説明

記録再生装置及びその駆動方法

【課題】可撓性を有する薄型ディスクを低速回転域においても安定回転できる記録再生装置の提供。
【解決手段】可撓性を有し情報を記録するディスクを回転させる回転機構と、前記ディスクに対向するように近接配置して、回転する前記ディスクの形状を安定化させる、回転可能な円盤状の第一のスタビライザと、第一のスタビライザに離接可能に配置して、前記第一のスタビライザの形状を安定化させる第二のスタビライザとを備え、前記ディスクに対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生装置であって、前記第一のスタビライザは、前記ディスクの回転方向と逆方向に回転し、前記ディスクとの相対速度が一定値であることを特徴とする記録再生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録再生装置及びその駆動方法に関し、特に薄型光ディスクに対する記録再生装置及びその駆動方法関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送のデジタル化が始まるなど、大容量のデジタルデータを記録することが情報記録媒体に求められている。例えば、光ディスクの分野においては、情報の記録再生のために光ディスクに集光される光スポット径を小さくすることが、高密度化のための基本的な方法の一つに挙げられる。なお、以下において光ディスクを代表として説明するが、本発明が対象とする記録再生装置(ディスクドライブ装置ともいう。)に用いられるディスクは、相変化メモリ,光磁気メモリ,ホログラムメモリなどのディスク状の記録媒体すべてを対象にし、特に光ディスクに限定するものではない。
【0003】
従来の光ディスクおよびそのディスクドライブ装置においては、例えば、一般に普及するCD、DVD、青紫色レーザーを用いた光ディスク(Blu-ray DiscやHD−DVD)など、再生用又は、追記型・書き換え型光ディスクでは、ディスク直径120mm、ディスク厚が1.2mmのポリカーボネート基板により構成され、回転起動は、スピンドルに付随した台座に乗せてからそのまま回転させ、その後レーザー光を照射するピックアップの動作によりデータの記録再生を行っている。
【0004】
記録情報の大容量化に伴いデータ転送レートの高速化が求められているが、例えば、放送用HDTVの映像録画における転送レートは、250Mbps以上が一つの目安と言われている。この転送レートをディスクの記録面全面での実現する場合、内周部での転送レートを確保するために、ディスクは15000rpm以上の高速回転が必要となる。このような高速回転においても、記録再生時のディスク面へのフォーカスサーボ追従の観点から、高速回転に伴うディスクの面振れを小さくすることが必要である。さらに、記録情報の大容量化に対応して、レーザーを絞り込んで高密度の記録再生を行う上では、ディスク回転時のディスク面の揺れ、すなわち面振れ量が小さいことが非常に重要である。
【0005】
剛体のディスクの振動による面振れ対策としては、従来から、弾性体によりディスクをターンテーブル上に保持して回転させるディスクの振動防止装置が知られている。これらの振動防止装置では、通常用いられている剛体材料製のディスクを、弾性材料を介してターンテーブル(スピンドル)に固定している。そして、弾性材料により、ディスクを回転させた場合の振動(共振)の抑制や、ディスク保持部のゴミの挟み込みによる結合不良による振動を防止している。しかし、剛体材料製のディスクでは、10000RPMを超えるような高速回転の記録再生には不向きである。
【0006】
そこで、ポリカーボネートフィルムによる厚さ0.08〜0.2mmで、光学透過層の厚さが0.1mm以下の薄型光ディスク(以降、『薄型光ディスク』と記す)を用いた光ディスクが知られている。この薄型光ディスクの駆動装置については、たとえば、対物レンズのNAが0.55から0.66の光学系から構成されるデータ容量(レーザー光源が405nm付近で対物レンズのNAが0.85である装置が120mmのディスクで約23から25GBの容量を持つのに対し、NA0.65の場合約15GB)の装置(例えばDVDフォーマットやHD−DVDフォーマットによる装置)の場合、光学補正層が約0.5mm必要となる。
【0007】
