説明

記憶装置及びそのアダプタ

【課題】ホスト側の電源が切られても、当該ホストに接続された脱着式記憶装置の取り外し忘れをユーザに警告可能にする。
【解決手段】 USBフラッシュメモリ20は、USBコネクタ30、電圧監視回路60、コンデンサ80、ブザー90を備えている。USBコネクタ30をホストコンピュータPCに接続すると、USBコネクタ30を介して、USBフラッシュメモリ20にバスパワー電源が供給される。電圧監視回路60がこれを検知すると、バスパワー電源によりコンデンサ80が充電される。そして、ホストコンピュータPCの電源がOFFになり、電圧監視回路60がこれを検知すると、充電した電源により、ブザー90が鳴動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置からバスパワー電源を受け付け可能な記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、プリンタ等(ホスト)に脱着可能な記憶装置(以下、脱着式記憶装置という)、例えば、USBメモリが普及している。かかる記憶装置は、ホストに接続することで、データの読み書きを行うことができ、データの持ち運びにも便利である。一方で、脱着式記憶装置は、その利用後に取り外しを忘れたまま放置すると、記憶したデータが他人に漏洩する危険性があった。
【0003】
かかる課題に対して、ホストがUSBコネクタの接続状態を検知し、ホストの実行状態に応じて、接続されたUSBメモリの取り外しについて警告表示する技術が開発されている(例えば、下記特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−107376号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、警告表示は、ホスト側のプログラムにより実行されるため、パーソナルコンピュータのように、作業終了時に電源を切ってしまうホストへの適用は困難であった。かかる問題は、USBメモリに限らず、脱着式記憶装置に共通する問題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、ホスト側の電源が切られても、当該ホストに接続された脱着式記憶装置の取り外し忘れをユーザに警告可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]記憶装置であって、
外部装置に接続され、該外部装置から前記記憶装置にバスパワー電源を受け付け可能なインタフェースと、
該インタフェースを介して行われる前記バスパワー電源の供給の状態を監視する監視部と、
前記バスパワー電源の供給が停止された際に電源となる電池部と、
前記監視部が前記バスパワー電源の供給の停止を検知した際に、前記電池部の電源を用いて、前記供給の停止を報知する報知部と
を備えた記憶装置。
【0009】
かかる構成の記憶装置は、監視部がバスパワー電源の供給の停止を検知した際に、電池部の電源を用いて、バスパワー電源の供給の停止を報知するので、外部装置の電源が切られても、外部装置からの記憶装置の取り外し忘れをユーザに警告することができる。
【0010】
なお、本願において、記憶装置とは、記憶媒体と記憶媒体へのデータの書き込み等を行う記憶媒体制御装置とを一体的に備えた装置、例えば、USBフラッシュメモリ、外付けハードディスクドライブ等の種々の装置と、記憶媒体と脱着可能に接続でき、当該記憶媒体へのデータ書き込み等を行う制御装置、例えば、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ、ブルーレイドライブ、メモリカードリーダ等の種々の装置とを併せた総称である。
【0011】
[適用例2]前記電池部は、前記バスパワー電源が供給された際に、該バスパワー電源を予め充電しておくコンデンサである適用例1記載の記憶装置。
かかる構成の記憶装置は、バスパワー電源を予めコンデンサに充電しておき、報知部の電源として用いるので、簡単でコンパクトな構成とすることができる。また、ユーザは、電池の交換作業や充電作業を行う必要がないので、利便性が向上する。
【0012】
[適用例3]前記報知部は、圧電ブザーである適用例1または適用例2記載の記憶装置。
かかる構成の記憶装置において、報知部は、圧電ブザーであるから、簡単かつコンパクトな構成で、効果的な警告をユーザに対して行うことができる。
【0013】
[適用例4]バスパワー電源を受け付け可能なインタフェースを備えた記憶装置に脱着可能なアダプタであって、外部装置に接続され、該外部装置から前記アダプタにバスパワー電源を受け付け可能な第1のインタフェースと、前記記憶装置に接続され、前記受け付けたバスパワー電源を前記記憶装置に供給する第2のインタフェースと、該第1のインタフェースを介して行われる前記バスパワー電源の供給の状態を監視する監視部と、
