説明

記録媒体収納カセット及びそれを備えた画像形成装置

【課題】記録媒体給送時の記録媒体後端の跳ね音を効果的に低減するとともに、記録媒体のセット性も改善された記録媒体収納カセット及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】カセットベース25の四方の周縁部には壁部25a〜25dが立設されている。給紙方向に対し下流側に位置する壁部25aの長手方向略中央部には、画像形成装置100本体側の給送ローラ対30に対峙する第1切り欠き部41が形成され、壁部25aの長手方向両端部には、第2切り欠き部43、43が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置に用いられる、シート状の記録媒体を収納する記録媒体収納カセット及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の用紙(記録媒体)を複数枚積層して収納するとともに、画像形成動作に応じて画像形成装置本体の画像形成部へ用紙を1枚ずつ分離して搬送する給紙カセットが広く用いられている。
【0003】
従来の給紙カセットの構成について説明する。図5は、従来の給紙カセット10の側面断面図である。給紙カセット10のカセットベース25にセットされた束状の用紙26は、昇降機構(図示せず)によって上下に昇降する用紙積載板28の上昇により、所定の圧力で装置本体側に設けられたピックアップローラ29に押しつけられる。ここで画像形成装置のコピー開始ボタンがオンされると、ピックアップローラ29及び給送ローラ対30の給紙ローラ30aが図中矢印方向に回転駆動される。
【0004】
用紙積載板28上にセットされた用紙26は、ピックアップローラ29によって通常上段の複数枚が給送ローラ対30に送られる。給送ローラ対30は、給紙ローラ30a及び給紙ローラ30aに圧接または離間する分離コロ30bから成り、分離コロ30bにはトルクリミッタが内蔵され、回転負荷が所定トルクを上回る場合のみ給紙ローラ30aと従動回転するようになっている。給送ローラ対30に送られた複数枚の用紙は、分離コロ30bにより最上の1枚のみが分離されて用紙搬送路11に向けて搬送される。カセットベース25には、用紙26の後端を揃える後端カーソル31が用紙搬送方向(図の左右方向)に移動可能に設けられている。
【0005】
このような給紙カセット10においては、用紙積載板28上に束状の用紙26をセットする際や、一度セットした用紙26を取り除いて、サイズや紙質の異なる用紙26をセットする際に、カセットベース25の周縁部に立設された壁部が邪魔になって作業性が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで、給紙カセットに対する用紙の出し入れを円滑に行うことのできる給紙カセットが種々提案されており、例えば特許文献1には、給紙カセットの側面から底面に亘って少なくとも手が入るような切り欠き部を設けた構成が開示されている。また、特許文献2には、カセット板(用紙積載板)と一体形成された用紙当たり部(後端カーソル)の一部を切り欠いて指入れ部を設けた構成が開示されている。
【0007】
ところで、上記のように給紙カセットから用紙を給送する際、用紙後端の跳ね音が発生するという問題がある。具体的には、用紙搬送路11に向けて1枚の用紙26が搬送されるとき、図6に示すように、搬送中の用紙26の後端26aが搬送方向上流側のピックアップローラ29と用紙積載板28とのニップ部を通過した後、用紙26の復元力で後端26aがカセットベース25の給紙方向に位置する壁部25aの上端に打ち付けられて用紙搬送音(跳ね音)が発生する。
【0008】
この跳ね音は一瞬に高い音が発生する、いわゆるインパルス応答であるためユーザにとって非常に耳障りとなる。近年、騒音軽減の要求が高まっており、騒音要因の一つである用紙後端の跳ね音の対策が重要となっているが、特許文献1、2の方法では用紙後端の跳ね音を低減することはできなかった。
【0009】
従来の対策としては、用紙後端が打ち付けられる場所に弾性体等のクッション性を有する部材を取り付けて跳ね音の軽減を図っていた。しかしながら、この方法では部材の追加による材料費、製造費のコストアップに繋がる上、取り付けた部材が用紙のジャム等の弊害を引き起こすおそれもあった。
【0010】
用紙後端の跳ね音を低減する方法としては、例えば特許文献3に、用紙カセットより送出された用紙を反転させて像転写部へ導くターンガイドの案内面に複数のリブを形成し、リブの用紙カセット先端に向かって突出する凸部の形状をターンガイドの中央から両端に向かって低くした給紙装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−88630号公報
【特許文献2】特開平4−209137号公報