直径120mmで約23から25GBの容量をもつディスクとする場合、スタビライザを用いた、薄型光ディスクにおいては、スピンドルに付随する台座に載せて回転させるが、薄型光ディスクの面振れが大きくなりデータ読み取りが不可能である。このため、高速回転に適するディスクとして可撓性を有するディスクがある。可撓性を有するディスクの高速回転に伴う面振れ対策としては、ディスクを高速回転させたときの空気力学的な安定化手段を用いる方法が提案されている。可撓性を有するディスクにおいては、高速回転させると、剛体材料製のディスクのような共振による面振れではなく、可撓性で円盤状のディスクの高速回転にともなう波打ち現象のような面振れが起こり易い。また、可撓性を有するディスクは、回転開始前又は低速回転時に重力による垂れ下がり現象がある。
【0008】
特許文献1に開示されているように、ディスク面の下方にスタビライザを配置し、ディスクと同時に回転させ、ディスクが重力で垂れ下がってもスタビライザが支えることができ、対物レンズから出射されるレーザー光を集光する役割も同時に持つ、光学透過層兼姿勢制御板(スタビライザ)を持つ構成の光ディスク駆動装置がある。
【0009】
また、高速回転での面振れに対しては、空気力学的な安定化手段を用いる方法が知られている。例えば、特許文献2、特許文献3に開示されている光ディスク駆動装置は、ディスク上方からディスク表面に被さるように平坦かあるいはある程度の湾曲した形状をもつスタビライザを0.1mm程度の間隔で近接させることで、従来型の1.2mm厚の光ディスクよりも面振れを抑制し、高速時でも高精度な読み取りを可能としている。なお、このとき、高速回転域すなわち回転数が4000rpm以上で、面振れ量が少なくなることが知られている。
【特許文献1】特開2006−344291号公報
【特許文献2】特開2006−107699号公報
【特許文献3】特開2007−149311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された薄型光ディスク駆動装置では、対物レンズのNAが0.85付近で、120mmのディスクで約23から25GBの容量を持つ装置を構成する場合は、光学透過層厚が0.1mm付近である必要があるが、ディスク自身でこの光学透過層を持つため、ディスクと対物レンズの間に、光学透過層兼姿勢制御板を挿入する構成をとることができない。
【0011】
また、特許文献2や特許文献3のような薄型光ディスクを起動する際には、その薄さと柔らかさから、装着して回転させる前にディスク中心から外周に向けてディスク自身が重力により垂れ下がり、現在一般に用いられている光ディスク記録装置に適用した場合、一定の回転数まで加速していく際に、ディスクがそのディスクドライブ周辺部分(シャーシ)に接触し、ディスク自身及びデータを損傷する恐れがある。一般に、薄型光ディスクは、回転数が大きくなるにしたがって遠心力により徐々に平坦になっていくが、4000rpm以下の低速回転時や0rpmからの加速時には、空気力学的な安定化効果があまり働かず、重力の影響を受けて面振れ量が極端に大きくなるという問題点は避けられなかった。
【0012】
本発明の目的は、上述の課題を踏まえ、可撓性を有する薄型ディスクを低速回転域においても安定回転できる記録再生装置及びその駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明者等は、以下の発明を完成した。
本発明は、可撓性を有し情報を記録するディスクを回転させる回転機構と、前記ディスクに対向するように近接配置して、回転する前記ディスクの形状を安定化させる、回転可能な円盤状の第一のスタビライザと、第一のスタビライザに離接可能に配置して、前記第一のスタビライザの形状を安定化させる第二のスタビライザとを備え、前記ディスクに対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生装置であって、前記第一のスタビライザは、前記ディスクの回転方向と逆方向に回転し、前記ディスクとの相対速度が一定値であることを特徴とする記録再生装置である。
【0014】
好ましい本発明は、前記第二のスタビライザの前記第一のスタビライザとの対向面は、平面状又は凹面状に湾曲していることを特徴とする前記記録再生装置である。
【0015】
