説明

記憶装置、記録再生方法

【課題】
高密度に信号を記録することが可能な記憶装置、記録再生方法を提供する。
【解決手段】
実施形態の導記憶装置は、信号を記憶する記録媒体と、前記記録媒体に対して第1の方向に複数の信号を書き込むプローブと、前記プローブまたは前記記録媒体を、前記第1の方向に振動駆動する第1の駆動部と、書き込み動作前に、前記第1の駆動部が周波数を変化させて前記プローブまたは前記記録媒体を前記第1の方向に振動駆動する際に、当該振動駆動の振幅を検出し、前記振幅が最大となる前記周波数を共振周波数として検出する検出部と、書き込み動作前に、前記プローブが前記記録媒体に対して前記複数の信号を書き込むタイミングを、前記共振周波数を用いて算出する算出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置、記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブを用いて信号を記録再生する記憶装置において、信号を記録する記録媒体とプローブをx軸及びy軸方向に相対的に駆動することで、プローブの平面内での位置決めを行う必要がある。このとき、低エネルギーで大ストロークの駆動を可能とするために、x軸及びy軸方向の少なくとも1軸方向に共振駆動を用いことが提案されている。
【0003】
しかしながら、共振駆動を行う場合、この方向でのプローブの速度が位置と共に変化してしまうために、例えば等時間間隔でビットを書き込む際には、ビット間の間隔(ピッチ)に偏りが生じてしまう。そのため、高密度に信号を記録することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−48330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高密度に信号を記録することが可能な記憶装置、記録再生方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の記憶装置は、信号を記憶する記録媒体と、前記記録媒体に対して第1の方向に複数の信号を書き込むプローブと、前記プローブまたは前記記録媒体を、前記第1の方向に駆動する第1の駆動部と、書き込み動作前に、前記第1の駆動部が周波数を変化させて前記プローブまたは前記記録媒体を前記第1の方向に振動駆動する際に、当該振動駆動の振幅の変化を検出し、前記振幅が最大となる前記周波数を共振周波数として検出する検出部と、書き込み動作前に、前記プローブが前記記録媒体に対して前記複数の信号を書き込むタイミングを、前記共振周波数を用いて算出する算出部とを備える。そして、書き込み時に、前記第1の駆動部は、前記プローブまたは前記記録媒体を前記第1の方向に前記共振周波数で共振駆動し、前記プローブは前記記録媒体に対して前記タイミングで前記複数の信号を書き込む。
【0007】
実施形態の記憶装置における記録再生方法は、前記検出部が、書き込み動作前に、前記第1の駆動部が周波数を変化させて前記プローブまたは前記記録媒体を前記第1の方向に振動駆動する際にそれぞれの前記周波数での振幅を検出し、前記振幅が最大となる前記周波数を共振周波数として検出する第1のステップと、前記算出部が、書き込み動作前に、前記プローブが前記記録媒体に対して前記複数の信号を書き込むタイミングを、前記共振周波数を用いて算出する第2のステップと有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る記憶装置の概略図。
【図2】実施形態に係る記憶装置に用いるアクチュエータの上面図。
【図3】実施形態に係る記憶装置の断面図。
【図4】MPUのシステム構成図。
【図5】書き込みの様子を示す図。
【図6】ビットの偏りを説明する図。
【図7】書き込み時のフローチャート。
【図8】共振周波数のシフトを示す図。
【図9】読み出しの様子を示す図。
【図10】読み出し時のフローチャート。
【図11】時系列信号の処理を説明する図。
【図12】ビットマップの座標変換を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0010】
図1乃至図4を参照して、本実施形態に係る記憶装置100の構成について詳細に説明する。
【0011】
図1(a)に示す記憶装置100は、データ(以下、信号)を保持可能な記録媒体103と、記録媒体103との間で信号の書き込みと読み出し(以下、記録再生)を行う複数のプローブ101がマトリクス状に配列しているプローブユニット102(図1(b))と、プローブ101に対して記録媒体103を相対的に移動するためのアクチュエータ200と、記憶再生及びアクチュエータ200の駆動を制御するMPU300と、信号を一時的に保持可能なDRAM等のメモリ400とを備える。
