説明

記録ヘッドおよびそれを備える記録装置

【課題】 良好な画像を形成することが可能な記録ヘッドおよびこれを備えた記録装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係るサーマルヘッドXは、平面視において略矩形状の基板10と、基板10の第1長辺10aに沿って一方主面10c上に配列されている複数の発熱素子Hと、基板10の他方主面に設けられている放熱体70とを含んでなり、放熱体70が、基板10の第2長辺10bに沿って延びる第1側面70bと、第1側面70bより矢印D3方向に窪んでなり且つ第2長辺10bに沿って延びる第1窪み部701と、第1長辺10aに沿って延びる第2側面70cと、第2側面70cより矢印D4方向側に窪んでなり且つ第1長辺10aに沿って延びる第2窪み部702とを有し、第1窪み部701が矢印方向D1,D2における両端部に第1螺合部701cおよび第2螺合部701dを有するとともに、第2窪み部702の容積が第1窪み部701の容積に比べて小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドおよびそれを備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやレジスターなどのプリンタとしては、サーマルヘッドおよびプラテンローラを備えるサーマルプリンタが用いられている。このようなサーマルプリンタに搭載されるサーマルヘッドとしては、ヘッド基板と、ヘッド基板上に配列された複数の発熱素子と、ヘッド基板を載置し且つ発熱素子の発する熱を放熱する放熱体とを有するものがある。プラテンローラは、発熱素子上に対して記録媒体を押し当てる機能を有するものである。このような構成のサーマルプリンタでは、所望の画像に応じて発熱素子を発熱させるともに、発熱素子上に対して記録媒体をプラテンローラで均等に押圧することにより発熱素子の発する熱を記録媒体に対して良好に伝達させている。記録媒体に対する所望の画像形成は、この処理を繰り返すことにより行われている。
【0003】
このようなサーマルプリンタに搭載されるサーマルヘッドには、支持体に設けられたシャフトに短いピンを押し入れて、サーマルプリンタに対して固定されるものがある。このようなサーマルヘッドは、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平7−329396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のサーマルヘッドでは、支持体にシャフトを挿入する円状の溝が設けられているので、この円状の溝が設けられた側と、円状の溝が設けられていない側とで支持体の熱膨張の割合が異なり、発熱素子の発する熱によって支持体にソリが生じる場合があった。この支持体のソリは、円状の溝が設けられた側と、円状の溝が設けられていない側との温度差が大きくなるサーマルヘッドの駆動開始時に生じやすい。支持体にソリが生じると、該支持体上に載置される基板や発熱素子にもソリが生じてしまう場合がある。そして、このように発熱素子にソリが生じると、プラテンローラの押圧力にバラツキが生じてしまい、発熱素子の発する熱が良好に伝達されない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、良好な画像を形成することが可能な記録ヘッドおよび該記録ヘッドを備える記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録ヘッドは、平面視において略矩形状の基板と、該基板の一方の長辺に沿って一方の主面上に配列されている複数の発熱素子と、前記基板の他方の主面に設けられている放熱体とを含んでなり、前記放熱体が、前記基板の他方の長辺に沿って延びる第1基準面と、該第1基準面より前記発熱素子側に窪んでなり且つ前記他方の長辺に沿って延びる第1窪み部と、前記基板の一方の長辺に沿って延びる第2基準面と、該第2基準面より前記発熱素子側に窪んでなり且つ前記一方の長辺に沿って延びる第2窪み部とを有し、前記第1窪み部が、その両端部に嵌入部を有するとともに、前記第2窪み部の容積が前記第1窪み部の容積に比べて小さいことを特徴としている。
【0007】
本発明の記録ヘッドは、前記第2窪み部の前記第2基準面からの深さが前記第1窪み部の前記第1基準面からの深さに比べて浅いのが好ましい。
【0008】
本発明の記録ヘッドは、前記発熱素子が、平面視において、前記第1窪み部と前記第2窪み部との間に位置しているのが好ましい。
