説明

記録ディスク及びディスク装置

【課題】サイドイレーズを防止するとともに良好な記録特性を得ることが可能な記録ディスク及びディスク装置を提供する。
【解決手段】磁気記録ディスク2には、磁気ヘッド4のいずれの移動位置においても磁気ヘッド4のヘッド方向とトラック21のトラック方向との為すスキュー角が実質的に0となる形状のトラック21が形成されており、磁気ヘッド4は、スキュー角を実質的に0に保ったまま、ヘッド方向に沿ってトラック21に追従して移動する。このため、磁極面81から放出される記録磁界によって記録される際の記録幅が磁気ヘッド4の振り角θによって変化することがなく、磁極面81の磁気記録ディスク2に対する投影面がトラック21の幅からはみ出ることないため、磁極面81が矩形状であっても、サイドイレーズを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置等のディスク装置に用いられる記録ディスク、及びこれを用いたディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置の分野では、磁気記録ディスクの記録密度の更なる向上が求められている。現行の面内磁気記録方式では、磁気記録ディスクに対して平行な方向に磁化が記録されるため、記録間隔が狭くなると記録磁化の熱揺らぎ現象が無視できなくなる。そこで、より高記録密度が可能な方式として、垂直磁気記録方式が提案されている。垂直磁気記録方式では、磁気記録ディスクに対して垂直な方向に磁化が記録されるため、記録磁化が熱揺らぎ現象の影響を受けにくく、磁化の記録間隔を狭小化できる。
【0003】
垂直磁気記録方式を実現する磁気ヘッドは、単磁極ヘッドと呼ばれ、磁気記録ディスクに対向して記録磁界を発する磁極面を有した主磁極によって、磁気記録ディスクに対して垂直な方向に磁化を記録する。
【特許文献1】特開2005−183002号公報
【特許文献2】特開2001−101633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁気ヘッドは、磁気記録ディスクの外側に定められた旋回軸を中心に旋回可能な支持体に支持され、磁気記録ディスク上を略半径方向に移動することから、磁気記録ディスクに同心円状に形成されたトラックのトラック方向に対して磁気ヘッドの向きが傾いてしまうことがある。
【0005】
図19に、従来例として、トラック上に位置した磁気ヘッドの状態を示す。図19(A)に示すように、主磁極の磁極面820が矩形状である場合、磁気ヘッドとの傾きが大きくなるトラック210では、磁極面820の一部がトラック210からはみ出してしまうことがある。このような状態で記録が行われると、隣接するトラックとの間の境界部分が磁化されて再生時におけるノイズの原因となったり、隣接するトラックが磁化されてデータが消去されてしまうことがある(以下、このような現象をサイドイレーズという)。
【0006】
特許文献1には、図19(B)に示すように、主磁極の磁極面830の形状を台形状や三角形状にしてサイドイレーズを防止する技術が開示されている。しかしながら、この技術では、サイドイレーズを防止しようとする余り、磁極面830の形状が小さくなってしまい、磁極面830から発せられる記録磁界の量を十分に確保できずに、良好な記録特性が得られない恐れがある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、サイドイレーズを防止するとともに良好な記録特性を得ることが可能な記録ディスク及びディスク装置を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の記録ディスクは、記録ディスクの外側に定められた旋回軸を中心に旋回可能な支持体に支持されて、回転する該記録ディスク上を略半径方向に移動するヘッドによってデータが記録される記録ディスクであって、前記ヘッドのいずれの移動位置においてもスキュー角が実質的に0となるトラックが形成されてなることを特徴とする。
【0009】
