説明

記憶装置、その制御方法及びその記憶装置を用いた電子装置

【課題】データの読み出し遅延を抑制すること。
【解決手段】記録媒体である磁気ディスク10のデータトラック20に記録されたデータを読み出すヘッド12が、目標のデータトラック20にオントラックするよう制御するヘッド位置制御部40と、ヘッド12が目標のデータトラック20にオントラックされたか判定するオントラック判定部42と、ヘッド12が目標のデータトラック20にオントラックされていない場合でも、目標のデータトラック20からのデータの読み出しを行い、データが読み出せないセクタについてはダミーデータを補完するリード制御部48と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置、その制御方法及びその記憶装置を用いた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)は、パーソナルコンピュータ、ナビゲーション装置、AV(Audio Visual)機器等、様々な製品に搭載されている。このため、映像データや音楽データを記録して再生するような用途に使用される機会が多くなっている。
【0003】
映像データや音楽データは、ある程度欠落することがあっても、映像や音楽を再生する際には大きな問題とはならない。このため、最近のHDDには、映像データや音楽データを読み出す場合に、データエラー(リードエラー)が生じてもエラーリカバリ処理を行わずに、データを連続して転送する機能が搭載されているものがある。
【0004】
また、データの読み出し速度を正規の再生速度と同一にリアルタイム的に行わず、高速でデータの読み出しを行い、読み出されたデータをメモリに一旦格納してから転送する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。これにより、リードエラーが生じた場合にも、データを連続して転送することができる。
【0005】
メモリへのデータの格納速度と、メモリからのデータの転送速度が異なることによりメモリがオーバーフローした場合でも、データを連続的に転送可能とする方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−78760号公報
【特許文献2】特開2008−176926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、ホストからのリード要求に対して、残留振動や外乱等により、ヘッドが目標のデータトラックにオントラックされない場合、再度、目標のデータトラックにヘッドをシークし、オントラックを試みるリカバリ処理が行われている。
【0008】
図1を用いて、このリカバリ処理について説明する。図1(a)のように、ホストからの複数セクタに係るリード要求に対して、目標のデータトラックまでヘッドをシークし、オントラックを試みる。このときに、残留振動や外乱等により、リード要求範囲の先頭セクタでオントラックできずに、途中のセクタ(例えば、先頭セクタから4番目のセクタ)でオントラックされる場合がある。この場合、図1(b)のように、先頭セクタでオントラックされるように再度オントラックを試みるが、このときにディスクの回転待ちが発生する。そして、先頭セクタでオントラックが成功した後、先頭セクタからデータのリード動作を実行し、リードデータをホストに転送する。
【0009】
図1のようなリカバリ処理が行われる場合、ディスクの回転待ちが発生するため、データの読み出しに遅延が生じてしまう。データの読み出しに遅延が生じている間は、ホストにデータが転送されないため、データの転送が途中で途切れてしまうことになる。
【0010】
特許文献1及び特許文献2には、このようなオントラックのリカバリ処理に係る課題を解決する技術については開示されていない。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、データの読み出しの遅延を抑制することが可能な記憶装置、その制御方法及びその記憶装置を用いた電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に記載の記憶装置は、記録媒体のデータトラックに記録されたデータを読み出すヘッドが、目標データトラックにオントラックするよう制御するヘッド位置制御部と、前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされたか判定するオントラック判定部と、前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされていない場合でも、前記目標データトラックからのデータの読み出しを行い、データが読み出せないセクタについてはダミーデータを補完するリード制御部と、を有している。
【0013】
これによれば、目標データトラックにオントラックされていない場合でもデータの読み出しを行い、データが読み出せないセクタについてはダミーデータを補完することで、オントラックのリカバリ処理がなくなり、データの読み出しの遅延を抑制することができる。よって、データを連続して転送することが可能となる。
【0014】
