説明

記録媒体

【課題】高湿下での画像にじみおよびブロンジング現象を効果的に防止できる記録媒体を提供することである。
【解決手段】支持体上にインク受容層を2層以上有し、前記インク受容層のうちの前記支持体から最も遠い層である上層および前記上層の直下の層である下層はアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種と酸と親水性バインダーとを含有し、前記上層が含有する酸は、明細書中に定義される一般式[I]で表されるカルボン酸であり、前記下層が含有する酸は、明細書中に定義される一般式[II]で表されるスルホン酸である、ことを特徴とする記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体、特にインクジェット記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性染料インクを用いて銀塩系写真に匹敵する画質を達成する写真調記録媒体、特にインクジェット記録媒体には、優れた染料の発色性、高い表面光沢性、高い解像度を有する画像形成性などの特性が要求される。このような特性を有する画質を提供可能な記録媒体のインク受容層に好適な構成材料として、アルミナ水和物またはアルミナが挙げられ、特許文献1に記載がある。
【0003】
一方、近年は記録画像の画質と並んで画像堅牢性も要求されるようになってきた。特に高湿環境下、インク受容層内で染料が拡散することで画像がにじみ、画質を大きく劣化させることがあることが広く知られている。この劣化現象は、特にマゼンタ色においてその傾向が強く、マゼンタインクを使用してカラー画像を形成する画像形成方法において、看過できない現象であった。この現象を改善するため、染料をインク受容層内で凝集・定着させるためにカチオン性ポリマーや多価金属塩をインク受容層に含有させることが提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、高湿下でのブロンジングを防止しつつ、画像にじみを改良した記録媒体としては、特許文献3に記載の記録媒体がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−232475号公報
【特許文献2】特開2001−334742号公報
【特許文献3】特開2005−153315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、銀塩写真に匹敵するような高画質でかつ、高温高湿下での耐画像にじみ性と耐ブロンジングのいずれにも優れたアルミナ水和物またはアルミナをインク受容層に含む記録媒体は、未だ提供されていない。
【0007】
特許文献2の提案では、高湿下での画像にじみを防止する為に、カチオン性ポリマー、多価金属塩、あるいは強酸であるスルホン酸等をインク受容層に含有させることによって染料を凝集させて画像をにじみにくくしている。しかし、染料を凝集させてにじみにくくする作用を利用するために、画像部が金属光沢調に見える、いわゆるブロンジングが起こることがある。これは記録媒体表面にインク中の染料が過剰に凝集することにより引き起こされると考えられる。特に色材として金属フタロシアニン系染料を使用したシアンインクは、インク打ち込み量が多い場合に、その反射光の色味が本来の白色から赤色に変色するブロンジング現象を起こしやすい。ブロンジング現象は、光沢感にバラツキを生じさせて、記録物の品質を大きく劣化させるため、ブロンジングを防止しつつ、画像にじみを抑制することは重要な技術課題である。
【0008】
また、特許文献3ではシリカを用いた例のみが記載されており、本発明者らがアルミナ水和物またはアルミナで同様に実施したところ、十分にブロンジングを防止することができない場合があった。
【0009】
本発明の目的は、高湿下での画像にじみおよびブロンジング現象を効果的に防止できる、記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、上層および下層として、支持体上にアルミナ水和物およびアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種と、酸と、親水性バインダーとを含有するインク受容層を有する記録媒体において以下のことを見出した。それは、インク受容層を塗工液を用いて形成する際に、インク受容層の塗工液に含有されるアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む解膠液(ゾル)の解膠剤が高湿下での画像にじみとブロンジングの発生に多大な影響を及ぼすことである。
【0011】
より具体的には、高湿環境下での画像にじみは、スルホン酸、特にヒドロキシル基やアミノ基等の親水性置換基を持たないスルホン酸をアルミナ水和物およびアルミナの解膠剤として使用する場合に抑制効果が高いことが判明した。また、カルボン酸を解膠剤として使用した場合に、高湿環境下で画像にじみが起きやすいことが判明した。
【0012】
逆にブロンジング現象は、画像にじみと異なり、スルホン酸を解膠剤として使用する場合に特に起こりやすく、一方、カルボン酸を解膠剤として使用した場合には起こりにくく、抑制効果が高いことも判明した。この理由は、解膠剤としてスルホン酸を使用した場合には、インク中の染料がインク受容層内で酸析による凝集を起こしやすく高湿環境下でも染料が拡散しにくい。このため、ブロンジング現象は起こしやすいが、画像にじみに対する抑制効果は高いと考えられる。特にヒドロキシル基やアミノ基等の親水性置換基を持たないスルホン酸では、高湿下でもアルミナ水和物およびアルミナが水和しにくく、画像にじみに対する抑制効果がより高いと考えられる。しかしもともと凝集しやすい染料、例えば金属フタロシアニン系のシアン染料等はスルホン酸の作用により過度に凝集することによってブロンジング現象をさらに起こしやすくなると考えられる。
【0013】
一方、解膠剤としてカルボン酸を使用した場合には、染料の凝集効果が乏しいため、ブロンジング現象は起こりにくい。一方で、染料が高湿環境下でインク受容層内に含有される水和水に再溶解・拡散しやすいため画像にじみは起こりやすいと考えられる。
【0014】
さらに本発明者らは、ブロンジングを起こしやすいシアン染料等は、インク受容層内で支持体から遠い、すなわち比較的表面に近い浅い位置で染着する傾向をもつことを見出した。一方で、高湿下で画像にじみを起こしやすいマゼンタ染料等は、インク受容層内で支持体に近い、すなわち比較的表面から遠い深い位置にまで浸透する傾向をもつことを見出した。
【0015】
本発明は、これらブロンジングと画像にじみに対する特性に鑑みてなされたものである。
【0016】
即ち、本発明は、支持体上にインク受容層を2層以上有する記録媒体であって、
前記インク受容層のうちの前記支持体から最も遠い層である上層、および前記上層の直下の層である下層は、アルミナ水和物およびアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種と、酸と、親水性バインダーとを含有するインク受容層であり、
前記上層が含有する酸は、一般式[I]で表されるカルボン酸であり、
前記下層が含有する酸は、一般式[II]で表されるスルホン酸である
ことを特徴とする記録媒体である。
【0017】
一般式[I] R1−COOH
〔一般式[I]において、R1は水素原子を表すか、炭素数1以上3以下の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただしR1がアルキル基またはアルケニル基の場合には、ヒドロキシル基、オキソ基、アミノ基(-NHR、-NRR’)、アルコキシ基(-OR)、アシル基(R-CO-)、アルカノイルアミノ基(-NHCOR)およびカルバモイル基のうちの少なくとも一つを置換基として有しても良く、RおよびR’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。ただし、置換基がアルコキシ基およびアルカノイルアミノ基の場合は、Rは水素原子ではない。〕
一般式[II] R2−SO3H、
〔一般式[II]において、R2は炭素数1以上3以下の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただしR2は、オキソ基、ハロゲン原子、アルコキシ基(-OR)およびアシル基(R-CO-)のうちの少なくとも一つを置換基として有しても良く、Rは水素原子または炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。ただし、置換基がアルコキシ基の場合は、Rは水素原子ではない。〕
【発明の効果】