また、上記記録ディスクは同心円状に複数の領域に分割され、前記領域毎に、該領域の一方の境界から他方の境界へ至る前記トラックが敷き詰められてなることを特徴とする。
【0010】
次に、本発明のディスク装置は、上記記録ディスクと、前記記録ディスクを回転させるディスク用アクチュエータと、前記記録ディスクの外側に定められた旋回軸を中心に旋回可能な支持体と、前記支持体に支持され、前記記録ディスクにデータを記録するヘッドと、前記支持体を旋回駆動して、前記ヘッドを前記記録ディスク上で略半径方向に移動させるヘッド用アクチュエータと、回転する前記記録ディスク上を前記ヘッドが前記トラックに追従するように、前記ヘッドアクチュエータを制御する制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記制御回路は、前記ヘッドが下記式1を満たす移動速度で移動するように、前記ヘッドアクチュエータを制御することを特徴とする。
Vr=Lg・cos−1((2Lg−(2πr・R・sinθ/60))/(2Lg)) ・・・式1
【0012】
但し、Vrは前記ヘッドの移動速度、Lgは前記支持体の旋回軸から前記ヘッドまでの距離、rは前記ヘッドの前記記録ディスク上での半径位置、Rは前記ディスク用アクチュエータの回転速度、θは前記ヘッドと前記記録ディスクの回転方向とが為す角を示す。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明によれば、サイドイレーズを防止するとともに良好な記録特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、磁気ディスク装置(ディスク装置)1の構成例を示す図である。磁気ディスク装置1は、磁気記録ディスク(記録ディスク)2と、ディスク用アクチュエータとしてのスピンドルモータ3と、磁気ヘッド4と、スライダ5と、支持体としてのサスペンションアーム6と、ヘッド用アクチュエータとしてのボイスコイルモータ7と、が内蔵されている。
【0016】
磁気記録ディスク2は、円盤状に構成され、その主面がデータを磁気的に記録する記録面とされている。なお、この磁気記録ディスク2には、後述する特殊な形状のトラックが形成されている。また、磁気記録ディスク2は、スピンドルモータ3に取付けられており、回転軸Qを中心に回転駆動される。
【0017】
磁気ヘッド4は、磁気記録ディスク2に対してデータを磁気的に記録・再生する。この磁気ヘッド4は、磁気記録ディスク2上に浮上するための形状が施されたスライダ5と一体とされて、サスペンションアーム6の先端に支持されている。このサスペンションアーム6は、磁気記録ディスク2の面内方向の外側に設置されたボイスコイルモータ7に取付けられており、旋回軸Pを中心に旋回駆動される。このようなサスペンションアーム6の旋回駆動により、磁気ヘッド4は、磁気記録ディスク2上を略半径方向に移動する。
【0018】
図2は、磁気ディスク装置1の構成例を示すブロック図である。磁気ディスク装置1は、上記した構成以外にも、制御回路としてのMPU/HDC(マイクロプロセッシングユニット/ハードディスクコントローラ)11と、メモリ12と、ドライバ13と、R/Wチャネル(リードライトチャネル)14と、ヘッドアンプ15と、を有している。
【0019】
MPU/HDC11は、装置全体の制御を司るものであり、外部ホストとの間のインターフェース制御などの各制御を実行する。なお、MPU/HDC11は、磁気記録ディスク2に形成されたトラックに磁気ヘッド4を追従させる追従制御を行うべく、ボイスコイルモータ7の制御信号を生成し、ドライバ13に対して出力する。この追従制御については後述する。
【0020】
メモリ12は、MPU/HDC11の動作に必要なプログラムやデータを格納している。また、メモリ12は、MPU/HDC11のワークメモリとして動作する。また、メモリ12は、磁気記録ディスク2に記録・再生されるデータのバッファメモリとして利用される。
【0021】
ドライバ13は、MPU/HDC11からボイスコイルモータ7の制御信号が入力されると、ボイスコイルモータ7を駆動して、磁気ヘッド4を磁気記録ディスク2上で略半径方向に移動させる。また、ドライバ13は、MPU/HDC11からスピンドルモータ3の制御信号が入力されると、スピンドルモータ3を駆動して、磁気記録ディスク2を回転させる。