本発明は、可撓性を有するディスクに対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生装置の駆動方法であって、第一のスタビライザを前記ディスクに対向するように配置して、前記ディスクが回転する方向と逆方向に一定回転数で回転させる第1のステップと、前記ディスクを回転させて回転速度を上げていくと共に、前記第一のスタビライザの回転速度を前記ディスクとの相対速度が一定値となるように下げていく第2のステップと、前記ディスクを回転形状が安定化する一定速度で回転させるとともに、前記第一のスタビライザの回転を停止させる第3のステップと、前記第一のスタビライザとは離間していた第二のスタビライザを前記第一のスタビライザに密着させる第4のステップと、前記ディスクの回転速度を、情報の記録又は再生を行う回転速度に上げる第5のステップと、を含むことを特徴とする記録再生装置の駆動方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可撓性を有する薄型ディスクを低速回転域においても安定回転できる記録再生装置及びその駆動方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の記録再生装置は、可撓性を有し情報を記録するディスクを回転させる回転機構と、前記ディスクに対向するように近接配置して、回転する前記ディスクの形状を安定化させる、回転可能な円盤状の第一のスタビライザと、第一のスタビライザに近接配置して、第一のスタビライザの形状を安定化させる第二のスタビライザとを備え、前記ディスクに対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生装置であって、第一のスタビライザは、ディスクの回転方向と逆方向に回転することができ、前記ディスクとの相対速度が一定値である。高速で回転する可撓性の薄型ディスクは、遠心力により比較的安定して回転させ得るが、低速領域では重力の影響や周辺の空気との干渉により垂れ下がったり、波打ったりしながら回転する。このような可撓性の薄型ディスクの形状変化を「面ぶれ」と呼んでいる。なお、面ぶれは高速回転域でも起こってはいる。ディスクが回転中に所定幅以上の面ぶれを起こすと、情報の記録再生ができないことは勿論、周辺の部品等と接触して記録内容の破損やディスクそのものの破壊につながる恐れがある。
【0018】
本発明の記録再生装置は、このような可撓性の薄型ディスクの高速回転域だけでなく、低速回転域での面ぶれをも抑えることができる。一般に、記録再生装置におけるスタビライザは、可撓性の薄型ディスクの回転中の面ぶれを抑える働きをするものであるが、本発明の記録再生装置は、主にディスクの低速回転時の面ぶれを抑制する回転可能な第一のスタビライザと、第一のスタビライザの外側(薄型ディスク側と反対側)から第一のスタビライザを介して、主にディスクの高速回転時の面ぶれを抑制する第二のスタビライザとを備えている。
【0019】
第一のスタビライザは、ディスクと同軸で回転するが、ディスクとは逆方向に回転する。そして、ディスクの回転が停止している間に一定回転数まで回転させてディスクに近接させておき、その後ディスクを起動する。ディスクの回転速度が上がるに従って、第一のスタビライザの回転速度を下げ、両者の相対回転速度をほぼ一定値に保つ。なお、第一のスタビライザとディスクの相対回転速度は、厳密に一定値でなくてもよく、両者の間に働く空気力学的作用が同等とみなされる範囲で一定値とすればよい。そして、ディスクの回転速度が前記の一定回転数まで上がった時点で第一のスタビライザの回転数は0になる。ここで、一定回転数は、ディスクの回転形状が不安定な低速域を超えた回転速度に対応していることが好ましい。なお、一般に、スタビライザを備えた記録再生装置におけるディスクの安定化する回転速度は、4000rpm程度とされており、一定回転数は4000rpm程度とすることが好ましい。第一のスタビライザの回転数が0になった時点で、第二のスタビライザを第一のスタビライザに密着又は近接させることにより、ディスクは第一のスタビライザを挟んで第二のスタビライザの対向面の形状に従って安定しながら回転する。なお、第二のスタビライザの対向面の形状は、平面状又は凹面状であることが好ましい。このような状態で、記録再生装置は、所望の回転数でディスクに安定した情報を記録又は再生ができる。一般に、情報を記録又は再生するディスクの回転速度は、ディスクの安定化する回転速度以上であり、例えば、10000rpm以上、15000rpm程度が好ましい。
【0020】
