説明

記録媒体

【課題】 良好なインク吸収速度、十分な印字濃度及び擦過性を有する記録媒体を提供すること
【解決手段】 支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、該インク受容層は、アルミナ水和物以外の無機顔料であって、金属酸化物、金属水酸化物、金属化合物から選ばれた、粒子径200nm以下のキセロゲルの表面を、アルミナ水和物で被覆した複合粒子と、バインダーとを含有することを特徴とする記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録等に用いる、インク受容層を有する記録媒体には、高いインク吸収性や擦過性、インク受容層のひび割れ抑制等といった特性が求められている。
【0003】
インク受容層のインク吸収速度を高めるために、空孔分布曲線の1つのピークが0.2μm〜10μmにあり、かつインク受容層全体の空孔分布曲線のピークが少なくとも0.2μm〜10μm及び0.05μm以下の2ケ所にある記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。この記録媒体は、平均粒径0.20μm以下の一次粒子を平均粒径が1μm〜50μmの2次、3次凝集体とすることで、凝集粒子間の空隙が空孔分布曲線の0.2μm〜10μmの間にピークとなり、一次粒子間の空隙が空孔分布曲線の0.05μm以下のピークになるものである。
【0004】
また、インク受容層の擦過性の改善方法として、シリカヒドロゲルと水に溶解したときに酸性を示すアルミニウム塩を混合して得られたシリカアルミナ複合ゾルを用いたインク受容層を設けた記録媒体が提案されている(特許文献2参照)。この記録媒体はシリカの一次粒子が球状であることによって優れた耐擦過性を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−110287号公報
【特許文献2】特開2001−180926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の記録媒体は平均粒径1μm〜50μmの大きな凝集体を用いているため、印刷物が擦れた場合にインク受容層表面が割れたり、剥がれたりする場合がある。また、受容層の透明性が低く印字部の光学濃度が高く出来ないという問題がある。特許文献2の記録媒体は、球状粒子を用いているため、表面のすべり性は良好であるが、圧力が加わると凹みを生じる場合がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、良好なインク吸収速度、印字濃度及び擦過性を有する記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
即ち、本発明は、支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、該インク受容層は、アルミナ水和物以外の無機顔料であって、金属酸化物、金属水酸化物、金属化合物から選ばれた、粒子径200nm以下のキセロゲルの表面を、アルミナ水和物で被覆した複合粒子と、バインダーとからなることを特徴とする記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好なインク吸収速度、印字濃度及び擦過性を有する記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好ましい実施の形態をあげて本発明を詳細に説明する。本発明の記録媒体は、アルミナ水和物以外の無機顔料で、金属酸化物、金属水酸化物、金属化合物から選ばれた、粒子径200nm以下のキセロゲル表面をアルミナ水和物で被覆した複合粒子とバインダーとを含有するインク受容層を支持体上に有するものである。
【0012】
本発明者らは、インク受容層が含有する無機顔料に関して、良好なインク吸収速度、印字濃度及び擦過性を得るべく、詳細な検討を行った。その結果、インク受容層を構成する無機顔料として、金属酸化物、金属水酸化物、金属化合物から選ばれた、粒子径200nm以下のキセロゲル表面をアルミナ水和物で被覆した複合粒子を用いることで、良好なインク吸収速度、印字濃度及び擦過性が得られることを見出した。尚、本発明でいうアルミナ水和物とは、X線回折法でベーマイト構造のアルミナ水和物である。X線回折測定(CuのKα線)で回折角度2θが14°−15°近傍に(020)面のピークが特徴的に現れるものである。本発明でいうキセロゲルは、ゾルまたはヒドロゲルを乾燥したものである。キセロゲルは遊離水をほとんど失い、結合水分の一部も失われて空隙を持つ網目構造となったものである。
【0013】