【0018】
本発明により、高湿下での画像にじみおよびブロンジング現象を効果的に防止できる、記録媒体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
<<記録媒体>>
本発明の記録媒体は、支持体と、支持体上に少なくとも2層のインク受容層とを有する。前記インク受容層は、例えば塗工液を、支持体上に塗工、乾燥して形成する。また、本発明の記録媒体は、インク受容層を支持体上に2層以上有する、多層構成である。そのインク受容層のうちの前記支持体から最も遠い層である上層、および前記上層の直下の層である下層は、アルミナ水和物およびアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種と、酸と、親水性バインダーとを含む。前記上層が含有する酸は上記一般式[I]で表されるカルボン酸であり、前記下層が含有する酸は上記一般式[II]で表されるスルホン酸である。
【0021】
例えば、前記上層は、上記一般式[I]で表されるカルボン酸により解膠されたアルミナ水和物およびアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種を含む分散液を含有する上層用塗工液を塗工、乾燥してなることができる。前記インク受容層のうちの前記上層の直下に配置される下層は、上記一般式[II]で表されるスルホン酸により解膠されたアルミナ水和物およびアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種を含む分散液を含有する下層用塗工液を塗工、乾燥してなることができる。
【0022】
なお、本発明において、下層とは、支持体から最も遠い層である上層の直下に配置されるインク受容層、すなわち上層の支持体側に隣接しているインク受容層を意味する。
【0023】
また、インク受容層が3層以上の場合は、支持体から最も遠いインク受容層を上層、その直下のインク受容層を下層とする。なお、インク受容層が3層以上の場合に、上層および下層以外のインク受容層は、上層または下層と同一組成のインク受容層であっても良く、また本発明に規定するものではなくてもよく、公知の組成のインク受容層であることができる。
【0024】
また、本発明の記録媒体は、支持体の両面に前記上層および下層を含む多層インク受容層を塗工した両面記録媒体を含むこともできる。さらに本発明の記録媒体は、インクジェット記録媒体として用いられることが好ましい。
【0025】
<支持体>
本発明で使用される支持体の具体例としては、普通紙、コート紙等の吸水性支持体、合成紙、プラスチックフィルム、樹脂被覆紙等の耐水性支持体が挙げられる。特に樹脂被覆紙が好ましく用いられる。
【0026】
樹脂被覆紙の基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗工されていてもよい。
【0027】
また、本発明に用いられる樹脂被覆紙の基紙の厚みは50μm以上が好ましい。50μm以上であれば、引っ張りや引き裂きに対する強度が弱くなることを優れて防ぎ、質感の低下も優れて防ぐことができる。なお、基紙の厚みに上限は特に無いが、好ましくは350μm以下である。350μm以下であれば、記録材料の取扱いが不便になることを優れて防ぎ、コストが高くなることも優れて防ぐことができる。
【0028】
さらに、基紙としては、紙を抄造中または抄造後、カレンダー等にて圧力を付加して圧縮するなどの表面処理をした表面平滑性の良いものが好ましいが、基紙の密度は、0.6g/cm3以上1.2g/cm3以下が好ましい。1.2g/cm3以下であれば、クッション性が低下することを優れて防ぐことができ、その他に、腰が弱くなることを優れて防ぎ、搬送性に課題が生じることを優れて防ぐことができる。また、0.6g/cm3以上であれば、表面平滑性が低くなることを優れて防ぐことができ、基紙の密度はより好ましくは0.7g/cm3以上である。
【0029】
本発明に用いられる樹脂被覆紙の樹脂被覆層の厚さは、一般的には好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは8μm以上40μm以下である。基本的には、この樹脂被覆層の厚さは、基紙の厚さに関係するカール性から適時決定されるが、5μm以上であれば、樹脂面からの水やガス浸透性の増大、折り曲げによるインク受容層のひび割れを優れて防ぐことができる。また、50μm以下であれば、耐カール性が低下することを優れて防ぎ、取り扱いにくくなることを優れて防ぐことができる。
【0030】
原紙表面側および裏面側を被覆する樹脂は、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および高密度のポリエチレン(HDPE)の少なくとも一方であるが、他の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0031】
インク受容層を形成する側(記録面)の樹脂被覆層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加して作製した、不透明度、白色度および色相を改良した樹脂被覆層が好ましい。ここで、インク受容層を形成する側(記録面)の樹脂被覆層中の酸化チタン含有量は、前記樹脂被覆層中の樹脂に対して、概ね3質量%以上20質量%以下が好ましく、4質量%以上13質量%以下がより好ましい。
【0032】
樹脂被覆紙は、光沢紙としたものを用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるような絹目面を形成したものも使用できる。
【0033】
また、本発明に用いるプラスチックフィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂である、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等、熱硬化性樹脂である、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等から製造されたフィルムが使用される。本発明で用いる一般的なプラスチックフィルムの厚さは、50μm以上250μm以下が好ましい。
【0034】
<インク受容層>
本発明に用いるインク受容層は、2層以上の多層インク受容層であり、そのうちの上層および下層は、アルミナ水和物およびアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種と、酸と、親水性バインダーとを含有する。また、インク受容層は、例えば塗工液を支持体上に塗工、乾燥して作製する。上述した通り、インク受容層のうちの上層および下層以外の層には、公知の組成のインク受容層を用いることができるため、本明細書では、インク受容層のうちの上層および下層について詳細に説明する。
【0035】
〔塗工液〕
上層用および下層用塗工液は、後述する解膠酸によりアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を解膠して調製したアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液と、親水性バインダーとを含むことができる。また、上記上層用および下層用塗工液は、後述する架橋剤および添加剤等を含むことができる。
【0036】
(アルミナ水和物およびアルミナ)
本発明に用いる上層および下層のインク受容層に好ましく使用されるインク受容材はアルミナ水和物およびアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種である。特に、発色性、インク吸収性の観点から、アルミナ水和物が好ましく用いられる。
【0037】
・アルミナ水和物
本発明で好ましく用いられるアルミナ水和物は下記式(1)により表わされる。
Al23-n(OH)2n・mH2O 式(1)
上式中、nは0、1、2または3のうちのいずれかを表わし、mは0以上10以下、好ましくは0以上5以下の数を表わす。mH2Oは、多くの場合結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表わすものであるため、mは整数でない値をとることができる。また、アルミナ水和物をか焼すると、mは0の値をとりうる。ただし、nとmは同時に0にはならない。
【0038】
