説明

記録材搬送装置

【課題】駆動力を受けて回転し記録材搬送経路上の記録材を搬送する搬送部材を、この記録材搬送経路から離れる方向および接近する方向へ移動させる機構の簡略化を図る。
【解決手段】第3用紙搬送経路R3からのロール状部材91Bの退避が行われる際には、カム632の回転に伴い、接続部材631および接触部材633が図中左方向に移動する。そして、接続部材631および接触部材633が移動すると、第2進退機構620の各々に設けられた接続部材625も図中左方向に移動する。そして、接続部材625が移動すると、L字状に形成された支持部材621が支持シャフト622を中心として図中時計回り方向に回転する。これにより、ロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3から離れる方向に移動しロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3から退避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙搬送経路の方向に対して垂直な軸線を中心に連続的に給紙された用紙を二度反転させる装置と、用紙搬送経路の方向に対して平行な軸線を中心に連続給紙された用紙を一度反転させる横移動反転装置とが設けられた自動印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−106765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、駆動力を受けて回転し記録材搬送経路上の記録材を搬送する搬送部材を、この記録材搬送経路から離れる方向および接近する方向へ移動させる機構の簡略化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、外周面を有し、駆動力を受け回転する回転部材と、前記回転部材の前記外周面に対して直接又は他の部材を介して接触し、当該回転部材から駆動力を受け回転し、記録材搬送経路上の記録材を搬送する搬送部材と、前記記録材搬送経路から離れる方向および当該記録材搬送経路に接近する方向に前記搬送部材を移動させて当該搬送部材を当該記録材搬送経路に対して進退させるとともに、当該進退に際し、前記回転部材の前記外周面に対して直接又は前記他の部材を介して当該搬送部材を接触させながら当該搬送部材を移動させる進退機構と、を備える記録材搬送装置である。
請求項2に記載の発明は、前記進退機構は、前記記録材搬送経路上に記録材が停止しているときに、当該記録材に向けて前記搬送部材を移動させ、又は、当該記録材搬送経路上に記録材が停止しているときに、当該記録材に接触している当該搬送部材を当該記録材から離れる方向に移動させ、前記記録材搬送経路上にて停止している前記記録材に向かって前記搬送部材が移動する際、および、当該記録材搬送経路上にて停止している当該記録材に接触している当該搬送部材が当該記録材から離れる方向に移動する際、当該搬送部材の外周面のうちの前記回転部材の前記外周面に接触する部位に対し、当該回転部材の当該外周面から抗力が付与され、前記搬送部材の前記外周面に付与される前記抗力によって回転しようとする当該搬送部材の当該回転を抑制する抑制手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の記録材搬送装置である。
【0006】
請求項3に記載の発明は、外周面を有し、駆動力を受け回転する回転部材と、前記回転部材の前記外周面に対して直接又は他の部材を介して接触し、当該回転部材から駆動力を受け回転し、記録材搬送経路上の記録材を搬送する搬送部材と、前記回転部材を揺動軸として当該回転部材の周方向に沿った揺動が可能に設けられるとともに、当該回転部材の前記外周面に対して接触した状態で設けられた前記搬送部材を支持する揺動部材と、前記回転部材を揺動軸として前記揺動部材を揺動させ、前記搬送部材を前記記録材搬送経路から離れる方向および当該記録搬送経路に接近する方向に移動させる移動機構と、を備える記録材搬送装置である。
請求項4に記載の発明は、前記記録材搬送経路を挟み前記搬送部材の対向位置には当該記録材搬送経路上の記録材に押し当てられる押し当て部材が設けられ、前記記録材搬送経路上に記録材が位置し前記搬送部材と前記押し当て部材とにより当該記録材が挟まれている状態から、前記移動機構によって、当該記録材搬送経路から離れる方向へ当該搬送部材が移動される際、当該搬送部材の当該移動よりも前に、当該押し当て部材の当該記録材からの離間が行われることを特徴とする請求項3記載の記録材搬送装置である。
