不具合が生じないように、前記筐体外部からの浸水を防止できる程度に密封されているということである。
【0013】
また、皿受部は、筐体内から筐体外に渡って延設されており、荷重変換器に近い側の、所定範囲の部分が筐体内に収まるようになっている。
【0014】
上記した構成によると、前記筐体は、ステンレス製のカバー部材と底部とを有し、かつ所定の防水レベルに密閉されている。このように、筐体は、耐食性が高いステンレスにより覆われ、かつ防水レベルに密閉されているため、洗剤等を使用した水洗いが可能となり洗浄に対する利便性が高くなる。
【0015】
また、上述のように所定の防水レベルに密閉された筐体内において前記断熱壁部材をさらに備えるため、筐体を構成するカバー部材と断熱壁部材との間に空気層を設けることができる。さらに、熱伝導率が低い断熱壁部材により荷重変換器を覆うことができる。
【0016】
このため、当該計量装置の外界における温度変化に伴い熱伝導率が高いステンレス製のカバー部材で覆われた筐体内に結露が生じる場合であっても、荷重変換器に結露が生じることを防ぐことができる。また、断熱壁部材により筐体内に生じた結露による水分が荷重変換器に及ぶことを防ぐこともできる。
【0017】
したがって、ステンレス製のカバー部材により筐体を防水レベルで密閉した構造において荷重変換器に対する結露の影響を防止することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る計量装置は、上記した構成において、前記断熱壁部材と前記底部とによって形成された、前記荷重変換器を収容する空間である収容部内に、該収容部内における水分を吸着して乾燥させる除湿剤が備えられていてもよい。
【0019】
上記した構成によると、前記収容部内に除湿剤が備えられているため、収容部内が湿気を帯びる場合であっても、その水分を吸着して乾燥させることができる。このため、水分により荷重変換器において絶縁不良、計量誤差などの支障が発生することを防止することができる。
【0020】
なお、前記収容部内に備えられる前記除湿剤としては、例えば、水分を吸着し、加熱により水分を放出するシリカゲル等が利用できる。
【0021】
また、本発明に係る計量装置は、上記した構成において、前記断熱材は、合成樹脂、グラスウール、ロックウール、羊毛断熱材、セルロースファイバー、およびコルクのうちの少なくともいずれか1つであってもよい。
【0022】
また、本発明に係る計量装置は、上記した構成において、前記カバー部材には前記皿受部を挿通させるための開口であるカバー部材開口が形成されており、前記筐体は、前記カバー部材と、前記カバー部材開口に挿通させた前記皿受部との間における間隙を塞ぐダイヤフラムと、前記カバー部材と前記底部との接合部をシーリングするシーリング部材と、を備えるように構成されていてもよい。
【0023】
上記した構成によると、前記ダイヤフラムとシーリング部材とを備えているため、好適に前記皿受部の上下動を可能にしつつ筐体内部へ水が浸入しないように密閉構造とすることができる。
【0024】
また、本発明に係る計量装置は、上記した構成において、前記底部は、外気を取り入れるための底部開口と、前記底部開口を塞いで該開口からの水の浸入を防ぐための防水透湿性素材と、を備えるように構成されていてもよい。
【0025】
上記した構成によると底部開口と防水透湿性素材とを備えるため、荷重変換器を収容する筐体の内部と、筐体の外部との気圧の均衡を保つことができる。したがって、このように筐体の内部と外部との気圧の均衡を保つことができるため、計量精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は以上に説明したように構成され、ステンレス製のカバー部材により筐体を防水レベルで密閉した構造において荷重変換器に対する結露の影響を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタル秤の斜め前方から見た外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1のデジタル秤の断面図である。
【図3】図1のデジタル秤の底面図である。
【図4】図1のデジタル秤の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。
【0029】
本実施の形態に係るデジタル秤1は、物品の重量を計量し、当該計量により得られた計量値を数値化して電気的に表示するものであれば、これに該当する。以下には、計量皿2に載置した物品の重量(重さ)を計量し、その計量値を表示部34においてデジタル表示する、いわゆるデジタル式上皿自動秤を例示する。なお、デジタル秤1は、例えば、歪ゲージ式ロードセルを利用して物品(被計量物)の重量を求める構成となっている。
