記憶装置及びその製造方法
【課題】記憶装置及びその製造方法において、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を適切に抑止可能とすることを目的とする。
【解決手段】熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置において、光源、ライト素子及びリード素子を有するヘッドと、光源の光ビームパワー及びライト素子の印加磁界を制御する制御部と、ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子でデータをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定する測定部を備え、制御部は、ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させてエラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、ライト素子に印加するライト電流を調整範囲内で変化させてエラーレートが閾値以下になる最適ライト電流値に設定するように構成する。
【解決手段】熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置において、光源、ライト素子及びリード素子を有するヘッドと、光源の光ビームパワー及びライト素子の印加磁界を制御する制御部と、ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子でデータをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定する測定部を備え、制御部は、ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させてエラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、ライト素子に印加するライト電流を調整範囲内で変化させてエラーレートが閾値以下になる最適ライト電流値に設定するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置及びその製造方法に係り、特に熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置及びその製造方法に関する。本発明は、記憶装置の製造方法で用いられるライト条件設定方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1Tbit/inch2クラスの高密度磁気記録が可能な技術として、熱アシスト磁気記録方式が注目されている。この熱アシスト磁気記録方式は、熱揺らぎに強い高保持力を有する磁気記録媒体に対して磁気記録を行う技術である。具体的には、熱アシスト磁気記録方式は、磁気記録媒体の表面に光を集光して局面的に磁気記録媒体の温度を上げ、温度が上がった部位に磁場を印加して情報を磁気的に記録する。
【0003】
光磁気記録方式では、この熱アシスト磁気記録方式と同様な原理で光磁気記録媒体に情報を記録しており、光磁気記録方式については光パワーの最適値の設定について種々の方法が提案されている。
【0004】
熱アシスト磁気記録方式は、磁気ドミナント記録(Magnetic Dominant Recording)と光ドミナント記録(Optical Dominant Recording)の2種類に大別される。磁気ドミナント記録では、記録マーク幅に比べて光ビーム径が数倍大きく、記録マーク幅が磁気ヘッドによる印加磁界の大きさで決まる。一方、光ドミナント記録では、光ビーム径で磁気記録マーク幅が略決まる。
【0005】
熱アシスト磁気記録方式おいて記録マークの大きさを制御するためには、磁気ドミナント記録では記録マーク幅が磁気ヘッドによる印加磁界で決まるため、電磁石の電流で制御することになる。又、光ドミナント記録では、記録マーク幅は光ビーム径により決まるため、記録条件としては光ビームパワーで制御することになる。
【0006】
しかし、磁気ドミナント記録では、記録マークに対してビーム径が大きく加熱時間が長いため、記録後の熱減磁が大きい。又、光ドミナント記録では、磁気ヘッドによる印加磁界の範囲が光ビーム径よりも広くなり、印加磁界による影響で隣接トラックのイレーズが生じる。
【特許文献1】特開平11−16251号公報
【特許文献2】特開2002−150507号公報
【特許文献3】特開2006−260692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、熱アシスト磁気記録方式において、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を適切に抑止することは難しいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を適切に抑止可能な記憶装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置であって、光源、ライト素子及びリード素子を有するヘッドと、前記光源の光ビームパワー及び前記ライト素子の印加磁界を制御する制御部と、前記ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトして前記リード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定する測定部を備え、前記制御部は、前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に前記光源の前記光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する記憶装置が提供される。
【0010】
本発明の一観点によれば、熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置の製造方法であって、ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定し、前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する記憶装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の記憶装置及びその製造方法によれば、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を適切に抑止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
開示の記憶装置及び製造方法では、熱アシスト磁気記録において、ヘッドによる印加磁界の強度と光ビームパワーの両方の最適化を行うことで、磁気記録密度の更なる高密度化を図る。つまり、ヘッドによる印加磁界の範囲と光ビーム径を概略同程度の大きさに制御し、最適な大きさの記録マークを得るようにする。
【0013】
これにより、高記録密度の記録マークを得るための最適な印加磁界強度と最適な光ビームパワーを設定することができる。従って、熱アシスト磁気記録において、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を抑止して、良好なエラーレートで高密度記録が可能となる。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例における記憶装置の一部を示す図である。本実施例では、本発明が熱アシスト磁気記録方式を用いる磁気ディスク装置に適用されている。
【0015】
磁気ディスク装置1は、図1に示す如く接続されたマイクロプロセッシングユニット(MPU:Micro Processing Unit)11、リードチャネル(RDC:ReaD Channel)12、レーザ駆動回路13、ライト素子駆動回路14、プリアンプ15、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)、ヘッド17、スピンドルモータ(SPM:SPindle Motor)18及び磁気ディスク21を有する。RDC12は、再生回路121及びエラーレート又はビタビマージン(Viterbi Margin)測定部(以下、単にエラーレート測定部と言う)122を有する。ヘッド17は、光源171、ライト素子172及びリード素子173を有する。磁気ディスク21は、SPM18に回転可能に取り付けられ、磁気ディスク21の媒体表面はヘッド17により走査される。ヘッド17は、VCM16により媒体表面から所定量浮上した状態で磁気ディスク21の半径方向に移動される。