【0012】
プローブユニット102の複数のプローブ101は、第1空間を隔てて記録媒体103と対向するように配置している。記録再生をおこなわない非記録再生時には、プローブ101と記録媒体103とは離間した状態にある。記録再生時には、アクチュエータ200が記録媒体103を移動させ、プローブ101を記録媒体103に接触させる。
【0013】
この接触した状態で、たとえば、プローブ101の電極に所定の電圧を加えることにより、プローブ101と記録媒体103との間で信号の記録再生を行う。
【0014】
記録媒体103は、例えば電気的な状態変化を信号として保持することのできる薄膜である。
【0015】
本実施形態では、アクチュエータ200として、3軸(x、y、z軸)に駆動可能な静電駆動型のアクチュエータを用いる。このうちx軸方向へは低電圧で大きなストロークを得るために共振駆動を行い、y軸及びz軸方向へは一方向に並進駆動を行う。
【0016】
図2に示すアクチュエータ200は、記録媒体103を載置するための矩形状平板のステージ(可動部)201と、ステージ201の周囲に第2空間を介して設けられる可動フレーム202と、可動フレーム202の周囲に第3空間を介して設けられる固定フレーム203とを備える。
【0017】
固定フレーム203は、導電性の支持部材213、214、215及び216により可動フレーム202を支持している。また、可動フレーム202は、導電性の支持部材217によりステージ201を支持している。
【0018】
ステージ201の平面が図2に示すxy平面に沿って配置されるものとすると、第2空間には第1駆動部204が設けられて、ステージ201を図2中x軸方向に共振駆動する。第3空間には第2駆動部205が設けられて、ステージ201及び可動フレーム202を一体にy軸方向に駆動する。また、第1空間には、第3駆動部206が設けられて、ステージ201をz軸方向に駆動する。
【0019】
第1駆動部204は、それぞれ同一の矩形状で等間隔に一列(y軸方向)に配置している複数の第1可動部電極207及び複数の第1固定部電極208を備える。ステージ201の側面に設けられる複数の第1可動部電極207と、可動フレーム202の側面に設けられる複数の第1固定部電極208とは、それぞれ第2空間内でx軸方向に突出している。この場合、第1可変部電極207と第1固定部電極208とは、電極間隔の1/2だけy軸方向にずれて、互いに噛み合う配置が好ましい。
【0020】
この第1駆動部204は、隣接する第1可動部電極207と第1固定部電極208との間に働くx軸方向の静電力によりステージ201をx軸方向に移動する。この際、前述の通りx軸方向にはステージ201の共振駆動を行う。
【0021】
第2駆動部205は、それぞれ同一の矩形状で等間隔に一列(x軸方向)に配置している複数の第2可動部電極209及び複数の第2固定部電極210を備える。可動フレームの側面に設けられる複数の第2可動部電極209と、固定フレーム203の側面に設けられる複数の第2固定部電極210とは、それぞれ第3空間内でy軸方向に突出している。この場合、第2可動部電極209と第2固定部電極210とは、電極間隔の1/2だけx軸方向にずれて、互いに噛み合う配置が好ましい。
【0022】
この第2駆動部205は、隣接する第2可動部電極209と第2固定部電極210との間に働くy軸方向の静電力によりステージ201及び可動フレーム202を一体にy軸方向に移動する。
【0023】
なお、本実施形態においては、ステージ201、可動フレーム202、固定フレーム203は具体的には、第1可動部電極207と第1固定部電極208とが電気的に絶縁関係に、第2可動部電極209と第2固定部電極210とが電気的に絶縁関係となるように構成される。
【0024】
第3駆動部206は、ステージ201上の周辺部に設けられる矩形状の第1平板電極211と、第1空間を介してステージ201に対向するプローブユニット102に設けられる矩形状の第2平板電極212とが互いに、中心軸を共有して対向して配置される(図3)。
【0025】
この第3駆動部206は、第1平板電極211と第2平板電極212との間に働くz軸方向の静電力によりステージ201をz軸方向に移動して、プローブ101と記録媒体103とを接触状態にする。
【0026】
キャップ105は、例えばボンディング部106によりアクチュエータ200に接合され、記録媒体103をパッケージしている。このキャップ105はアクチュエータ200と電気的に絶縁関係である必要があるため、ボンディング部106には絶縁性の材料が好ましい。
【0027】
位置センサ104は、ステージ201の記録媒体103を設ける面の裏面の四隅に設ける平板電極と、キャップ105の四隅に設けられる平板電極とがそれぞれ互いに向かい合わせて配置される。そして、この平板電極間の対向面積あるいは距離等の変化により生じる静電容量の変化により、ステージ201のx、y、z軸方向の変位を計測する。