これらの中でも好適なアルミナ水和物は、X線回折法による分析でベーマイト構造、または非晶質を示すアルミナ水和物である。具体例としては、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されたアルミナ水和物を挙げることができる。本発明に用いるアルミナ水和物の形状の具体例としては、不定形のものあるいは、球状または板状等の形態を有しているものが挙げられ、これらのうちのいずれかを使用してもよいし、併用してもよい。特に一次粒子の数平均粒径が5nm以上50nm以下のアルミナ水和物が好ましく、アスペクト比が2以上の板状アルミナ水和物が好ましい。
【0039】
アスペクト比は、特公平5−16015号公報に記載された方法により求めることができる。すなわち、アスペクト比は、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で示される。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡または電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を示す。また、BET法により算出した比表面積が100m2/g以上200m2/g以下であるアルミナ水和物を用いることが好ましく、前記比表面積が125m2/g以上175m2/g以下のアルミナ水和物を用いるのがより好ましい。
【0040】
上記BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。このBET法では、通常、吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧力または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられる。この際、多分子吸着の等温線を表すものとして最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であって、BET式と呼ばれ比表面積決定に広く用いられている。上記BET法では、BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることにより比表面積が得られる。BET法では、窒素吸着脱離法の測定において、ある相対圧力における吸着量の関係を数点測定し、最小二乗法によりそのプロットの傾き、切片を求めることで比表面積を導き出す。本発明では、相対圧力と吸着量の関係を5点測定し、比表面積を導き出す。
【0041】
アルミナ水和物は一般的には、米国特許第4,242,271号明細書、同第4,202,870号明細書に記載されているような、アルミニウムアルコキシドを加水分解する方法やアルミン酸ナトリウムを加水分解する方法等の公知の方法で製造できる。また、特公昭57−447605号公報等に記載されている、アルミン酸ナトリウム等の水溶液に、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和する方法等の公知の方法でも製造することができる。
【0042】
本発明に用いる好適なアルミナ水和物の具体例としては、X線回折法による分析でベーマイト構造もしくは非晶質を示すアルミナ水和物であって、特に、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物が挙げられる。さらに、アルミナ水和物の具体例としては、市販のアルミナ水和物(商品名:DISPERAL HP14、サソール社製)を挙げることができる。
【0043】
・アルミナ
アルミナとしては、γ−アルミナ、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、χ−アルミナ等を挙げることができる。これらの中でも発色性、インク吸収性の観点から、γ−アルミナが好ましい。γ−アルミナは、公知の方法で製造されたアルミナ水和物を400℃以上900℃以下の温度で加熱、焼成することによって得られる。
【0044】
前記アルミナ水和物及びアルミナは混合して使用することが可能である。すなわち、アルミナ水和物及びアルミナを粉体状態で混合、分散して分散液とするほか、アルミナ水和物分散液とアルミナ分散液とを混合して使用に供することも可能である。
【0045】
(解膠酸、アルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液)
本発明に用いるアルミナ水和物もしくはアルミナは、解膠剤で解膠された水性分散液の状態で上層用および下層用インク受容層塗工液に含むことができる。アルミナ水和物およびアルミナをそれぞれ単独に用いた場合、前記解膠剤で解膠された水性分散液の状態を、それぞれアルミナ水和物分散液およびアルミナ分散液と呼ぶこととする。なお、本発明に用いるアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液は、アルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種と、酸とを含むことができる。
【0046】
また、前記アルミナ水和物およびアルミナの両者を含む分散液は、アルミナ水和物およびアルミナを粉体状態で混合し、分散媒および解膠剤を加えて調製することができる。さらに、前記アルミナ水和物およびアルミナの両者を含む分散液は、アルミナ水和物分散液とアルミナ分散液とをそれぞれ別々に調製したのち、それらを混合して調製することもできる。
【0047】
また、アルミナ水和物およびアルミナの少なくとも1種を含む分散液には必要に応じて顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料等を含むことができる。また、アルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液の分散媒は、水が好ましい。
【0048】
本発明では、上記解膠剤として酸(解膠酸)を使用することができる。支持体から最も遠い上層のインク受容層は、解膠酸として一般式[I]で表されるカルボン酸を用いて、そのカルボン酸により解膠されたアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液を含有する塗工液(上層用塗工液)を塗工して作製できる。また、前記下層のインク受容層は、解膠酸として下記一般式[II]で表されるスルホン酸を用いて、そのスルホン酸により解膠されたアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液を含有する塗工液(下層用塗工液)を塗工して作製できる。
【0049】
なお、上記上層および下層それぞれに、上記カルボン酸と上記スルホン酸とを併用した場合は、耐画像にじみおよび耐ブロンジングが低下すると考えられる。
一般式[I] R1−COOH
〔一般式[I]において、R1は水素原子を表すか、炭素数1以上3以下(後述する置換基の炭素数は含まない)の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただしR1がアルキル基またはアルケニル基の場合には、ヒドロキシル基、オキソ基、アミノ基(-NHR、-NRR’)、アルコキシ基(-OR)、アシル基(R-CO-)、アルカノイルアミノ基(-NHCOR)およびカルバモイル基のうちの少なくとも一つを置換基として有しても良く、RおよびR’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。ただし、置換基がアルコキシ基およびアルカノイルアミノ基の場合は、Rは水素原子ではない。〕。
一般式[II] R2−SO3H、
〔一般式[II]において、R2は炭素数1以上3以下(後述する置換基の炭素数は含まない)の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただしR2は、オキソ基、ハロゲン原子、アルコキシ基(-OR)およびアシル基(R-CO-)のうちの少なくとも一つを置換基として有しても良く、Rは水素原子または炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。ただし、置換基がアルコキシ基の場合は、Rは水素原子ではない。〕。
【0050】
本発明に用いることのできる解膠酸は、分散液(ゾル)中でアルミナ水和物およびアルミナの表面に吸着配位していると考えられ、インク受容層が塗工液を塗工乾燥後、固形状態となっても解膠酸の吸着状態は維持される。このため、解膠酸がインク受容層乾燥中の対流作用等によって容易に層内拡散して解膠酸の濃度が多層インク受容層全体で均一化することは困難であると考えられる。また、受容層形成後に含浸等によって酸を付与する場合においては、各層に均一に浸透・拡散するため、上層でのブロンジング防止機能、下層での画像にじみ防止機能が相互補完的に作用することが困難である。この結果、耐ブロンジング及び耐画像にじみが低下する傾向にあるので、塗工液にこれらの酸を含有することが好ましい。