前記バスパワー電源の供給が停止された際に電源となる電池部と、前記監視部が前記バスパワー電源の供給の停止を検知した際に、前記電池部の電源を用いて、前記供給の停止を報知する報知部とを備えたアダプタ。
【0014】
かかる構成のアダプタも、適用例1と同様の作用効果を奏することができる。また、当該アダプタを接続するだけで、既存の記憶装置に取り外し忘れ警告機能を付加することができるので、汎用性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例について説明する。
A.USBフラッシュメモリ20の装置構成:
図1は、本発明の実施例としてのUSBフラッシュメモリ20の概略構成を示す説明図である。USBフラッシュメモリ20は、USBコネクタ30、コントローラ40、フラッシュメモリ50、電圧監視回路60、コンデンサ80、ブザー90を備えており、それぞれが内部バスで接続されている。また、電圧監視回路60とブザー90との間には、トランジスタ72、ダイオード74、抵抗器76、及びトランジスタ78を備えている。
【0016】
USBコネクタ30は、バスパワー電源(以下、単に電源という)の利用が可能なシリアルインタフェースであり、USBポートを備えたホストコンピュータPCに接続される。本実施例では、USBコネクタ30と、ホストコンピュータPCが備えるUSBポート(図示せず)とを接続することにより、5Vの電源がUSBフラッシュメモリ20側に供給される。
【0017】
コントローラ40は、図示しないCPU、ROM、RAM等からなり、接続されたホストコンピュータPCから送出される信号に基づいて、フラッシュメモリ50へのデータの書き込み等、USBフラッシュメモリ20の動作全般を制御する。フラッシュメモリ50は、ブロック単位でデータの消去を行う不揮発性メモリであり、本実施例では、大容量化に適したNAND型のフラッシュメモリとした。
【0018】
電圧監視回路60は、USBコネクタ30を介して供給される電源の供給状態を監視する回路であり、VBUS−GND間の電圧測定回路を備えているほか、後述する所定の機能を果たす。トランジスタ72は、P型電界効果トランジスタである。電圧監視回路60は、USBフラッシュメモリ20に電源が供給されている時(本実施例では、電圧監視回路60が検知した電圧が2.5V以上である時)には、ゲート電圧Vgをソース電圧Vsよりも所定値以上に負電圧として、トランジスタ72をON(導通)にする。また、USBフラッシュメモリ20への電源供給が停止した時(本実施例では、検知した電圧が2.5V未満である時)には、ゲート電圧Vgをソース電圧Vsよりも所定値未満の負電圧または0Vとして、トランジスタ72をOFF(非導通)にする。
【0019】
トランジスタ78は、NPNトランジスタであり、本実施例では、ベース電圧Vbが2.5V以上になるとONとなる。コンデンサ80は、トランジスタ72がONとなった際に、トランジスタ72及びダイオード74を介して供給される電源を充電する。ブザー90は、圧電ブザーであり、本実施例では、圧電素子と金属板を張り合わせた圧電振動板が、共鳴器を設けたケースに支持固定されている。
【0020】
B.USBフラッシュメモリ20の動作
USBフラッシュメモリ20の動作について説明する。まず、USBフラッシュメモリ20の使用時の動作について図1を用いて説明する。USBフラッシュメモリ20のUSBコネクタ30をホストコンピュータPCのUSBポートに接続すると、USBコネクタ30を介して、USBフラッシュメモリ20に電源が供給される。これにより、コントローラ40は、フラッシュメモリ50にアクセス可能となり、ユーザは、ホストコンピュータPCを操作して、フラッシュメモリ50に対してデータの読み書きを行うことができる。また、電源が供給されると、電圧監視回路60は、電圧2.5V以上を検知し、トランジスタ72をONとする。なお、トランジスタ72のON/OFFの閾値は、2.5Vに限るものではないことは勿論である。
【0021】
トランジスタ72がONとなると、トランジスタ72及びダイオード74を介して、コンデンサ80に電荷が蓄えられ、充電される。電圧監視回路60は、トランジスタ78がONとならない程度に、抵抗器76で電圧降下するように抵抗値が設定されている。このとき、トランジスタ78はOFFであるため、ブザー90には電流は流れない。
【0022】
次に、ホストコンピュータPCの電源OFF時におけるUSBフラッシュメモリ20の動作について図2を用いて説明する。ユーザがUSBフラッシュメモリ20へのデータの読み書きを終了し、ホストコンピュータPCの電源をOFFにすると、USBフラッシュメモリ20への電源の供給が停止される。電源の供給が停止されると、電圧監視回路60は、電圧2.5V未満を検知し、トランジスタ72をOFFとする。図2では、このときの状態をトランジスタ72とダイオード74との間のバスを点線表示することで示している。また、電圧監視回路60は、電圧2.5V未満を検知したとき、図示しないスイッチにより、抵抗器76とグランド(GND)との接続をOFFにする。図2では、このときの状態を電圧監視回路60と抵抗器76との間のバスを点線表示することで示している。