【0030】
ところで、農水産品、生鮮食品等を物品(被計量物)とする場合、物品(被計量物)となる魚介類、野菜等は多くの水分を含んでおり、デジタル秤1を取り巻く環境は高湿度なものとなる。また、魚介類や野菜等を扱う環境では、高度な食品衛生管理が要求される。このため、デジタル秤1を頻繁に洗浄したり消毒したりする必要があり、デジタル秤1に対して洗浄に対応可能な防水性(あるいは耐水性)が要求される。
【0031】
そこで、本実施の形態に係るデジタル秤1は、食品加工場等、水に濡れる環境での使用も可能とするように、デジタル秤1の筐体4における接合部10にシール部材(例えば、ゴムパッキング等)9を配設し取り付け、浸水を防ぐ構成となっている。
【0032】
(デジタル秤の構成)
上述したデジタル秤1のより具体的な構成について、図1から図4を参照して説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタル秤1の斜め前方から見た外観構成を示す斜視図である。図2は、図1のデジタル秤1の断面図である。なお、デジタル秤1において、表示部34が備えられている側を前方、表示部34が備えられている側と対向する側を後方とすると、図2は前方から後方に沿ってデジタル秤1を垂直に切り出した場合の断面構造を示す。
【0034】
デジタル秤1は、図1に示すように、外観形状において計量皿2およびデジタル秤本体部3を備えてなる構成である。
【0035】
計量皿2は、物品(被計量物)を載置するための皿である。計量皿2は、その上面側に物品(被計量物)が載置される。また、図2に示すように、計量皿2は下方側では皿受31と当接しており、該皿受31により支持されている。そして、載置された物品(被計量物)の荷重が下方側で支持する皿受31に加わるように構成されている。
【0036】
デジタル秤本体部3は、筐体4と、この筐体4に収容又は取り付けられた部材とを備える。なお、筐体4の形状は任意であるが、本実施形態では、筐体4が扁平な直方体形状に形成されている構成を例示する。
【0037】
筐体4は、底板5とカバー部材6とから形成される。カバー部材6は、例えば、全体として、下面が開放され、前方の側面が傾斜し、かつ上面の中央に開口(カバー部材開口)8を有する中空の扁平な半開放の直方体形状に形成されている。デジタル秤1に対して高度な食品衛生管理が要求されるため、カバー部材6は耐食性が高いステンレスにより構成されている。
【0038】
一方、底板5は、ステンレスよりも熱伝導率が小さい合成樹脂により構成されている。底板5は、全体として平板状に形成されているが、図3および図4に示すように、デジタル秤1の上方に向かって窪んだ一対の凹部28が設けられている。そして、各凹部28の一方の側面には、底板開口36が形成されており、この底板開口36が防水透湿性素材27によって塞がれた構成となっている。図3は、図1のデジタル秤1の底部側を示す図である。図4は、図1のデジタル秤1の断面図である。図4はデジタル秤1の前方と後方とを結ぶ線に対して垂直となる方向で切り出した、デジタル秤1の断面構造を示す。
【0039】
カバー部材6の下縁部は全周に渡って内方に折り曲げられていて、当接部6aを構成している。この当接部6aに底板5の外縁部5aが当接し、ねじ22によって、この当接部6aと底板5の外縁部5aとが接合されている。この接合箇所が、底板5とカバー部材6との接合部10を構成している。このようにして、底板5とカバー部材6とを用いて扁平な直方体状の筐体4が形成されている。
【0040】
カバー部材6の当接部6aと底板5の外縁部5aとの間にはシール部材(例えばゴムパッキング等)9Aが配置されていて、これにより、カバー部材6の当接部6aと底板5の外縁部5aとの間が所定の防水レベル(防水仕様)にシールされている。
【0041】
また、この筐体4の内部には、皿受31の下部、ロードセル40、制御基板41、電池ボックス38、及び電気配線(不図示)等が収容されている。
【0042】
底板5の一部には電池収用開口5bが形成されていて、この電池収用開口5bを囲むように電池ボックス収容部5cが形成されている。電池ボックス収容部5cには、電池39が装着された電池ボックス38が収容されている。底板5の電池収用開口5bは板状の底蓋7によって塞がれている。
【0043】
底蓋7は、ねじ(不図示)等によって、底板5に取り外し可能に取り付けられている。底蓋7と底板5のとの間にはシール部材(例えばゴムパッキング等)9Bが配置されていて、これにより、底蓋7と底板5との間が上述の所定の防水レベルにシールされている。
