説明

計量装置

【課題】計量装置の計量部を可及的に薄くしながら、四隅調整を簡単に行うことができる
計量装置を提供する。
【解決手段】上面に補強リブが設けられた盤状のベース部材の上面に、平衡ビーム型ロー
ドセルの固定端部を取り付け、裏面に補強リブが設けられ、上面には計量皿が載置される
盤状の皿受け部材の裏面に、前記ロードセルの可動端部を取り付ける。そして、前記皿受
け部材の上面に前記ロードセルの歪受感部と連なる工具挿入窓を設け、その挿入窓からヤ
スリ等の工具を挿入して歪受感部を切削する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計量物の質量を測定する計量装置の計量部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、被計量物の重さを測定するときは、被計量物を計量皿に載せたり降ろし
たりしなければならないので、その載せ降ろし作業を軽減するために、下記特許文献1、
2では、計量皿が載置される計量部をできるだけ薄くする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−13975号公報
【特許文献2】実公平05−009624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の計量部は、矩形の枠型固定フレームと、それと上下に嵌
り合う同じく矩形の枠型可動フレームとの間に連結板を介して平衡ビーム型ロードセルを
取り付ける構造であるため、計量部をさらに薄くすると、枠型フレームと、枠の間に渡さ
れる連結板とでは、計量皿に負荷される荷重を支えることができない。
【0005】
そこで、矩形の枠型フレームに代えて、金属板に補強リブを縦横に張り巡らした剛板を
使用すれば、可及的に薄くした計量部に剛性を持たせることはできる。しかし、そうする
と、今度は、上下に嵌り合う剛板の間にロードセルを挟み込むことになるので、計量皿に
偏荷重を掛けて偏置誤差を修正しようとしても、ロードセルの歪受感部を削るためのヤス
リ等の工具が上下の剛板の間に挿入できず、結果的に四隅調整が行えないという新たな問
題が生ずる。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みて成したもので、計量装置の計量部を可及的に薄くしな
がら、四隅調整を簡単に行うことができる新たな計量装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る計量装置は、上面に補強リブが設けられた
盤状のベース部材の上面に、平衡ビーム型ロードセルの固定端部を取り付け、裏面に補強
リブが設けられ、上面には計量皿が載置される盤状の皿受け部材の裏面に、前記ロードセ
ルの可動端部を取り付けてなる計量装置であって、前記皿受け部材の上面に前記ロードセ
ルの歪受感部と連なる工具挿入窓を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る計量装置は、請求項1に記載の計量装置であって、前記工具挿入
窓には、ロボットハンドによって把持される把持部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る計量装置は、請求項1又は2に記載の計量装置であって、前記工
具挿入窓が、前記ロードセルの歪受感部の直上に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る計量装置は、請求項3に記載の計量装置であって、前記皿受け部
材が金属製とされ、前記工具挿入窓が同じ金属製の板でもって着脱可能に塞がれているこ
とを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至4に係る発明によれば、盤状のベース部材と、同じく盤状の皿受け部材と
の間にロードセルを組み付けてなる計量部を可及的に薄くしても、皿受け部材の上面側か
らロードセルの歪受感部に対し、ヤスリ等の工具を挿入して計量部の四隅調整を行うこと
ができる。したがって、ロードセルが組み込まれた計量部に対して偏置誤差を修正するこ
とができるので、個々の計量部を高精度なものに仕上げることができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明によれば、工具挿入窓がロボットハンドによって把持するこ
とができるので、皿受け部材をロードセルに組み付けるのに、ロボットハンドを使用する
ことができる。したがって、計量部の組み立てラインにロボットを導入して自動化するこ
とができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、工具挿入窓がロードセルの歪受感部の直上に設け
られているので、歪受感部に対する切削箇所や切削量を目で確認しながら四隅調整を行う
ことができる。また、歪受感部の直上が開放されていることから、歪受感部の表面に貼着
された歪ゲージや配線等に防湿カバーを被せる作業も簡単にできる。
【0014】
さらに、計量皿に熱いものや冷たいものが載せられると、その直下にあるロードセルが
熱的不平衡状態に陥って計量精度が落ちることがあるが、請求項4に係る発明によれば、
工具挿入窓が同じ金属製の板で塞がれるので、計量皿に熱いものや冷たいものが載せられ
ても、金属製の板を介してロードセルにおける熱的不平衡状態が解消され、計量精度が低
下しない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る計量装置の外観斜視図。