【特許文献3】実開昭63−42641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献3に記載の技術は用紙カセットから給送される用紙の後端とターンガイドとの衝突による跳ね音の発生を防止するものであり、用紙の後端と用紙カセットの壁部との衝突による跳ね音を防止するものではなかった。また、用紙は給紙ローラ対にニップされる幅方向中央部が下向きに撓みながら給紙方向に搬送されるが、特許文献3の給紙装置ではターンガイドの中央のリブが最も高くなっているため、用紙の撓みを考慮して衝突を回避する技術的思想は開示されていなかった。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、記録媒体給送時の記録媒体後端の跳ね音を効果的に低減するとともに、記録媒体のセット性も改善された記録媒体収納カセットを簡便且つ低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、カセットベース及び該カセットベースの周縁部に立設される複数の壁部で構成され、シート状の記録媒体を収納するハウジングと、該ハウジングに回動可能に設けられ記録媒体の積載量に応じて一端が昇降する記録媒体積載板と、を備え、画像形成装置本体に対し着脱自在に装着される記録媒体収納カセットにおいて、前記複数の壁部のうち記録媒体の給送方向に立設される壁部には、前記画像形成装置本体側に設けられ前記ハウジング内の記録媒体を分離して給送する給送ローラ対に対峙する位置に、前記壁部の上端に向かって開口する第1切り欠き部が形成されることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の記録媒体収納カセットにおいて、前記壁部の上端部の長手方向両端部には第2切り欠き部が形成され、該第2切り欠き部と前記第1切り欠き部との間に、前記ハウジング内の記録媒体が給送方向へ移動するのを規制する記録媒体規制部が形成されることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の記録媒体収納カセットにおいて、前記記録媒体規制部は、記録媒体の給送方向から見て頂点を有する山形状であることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の記録媒体収納カセットにおいて、前記記録媒体規制部の頂点の間隔は、前記給送ローラ対の幅よりも広いことを特徴としている。
【0018】
また本発明は、上記構成の記録媒体収納カセットにおいて、前記記録媒体規制部の頂点は、記録媒体の給送方向から見て前記ハウジング内に収納される最小幅の記録媒体の内側直近に配置されることを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記構成の記録媒体収納カセットにおいて、前記第1切り欠き部は、前記壁部の上端に向かって幅広となるテーパ部と、該テーパ部の下方に連続する延長部とで構成され、前記延長部は、前記壁部の下端近傍まで延設されることを特徴としている。
【0020】
また本発明は、上記構成の記録媒体収納カセットが搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の構成によれば、記録媒体の給送方向に立設される壁部の給送ローラ対に対峙する部分に第1切り欠き部を形成することにより、給送ローラ対にニップされ下向きに撓みながら給送される記録媒体と壁部との衝突を第1切り欠き部により効果的に回避して跳ね音を低減することができる。
【0022】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の記録媒体収納カセットにおいて、壁部の上端部の長手方向両端部に第2切り欠き部を形成し、第2切り欠き部と第1切り欠き部との間に、ハウジング内の記録媒体が給送方向へ移動するのを規制する記録媒体規制部を形成することにより、記録媒体と壁部とは記録媒体規制部のみで衝突するため跳ね音をより効果的に低減可能となる。また、記録媒体の撓み量が少ない場合でも記録媒体の幅方向両端部と壁部との接触を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の記録媒体収納カセットにおいて、記録媒体規制部を、記録媒体の給送方向から見て頂点を有する山形状に形成することにより、記録媒体と壁部とは記録媒体規制部の頂点のみで衝突するため跳ね音をより効果的に低減可能となる。また、第2切り欠き部から記録媒体規制部の頂点までが傾斜面となるため、記録媒体の撓み量が少ない場合でも記録媒体の幅方向両端部が傾斜面に順次接触しながら給送されるため、跳ね音をより効果的に軽減することができる。