【0044】
ロードセル40は、起歪体29と、この起歪体29の所定の部位に貼付された歪ゲージ30とを備えている。一方、皿受31は、水平に延在する受け部31aと、この受け部31aの中央部に下方に突設された取り付け部31bとを備えている。そして、起歪体29がその一端を支持されるようにして片持ち状に底板5上に設けられたロードセル取り付け板37に取り付けられている。そして、起歪体29の他端部が皿受31の取り付け部31bを支持している。
【0045】
なお、図4に示すように、ロードセル取り付け板37と底板5との間には、器内圧力調整用ダイヤフラム42が設けられている。この器内圧力調整用ダイヤフラム42は、計量によるロードセル40のたわみ等による器内の圧力変化を調整するものである。
【0046】
皿受31の取り付け部31bの上端部は、カバー部材6の開口8から上方に突出しており、その上端に受け部31aが位置し、この受け部31aに計量皿2が取り付けられている。これにより、計量皿2に物品が載置されると、当該物品の荷重が皿受31を介してロードセル40の起歪体29に加わり、それによる起歪体21の歪が歪ゲージ30によって検出される。このようにして、計量皿2に載置された物品の重量が検出される。
【0047】
さらに、カバー部材6の開口8の周縁部6bと皿受31の受け部31aの外縁部との間にダイヤフラム11が配設されている。つまり、受け部31aとカバー部材6の周縁部6bとの間に形成される間隙部分にダイヤフラム11が配設されている。これにより、カバー部材6と皿受31との間が上述の所定の防水レベルにシールされる。なお、ダイヤフラム11は、その両端部を、ねじ23、24等によって気密(水密)にカバー部材6の開口8の周縁部6b及び皿受31の受け部31aの外縁部に取り付けられている。ダイヤフラム11は、柔軟性に富んだ材料で形成されており、皿受31が上下方向に移動する際に実質的に当該皿受31に反力を及ぼさないように構成されている。これにより、筐体4の内部を外部からシールした状態で、計量皿2に載置された物品の重量を正確に計量することができる。
【0048】
また、カバー部材6の前面には表示部34が設けられ、この表示部34の背後に位置するように、カバー部材6の内面に制御基板41が取り付けられている。
【0049】
上述のようにして、皿受31の下部、ロードセル40、制御基板41、及び電池ボックス38が筐体4に収容されている。ここで、計量皿2、起歪体29、歪ゲージ30、皿受31、およびロードセル40によって計量機構を構成している。また、電池ボックス38、電池39、制御基板41、及び所要の電気配線等(図示せず)が電装品を構成する。
【0050】
筐体4(底板5及びカバー部材6)の外面にはさらに、電源ON−OFFシートキースイッチ32、操作シートキースイッチ33、及び4つの高さ調整脚35が配設されている。
【0051】
電源ON−OFFシートキースイッチ32は、デジタル秤1の電源のオンおよびオフを切り替えるものであり、操作シートキースイッチ33は、各種設定等を行うための入力手段である。各種設定としては、零点補正、風袋引き等の設定等が挙げられる。
【0052】
また、表示部34は、計量値等の情報を表示させるものであり、LCD(Liquid crystal display)などにより実現できる。
【0053】
高さ調整脚35は、デジタル秤本体部3を支持するための脚であり、筐体4における底面の4隅に設けられ、デジタル秤本体部3を水平位置で支持できるように、それぞれの脚の高さが調節可能となっている。
【0054】
底蓋7は、上述のように、デジタル秤本体部3の内部に収容されている電池ボックス38の電池収用開口5bを閉止するためのものである。すなわち、底蓋7は筐体4に対して着脱可能となっている。そして、底蓋7を筐体4から取り外すと、電池ボックス38の電池収用開口5bが外部に曝されるようになっている。この電池収用開口5bから電池39を電池ボックス38内に収容させることができる。なお、底蓋7のはめ込み部分には上述のようにシール部材9Bが取り付けられており、外部からの浸水を防ぐことができるようになっている。
【0055】
筐体4の内部に備えられている電池ボックス38は、上述したように電池39を収容するものである。電池ボックス38は、不図示の電極を備え、該電極は不図示の配線を介して制御基板41の電力供給端子(不図示)に接続される。
【0056】
ロードセル40は、計量皿2に載置された物品(被計量物)から加えられた荷重から、物品(被計量物)の重量を求めるものである。ロードセル40は、力に比例して変形する起歪体29とその変形量(歪)を測定する歪ゲージ30とを備えており、物品(被計量物)から起歪体29に加えられた荷重による起歪体29の変形量(歪)から、該物品(被計量物)の重量を検出する。