【図2】上記実施形態の計量部から計量皿を取り除いた状態の外観斜視図。
【図3】上記実施形態の計量部の断面図。
【図4】図2の工具挿入窓や凹部に金属板等を被せた状態の外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る計量装置Aの外観斜視図を示す。この図では、計量
部100を本体200とは別置きにしているが、計量部100を本体200の上面201
に設置したり、そこに固定したりすることもできる。
【0018】
計量装置Aは、前面にタッチパネル300が取り付けられ、背面に客側表示部310が
組み込まれた本体200と、被計量物が載荷される計量部100とを備える。この計量部
100は、後述のロードセル400と、ロードセル400の出力を増幅してデジタル信号
に変換する信号処理回路と、デジタル信号を本体200側に送信する無線モジュールと、
これらに給電するバッテリーとを備える。また、本体200は、計量部100から送信さ
れたデジタル信号を受信する無線モジュールと、受信した信号を質量に変換するとともに、
設定された単位質量当りの単価を掛けて価格を算出し、それをタッチパネル300や客側
表示部310に表示するコンピュータと、被計量物の重さや価格等をラベルやレシート紙
に印字するプリンタと、これらに給電する電源装置とを備える。
【0019】
前記計量部100は、図2、図3に示すように、昇降自在の脚部101が設けられた金
属製のベース部材102と、ベース部材102の上に非接触状態で被さる金属製の皿受け
部材103とを備え、この両部材102、103がロードセル400を介して上下に結合
される。また、皿受け部材103の上面には、断熱性のあるクッション材130が貼り付
けられ、その上から金属製の計量皿Bが被せられる。なお、図3は、図1に示す計量部1
00のa,a断面を矢印方向に見た断面図である。
【0020】
前記ベース部材102は、図2に示すように、矩形の盤状に形成され、その四隅には、
雌ネジが施されたボス部104が形成され、そのボス部104の雌ネジにボルト埋め込み
型の脚部101が捻じ込まれて、その捻じ込み量の調整により、ベース部材102の水平
度が調整できるようになっている。
【0021】
また、図3に示すように、ベース部材102の上面には、ロードセル400の周囲を囲
む補強リブ105と、その補強リブ105を囲む外側補強リブ105aとが設けられ、さ
らに、ベース部材102のロードセル取り付け面には、座金状のボス106が形成され、
そのボス106を含むベース部材102に施された雌ネジにボルト107を捻じ込んで
ロードセル400の固定端部402をベース部材102に固定している。
【0022】
前記皿受け部材103は、図2に示すように、同じく矩形の盤状に形成され、その四隅
は、前記ボス部104と干渉しないように円弧状にカットされ、そのカット面には、水平
にブラケット108が設けられ、そのブラケット108に穿設されたネジ穴にストッパー
としての調整ボルト108aが捻じ込まれ、その調整ボルト108aの先端部とベース部
材102との間隔調整により、皿受け部材103の過度な沈下が調整ボルト108aによ
って制限されるようになっている。また、皿受け部材103の上面4ヶ所には、計量皿B
の裏面に設けられたピンを挿入するためのゴム製ブッシュ109が取り付けられている。
【0023】
前記皿受け部材103の中央部には、図2に示すように、ロードセル400の偏置誤差
を修正するための工具挿入窓110が設けられ、その延長線上には、皿受け部材103の
下面をロードセル400の可動端部403にボルト122で固定するための凹部111と、
図4の回路基板114に実装されたスパン調整ネジを操作するための貫通孔112を備え
た凹部113と、回路基板114に実装された電子部品115との接触を避けるための開
口窓116と、水準器117を覗き見るための覗き窓118とが設けられている。また、
皿受け部材103の裏面には、図3に示すように、ベース部材102の補強リブ105、
105aと非接触状態で嵌り合う補強リブ120が縦横に張り巡らされている。
【0024】
前記工具挿入窓110は、そこからヤスリ等の工具を差し込んでロードセル400の歪
受感部401を適度な角度から切削できる形状とされている。また、工具挿入窓110に
は、図示しないロボットハンドのチャックが挿入できる切り欠け110aが設けられ、そ
の切り欠け110aに左右のチャックを挿入して広げれば、皿受け部材103がロボット
ハンドに把持されるようになっている。なお、図2の皿受け部材103の段差部103a
に設けた窪み103bは、ロボットハンドが皿受け部材103を保持するときの位置決め
となる窪みである。
【0025】
そして、皿受け部材103をロードセル400に取り付けた状態で四隅調整が完了すれ
ば、図4に示すように、皿受け部材103と同じ材質の金属板Cが工具挿入窓110に被
せられ、その上から金属板Cのはみ出し部C1を下に敷きながら、封印カバー119が両
凹部111、113の上に被せられ、その上から金属板Cのはみ出し部C1と共にネジ止
めされるようになっている。また、前記はみ出し部C1には、図2の凹部113に設けら
れたボス113aと勘合する貫通孔が設けられ、その貫通孔をボス113aに挿入して金
属板Cを位置決めし、その上から封印カバー119を被せてネジ止めするようになってい
る。
【0026】
前記封印カバー119は、スパン調整ネジを操作するための貫通孔112(図2参照)
を封印するもので、通常は、ワイヤーが連結されたネジを凹部113のネジ穴119aに