本明細書に記載の記憶装置の制御方法は、記録媒体のデータトラックに記録されたデータを読み出すヘッドが、目標データトラックにオントラックするよう制御するヘッド位置制御工程と、前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされたか判定するオントラック判定工程と、前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされていない場合でも、前記目標データトラックからのデータの読み出しを行い、データが読み出せないセクタについてはダミーデータを補完するリード制御工程と、を有する。
【0015】
これによれば、目標データトラックにオントラックされていない場合でもデータの読み出しを行い、データが読み出せないセクタについてはダミーデータを補完することで、オントラックのリカバリ処理がなくなり、データの読み出しの遅延を抑制することができる。よって、データを連続して転送することが可能となる。
【0016】
本明細書に記載の電子装置は、本明細書に記載の記憶装置を備えている。
【0017】
これによれば、データの読み出し遅延が抑制され、データを連続して転送することが可能な記憶装置を備えていることで、映像や音楽の再生が途中で途切れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に記載の記憶装置及びその制御方法によれば、データの読み出し遅延を抑制することができ、データを連続して転送することが可能となるという効果を奏する。また、本明細書に記載の電子装置によれば、映像や音楽の再生が途中で途切れることを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はオントラックのリカバリ処理を説明するための図である。
【図2】図2は実施例1及び実施例2に係る記憶装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図3は磁気ディスク上に形成されたデータトラックとサーボパターンとを説明するための図である。
【図4】図4は実施例1及び実施例2に係る記憶装置のMPUの機能ブロック図である。
【図5】図5は実施例1に係る記憶装置のリード動作を説明するフローチャート(その1)である。
【図6】図6は実施例1に係る記憶装置のリード動作を説明するフローチャート(その2)である。
【図7】図7は実施例1に係る記憶装置のリード動作を説明するための図(その1)である。
【図8】図8は実施例1に係る記憶装置のリード動作を説明するための図(その2)である。
【図9】図9は実施例2に係る記憶装置のリード動作を説明するフローチャート(その1)である。
【図10】図10は実施例2に係る記憶装置のリード動作を説明するフローチャート(その2)である。
【図11】図11は実施例2に係る記憶装置のリード動作を説明するための図である。
【図12】図12は実施例1又は実施例2に係る記憶装置を備えた電子装置の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の記憶装置の実施例としての磁気ディスク装置100について説明する。
【実施例1】
【0021】
図2は、実施例1に係る磁気ディスク装置100のブロック図である。図2のように、磁気ディスク装置100は、制御ボード90とディスクエンクロージャ80とを備えている。
【0022】
ディスクエンクロージャ80は、記録媒体としての磁気ディスク10、ヘッド12、ヘッドアンプ14、ボイスコイルモータ16、及びスピンドルモータ18を有する。
【0023】
磁気ディスク10は、塗布された磁性体の磁化状態を変化させることにより、データを記録する記録媒体であり、図3のように、ユーザデータ等が記録されるデータトラック20とサーボ情報が記録されたサーボパターン22とが、磁気ディスク10面上に形成されている。データトラック20は、磁気ディスク10の周方向に沿って同心円状に複数形成されていて、それぞれのデータトラック20は、複数のセクタに分割されている。サーボパターン22は、磁気ディスク10の半径方向に放射状に複数形成されていて、トラックデータ、セクタデータ、及びバーストデータのサーボ情報を有する。トラックデータはデータトラック番号が書き込まれており、セクタデータはセクタ番号が書き込まれている。バーストデータは、データトラック20に対するヘッド12の相対位置情報を有し、ヘッド12を目標のデータトラック20の中心に正確に位置決めするのに用いられる。
【0024】
図2に戻り、ヘッド12は、セラミック等からなる本体内に、磁気ディスク10へのデータの書き込み及び消去を行うための記録素子と、磁気ディスク10に書き込まれたデータ及びサーボ情報を読み出すための再生素子とを有する。
【0025】
ヘッドアンプ14は、ヘッド12(再生素子)から読み出されたリード信号を増幅するための再生アンプと、ヘッド12(記録素子)に供給するライト信号を増幅するための記録アンプとを有する。
【0026】
ボイスコイルモータ16は、サーボコントローラ32の制御の下、ヘッド12を保持するヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)を駆動し、ヘッド12を磁気ディスク10の半径方向に移動(シーク)させて、目標のデータトラック20にヘッド12を位置決めする。