請求項5に記載の発明は、前記記録材搬送経路を挟み前記搬送部材の対向位置には当該記録材搬送経路上の記録材に押し当てられる押し当て部材が設けられ、前記移動機構によって、前記記録材搬送経路に接近する方向へ前記搬送部材が移動され当該搬送部材が当該記録材搬送経路上の記録材に接触する際、前記押し当て部材が、当該記録材から離間した状態で配置されていることを特徴とする請求項3記載の記録材搬送装置である。
請求項6に記載の発明は、前記搬送部材は、前記記録材搬送経路上に複数設けられ、前記回転部材および前記移動機構は、複数の前記搬送部材に対応するように複数設けられ、モータを備えるとともに、複数設けられた前記回転部材の各々に接続して設けられ、複数設けられた当該回転部材の各々に当該モータから回転駆動力を供給する供給機構を更に備えることを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載の記録材搬送装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、駆動力を受けて回転し記録材搬送経路上の記録材を搬送する搬送部材を、この記録材搬送経路から離れる方向および接近する方向へ移動させる機構の簡略化が可能となる。
請求項2の発明によれば、記録材搬送経路上にて停止している記録材に対して搬送部材が回転しながら接触することや、記録材搬送経路上にて停止している記録材から搬送部材が回転しながら離間することを抑制することができるようになる。
請求項3の発明によれば、駆動力を受けて回転し記録材搬送経路上の記録材を搬送する搬送部材を、この記録材搬送経路から離れる方向および接近する方向へ移動させる機構の簡略化が可能となる。
請求項4の発明によれば、記録材搬送経路から離れる方向へ回転しながら移動する搬送部材と、記録材との接触圧を低減させることができるようになる。
請求項5の発明によれば、回転しながら記録材と接触する搬送部材と、記録材との接触圧を低減させることができるようになる。
請求項6の発明によれば、回転部材の各々に対応させてモータを設ける場合に比べ記録材搬送装置をより安価に構成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置をフロント側から眺めた場合の図である。
【図2】反転機構を説明するための図である。
【図3】ロール状部材を進退させる進退機構を図2の矢印III方向から眺めた場合の状態を示した図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】第2進退機構に設けられた上記移動機構を説明するための図である。
【図6】移動機構の他の構成例を示した図である。
【図7】第2進退機構の他の構成例を示した図である。
【図8】搬送ロールを構成する一対のロール状部材を第3用紙搬送経路に対して進退させる進退機構を、図2における矢印VIII方向から眺めた場合の状態を示した図である。
【図9】図8におけるIX−IX線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置をフロント側から眺めた場合の図である。図1に示す画像形成装置100は、所謂タンデム型の構成を有するものであって、電子写真方式により各色成分のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット10(10Y、10M、10C、10K)を備えている。また本実施形態の画像形成装置100では、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)などを含んで構成され、画像形成装置100を構成する各装置および各部の動作を制御する制御部80が設けられている。
【0010】
また、表示パネルにより構成され、ユーザから受けた指示を制御部80に出力するとともに制御部80からの情報をユーザに提示するユーザインタフェース部(UI)90が設けられている。さらに、例えばパーソナルコンピュータ(PC)や画像読取装置(スキャナ)等から画像データ等を受信する受信部70が設けられている。また、画像形成装置100は、各画像形成ユニット10にて形成された各色成分トナー像が順次転写(一次転写)されるとともにこのトナー像を保持する中間転写ベルト20と、中間転写ベルト20上のトナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写装置30とを備えている。
【0011】
また画像形成装置100には、二次転写装置30に向けて搬送される用紙Pが通過する第1用紙搬送経路R1、二次転写装置30を通過した後の用紙Pが通過する第2用紙搬送経路R2が設けられている。また、定着装置50(後述)よりも下流側にて第2用紙搬送経路R2から分岐するとともに、第1用紙搬送経路R1の下方まで延び、その一部が第1用紙搬送経路R1と並行するように設けられた第3用紙搬送経路R3が形成されている。