捻じ込んで封印し、ワイヤーの一端は、封印カバー119に設けたフランジ部119bに
固定するが、ここでは、その機能を利用して、前記はみ出し部C1を封印カバー119と
ともにボス113aにネジ止めして、工具挿入窓110も同時に封印するようにしている。
したがって、封印カバー119が封印されると、ワイヤーを切断しない限り、封印カバー
119も金属板Cも取り外しができないようになっている。
【0027】
前記金属板Cに代えて、断熱性のあるクッション材130を被せると、計量皿Bに熱い
ものや冷たいものが載せられたときに、ロードセル400の上側の歪受感部401に温度
勾配が生じ、これが原因で計量精度が低下することがある。これは、封印カバー119が
金属であり、そこに金属製の計量皿Bが被せられるため、封印カバー119には、計量皿
Bの熱が直接伝達される。すると、ロードセル400の可動端部403と歪受感部401
との間に温度勾配が生じ、それが原因で計量精度が低下すると考えられる。そこで、クッ
ション材130に代えて、工具挿入窓110を金属板Cで被うと、金属板Cは、封印カ
バー119や段差部103aと同じ温度になり、それによってロードセル400の上側の
歪受感部401には、温度勾配が生じ難くなると思われる。
【0028】
図2の回路基板114は、ベース部材102に取り付けられているが、その基板には、
ロードセル400の出力を増幅してデジタル信号に変換する信号処理回路が実装され、そ
こで変換されたデジタル信号は、ベース部材102の裏面に取り付けられた図示しない無
線モジュールを介して本体200側の無線モジュールに送信される。
ただし、この無線モジュールに代えて、計量部100と本体200とを電送ケーブルで
接続して、計量部100の出力信号を本体200側へ送信するようにしてもよい。その場
合には、計量部100のバッテリーは、不要となる。
【0029】
なお、ベース部材102の水平度を見るための水準器117は、ベース部材102に取
り付けられ、皿受け部材103には、その水準器117を覗き見るための覗き窓118が
設けられているが、計量皿Bには、その覗き窓118に対応する窓が設けられていない。
これは、計量皿Bが皿受け部材103から簡単に取り外せ、それによって計量部100の
水平度をいつでも確認できるからである。
【0030】
前記ロードセル400は、図3に示すように、中央部がめがね状に刳り貫かれた平衡
ビーム型のロードセルとして成形されているが、この実施形態では、特に、計量部100
の厚みを可及的に薄くするために、ロードセル400の横幅を広げて扁平にしている。そ
して、薄肉に形成された上下の歪受感部401には、歪ゲージが貼着され、それらは、図
示しないフレキシブルプリント基板を介してホイートストンブリッジに結線される。そし
て、これらの上には、防湿カバー404が被せられる。
【0031】
また、皿受け部材103の凹部111裏面には、座金状のボス123が形成され、ボル
ト122でロードセル400の可動端部403を締め付けたときに、その可動端部403
全面が凹部111裏面に密着するのを防止している。同様に、固定端部402側のベース
部材102にもボス106が形成されているが、これは、ボルト107、122でロード
セル400を締め付けたときの歪ゲージへの影響を低減するためである。
【0032】
なお、前記ロードセル400の可動端部403は、歪受感部401よりも一段低くされ
て、ボルト122の頭が計量部100内に収まるようにしている。また、可動端部403
に近接するベース部材102には、上下に貫通するネジ穴が設けられ、そこに底面からス
トッパー用のボルト124が捻じ込まれて、その捻じ込み量の調整により、前記可動端部
403が過度に沈下するのを防止している。
【符号の説明】
【0033】
100 計量部
102 ベース部材
103 皿受け部材
105 補強リブ
105a 補強リブ
110 工具挿入窓
110a 切り欠け(把持部)
120 補強リブ
400 ロードセル
401 歪受感部
402 固定端部
403 可動端部
A 計量装置
B 計量皿
C 金属製の板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に補強リブが設けられた盤状のベース部材の上面に、平衡ビーム型ロードセルの固
定端部を取り付け、裏面に補強リブが設けられ、上面には計量皿が載置される盤状の皿受
け部材の裏面に、前記ロードセルの可動端部を取り付けてなる計量装置であって、前記皿
受け部材の上面に前記ロードセルの歪受感部と連なる工具挿入窓を設けたことを特徴とす
る計量装置。
【請求項2】
前記工具挿入窓には、ロボットハンドによって把持される把持部が形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記工具挿入窓が、前記ロードセルの歪受感部の直上に設けられていることを特徴とす
る請求項1又は2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記皿受け部材が金属製とされ、前記工具挿入窓が同じ金属製の板でもって着脱可能に
塞がれていることを特徴とする請求項3に記載の計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88340(P2013−88340A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230594(P2011−230594)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)