【0009】
本発明の記録ヘッドは、前記発熱素子が、平面視において、前記第1基準面からの離間距離に比べて第2基準面からの離間距離が短いのが好ましい。
【0010】
本発明の記録ヘッドは、前記嵌入部に螺合されるネジをさらに有しており、該ネジが、セルフタッピングネジであるのが好ましい。本構成の記録ヘッドの前記放熱体は、前記第1窪み部の少なくとも前記嵌入部の内周面よりさらに窪んでなり、前記第1窪み部の開口部と対向する第3窪み部を有しているのがより好ましい。
【0011】
本発明の記録ヘッドは、前記第1窪み部が、内周面が略円弧状であるのが好ましい。本構成の記録ヘッドは、前記第2窪み部の内周面が略円弧状であり、前記第2窪み部の曲率が前記第1窪み部の曲率より大きいのが好ましい。
【0012】
本発明の記録ヘッドの前記放熱体は、略直方体状の本体部を有しており、前記基板に当接する前記本体部の上面と前記第1窪み部の内周面との間の最小厚みが、前記本体部の下面と前記第1窪み部の内周面との間の最小厚みに比べて厚いのが好ましい。
【0013】
本発明の記録装置は、前記記録ヘッドと、記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の記録ヘッドは、平面視において略矩形状の基板と、該基板の一方の長辺に沿って一方の主面上に配列されている複数の発熱素子と、基板の他方の主面に設けられている放熱体とを含んでなり、放熱体が前記基板の他方の長辺に沿って延びる第1基準面と、該第1基準面より発熱素子側に窪んでなり且つ他方の長辺に沿って延びる第1窪み部と、放熱体が一方の長辺に沿って延びる第2基準面と、該第2基準面より発熱素子側に窪んでなり且つ一方の長辺に沿って延びる第2窪み部とを有し、第1窪み部がその両端部に嵌入部を第1窪み部がその両端部に嵌入部を有するとともに、第2窪み部の容積が第1窪み部の容積に比べて小さい。そのため、本発明の記録ヘッドでは、放熱体の熱膨張の割合を第1基準面側と第2基準面側とで均等に近づけることができ、例えば放熱体の温度が上昇する過渡状態でも放熱体に生じるソリの程度を低減することができる。したがって、本発明の記録ヘッドでは、放熱体上に載置される基板と発熱素子とに生じるソリの程度を低減することができ、ひいては良好な画像を形成することができる。
【0015】
本発明の記録ヘッドにおいて、第2窪み部の第2基準面からの深さが第1窪み部の第1基準面からの深さに比べて浅い場合、第1窪み部と第2窪み部との間の熱容量が小さくなるのを低減できる。そのため、本構成の記録ヘッドでは、発熱素子の発する熱を放熱体に対して良好に伝達することができる。
【0016】
本発明の記録ヘッドにおいて、発熱素子が、平面視において、第1窪み部と第2窪み部との間に位置している場合、発熱素子の下に位置する放熱体の熱容量を小さくせずに済む。そのため、本構成の記録ヘッドでは、発熱素子の発する熱を放熱体に対して良好に伝達することができる。また、本構成の記録ヘッドでは、例えば記録媒体を発熱素子に押しつけた場合でも放熱体で良好に支持することもできる。
【0017】
本発明の記録ヘッドにおいて、発熱素子が、平面視において、第1基準面からの離間距離に比べて第2基準面からの離間距離が短い場合、発熱素子の下に位置する放熱体の熱容量をより大きくするとともに、例えば挿入部に短いものを挿入した場合でも発熱素子の発する熱の伝達が中心部と端部とでバラツキが生じるのを低減することができる。そのため、本構成の記録ヘッドでは、発熱素子の発する熱を放熱体に対して良好に伝達することができる。
【0018】
本発明の記録ヘッドにおいて、挿入部に螺合されるネジをさらに有しており、前記ネジが、セルフタッピングネジである場合、ネジ山に嵌合するネジ溝の形成時に切りくずが生じるのを低減することができる。そのため、本構成の記録ヘッドでは、生じた切りくずによって、例えば発熱素子上に形成される保護膜にキズが生じたり、発熱素子が短絡したりするのを低減することができる。また、本構成の記録ヘッドにおいて、前記放熱体は、第1窪み部の少なくとも嵌入部の内周面よりさらに窪んでなり、第1窪み部の開口部と対向する第3窪み部を有している場合、タッピングネジを螺着する際に作用する力の対称性を高め、例えばネジの挿入方向が曲がるのを低減することができる。
【0019】