【0022】
R/Wチャネル14は、データの記録時に、MPU/HDC11から記録信号が入力されると、これをコード変調して、ヘッドアンプ15へ出力する。また、R/Wチャネル14は、データの再生時に、ヘッドアンプ15から再生信号が入力されると、これをコード復調して、MPU/HDC11へ出力する。
【0023】
ヘッドアンプ15は、データの記録時に、R/Wチャネル14から記録信号が入力されると、これを増幅し、磁気ヘッド4へ出力する。また、ヘッドアンプ15は、データの再生時に、磁気ヘッド4から再生信号が入力されると、これを増幅し、R/Wチャネル14へ出力する。
【0024】
なお、本実施形態では、磁気記録ディスク2の両方の主面が記録面とされた例を示しているが、これに限らず、一方の主面のみが記録面とされていても良い。また、磁気記録ディスク2が複数ある構成としても良い。
【0025】
図3は、磁気ヘッド4の構成例を示す図である。図3(A)は、磁気ヘッド4の浮上面(磁気記録ディスク2と対向する面)を表す図である。図3(B)は、図3(A)におけるA−A線の断面図である。ここで、X方向は、磁気ヘッド4が旋回移動される際の回転半径方向であり、負側が旋回軸Pの方向である。Z方向は、磁気記録ディスク2の主面に対して垂直な方向であり、正側が磁気ヘッド4の浮上方向である。
【0026】
磁気ヘッド4は、垂直磁気記録方式を実現する薄膜磁気ヘッドとして構成されている。この磁気ヘッド4は、次のような層構造を有する。ここで、上側とは、層構造における積層方向、すなわちX+方向とする。スライダ5に取付けられる非磁性基板91上には、磁気シールド85を介して再生素子9が配置されている。この再生素子9は、磁気記録ディスク2に記録されているデータを再生するGMR素子などの素子で構成されており、浮上面に露出するように設置されている。また、再生素子9上には、記録素子8が設けられている。この記録素子8は、磁気記録ディスク2にデータを記録するための素子である。また、これら部材の隙間は、アルミナ等のセラミックからなる中間層92によって埋められている。
【0027】
記録素子8は、浮上面に露出する磁極面81を有する主磁極80と、補助磁極82と、コイル83とを備える。主磁極80は、補助磁極82と所定の隙間を保って位置し、磁極面81とは逆側の部分が折れ曲がって補助磁極82に取付けられている。コイル83は、主磁極80の補助磁極82に取付けられている部分を取り囲む渦巻形状を有しており、記録すべきデータを表す電気信号を外部から受けて、主磁極80の先端にある磁極面81から磁気記録ディスク2に向かって垂直に記録磁界を発生させる。補助磁極82は、主磁極80の磁極面81から磁気記録ディスク2に向かって垂直に発せられた記録磁界が磁気記録ディスク2の内部をUターンした後に帰還する層である。なお、補助磁極82は、磁気バリアとしても機能する。
【0028】
主磁極80が有する磁極面81は、矩形状を為しており、短手方向(Y方向)の幅が磁気記録ディスク2に形成されたトラックの幅に収まる大きさとなっている。また、磁極面81の長手方向(X方向)は、磁気記録ディスク2に形成されたトラックに沿う方向であり、データの記録を進める方向である。以下、この磁極面81の長手方向(X方向)を「ヘッド方向」として定義する。本実施形態では、ヘッド方向は、上述したように磁気ヘッド4が旋回移動される際の回転半径方向とされる。
【0029】
図4は、磁気記録ディスク2上に位置した磁気ヘッド4の状態を示す図である。磁気記録ディスク2に形成されたトラック21は、磁気ヘッド4のいずれの移動位置においてもスキュー角が実質的に0となる形状を有している。ここで、スキュー角とは、磁気ヘッド4とトラック21との為す角、すなわち磁気ヘッド4のヘッド方向とトラック21のトラック方向との為す角として定義されるものであり、磁気ヘッド4(若しくはトラック21)と磁気記録ディスク2のディスク回転方向DRとが為す角θ(以下「振り角θ」という)とは区別される。