【0016】
MPU11は、後述するように、光源171の光ビームパワー及びライト素子172のライト電流(又は、印加磁界)を制御する制御部として機能する。
【0017】
図2は、ヘッド17の構造の一例を磁気ディスク21と共に示す断面図である。図2に示すように、ヘッド17にはコイル174への電流印加により磁界を発生させてコア179を介して記録磁界RMにより磁気ディスク21に対する磁気記録が可能なライト素子172と、ライト素子172による磁気ディスク21上の磁界発生領域と概略同一領域を加熱することができる光照射素子175とを備えている。レーザダイオード等の光源171からの光ビーム(レーザ光)は、光導波路177の中を伝播して光照射素子175へ到達し、光照射素子175から微小な光ビーム176として磁気ディスク21の媒体表面に照射される。磁気情報を読み出すリード素子173としては、GMR(Giant Magneto Resistance)素子やTMR(Tunneling Magneto Resistance)を用いることができる。又、ヘッド17の磁気ディスク21に対向する面は、表面に保護膜が形成されたABS(Air Bearing Surface)となっている。
【0018】
図3は、磁気ディスク21の構造の一例を示す断面図である。磁気ディスク21は、図3に示すように、基板211上に下地層212、記録層213及び保護層214が順次積層された構造を有する。又、保護層214上には、潤滑層215が形成されている。尚、本発明を適用可能な磁気記録媒体は、磁気ディスク21に限定されるものではなく、又、記憶装置が有する磁気記録媒体の数及びヘッドの数は1個に限定されず任意に選定可能である。
【0019】
上記の如き磁気ディスク装置1の構成自体及び磁気ディスク21の構造自体は周知であり、磁気ディスク装置1及び磁気ディスク21は夫々他の周知の構成を有するものであっても良い。要は、後述するようにヘッドによる印加磁界の強度と光ビームパワーを制御可能であり、且つ、エラーレートを測定可能であれば、磁気ディスク装置1の構成は特に限定されない。エラーレートとは、例えばテスト用の情報を複数回磁気ディスク21にライトしてリードした場合にリードされた情報にエラーが発生する割合を示す。又、熱アシスト磁気記録を行うことが可能であれば、磁気ディスク21の構造は特に限定されない。
【0020】
次に、磁気ディスク装置1の記録(ライト)動作及び再生(リード)動作を説明する。ライト動作時の光ビームパワーの制御は、MPU11からレーザ駆動回路13に対してパワー値を設定し、光源171を制御することで行う。又、ライト動作時の印加磁界(即ち、記録磁界強度)の制御は、MPU11からライト素子駆動回路14に対してライト電流値を設定し、ライト素子172に電流を印加することで行う。一方、リード動作時は、リード素子173からの信号出力をプリアンプ15で増幅し、RDC12内の再生回路121で信号再生を行い、RDC12内のエラーレート測定部122で再生信号の1ビット毎に一致不一致を比較して求まるエラーレートを測定することで行う。尚、図示を省略されたビタビ検出器から得られる情報に基づいて図示を省略されたビタビマージンカウンタにより生成されるエラービット信号を利用して求められるビタビマージンはエラーレートに依存する情報であるため、エラーレート測定部122でビタビマージンを測定し、測定されたビタビマージンをエラーレートの代わりに使用するようにしても良いことは言うまでもない。
【0021】
磁気ディスク装置1で熱アシスト磁気記録を行う場合、光パワーを最適に設定したときの光ビームスポットと記録マーク幅の関係は図4に示すようになる。図4は、光ビームパワーと記録磁界強度が最適に設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。図4において、(a)はトラックと光ビームスポットの関係、(b)は温度(任意単位)と磁気ディスク21上の半径方向位置(任意単位)の関係、(c)は保磁力と磁気ディスク21上の半径方向位置の関係を示す。図4中、Tnは記録対象のトラック、Tn−1,Tn+1は隣接トラック、MWは記録マーク幅、MFwは記録磁場、Ptは光ビームスポットの照射による磁気ディスク21上の温度上昇部、Reは磁気的な実行リード素子幅、MFrは記録磁界強度を示す。
【0022】
良好なオーバーライト特性を得るためには、記録マーク幅MWは、GMR素子やTMR素子等のリード素子173による磁気的な実行リード素子幅Reに対して広く設定されることが望ましい。
【0023】
しかし、光ビームパワーが大きすぎると、光ビームスポットと記録マーク幅MWの関係は図5に示すようになり、サイドイレーズが発生して隣接トラックTn−1,Tn+1の記録マークを消してしまう。図5は、光ビームパワーが最適よりも高く設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。図5において、(a)はトラックと光ビームスポットの関係、(b)は温度(任意単位)と磁気ディスク21上の半径方向位置(任意単位)の関係、(c)は保磁力と磁気ディスク21上の半径方向位置の関係を示す。図5中、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。又、図5において、一点鎖線は図4における最適な状態を示す。
【0024】
又、記録磁界強度MFrが大きすぎると、光ビームスポットと記録マーク幅MWの関係は図6に示すようになり、幅の広い記録マークが書かれて、隣接トラックTn−1,Tn+1の記録マークが小さくなってしまう。図6は、記録磁界強度MFrが最適よりも高く設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。図6において、(a)はトラックと光ビームスポットの関係、(b)は温度(任意単位)と磁気ディスク21上の半径方向位置(任意単位)の関係、(c)は保磁力と磁気ディスク21上の半径方向位置の関係を示す。図6中、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。又、図6において、一点鎖線は図4における最適な状態を示す。
【0025】
このように、適切な光ビームパワーと適切な記録磁界強度MFrで記録しないと、隣接トラックTn−1,Tn+1のデータを消してしまうことになるため、適切な光ビームパワーと適切な記録磁界強度MFrを設定する必要がある。
【0026】
そこで、本実施例では、図7に示す手順で適切な光ビームパワーと適切な記録磁界強度を設定する。図7は、本実施例の動作を説明するフローチャートである。図7に示す手順、即ち、ライト条件設定方法は、MPU11により実行される。
【0027】
図7において、ステップS1〜S4は、光源171に対して最適な光ビームパワーを設定する処理を行う。ステップS1は、デフォルト値の記録磁界強度を発生するためのライト電流のデフォルト値をライト素子駆動回路15に設定する。ここでは説明の便宜上、ライト電流のデフォルト値は、ライト素子172により磁気ディスク21にデータをライトするのに十分な記録磁界強度を発生可能な値であり、予め実験的に求められたデータに基づき、個々のヘッド17と磁気ディスク21の組み合わせに応じて生じる適正なライト電流値のバラツキに対して略中央の値をとるものとする。
【0028】
次に、ステップS2は、光ビームの光源(レーザダイオード)171のパワーを調整範囲内で最小値から最大値まで変化させながら、隣接トラックに所定回数ライトした後のエラーレートをエラーレート測定部122で測定する。具体的には、トラックTnのエラーレートを測定する場合、先ずトラックTn−1、トラックTn、トラックTn+1に対してACイレーズを行い、その後トラックTnにエラーレート測定用データをライトする。そして、隣接トラックTn−1,Tn+1にライトする前、即ち、隣接トラックTn−1,Tn+1への0回目のライト時にエラーレートを測定する。次に、隣接トラックTn−1,Tn+1にエラーレート測定用データをライトし、所定回数ライトする度にトラックTnのエラーレートを測定する動作を繰り返す。ここで、隣接トラックをトラックTn−1,Tn+1の両方としたが、隣接トラックTn−1,Tn+1の一方のみを用いてトラックTnのエラーレートを測定しても良い。
【0029】
図8は、ステップS2によるエラーレートの測定結果を示す図である。図8は、本実施例において、ある光ビームパワーでライトしたときの隣接トラックのライト回数に対するエラーレートの実測値及び予測値を示す。図8中、縦軸はエラーレートを示し、横軸は隣接トラックのライト回数を対数(log)スケールで示す。又、■印は光源(レーザダイオード)171の光ビームパワー(レーザパワー)が7mWの場合の実測値、□印はレーザパワーが7mWの場合の予測値を示す。又、例えばエラーレートの1.0E+00,1.0E−01は、夫々1.0×100,1.0×10−1を示す。