ディスクへの記録再生を停止する場合には、ディスクの回転を一定回転数、例えば4000rpmまで下げて、一定回転数になった時点で、第二のスタビライザを第一のスタビライザから離間させ、第一のスタビライザを、第一のスタビライザとディスクの相対的な回転速度が一定になるように、ディスクの回転と逆方向に回転させながら、ディスクの回転速度を下げ、ディスクを停止させる。なお、第一のスタビライザとディスクの相対的な回転速度は、厳密に一定でなくてもよい。ディスクの回転速度が遅いときに、第一のスタビライザとディスクが、狭い間隙を介して空気力学的な作用を発揮して、ディスクの重力による垂れ下がりを抑制できる程度の相対速度を保っていればよい。第一のスタビライザは、ディスクの回転が停止してから停止させればよい。なお、必要に応じ、ディスクと第一のスタビライザを離間させたり、ディスクを記録再生装置から取り外したりしてから第一のスタビライザを停止させてもよい。
【0021】
第一のスタビライザは、どのような材質のものでもよいが、金属あるいはアクリル樹脂などでできた剛性のある材料で構成されたもの、あるいは、静止時にも重力の影響でほとんど垂れ下がりがない程度の剛性をもつが、多少可撓性の高分子フィルム、特にポリカーボネートフィルムや金属により厚さ0.2mmから0.3mmで構成されたものが好ましい。可撓性のある第一のスタビライザは、第二のスタビライザが接近してきて、第一のスタビライザに密着したときに、第一のスタビライザの表面形状が、第二のスタビライザの表面形状と同じになるように変形することが好ましい。これにより、ディスクの高速回転域では、ディスクに対向する第一のスタビライザの表面は、第二のスタビライザの表面形状により調整することができる。なお、第一のスタビライザは、第二のスタビライザと密着していないときは、円盤形状を保っていることが好ましい。特に第一のスタビライザが回転中は、円盤形状を保っていることが好ましい。
【0022】
(第一の実施形態)
以下に具体的な本発明の記録再生装置、及びその駆動方法について説明する。
図1は、本発明の記録再生装置に係る、薄型光ディスク(以下、ディスクと略称する。)の回転機構の起動から記録再生をするための定常回転までのステップを示す側面図である。図2は、ディスクの回転機構の起動から定常回転までのタイムチャートを示す。以下、図1、2に従って第一の実施形態の記録再生装置について説明する。
【0023】
図1において、(1)は薄型光ディスク回転前の状態であり、第一のスタビライザの回転が4000rpmまで上昇している状態、(2)は薄型光ディスクが回転を始め4000rpmに向かって速度上昇中の状態、(3)は薄型光ディスクが定常回転になり、記録再生が行われている状態である。なお、第一のスタビライザの回転速度は、(2)の状態において4000rpmから0rpmへと下降している。
【0024】
第一の実施形態の回転機構は、記録再生装置のシャーシ6上にディスク1の回転用のスピンドルモータ4が配置されており、図1においては、ディスク1の中央部がスピンドルモータ4の軸上に配置され、スピンドルモータ4により駆動されるようになっている。なお、図1(1)においては、ディスク1は静止しているので、外周部は重力により垂れ下がっている。ディスク1の上部には、第一のスタビライザ3と第二のスタビライザ2が、それぞれ狭い間隔をおいて配置されている。第二のスタビライザ2は回転不能であるが、第一のスタビライザ3は回転軸7を介してスピンドルモータ5と連結されており、ディスク1と同じ中心軸を持って、異なった回転速度で逆回転可能である。また、第一のスタビライザ3はディスク1側に、第二のスタビライザ2は第一のスタビライザ3側に移動可能である。
【0025】
(記録再生装置による記録再生操作)
図1(1)から図1(3)、及び図2を参照にしながら、本発明の記録再生装置によるディスク1からの記録再生操作を説明する。図1(1)は、ディスク1の回転前の状態であり、ディスク1は回転機構(ディスクドライブ)のスピンドルモータ4により回転駆動できるよう装填されている。このときディスク1は停止しており、ディスク1は、例えば外周部は2mm程度垂れ下がった状態である。
【0026】
スタビライザは、第一のスタビライザ3と第二のスタビライザ2により構成される。第一のスタビライザ3は、ディスク1の回転方向とは逆方向に回転し加減速することのできるスタビライザで、ディスク1に近接する面の形状は、平坦か、あるいは、回転停止時には、光ヘッドの移動する接線方向に対し、左右にある程度の曲率を持って湾曲した凹面形状とすることができるものである(ただし、停止時にはある程度の角度をずらして停止することもある。)。第一のスタビライザ3の厚さは、ディスク1が0.1mmであることを想定した場合、それより厚い1mm程度の厚さを想定している。第一のスタビライザ3は、静止しても実質的に重力で垂れ下がらず、0.1mmの間隔でディスク1と4000rpmで回転しながら近接しても形状変化しない程度の質量と硬さをもつものである。