【0030】
すなわち、磁気記録ディスク2に形成されたトラック21は、従来のようにディスク回転方向に沿って同心円状に形成されてはおらず、磁気ヘッド4のヘッド方向と沿うように形成されていることから、磁気ヘッド4とトラック21との為す角であるスキュー角と、磁気ヘッド4とディスク回転方向DRとが為す角である振り角θと、が異なるものとなる。
【0031】
次に、トラック21の具体的な形状を説明する前に、磁気ヘッド4をトラック21に追従させる場合(追従制御)の磁気ヘッド4の移動速度について説明する。MPU/HDC11は、追従制御時に、磁気ヘッド4が下記式1を満たす移動速度Vrで接線方向に移動するように、ボイスコイルモータ7を制御する。
Vr=Lg・cos−1((2Lg−(2πr・R・sinθ/60))/(2Lg)) ・・・式1
ここで、Vrは磁気ヘッド4の接線方向の移動速度、Lgはサスペンションアーム6の旋回軸から磁気ヘッド4までの距離、rは磁気ヘッド4の磁気記録ディスク2上での半径位置、Rはスピンドルモータ3の回転速度、θは磁気ヘッド4とディスク回転方向DRとが為す振り角を表す。なお、上記式1を満たす磁気ヘッド4の速度制御は、振り角θの絶対値が大きい方から小さい方へ向かう場合に適用される。
【0032】
以下、上記式1の導出について説明する。図5は、磁気ヘッド4の移動についての説明図である。ここでは、磁気ヘッド4が移動位置G1(半径位置r1、振り角θ1)から移動位置G2(半径位置r2、振り角θ2)まで移動する場合について考える。図6は、図5の移動位置G1、G2付近を拡大した図である。ここで、移動位置G1と移動位置G2の間の距離が十分に小さい場合には、移動位置G1、G2での振り角を同一(θ1=θ2=θ)とみなすことができる。また、各移動位置G1、G2における磁気記録ディスク2の移動速度(媒体移動速度)Vdも同一とみなすことができる。すなわち、r1=r2=rとして、媒体移動速度Vdは、下記式2に示す速度となる。
Vd=2πr・R/60 ・・・式2
ここで、rは磁気ヘッド4の磁気記録ディスク2上での半径位置、Rはスピンドルモータ3の回転速度を表す。
【0033】
このとき、磁気ヘッド4が移動位置G1から移動位置G2の方向に下記式3で示す速度Vhで移動すると、磁気記録ディスク2に対して描かれる磁気ヘッド4の軌跡が、磁気記録ディスク2上の任意の一点から振り角θを保ったままヘッド方向に沿って延びた形状となる。
Vh=Vd・sinθ ・・・式3
ここで、Vdは媒体移動速度、θは磁気ヘッド4とディスク回転方向DRとが為す振り角を表す。
【0034】
そして、図7に示すように、磁気ヘッド4が移動位置G1から移動位置G2へ速度Vhで移動するとき、旋回軸Pを中心とするサスペンションアーム6の旋回の角速度ωpは、余弦定理より下記式4で表すことができる。
ωp=cos−1((2Lg−Vh)/(2Lg)) ・・・式4
ここで、Lgはサスペンションアーム6の旋回軸から磁気ヘッド4までの距離を表す。
【0035】
これにより、磁気ヘッド4の接線方向の移動速度Vrを表す上記式1を求めることができる。
Vr=Lg・ωp
=Lg・cos−1((2Lg−Vh)/(2Lg))
=Lg・cos−1((2Lg−(Vd・sinθ))/(2Lg))
=Lg・cos−1((2Lg−(2πr・R・sinθ/60))/(2Lg)) ・・・式1
【0036】
以上のように、回転する磁気記録ディスク2上で、接線方向の移動速度Vrを満たすように磁気ヘッド4を移動させることにより、磁気ヘッド4は、磁気記録ディスク2に対し、振り角θを保ったままヘッド方向に沿って延びた形状を描いて移動することとなる。このため、図4に示すように、磁気ヘッド4に含まれる磁極面81が磁気記録ディスク2に対してヘッド方向に沿って移動することとなって、磁極面81から放出される記録磁界によって記録される際の記録幅が磁気ヘッド4の振り角θによって変化することがない。
【0037】