【0030】
図8では、隣接トラックのライト回数が103回までが実測結果であり、103回を超える隣接トラックのライト回数の値はMPU11が実測結果から予測した予測値である。このように、隣接トラックのライト回数が一定回数を超える分については予測値を使用することにより、ステップS2を実行するのに要する時間を短縮することができる。
【0031】
図9は、図8に示す如き隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示す図である。図9中、縦軸はエラーレートを示し、横軸は光源(レーザダイオード)171のレーザーパワー(mW)を示す。又、■印は隣接トラックへのライトを行わない場合の測定値、○印は隣接トラックに100回ライトを行った場合の測定値、△印は隣接トラックに10000回ライトを行った場合の予測値を示す。尚、二点鎖線は、エラーレートの閾値を示す。
【0032】
図9に示すように、隣接トラックへのライトを行わない場合、レーザパワーが8mWのところでエラーレートが最も低い。一方、隣接トラックのライト回数が10000回の場合、レーザパワーが8mWのところでは予測値では10−2であり、エラーレートが悪化している。そこで、隣接トラックのライト回数を考慮した最適なレーザパワーの選択方法として、例えば隣接トラックのライト回数が100回の場合のエラーレートに対して、エラーレートの閾値以下となるレーザパワーの範囲を選択し、この範囲の中で隣接トラックへのライトを行わない場合のエラーレートが最小(即ち、最良)となるレーザパワーを求める。このようにして、隣接トラックのライト回数を考慮して最適なレーザパワーを選定する。
【0033】
図7の説明に戻るに、ステップS3は、ステップS2で求められた、ライト回数が100回の場合のエラーレートに対してエラーレートの閾値以下となるレーザパワーの範囲の中で隣接トラックへのライトを行わない場合のエラーレートが最小(即ち、最良)となるレーザパワーを、光ビームパワーの最適値として選定する。又、ステップS4は、選定されたレーザパワーの最適値(即ち、最適パワー値)をレーザ駆動回路13に設定することで、光源171のレーザパワーが最適パワー値に制御されるようにする。
【0034】
次に、ステップS5〜S7は、ライト素子173に対して最適なライト電流を設定する処理を行う。ステップS5は、光源171の光ビームパワーをステップS1〜S4で求めた最適パワー値に設定すると共に、ライト素子駆動回路14に設定するライト電流値を調整範囲内で最小値から最大値まで変化させながら、隣接トラックに所定回数ライトした後のエラーレートをエラーレート測定部122で測定する。具体的には、ステップS2の場合と同様に、トラックTnのエラーレートを測定する場合、先ずトラックTn−1、トラックTn、トラックTn+1に対してACイレーズを行い、その後トラックTnにエラーレート測定用データをライトする。そして、隣接トラックTn−1,Tn+1にライトする前、即ち、隣接トラックTn−1,Tn+1への0回目のライト時にエラーレートを測定する。次に、隣接トラックTn−1,Tn+1にエラーレート測定用データをライトし、所定回数ライトする度にトラックTnのエラーレートを測定する動作を繰り返す。ここで、隣接トラックをトラックTn−1,Tn+1の両方としたが、隣接トラックTn−1,Tn+1の一方のみを用いてトラックTnのエラーレートを測定しても良い。
【0035】
図10は、ステップS5によるエラーレートの測定結果を示す図である。図10は、本実施例において、あるライト電流値でライトしたときの隣接トラックのライト回数に対するエラーレートの実測値及び予測値を示す。図10中、縦軸はエラーレートを示し、横軸は隣接トラックのライト回数を対数(log)スケールで示す。又、■印はライト電流値が25mAの場合の実測値、□印はライト電流値が25mAの場合の予測値を示す。又、例えばエラーレートの1.0E+00,1.0E−01は、夫々1.0×100,1.0×10−1を示す。
【0036】
図10では、隣接トラックのライト回数が103回までが実測結果であり、103回を超える隣接トラックのライト回数の値はMPU11が実測結果から予測した予測値である。このように、隣接トラックのライト回数が一定回数を超える分については予測値を使用することにより、ステップS5を実行するのに要する時間を短縮することができる。
【0037】
図11は、図10に示す如き隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流についてまとめて示す図である。図11中、縦軸はエラーレートを示し、横軸はライト素子173のライト電流(mA)を示す。又、■印は隣接トラックへのライトを行わない場合の測定値、○印は隣接トラックに100回ライトを行った場合の測定値、△印は隣接トラックに10000回ライトを行った場合の予測値を示す。尚、二点鎖線は、エラーレートの閾値を示す。
【0038】
図11に示すように、隣接トラックへのライトを行わない場合、ライト電流が40mAのところでエラーレートが最も低い。一方、隣接トラックのライト回数が10000回の場合、ライト電流が40mAのところでは予測値では10−2であり、エラーレートが悪化している。そこで、隣接トラックのライト回数を考慮した最適なライト電流の選択方法として、例えば隣接トラックのライト回数が100回の場合のエラーレートに対して、エラーレートの閾値以下となるライト電流の範囲を選択し、この範囲の中で隣接トラックへのライトを行わない場合のエラーレートが最小(即ち、最良)となるライト電流を求める。このようにして、隣接トラックのライト回数を考慮して最適なライト電流を選定する。
【0039】
ステップS6は、ステップS5で求められた、ライト回数が100回の場合のエラーレートに対してエラーレートの閾値以下となるライト電流の範囲の中で隣接トラックへのライトを行わない場合のエラーレートが最小(即ち、最良)となるライト電流を、ライト電流の最適値として選定する。又、ステップS7は、選定されたライト電流の最適値(即ち、最適ライト電流値)をライト素子駆動回路14に設定することで、ライト素子172のライト電流が最適ライト電流値に制御されるようにする。
【0040】
このようにして、隣接トラックのライトを行った場合のエラーレートを考慮して光ビームパワー及びライト電流を夫々の最適値に設定することにより、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズ(即ち、サイドイレーズ)を抑制可能な記憶装置を実現することができる。つまり、光ビーム径とヘッドによる印加磁界の範囲を概略同程度の大きさに制御して、最適な大きさの記録マークを得ることができる。
【0041】
レーザパワーとライト電流の両方が夫々の適正値から大きくずれていると、エラーレートが比較的高い状態でしかエラーレートを測定できないため、エラーレートからレーザパワーとライト電流の夫々の最適値を探すことが困難となる。しかし、良好なエラーレートが得られる適正値からのバラツキは、ライト電流の場合の方がレーザパワーの場合より小さい。このため、良好なエラーレートとなる適正値からのバラツキが小さいライト電流の方を図7のステップS1で示すように先に固定値(デフォルト値)に設定してレーザパワーの最適値を探す方が、図9のようなエラーレートの変化を測定するのに適している。従って、上記実施例では、レーザパワーの最適値への設定を先に行い、レーザパワーの最適値を設定した後にライト電流の最適値への設定を行う。
【0042】
尚、図7と共に説明した手順(ライト条件設定方法)は、任意の時点で行えば良い。記憶装置の製造方法において上記のライト条件設定方法を採用すれば、記憶装置の出荷前の製造段階でライト条件の最適化が可能となる。又、記憶装置の出荷後にライト条件の最適化を行えば、記憶装置の経時変化等に対応したライト条件の最適化が可能となる。
【0043】
又、上記の実施例では、エラーレートを直接測定してエラーレートの測定結果に基づいてライト条件を最適化しているが、ビタビマージン含むエラーレートに依存する情報の測定結果に基づいてライト条件を同様に最適化しても良いことは言うまでもない。
【0044】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置であって、
光源、ライト素子及びリード素子を有するヘッドと、
前記光源の光ビームパワー及び前記ライト素子の印加磁界を制御する制御部と、