【0028】
なお、第1駆動部204、第2駆動部205及び第3駆動部206としては、静電駆動型のアクチュエータに限定されるものではなく、例えば磁気駆動型や圧電駆動型のアクチュエータなどを用いることも可能である。
【0029】
また、第3駆動部206によるステージ201のz軸方向への駆動に変えて、プローブ101を単体であるいは複数同時にz軸方向に駆動することで、プローブ101と記録媒体103を接触あるいは非接触状態にすることができる。
【0030】
図4は、MPU300のシステム構成図である。
【0031】
MPU300は、ステージ201の共振周波数を検出する検出部301、各駆動部の駆動及びプローブ101の電圧印加を担う制御部302と、記録時にプローブ101の書き込みタイミングを算出する算出部303と、書き込まれた信号(ビット)を読み出す際にビットの配置を再現するマッピング部304と、最終的にビットを識別して信号を再生する再生部305とから構成される。
【0032】
以下、図5乃至図12を参照して、MPU300の動作の説明を行う。なお、ここでは、第3駆動部206がステージ201をz軸方向に移動し、プローブ101と記録媒体103とは接触状態にあるものとする。
【0033】
(書き込み)
図5は、1つのプローブ101が記録再生を担う領域(記録エリア)内での、プローブ101の書き込みの様子を示す図である。なお、ここでは、黒塗りのビットが記録あり(1)の状態、白抜きのビットが記録なし(0)の状態を示している。
【0034】
記録時には、プローブ101はx軸方向に振幅dで共振駆動されており、この方向にn0-1個の1行分のビットを書き込む。そして、x軸方向に1行書き込んだ後は、プローブ101をy軸方向にピッチpyだけ送り、再びx軸方向にn0-1個の1行分のビットを書き込む。
【0035】
ここで、共振駆動においてプローブ101のx軸方向の速度は位置と共に変化するため、例えばプローブ101が等時間間隔でビットを書き込む場合、x軸方向のビットには偏りが生じることになる(図6)。
【0036】
具体的には、x=0及びx=dにおいてはプローブ101の速度は0となり、x=d/2において速度は最大となる。したがって、ビットは振幅の中央では疎に、両端では密に書き込まれる。
【0037】
記録密度を向上させるためには、隣接するビット同士が重ならない範囲でビット間の間隔(ピッチ)をできる限り小さくし、等距離間隔で書き込むことが好ましい。
【0038】
そこで、本実施形態においては、x軸方向のピッチpxを予め一定(等距離間隔)に定め、このピッチpxでn0-1個の1行分のビットを書き込むために、共振周波数を用いて、プローブ101がn0-1個の1行分のビットを書き込むタイミングを調節する。
【0039】
図7はビットの書き込み時のフローチャートである。
【0040】
(検出部)
検出部301は、第1駆動部204の共振駆動に先駆けて、ステージ201の共振周波数及び振幅を検出する(S101)。
【0041】
ステージ201の設計上の共振周波数をf0とするとき、周波数fで一定電圧を印加してステージ201を駆動する場合のステージ201の振幅dは、図8に示す実線のようになる。すなわち、周波数f=f0の場合に振幅dが共振により拡大する。これにより共振駆動が可能となる。
【0042】
しかしながら、共振周波数は環境温度などの影響により変化してしまうことがある。ここで、仮に共振周波数が上記の設計上の共振周波数f0からf’0にシフトしたものとすると、この場合には電圧を印加する周波数fとステージ201の振幅dとの関係は、図8に示す破線のようになる。
【0043】
そこで、検出部301はこのf’0を検出するために、設計上の共振周波数f0を中心として索引領域(図8中斜線部分)を定める。この索引領域の範囲は予め与えることができ、本実施形態においては0.9f0〜1.1f0の範囲である。
【0044】
次に、検出部301は第1駆動部204に対する電圧印加の周波数を、索引領域の範囲(すなわち、0.9f0〜1.1f0)内で微小なピッチに分割し、この分割された周波数毎の電圧を印加することで、第1駆動部204を振動駆動する。
【0045】
そして、検出部301はこの際のステージ201の振幅dを常時位置センサ104により計測することで、最大の振幅dを検出し、この振幅dを得る際の周波数fをステージ201の共振周波数f’0として検出する。
【0046】
(算出部)
算出部303は、上述のS101において検出部301が検出したステージ201の共振周波数f’0を用いて、プローブ101の書き込みタイミングを算出する(S102)。
【0047】