図8は、磁気ヘッド4を接線方向の移動速度Vrを満たすようにして移動させた場合に、磁気記録ディスク2に対して描かれる軌跡T11、T12を表す図である。本実施形態では、磁気記録ディスク2の半径方向の中間位置に磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が存在し、外周側から振り角θが0となる位置へ向けて磁気ヘッド4を移動させた場合の軌跡T11と、内周側から振り角θが0となる位置へ向けて磁気ヘッド4を移動させた場合の軌跡T12と、を表す。
【0038】
磁気記録ディスク2に形成されるトラックは、それぞれの位置において軌跡T11、T12に沿った形状となっている。すなわち、磁気ヘッド4のいずれの移動位置においても磁気ヘッド4のヘッド方向とトラック21のトラック方向との為すスキュー角が実質的に0となる形状を有している。
【0039】
具体的には、磁気記録ディスク2は、図10に示すように、同心円状に複数の領域(ゾーン)23に分割されており、それぞれの領域23に軌跡T11、T12に沿った形状のトラックが形成されている。
【0040】
図9に、領域23毎に形成されたトラック21について示す。それぞれの領域23には、領域23の内周側IDの境界から外周側ODの境界に渡って、この半径方向の範囲に相当する部分の軌跡T11、T12と同じ形状のトラック21が敷き詰められている。このように、領域23毎にトラック21を敷き詰めることで、トラック21の密集度を高めることができる。本実施形態では、磁気記録ディスク2の半径方向の中間位置に磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が存在していることから、領域23が内周側IDに成る程あるいは外周側ODに成る程、磁気ヘッド4の振り角θに対応してトラック21のディスク回転方向DRに対する角度が大きくなっている。
【0041】
また、磁気記録ディスク2には、図11に示すように、ユーザデータを記録するためのデータ領域25と、サーボデータが記録されるサーボ領域27と、が同心円状に交互に形成されている。各領域23には、サーボ領域27が少なくとも1以上設けられる。また、トラック21の両端部分にサーボデータを記録するため、領域23の境界に沿ってサーボ領域27が設けられていることが好ましい。ここで、各領域23には、図9に示したように、内周側IDの境界から外周側ODの境界へ至るトラック21が軌跡T11、T12に沿って形成されていることから、それぞれのトラック21には少なくとも1以上のサーボ領域27が位置することになる。サーボ領域27の間隔は、等間隔としても良いし、各領域23に形成されたトラック21に記録されるサーボデータの数を調整するために磁気記録ディスク2の半径位置に応じて間隔を変えても良い。また、サーボデータは、トラック21のうちサーボ領域27に相当する部分にトラック方向に沿って記録される。
【0042】
サーボ領域27に記録されるサーボデータには、磁気記録ディスク2の半径方向の位置、周方向の位置、どのゾーンの何番目のトラックであるかというトラック位置、及びトラックの中の何番目のセクタであるかというセクタ位置などを表す位置情報が含まれる。図2に示したMPU/HDC11は、磁気ヘッド4が再生したサーボデータを、ヘッドアンプ15およびR/Wチャネル14を経由して受け取ると、このサーボデータに含まれる位置情報に基づいて、磁気ヘッド4の磁気記録ディスク2上での現在位置を判断する。そして、MPU/HDC11は、磁気ヘッド4の目標位置と現在位置との差分に基づいてボイスコイルモータ7の制御信号を生成して、ドライバ13に対して出力する。
【0043】
具体的には、MPU/HDC11は、シーク制御によって磁気ヘッド4を所望のトラック21までシークさせた後、この所望のトラック21に対して磁気ヘッド4を追従させる追従制御を行う。この追従制御では、上述した接線方向の移動速度Vrで磁気ヘッド4が移動するように、ボイスコイルモータ7を制御する。これにより、磁気ヘッド4は、図4に示すように、磁気ヘッド4のヘッド方向とトラック21のトラック方向との為すスキュー角を実質的に0に保ったまま、トラック21に追従して移動する。なお、この追従制御は、従来の位置決め制御に代わるものである。
【0044】