前記ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトして前記リード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に前記光源の前記光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する、記憶装置。
(付記2)
前記制御部は、光ビーム径とライト素子による印加磁界の範囲を同程度の大きさに制御して最適な大きさの記録マークを前記磁気記録媒体に形成する、付記1記載の記憶装置。
(付記3)
前記測定部は、前記磁気記録媒体上の前記任意のトラックにデータをライトしてリードした際の前記エラーレートに依存する情報、及び前記任意のトラックに隣接する隣接トラックにデータを所定回数ライトする度に前記任意のトラックからリードしたデータの前記エラーレートに依存する情報を測定する、付記1又は2記載の記憶装置。
(付記4)
前記制御部は、前記測定部により測定された前記エラーレートに依存する情報の実測値に基づいて、測定回数が一定回数を超える分については前記エラーレートに依存する情報の予測値を求める、付記1乃至3のいずれか1項記載の記憶装置。
(付記5)
前記測定部は、前記エラーレートを直接測定するか、或いは、前記エラーレートに依存するビタビマージンを測定する、付記1乃至4のいずれか1項記載の記憶装置。
(付記6)
前記制御部は、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示すデータに基づいて前記最適パワー値を設定すると共に、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流についてまとめて示すデータに基づいて前記最適ライト電流値を設定する、付記1乃至5のいずれか1項記載の記憶装置。
(付記7)
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置の製造方法であって、
ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定し、
前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する、記憶装置の製造方法。
(付記8)
光ビーム径とライト素子による印加磁界の範囲を同程度の大きさに制御して最適な大きさの記録マークを前記磁気記録媒体に形成する、付記7記載の記憶装置の製造方法。
(付記9)
前記磁気記録媒体上の前記任意のトラックにデータをライトしてリードした際の前記エラーレートに依存する情報、及び前記任意のトラックに隣接する隣接トラックにデータを所定回数ライトする度に前記任意のトラックからリードしたデータの前記エラーレートに依存する情報を測定する、付記7又は8記載の記憶装置の製造方法。
(付記10)
測定された前記エラーレートに依存する情報の実測値に基づいて、測定回数が一定回数を超える分については前記エラーレートに依存する情報の予測値を求める、付記7乃至9のいずれか1項記載の記憶装置の製造方法。
(付記11)
前記エラーレートを直接測定するか、或いは、前記エラーレートに依存するビタビマージンを測定する、付記7乃至10のいずれか1項記載の記憶装置の製造方法。
(付記12)
前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示すデータに基づいて前記最適パワー値を設定すると共に、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流についてまとめて示すデータに基づいて前記最適ライト電流値を設定する、付記7乃至11のいずれか1項記載の記憶装置の製造方法。
(付記13)
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置のライト条件設定方法であって、
ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定するステップと、
前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定するステップを有する、ライト条件設定方法。
【0045】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例における記憶装置の一部を示す図である。
【図2】ヘッドの構造の一例を磁気ディスクと共に示す断面図である。
【図3】磁気ディスクの構造の一例を示す断面図である。
【図4】光ビームパワーと記録磁界強度が最適に設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。
【図5】光ビームパワーが最適よりも高く設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。
【図6】記録磁界強度が最適よりも高く設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。
【図7】実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図8】エラーレートの測定結果を示す図である。
【図9】隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示す図である。
【図10】エラーレートの測定結果を示す図である。
【図11】隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流値についてまとめて示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 磁気ディスク装置
11 MPU
12 RDC
13 レーザ駆動回路
14 ライト素子駆動回路
17 ヘッド
21 磁気ディスク
171 光源
172 ライト素子
173 リード素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置及びその製造方法に係り、特に熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置及びその製造方法に関する。本発明は、記憶装置の製造方法で用いられるライト条件設定方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1Tbit/inch2クラスの高密度磁気記録が可能な技術として、熱アシスト磁気記録方式が注目されている。この熱アシスト磁気記録方式は、熱揺らぎに強い高保持力を有する磁気記録媒体に対して磁気記録を行う技術である。具体的には、熱アシスト磁気記録方式は、磁気記録媒体の表面に光を集光して局面的に磁気記録媒体の温度を上げ、温度が上がった部位に磁場を印加して情報を磁気的に記録する。
【0003】
光磁気記録方式では、この熱アシスト磁気記録方式と同様な原理で光磁気記録媒体に情報を記録しており、光磁気記録方式については光パワーの最適値の設定について種々の方法が提案されている。
【0004】
熱アシスト磁気記録方式は、磁気ドミナント記録(Magnetic Dominant Recording)と光ドミナント記録(Optical Dominant Recording)の2種類に大別される。磁気ドミナント記録では、記録マーク幅に比べて光ビーム径が数倍大きく、記録マーク幅が磁気ヘッドによる印加磁界の大きさで決まる。一方、光ドミナント記録では、光ビーム径で磁気記録マーク幅が略決まる。
【0005】
熱アシスト磁気記録方式おいて記録マークの大きさを制御するためには、磁気ドミナント記録では記録マーク幅が磁気ヘッドによる印加磁界で決まるため、電磁石の電流で制御することになる。又、光ドミナント記録では、記録マーク幅は光ビーム径により決まるため、記録条件としては光ビームパワーで制御することになる。
【0006】
しかし、磁気ドミナント記録では、記録マークに対してビーム径が大きく加熱時間が長いため、記録後の熱減磁が大きい。又、光ドミナント記録では、磁気ヘッドによる印加磁界の範囲が光ビーム径よりも広くなり、印加磁界による影響で隣接トラックのイレーズが生じる。
【特許文献1】特開平11−16251号公報
【特許文献2】特開2002−150507号公報