【0027】
第二のスタビライザ2は回転せず、第一のスタビライザ3と離接可能である。第二のスタビライザ2は、ディスク1が高速回転(例えば15000rpm)で回転しても、形状が変形しない程度の重さと硬さをもち、厚さは第一のスタビライザ3に比べ、安定度の高い5〜10mmのアクリルまたは銅、真鍮などの金属でできたものが好ましい。
【0028】
図1(1)に示した状態は、図2に示した、本発明の記録再生装置の駆動方法に係るタイムチャートにおける、記録再生装置の起動前(図2の(停止時)、(A)領域)から、第一のスタビライザ3が4000rpmまで、ディスク1の回転方向と逆方向に回転駆動されている状態を示している。このとき、図2に示すように、ディスク1(薄型光ディスク)の外周部の垂れ下がり量は2.0mmm、第一のスタビライザ3とディスク1(の中心部付近)の間隔は0.1mmである。第一のスタビライザ3は、スピンドルモータ5による駆動開始とともに、ディスク1の正規回転方向と反対方向に回転を始め(状態B領域)、4000rpmで定常回転している((C)領域)。この状態で、ディスク1は、まだ回転しておらず、外周部が垂れ下がったままである。なお、第一のスタビライザ3と第二のスタビライザ2の間隔は1.0mmのままである((A)〜(C)領域)。
【0029】
このディスク1は、従来の薄型光ディスクと同様、従来のような固定されたスタビライザを備えていれば、4000rpm以上で面ぶれが小さくなり、安定回転する性質を備えている。安定回転領域に入る回転数が4000rpm以外の薄型光ディスクを使用する場合は、第一のスタビライザ3の一定の回転数を安定回転領域に入る回転数(但し、ディスク1とは逆回転である。)にすればよい。
【0030】
第一のスタビライザ3とディスク1との間隔は、0.1mmとしているが、この間隔は、ディスク1が4000rpm以上で面ぶれを最小にするような間隔である。通常の薄型光ディスクであれば、第一のスタビライザ3とディスク1との間隔は、0.1mmとすることで、ディスク1の面ぶれ量は10μm程度となる。この間隔は、ディスク1の性能に合わせて適当に調整すればよい。
【0031】
次に、ディスク1をスピンドルモータ4により正方向(ここでは、図1(2)において上から見て時計回り)に回転させ始め、これを等加速度で加速させて、4000rpmとする(図1(2)の状態、及び図2の(D)領域)。このとき、ディスク1の回転速度と第一のスタビライザ3との相対速度(相対回転速度)は一定となるように、第一のスタビライザ3の回転を減速する。この間、ディスク1は回転速度の上昇とともに遠心力により、外周部の垂れ下がり状態から水平状態へと変化する。従来の記録再生装置のようにディスク1の回転数が低いときに、ディスク1が大きく垂れ下がったまま回転し、ディスク1の下側のシャーシ6部分にディスク1が擦れて破損したり、記録内容が損傷したりするリスクを低減できる。このようにすることにより、ディスク1は、0rpmから4000rpmへと回転速度を加速していく段階で、従来のディスクのような大きな面ぶれを起こさないで定常状態である4000rpmになることができる(図2の(D)領域)。
【0032】
図2に示したタイムチャートを参照にして説明すれば、図2の(D)領域においては、ディスク1の外周部の垂れ下がり量は回転数の増加とともに減少し、ディスク1の定常状態での面ぶれ量10μmの範囲に収まってしまう。本発明の記録再生装置においては、ディスク1が4000rpmになる以前、例えば2500rpm程度でディスク1は定常状態になってしまうことが多い。第一のスタビライザ3は、ディスク1との相対回転速度を4000rpmを保つように減速され、ディスク1の回転数が4000rpmとなった時点で停止される。このように、本発明の記録再生装置においては、ディスク1の回転の不安定領域である低速回転数領域が、0〜4000rpmではなく、0〜2500rpmと狭くなっており、面ぶれ量も小さくなっている。
【0033】