【0051】
一般式[I]中のR1は、水素原子を表すか、炭素数1以上3以下の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。また一般式[II]中のR2は炭素数1以上3以下の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。なお、R1、R2がそれぞれ炭素数4以上のアルキル基、アルケニル基、あるいは芳香環で表される解膠酸の場合、この解膠酸を用いたアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液と親水性バインダーとを混合して塗工液を調製すると、その塗工液はゲル化が起き易く不適である。
【0052】
上層のインク受容層が含有する一般式[I]で表されるカルボン酸の具体例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、酪酸、イソ酪酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、グリオキシル酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシイソ酪酸等が挙げられ、これらを一種または二種以上混合して使用することができる。
【0053】
一方、下層インク受容層が含有する一般式[II]で表されるスルホン酸の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、クロロメタンスルホン酸、ジクロロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられ、これらを一種または二種以上混合して使用することができる。
【0054】
・アルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液固形分濃度
上層用および下層用塗工液中のアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液固形分濃度は、それぞれ10質量%以上40質量%以下にすることが好ましい。上記分散液固形分濃度が10質量%以上の場合は、塗工時にクラックが発生することを優れて防ぐことができる。上記分散液固形分濃度が40質量%以下の場合は、分散液が不安定となり容易にゲル化することを優れて防ぎ、塗工性が低下することを優れて防ぐことができる。また、分散液の粘度安定性の観点から、特に好ましい分散液固形分濃度は、20質量%以上35質量%以下である。なお、アルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液固形分濃度とは、上層および下層の各塗工液のアルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液中に、各塗工液中の前記分散液の全固形分の質量が占める割合を百分率で表したものである。
【0055】
・酸の使用量
本発明に用いるアルミナ水和物およびアルミナを解膠するための酸の使用量は、酸の種類、アルミナ水和物およびアルミナの粒径および比表面積等によって異なることができる。
【0056】
しかし、上層のインク受容層は、アルミナ水和物およびアルミナの合計量1kgに対して、前記一般式[I]で表されるカルボン酸を200mmol以上500mmol以下含むことが好ましい。上記カルボン酸の使用量が200mmol以上の場合、塗工液のゾル粘度が大幅に上昇することを優れて防ぐことができる。また、上記カルボン酸の使用量が500mmol以下の場合では、解膠効果がそれ以上増大せずにブロンジング現象やビーディングが発生して画像品質を著しく低下することを優れて防ぐことができる。
【0057】
また前記上層の直下の層である下層のインク受容層は、アルミナ水和物およびアルミナの合計量1kgに対して、前記一般式[II]で表されるスルホン酸を100mmol以上300mmol以下含むことが好ましい。上記スルホン酸の使用量が100mmol以上の場合、塗工液のゾル粘度が大幅に上昇することを優れて防ぐ他に、高湿環境下での耐画像にじみが低下することを優れて防ぐことができる。また、上記スルホン酸の使用量が300mmol以下の場合では、解膠効果が頭打ちせずにブロンジング現象やビーディングが発生することを優れて防ぎ、画像品質が著しく低下することを優れて防ぐことができる。
【0058】
上記アルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液中のアルミナおよびアルミナ水和物粒子を、更に粉砕解膠機等を用いた物理的な手段で所望とする粒径にすることも可能である。粉砕解膠機としては、公知の様々な解膠機を使用することが可能である。例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型解膠機、超音波解膠機等が挙げられる。
【0059】
・インク受容層塗工液
上層用および下層用インク受容層塗工液は、前記アルミナ水和物およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液に対して親水性バインダー及び架橋剤を添加することにより、調製することができる。また、この塗工液を支持体に塗工・乾燥することで上層および下層インク受容層を形成することができる。
【0060】
(親水性バインダー)
上層用および下層用インク受容層塗工液には、それぞれ、インク受容材としてアルミナ水和物及びアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種と、その他に皮膜としての特性を維持するために親水性バインダーとを含有することができる。
【0061】
親水性バインダーとしては、公知のものが使用され、例えば、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉等が挙げられる。使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞ぐことを優れて防ぐ観点から、比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは、完全にまたは部分的にケン化された、ポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0062】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、耐水性、インク吸収性、発色性の観点から、ケン化度が80モル%以上100モル%(完全ケン化したもの)以下のものである。また塗工面の乾燥時のひび割れを防止する観点から、重量平均重合度が500以上5000以下のポリビニルアルコールが好ましい。ここでいうケン化度とは、JIS K 6726の方法で測定した値である。化学的には、ポリ酢酸ビニルをケン化してポリビニルアルコールを得た際の、ケン化反応によって生じた水酸基のモル数の割合である。
【0063】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールが挙げられる。
【0064】
ポリビニルアルコールは水溶液の状態で使用することが好ましく、そのポリビニルアルコール水溶液の乾燥固形分濃度は、3質量%以上20質量%以下が好ましい。3質量%以上20質量%以下であれば、塗工液の濃度が過度に低下して乾燥速度が大幅に低下することを優れて防ぎ、逆に塗工液濃度の過度な上昇により塗工液粘度が大幅に上昇して塗工面の平滑性が損なわれるのを優れて防止することができる。
【0065】
・使用量
親水性バインダー量は、乾燥時の塗工面割れを優れて防止し、かつ優れたインク吸収性を得る観点から、固形分で、アルミナ水和物およびアルミナの合計量に対して7質量%以上15質量%以下が好ましい。なお、この質量%は、計算式{(親水性バインダーの固形分質量)×100/(アルミナ水和物およびアルミナの合計固形分質量)}により算出することができる。
【0066】
また、上層用および下層用インク受容層、ならびにそのインク受容層塗工液には、必要に応じて親水性バインダー以外のポリマーラテックス等の非水溶性バインダーも併用することができる。しかし、各層および各塗工液中の、非水溶性バインダーは親水性バインダーに対して50質量%以下であることが好ましい。また、水溶性バインダーと非水溶性バインダーの合計量としては、各層および各塗工液中のアルミナ水和物およびアルミナの合計量に対して、5質量%以上30質量%以下になるようにするのが好ましい。
【0067】
(架橋剤)