【特許文献3】特開2006−260692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、熱アシスト磁気記録方式において、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を適切に抑止することは難しいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を適切に抑止可能な記憶装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置であって、光源、ライト素子及びリード素子を有するヘッドと、前記光源の光ビームパワー及び前記ライト素子の印加磁界を制御する制御部と、前記ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトして前記リード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定する測定部を備え、前記制御部は、前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に前記光源の前記光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する記憶装置が提供される。
【0010】
本発明の一観点によれば、熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置の製造方法であって、ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定し、前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する記憶装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の記憶装置及びその製造方法によれば、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を適切に抑止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
開示の記憶装置及び製造方法では、熱アシスト磁気記録において、ヘッドによる印加磁界の強度と光ビームパワーの両方の最適化を行うことで、磁気記録密度の更なる高密度化を図る。つまり、ヘッドによる印加磁界の範囲と光ビーム径を概略同程度の大きさに制御し、最適な大きさの記録マークを得るようにする。
【0013】
これにより、高記録密度の記録マークを得るための最適な印加磁界強度と最適な光ビームパワーを設定することができる。従って、熱アシスト磁気記録において、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズの両方を抑止して、良好なエラーレートで高密度記録が可能となる。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例における記憶装置の一部を示す図である。本実施例では、本発明が熱アシスト磁気記録方式を用いる磁気ディスク装置に適用されている。
【0015】
磁気ディスク装置1は、図1に示す如く接続されたマイクロプロセッシングユニット(MPU:Micro Processing Unit)11、リードチャネル(RDC:ReaD Channel)12、レーザ駆動回路13、ライト素子駆動回路14、プリアンプ15、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)、ヘッド17、スピンドルモータ(SPM:SPindle Motor)18及び磁気ディスク21を有する。RDC12は、再生回路121及びエラーレート又はビタビマージン(Viterbi Margin)測定部(以下、単にエラーレート測定部と言う)122を有する。ヘッド17は、光源171、ライト素子172及びリード素子173を有する。磁気ディスク21は、SPM18に回転可能に取り付けられ、磁気ディスク21の媒体表面はヘッド17により走査される。ヘッド17は、VCM16により媒体表面から所定量浮上した状態で磁気ディスク21の半径方向に移動される。
【0016】
MPU11は、後述するように、光源171の光ビームパワー及びライト素子172のライト電流(又は、印加磁界)を制御する制御部として機能する。
【0017】
図2は、ヘッド17の構造の一例を磁気ディスク21と共に示す断面図である。図2に示すように、ヘッド17にはコイル174への電流印加により磁界を発生させてコア179を介して記録磁界RMにより磁気ディスク21に対する磁気記録が可能なライト素子172と、ライト素子172による磁気ディスク21上の磁界発生領域と概略同一領域を加熱することができる光照射素子175とを備えている。レーザダイオード等の光源171からの光ビーム(レーザ光)は、光導波路177の中を伝播して光照射素子175へ到達し、光照射素子175から微小な光ビーム176として磁気ディスク21の媒体表面に照射される。磁気情報を読み出すリード素子173としては、GMR(Giant Magneto Resistance)素子やTMR(Tunneling Magneto Resistance)を用いることができる。又、ヘッド17の磁気ディスク21に対向する面は、表面に保護膜が形成されたABS(Air Bearing Surface)となっている。
【0018】
図3は、磁気ディスク21の構造の一例を示す断面図である。磁気ディスク21は、図3に示すように、基板211上に下地層212、記録層213及び保護層214が順次積層された構造を有する。又、保護層214上には、潤滑層215が形成されている。尚、本発明を適用可能な磁気記録媒体は、磁気ディスク21に限定されるものではなく、又、記憶装置が有する磁気記録媒体の数及びヘッドの数は1個に限定されず任意に選定可能である。
【0019】
上記の如き磁気ディスク装置1の構成自体及び磁気ディスク21の構造自体は周知であり、磁気ディスク装置1及び磁気ディスク21は夫々他の周知の構成を有するものであっても良い。要は、後述するようにヘッドによる印加磁界の強度と光ビームパワーを制御可能であり、且つ、エラーレートを測定可能であれば、磁気ディスク装置1の構成は特に限定されない。エラーレートとは、例えばテスト用の情報を複数回磁気ディスク21にライトしてリードした場合にリードされた情報にエラーが発生する割合を示す。又、熱アシスト磁気記録を行うことが可能であれば、磁気ディスク21の構造は特に限定されない。
【0020】
次に、磁気ディスク装置1の記録(ライト)動作及び再生(リード)動作を説明する。ライト動作時の光ビームパワーの制御は、MPU11からレーザ駆動回路13に対してパワー値を設定し、光源171を制御することで行う。又、ライト動作時の印加磁界(即ち、記録磁界強度)の制御は、MPU11からライト素子駆動回路14に対してライト電流値を設定し、ライト素子172に電流を印加することで行う。一方、リード動作時は、リード素子173からの信号出力をプリアンプ15で増幅し、RDC12内の再生回路121で信号再生を行い、RDC12内のエラーレート測定部122で再生信号の1ビット毎に一致不一致を比較して求まるエラーレートを測定することで行う。尚、図示を省略されたビタビ検出器から得られる情報に基づいて図示を省略されたビタビマージンカウンタにより生成されるエラービット信号を利用して求められるビタビマージンはエラーレートに依存する情報であるため、エラーレート測定部122でビタビマージンを測定し、測定されたビタビマージンをエラーレートの代わりに使用するようにしても良いことは言うまでもない。
【0021】
磁気ディスク装置1で熱アシスト磁気記録を行う場合、光パワーを最適に設定したときの光ビームスポットと記録マーク幅の関係は図4に示すようになる。図4は、光ビームパワーと記録磁界強度が最適に設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。図4において、(a)はトラックと光ビームスポットの関係、(b)は温度(任意単位)と磁気ディスク21上の半径方向位置(任意単位)の関係、(c)は保磁力と磁気ディスク21上の半径方向位置の関係を示す。図4中、Tnは記録対象のトラック、Tn−1,Tn+1は隣接トラック、MWは記録マーク幅、MFwは記録磁場、Ptは光ビームスポットの照射による磁気ディスク21上の温度上昇部、Reは磁気的な実行リード素子幅、MFrは記録磁界強度を示す。
【0022】
良好なオーバーライト特性を得るためには、記録マーク幅MWは、GMR素子やTMR素子等のリード素子173による磁気的な実行リード素子幅Reに対して広く設定されることが望ましい。
【0023】
しかし、光ビームパワーが大きすぎると、光ビームスポットと記録マーク幅MWの関係は図5に示すようになり、サイドイレーズが発生して隣接トラックTn−1,Tn+1の記録マークを消してしまう。図5は、光ビームパワーが最適よりも高く設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。図5において、(a)はトラックと光ビームスポットの関係、(b)は温度(任意単位)と磁気ディスク21上の半径方向位置(任意単位)の関係、(c)は保磁力と磁気ディスク21上の半径方向位置の関係を示す。図5中、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。又、図5において、一点鎖線は図4における最適な状態を示す。