【0027】
スピンドルモータ18は、サーボコントローラ32の制御の下、磁気ディスク10を、例えば4200〜15000rpm等の適切な回転速度で回転させる。
【0028】
制御ボード90は、リードライトチャネル24、ハードディスクコントローラ(HDC)26、データバッファ28、メモリ30、サーボコントローラ32、及びMPU(Micro Processing Unit)34を有する。これらは、システムバス36により互いに接続している。
【0029】
リードライトチャネル24は、記録再生動作に関するリード/ライト信号の処理を行う。
【0030】
HDC26は、ホスト38との間の各種命令及びデータの授受の制御を行う。さらに、HDC26は、MPU34からの指示に基づき、リードエラーの判定を行う。データバッファ28は、ホスト38から入力されたライトデータや、磁気ディスク10から読み出されたリードデータを一時的に記憶する。
【0031】
メモリ30は、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと、フラッシュROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを含んでいる。RAMは、MPU34が制御処理を実行するときに使用するワークメモリである。フラッシュROMは、MPU34によって実行される制御プログラムが予め格納されている。
【0032】
サーボコントローラ32は、MPU34からの指示に基づき、ボイスコイルモータ16やスピンドルモータ18を制御する。
【0033】
MPU34は、リード/ライト動作制御、ヘッド12の位置決め制御、磁気ディスク10から読み出されたリードデータのエラー判定制御等、磁気ディスク装置100全体の制御を行う。このMPU34は、図4のように、ヘッド位置制御部40、オントラック判定部42、リード継続機能判定部44、リトライ回数判定部46、リード制御部48、及びリードエラー判定制御部50、を備えている。これらは、システムバス52により互いに接続していて、メモリ30のフラッシュROMに予め格納されている制御プログラムをMPU34が読み出すことにより実行される。
【0034】
ヘッド位置制御部40は、サーボパターン22に記録されたサーボ情報を用い、サーボコントローラ32を制御して、ホスト38からのリード要求に応じた目標のデータトラック20までヘッド12をシークし、オントラック処理を行う。
【0035】
オントラック判定部42は、目標のデータトラック20にヘッド12がオントラックされたか否かの判定を行う。例えば、ヘッド12がサーボパターン22のバーストデータを読み出すことで得られる信号の振幅から、ヘッド12の位置ずれ量を計算し、当該位置ずれ量が所定の範囲内であるか否かにより、オントラックの成否を判定する。
【0036】
リード継続機能判定部44は、リード継続機能がONであるかOFFであるかの判定を行う。リード継続機能は、例えば、ホスト38からのリード要求の対象となるデータが、映像データ又は音楽データである場合にONとし、情報処理データである場合にOFFと設定することができる。
【0037】
リトライ回数判定部46は、目標のデータトラック20へのヘッド12のシーク回数が規定回数に達したか、及び同一セクタからのデータのリード回数が規定回数に達したかの判定を行う。
【0038】
リード制御部48は、セクタに記録されたデータの読み出しを行う。また、後述するリードエラー判定制御部50により、セクタから読み出されたリードデータにエラーが生じていると判定された場合は、例えば、ダミーデータを当該セクタのデータとして補完する。
【0039】
リードエラー判定制御部50は、HDC26を制御して、セクタから読み出されたリードデータにエラーが生じているか判定する。
【0040】
次に、図5及び図6のフローチャートを用い、ホスト38からのリード要求に応じたリード動作について説明する。図5のように、MPU34は、ホスト38から複数セクタに係るデータのリード要求を受信すると(ステップS10)、サーボコントローラ32を制御してボイスコイルモータ16やスピンドルモータ18を駆動させ、リード要求に応じた目標のデータトラック20にヘッド12をシークさせる(ステップS12)。この際、サーボパターン22に記録されたサーボ情報を用いる。
【0041】
次に、MPU34は、サーボパターン22に記録されたバーストデータを用いて、ヘッド12を目標のデータトラック20へのオントラックを試み、オントラックが成功したかを判定する(ステップS14)。残留振動や外乱等が生じている場合は、オントラックに失敗することがある。オントラックの成否の判定は、バーストデータから得られる信号の振幅から計算されたヘッド12の位置ずれ量が、所定の範囲内にあるか否かにより行うことができる。
【0042】
オントラックに失敗した場合(Noの場合)、まず、MPU34は、リード継続機能がONであるかOFFであるかの判定を行う(ステップS16)。リード継続機能のON/OFFは、ホスト38からのリード要求に係るデータが、映像データや音楽データであるか、又は情報処理データであるかによって切り換えることができる。
