説明

計量装置

【課題】高価な部品を用いずとも高精度な計量が可能で、かつ大幅なコストダウンをも実現する計量装置を提供する。
【解決手段】 計量装置1において、交流電圧が供給されるロードセル用ブリッジ回路42とリファレンス用ブリッジ回路44を並列接続し、切替手段57によって交流電圧の周期に基づいてロードセル用回路42とリファレンス用回路44の出力信号を交互に切り替え、補正手段60によってリファレンス用回路44の出力信号に基づいて、ロードセル用回路42の出力信号を補正した。ロードセル用回路42と、リファレンス用回路44の出力信号を交互に得て絶えず比較して、リファレンス用回路44とロードセル用回路42の出力信号に生じる経路誤差を補正した上で計量値を求めるので、高精度な計量値を得ることができる。さらに、各回路42,44の出力側に高価な部品を用いなくて良い分、安価な計量装置1を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量装置に係り、特に、被計量物の負荷によって生成される信号をデータ処理することにより計量値を得る計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の計量装置としては、直流電源により動作し、被計量物の負荷による歪量に応じて荷重信号を出力するロードセルと、ロードセルからの荷重信号を増幅するアンプと、そのアナログ荷重信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ(以下、ADCとする)と、からなり、ロードセル用ブリッジ回路に直流電圧を印加し、その出力電圧信号をアンプで増幅し、ADCによりデジタル信号に変換して出力し、係るデジタル信号を演算処理したデータを基に計量値を求めるものが一般に知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−174664号公報(図1、段落0018〜0030)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の計量装置では、温度変化による熱起電力、アンプやADCなどのオフセットドリフト等によってデジタル信号にドリフトが生じる。これを低減するには、温度特性の良いアンプや高安定度のADC等を用いる必要があるが、これらの部品は非常に高価であることから、計量装置のコストダウンが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、高価な部品を用いずとも高精度な計量が可能で、かつ大幅なコストダウンをも実現する計量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に係る計量装置では、交流電圧が供給されるロードセル用ブリッジ回路と、前記ロードセル用ブリッジ回路と並列に接続され、前記交流電圧が供給されるリファレンス用ブリッジ回路と、前記交流電圧の周期に基づいて前記ロードセル用ブリッジ回路の出力信号と前記リファレンス用ブリッジ回路の出力信号を交互に切り替える切替手段と、前記リファレンス用ブリッジ回路の出力信号に基づいて、前記ロードセル用ブリッジ回路の出力信号を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
(作用)ロードセルに対して、直流電圧ではなく交流電圧を印加するとともに、交流電圧を、ロードセル用ブリッジ回路だけでなくリファレンス用ブリッジ回路にも供給し、切替手段によって各ブリッジ回路からの出力信号を交流電圧の周期に応じて切り替えるようにしたので、ロードセル用ブリッジ回路の出力信号とリファレンス用ブリッジ回路の出力信号とを交互に得ることができる。
【0008】
請求項2では、請求項1に記載の計量装置において、前記切替手段は、2以上の出力チャンネルに接続され、前記ロードセル用ブリッジ回路と前記リファレンス用ブリッジ回路を前記各出力チャンネルに接続可能にするとともに、接続する出力チャンネルを交互に切り替えることを特徴とする。
【0009】
(作用)各回路からの出力信号が出力される出力チャンネルを2以上設け、交流電圧の周期に基づいて、各回路と接続する出力チャンネルが交互に切り替えられるので、常に、いずれかの出力チャンネルに、ロードセル又はリファレンスのいずれかの回路が接続される。
【0010】
請求項3では、請求項2に記載の計量装置において、前記補正手段は、前記各出力チャンネルで交互に得られた前記ロードセル用ブリッジ回路の出力信号を繋ぎ合わせて連続した形のロードセル側出力信号データを得るデータ連結手段と、前記リファレンス用ブリッジ回路の出力信号データから算出した補正係数を用いて前記ロードセル側出力信号データを補正するデータ補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
(作用)補正手段では、各出力チャンネルにおいてロードセルとリファレンスの信号が交互となった形で得られた出力信号を、データ連結手段によって、ロードセル側の出力信号が連続した形のロードセル側出力信号データとし、データ補正手段によって、各出力チャンネルにおけるリファレンス側出力信号データを比較することで補正係数を算出し、係る補正係数を用いてロードセル側出力信号データに生じた経路誤差を補正する。