ディスク1が4000rpmになり、ディスク1の面振れが安定したところで、第二のスタビライザ2が上方から第一のスタビライザ3に向かって移動し、第一のスタビライザ3と結合する(図2の(E)領域)。第一のスタビライザ3と第二のスタビライザ2の結合面は、ディスク1が高速回転(例えば15000rpm)で回っても、第一のスタビライザ3が振動しないように、吸着ゴム等を表面に貼付けて密着するようにしておくことが好ましい。このようにして、ディスク1が記録再生を実行する高速回転に達したときは、第一のスタビライザ3と第二のスタビライザ2が一体化して、従来のスタビライザと同様にディスク1の安定性を促すスタビライザとして振舞うこととなる。本発明の記録再生装置は、ディスク1の面ぶれが少なく安定化する領域に達するまでの時間が短く、およそ4000rpm以下の不安定領域と呼ばれている回転数領域でも、面ぶれ量が比較的小さく、安定化する回転数も低い。
【0034】
ディスク1が4000rpm以上になり、面ぶれがなく安定に回転すれば、ディスク1を所望の回転数(例えば、15000rpm)まで上げ(図2の(G)領域)、従来の記録再生装置と同じように、目標のトラックにて記録再生ヘッドを動作し、ディスク1に対し例えばレーザビームによりデータの記録再生を行うことができる。
【0035】
記録再生が終了し、記録再生装置を停止させるときは、記録再生ヘッドのトラッキングサーボの動作とフォーカスサーボの動作を停止し、ディスク1を安定な領域での低速回転数(例えば4000rpm)まで減速させる。そして、第一のスタビライザ3を第二のスタビライザ2から離し、稼働開始前と同じように約1mm離間させる。
【0036】
第二のスタビライザ2が第一のスタビライザ3から離間したら、図2のタイムチャートを稼働開始時と反対に(D)領域から(A)領域へと辿るようにして、稼働停止をする。ディスク1の回転数を4000rpmからさらに低下させるとともに、第一のスタビライザ3をディスク1と逆方向に回転させ、第一のスタビライザ3とディスク1との相対回転速度を4000rpmに保ちながら、ディスク1の回転を減速し停止する。これに伴い、第一のスタビライザ3は、ディスク1の回転方向と逆方向に4000rpmで回転することになる。ディスク1は、外周部が回転数低下とともに重力により垂れ下がる傾向にあるが、従来の記録再生装置のようには垂れ下がらない。回転している第一のスタビライザ3の空気力学的作用によって、ディスク1は、かなりの低速回転まで第一のスタビライザ3と等間隔で安定していることが多い。このため、従来の記録再生装置のようにディスク1の回転数が低下したときに、ディスク1が垂れ下がり、ディスク1の下側のシャーシ6部分にディスク1が擦れて破損したり、記録内容が損傷したりするリスクを低減できる。
【0037】
ディスク1の回転が完全に停止してから、第一のスタビライザ3の回転を停止させて装置全体の稼働停止とする。この際、必要に応じて第一のスタビライザ3をディスク1の上方に移動させ、ディスク1を取り出しやすくしてもよい。
【0038】
なお、ディスク1が、例えば2500rpmくらいで安定化するのであれば、図2のタイムチャートにおける(B),(C)領域において、第一のスタビライザ3の最大回転数を2500rpmとしてもよい。第一のスタビライザ3の回転数を低くすれば、その分消費電力が少なく済み、省エネルギー運転とすることができる。
【0039】
(第二の実施形態)
図3には、図2のタイムチャートに対応する第二の実施形態の記録再生装置の駆動方法のタイムチャートを示す。第二の実施形態の第一の実施形態との違いは、記録再生装置の稼働開始時に、第一のスタビライザ3をディスク1から0.4mm程度離間させておく。特に、第一のスタビライザ3が厚さ0.2mmほどである程度の可撓性を持つ場合は、回転起動時に最大0.3mm程度の面振れをもちながら回転し始め、回転数の増加に伴い遠心力で水平に近づき徐々に面振れが小さくなるため、第一のスタビライザ3の回転を始めてから、第一のスタビライザ3の回転数の上昇とともに、第一のスタビライザ3とディスク1の距離を徐々に0.1mmまで接近させる(図3の(B)領域参照)。このようにすることで、スタビライザ3がある程度の可撓性を持つ場合は、ディスク1に接触する恐れがなく、回転加速することができる。
【0040】
この実施形態の記録再生装置は、図3における(C)領域以降は、第一の実施形態の記録再生装置の図2における(C)領域以降と同様でよい。稼働停止時においては、ディスク1の回転を停止し、第一のスタビライザ3の回転を停止させる際に異なった操作を行う。この実施形態の記録再生装置では、第一のスタビライザ3の回転数の下降とともに、第一のスタビライザ3とディスク1の距離を徐々に0.4mmまで離間させて行けばよい。このようにすることで、第一のスタビライザ3の外周部が垂れ下がっていっても、ディスク1に接触する恐れがない。