【0024】
又、記録磁界強度MFrが大きすぎると、光ビームスポットと記録マーク幅MWの関係は図6に示すようになり、幅の広い記録マークが書かれて、隣接トラックTn−1,Tn+1の記録マークが小さくなってしまう。図6は、記録磁界強度MFrが最適よりも高く設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。図6において、(a)はトラックと光ビームスポットの関係、(b)は温度(任意単位)と磁気ディスク21上の半径方向位置(任意単位)の関係、(c)は保磁力と磁気ディスク21上の半径方向位置の関係を示す。図6中、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。又、図6において、一点鎖線は図4における最適な状態を示す。
【0025】
このように、適切な光ビームパワーと適切な記録磁界強度MFrで記録しないと、隣接トラックTn−1,Tn+1のデータを消してしまうことになるため、適切な光ビームパワーと適切な記録磁界強度MFrを設定する必要がある。
【0026】
そこで、本実施例では、図7に示す手順で適切な光ビームパワーと適切な記録磁界強度を設定する。図7は、本実施例の動作を説明するフローチャートである。図7に示す手順、即ち、ライト条件設定方法は、MPU11により実行される。
【0027】
図7において、ステップS1〜S4は、光源171に対して最適な光ビームパワーを設定する処理を行う。ステップS1は、デフォルト値の記録磁界強度を発生するためのライト電流のデフォルト値をライト素子駆動回路15に設定する。ここでは説明の便宜上、ライト電流のデフォルト値は、ライト素子172により磁気ディスク21にデータをライトするのに十分な記録磁界強度を発生可能な値であり、予め実験的に求められたデータに基づき、個々のヘッド17と磁気ディスク21の組み合わせに応じて生じる適正なライト電流値のバラツキに対して略中央の値をとるものとする。
【0028】
次に、ステップS2は、光ビームの光源(レーザダイオード)171のパワーを調整範囲内で最小値から最大値まで変化させながら、隣接トラックに所定回数ライトした後のエラーレートをエラーレート測定部122で測定する。具体的には、トラックTnのエラーレートを測定する場合、先ずトラックTn−1、トラックTn、トラックTn+1に対してACイレーズを行い、その後トラックTnにエラーレート測定用データをライトする。そして、隣接トラックTn−1,Tn+1にライトする前、即ち、隣接トラックTn−1,Tn+1への0回目のライト時にエラーレートを測定する。次に、隣接トラックTn−1,Tn+1にエラーレート測定用データをライトし、所定回数ライトする度にトラックTnのエラーレートを測定する動作を繰り返す。ここで、隣接トラックをトラックTn−1,Tn+1の両方としたが、隣接トラックTn−1,Tn+1の一方のみを用いてトラックTnのエラーレートを測定しても良い。
【0029】
図8は、ステップS2によるエラーレートの測定結果を示す図である。図8は、本実施例において、ある光ビームパワーでライトしたときの隣接トラックのライト回数に対するエラーレートの実測値及び予測値を示す。図8中、縦軸はエラーレートを示し、横軸は隣接トラックのライト回数を対数(log)スケールで示す。又、■印は光源(レーザダイオード)171の光ビームパワー(レーザパワー)が7mWの場合の実測値、□印はレーザパワーが7mWの場合の予測値を示す。又、例えばエラーレートの1.0E+00,1.0E−01は、夫々1.0×100,1.0×10−1を示す。
【0030】
図8では、隣接トラックのライト回数が103回までが実測結果であり、103回を超える隣接トラックのライト回数の値はMPU11が実測結果から予測した予測値である。このように、隣接トラックのライト回数が一定回数を超える分については予測値を使用することにより、ステップS2を実行するのに要する時間を短縮することができる。
【0031】
図9は、図8に示す如き隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示す図である。図9中、縦軸はエラーレートを示し、横軸は光源(レーザダイオード)171のレーザーパワー(mW)を示す。又、■印は隣接トラックへのライトを行わない場合の測定値、○印は隣接トラックに100回ライトを行った場合の測定値、△印は隣接トラックに10000回ライトを行った場合の予測値を示す。尚、二点鎖線は、エラーレートの閾値を示す。
【0032】
図9に示すように、隣接トラックへのライトを行わない場合、レーザパワーが8mWのところでエラーレートが最も低い。一方、隣接トラックのライト回数が10000回の場合、レーザパワーが8mWのところでは予測値では10−2であり、エラーレートが悪化している。そこで、隣接トラックのライト回数を考慮した最適なレーザパワーの選択方法として、例えば隣接トラックのライト回数が100回の場合のエラーレートに対して、エラーレートの閾値以下となるレーザパワーの範囲を選択し、この範囲の中で隣接トラックへのライトを行わない場合のエラーレートが最小(即ち、最良)となるレーザパワーを求める。このようにして、隣接トラックのライト回数を考慮して最適なレーザパワーを選定する。
【0033】
図7の説明に戻るに、ステップS3は、ステップS2で求められた、ライト回数が100回の場合のエラーレートに対してエラーレートの閾値以下となるレーザパワーの範囲の中で隣接トラックへのライトを行わない場合のエラーレートが最小(即ち、最良)となるレーザパワーを、光ビームパワーの最適値として選定する。又、ステップS4は、選定されたレーザパワーの最適値(即ち、最適パワー値)をレーザ駆動回路13に設定することで、光源171のレーザパワーが最適パワー値に制御されるようにする。
【0034】
次に、ステップS5〜S7は、ライト素子173に対して最適なライト電流を設定する処理を行う。ステップS5は、光源171の光ビームパワーをステップS1〜S4で求めた最適パワー値に設定すると共に、ライト素子駆動回路14に設定するライト電流値を調整範囲内で最小値から最大値まで変化させながら、隣接トラックに所定回数ライトした後のエラーレートをエラーレート測定部122で測定する。具体的には、ステップS2の場合と同様に、トラックTnのエラーレートを測定する場合、先ずトラックTn−1、トラックTn、トラックTn+1に対してACイレーズを行い、その後トラックTnにエラーレート測定用データをライトする。そして、隣接トラックTn−1,Tn+1にライトする前、即ち、隣接トラックTn−1,Tn+1への0回目のライト時にエラーレートを測定する。次に、隣接トラックTn−1,Tn+1にエラーレート測定用データをライトし、所定回数ライトする度にトラックTnのエラーレートを測定する動作を繰り返す。ここで、隣接トラックをトラックTn−1,Tn+1の両方としたが、隣接トラックTn−1,Tn+1の一方のみを用いてトラックTnのエラーレートを測定しても良い。
【0035】
図10は、ステップS5によるエラーレートの測定結果を示す図である。図10は、本実施例において、あるライト電流値でライトしたときの隣接トラックのライト回数に対するエラーレートの実測値及び予測値を示す。図10中、縦軸はエラーレートを示し、横軸は隣接トラックのライト回数を対数(log)スケールで示す。又、■印はライト電流値が25mAの場合の実測値、□印はライト電流値が25mAの場合の予測値を示す。又、例えばエラーレートの1.0E+00,1.0E−01は、夫々1.0×100,1.0×10−1を示す。
【0036】
図10では、隣接トラックのライト回数が103回までが実測結果であり、103回を超える隣接トラックのライト回数の値はMPU11が実測結果から予測した予測値である。このように、隣接トラックのライト回数が一定回数を超える分については予測値を使用することにより、ステップS5を実行するのに要する時間を短縮することができる。
【0037】
図11は、図10に示す如き隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流についてまとめて示す図である。図11中、縦軸はエラーレートを示し、横軸はライト素子173のライト電流(mA)を示す。又、■印は隣接トラックへのライトを行わない場合の測定値、○印は隣接トラックに100回ライトを行った場合の測定値、△印は隣接トラックに10000回ライトを行った場合の予測値を示す。尚、二点鎖線は、エラーレートの閾値を示す。