また、本発明に用いられる上層用および下層用インク受容層、ならびにそのインク受容層塗工液には、親水性バインダーと共に架橋剤を含有するのが好ましい。なお、両者の添加順序については、どちらが先でも良い。架橋剤の具体的な例としては、アルデヒド系化合物、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物、ジルコニウム系化合物、アミド系化合物、アルミニウム系化合物、ホウ酸、およびホウ酸塩が挙げられる。また、架橋剤はこれらの少なくとも1種類であることが好ましい。これらの中でも、架橋剤は架橋速度及び塗工面のひび割れ防止の観点から、特にホウ酸あるいはホウ酸塩が好ましい。架橋剤として使用できるホウ酸としては、オルトホウ酸(H3BO3)だけでなく、メタホウ酸や次ホウ酸等も挙げられる。
【0068】
また、ホウ酸塩としては例えば、オルトホウ酸塩(例えば、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO32、Co3(BO32)、二ホウ酸塩(例えば、Mg225、Co225)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO22、NaBO2、KBO2)、四ホウ酸塩(例えば、Na247・10H2O)、五ホウ酸塩(例えば、KB58・4H2O、Ca2611・7H2O、CsB55)等を挙げることができる。
【0069】
これらのホウ酸およびホウ酸塩の中でも、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。また、塗工液の粘度安定性及びインク吸収性の観点から、架橋剤の添加量は上層および下層の各インク受容層を構成するアルミナ水和物およびアルミナの合計乾燥固形分に対して、それぞれ乾燥固形分換算で0.2質量%以上8.0質量%以下が好ましい。より好ましくは0.5質量%以上3.0質量%以下である。
【0070】
オルトホウ酸は水溶液の状態で使用することが好ましく、その乾燥固形分濃度は、塗工液濃度の過度な低下による乾燥速度の大幅な遅延防止の観点、オルトホウ酸の析出防止の観点から、0.5質量%以上8.0質量%以下が好ましい。
【0071】
(添加剤)
上層用および下層用インク受容層、ならびにそのインク受容層塗工液には、それぞれ必要に応じて各種の添加剤を含有してもよい。例えば、各種カチオン性樹脂等の定着剤、多価金属塩等の凝集剤、界面活性剤、蛍光増白剤、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、防腐剤、pH調節剤、その他本発明の技術分野で公知の各種助剤等である。これらの添加量は、適宜調整することができる。
【0072】
使用できるカチオン性樹脂の例としてはポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリジアリルアミン系樹脂、ジシアンジアミド縮合物等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
【0073】
〔インク受容層の形成〕
・塗工液の固形分塗工量
本発明は、インク受容層を少なくとも2層有するが、上層の固形分塗工量としては7g/m2以上20g/m2以下が好ましい。上層の固形分塗工量が7g/m2以上であれば、下層に含有されるスルホン酸の作用が上層にも及ぶことを優れて防止し、耐ブロンジングが低下することを優れて防ぐことができる。一方上記固形分塗工量が20g/m2以下であれば、下層に含有されるスルホン酸の作用が弱まることを優れて防ぎ、高湿環境下での耐画像にじみが低下することを優れて防ぐことができる。
【0074】
また、下層の固形分塗工量としては10g/m2以上であることが好ましい。また、40g/m2以下であることが好ましい。下層の固形分塗工量が10g/m2以上であれば、実質的に下層での高湿環境下での画像にじみ防止機能が弱まることを優れて防ぎ、耐画像にじみが低下することを優れて防ぐことができる。一方上記固形分塗工量が40g/m2以下であれば、塗工層の厚みが厚すぎて塗工面が乾燥時にひび割れすることを優れて防止することができる。
【0075】
インク受容層が3層以上の場合には、上層、下層以外のインク受容層を作成する際の固形分塗工量としては、0.05g/m2以上30.00g/m2以下であることが好ましい。
【0076】
・インク受容層の形成方法
本発明に用いるインク受容層の形成方法には、公知の塗工方式を用いることができる。例えば、スロットダイ方式、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。本発明に用いる2層以上のインク受容層は、逐次塗工で塗工、乾燥する他、同時多層塗工によってもよい。特にスライドビードによる同時多層塗工は生産性が高く、好ましい方法である。
【0077】
塗工後の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例および比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、「部」とは「質量部」を意味する。
【0079】
(支持体の作製)
濾水度450mlCSF(Canadian Standarad Freeness)の広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)80部と、濾水度480mlCSFの針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)20部とからなるパルプに、カチオン化澱粉0.60部、重質炭酸カルシウム10部、軽質炭酸カルシウム15部、アルキルケテンダイマ−0.10部、カチオン性ポリアクリルアミド0.03部を外添し、固形分濃度が3質量%となるように水で調整して紙料を得た。得られた紙料を長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行って、多筒式ドライヤーで乾燥した。続いて、サイズプレス装置で、塗工量が1.0g/m2となるように酸化澱粉水溶液を含浸し、乾燥後、マシンカレンダ−仕上げをし、坪量155g/m2の基紙を得た。
【0080】
得られた基紙の表面側に、低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)と酸化チタン(10部)とからなる樹脂組成物を25g/m2塗工して、被覆樹脂層を形成した。この基紙の裏面側に、高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)とからなる樹脂組成物を30g/m2塗工して、被覆樹脂層を形成し、樹脂被覆紙を得た。得られた樹脂被覆紙の表面側にコロナ放電した後、酸処理ゼラチンを固形分塗工量0.05g/m2になるように易接着層を塗工し、樹脂被覆紙の裏面側にコロナ放電した。その後、樹脂被覆紙の裏面側に、Tg(ガラス転移点)が約80℃のスチレン−アクリル酸エステル系ラテックスバインダーを約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)を0.1g、コロイダルシリカを0.1gを含有するバック層を塗工形成し、支持体を作製した。
【0081】
〔記録媒体1の作製〕
(上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製)
イオン交換水333.00部に対して、上記一般式〔I〕で表されるカルボン酸として、酢酸2.00部を添加し、酢酸水溶液とした。この酢酸水溶液をホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、商品名:T.K.ホモミクサーMARKII2.5型)で3000rpmの回転条件で攪拌しながら、アルミナ水和物(商品名:DISPERAL HP14、サソール社製)100.00部を少量ずつ添加した。添加終了後もそのまま30分間攪拌し、酢酸により解膠されたアルミナ水和物分散液を得た。このときこのアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対する酢酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して333mmolであり、その固形分濃度は23質量%であった。
【0082】
(下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製)