【0043】
リード継続機能がOFFである場合(Noの場合)、ホスト38からのリード要求に係るデータは情報処理データであるため、データの欠落等は許されないことから、MPU34は再度、シーク及びオントラックを試みる。具体的には、まず、MPU34は、目標のデータトラック20へのシーク回数が、規定シークリトライ回数に達しているかを判定する(ステップS18)。規定回数に到達していない場合(Noの場合)、MPU34は、再度、目標のデータトラック20にヘッド12をシークさせて(ステップS20)、オントラックを試みる(ステップS14)。規定回数に到達している場合(Yesの場合)、ヘッド12の故障等の様々な要因により、目標のデータトラック20へのシーク及びオントラックができないと考えられるため、MPU34は、シークエラー処理を行い、目標のデータトラック20へのシークを中止する(ステップS22)。
【0044】
リード継続機能がONである場合(Yesの場合)、ホスト38からのリード要求に係るデータは映像データ又は音楽データであるため、ある程度のデータの欠落は許される。したがって、図6のように、MPU34は、目標のデータトラック20へのオントラックのリカバリ処理を行わず(ステップS24)、リード要求範囲の先頭セクタからデータのリード動作を実行する(ステップS26)。リード動作では、ヘッド12により読み出されたリード信号がリードライトチャネル24により信号処理されて、HDC26に送られる。
【0045】
次に、MPU34は、HDC26を制御し、読み出されたリードデータにエラーが生じていないか判定する(ステップS28)。残留振動や外乱等が引き続き生じている場合等は、セクタからデータを正常に読み出すことができず、リードエラーが生じる。リードエラーが生じている場合(Yesの場合)、MPU34は、リード動作を実行したセクタが、リード要求範囲の先頭セクタであるか判定する(ステップS30)。先頭セクタである場合(Yesの場合)、MPU34は、先頭セクタのデータとしてダミーデータを補完して、データバッファ28に格納する(ステップS32)。先頭セクタでない場合(Noの場合)、MPU34は、リード動作を実行したセクタの1つ前のセクタのデータと同じデータを、当該セクタのデータとして補完し、データバッファ28に格納する(ステップS34)。つまり、1つ前のセクタでダミーデータを補完している場合は、リード動作を実行した当該セクタについてもダミーデータを補完して、データバッファ28に格納する。また、1つ前のセクタで実際に読み出されたリードデータをデータバッファ28に格納している場合は、当該セクタについては1つ前のセクタのリードデータを補完して、データバッファ28に格納する。
【0046】
ステップS28で、残留振動や外乱等が収まり、セクタからデータを正常に読み出すことができ、リードエラーが生じていない場合(Noの場合)、MPU34は、実際に読み出されたリードデータを、データバッファ28に格納する(ステップS36)。
【0047】
次に、MPU34は、ホスト38からのリード要求範囲の全てのセクタについてリード動作が完了したか否かを判定する(ステップS38)。全てのセクタについてのリード動作が完了していない場合(Noの場合)、MPU34は、次のセクタについてリード動作を実行し(ステップS40)、ステップS28からステップS36で説明した工程を実行する。
【0048】
全てのセクタについてリード動作が完了した場合(Yesの場合)、MPU34は、データバッファ28に格納したデータをホスト38に転送する(ステップS42)。
【0049】
図5に戻り、ステップS14で、オントラックに成功したと判定された場合(Yesの場合)、MPU34は、リード要求範囲の先頭セクタからデータのリード動作を実行する(ステップS44)。
【0050】
次に、MPU34は、読み出されたリードデータにエラーが生じていないか判定する(ステップS46)。そして、リード要求範囲の全てのセクタについて、リードエラーが生じていない場合(Noの場合)、MPU34は、実際に読み出されたリードデータを、データバッファ28を介してホスト38に転送する(ステップS48)。
【0051】
リードエラーが生じている場合(Yesの場合)、MPU34は、リード継続機能がONであるかOFFであるかの判定を行う(ステップS50)。リード継続機能がONである場合(Yesの場合)、前述したように、リードデータは映像データ又は音楽データに係るものであり、ある程度のデータ欠落は許される。このため、MPU34は、リードエラーが生じたセクタについては、再度のリード動作を実行することなく、ダミーデータをデータバッファ28に格納する。そして、リードエラーが生じていないセクタについては、実際に読み出されたリードデータをデータバッファ28に格納し、リード要求範囲の全てのセクタについてリード動作を実行し終えた後、データバッファ28に格納されたデータをホスト38に転送する(ステップS52)
【0052】