【0038】
図11に示すように、隣接トラックへのライトを行わない場合、ライト電流が40mAのところでエラーレートが最も低い。一方、隣接トラックのライト回数が10000回の場合、ライト電流が40mAのところでは予測値では10−2であり、エラーレートが悪化している。そこで、隣接トラックのライト回数を考慮した最適なライト電流の選択方法として、例えば隣接トラックのライト回数が100回の場合のエラーレートに対して、エラーレートの閾値以下となるライト電流の範囲を選択し、この範囲の中で隣接トラックへのライトを行わない場合のエラーレートが最小(即ち、最良)となるライト電流を求める。このようにして、隣接トラックのライト回数を考慮して最適なライト電流を選定する。
【0039】
ステップS6は、ステップS5で求められた、ライト回数が100回の場合のエラーレートに対してエラーレートの閾値以下となるライト電流の範囲の中で隣接トラックへのライトを行わない場合のエラーレートが最小(即ち、最良)となるライト電流を、ライト電流の最適値として選定する。又、ステップS7は、選定されたライト電流の最適値(即ち、最適ライト電流値)をライト素子駆動回路14に設定することで、ライト素子172のライト電流が最適ライト電流値に制御されるようにする。
【0040】
このようにして、隣接トラックのライトを行った場合のエラーレートを考慮して光ビームパワー及びライト電流を夫々の最適値に設定することにより、記録後の熱減磁と隣接トラックのイレーズ(即ち、サイドイレーズ)を抑制可能な記憶装置を実現することができる。つまり、光ビーム径とヘッドによる印加磁界の範囲を概略同程度の大きさに制御して、最適な大きさの記録マークを得ることができる。
【0041】
レーザパワーとライト電流の両方が夫々の適正値から大きくずれていると、エラーレートが比較的高い状態でしかエラーレートを測定できないため、エラーレートからレーザパワーとライト電流の夫々の最適値を探すことが困難となる。しかし、良好なエラーレートが得られる適正値からのバラツキは、ライト電流の場合の方がレーザパワーの場合より小さい。このため、良好なエラーレートとなる適正値からのバラツキが小さいライト電流の方を図7のステップS1で示すように先に固定値(デフォルト値)に設定してレーザパワーの最適値を探す方が、図9のようなエラーレートの変化を測定するのに適している。従って、上記実施例では、レーザパワーの最適値への設定を先に行い、レーザパワーの最適値を設定した後にライト電流の最適値への設定を行う。
【0042】
尚、図7と共に説明した手順(ライト条件設定方法)は、任意の時点で行えば良い。記憶装置の製造方法において上記のライト条件設定方法を採用すれば、記憶装置の出荷前の製造段階でライト条件の最適化が可能となる。又、記憶装置の出荷後にライト条件の最適化を行えば、記憶装置の経時変化等に対応したライト条件の最適化が可能となる。
【0043】
又、上記の実施例では、エラーレートを直接測定してエラーレートの測定結果に基づいてライト条件を最適化しているが、ビタビマージン含むエラーレートに依存する情報の測定結果に基づいてライト条件を同様に最適化しても良いことは言うまでもない。
【0044】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置であって、
光源、ライト素子及びリード素子を有するヘッドと、
前記光源の光ビームパワー及び前記ライト素子の印加磁界を制御する制御部と、
前記ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトして前記リード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に前記光源の前記光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する、記憶装置。
(付記2)
前記制御部は、光ビーム径とライト素子による印加磁界の範囲を同程度の大きさに制御して最適な大きさの記録マークを前記磁気記録媒体に形成する、付記1記載の記憶装置。
(付記3)
前記測定部は、前記磁気記録媒体上の前記任意のトラックにデータをライトしてリードした際の前記エラーレートに依存する情報、及び前記任意のトラックに隣接する隣接トラックにデータを所定回数ライトする度に前記任意のトラックからリードしたデータの前記エラーレートに依存する情報を測定する、付記1又は2記載の記憶装置。
(付記4)
前記制御部は、前記測定部により測定された前記エラーレートに依存する情報の実測値に基づいて、測定回数が一定回数を超える分については前記エラーレートに依存する情報の予測値を求める、付記1乃至3のいずれか1項記載の記憶装置。
(付記5)
前記測定部は、前記エラーレートを直接測定するか、或いは、前記エラーレートに依存するビタビマージンを測定する、付記1乃至4のいずれか1項記載の記憶装置。
(付記6)
前記制御部は、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示すデータに基づいて前記最適パワー値を設定すると共に、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流についてまとめて示すデータに基づいて前記最適ライト電流値を設定する、付記1乃至5のいずれか1項記載の記憶装置。
(付記7)
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置の製造方法であって、
ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定し、
前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する、記憶装置の製造方法。
(付記8)
光ビーム径とライト素子による印加磁界の範囲を同程度の大きさに制御して最適な大きさの記録マークを前記磁気記録媒体に形成する、付記7記載の記憶装置の製造方法。
(付記9)
前記磁気記録媒体上の前記任意のトラックにデータをライトしてリードした際の前記エラーレートに依存する情報、及び前記任意のトラックに隣接する隣接トラックにデータを所定回数ライトする度に前記任意のトラックからリードしたデータの前記エラーレートに依存する情報を測定する、付記7又は8記載の記憶装置の製造方法。
(付記10)
測定された前記エラーレートに依存する情報の実測値に基づいて、測定回数が一定回数を超える分については前記エラーレートに依存する情報の予測値を求める、付記7乃至9のいずれか1項記載の記憶装置の製造方法。
(付記11)
前記エラーレートを直接測定するか、或いは、前記エラーレートに依存するビタビマージンを測定する、付記7乃至10のいずれか1項記載の記憶装置の製造方法。
(付記12)
前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示すデータに基づいて前記最適パワー値を設定すると共に、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流についてまとめて示すデータに基づいて前記最適ライト電流値を設定する、付記7乃至11のいずれか1項記載の記憶装置の製造方法。
(付記13)
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置のライト条件設定方法であって、
ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定するステップと、
前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定するステップを有する、ライト条件設定方法。
【0045】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例における記憶装置の一部を示す図である。
【図2】ヘッドの構造の一例を磁気ディスクと共に示す断面図である。
【図3】磁気ディスクの構造の一例を示す断面図である。
【図4】光ビームパワーと記録磁界強度が最適に設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。
【図5】光ビームパワーが最適よりも高く設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。
【図6】記録磁界強度が最適よりも高く設定された状態で記録マークが書かれた場合を説明する図である。
【図7】実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図8】エラーレートの測定結果を示す図である。