以上により、磁気記録ディスク2には、磁気ヘッド4のいずれの移動位置においても磁気ヘッド4のヘッド方向とトラック21のトラック方向との為すスキュー角が実質的に0となる形状のトラック21が形成されており、磁気ヘッド4は、上述した接線方向の移動速度Vrで移動することで、スキュー角を実質的に0に保ったまま、ヘッド方向に沿ってトラック21に追従して移動する。このため、磁極面81から放出される記録磁界によって記録される際の記録幅が磁気ヘッド4の振り角θによって変化することがなく、磁極面81の磁気記録ディスク2に対する投影面がトラック21の幅からはみ出ることないため、磁極面81が矩形状であっても、サイドイレーズを防止することができる。
【0045】
次に、磁気記録ディスク2に形成されるトラックの変形例について説明する。
【0046】
上述の実施形態では、磁気記録ディスク2の半径方向の中間位置に磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が存在している例について説明したが、以下に説明する第1変形例および第2変形例では、磁気記録ディスク2の内周側や外周側に磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が存在している。これは、図12ないし図14に示すように、磁気ヘッド4のヘッド方向を旋回移動の回転半径方向(旋回軸Pの方向)に対して傾けた状態にすることにより実現することができる。
【0047】
図12は、スライダ5と一体化された磁気ヘッド4を、ヘッド方向が旋回移動の回転半径方向から傾き角θzの角度で傾くように、スライダ5ごと傾けてサスペンションアーム6に取付けた例を示す。図13は、磁気ヘッド4を、ヘッド方向が旋回移動の回転半径方向から傾き角θzの角度で傾けた状態でスライダ5と一体化し、サスペンションアーム6に取付けた例を示す。図14は、サスペンションアーム6のアーム方向を途中で変化させることで、磁気ヘッド4のヘッド方向を旋回移動の回転半径方向から傾き角θzの角度で傾けた状態にした例を示す。
【0048】
このように、磁気ヘッド4のヘッド方向を旋回移動の回転半径方向に対して傾けた状態にすることにより、磁気ヘッド4の振り角θは、旋回移動の回転半径方向から傾き角θzだけ傾くことになり、これにより、磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が磁気記録ディスク2の半径方向の中間位置から変化して、磁気記録ディスク2の内周側や外周側に位置するようになる。
【0049】
第1変形例について説明する。図15は、磁気記録ディスク2の内周側に磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が存在し、磁気ヘッド4を接線方向の移動速度Vrを満たすようにして外周側から内周側へ向けて移動させた場合に、磁気記録ディスク2に対して描かれる軌跡T2を表す図である。
【0050】
磁気記録ディスク2に形成されるトラックは、それぞれの位置において軌跡T2に沿った形状となっている。すなわち、磁気ヘッド4のいずれの移動位置においても磁気ヘッド4のヘッド方向とトラックのトラック方向との為すスキュー角が実質的に0となる形状を有している。
【0051】
この第1変形例においても、磁気記録ディスク2は、図10に示すように、同心円状に複数の領域(ゾーン)23に分割されており、それぞれの領域23に軌跡T2に沿った形状のトラックが形成されている。
【0052】
図16に、領域23毎に形成されたトラック21について示す。それぞれの領域23には、領域23の内周側IDの境界から外周側ODの境界に渡って、この半径方向の範囲に相当する部分の軌跡T2と同じ形状のトラック21が敷き詰められている。この第1変形例では、磁気記録ディスク2の内周側IDに磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が存在していることから、領域23が外周側ODに成る程、磁気ヘッド4の振り角θに対応してトラック21のディスク回転方向DRに対する角度が大きくなっている。
【0053】