【0024】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第3の構成の記録媒体収納カセットにおいて、記録媒体規制部の頂点の間隔を給送ローラ対の幅よりも広くすることにより、給送ローラ対にニップされて形成される記録媒体の撓み部分と記録媒体規制部の頂点との衝突をより効果的に抑制することができる。
【0025】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第4の構成の記録媒体収納カセットにおいて、記録媒体規制部の頂点を、給送方向から見てハウジング内に収納される最小幅の記録媒体の内側直近に配置することにより、最小幅の記録媒体の移動を規制する機能を維持しつつ記録媒体の撓み部分と記録媒体規制部との接触を極力少なくすることができる。
【0026】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成の記録媒体収納カセットにおいて、第1切り欠き部を壁部の上端に向かって幅広となるテーパ部と、テーパ部の下方に連続する延長部とで構成し、延長部を壁部の下端近傍まで延設することにより、壁部の上端に向かって幅広となるテーパ部において記録媒体の撓み部分との衝突を効果的に回避しつつ、壁部の下端近傍まで延設された延長部に指を差し入れることでハウジング内の記録媒体のセット性を向上することができる。
【0027】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第6のいずれかの構成の記録媒体収納カセットを搭載することにより、記録媒体とカセット壁部との干渉による跳ね音の発生を効果的に低減できる静音性に優れた画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の給紙カセットが搭載される画像形成装置の内部構成を示す概略断面図
【図2】本発明の一実施形態に係る給紙カセットを給紙方向下流側から見た斜視図
【図3】本発明の一実施形態に係る給紙カセットを給紙方向下流側から見た部分側面図
【図4】本発明の一実施形態に係る給紙カセットから用紙が給紙される状態を給紙方向下流側から見た部分側面図
【図5】従来の給紙カセット及び画像形成装置本体側の給送ローラ対周辺の構成を示す側面断面図
【図6】従来の給紙カセットにおいて、給紙される用紙の後端が給紙カセットの壁部を通過する様子を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の給紙カセットが搭載される画像形成装置の内部構成を示す概略図である。画像形成装置100はタンデム式のカラー複写機であり、画像形成装置100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、図1では左側から順に配設されている。画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの画像を順次形成する。
【0030】
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに図1において反時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写されて重畳された後、二次転写ローラ9の作用によって記録媒体の一例としての用紙26上に転写され、さらに、定着装置7において用紙26上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0031】
トナー像が転写される用紙26は、装置下部の給紙カセット10内に収容されている。用紙26は給紙カセット10の用紙積載板28上に積載されており、ピックアップローラ29に用紙26の上面が所定の圧力で圧接された状態でピックアップローラ29を回転させることで用紙26の給送が開始される。そして、給送ローラ対30により複数枚の用紙26のうち最上の1枚のみが分離され、用紙搬送路11に向けて搬送される。用紙搬送路11を通過した用紙26はレジストローラ対14に到達し、画像形成タイミングに合わせて二次転写ローラ9と後述する中間転写ベルト8の駆動ローラ13との間のニップへと搬送される。
【0032】
中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。また、二次転写ローラ9から見て中間転写ベルト8の移動方向の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのクリーニングブレード17が配置されている。
【0033】
画像読取部20は、複写時に原稿を照明するスキャナランプや原稿からの反射光の光路を変更するミラーが搭載された走査光学系、原稿からの反射光を集光して結像する集光レンズ、及び結像された画像光を電気信号に変換するCCDセンサ等(いずれも図示せず)から構成されており、原稿画像を読み取って画像データに変換する。