本発明者らは、このメカニズムを以下のように推測する。インク受容層に着弾したインク液滴は複合粒子の細孔に浸透していく。インク浸透過程でインク中の色材成分は複合粒子表面のアルミナ水和物に定着する。本発明の複合粒子は無機顔料のキセロゲルを用いているため、細孔容積を大きくすることができ、着弾したインクを高速に吸収することができる。複合粒子はアルミナ水和物で被覆されているのでインク色材を表面付近に効率良く定着できる、高い画像濃度を得ることができる。
【0014】
次に、良好な擦過性が発現するメカニズムを以下のように推測する。擦過傷や搬送ローラー跡は、擦れや圧力によるインク受容層の変形である。本発明の複合粒子で用いているキセロゲルは網目構造を形成しているため、内部結合が強く、かつ構造の復元力が強い。また、キセロゲルを粒子径200nm以下の超微粒子として用いているため、複合粒子の比表面積が大きくなり、バインダーとの結合力が強くなる。これらの相乗効果によって、インク受容層に変形が生じても復元することができ、擦過傷や搬送ローラー跡が発生しにくくなる。
【0015】
以下、本発明にかかる記録媒体の各構成材料等を更に詳細に説明する。
【0016】
(支持体の構成材料)
本発明の記録媒体の支持体としては、例えば適度のサイジングを施した紙、無サイズ紙、ポリエチレンなどを用いたレジンコート紙などの紙類、熱可塑性フィルムのようなシート状物質及び布帛が挙げられる。熱可塑性フィルムの場合はポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの透明フィルムを用いることができる。また、無機粒子の充填または微細な発泡による不透明化したシートを用いることもできる。
【0017】
繊維状物質としては、例えばセルロースパルプを用いることができる。広葉樹材及び針葉樹材から得られるサルファイトパルプ(SP)、アルカリパルプ(AP)、クラフトパルプ(KP)などの化学(ケミカル)パルプ、セミケミカルパルプ、セミメカニカルパルプ、機械(メカニカル)パルプなどが挙げられる。更には、脱墨された二次繊維である古紙パルプ。以上のようなものが挙げられる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明では、必要に応じて以下のパルプを併用することができる。即ち、嵩高パルプ、マーセル化パルプ、機械パルプ、軽叩解パルプ、微細フィブリル化パルプ、結晶化パルプ、硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプ、ソーダパルプ、ヘミセルラーゼ処理パルプ及び酵素処理化学パルプ等である。また、非木材パルプである草、葉、靱皮、種毛などの繊維、藁、竹、麻、バガス、エスパルト、ケナフ、楮、三椏、コットンリンターなどのパルプも使用可能である。
【0019】
本発明では、支持体を構成する繊維状物質に、必要に応じて填料を加えることができる。填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなどの白色顔料、シリカまたはシリケート、珪酸化合物などのシリカ系材料が挙げられる。また多孔質填料を用いることもできる。填料の添加量は灰分換算で支持体全体の5質量%以上、20質量%以下が好ましい。灰分の測定はJIS P8128に従って行うことができる。また、記録媒体のインク吸収速度を高くするとう点では、填料を添加しなくてもよい。
【0020】
本発明の記録媒体に含まれる支持体の坪量としては、坪量が少なくて記録媒体が極端に薄くなければ、特に制限はない。例えば、坪量が10g/m以上、300g/m以下であることが好ましい。
【0021】
支持体の不透明度は90%以上が好ましい。不透明度はJIS−P−8138で測定することができる。支持体の吸収量は接触時間60秒で30g/m以上が好ましい。JIS−P−8140の吸水度試験方法で求めることができる。
【0022】
(支持体の製造方法)
本発明の記録媒体に用いる支持体の製造方法には、一般的に用いられている紙の製造方法を適用することができる。抄紙装置としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、円胴、ツインワイヤーなどが挙げられる。
【0023】
本発明の記録媒体では、通常の紙の製造方法で行われるサイズプレス工程を用いて支持体上に多孔質材料を塗工してもよい。この塗工には一般的な塗工方法を選択して用いることができる。例えばゲートロールコーター、サイズプレス、バーコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレー装置などによる塗工技術を用いることができる。
【0024】
本発明で形成された支持体はカレンダー処理、熱カレンダー処理やスーパーカレンダー処理を行って表面を平滑にすることができる。
【0025】
(インク受容層)