なお、磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置は、磁気記録ディスク2の記録領域の最内周よりもさらに内側に設けることができる。これによれば、磁気記録ディスク2に形成されるトラック21が、全ての記録領域において、ディスク回転方向DRに対して所定以上の角度を保って形成されるので、領域23でのトラック21の密集度を高めることができるとともに、トラック21に対して十分な数のサーボ領域27(図11参照)を横切らせることができる。
【0054】
第2変形例について説明する。図17は、磁気記録ディスク2の外周側に磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が存在し、磁気ヘッド4を接線方向の移動速度Vrを満たすようにして内周側から外周側へ向けて移動させた場合に、磁気記録ディスク2に対して描かれる軌跡T3を表す図である。
【0055】
磁気記録ディスク2に形成されるトラックは、それぞれの位置において軌跡T3に沿った形状となっている。すなわち、磁気ヘッド4のいずれの移動位置においても磁気ヘッド4のヘッド方向とトラックのトラック方向との為すスキュー角が実質的に0となる形状を有している。
【0056】
この第2変形例においても、磁気記録ディスク2は、図10に示すように、同心円状に複数の領域(ゾーン)23に分割されており、それぞれの領域23に軌跡T3に沿った形状のトラックが形成されている。
【0057】
図18に、領域23毎に形成されたトラック21について示す。それぞれの領域23には、領域23の内周側IDの境界から外周側ODの境界に渡って、この半径方向の範囲に相当する部分の軌跡T3と同じ形状のトラック21が敷き詰められている。この第2変形例では、磁気記録ディスク2の外周側ODに磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置が存在していることから、領域23が内周側IDに成る程、磁気ヘッド4の振り角θに対応してトラック21のディスク回転方向DRに対する角度が大きくなっている。
【0058】
なお、磁気ヘッド4の振り角θが0となる位置は、磁気記録ディスク2の記録領域の最外周よりもさらに外側に設けることができる。これによれば、磁気記録ディスク2に形成されるトラック21が、全ての記録領域において、ディスク回転方向DRに対して所定以上の角度を保って形成されるので、領域23でのトラック21の密集度を高めることができるとともに、トラック21に対して十分な数のサーボ領域27(図11参照)を横切らせることができる。
【0059】
以上に説明した第1変形例のトラックおよび第2変形例のトラックは、例えば、以下のように利用することができる。図2に示した磁気ディスク装置1において、磁気記録ディスク2の一方の主面には図15及び図16に示した第1変形例のトラックを、他方の主面には図17及び図18に示した第2変形例のトラックを形成する。そして、MPU/HDC11は、追従制御を行う際に、図15及び図16に示される第1変形例のトラックが形成された主面に対しては、磁気ヘッド4の振り角θの絶対値が大きい外周側ODから絶対値が小さい内周側IDへ向かうように、磁気ヘッド4が上述の移動速度Vrで移動するようにボイスコイルモータ7を制御する。これに対し、図17及び図18に示される第2変形例のトラックが形成された主面に対しては、磁気ヘッド4の振り角θの絶対値が大きい内周側IDから絶対値が小さい外周側ODへ向かうように、磁気ヘッド4が上述の移動速度Vrで移動するようにボイスコイルモータ7を制御する。
【0060】
このようにすれば、第1変形例のトラックが形成された主面では磁気ヘッド4は外周側ODから内周側IDへ移動し、第2変形例のトラックが形成された主面では磁気ヘッド4は内周側IDから外周側ODへ移動するので、それぞれの主面に形成されたトラックに対して交互にアクセスする場合などに、磁気ヘッド4の位置を戻す動作を省略できることがあるので、迅速なアクセスを行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】磁気ディスク装置の構成例を示す図である。