本発明の記録ヘッドにおいて、第1窪み部の内周面が略円弧状である場合、放熱体の熱膨張による応力を良好に分散させ、曲げ強度を高めることができる。そのため、本構成の記録ヘッドでは、放熱体に生じるソリの程度をより低減することができる。また、本構成の記録ヘッドでは、例えば挿入部にネジを螺合させた場合でも良好に取り付けることができる。本構成の記録ヘッドにおいて、第2窪み部の内周面が略円弧状であり、第2窪み部の曲率が前記第1窪み部の曲率より大きい場合、放熱体の熱膨張による応力を良好に分散させることができる。そのため、本構成の記録ヘッドでは、放熱体に生じるソリの程度をより低減することができる。
【0020】
本発明の記録ヘッドにおいて放熱体は、略直方体状の本体部を有しており、基板に当接する上面と第1窪み部の内周面との間の最小厚みが、上面と対となる下面と第1窪み部の内周面との最小厚みに比べて厚い場合、放熱体全体の厚みを小さくした場合でも発熱素子の発する熱を放熱体に対して良好に伝達するとともに、基板を良好に支持することができる。
【0021】
本発明に係る記録装置は、記録ヘッドを備えている。そのため、本記録装置は、記録ヘッドの有する効果を享受することができる。したがって、本記録装置は、良好な画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<記録ヘッド>
図1は、本発明の記録ヘッドの実施形態の一例であるサーマルヘッドXの概略構成を示す図であり、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図である。ここで、「平面図」とは矢印D6方向視した図をいい、「側面図」とは矢印D2方向視した図をいう。
【0023】
図2は、図1に示したサーマルヘッドXの要部拡大図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示したIIb−IIb線に沿った断面図である。
【0024】
サーマルヘッドXは、基板10と、蓄熱層20と、抵抗体層30と、導電層40と、保護層50と、駆動IC60と、放熱体70とを有している。
【0025】
基板10は、蓄熱層20と、抵抗体層30と、導電層40と、保護層50と、駆動IC60とを支持する機能を有するものである。この基板10は、平面視において矢印方向D1,D2に延びる略矩形状に構成されている。また、本実施形態では、この基板10の第1長辺10aが平面視において延びる方向を矢印方向D1,D2としている。
【0026】
蓄熱層20は、抵抗体層30の後述する発熱素子Hにおいて発生する熱の一部を一時的に蓄積する機能を有するものである。すなわち、蓄熱層20は、発熱素子Hの温度を上昇させるのに要する時間を短くして、サーマルヘッドXの熱応答特性を高める役割を担うものである。この蓄熱層20は、基板10の一方の主面10c上に位置しており、矢印方向D1,D2に延びる帯状に構成されている。また、この蓄熱層20は、矢印方向D1,D2に直交する矢印方向D3,D4における断面形状が略半楕円状に構成されている。
【0027】
抵抗体層30は、導電層40に対して接続されている。この抵抗体層30は、一部が蓄熱層20上に位置している。本実施形態では、導電層40から電圧が印加される抵抗体層30のうち導体層40が上に形成されていない部位が発熱素子Hとして機能している。
【0028】
発熱素子Hは、導電層40からの電圧印加により発熱するものである。この発熱素子Hは、導電層40からの電圧印加による発熱温度が例えば200℃以上450℃以下の範囲となるように構成されている。また、この発熱素子Hは、蓄熱層20の上方に位置しており、第1長辺10a、ひいては矢印方向D1,D2に沿って配列されている。本実施形態では、この発熱素子Hの配列方向がサーマルヘッドXの主走査方向となる。
【0029】
導電層40は、第1導電層41と、第2導電層42とを含んで構成される。この導電層40は、抵抗体層30上に位置している。
【0030】
第1導電層41は、各々の一端部が複数の発熱素子Hのそれぞれの一端に接続されている。第1導電層41は、各々の他端部が駆動IC60に対して接続されている。この第1導電層41は、発熱素子Hの矢印D4方向側に位置している。
【0031】
第2導電層42は、その端部が複数の発熱素子Hの他端、および図示しない電源に対して電気的に接続されている。この第2導電層42は、発熱素子Hの矢印D3方向側に位置している。
【0032】
保護層50は、発熱素子Hと、導電層40とを保護する機能を有するものである。この保護層50は、発熱素子Hおよび導電層40を覆うように形成されている。
【0033】