【0057】
より具体的には、ロードセル40には、例えば、歪に比例して電気抵抗が変化する4箇所の歪ゲージ30でホイートストンブリッジが構成されている。そして、このホイートストンブリッジからは、印加電圧に比例し、かつ、歪に比例した非常に小さい電圧信号を制御基板41に対して出力する。制御基板41ではこの小さな電圧信号を増幅させ、物品の重量を数値として表示部34で表示できるように制御する。
【0058】
制御基板41は、デジタル秤1の各種制御を行うものである。制御基板41は、デジタル秤本体部3において、デジタル秤1の前方、すなわち、表示部34が備えられている側に設けられている。図2の例では、制御基板41は、表示部34の背面側に設けられる。
【0059】
また、上述したように筐体4の底板5には一対の凹部28が設けられ、各凹部28の側面の一部に形成された底板開口36を、防水透湿性素材27により塞いでいる構成であった。つまり、デジタル秤1は、防水性を高めるために、接合部10等をシール部材9A、9Bにより塞ぎ、かつ筐体4と皿受31との間をダイヤフラム11でシールしているため、外部から密閉された構造となる。しかしながら、デジタル秤1の計量精度を高めるためには、筐体4の内外の気圧の均衡を保つ必要がある。
【0060】
そこで、本実施の形態に係るデジタル秤1では、水がかかる可能性が小さい底板5の凹部28の側面において、一対の防水透湿性素材27を通じて気圧調整を行うことができるようになっている。なお、この防水透湿性素材27としては、ポリテトラフルオロエチレンを延伸加工したフィルムとポリウレタンポリマーを複合化して作った素材、いわゆるゴアテックス(登録商標)を用いることができる。
【0061】
このように、本実施の形態に係るデジタル秤1は、筐体4内外の気圧を均衡に保つ必要があるため、底板5における一部に防水透湿性素材27を用いている。このため、筐体4の内部に防水透湿性素材27を通じて湿気を含む空気が侵入し、デジタル秤1を取り巻く外界の急激な温度変化によって結露が生じやすくなる。なお、デジタル秤1を取り巻く外界の急激な温度変化としては、冷凍された加工品の重量を計量した後、高温のお湯によって洗浄がなされた場合などが想定される。
【0062】
そこで、本実施の形態に係るデジタル秤1では、生じた結露によりロードセル40の歪ゲージ30など水気を嫌う部材に悪影響を与えないようにするため、ロードセル40を合成樹脂製の断熱カバー13で覆うように構成されている。
【0063】
より具体的には、図2および図4に示すように、ロードセル40は、熱伝導率の低い合成樹脂製の断熱カバー13と合成樹脂製の底板5とによって形成された収容部15内に収用されている。この収容部15は、皿受31の取り付け部31bが貫通できるように、その上部に開口12を形成している。また、この収容部15内には、該収容部15内の水気を取り除くために除湿剤14が配置されている。なお、収容部15に収容する除湿剤14としては、例えば、水分を吸着し、加熱により水分を放出するシリカゲルが利用できる。
【0064】
このように、ロードセル40は、合成樹脂製の断熱カバー13と底板5とによって形成した収容部15内に収容されているため、デジタル秤1の外界を取り巻く温度変化による影響を低減することができる。このため、筐体4内において結露が生じたとしても収容部15内では結露が生じることを防ぐことができる。さらに、筐体4内部においてカバー部材6に付着した結露による水滴によりロードセル40が濡れることを防ぐこともできる。
【0065】
また、断熱カバー13を筐体4内に設けることにより、筐体4内における空気の対流を遮ることができる。このため、湿気を含む空気とロードセル40との接触を低減することもできる。
【0066】
また、筐体4と収容部15との間には空気層が形成されるため、収容部15内への断熱効果が高まり、より一層、収容部15内における温度変化を低減させることができる。
【0067】
なお、上述した底板5および断熱カバー13を形成する合成樹脂としては、例えば、発泡スチロール、ウレタン樹脂、またはフェノール樹脂等が挙げられる。
【0068】
(デジタル秤の構成に係る作用と効果)
次に、以上のように構成されたデジタル秤1の作用効果を説明する。デジタル秤1は、例えば、冷凍された加工品の重量を計量するのに使用される。そうすると、計量時に筐体4内に防水透湿性素材27を通じて湿気を含む空気が侵入する。そして、計量が終了すると、例えば、高温のお湯によって洗浄がなされる。この場合、ロードセル40に対して何ら結露対策が講じられていない場合、筐体4内の湿気(水分)が結露する場合がある。