イオン交換水333.00部に対して、上記一般式〔II〕で表されるスルホン酸として、メタンスルホン酸1.50部を添加し、メタンスルホン酸水溶液とした。このメタンスルホン酸水溶液をホモミキサー(商品名:T.K.ホモミクサーMARKII2.5型、特殊機化工業株式会社製)で3000rpmの回転条件で攪拌しながらアルミナ水和物(商品名:DISPERAL HP14、サソール社製)100.00部を少量ずつ添加した。添加終了後もそのまま30分間攪拌し、メタンスルホン酸により解膠されたアルミナ水和物分散液を得た。このときこのアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するメタンスルホン酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して156mmolであり、その固形分濃度は23質量%であった。
【0083】
(上層インク受容層用、下層インク受容層用塗工液)
上記で調製した上層インク受容層用アルミナ水和物分散液および下層インク受容層用アルミナ水和物分散液それぞれに対して、3.0質量%オルトホウ酸水溶液を混合した。この際、各分散液中のアルミナ水和物の乾燥固形分100部に対して、各分散液に添加した前記オルトホウ酸水溶液の乾燥固形分換算が1.5部になるようにした。次に、各々の混合液に、親水性バインダーとして、ポリビニルアルコ−ル(商品名:PVA235、株式会社クラレ製、重量平均重合度3500、ケン化度88モル%)の乾燥固形分8.0質量%水溶液を混合した。この際、各混合液中のアルミナ水和物乾燥固形分100部に対して、各混合液に添加した前記ポリビニルアルコール水溶液の乾燥固形分換算が10部となるようにした。なお、PVA水溶液添加後の各混合液中の上記ポリビニルアルコール水溶液の乾燥固形分質量を100部とした場合、上記オルトホウ酸の乾燥固形分添加量は、それぞれ15部であった。このPVA水溶液添加後の下層インク受容層用混合液を、下層インク受容層用塗工液とした。また、PVA水溶液添加後の上層インク受容層用混合液にはさらに界面活性剤(商品名:サーフィノール465、日信化学工業株式会社製)を混合し、上層インク受容層用塗工液とした。その際、前記界面活性剤は、前記上層インク受容層用塗工液全量に対して0.1質量%となるように加えた。
【0084】
(インク受容層の作製)
上述の2種のインク受容層塗工液を、上記支持体の表面側に、上層1層、下層1層の合計2層を多層スライドホッパー型塗工装置にて塗工した。なお、下層インク受容層の固形分塗工量は30g/m2、上層インク受容層の固形分塗工量は10g/m2とした。続いてその支持体を、60℃で乾燥させて記録媒体1を得た。
【0085】
〔記録媒体2の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸を同一質量部数のエタンスルホン酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体2を得た。
【0086】
〔記録媒体3の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸を同一質量部数のプロパンスルホン酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体3を得た。
【0087】
〔記録媒体4の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸を同一質量部数のトリフルオロメタンスルホン酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体4を得た。
【0088】
〔記録媒体5の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸を同一質量部数の蟻酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体5を得た。
【0089】
〔記録媒体6の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸を同一質量部数のプロピオン酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体6を得た。
【0090】
〔記録媒体7の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸を同一質量部数の酪酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体7を得た。
【0091】
〔記録媒体8の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸を同一質量部数の乳酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体8を得た。
【0092】
〔記録媒体9の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸を同一質量部数のピルビン酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体9を得た。
【0093】
〔記録媒体10の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸を同一質量部数のビニル酢酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体10を得た。
【0094】
〔記録媒体11の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用塗工液の調製に用いたポリビニルアルコールの乾燥固形分8質量%水溶液を、同一質量部数のポリビルピロリドン(親水性バインダー、商品名:K−85、日本触媒株式会社製)の乾燥固形分8質量%水溶液に変更した。これ以外は記録媒体1と同様にして、記録媒体11を得た。
【0095】
〔記録媒体12の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸の添加量を2.00部から1.10部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体12を得た。このとき、上層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対する酢酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して183mmolであった。
【0096】
〔記録媒体13の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸の添加量を2.00部から1.20部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体13を得た。このとき、上層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対する酢酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して200mmolであった。
【0097】
〔記録媒体14の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸の添加量を2.00部から3.00部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体14を得た。このとき、上層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対する酢酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して500mmolであった。
【0098】
〔記録媒体15の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸の添加量を2.00部から3.30部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体15を得た。このとき、上層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対する酢酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して550mmolであった。
【0099】
〔記録媒体16の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸の添加量を1.50部から0.90部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体16を得た。このとき、下層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するメタンスルホン酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して94mmolであった。