ステージ201の共振周波数f’0の場合、プローブ101が記録エリアのx軸方向に1往復するのに要する時間、すなわち共振の周期Tは、T=1/f’0で与えられる。したがって、プローブ101がビット1行書き込むのに要する時間は、T/2=1/(2f’0)となる。
【0048】
また、ここでは、定常時にプローブ101が存在する位置を共振駆動の際の中心点と見なすことができるため、この中心点から共振駆動の振幅dの1/2だけ左に離れた点を基準点(共振駆動の開始位置)とすることができる。なお、ここでの位置とは、座標上での位置を表す情報を示している。
【0049】
このとき、時刻t=0~1/(2f’0)までの間に、プローブ101が順にビットを書き込んでいく場合、時刻tにおけるプローブ101の上記の基準からの位置xは、次式で与えられる。
【数1】

【0050】
一方、上述のように、記録エリアの1行にn0-1個のビットを等しいピッチpxで書き込むと仮定した場合、左からn番目のビットの位置xnは、次式で与えられる。
【数2】

【0051】
(数1)で表されるプローブ101の位置xが、(数2)で表される位置xnに一致するタイミングで書き込むことで、記録エリアの1行に書き込まれるn0-1個のビットは等距離間隔となる。
【0052】
したがって、算出部303は、まず、検出部301から共振駆動の振幅dを得て、共振駆動の開始位置を算出する。そして、上記の開始位置を基準として、(数2)によりビットを書き込む位置xnと、(数1)により時刻tにおけるプローブ101の位置xを算出し、次式によりx=xnとなる時刻tnを書き込みタイミングとして算出する。
【数3】

【0053】
(制御部)
制御部302は、算出部303から共振駆動の開始位置を得て、ステージ201が定常位置からx軸正の方向にd/2だけ移動するように第1駆動部204を駆動する。また、定常位置からy軸負の方向に予め定められた量だけ移動するように第2駆動部205を駆動する。ここでは、この状態でのプローブ101の位置を書き込み開始位置とする(S103)。
【0054】
次に、制御部302は、第1駆動部204に対して共振周波数f’0で電圧を印加することで、第1駆動部204を共振駆動する(S104)。このとき、共振駆動の開始時点を時刻t0として、時刻1/(2f’0)までのカウントを行う。
【0055】
そして、制御部302は、(数3)で与えられる書き込みタイミングに従い、プローブ101に対して電圧を印加することで、プローブ101は左から順にn=1~n0-1までのビット、すなわち記録エリア1行分のビットを書き込む(S105)。
【0056】
上記に次いで、制御部302は、ステージ201をy軸正の方向にpyだけ移動するように第2駆動部205を駆動し、プローブ101を相対的にy軸負の方向にpyだけ送る(S106)。そして、この状態を時刻t0として、時刻1/(2f’0)までのカウントを再度行い、右から順にn=1~n0-1までの1行分のビットを書き込む。
【0057】
上述のS104からS106までのプロセスを、プローブ101が記録エリア内の全てにビットを書き込むまで繰り替えし行う。
【0058】
なお、上記のように書き込まれるビットは、各駆動部や制御部302へのノイズなどの影響で厳密に等距離間隔とはならずに、ばらつきが生じることになる。しかしながら、このばらつきがビット間隔pyの例えば10%以内に収まっていれば、後述の読み出し時に大きな影響を与えることがないといえる。
【0059】
(読み出し)
図9は、1つのプローブ101が記録再生を担う領域(記録エリア)内での、プローブ101の読み出しの様子を示す図である。
【0060】
再生時には、プローブ101は、x軸方向に振幅dで共振駆動されており、同時に半周期毎に、y軸方向にピッチp’yだけ送られる。このp’yは、ビットのy軸方向のサイズに比べて充分に小さいことが好ましい。
【0061】
そして、プローブ101は、この駆動の間に等時間間隔で読み出しを行い、記録なし状態のビットの領域及びビットが形成されていない領域では0と判定し、記録あり状態のビットの領域では1と判定する。この判定結果は、ビットの配置を再現するビットマップとしてメモリ400に格納される。
【0062】
このとき、記録時と同様に、プローブ101はx軸方向に共振駆動されているために、プローブ101の速度が位置と共に正弦的に変化する。このため、位置によって読み出し時間に違いが生じることで、読み出されるビットには偏りが生じる。また、同様の理由から読み出されるビットの形状はx軸方向に歪みを生じる。
【0063】
このため、読み出されたビットが実際に書き込まれたものであることを識別する際に、誤って識別してしまうことが考えられる。
【0064】
そこで、本実施形態においては、上記のビットマップの座標変換を行うことで、ビットの形状及びビット間の間隔の補正を行う。
【0065】
図10はビットの読み出し時のフローチャートである。