【0069】
しかしながら、本実施の形態のデジタル秤1の筐体4において、断熱カバー13と底板5とによって形成した収容部15内にロードセル40が収容されているため、ロードセル40に結露が生じることを防止することができる。また、筐体4内に生じた結露による水滴がロードセル40にかかることも防ぐことができる。また、筐体4内における空気の対流を遮ることができ湿気を含む空気とロードセル40との接触を低減することができる。
【0070】
さらに、収容部15内には除湿剤14が配置されているため、この除湿剤14によって収容部15の内部の湿気を吸着することができる。このため、収容部15内に含まれる湿気を取り除くことができる。
【0071】
なお、本実施の形態に係るデジタル秤1では、底板5と断熱カバー13とを合成樹脂によって形成する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、グラスウール、ロックウール、羊毛断熱材、セルロースファイバー、またはコルクなどガラス繊維、人造鉱物繊維、天然繊維などであってもよい。
【0072】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のデジタル秤1は、防水性を備え、かつロードセル40に対する結露の影響を防止可能とするデジタル秤等として有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 デジタル秤
2 計量皿
3 デジタル秤本体部
4 筐体
5 底板
5a 外縁部
5b 電池収用開口
5c 電池ボックス収容部
6 カバー部材
6a 当接部
6b 周縁部
8 開口
9 シール部材
9A シール部材
9B シール部材
10 接合部
11 ダイヤフラム
12 開口
13 断熱カバー
14 除湿剤
15 収容部
27 防水透湿性素材
28 凹部
31 皿受
31a 受け部
31b 取り付け部
34 表示部
36 底板開口
38 電池ボックス
39 電池
40 ロードセル
41 制御基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品から加えられた荷重を電気信号に変換する荷重変換器と、
前記物品を載置する載置皿を支持し、載置された物品の荷重を前記荷重変換器に加える皿受部と、
断熱材により形成された底部、ならびに前記荷重変換器、前記皿受部の当該荷重変換器に近い側の部分、および計量値を数値化して電気的に表示するための電装品を、前記皿受部を挿通させるようにして覆うステンレス製のカバー部材を有し、かつ前記ステンレス製のカバー部材と前記皿受部との間を当該皿受部が上下動可能なようにシールして所定の防水レベルに密閉された筐体と、
前記筐体内において、前記皿受部が挿通された開口を有して前記荷重変換器を覆うように前記底部上に立設され、かつ断熱材により形成された断熱壁部材と、を備える計量装置。
【請求項2】
前記断熱壁部材と前記底部とによって形成された、前記荷重変換器を収容する空間である収容部内に、該収容部内における水分を吸着して乾燥させる除湿剤が備えられている請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記断熱材は、合成樹脂、グラスウール、ロックウール、羊毛断熱材、セルロースファイバー、およびコルクのうちの少なくともいずれか1つである請求項1または2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記カバー部材には前記皿受部を挿通させるための開口であるカバー部材開口が形成されており、
前記筐体は、
前記カバー部材と、前記カバー部材開口に挿通させた前記皿受部との間における間隙を塞ぐダイヤフラムと、
前記カバー部材と前記底部との接合部をシーリングするシーリング部材と、を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の計量装置。
【請求項5】
前記底部は、外気を取り入れるための底部開口と、
前記底部開口を塞いで該開口からの水の浸入を防ぐための防水透湿性素材と、を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173035(P2012−173035A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33055(P2011−33055)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)