リード継続機能がOFFである場合(Noの場合)、前述したように、リードデータは情報処理データに係るものであり、データの欠落は許されない。このため、リード動作を再度繰り返し実行する。具体的には、MPU34は、まず、同一セクタへのリード動作回数が、規定リードリトライ回数に達しているかを判定する(ステップS54)。規定回数に到達していない場合(Noの場合)、MPU34は、再度リード動作を実行する(ステップS56)。規定回数に到達している場合(Yesの場合)、リードエラー処理を行い、リード動作を中止する(ステップS58)。
【0053】
次に、図7を用いて、MPU34が、ホスト38から9セクタに係るリード要求を受信した場合を例に、図6のステップS24からS42に示した工程の処理について説明する。
【0054】
図7のように、ホスト38からのリード要求に応じた目標のデータトラック20にヘッド12をシークし、オントラックを試みたときに、残留振動や外乱等により、リード要求範囲の先頭セクタでオントラックできない場合がある。この際、ホスト38からのリード要求に係るデータが映像データ又は音楽データである場合、先頭セクタへのオントラックのリカバリ処理を行わずに、先頭セクタからリード動作を実行する。例えば、先頭セクタから3番目のセクタまでは、残留振動や外乱等の影響が残り、オントラックができずに、リードデータにエラーが生じた場合、先頭セクタから3番目のセクタのデータとしてダミーデータを補完し、データバッファ28に格納する。そして、例えば、4番目のセクタで、残留振動や外乱等が収まり、オントラックができた場合、リードデータをデータバッファ28に格納する。そして、9セクタ全てについてリード動作が完了した後、データバッファ28に格納したデータをホスト38に転送する。
【0055】
このように、実施例1によれば、ホスト38からのリード要求に応じた目標のデータトラック20にヘッド12がオントラックされていない場合でも、リード要求範囲の先頭セクタからデータの読み出しを実行する。そして、リードデータにエラーが生じ、正常にデータが読み出せないセクタについては、ダミーデータを補完して、ホスト38に転送する。また、正常にデータが読み出せたセクタについては、リードデータをホスト38に転送する。
【0056】
これにより、目標のデータトラック20にオントラックがされていない場合でも、オントラックのリカバリ処理がなくなり、リカバリ処理での磁気ディスク10の回転待ちに起因するデータの読み出し遅延の発生が抑制できる。よって、データを連続してホスト38に転送することが可能となる。
【0057】
ホスト38に転送されるデータは、リードデータとダミーデータとが混在することになるが、前述しているように、映像データや音楽データでは、ある程度のデータ欠落があってもあまり影響がない。つまり、データトラック20から読み出すデータが映像データ又は音楽データである場合、リードデータとダミーデータとが混在しても、再生される映像や音楽にほとんど影響を与えず、映像データや音楽データを連続して処理することが可能となる。
【0058】
また、図6のステップS30からS34で説明したように、リードデータにエラーが生じて、正常にデータが読み出せないセクタが、リード要求範囲の先頭セクタである場合は、ダミーデータを補完する。また、正常にデータが読み出せないセクタが先頭セクタでない場合は、1つ前のセクタのデータと同じデータを補完する。これにより、例えば、リードエラーが生じたセクタの1つ前のセクタでは正常にデータが読み出されていた場合に、ダミーデータではなく、リードエラーが生じたセクタの本来のデータと関連性の高い1つ前のセクタのデータを補完することになり、再生される映像や音楽に与える影響をより抑制することができる。
【0059】
また、図8のように、ホスト38からのリード要求範囲に係るセクタが異なるデータトラック20に跨るような、いわゆるヘッドスイッチが発生する場合でも、図5及び図6のフローチャートを用いることができる。つまり、ヘッドスイッチに起因する残留振動や外乱により、ヘッドスイッチ後の目標のデータトラック20にオントラックできない場合でも、図5及び図6のフローチャートを実行することで、オントラックのリカバリ処理がなくなり、データの読み出し遅延の発生が抑制できる。よって、データを連続してホスト38に転送することが可能となる。
【実施例2】
【0060】
実施例2に係る磁気ディスク装置のブロック図は、実施例1に係る磁気ディスク装置100のブロック図と同じであり、図2に示しているので、ここでは説明を省略する。また、実施例2に係る磁気ディスク装置が有するMPU34は、オントラック判定部42が、リード継続機能がONである場合に、オントラックの判定基準を緩く設定して、オントラックの成否判定を行う点以外は、実施例1と同じであり、図4に示しているので、説明を省略する。
【0061】
次に、図9及び図10のフローチャートを用い、ホスト38からのリード要求に応じたリード動作について説明する。図9のように、MPU34は、ホスト38から複数セクタに係るデータのリード要求を受信すると(ステップS60)、まず、リード継続機能がONであるかOFFであるかの判定を行う(ステップS62)。
【0062】