【0023】
上述の接続状態になると、トランジスタ78のベース電圧Vbが2.5V以上となり、トランジスタ78がONとなる。その結果、コンデンサ80の電位差によりブザー90に電流が流れ、ブザー90が鳴動する。このようにして、USBフラッシュメモリ20は、電源の供給停止を報知する。
【0024】
かかる構成のUSBフラッシュメモリ20は、ホストコンピュータPCと接続され、電源の供給を受けている際に、コンデンサ80を予め充電しておく。そして、ホストコンピュータPCの電源がOFFとなると、充電した電源によりブザー90が一定時間鳴動し、電源の供給停止を報知する。したがって、ホストコンピュータPCの電源をOFFにした際、ユーザに対して、USBフラッシュメモリ20の取り外し忘れを警告することができる。
【0025】
また、かかる構成のUSBフラッシュメモリ20は、バスパワー電源を予めコンデンサ80に充電しておき、ブザー90を鳴動させるための電源として用いるので、一次電池、二次電池等を備える必要がない。その結果、USBフラッシュメモリを20簡単でコンパクトな構成とすることができる。また、ユーザは、電池の交換作業や充電作業を行う必要がないので、利便性が向上する。また、かかる構成のUSBフラッシュメモリ20は、報知手段として圧電ブザーを用いているので、簡単かつコンパクトな構成によって効果的な警告を行うことができる。
【0026】
C.変形例:
上述の実施例の変形例について説明する。
C−1.変形例1:
上述の実施形態に示した回路構成は一例であり、特に限定するものでないことは勿論である。電圧監視回路60、トランジスタ72、ダイオード74、抵抗器76、トランジスタ78、コンデンサ80の全部または一部は、コントローラ40に含まれていてもよいし、同等の機能を発揮するものであれば、別の回路構成であってもよい。また、ハードウェア構成の一部または全部をソフトウェアで実現する構成としてもよい。
【0027】
C−2.変形例2:
上述の実施形態においては、外部装置からバスパワー電源を受け付け可能なインタフェースとして、USBコネクタを備えたUSBフラッシュメモリ20の構成について示したが、当該インタフェースは、特に限定するものではなく、IEEE1394等などであってもよい。
【0028】
C−3.変形例3:
上述の実施形態においては、ブザー90を鳴動させる電源として、バスパワー電源をコンデンサ80に予め充電しておくUSBフラッシュメモリ20の構成について示したが、当該電源は、特に限定するものではない。例えば、USBフラッシュメモリ20は、ブザー90の鳴動用に、一次電池、二次電池等の種々の化学電池、太陽電池等の物理電池などを備える構成としてもよい。
【0029】
C−4.変形例4:
上述の実施形態においては、電源供給停止時にブザー90を鳴動させるUSBフラッシュメモリ20の構成を示したが、本発明は、既存のUSBフラッシュメモリ20が備えるUSBコネクタに脱着可能なアダプタとして実現することもできる。例えば、当該アダプタは、ホストコンピュータPCのUSBポートと接続可能なUSBコネクタ(適用例4の第1のインタフェースに該当)と、既存のUSBフラッシュメモリのUSBコネクタと接続可能なUSBポート(適用例4の第2のインタフェースに該当)と、当該USBコネクタ及びUSBポートの対応する各ピンを接続する内部バスのうちのVBUS及びGND用の内部バスに、実施例で示した電圧監視回路60、トランジスタ72、ダイオード74、抵抗器76、トランジスタ78、コンデンサ80及びブザー90を備えた回路が接続された構成としてもよい。かかるアダプタを既存のUSBフラッシュメモリに装着し、さらにホストコンピュータPCに接続すれば、実施例と同様の作用効果を奏することができる。また、既存のUSBフラッシュメモリにも取り外し忘れ警告機能を付加することができるので、汎用性に優れる。
【0030】
C−5.変形例5:
上述の実施形態においては、VBUS用の内部バスに接続された電圧監視回路60により電源の供給停止を検知する構成としたが、電源の供給停止を監視する構成は、特に限定するものではない。例えば、VBUS用の内部バスの周りを周回するように、または、近傍にコイルを設けて、電源の供給停止による磁場変化をコイル検知する構成としてもよい。かかる場合、本発明は、例えば、バスパワー電源の供給状態を監視する検知コイルと、バスパワー電源の供給が停止された際に電源となる電池部と、検知コイルがバスパワー電源の供給の停止を検知した際に、電池部の電源を用いて、供給の停止を報知するブザー90とを備えた記憶装置の付属品としても実現することができる。かかる付属品は、例えば、USBメモリの筐体に嵌合可能なキャップや、USBフラッシュメモリに付属させるストラップなどとすることができる。