【0012】
請求項4では、請求項1〜3のいずれかに記載の計量装置において、前記切替手段は、前記交流電圧の1周期ごとに切り替えを行うことを特徴とする。
【0013】
請求項5では、請求項1〜4のいずれかに記載の計量装置において、前記計量装置は、被計量物を搬送しながら計量を行うウェイトチェッカであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ロードセル用ブリッジ回路とリファレンス用ブリッジ回路からの出力信号が、それぞれ別個に出力される回路構成とした場合には、各経路上に配設したアンプやA/Dコンバータ(以下、ADCとする)の感度ドリフトの相違(経路上の素子の個体差)等、様々な要因によって計量値に誤差が生じるおそれがあるが、本発明は、質量に対応して出力するロードセル用ブリッジ回路と、一定出力するリファレンス用ブリッジ回路の出力信号を交互に得、リファレンス用ブリッジ回路とロードセル用ブリッジ回路からの出力信号を絶えず比較して、リファレンス用ブリッジ回路とロードセル用ブリッジ回路の出力信号に生じる経路誤差を低減する補正をした上で計量値を求めるので、高精度な計量値を得ることができる。
【0015】
また、各ブリッジ回路に、直流ではなく交流電圧を供給するようにしたので、その振幅値を用いて計量値を算出することから、アンプ等の経路上の各素子の温度ドリフトの影響も取り除かれ、この点からも、高精度な計量値を得ることができる。
【0016】
さらに、各ブリッジ回路の出力側に、温度特性の良い高価なアンプや、高安定度のADC等を用いる必要がないので、高価な部品を用いなくて良い分、安価な計量装置を提供できる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、ロードセル用ブリッジ回路の出力信号とリファレンス用ブリッジ回路の出力信号とが、計量の全時間帯において得られる。即ち、ロードセル用ブリッジ回路とリファレンス用ブリッジ回路の出力信号の両データを連続的に得ることができる。さらに、このことにより、その後のデジタル処理がスムーズとなって、S/N比も向上する。また、各回路を1つの出力チャンネルに接続する場合に比して、所定の計量時間内に得られるデータサンプル数が倍となるので、その分応答速度を短縮することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、補正手段によって、連続した形のロードセル側出力信号データが得られるとともに、各出力チャンネル間の経路差(各経路上の素子の個体差等)に起因する経路誤差が解消された状態のロードセル側出力信号データが得られるので、高精度な計量値を得ることができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、1周期ごとに切り替えを行うので、短時間での温度ドリフトにも迅速に対応することができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、本発明は、長時間連続して使用することが多く、温度の影響を受けやすいウェイトチェッカに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例における計量装置の概略設備構成図
【図2】同計量装置の制御系統及び要部の回路構成を示すブロック図
【図3】計量のフロー図
【図4】補正処理の工程を説明する図で、A/D変換後の出力信号波形を示す図
【図5】補正処理の工程を説明する図で、データ連結処理後の出力信号波形を示す図
【図6】補正処理の工程を説明する図で、データ補正処理後の出力信号波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る計量装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本実施例における計量装置の概略設備構成図で、図2は同計量装置の制御系統及び要部の回路構成を示すブロック図である。本実施形態の計量装置は、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物Wを搬送しながら計量する、いわゆるウェイトチェッカ1であり、搬入コンベア2と、計量コンベア3と、搬入検出センサ8と、ロードセル4,同装置の制御部5,同装置の操作部6,計量値を表示する同装置の表示部7を一体に収容する装置本体部10と、を備えている。
【0023】
搬入コンベア2は、後述するCPU56によって制御されるモータ(図示せず)によって駆動し、計量コンベア3へと被計量物Wを搬送する。
【0024】
計量コンベア3は、計量コンベア3上で移送中に被計量物Wの計量を行う。
【0025】