【0034】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光装置4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング装置5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0035】
画像読取部20から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光装置4によって画像データに応じて光ビームを照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像読取部20からの画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dは、感光体ドラム1a〜1dに対向配置された現像ローラ(現像剤担持体)を備え、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。このトナーは、現像装置3a〜3dの現像ローラにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0036】
そして、一次転写ローラ6a〜6dにより一次転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置5a〜5dにより除去される。
【0037】
中間転写ベルト8は、従動ローラ12及び駆動ローラ13に掛け渡されており、ベルト駆動モータ(図示せず)による駆動ローラ13の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回りに回転を開始すると、用紙26がレジストローラ14から所定のタイミングで中間転写ベルト8に近接して設けられた二次転写ローラ9と中間転写ベルト8のニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、ニップ部において用紙26上にフルカラー画像が二次転写される。トナー像が転写された用紙26は定着装置7へと搬送される。
【0038】
定着装置7に搬送された用紙26は、定着ローラ対15のニップ部(定着ニップ部)を通過する際に加熱及び加圧されてトナー像が用紙26の表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙26は、搬送ローラ対16を経て用紙搬送路19の分岐部に配置された搬送ガイド部材21によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路23に送られて両面コピーされた後に)、排出ローラ対24を介して排出トレイ18に排出される。
【0039】
用紙搬送路19は、具体的には、搬送ローラ対16の下流側において左右二股に分岐し、一方の経路(図1では左方向に分岐する経路)は排出トレイ18に連通するように構成されている。そして、他方の経路(図1では右方向に分岐する経路)は両面搬送路23に連通するように構成されている。
【0040】
次に、給紙カセットの構成について説明する。図2は、給紙カセット10を画像形成装置100本体から引き出した状態を示す斜視図である。図2において、画像形成装置100本体に対する給紙カセット10の挿入方向を矢印A、引き出し方向を矢印A′で示し、給紙カセット10の給紙方向を矢印Bで示す。カセットベース25の四方の周縁部には壁部25a〜25dが立設されている。カセットベース25及び壁部25a〜25dは、給紙カセット10のハウジング(筐体)を構成している。
【0041】
給紙カセット10の挿入方向に対し上流側の壁部25cにはカセットカバー33が装着されている。カセットカバー33は、その表面側(図2の左側)が外部に露出して画像形成装置100(図1参照)本体の外装面の一部を構成する。また、カセットカバー33の中央部には、給紙カセット10を着脱する際の把持部35が設けられている。
【0042】
用紙26(図1参照)が積載される用紙積載板28は、左右の揺動軸28aを支点として給紙方向下流側(図2の矢印B方向)がカセットベース25に対し上下に昇降可能に設けられている。また、用紙積載板28の幅方向両側には、用紙積載板28に積載される用紙26の幅方向の位置決めを行う一対の幅合わせカーソル37a、37bが、カセットベース25に形成された案内レールに沿ってそれぞれ用紙幅方向(図の矢印AA′方向)に往復移動可能に設けられている。また、用紙搬送路11(図1参照)に向けて用紙が矢印B方向に送出されるため、用紙の後端を揃える後端カーソル31は、カセットベース25に形成された案内レールに沿って用紙搬送方向(図の矢印B方向)と平行に往復移動可能に設けられている。
【0043】
この幅合わせカーソル37a、37b、及び後端カーソル31を、積載される用紙サイズに合わせて移動させることにより、用紙26を給紙カセット10内の所定位置に収納する。
【0044】