リード継続機能がOFFである場合(Noの場合)、MPU34は、リード要求に応じた目標のデータトラック20にヘッド12をシークし(ステップS64)、オントラックを試み、オントラックが成功したかを判定する(ステップS66)。オントラックの成否の判定は、前述したように、バーストデータから得られる信号の振幅から計算されたヘッド12の位置ずれ量により判定することができる。ここで、リード継続機能がOFFということは、ホスト38からのリード要求に係るデータは情報処理データであるため、データの欠落等は許されない。したがって、オントラックの成否を判定する基準値であるヘッド12の位置ずれ量の許容範囲は、通常通りに狭く設定する。
【0063】
オントラックに失敗した場合(Noの場合)、実施例1の図5のステップS18からステップS22で説明した工程と同じように、MPU34は、再度、目標のデータトラック20へのシーク及びオントラックを試みる。具体的には、MPU34は、シーク回数が規定回数に到達しているか判定し(ステップS68)、到達していない場合(Noの場合)、目標のデータトラック20にヘッド12をシークさせて(ステップS70)、オントラックを試みる(ステップS66)。規定回数に到達している場合(Yesの場合)、MPU34は、シークエラー処理を行い、シークを中止する(ステップS72)。
【0064】
オントラックに成功したと判定された場合(Yesの場合)、MPU34は、リード要求範囲の先頭セクタからデータのリード動作を実行し(ステップS74)、読み出されたリードデータにエラーが生じていないか判定する(ステップS76)。そして、リード要求範囲の全てのセクタについて、リードデータにエラーが生じていない場合(Noの場合)、リードデータを、データバッファ28を介してホスト38に転送する(ステップS78)。
【0065】
リードデータにエラーが生じている場合(Yesの場合)、実施例1の図5のステップS54からS58で説明した工程と同じように、MPU34は、再度、リード動作を実行する。具体的には、MPU34は、リード動作回数が、規定回数に到達しているか判定し(ステップS80)、到達していない場合(Noの場合)、リードエラーが生じたセクタに対して再度リード動作を実行する(ステップS82)。規定回数に到達している場合は(Yesの場合)、リードエラー処理を行い、リード動作を中止する(ステップS84)。
【0066】
ステップS62でリード継続機能がONであると判定された場合(Yesの場合)、ホスト38からのリード要求に係るデータは、映像データ又は音楽データであることから、データにある程度欠落が生じていてもそれほど問題とならない。そこで、MPU34は、オントラックの成否を判定する判定基準を緩く設定する(ステップS86)。具体的には、バーストデータから得られる信号の振幅から計算されたヘッド12の位置ずれ量の許容範囲を大きくする。
【0067】
その後、MPU34は、リード要求に応じた目標のデータトラック20にヘッド12をシークさせ(ステップS88)、オントラックを試みる。ここで、オントラックの成否の判定基準を緩く変更しているため、通常は、オントラックが失敗したと判定されるようなヘッド12の位置ずれ量であっても、オントラックは成功したと判定されるようになる。
【0068】
その後、図10のフローチャートを実行する。図10のフローチャートに示すステップS90からステップS106の工程は、実施例1の図6に示したステップS26からステップS42の工程と同じであるため、それぞれの工程の処理については説明を省略する。
【0069】
次に、図11を用いて、MPU34が、ホスト38から9セクタに係るリード要求を受信した場合を例に、図9及び図10のステップS86からS106に示した工程の処理を説明する。
【0070】
図11のように、ホスト38から映像データ又は音楽データに係るリード要求を受信した場合、ヘッド12の位置ずれ量の許容範囲を大きくすることで、オントラックの判定基準を緩くする。これにより、残留振動や外乱等が多少生じていても影響を受けることなく、オントラックは成功したと判定されるようになる。但し、この場合、目標のデータトラック20ではなく、例えば、隣のデータトラック20にオントラックされている場合も起こり得る。その後、オントラックしているデータトラック20からデータを読み出し、読み出されたリードデータにエラーが生じてなければ、リードデータをデータバッファ28に格納する。そして、9セクタ全てについてリード動作が完了した後、データバッファ28に格納したデータをホスト38に転送する。
【0071】
このように、実施例2によれば、オントラックの成否を判定する判定基準であるヘッド12の位置ずれ量の許容範囲を大きくし、判定基準を緩く設定してオントラックの成否を判定する。これにより、残留振動や外乱等の影響に関わらず、オントラックが成功したと判定され易くなり、オントラックのリカバリ処理がなくなる。このため、リカバリ処理での磁気ディスク10の回転待ちに起因するデータの読み出し遅延が生じることを抑制できる。
【0072】
また、オントラックの成否の判定基準を緩くすることで、目標のデータトラック20ではなく、例えば、隣のデータトラック20にオントラックしている場合も起こり得る。しかしながら、前述しているように、映像データや音楽データは、ある程度データ欠落が生じても大きな問題とならないため、隣のデータトラック20のデータがホスト38に多少転送されたとしても、再生される映像や音楽はあまり影響を受けることはない。