本発明にかかる記録媒体のインク受容層は、アルミナ水和物以外の無機顔料で、金属酸化物、金属水酸化物、金属化合物から選ばれた、粒子径200nm以下のキセロゲル表面をアルミナ水和物で被覆した複合粒子とバインダーを主材料として含有する。
【0026】
キセロゲルはアルミナ水和物以外の無機顔料で、金属酸化物、金属水酸化物、金属化合物から選ばれたものである。これらの化合物を必要に応じて、単独または複数用いることができる。好ましい無機顔料として、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、合成非晶質シリカ、シリカアルミナ、二酸化チタン、シリカーマグネシア、アルミナーチタニア、アルミナーマグネシア、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、リトポン、ゼオライト、カオリン、クレー、タルクがある。キセロゲルの粒子径は200nm以下が好ましい。上記範囲を超えるとインク受容層が白濁したり、印字したドットの真円度が低下する場合がある。さらに好ましい範囲は100nm以上、200nm以下である。この範囲内であればインク受容層の透明性を損なうことがなく、バインダーを多く添加することなく接着力を得ることができる。さらに、複合粒子分散液の粘度上昇を防ぐことができる。キセロゲルの粒子径は粒度分布計で測定して求めることができる。粒子径が上記範囲未満の場合は細孔容積が小さくなる場合がある。
【0027】
キセロゲル表面を被覆するアルミナ水和物としては、X線回折測定で、ベーマイトまたは擬ベーマイト構造を持つものであれば特に制限はない。本発明で用いるアルミナ水和物の製造方法としては、ベーマイト構造をもつアルミナ水和物を製造できる方法であれば特に制限はない。例えば、アルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミン酸ナトリウムの加水分解、水酸化アルミニウムの加熱処理などの方法を用いることができる。アルミナ水和物による被覆量は、アルミニウムの原子とキセロゲルを構成する金属原子の比率(アルミニウムの原子数/キセロゲルを構成する原子数)で0.1以上、0.6以下が好ましい。アルミニウムの比率が上記範囲よりも小さい場合は、経時変化による色材の滲み出しが発生する場合がある。上記範囲を超える場合は、複合粒子の機械的強度が不十分になって搬送ローラー跡が発生する場合がある。複合粒子のアルミニウム原子数とキセロゲル中の金属原子数は蛍光X線測定で求めることができる。キセロゲルが複合酸化物のように複数の金属原子を含む場合は、金属原子数の総和で計算する。またアルミナ酸化物をキセロゲルに用いた場合は、アルミナ酸化物と表面被覆のアルミナ水和物の比率はX線回折によって求めることができる。
【0028】
本発明の複合粒子を形成する好ましい方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0029】
(1)平均粒子径が100nm以下の超微粒子からなる凝集体を用いる方法
平均粒子径が100nm以下の超微粒子は自己凝集して2次または3次粒子を形成する。凝集体の粒子径は通常数μm以上である。凝集体のキセロゲルを粉砕して粒子径を200nm以下に調整する。粉砕方法は湿式、乾式のどちらでも用いることができる。粉砕によって再凝集する超微粒子は湿式粉砕を用いることが好ましい。超微粒子からなる凝集体は粉砕処理によって細孔容積を失わないものであれば特に制限はない。粉砕したキセロゲルの細孔容積を確保するためには、粒子径が30nm以下の超微粒子の凝集体が好ましい。
キセロゲルの表面をアルミナ水和物で被覆する方法は、キセロゲルを水に分散してからアルミニウム塩を添加してから、中和する方法が好ましい。キセロゲルの分散液のpHに合わせて、アルミニウム塩と中和剤を選択することができる。酸性の分散液であればアルミニウム塩と酸を添加して中和反応を行うことができる。逆にアルカリ性の分散液であればアルミニウム塩とアルカリを添加して中和反応を行うことができる。
【0030】
(2)コロイド粒子を用いる方法
シリカゾルなどのコロイド粒子を用いる場合は、コロイド粒子を乾燥してキセロゲルを形成することができる。必要に応じて粉砕処理を行って粒子径を200nm以下に調整する。コロイド粒子に金属塩などの電解質を添加して、コロイド粒子をあらかじめ凝集させてから乾燥してキセロゲルにする方法も用いることができる。キセロゲルの細孔容積を大きくすることができるのでより好ましい。用いる金属塩は周期律表の第2族元素、10族元素、および遷移元素から選ばれた陽イオンを含む電解質の中から選択して用いることができる。金属塩の添加量の比率は(金属塩中の金属の原子数/コロイド粒子中のコロイドを形成している金属の原子数)は0.01以上、0.4以下の範囲が好ましい。上記範囲未満では凝集粒子が形成されない場合や、凝集粒子が破壊される場合がある。上記範囲を超える場合はアルミナ水和物で被覆するときに、凝集粒子の全面を被覆することができない場合がある。アルミナ水和物の被覆は上記と同じ方法で行うことができる。