【0100】
〔記録媒体17の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸の添加量を1.50部から0.96部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体17を得た。このとき、下層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するメタンスルホン酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して100mmolであった。
【0101】
〔記録媒体18の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸の添加量を1.50部から2.88部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体18を得た。このとき、下層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するメタンスルホン酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して300mmolであった。
【0102】
〔記録媒体19の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸の添加量を1.50部から3.00部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体19を得た。このとき、下層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するメタンスルホン酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して312mmolであった。
【0103】
〔記録媒体20の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層を作製する際の、上層の固形分塗工量を5g/m2に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体20を得た。
【0104】
〔記録媒体21の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層を作製する際の、上層の固形分塗工量を7g/m2に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体21を得た。
【0105】
〔記録媒体22の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層を作製する際の、下層の固形分塗工量を40g/m2に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体22を得た。
【0106】
〔記録媒体23の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層を作製する際の、下層の固形分塗工量を43g/m2に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体23を得た。このとき、塗工面には若干の乾燥割れが発生していたが、実用上は問題なかった。
【0107】
〔記録媒体24の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層を作製する際の、上層の固形分塗工量を25g/m2、下層の固形分塗工量を15g/m2に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体24を得た。
【0108】
〔記録媒体25の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層を作製する際の、上層の固形分塗工量を30g/m2、下層の固形分塗工量を10g/m2に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体25を得た。
【0109】
〔記録媒体26の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層を作製する際の、上層の固形分塗工量を33g/m2、下層の固形分塗工量を7g/m2に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体26を得た。
【0110】
〔記録媒体27の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用及び下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた、アルミナ水和物を同一質量部数のγ−アルミナ(住友化学工業株式会社製、商品名:AKP−G015)に変更した。これ以外は記録媒体1と同様にして、記録媒体27を得た。
【0111】
〔記録媒体28の作製〕
前記記録媒体1の下層と支持体の間に記録媒体1の上層と同一組成で固形分塗工量が10g/m2となるインク受容層を有する合計3層のインク受容層を多層スライドホッパー型塗工装置にて塗工した。これ以外は記録媒体1と同様にして、記録媒体28を得た。
【0112】
〔記録媒体29の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液を記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体29を得た。
【0113】
〔記録媒体30の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液を記録媒体9の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体30を得た。
【0114】
〔記録媒体31の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸をアミド硫酸とし、添加量を1.50部から1.51部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体31を得た。このとき、下層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するアミド硫酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して156mmolであった。
【0115】
〔記録媒体32の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸を塩酸とし、添加量を1.50部から0.57部に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体32を得た。このとき、下層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対する塩酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して156mmolであった。
【0116】
〔記録媒体33の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸1.50部を、メタンスルホン酸1.00部および酢酸0.60部の混合酸に変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体33を得た。このとき、下層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するメタンスルホン酸および酢酸の含有量合計はアルミナ水和物1kgに対して204mmolであった。
【0117】
〔記録媒体34の作製〕
前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いたメタンスルホン酸1.50部を2.47部のベンゼンスルホン酸に変更した。これ以外は記録媒体1と同様にして、記録媒体34を製造しようとしたが、下層インク受容層用塗工液がゲル化したため、製造不能であった。このとき、下層用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するベンゼンスルホン酸の含有量合計はアルミナ水和物1kgに対して156mmolであった。