【0031】
C−6.変形例6:
上述の実施形態においては、ホストコンピュータPCの電源がOFFとなった際に、USBフラッシュメモリ20のブザー90が鳴動する構成について示したが、ホストコンピュータPCがシステムスタンバイやシステム休止状態になった際にも、バスパワー電源の供給が停止されれば、ブザー90が鳴動することとなる。かかる場合には、ユーザは、ホストコンピュータPCのシステムを再度立ち上げて、USBフラッシュメモリ20をホストコンピュータPCから抜いてもよい。
【0032】
C−7.変形例7:
上述の実施形態においては、USBフラッシュメモリ20は、ブザー90を鳴動させることにより、ユーザに対して、電源の供給停止を報知する構成としたが、ブザー90は、実施例に示した圧電ブザーに限らず、電子ブザーなど種々のブザーとすることができる。もとより、ブザー90に代えて、種々の報知手段により、電源の供給停止を報知してもよい。例えば、USBフラッシュメモリ20が種々の発光装置(例えば、LED)を備え、当該発光装置を点灯・点滅等させることにより報知する構成としてもよいし、USBフラッシュメモリ20がスピーカを備え、所定の警告音や音声ガイダンスなどにより報知する構成としてもよい。
【0033】
C−8.変形例8:
上述の実施形態においては、本発明の記憶装置の実施形態として、USBフラッシュメモリ20としての構成を例示したが、本発明の記憶装置は、USBフラッシュメモリに限るものではなく、バスパワー電源により動作するものであれば、外付けハードディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ、ブルーレイドライブ、メモリカードリーダ等、種々の記憶装置として実現することができる。
【0034】
また、上述の実施形態においては、USBフラッシュメモリ20に接続するホストとして、コンピュータの例を示したが、本発明の記憶装置に接続するホストは、プリンタ、FAX、各種デジタル家電など作業終了時に電源を切る場合がある種々の外部装置とすることができる。
【0035】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、上述の実施例や変形例に示した構成を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】USBフラッシュメモリ20の概略構成を示す説明図である。
【図2】USBフラッシュメモリ20へのバスパワー電源供給停止時におけるUSBフラッシュメモリ20の構成部品の電気的接続状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
20…USBフラッシュメモリ
30…USBコネクタ
40…コントローラ
50…フラッシュメモリ
60…電圧監視回路
72…トランジスタ
74…ダイオード
76…抵抗器
78…トランジスタ
80…コンデンサ
90…ブザー
PC…ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置であって、
外部装置に接続され、該外部装置から前記記憶装置にバスパワー電源を受け付け可能なインタフェースと、
該インタフェースを介して行われる前記バスパワー電源の供給の状態を監視する監視部と、
前記バスパワー電源の供給が停止された際に電源となる電池部と、
前記監視部が前記バスパワー電源の供給の停止を検知した際に、前記電池部の電源を用いて、前記供給の停止を報知する報知部と
を備えた記憶装置。
【請求項2】
前記電池部は、前記バスパワー電源が供給された際に、該バスパワー電源を予め充電しておくコンデンサである請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記報知部は、圧電ブザーである請求項1または請求項2記載の記憶装置。
【請求項4】
バスパワー電源を受け付け可能なインタフェースを備えた記憶装置に脱着可能なアダプタであって、
外部装置に接続され、該外部装置から前記アダプタにバスパワー電源を受け付け可能な第1のインタフェースと、
前記記憶装置に接続され、前記受け付けたバスパワー電源を前記記憶装置に供給する第2のインタフェースと、
該第1のインタフェースを介して行われる前記バスパワー電源の供給の状態を監視する監視部と、
前記バスパワー電源の供給が停止された際に電源となる電池部と、
前記監視部が前記バスパワー電源の供給の停止を検知した際に、前記電池部の電源を用いて、前記供給の停止を報知する報知部と
を備えたアダプタ。

【図1】
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【図2】
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