駆動IC60は、複数の発熱素子Hの電力供給状態を制御する機能を有するものである。この駆動IC60は、第1導電層41の他端部に対して電気的に接続されている。このような構成とすることにより、発熱素子Hを選択的に発熱させることができる。また、この駆動IC60には、外部接続用部材61が電気的に接続されている。
【0034】
外部接続用部材61は、発熱素子Hを駆動するための電気信号を供給する機能を有するものである。この外部接続用部材61としては、フレキシブルケーブル61aおよびコネクタ62bなどの組み合わせが挙げられる。
【0035】
図3は、図1に示した放熱体70の拡大図であり、(a)は矢印方向D3,D4に沿った断面図であり、(b)は図3(a)に示したIIIb−IIIb線に沿った断面図である。
【0036】
放熱体70は、前記発熱素子Hで発生する熱を外部に発散させる機能を有するものである。また、この放熱体70は、基板10の支持母材としての機能も有しており、その主面70aが基板10の他方主面に対向している。また、この放熱体70は、矢印D4方向側の第1側面70bが基板10の第2長辺10b、ひいては矢印方向D1,D2に沿って延びている。加えて、この放熱体70は、矢印D3方向側の第2側面70cが第1長辺10a、ひいては矢印方向D1,D2に沿って延びている。このような放熱体70を形成する材料としては、例えば銅およびアルミニウムなどの金属材料と、熱硬化型または紫外線硬化型の樹脂材料に熱伝導性の高い材料を混合させたものとが挙げられる。ここで熱伝導性の高い材料とは、基板10を構成する材料よりも高い熱伝導率を有するものが挙げられ、例えば金属材料とカーボンナノチューブとが挙げられる。
【0037】
本実施形態の放熱体70は、その第1側面70bに、矢印方向D1,D2に沿って延びるとともに、矢印D3方向に窪んでなる第1窪み部701をさらに有している。また、本実施形態の放熱体70は、その第2側面70cに、矢印方向D1,D2に沿って延びるとともに、矢印D4方向に窪んでなる第2窪み部702をさらに有している。さらに、本実施形態の放熱体70は、主面70aより矢印D5方向に突出する突出部703を有している。
【0038】
この第1窪み部701は、第1弧状面701aと、第2弧状面701bと、第3窪み部7011とを含んで構成される。この第1窪み部701は、その深さhが矢印方向D1,D2に渡って略一定である。この第1弧状面701aおよび第2弧状面701bは、対向して位置しており、略円弧状に形成されている。この第3窪み部7011は、第1窪み部701の開口部701eに対向している。また、第3窪み部7011は、第1弧状面701aおよび第2弧状面701bより窪んでなり、第1弧状面701aおよび第2弧状面701bを2つに離間させている。
【0039】
この第2窪み部702は、第3弧状面702aを含んで構成される。この第1窪み部702は、その深さhが矢印方向D1,D2に渡って略一定である。また、第2窪み部702の深さhは第1窪み部701の深さhに比べて小さくなるように構成されている。さらに、この第2窪み部702は、その容積が第1窪み部701の容積に比べて小さくなるように構成されている。ここで「窪み部の容積」とは、窪み部により規定される空間の容積をいう。本実施形態の「窪み部の容積」は、第1側面70bから窪んでなり且つ第1窪み部701で囲まれる空間の容積、もしくは第1側面70cから窪んでなり且つ第2窪み部702で囲まれる空間の容積に対応している。本実施形態では、第1窪み部701および第2窪み部702が矢印方向D1,D2に沿って形成されており、それぞれの深さh,hが略一定であるので、「窪み部の容積」が矢印方向D3,D4−矢印方向D5,D6平面における断面積に対応している。なお、この第2窪み部702の第3弧状面702aは、その曲率が第1弧状面701aおよび第2弧状面701bの曲率に比べて小さくなるように構成されている。
【0040】
また、本実施形態では、発熱素子Hが平面視において第1窪み部70bと第2窪み部70dの間にある領域70d上に位置している。さらに、本実施形態の発熱素子Hは、一方主面10cの平面視において、第1長辺70bからの離間距離dが第2長辺70cからの離間距離dに比べて長い。
【0041】
さらに、本実施形態の放熱体70は、ネジ71をさらに有している。第1弧状面701aおよび第2弧状面701bのそれぞれには、矢印方向D1,D2における両端部にネジ71のネジ山に嵌合するネジ溝が設けられており、第1螺合部701cおよび第2螺合部701dを構成している。