【図2】磁気ディスク装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】磁気ヘッドの構成例を示す図である。
【図4】トラック上に位置した磁気ヘッドの状態を示す図である。
【図5】磁気ヘッドの移動制御の説明図である。
【図6】磁気ヘッドの移動制御の説明図である。
【図7】磁気ヘッドの移動制御の説明図である。
【図8】磁気記録ディスクに形成されるトラックの説明図である。
【図9】磁気記録ディスクに形成されるトラックの説明図である。
【図10】磁気記録ディスクの領域の説明図である。
【図11】磁気記録ディスクの領域の説明図である。
【図12】磁気ヘッドの変形例を示す図である。
【図13】磁気ヘッドの変形例を示す図である。
【図14】磁気ヘッドの変形例を示す図である。
【図15】磁気記録ディスクに形成されるトラックの説明図である。
【図16】磁気記録ディスクに形成されるトラックの説明図である。
【図17】磁気記録ディスクに形成されるトラックの説明図である。
【図18】磁気記録ディスクに形成されるトラックの説明図である。
【図19】トラック上に位置した磁気ヘッドの状態を示す図(従来例)である。
【符号の説明】
【0062】
1 磁気ディスク装置(ディスク装置)、2 磁気記録ディスク(記録ディスク)、3 スピンドルモータ(ディスク用アクチュエータ)、4 磁気ヘッド、5 スライダ、6 サスペンションアーム(支持体)、7 ボイスコイルモータ(ヘッド用アクチュエータ)、8 記録素子、9 再生素子、11 MPU/HDC、12 メモリ、13 ドライバ、14 R/Wチャネル、15 ヘッドアンプ、21 トラック、23 ゾーン(領域)、25 データ領域、27 サーボ領域、80 主磁極、81 磁極面、82 補助磁極、83 コイル、85 磁気シールド、91 非磁性基板、92 中間層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ディスクの外側に定められた旋回軸を中心に旋回可能な支持体に支持されて、回転する該記録ディスク上を略半径方向に移動するヘッドによってデータが記録される記録ディスクであって、
前記ヘッドのいずれの移動位置においてもスキュー角が実質的に0となるトラックが形成されてなることを特徴とする記録ディスク。
【請求項2】
請求項1に記載の記録ディスクであって、
当該記録ディスクは同心円状に複数の領域に分割され、前記領域毎に、該領域の一方の境界から他方の境界へ至る前記トラックが敷き詰められてなることを特徴とする記録ディスク。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録ディスクと、
前記記録ディスクを回転させるディスク用アクチュエータと、
前記記録ディスクの外側に定められた旋回軸を中心に旋回可能な支持体と、
前記支持体に支持され、前記記録ディスクにデータを記録するヘッドと、
前記支持体を旋回駆動して、前記ヘッドを前記記録ディスク上で略半径方向に移動させるヘッド用アクチュエータと、
回転する前記記録ディスク上を前記ヘッドが前記トラックに追従するように、前記ヘッドアクチュエータを制御する制御回路と、
を備えることを特徴とするディスク装置。
【請求項4】
請求項3に記載のディスク装置であって、
前記制御回路は、前記ヘッドが下記式1を満たす移動速度で移動するように、前記ヘッドアクチュエータを制御することを特徴とするディスク装置。
Vr=Lg・cos−1((2Lg−(2πr・R・sinθ/60))/(2Lg)) ・・・式1
但し、Vrは前記ヘッドの移動速度、Lgは前記支持体の旋回軸から前記ヘッドまでの距離、rは前記ヘッドの前記記録ディスク上での半径位置、Rは前記ディスク用アクチュエータの回転速度、θは前記ヘッドと前記記録ディスクの回転方向とが為す角を示す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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