給紙カセット10の挿入または引き出し方向(矢印AA′方向)に対し平行な壁部25a、25dの外側にはガイドレール40a、40bが付設されている。画像形成装置100本体側にはガイドレール40a、40bを摺動可能に支持するレール支持部(図示せず)が設けられており、ガイドレール40a、40bをレール支持部に沿って摺動させることで、給紙カセット10は画像形成装置100本体に対し挿入及び引き出し可能となっている。
【0045】
図3は、給紙カセット10を給紙方向下流側から見た部分側面図である。給紙方向に対し下流側に位置する壁部25aには、第1切り欠き部41、第2切り欠き部43、43の計3箇所の切り欠き部が形成されている。壁部25aの長手方向略中央部に形成される第1切り欠き部41は、画像形成装置100本体側の給送ローラ対30(図1参照)に対峙しており、上方に向かって幅広となるテーパ部41aと、テーパ部41aの下方に連続する矩形状の延長部41bとで構成される。延長部41bは、壁部25aの下端近傍まで延設されており、延長部41bの幅w1は、給送ローラ対30の幅よりも若干広く設計されている。
【0046】
壁部25aの長手方向両端部に形成される2箇所の第2切り欠き部43は、第1切り欠き部41に向かって緩やかに上昇する傾斜面43aを有しており、傾斜面43aと第1切り欠き部41のテーパ部41aとが交差する部分を頂点45aとする山形の用紙規制部45が形成されている。用紙規制部45は、給紙カセット10内の用紙が給紙方向へ移動するのを規制するものであり、用紙規制部45の頂点45aは、給紙カセット10内に収納可能な最小サイズの用紙幅w2よりも内側に形成されている。また、各用紙規制部45の高さhは、給紙カセット10内に収納可能な最大量の用紙を収納したときの用紙の最大高さ以上に設計されている。
【0047】
次に、本発明の給紙カセットを用いた給紙動作について説明する。画像形成装置100のコピー開始ボタンがオンされると、昇降機構(図示せず)により用紙積載板28が上昇し、用紙積載板28にセットされた用紙束の上面が所定の圧力でピックアップローラ29に押しつけられる。同時に、ピックアップローラ29及び給送ローラ対30の給紙ローラ30a(図1参照)が回転を開始する。そして、ピックアップローラ29及び給送ローラ対30により用紙束の最上の1枚のみが分離されて用紙搬送路11(図1参照)に搬送される。
【0048】
図4は、給紙カセット10から用紙が給紙される状態を給紙方向下流側から見た部分側面図である。給紙方向に位置する壁部25aには第1切り欠き部41、第2切り欠き部43が形成されているため、用紙26の後端は壁部25aの上端を通過する際に用紙規制部45の頂点45aのみと衝突する。これにより、用紙26の後端と壁部25aとの接触面積が小さくなり、用紙跳ね音を軽減することができる。
【0049】
また、図4に実線で示すように、用紙26は給送ローラ対30にニップされる幅方向中央部が下向きに撓みながら給紙方向に搬送される。ここで、壁部25aの給送ローラ対30に対峙する部分には第1切り欠き部41が形成されており、第1切り欠き部41は上方に向かって幅広となるテーパ部41aを有するため、用紙26の撓み部分と壁部25aとの衝突を効果的に回避することができる。
【0050】
従って、用紙26の撓み部分と用紙規制部45との接触をできるだけ少なくするためには、用紙規制部45の頂点45aの間隔をできるだけ広くしておくことが望ましい。そこで、用紙規制部45の頂点45aを第1切り欠き部41からなるべく外側寄りの位置、即ち、最小サイズの用紙幅w2(図3参照)の内側直近に配置することが好ましい。
【0051】
なお、用紙26の撓み量は用紙26のサイズや紙厚によって異なるが、用紙26のコシが強い場合は、図4に破線で示すように用紙26の撓みが小さくなるため、用紙26の幅方向両端部が壁部25aの上端と接触し易くなる。しかし、この場合でも用紙26の幅方向両端部は壁部25aに一度に衝突せず、傾斜面43aに沿って壁部25aの上端に順次接触しながら給送されるため、用紙跳ね音を軽減することができる。
【0052】
また、給紙カセット10の用紙積載板28上に用紙束をセットする際は、用紙束の幅方向中央付近を把持して用紙束の先端を壁部25d側(後端カーソル31側)から用紙積載板28上に載置し、続いて壁部25a側を載置すると、用紙束を把持した指が第1切り欠き部41のテーパ部41aから延長部41bに入り込むため、用紙束をカセットベース25の底面まで確実にセットすることができる。一方、給紙カセット10にセットされた用紙束を交換する場合は、第1切り欠き部41の延長部41bに指を差し入れて用紙束の最下部を把持し、用紙束を一度に取り出すことができる。これにより、用紙束をセットまたは交換するときに壁部25aが障害とならず、作業性が向上する。