【0066】
(検出部)
検出部301は、書き込み時と同様に、第1駆動部204の共振駆動に先駆けて、ステージ201の共振周波数を検出する(S201)。
【0067】
すなわち、検出部301はこのf’0を検出するために、設計上の共振周波数f0を中心として索引領域を定める。この索引領域の範囲は予め与えることができる。
【0068】
次に、検出部301は第1駆動部204に対する電圧印加の周波数を、索引領域の範囲内で微小なピッチに分割し、この分割された周波数毎の電圧を印加することで、第1駆動部204を駆動する。
【0069】
そして、検出部301はこの際のステージ201の振幅dを常時位置センサ104により計測し、振幅dが最大となる周波数fをステージ201の共振周波数f’0として検出する。
【0070】
(制御部)
制御部302は、算出部303から共振駆動の開始位置を得て、ステージ201が定常位置からx軸正の方向にd/2だけ移動するように第1駆動部204を駆動する。また、定常位置からy軸負の方向に予め定められた量だけ移動するように第2駆動部205を駆動する。ここでは、この状態でのプローブ101の位置を読み出し開始位置とする(S202)。
【0071】
次に、第1駆動部204に対して共振周波数f’0で電圧を印加することで、第1駆動部204を共振駆動する(S203)。
【0072】
また、同時に制御部302は、プローブ101に対しては常時電圧を印加することで、プローブ101が通過する1行分の領域の記録状態を判定し、記録ありの場合には1、記録なしの場合には0を時系列の信号として、メモリ400に格納する(S204)。
【0073】
上記に次いで、制御部302は、ステージ201をy軸正の方向にp’yだけ移動するように第2駆動部205を駆動し、プローブ101を相対的にy軸負の方向にp’yだけ送る(S205)。そして、逆方向に向けてプローブ101が通過する1行分の領域の記録状態を判定する。
【0074】
上述のS203からS205までのプロセスを、プローブ101が記録エリア内の全ての領域の記録状態を判定するまで繰り替えし行う。
【0075】
(マッピング部)
マッピング部304は、S201において検出部301が検出したステージ201の共振周波数f’0、S203からS205までの繰り返しプロセスにおいて制御部302がメモリ400に格納した記録状態の時系列信号を用いて、ビットマップを生成する(S206)。なお、このビットマップはメモリ400に格納する。
【0076】
まず、図11に示す時系列信号において、時刻t=0~1/(2f’0)間に獲得した信号を1行目、時刻t=1/(2f’0)~1/f’0間に獲得した信号を2行目(以下、その繰り返し)と分割する。そして、偶数行目の信号を反転させて、1行目から順に信号をy軸方向に積み重ねることで2次元の時系列信号を得る。
【0077】
この際、図12(a)に示すように読み出されたビットの形状及びビット間の間隔にはx軸方向に歪みや偏りが生じている。
【0078】
ただし、同一のビットが書き込まれる時刻(数3)と読み出される時刻とは等しいため、具体的には、上記の2次元の時系列信号において左からn番目のビットの位置Xnは、次式で表される。
【数4】

【0079】
一方で、左からn番目のビットが実際に存在している位置xnは、書き込み時の(数2)と同様に次式で表される。
【数5】

【0080】
したがって、2次元の時系列信号でのビットの位置Xnと実際のビットの位置xnとには次式で表される関係がある。
【数6】

【0081】
そこで、マッピング部304は、(数6)の関係から得られる次式により、共振駆動の開始位置を基準として、2次元の時系列信号の座標変換を行うことで、ビットの配置を再現するビットマップを生成する(図12(b))。
【数7】

【0082】
上記の座標変換により、ビットの形状及びビット間の間隔を補正することができ、ビットの配置を正確に再現したビットマップを生成することができる。
【0083】
(再生部)
再生部305は、マッピング部304が生成するビットマップにおいて、ビットを識別することで信号の再生を行う(S207)。このとき、マッピング部304が生成した正確なビットマップを用いることで、高精度に信号の再生を行うことができる。
【0084】

以上説明した実施形態の記憶装置、記録再生方法によれば、信号を高密度に記録することが可能となる。
【0085】
この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
100・・・記憶装置
101・・・プローブ
102・・・プローブユニット
103・・・記録媒体
104・・・位置センサ
105・・・キャップ
106・・・ボンディング部
200・・・アクチュエータ
201・・・ステージ
202・・・可動フレーム