ロードセル4は、計量コンベア3を下方支持する荷重センサであり、負荷された質量に応じて歪を生じる起歪体と、この起歪体に装着された4つの歪ゲージ43からなるフルブリッジ型のロードセル用ブリッジ回路42と、歪ゲージ45で同様の構成を取るリファレンス用ブリッジ回路44と、を有する。ロードセル用ブリッジ回路42とリファレンス用ブリッジ回路44は、後述する交流電圧信号を生成するDAC501の電圧出力端子と基準電位端子との間に並列に接続されている。ロードセル用ブリッジ回路42では、歪ゲージ43の歪み量に応じて変化する各抵抗値に基づく荷重信号,ロードセル側出力信号が出力される。リファレンス用ブリッジ回路44では、例えばロードセル4に定格荷重をかけたときの歪ゲージ45の抵抗値に基づく一定出力の基準信号,リファレンス側出力信号を出力する。
【0026】
詳細には、ロードセル用ブリッジ回路42における接続点をA,B,C,D、リファレンス用ブリッジ回路44における接続点をa,b,c,dとすると(図2)、ロードセル用ブリッジ回路42では接続点Aの分圧(プラス側出力信号Vcell+)と接続点Cの分圧(マイナス側出力信号Vcell-)がロードセル側出力信号として出力され、リファレンス用ブリッジ回路44では接続点aの分圧(プラス側出力信号Vref+)と接続点cの分圧(マイナス側出力信号Vref-)がリファレンス側出力信号として出力され、後述のアナログスイッチ57に入力される。なお、リファレンス用ブリッジ回路44の設置箇所及びその抵抗値設定は、上記に限定されるものではない。
【0027】
制御部5は、ロードセル4に電気的に接続される配線基板に搭載された、アナログスイッチ57と、アンプ52,53と、オーディオ用IC50と、CPU56と、を備える。
【0028】
オーディオ用IC50は、L-chとR-chの2つの出力チャンネルを備えており、各チャンネル用のL-ADC504,R-ADC505と、交流電圧信号を生成する交流波生成回路(以下、DACという)501と、を備えたオーディオチップである。なお、ここでオーディオ用IC50は、本願発明に必要な構成である1つのDACと2つのADCが1パッケージとなったICであることから採用しているが、あくまで一例であり、1つのDACと2つのADCを別個のICとして設ける構成や、各ICが搭載された他の部品を用いて構成しても良い。
【0029】
上記オーディオ用IC50のL-chの入力側には、ロードセル側出力信号Vcell+,Vcell-、又はリファレンス側出力信号Vref+,Vref-を、データ処理に最適な信号レベルまで増幅するL側アンプ52が接続され、同様に、上記R-ch入力側には、R側アンプ53が接続されている。一方、L-chの出力側は、L-chから入力したアナログ信号を分解してデジタル信号に変換するL-ADC504に接続され、同様に、R-chの出力側は、R-ADC505に接続されている。
【0030】
上記L-ADC504とR-ADC505及びDAC501はそれぞれCPU56に接続されている。CPU56では、ADC504,505からのデジタル信号の振幅情報及び位相情報を取得し、後述するデータ連結手段及びデータ補正手段(補正手段60)における補正処理を実行し、計量値を演算するとともに、CPU56は、DAC501からの交流電圧信号の周期に基づいて、後述するアナログスイッチ57の制御端子に対し、切替信号を発信する。また、搬入検出センサ8からの信号を受けて、搬入コンベア2に指令信号を発信する。
【0031】
アナログスイッチ57は、上記ロードセル用ブリッジ回路42及びリファレンス用ブリッジ回路44と、L側アンプ52及びR側アンプ53と、の間に配設されており、上記CPU56とも接続されている。そして、上記L-chに接続されうるL側入力端子TRef+,TCell+,TRef-,TCell-と、R-chに接続されうるR側入力端子TRef+,TCell+,TRef-,TCell-と、の8つの入力端子と、L側アンプ52と接続されたプラス側信号出力端子TL+及びマイナス側信号出力端子TL-と、R側アンプ53と接続されたプラス側信号出力端子TR+及びマイナス側信号出力端子TR-と、の4つの出力端子と、L側入力端子TRef+,TCell+と出力端子TL+間,L側入力端子TRef-,TCell-と出力端子TL-間,R側入力端子TRef+,TCell+と出力端子TR+間,R側入力端子TRef-,TCell-と出力端子RL-間,の接続を、交互に切り替える4つの制御端子T1〜T4と、で構成されている。
【0032】
即ち、上記アナログスイッチ57は、8入力4出力の構成からなり、ロードセル用ブリッジ回路42の接続点A,C及びリファレンス用ブリッジ回路44の接続点a,cを、2出力ごとにL,Rの2つの出力チャンネルに接続可能にする切替手段であり、交流電圧信号の周期に基づいて、各制御端子T1〜T4の動作によって、ロードセル用ブリッジ回路42と前記リファレンス用ブリッジ回路44が接続される出力チャンネルを交互に切り替える。
【0033】
以上の構成からなるウェイトチェッカ1の計量時の動作について、図3のフロー図を用いて説明する。特に、補正手段60における補正処理を図4、5、6を用いて説明する。図4は補正処理の工程を説明する図で、A/D変換後の出力信号波形を示す図で、図5は補正処理の工程を説明する図で、データ連結処理後の出力信号波形を示す図で、図6は補正処理の工程を説明する図で、データ補正処理後の出力信号波形を示す図である。