【0042】
この突出部703は、外部接続部材61a,61bを支持部としての機能を有している。
【0043】
ネジ71は、サーマルヘッドXを固着する機能を有するものである。このネジ71の一方は、矢印D1方向から挿入され、第1螺合部701cに対して螺着される。このネジの他方は、矢印D2方向から挿入され、第2螺合部701dに対して螺着される。本実施形態では、ネジ71によって放熱体70がフランジ72に対して固着されており、このフランジ72を介してサーマルヘッドXがサーマルプリンタに搭載されるように構成されている。このネジ71としては、種々のものが挙げられ、本実施形態のネジ71は、セルフタッピングネジにより構成されている。なお、ネジ71およびフランジ72は、見やすさの観点から、図3(b)に図示したものを除き省略している。
【0044】
サーマルヘッドXは、平面視において略矩形状の基板10と、基板10の第1長辺10aに沿って一方主面10c上に配列されている複数の発熱素子Hと、基板10の他方主面に設けられている放熱体70とを含んでなり、放熱体70が、基板10の第2長辺10bに沿って延びる第1側面70bと、第1側面70bより矢印D3方向に窪んでなり且つ第2長辺10bに沿って延びる第1窪み部701と、第1長辺10aに沿って延びる第2側面70cと、第2側面70cより矢印D4方向側に窪んでなり且つ第1長辺10aに沿って延びる第2窪み部702とを有し、第1窪み部701が矢印方向D1,D2における両端部に第1螺合部701cおよび第2螺合部701dを有するとともに、第2窪み部702の容積が第1窪み部701の容積に比べて小さい。そのため、サーマルヘッドXでは、第1側面70b側と第2側面70c側とで放熱体70の熱膨張の割合を均等に近づけることができ、例えば放熱体の温度が上昇する過渡状態でも放熱体70に生じるソリの程度を低減することができる。したがって、サーマルヘッドXでは、放熱体70上に載置される基板10と発熱素子Hとに生じるソリの程度を低減することができ、良好な画像を形成することができる。
【0045】
サーマルヘッドXにおいて、第2窪み部702の第2側面に対する深さhが第1窪み部701の第1側面70bに対する深さhに比べて浅いので、第1窪み部701と第2窪み部702との間の熱容量が小さくなるのを低減できる。そのため、サーマルヘッドXでは、発熱素子Hの発する熱を放熱体70に対して良好に伝達することができる。
【0046】
サーマルヘッドXにおいて、発熱素子Hが、平面視において、第1窪み部701と第2窪み部702との間の領域70d上に位置しているので、発熱素子Hの下に位置する放熱体70の熱容量を小さくせずに済む。そのため、サーマルヘッドXでは、発熱素子Hの発する熱を放熱体70に対して良好に伝達することができる。また、サーマルヘッドXでは、例えば記録媒体を発熱素子Hに押しつけた場合でも放熱体70で良好に支持することもできる。
【0047】
サーマルヘッドXにおいて、発熱素子Hが、平面視において、第1側面70bからの離間距離dに比べて第2側面70cからの離間距離dが短いので、発熱素子Hの下に位置する放熱体70の熱容量をより大きくするとともに、例えば第1螺合部70cおよび第2螺合部701dにネジ71を螺合した場合でも発熱素子Hの発する熱の伝達が中心部と端部とでバラツキが生じるのを低減することができる。そのため、サーマルヘッドXでは、発熱素子Hの発する熱を放熱体70に対して良好に伝達することができる。
【0048】
サーマルヘッドXにおいて、第1螺合部70cおよび第2螺合部701dに螺合されるネジ71をさらに有しており、ネジ71が、セルフタッピングネジであるので、ネジ70のネジ山に嵌合するネジ溝の形成時に切りくずが生じるのを低減することができる。そのため、サーマルヘッドXでは、生じた切りくずによって、例えば保護膜50にキズが生じたり、電気回路が短絡したりするのを低減することができる。また、サーマルヘッドXにおいて、放熱体70は、第1窪み部701より窪んでなり、第1窪み部701の開口部と対向する第3窪み部7011を有しているので、タッピングネジを螺着する際に作用する力の対称性を高め、例えばネジ71の挿入方向が曲がるのを低減することができる。
【0049】
サーマルヘッドXにおいて、第1窪み部701の第1弧状面701aおよび第2弧状面701bが略円弧状であるので、放熱体70の熱膨張による応力を良好に分散させ、曲げ強度を高めることができる。そのため、サーマルヘッドXでは、放熱体70に生じるソリの程度をより低減することができる。また、サーマルヘッドXでは、例えば第1螺合部70cおよび第2螺合部701dにネジを螺着する際に良好に取り付けることができる。