【0031】
(3)ヒドロゲルを用いる方法
ヒドロゲルを乾燥してキセロゲルを形成してから粉砕して粒子径を200nm以下に調整する。またはヒドロゲルの状態で粒子径を200nm以下に調整してから乾燥してキセロゲルを形成する。アルミナ水和物の被覆は上記と同じ方法で行うことができる。
【0032】
(4)ヒドロゲルの焼成による方法
上記ヒドロゲルまたはキセロゲルをさらに焼成して用いることができる。粒子径は焼成前または焼成後に粉砕などの方法で200nm以下に調整する。焼成した粒子は酸化物になっていて、一次粒子間の結合が強化されて、細孔構造が壊れにくいためより好ましい。アルミナ水和物の被覆は上記と同じ方法で行うことができる。
【0033】
上記の方法で形成された複合粒子の好ましい特性を以下に記す。複合粒子の粒子径は150nm以上500nm以下が好ましい。上記範囲未満の場合は細孔容積が小さくなる場合がある。上記範囲を超えるとインク受容層の透明性が損なわれる場合がある。複合粒子は平均細孔半径が2nm以上、20nm以下の内部細孔を持つことが好ましい。細孔容積は0.8cm/g以上が好ましい。本発明では複合粒子の細孔構造はインク受容層でも維持される。上記範囲内であれば、圧力が加わった時でも細孔構造が破壊されにくいのでインク受容層の表面硬度をビッカース硬度で5以上25以下の範囲に制御することができる。この範囲内であれば、プリンターの搬送で拍車がインク受容層に侵入しても搬送傷が残りにくくなる。
【0034】
本発明のインク受容層のバインダーとしては、例えば下記の水溶性高分子を用いることが好ましい。即ち、ポリビニルアルコール又はその変性体(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性)、澱粉又はその変性体(酸化、エーテル化)、ゼラチン又はその変性体、カゼイン又はその変性体、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル系共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、水性ウレタン系重合体、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸又はその共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体。これらのバインダーは、単独或いは複数種混合して用いてもよい。無機顔料とバインダーとの混合比は、無機顔料100質量部に対して5部以上、70部以下とすることが好ましい。バインダー量が5部未満の場合は、インク受容層の機械的強度が不足してクラックや粉落ちが発生する恐れがある。バインダー量が70部を超える場合は、インク受容層のインク吸収性が低下する恐れがある。
【0035】
本発明の記録媒体では、必要に応じてカチオン性ポリマーを添加することができる。好ましいカチオン性ポリマーとしては、例えば、4級アンモニウム塩、ポリアミン、アルキルアミン、ハロゲン化第4級アンモニウム塩、カチオン性ウレタン樹脂、変性PVA、アミン・エピクロルヒドリン重付加体、ジハライド・ジアミン重付加体、ポリアミジン、ビニル(共)重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアン系カオチン樹脂、ポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO共重合物、ジアリルアミン塩−SO共重合物、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー・第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン系樹脂が挙げられる。
【0036】
本発明では、上記したインク受容層や表面層の構成材料に、更に、以下の添加剤を加えても良い。例えば、分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤である。
【0037】
(インク受容層の形成方法)