【図9】隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示す図である。
【図10】エラーレートの測定結果を示す図である。
【図11】隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流値についてまとめて示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 磁気ディスク装置
11 MPU
12 RDC
13 レーザ駆動回路
14 ライト素子駆動回路
17 ヘッド
21 磁気ディスク
171 光源
172 ライト素子
173 リード素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置であって、
光源、ライト素子及びリード素子を有するヘッドと、
前記光源の光ビームパワー及び前記ライト素子の印加磁界を制御する制御部と、
前記ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトして前記リード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に前記光源の前記光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する、記憶装置。
【請求項2】
前記制御部は、光ビーム径とライト素子による印加磁界の範囲を同程度の大きさに制御して最適な大きさの記録マークを前記磁気記録媒体に形成する、請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記磁気記録媒体上の前記任意のトラックにデータをライトしてリードした際の前記エラーレートに依存する情報、及び前記任意のトラックに隣接する隣接トラックにデータを所定回数ライトする度に前記任意のトラックからリードしたデータの前記エラーレートに依存する情報を測定する、請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記測定部により測定された前記エラーレートに依存する情報の実測値に基づいて、測定回数が一定回数を超える分については前記エラーレートに依存する情報の予測値を求める、請求項1乃至3のいずれか1項記載の記憶装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記エラーレートを直接測定するか、或いは、前記エラーレートに依存するビタビマージンを測定する、請求項1乃至4のいずれか1項記載の記憶装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示すデータに基づいて前記最適パワー値を設定すると共に、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流についてまとめて示すデータに基づいて前記最適ライト電流値を設定する、請求項1乃至5のいずれか1項記載の記憶装置。
【請求項7】
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置の製造方法であって、
ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定し、
前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する、記憶装置の製造方法。
【請求項8】
光ビーム径とライト素子による印加磁界の範囲を同程度の大きさに制御して最適な大きさの記録マークを前記磁気記録媒体に形成する、請求項7記載の記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記磁気記録媒体上の前記任意のトラックにデータをライトしてリードした際の前記エラーレートに依存する情報、及び前記任意のトラックに隣接する隣接トラックにデータを所定回数ライトする度に前記任意のトラックからリードしたデータの前記エラーレートに依存する情報を測定する、請求項7又は8記載の記憶装置の製造方法。
【請求項10】
測定された前記エラーレートに依存する情報の実測値に基づいて、測定回数が一定回数を超える分については前記エラーレートに依存する情報の予測値を求める、請求項7乃至9のいずれか1項記載の記憶装置の製造方法。
【請求項1】
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置であって、
光源、ライト素子及びリード素子を有するヘッドと、
前記光源の光ビームパワー及び前記ライト素子の印加磁界を制御する制御部と、
前記ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトして前記リード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に前記光源の前記光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する、記憶装置。
【請求項2】
前記制御部は、光ビーム径とライト素子による印加磁界の範囲を同程度の大きさに制御して最適な大きさの記録マークを前記磁気記録媒体に形成する、請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記磁気記録媒体上の前記任意のトラックにデータをライトしてリードした際の前記エラーレートに依存する情報、及び前記任意のトラックに隣接する隣接トラックにデータを所定回数ライトする度に前記任意のトラックからリードしたデータの前記エラーレートに依存する情報を測定する、請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記測定部により測定された前記エラーレートに依存する情報の実測値に基づいて、測定回数が一定回数を超える分については前記エラーレートに依存する情報の予測値を求める、請求項1乃至3のいずれか1項記載の記憶装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記エラーレートを直接測定するか、或いは、前記エラーレートに依存するビタビマージンを測定する、請求項1乃至4のいずれか1項記載の記憶装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種光ビームパワーについてまとめて示すデータに基づいて前記最適パワー値を設定すると共に、前記隣接トラックのライト回数に対するエラーレートを各種ライト電流についてまとめて示すデータに基づいて前記最適ライト電流値を設定する、請求項1乃至5のいずれか1項記載の記憶装置。
【請求項7】
熱アシスト磁気記録方式を用いる記憶装置の製造方法であって、
ライト素子でデータを磁気記録媒体にライトしてリード素子で前記データをリードする処理を繰り返すことで任意のトラックにおけるエラーレートに依存する情報を測定し、
前記ライト素子に印加するライト電流をデフォルト値に設定すると共に光源の光ビームパワーを調整範囲内で変化させて前記エラーレートが閾値以下になる最適パワー値に設定し、且つ、前記ライト素子に印加する前記ライト電流を調整範囲内で変化させて前記エラーレートが前記閾値以下になる最適ライト電流値に設定する、記憶装置の製造方法。
【請求項8】
光ビーム径とライト素子による印加磁界の範囲を同程度の大きさに制御して最適な大きさの記録マークを前記磁気記録媒体に形成する、請求項7記載の記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記磁気記録媒体上の前記任意のトラックにデータをライトしてリードした際の前記エラーレートに依存する情報、及び前記任意のトラックに隣接する隣接トラックにデータを所定回数ライトする度に前記任意のトラックからリードしたデータの前記エラーレートに依存する情報を測定する、請求項7又は8記載の記憶装置の製造方法。
【請求項10】
測定された前記エラーレートに依存する情報の実測値に基づいて、測定回数が一定回数を超える分については前記エラーレートに依存する情報の予測値を求める、請求項7乃至9のいずれか1項記載の記憶装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−152992(P2010−152992A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330889(P2008−330889)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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