【0073】
図12は、実施例1又は実施例2に係る磁気ディスク装置100を備えた電子装置200のブロック図である。電子装置200の例としては、電話機、オーディオ機、パソコン、HDDレコーダ等のデータを記憶する電子装置が挙げられ、特に、映像や音楽の再生に用いられる電子装置が好ましい。
【0074】
図12のように、電子装置200は、磁気ディスク装置100、コントローラ(CPU)202、及びインターフェース204を有する。これら、磁気ディスク装置100、コントローラ202、及びインターフェース204は、システムバス206により接続している。
【0075】
インターフェース204は外部との間でデータのやりとりを行う。コントローラ202は、磁気ディスク装置100内のHDC26との間の各種命令等の制御を行う。例えば、インターフェース204を介して外部から入力されたデータが、磁気ディスク装置100内の磁気ディスク10に記録されるように、HDC26に指示を出す。また、コントローラ202は、磁気ディスク10に記録されたデータを読み出すよう、HDC26に指示を出し、読み出されたデータをインターフェース204を介して外部に出力する。
【0076】
実施例1又は実施例2に係る磁気ディスク装置100は、前述しているように、残留振動や外乱等が生じても、データを連続してインターフェース204に送信することができる。このため、例えば、電子装置200が映像や音楽の再生に用いられる電子装置である場合、映像や音楽を途切れることなく連続して再生させることが可能となる。
【0077】
上述した実施例は、本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 磁気ディスク
12 ヘッド
14 ヘッドアンプ
16 ボイスコイルモータ
18 スピンドルモータ
20 データトラック
22 サーボパターン
24 リードライトチャネル
26 ハードディスクコントローラ
28 データバッファ
30 メモリ
32 サーボコントローラ
34 MPU
38 ホスト
40 ヘッド位置制御部
42 オントラック判定部
44 リード継続機能判定部
46 リトライ回数判定部
48 リード制御部
50 リードエラー判定制御部
80 ディスクエンクロージャ
90 制御ボード
100 磁気ディスク装置
200 電子装置
202 コントローラ(CPU)
204 インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体のデータトラックに記録されたデータを読み出すヘッドが、目標データトラックにオントラックするよう制御するヘッド位置制御部と、
前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされたか判定するオントラック判定部と、
前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされていない場合でも、前記目標データトラックからのデータの読み出しを行い、データが読み出せないセクタについてはダミーデータを補完するリード制御部と、
を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
前記オントラック判定部は、データトラックにオントラックされたか判定する判定基準を緩く設定して、前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされたか判定することを特徴とする請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記リード制御部は、データを読み出せないセクタがリード範囲の先頭セクタである場合はダミーデータを補完し、先頭セクタでない場合は1つ前のセクタのデータと同じデータを補完することを特徴とする請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項4】
記録媒体のデータトラックに記録されたデータを読み出すヘッドが、目標データトラックにオントラックするよう制御するヘッド位置制御工程と、
前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされたか判定するオントラック判定工程と、
前記ヘッドが前記目標データトラックにオントラックされていない場合でも、前記目標データトラックからのデータの読み出しを行い、データが読み出せないセクタについてはダミーデータを補完するリード制御工程と、
を有することを特徴とする記憶装置の制御方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の記憶装置を備えることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−225196(P2010−225196A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68272(P2009−68272)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】