本発明の記録媒体において、支持体上にインク受容層を設ける方法としては、例えば無機顔料、バインダー及びその他の添加剤などからなる水分散液を製造し、該分散液を塗工機で支持体上に塗布、乾燥する方法が挙げられる。この際に用いる塗工方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。即ち、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーターブラッシュコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、スプレー装置。以上のような方法が挙げられる。分散液の塗布量は、乾燥固形分換算で、5g/m以上60g/m以下が好ましい。5g/m以上とすることで、インク吸収性を良好なものとすることができる。また、60g/m以下とすることで、コックリングの発生を抑制できる。また、インク受容層の形成後に、カレンダーロールなどを用いてインク受容層の表面平滑性を良くしてもよい。
【0038】
(インク)
本発明の記録媒体に使用するインクとしては、例えば色剤(染料若しくは顔料)、水溶性有機溶剤及び/又は水を含むものが挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0039】
(印字方法)
本発明の記録媒体に上記のようなインクを付与して画像形成を行う方法としては、インクジェット記録方法が好適である。特に、熱エネルギーの作用によりインクをノズルから吐出させるインクジェット方式が好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例に示す「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0041】
<合成例1>
非晶質合成シリカ(サイロジェットP612、商品名、グレース社製)を遊星型ボールミル(P−6、製品名、フリチュ社製)を用いて粒子径が150nmになるまで湿式粉砕した。この粉砕した非晶質シリカを水に分散してから80℃に昇温した。アルミニウム原子数と珪素の原子数の比が0.2となる量のポリ塩化アルミニウム(キシダ化学)を添加した。80℃を保ちながら1時間撹拌した。水酸化ナトリウムを添加してpHを7.7に調整した後、濾液の電導度が20μS/cm以下になるまで限外濾過を行った。入り口温度75℃でスプレー乾燥して、シリカキセロゲルの表面をアルミナ水和物で被覆して合成例1の複合粒子を得た。
【0042】
<合成例2>
シリカゾル(スノーテックスO、商品名、日産化学社製)に塩化カルシウムの20質量%溶液を、カルシウムと珪素の原子数比率(カルシウムの原子数/珪素の原子数)が0.07となる量を添加した。その後100℃で乾燥してシリカのキセロゲルを得た。合成例1と同じ方法で湿式粉砕して粒子径を200nmに調整した。合成例1と同じ方法、材料を用いて、アルミニウムの原子数と珪素の原子数の比が0.6となるようにアルミナ水和物で表面被覆を行った。合成例1と同じ方法で限外濾過、スプレー乾燥を行って合成例2の複合粒子を得た。
【0043】
<合成例3>
特開2001−347749号公報の例1と同じ方法でシリカヒドロゲルを作成した。このシリカヒドロゲルを100℃で乾燥してシリカのキセロゲルを得た。合成例1と同じ方法で湿式粉砕して粒子径を100nmに調整した。合成例1と同じ方法、材料を用いて、アルミニウムの原子数と珪素の原子数の比が0.1となるようにアルミナ水和物で表面被覆を行った。合成例1と同じ方法で限外濾過、スプレー乾燥を行って合成例3の複合粒子を得た。
【0044】
<合成例4>
特開昭56−121806号の実施例2と同じ方法を用いて、第1図の曲線2で細孔径分布が表されるチタニアヒドロゲルスラリーを得た。120℃で乾燥してキセロゲルを形成し、さらに450℃で1時間焼成してチタン酸化物を得た。合成例1と同じ方法で湿式粉砕して粒子径を170nmに調整した。合成例1と同じ方法、材料を用いて、アルミニウムの原子数とチタンの原子数の比が0.5となるようにアルミナ水和物で表面被覆を行った。合成例1と同じ方法で限外濾過、スプレー乾燥を行って合成例4の複合粒子を得た。
【0045】
<合成例5>
特開昭56−121806号の実施例1と同じ方法を用いて、第1図の曲線2で細孔径分布が表されるアルミナヒドロゲルスラリーを得た。120℃で乾燥してキセロゲルを形成し、さらに450℃で1時間焼成してアルミニウム酸化物を得た。合成例1と同じ方法で湿式粉砕して粒子径を130nmに調整した。合成例1と同じ方法、材料を用いて、アルミナ水和物で表面被覆を行った。アルミニウム酸化物中のアルミウム原子数とアルミナ水和物中のアルミニウム原子数の比率は0.4であった。合成例1と同じ方法で限外濾過、スプレー乾燥を行って合成例4の複合粒子を得た。
【0046】
<実施例1−5>