【0034】
ウェイトチェッカ1では、操作部6での操作に起因して、まずステップ1において、搬入コンベア2へ搬送されてきた被計量物W1が、搬入コンベア2から計量コンベア3へ搬送される。被計量物W1が計量コンベア3にさしかかると、搬入検出センサ8で検出され、被計量物W1が計量コンベア3上を移送中、ロードセル4に負荷を与える。また、DAC501からは交流電圧正弦波信号が生成され、アンプ12で増幅されており、被検査物W1がロードセル4に負荷されると、ロードセル用ブリッジ回路42から被計量物W1の質量に対応するロードセル側出力信号Vcell+,Vcell-が得られる。一方、リファレンス用ブリッジ回路44からは、一定出力のリファレンス側出力信号Vref+,Vref-が得られる(ステップ2)。
【0035】
生成されたロードセル側出力信号Vcell+は、分岐されてL側入力端子TCell+とR側入力端子TCell+へ入力され、ロードセル側出力信号Vcell-は、分岐されてL側入力端子TCell-とR側入力端子TCell-へ入力され、リファレンス側出力信号Vref+は、分岐されてL側入力端子TRef+とR側入力端子TRef+へ入力され、リファレンス側出力信号VRef-は、分岐されてL側入力端子TRef-とR側入力端子TRef-へ入力される。その際、CPU56からの制御を受ける制御端子T1,T2,T3,T4によって、交流電圧信号1周期ごとに、制御端子T1はL側入力端子TRef+,TCell+との、制御端子T2はL側入力端子TRef-,TCell-との、制御端子T3はR側入力端子TRef+,TCell+との、制御端子T4はR側入力端子TRef-,TCell-との接続を、交互に切り替える。これにより、L側アンプ52,R側アンプ53にはそれぞれ、交流電圧信号1周期単位で、ロードセル側出力信号とリファレンス側出力信号が交互に入力される。このように、交流電圧信号1周期ごとに切り替えを行うようにすることで、短時間での温度ドリフトにも迅速に対応することができる。
【0036】
上記出力信号はそれぞれ、L側アンプ52,R側アンプ53によって増幅された後、L-ADC504,R-ADC505に入力されてデジタルデータに変換される。係る段階における出力信号波形を示す図が、図4である。
【0037】
なお、この時点では、L-chとR-chにおけるアンプ52,53、ADC504,505の個体差の影響により、経路差が生じているため出力信号データを比較することは出来ないが、各ブリッジ回路42,44には、直流ではなく交流の電圧信号が供給されているので、この振幅値を用いて計量値を算出することから、経路上の各素子の温度ドリフトの影響(DC成分)は除去されている。
【0038】
次に、補正手段60によるデータ処理が行われる。ステップ3では、L-chとR-chのそれぞれにおいてロードセル側出力信号とリファレンス側出力信号が1周期ごとに交互となった形で得られた出力信号データを、ロードセルごとにまとめて繋ぎ合わせ、連続した形のロードセル側出力信号データDcを得る(データ連結手段)。リファレンス側出力信号についても同様の処理を行い、連続した形のリファレンス側出力信号データDrを得る。係る段階における出力信号波形を示す図が、図5である。
【0039】
次に、ステップ4で、L-ch,R-chでの出力チャンネルの経路差に起因する振幅値のばらつきを補正するために、リファレンス側出力信号データDrの振幅,即ち、図5においてR-chでは振幅値A,L-chでは振幅値Bから、補正係数α=A/Bを算出する。次に、ステップ5で、L-ch側の出力信号データに対して補正係数αを乗算し、ロードセル側出力信号データDcの振幅値が一定となるように補正する(データ補正手段)。リファレンス側出力信号データDrに対しても同様に補正する。係る段階における出力信号波形を示す図が、図6である。
【0040】
なお、リファレンス側については、ステップ4にあるようにL-chとR-chを比較して補正係数αを算出できれば、ステップ3において必ずしもデータを連結しなくてもよいし、ステップ5において必ずしもデータを補正しなくてもよい。
【0041】
最後に、ステップ6で、補正後のロードセル側出力信号データDcを用いて計量値が算出されて、係る計量値がCPU56から出力されて表示部7に与えられると、被計量物W1に対しての計量が終了となる。係る工程が、任意の被計量物個数Wxを全て計量し終えるまで、繰り返し行われる。
【0042】
本実施例によれば、ロードセル4に対して、直流電圧ではなく交流電圧を印加するとともに、交流電圧信号を、ロードセル用ブリッジ回路42だけでなくリファレンス用ブリッジ回路44にも供給し、アナログスイッチ57によってロードセル側出力信号,リファレンス側出力信号を交流電圧信号の周期に応じて交互に得、その出力チャンネルを2つ設けたことで、一方の出力チャンネルに接続されたADCがリファレンス用の信号を参照している時に、他方の出力チャンネルに接続されたADCがロードセル用の信号を参照し、これが交互に行われるので、絶えずどちらかのADCがロードセル側出力信号を参照していることとなって、ロードセル用ブリッジ回路42とリファレンス用ブリッジ回路44の出力信号が、計量の全時間帯において得ることができる。