【0053】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態においては、壁部25aの給送ローラ対30に対峙する部分に第1切り欠き部41を設け、長手方向両端部に第2切り欠き部43を設けているが、第2切り欠き部43を設けず、壁部25aの給送ローラ対30に対峙する部分に第1切り欠き部41のみを設けた場合でも、給送ローラ対30のニップにより用紙が下向きに撓んだ際の壁部25aとの衝突を軽減できるため、用紙の跳ね音を抑制する効果が期待できる。
【0054】
また、ここでは給送ローラ対30が用紙幅方向の中央部に配置されるため、第1切り欠き部41も壁部25aの長手方向略中央部に形成したが、給紙ローラ41が他の位置に配置される場合は、第1切り欠き部41も給送ローラ対30の位置に合わせて壁部25aの他の位置に形成すれば良い。
【0055】
さらに、第1切り欠き部41、第2切り欠き部43の形状や大きさについても上記実施形態に限定されるものではなく、給紙カセットの仕様や用いられる用紙の種類に応じて適宜設定すれば良い。例えば、第1切り欠き部41の延長部41bは必須の構成ではなく、給紙カセット10への用紙のセット性を考慮しない場合は延長部41bを設けない構成も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、シート状の記録媒体を収納する記録媒体収納カセットに利用可能であり、カセットベースの周縁部に立設される複数の壁部のうち記録媒体の給送方向に立設される壁部に、壁部の上端に向かって開口する第1切り欠き部を画像形成装置本体側の給送ローラ対に対峙する位置に形成したものである。
【0057】
本発明の利用により、記録媒体と記録媒体の給送方向に立設される壁部との衝突を効果的に回避して跳ね音を低減可能な記録媒体収納カセットを簡易且つ低コストで提供可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置
10 給紙カセット(記録媒体収納カセット)
25 カセットベース(ハウジング)
25a〜25d 壁部(ハウジング)
28 用紙積載板
28a 回動側端部
29 ピックアップローラ
30 給送ローラ対
33 カセットカバー
41 第1切り欠き部
41a テーパ部
41b 延長部
43 第2切り欠き部
43a 傾斜部
45 用紙規制部(記録媒体規制部)
45a 頂点
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセットベース及び該カセットベースの周縁部に立設される複数の壁部で構成され、シート状の記録媒体を収納するハウジングと、
該ハウジングに回動可能に設けられ記録媒体の積載量に応じて一端が昇降する記録媒体積載板と、
を備え、画像形成装置本体に対し着脱自在に装着される記録媒体収納カセットにおいて、
前記複数の壁部のうち記録媒体の給送方向に立設される壁部には、前記画像形成装置本体側に設けられ前記ハウジング内の記録媒体を分離して給送する給送ローラ対に対峙する位置に、前記壁部の上端に向かって開口する第1切り欠き部が形成されることを特徴とする記録媒体収納カセット。
【請求項2】
前記壁部の上端部の長手方向両端部には第2切り欠き部が形成され、該第2切り欠き部と前記第1切り欠き部との間に、前記ハウジング内の記録媒体が給送方向へ移動するのを規制する記録媒体規制部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体収納カセット。
【請求項3】
前記記録媒体規制部は、記録媒体の給送方向から見て頂点を有する山形状であることを特徴とする請求項2に記載の記録媒体収納カセット。
【請求項4】
前記記録媒体規制部の頂点の間隔は、前記給送ローラ対の幅よりも広いことを特徴とする請求項3に記載の記録媒体収納カセット。
【請求項5】
前記記録媒体規制部の頂点は、記録媒体の給送方向から見て前記ハウジング内に収納される最小幅の記録媒体の内側直近に配置されることを特徴とする請求項4に記載の記録媒体収納カセット。
【請求項6】
前記第1切り欠き部は、前記壁部の上端に向かって幅広となるテーパ部と、該テーパ部の下方に連続する延長部とで構成され、前記延長部は、前記壁部の下端近傍まで延設されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の記録媒体収納カセット。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の記録媒体収納カセットを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96889(P2012−96889A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245808(P2010−245808)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】