203・・・固定フレーム
204・・・第1駆動部
205・・・第2駆動部
206・・・第3駆動部
207・・・第1可動部電極
208・・・第1固定部電極
209・・・第2可動部電極
210・・・第2固定部電極
211・・・第1平板電極
212・・・第2平板電極
213、214、215、216、217・・・支持部材
300・・・MPU
301・・・検出部
302・・・制御部
303・・・算出部
304・・・マッピング部
305・・・再生部
400・・・メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を記憶する記録媒体と、
前記記録媒体に対して第1の方向に複数の信号を書き込むプローブと、
前記プローブまたは前記記録媒体を、前記第1の方向に振動駆動する第1の駆動部と、
書き込み動作前に、前記第1の駆動部が周波数を変化させて前記プローブまたは前記記録媒体を前記第1の方向に振動駆動する際に、当該振動駆動の振幅の変化を検出し、前記振幅が最大となる前記周波数を共振周波数として検出する検出部と、
書き込み動作前に、前記プローブが前記記録媒体に対して前記複数の信号を書き込むタイミングを、前記共振周波数を用いて算出する算出部と、
を備え、
書き込み時に、前記第1の駆動部は、前記プローブまたは前記記録媒体を前記第1の方向に前記共振周波数で振動駆動し、前記プローブは前記記録媒体に対して前記タイミングで前記複数の信号を書き込む記憶装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記信号の書き込み開始位置情報を、前記検出部が検出した前記振幅を用いて算出し、前記書き込み開始位置情報に基づいて前記タイミングを算出する請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記タイミングとして、前記信号の書き込み位置情報が、前記書き込み開始位置情報から前記第1の方向に等距離間隔となるような複数の時刻を算出する請求項1または2記載の記憶装置。
【請求項4】
前記プローブは前記記録媒体に対して信号の読み出しを行い、
前記算出部は、前記信号の読み出し開始位置情報を、前記検出部が検出した前記振幅を用いて算出し、
前記読み出し開始位置情報に基づいて前記信号の読み出し位置情報を補正するマッピング部と、
をさらに備える請求項1乃至3いずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項5】
前記プローブまたは前記記録媒体を前記記録媒体の水平面内で前記第1の方向とは異なる第2の方向に駆動する第2の駆動部と、
前記プローブまたは前記記録媒体を前記第1の方向と前記第2の方向とに略直交する前記第3の方向に駆動する第3の駆動部と、
をさらに備える請求項1乃至4いずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項6】
請求項4記載の記憶装置における記録再生方法であって、
前記算出部が、前記信号の読み出し開始位置情報を、前記検出部が検出した前記振幅を用いて算出するステップと、
前記マッピング部が、前記読み出し開始位置情報に基づいて前記信号の読み出し位置情報を補正するステップと、
を有する記録再生方法。
【請求項7】
請求項6記載の記録再生方法、あるいは請求項1記載の記憶装置における記録再生方法であって、
前記検出部が、書き込み動作前に、前記第1の駆動部が周波数を変化させて前記プローブまたは前記記録媒体を前記第1の方向に振動駆動する際にそれぞれの前記周波数での振幅を検出し、前記振幅が最大となる前記周波数を共振周波数として検出する第1のステップと、
前記算出部が、書き込み動作前に、前記プローブが前記記録媒体に対して前記複数の信号を書き込むタイミングを、前記共振周波数を用いて算出する第2のステップと、
を有する記録再生方法。
【請求項8】
前記第2のステップは、前記算出部が、前記信号の書き込み開始位置情報を、前記検出部が検出した前記振幅を用いて算出し、前記書き込み開始位置情報に基づいて前記タイミングを算出する請求項7記載の記録再生方法。
【請求項9】
前記第2のステップは、前記算出部が、前記タイミングとして、前記信号の書き込み位置情報が、前記書き込み開始位置情報から前記第1の方向に等距離間隔となるような複数の時刻を算出する請求項7または8記載の記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−203971(P2012−203971A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69143(P2011−69143)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)