【0041】
本発明の記録再生装置及び駆動方法により、ディスク起動の回転加速時には、極力、ディスクは、外周部付近が周辺のディスク装置のシャーシ6に接触せずに回転し、また、回転減速・停止時にも極力周辺への接触を防ぐことができるため、ディスク自身を損傷せずに、ディスクに記録したデータの長期保存を行い、記録したデータの再現性を持続させる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、可撓性を有するディスクに対して記録および/または再生処理を行う記録再生装置、ディスク組立体、ディスクカートリッジに適用され、特に、今後開発される高速大容量記録再生用のディスクやそのカートリッジ、記録再生装置に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の記録再生装置における、薄型光ディスクを載せたディスク回転機構の側面図である。(1)は、薄型光ディスク回転前の状態であり、第一のスタビライザの回転が4000rpmまで上昇している。(2)は、薄型光ディスクが回転を始め4000rpmに向かって速度上昇中である。なお、第一のスタビライザの回転速度は4000rpmから下降している。(3)は、薄型光ディスクが定常回転になり、記録再生が行われている状態である。
【図2】図1におけるディスク回転機構の各部分の動作を表すタイムチャート例(1)
【図3】図1におけるディスク回転機構の各部分の動作を表すタイムチャート例(2)
【符号の説明】
【0044】
1:ディスク(薄型光ディスク)
2:第二のスタビライザ
3:第一のスタビライザ
4:スピンドルモータ(ディスク駆動用)
5:スピンドルモータ(第一のスタビライザ駆動用)
6:シャーシ(の記録再生装置の一部分)
7:第一のスタビライザ回転軸
8:記録再生ヘッド
9:レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し情報を記録するディスクを回転させる回転機構と、
前記ディスクに対向するように近接配置して、回転する前記ディスクの形状を安定化させる、回転可能な円盤状の第一のスタビライザと、
第一のスタビライザに離接可能に配置して、前記第一のスタビライザの形状を安定化させる第二のスタビライザとを備え、
前記ディスクに対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生装置であって、
前記第一のスタビライザは、前記ディスクの回転方向と逆方向に回転し、前記ディスクとの相対速度が一定値であることを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
前記第二のスタビライザの前記第一のスタビライザとの対向面は、平面状又は凹面状に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
可撓性を有するディスクに対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生装置の駆動方法であって、
第一のスタビライザを前記ディスクに対向するように配置して、前記ディスクが回転する方向と逆方向に一定回転数で回転させる第1のステップと、
前記ディスクを回転させて回転速度を上げていくと共に、前記第一のスタビライザの回転速度を前記ディスクとの相対速度が一定値となるように下げていく第2のステップと、
前記ディスクを回転形状が安定化する一定速度で回転させるとともに、前記第一のスタビライザの回転を停止させる第3のステップと、
前記第一のスタビライザとは離間していた第二のスタビライザを前記第一のスタビライザに密着させる第4のステップと、
前記ディスクの回転速度を、情報の記録又は再生を行う回転速度に上げる第5のステップと、
を含むことを特徴とする記録再生装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−49747(P2010−49747A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213214(P2008−213214)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】