【0050】
サーマルヘッドXにおいて、第2窪み部702の第3弧状面702aが略円弧状であり、その曲率が第1窪み部701の曲率より大きいので、放熱体70の熱膨張による応力を良好に分散させ、曲げ強度を高めることができる。そのため、サーマルヘッドXでは、放熱体70に生じるソリの程度をより低減することができる。
【0051】
<記録装置>
図4は、本発明の記録装置の実施例の一例であるサーマルプリンタYの概略構成を示す図である。
【0052】
サーマルプリンタYは、サーマルヘッドXと、搬送機構80と、駆動機構90とを含んで構成されている。このサーマルプリンタYは、矢印D3方向に搬送される記録媒体Pに対して印画を行う機能を有するものである。ここで記録媒体Pとしては、加熱によって表面の濃淡が変動する感熱紙もしくは感熱フィルムと、熱伝導によって溶融したインク成分を転写することによって像を形成するインクフィルムおよび転写用紙と、が用いられる。
【0053】
搬送機構80は、プラテンローラ81と、搬送ローラ82,83,84,85とを含んで構成されている。
【0054】
プラテンローラ81は、記録媒体PをサーマルヘッドXの発熱素子H上に位置する保護層50に対して押し付ける機能を有するものである。このプラテンローラ81は、発熱素子H上に位置する保護層50に接触した状態で回転可能に支持されている。
【0055】
搬送ローラ82は、記録媒体Pを搬送する機能を有するものである。すなわち、搬送ローラ82,83,84,85は、発熱素子Hとプラテンローラ81との間に記録媒体Pを供給するとともに、発熱素子Hとプラテンローラ81との間から記録媒体Pを引き抜く役割を担うものである。
【0056】
駆動機構90は、駆動IC60に画像情報を供給する機能を有するものである。つまり、駆動機構90は、外部接続用部材61を介して発熱素子Hを選択的に駆動する画像情報を駆動IC60に供給する役割を担うものである。
【0057】
サーマルプリンタYは、サーマルプリンタX1を備えている。そのため、サーマルプリンタYは、サーマルヘッドXの有する効果を享受することができる。したがって、サーマルプリンタYは、良好な画像を形成することができる。
【0058】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0059】
本実施形態では、記録ヘッドの一例としてサーマルヘッドXを記載したが、本発明はサーマルヘッドに限るものでない。例えば、本発明の構成をインクジェットヘッドに採用した場合でも、発熱素子の発する熱によって放熱体に生じるソリの程度を低減し、ひいては放熱体上に載置される基板や発熱素子にも生じるソリの程度を低減することができる。
【0060】
本実施形態の放熱体70は、第1窪み部701および主面70aの間の厚みが第1窪み部701および他方主面70eの間の厚みと等しいが、このような構成に限るものでない。例えば、図5に示すように第1窪み部701Aおよび主面70Aaの間の厚みtが第1窪み部701Aおよび他方主面70Aeの間の厚みtより厚い場合、放熱体70A全体の厚みtを小さくした場合でも発熱素子Hの発する熱を放熱体70Aに対して良好に伝達するとともに、基板10を良好に支持することができる。さらに、この場合は、厚みtを小さくすることで熱応力による放熱体70Aの変形を第1窪み部701Aおよび他方主面70Aeの間で生じさせ、第1窪み部701Aおよび主面70Aaの間の変形を低減することもでき、ひいては主面70Aaの表面形状に変化が生じるのを低減することができる。また、図5に示したように、放熱体70Aは、第2窪み部702Aおよび主面70Aaの間の最小厚みが、第2窪み部702Aおよび他方主面70Aeの間の最小厚みより大きくてもよい。
【0061】
本実施形態では、放熱体70の第1窪み部701に第1螺合部701c,第2螺合部701dが設けられているが、このような構造に限るものでない。例えばシャフトなどの棒状のものを嵌め入れる嵌入部が設けられていてもよい。
【0062】
本実施形態の第1窪み部701や第2窪み部702に冷却用の配管を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の記録ヘッドの実施形態の一例であるサーマルヘッドの概略構成を示す図であり、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図である。