合成例1−5の複合粒子をイオン交換水に分散して、固形分濃度20質量%の分散液を得た。さらにホモミキサー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス)を用いて、粒子径が200nm以下になるまで撹拌した。バインダーとして、ポリビニルアルコール(信越化学工業社製、MA26GP)の分散液を固形分換算で、複合粒子100質量部に対して10質量部となるように添加してホモミキサーで攪拌して塗工液を得た。厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポン社製、メリネックス705)に前記塗工液を塗工、乾燥して、厚さ30μmのインク受容層が形成された実施例1−5の記録媒体を得た。記録媒体の評価を下記の方法で行った。結果を表1に示す。
【0047】
<評価>
1.細孔構造
記録媒体の細孔構造は窒素吸着脱離法で測定した。測定装置は島津製作所社製のTristar 300を用いた。
2.キセロゲルの粒子径
キセロゲルの粒子径はキセロゲルを水に分散して、粒度分布計で測定した。測定装置は日機装社製のナノトラックUPA−EX150を用いた。
3.キセロゲルの構成金属原子数とアルミニウム原子数の比率
複合粒子のアルミニウム原子数とキセロゲル中の金属原子数は蛍光X線で測定した。測定装置はリガク社製のZSXminiを用いた。キセロゲルとしてアルミナ酸化物を用いた合成例5はX線回折で測定した。測定装置はリガク社製の試料水平型多目的X線回折装置Ultima IVを用いた。
4.印字評価
記録媒体に、インクジェットプリンター(E−520、エプソン社製)とインクカートリッジ(ICCL45、エプソン社製)を用いて印字を行ってインク吸収性と印字濃度を測定した。
4−1.インク吸収性
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクの単色または多色でベタ印字した。印字直後の記録媒体表面のインク乾燥状態を評価した。単色ベタ印字のインク量を100%とした。評価は以下の基準で目視で行った。
◎;インク量250%でインクが指に付着しない。
○;インク量250%ではインクが指に付着するが、200%では付着しない。
△;インク量200%ではインクが指に付着するが、150%では付着しない。
×;インク量150%でインクが指に付着する。
4−2.印字濃度
イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各インクの単色ベタ印字した。それぞれの光学濃度(O.D.)を反射濃度計(Spectolino、製品名、Gretag社製)で測定したてから、各色の測定値を平均して印字濃度とした。評価は下記の基準で行った。
◎;光学濃度が1.80以上。
○;光学濃度が1.50以上。
×;光学濃度が1.50未満。
5.擦過性
摩擦試験機II形(テスター産業社製)を用いて、JIS L0849に規定される摩擦に対する堅牢度の試験方法で摩擦試験を行った。摩擦試験後のインク受容層の表面を目視で、以下の基準で観察した。
○;傷は観察されない。
△;傷が部分的に観察される。
×;傷が全面的に観察される。
6.表面硬度
微小硬さ試験機(MVK−H300、商品名、明石社製)を用いてインク受容層表面のビッカース硬度を測定した。荷重は10gfである。
7.搬送ローラー跡
PX−G900(エプソン社製)とインクカートリッジ(IC8CL33、エプソン社製)を用いて、記録媒体にブラックの単色ベタ印字を行った。排紙直後のインク受容層表面を目視観察して、搬送ローラーによって形成されたローラー跡(インク受容層のへこみ)を以下の基準で評価した。
○;ローラー跡は観察されない。
△;ローラー跡が部分的に観察される。
×;ローラー跡が全面に観察される。
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、
該インク受容層は、アルミナ水和物以外の無機顔料であって、金属酸化物、金属水酸化物、金属化合物から選ばれた、粒子径200nm以下のキセロゲルの表面を、アルミナ水和物で被覆した複合粒子と、バインダーとを含有することを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記無機顔料は酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、合成非晶質シリカ、シリカアルミナ、二酸化チタン、シリカーマグネシア、アルミナーチタニア、アルミナーマグネシア、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、リトポン、ゼオライト、カオリン、クレー、タルクのいずれかである請求項1に記載の記録媒体。

【公開番号】特開2011−126226(P2011−126226A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288809(P2009−288809)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】