【0043】
そして、補正手段60によって、各出力チャンネルにおいてロードセルとリファレンスの信号が交互となった形で得られた出力信号を、リファレンスごと、特にロードセルごとの連続した出力信号データとして得ることができる(データ連結手段)。さらに、出力チャンネルが異であることで生じているロードセル側出力信号データDc,リファレンス側出力信号データDrにおける経路誤差を、各出力チャンネル(L-ch,R-ch)におけるリファレンス側出力信号データDrの振幅値を比較することで補正係数αを算出してロードセル側出力信号データDcに乗算することで(データ補正手段)、リファレンス側出力信号を基準にして、ロードセル側出力信号を絶えず補正することができ、経路誤差が解消された上で計量値を求めるので、高精度な計量値を得ることができる。
【0044】
また、各ブリッジ回路42,44には、直流ではなく交流の電圧信号が供給されることで経路上の各素子の温度ドリフトの影響(DC成分)は除去され、この点からも高精度な計量値を得ることができる。
【0045】
さらに、各ブリッジ回路42,44を1つの出力チャンネルに接続する場合に比して、所定の計量時間内に得られるデータサンプル数が倍となるので、その分計量応答速度を短縮することができる。さらに、ロードセル側出力信号データDcを連続的な形で得ることができることにより、その後のデジタル信号処理がスムーズとなって、S/N比も向上する。
【0046】
そして、上記の構成を取ったことで、各ブリッジ回路42,44の出力側に、温度特性の良い高価なアンプや、高安定度のADC等を用いる必要がないので、高価な部品を用いなくて良い分、安価な計量装置を提供することができる。また、本実施例にオーディオ用IC50を用いたことによって、本願発明に必要な構成である1つのDACと2つのADCが1部品で代替されるため、部品点数が減ってコストダウンとなるとともに、流通量も多いため、この点からもコストダウンが図れる。
【0047】
なお、上記実施例において、交流電圧として正弦波を生成するとしたが、矩形波であっても当然に良い。
【0048】
また、切替手段における切り替えは、交流電圧信号1周期でなく、2周期以上、或いは1.5周期ごとに切り替えるようにしても良い。
【0049】
なお、本願発明の構成は、長時間連続して使用することが多く、温度の影響を受けやすいウェイトチェッカに適しているが、ウェイトチェッカは本願発明の一例であり、本願発明はこれ以外の計量装置にも当然に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 計量装置であるウェイトチェッカ
4 ロードセル
42 ロードセル用ブリッジ回路
44 リファレンス用ブリッジ回路
57 切替手段であるアナログスイッチ
60 補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧が供給されるロードセル用ブリッジ回路と、
前記ロードセル用ブリッジ回路と並列に接続され、前記交流電圧が供給されるリファレンス用ブリッジ回路と、
前記交流電圧の周期に基づいて前記ロードセル用ブリッジ回路の出力信号と前記リファレンス用ブリッジ回路の出力信号を交互に切り替える切替手段と、
前記リファレンス用ブリッジ回路の出力信号に基づいて、前記ロードセル用ブリッジ回路の出力信号を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記切替手段は、2以上の出力チャンネルに接続され、前記ロードセル用ブリッジ回路と前記リファレンス用ブリッジ回路を前記各出力チャンネルに接続可能にするとともに、接続する出力チャンネルを交互に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記各出力チャンネルで交互に得られた前記ロードセル用ブリッジ回路の出力信号を繋ぎ合わせて連続した形のロードセル側出力信号データを得るデータ連結手段と、前記リファレンス用ブリッジ回路の出力信号データから算出した補正係数を用いて前記ロードセル側出力信号データを補正するデータ補正手段と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記切替手段は、前記交流電圧の1周期ごとに切り替えを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の計量装置。
【請求項5】
前記計量装置は、被計量物を搬送しながら計量を行うウェイトチェッカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−36806(P2013−36806A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171854(P2011−171854)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000127570)株式会社エー・アンド・デイ (136)