【図2】図1に示したサーマルヘッドの要部拡大図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示したIIb−IIb線に沿った断面図である。
【図3】図1に示した放熱体の拡大図であり、(a)は矢印方向D3,D4に沿った断面図であり、(b)は図3(a)に示したIIIb−IIIb線に沿った断面図である。
【図4】本発明の記録装置の実施形態の一例であるサーマルプリンタの概略構成を示す全体図である。
【図5】図1に示した放熱体の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
X サーマルヘッド
Y サーマルプリンタ
10 基板
10a 第1長辺
10b 第2長辺
10c 一方主面
20 蓄熱層
30 抵抗体層
40 導電層
41 第1導電層
42 第2導電層
50 保護層
60 駆動IC
61a,61b 外部接続用部材
70 放熱体
70a 主面(上面)
70b 第1側面(第1基準面)
70c 第2側面(第2基準面)
70e 他方主面(下面)
701 第1窪み部
701a 第1弧状面
701b 第2弧状面
701c 第1螺合部
701d 第2螺合部
701e 開口部
7011 第3窪み部
702 第2窪み部
702a 第3弧状面
703 突出部
80 搬送手段
81 プラテンローラ
82,83,84,85 搬送ローラ
90 駆動手段
H 発熱素子
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において略矩形状の基板と、該基板の一方の長辺に沿って一方の主面上に配列されている複数の発熱素子と、前記基板の他方の主面に設けられている放熱体とを含んでなり、
前記放熱体は、前記基板の他方の長辺に沿って延びる第1基準面と、該第1基準面より前記発熱素子側に窪んでなり且つ前記他方の長辺に沿って延びる第1窪み部と、前記基板の一方の長辺に沿って延びる第2基準面と、該第2基準面より前記発熱素子側に窪んでなり且つ前記一方の長辺に沿って延びる第2窪み部とを有し、
前記第1窪み部は、その両端部に嵌入部を有するとともに、前記第2窪み部の容積が前記第1窪み部の容積に比べて小さいことを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
前記第2窪み部は、前記第2基準面からの深さが前記第1窪み部の前記第1基準面からの深さに比べて浅いことを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド。
【請求項3】
前記発熱素子は、平面視において、前記第1窪み部と前記第2窪み部との間に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記発熱素子は、平面視において、前記第1基準面からの離間距離に比べて第2基準面からの離間距離が短いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記嵌入部に螺合されるネジをさらに有しており、
該ネジは、セルフタッピングネジであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項6】
前記放熱体は、前記第1窪み部の少なくとも前記嵌入部の内周面よりさらに窪んでなり、前記第1窪み部の開口部と対向する第3窪み部を有していることを特徴とする請求項5に記載の記録ヘッド。
【請求項7】
前記第1窪み部は、内周面が略円弧状であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項8】
前記第2窪み部は、内周面が略円弧状であり、前記第2窪み部の曲率が前記第1窪み部の曲率より大きいことを特徴とする請求項7に記載の記録ヘッド。
【請求項9】
前記放熱体は、略直方体状の本体部を有しており、
前記基板に当接する前記本体部の上面と前記第1窪み部の内周面との間の最小厚みが、前記本体部の下面と前記第1窪み部の内周面との間の最小厚みに比べて厚いことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の記録ヘッドと、記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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