【0118】
〔記録媒体35の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液の調製に用いた酢酸2.00部を、3.40部のピバル酸に変更した。これ以外は記録媒体1と同様にして、記録媒体35を製造しようとしたが、上層インク受容層用塗工液がゲル化したため、製造不能であった。このとき、上用塗工液のアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対するピバル酸の含有量はアルミナ水和物1kgに対して333mmolであった。
【0119】
〔記録媒体36の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液を、前記記録媒体1の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液へと変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体36を得た。
【0120】
〔記録媒体37の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液を、記録媒体16の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液へと変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体37を得た。
【0121】
〔記録媒体38の作製〕
前記記録媒体1の上層インク受容層用アルミナ水和物分散液を、記録媒体33の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液へと変更したこと以外は、記録媒体1と同様にして、記録媒体38を得た。
【0122】
〔記録媒体39の作製〕
前記記録媒体1の、上層インク受容層用アルミナ水和物分散液および下層インク受容層用アルミナ水和物分散液を両者とも、記録媒体33の下層インク受容層用アルミナ水和物分散液へと変更した。これ以外は記録媒体1と同様にして、記録媒体39を得た。
【0123】
これら記録媒体1〜39の組成を表1に示す。
【0124】
<評価方法>
<耐ブロンジング>
上述の各記録媒体を温度30℃、相対湿度80%の高湿環境下に6時間保存したのち、同環境下で市販のインクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:MP980)にてシアンのベタ部を印字した。そして、ブロンジング発生の有無を、それぞれ以下の評価基準に基づき目視評価した。評価結果を表1に示す。
【0125】
・評価基準
◎:ブロンジングの発生は認められなかった。
○:僅かに反射光に赤みが認められた。
△:反射光に赤みが認められた。
×:金属光沢調のブロンジングが発生した。
【0126】
<高湿下での画像にじみ>
上述の各記録媒体に市販のインクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:MP980)を用いてブルー、グリーン、レッドのベタ印字(インク打込み量200%)を行い印字サンプルを作製した。その後、温度30℃、相対湿度90%の高湿環境下にそれぞれ印字サンプルを1週間保管した後、各色の前記高湿下での画像にじみを目視にて観察し、下記の基準で判定した。評価結果を表1に示す。
【0127】
・評価基準
◎:各色とも滲みが起きていない。
○:いずれかの色で僅かに滲んでいる。
△:いずれかの色でやや滲んでいる。
×:いずれかの色で著しく滲んでいる。
【0128】
【表1】

【0129】
表1に示したように、実施例1〜28(記録媒体1〜28)は、耐ブロンジングや高湿環境下における耐画像にじみが良好である。これらの実施例は、上層のインク受容層が含有する酸が一般式[I]に該当し、かつ下層のインク受容層が含有する酸が一般式[II]に該当する。
【0130】
一方、下層インク受容層に一般式[I]で表されるカルボン酸を使用した比較例(記録媒体29、30)は、高湿環境下における耐画像にじみが、記録媒体1に対して大きく低下していた。また、一般式[II]のおけるR2が親水性の高いアミン基であるスルホン酸を使用した比較例(記録媒体31)も、高湿環境下における耐画像にじみが記録媒体1に対して低下していた。
【0131】
また、無機酸である塩酸を下層インク受容層に使用した比較例(記録媒体32)は耐画像にじみが記録媒体1に対して低下していた。
【0132】
そして、一般式[I]および[II]におけるR1、R2が炭素数4以上のカルボン酸、スルホン酸に該当する比較例(記録媒体34、35)では、この酸を用いたアルミナ水和物分散液は塗工液を調整した場合にゲル化が起り、塗工不可能であった。
【0133】
さらに、上層インク受容層に一般式[II]で表されるスルホン酸を使用した比較例(記録媒体36、37)は耐ブロンジングが記録媒体1に対して低下していた。
【0134】
また、一般式[I]と一般式[II]で表される酸を混合して併用した比較例(記録媒体33、38、39)は、それぞれに耐画像にじみおよび耐ブロンジングの少なくとも一方が記録媒体1に対して低下している。このことから、一般式[I]表されるカルボン酸は上層インク受容層で、一般式[II]表されるスルホン酸は下層インク受容層で、両者を混合せずにそれぞれ単独で使用することに高い効果が認められることがわかる。
【0135】
本発明によれば、高湿下での画像にじみおよびブロンジング現象を効果的に防止できる、記録媒体が提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にインク受容層を2層以上有する記録媒体であって、
前記インク受容層のうちの前記支持体から最も遠い層である上層、および前記上層の直下の層である下層は、アルミナ水和物およびアルミナのうちから選ばれる少なくとも1種と、酸と、親水性バインダーとを含有するインク受容層であり、
前記上層が含有する酸は、一般式[I]で表されるカルボン酸であり、
前記下層が含有する酸は、一般式[II]で表されるスルホン酸である
ことを特徴とする記録媒体:
一般式[I] R1−COOH
〔一般式[I]において、R1は水素原子を表すか、炭素数1以上3以下の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただしR1がアルキル基またはアルケニル基の場合には、ヒドロキシル基、オキソ基、アミノ基(-NHR、-NRR’)、アルコキシ基(-OR)、アシル基(R-CO-)、アルカノイルアミノ基(-NHCOR)およびカルバモイル基のうちの少なくとも一つを置換基として有しても良く、R及びR’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。ただし、置換基がアルコキシ基およびアルカノイルアミノ基の場合は、Rは水素原子ではない。〕、
一般式[II] R2−SO3H、
〔一般式[II]において、R2は炭素数1以上3以下の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただしR2は、オキソ基、ハロゲン原子、アルコキシ基(-OR)およびアシル基(R-CO-)のうちの少なくとも一つを置換基として有しても良く、Rは水素原子または炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。ただし、置換基がアルコキシ基の場合は、Rは水素原子ではない。〕。
【請求項2】
前記上層の固形分塗工量が7g/m2以上20g/m2以下であり、前記下層の固形分塗工量が10g/m2以上である、請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記上層は、アルミナ水和物およびアルミナの合計量1kgに対して、前記一般式[I]で表されるカルボン酸を200mmol以上500mmol以下含む、請求項1または2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記下層は、アルミナ水和物およびアルミナの合計量1kgに対して、前記一般式[II]で表されるスルホン酸を100mmol以上300mmol以下含む、請求項1または2に記載の記録媒体。

【公開番号】特開2011−93309(P2011−93309A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211039(P2010−211039)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】