【0012】
また本実施形態では、第3用紙搬送経路R3から第1用紙搬送経路R1へ用紙Pを搬送するとともにこの用紙Pの表裏を反転して第1用紙搬送経路R1へこの用紙Pを供給する反転機構500が設けられている。付言すると、本実施形態には、第1用紙搬送経路R1における用紙搬送方向および第3用紙搬送経路R3における用紙搬送方向に沿う軸線を中心に用紙Pを反転させる反転機構500が設けられている。
【0013】
さらに本実施形態では、画像形成装置100の筐体101に、開口102が形成されている。ここで、第2用紙搬送経路R2に沿って搬送されてきた用紙Pは、この開口102を通じて筐体101の外部に排出され、不図示の用紙積載部上に積載される。なお筐体101に隣接させて処理装置(不図示)を設け、開口102から排出されてくる用紙Pに対し穴あけなどの処理をさらに行うこともできる。また画像形成装置100には、第1用紙搬送経路R1に用紙Pを供給する第1用紙供給装置410が設けられている。また、第1用紙供給装置410よりも用紙Pの搬送方向における上流側に設けられ、第1用紙搬送経路R1に用紙Pを供給する第2用紙供給装置420が設けられている。
【0014】
なお、第1用紙供給装置410および第2用紙供給装置420は同様に構成されており、第1用紙供給装置410および第2用紙供給装置420の各々には、用紙Pを収容する用紙収容部41、用紙収容部41に収容された用紙Pを取り出して搬送する取り出しロール42が設けられている。また、第1用紙搬送経路R1上であって二次転写装置30の上流側には、第1用紙搬送経路R1上の用紙Pを二次転写装置30に向けて搬送する第1搬送ロール44が設けられている。さらに、第1搬送ロール44に向けて用紙Pを搬送する第2搬送ロール45、第2搬送ロール45に向けて用紙Pを搬送する第3搬送ロール46、第3搬送ロール46に向けて用紙Pを搬送する第4搬送ロール47が設けられている。
【0015】
またこれらの搬送ロールの他に、第1用紙搬送経路R1、第2用紙搬送経路R2、および、第3用紙搬送経路R3には、これらの用紙搬送経路上に位置する用紙Pを搬送する搬送ロール48が複数設けられている。なお、第1搬送ロール44、第2搬送ロール45、第3搬送ロール46、第4搬送ロール47、および搬送ロール48は、回転可能に設けられ互いに押し合う一対のロール状部材によって構成されるとともに、一方のロール状部材が回転駆動されることで用紙Pの搬送を行う。
【0016】
また本実施形態では、第2搬送ロール45と第3搬送ロール46との間に、用紙Pの先端部が突き当てられる突き当て部材300が設けられている。本実施形態ではこの突き当て部材300に対して用紙Pの先端部が突き当てられることで、用紙Pのスキュー(搬送方向に対する用紙Pの傾き)が補正される。ここで本実施形態では、突き当て部材300により用紙Pのスキューが補正された後、この突き当て部材300は第1用紙搬送経路R1から退避する。また本実施形態では、第2用紙搬送経路R2上に、二次転写装置30により用紙P上に二次転写された画像をこの用紙Pに定着させる定着装置50が設けられている。
【0017】
さらに、二次転写装置30と定着装置50との間には、二次転写装置30を通過した用紙Pを定着装置50へ搬送する搬送装置51が設けられている。ここでこの搬送装置51は、周回移動するベルト51Aを有しており、このベルト51Aの上に用紙Pを載せて用紙Pの搬送を行う。また定着装置50には、内蔵されたヒータ(不図示)により加熱される加熱ロール50A、加熱ロール50Aを押圧する押圧ロール50Bが設けられている。そしてこの定着装置50では、加熱ロール50Aと押圧ロール50Bとの間を用紙Pが通過することで、用紙Pが加圧および加熱される。これにより用紙P上の画像が用紙Pに定着される。
【0018】
ここで、画像形成ユニット10の各々は、回転可能に取り付けられた感光体ドラム11を備えている。また、感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12、感光体ドラム11を露光して静電潜像を書き込む露光装置13、感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置14が設けられている。さらに、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写装置15、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラム清掃装置16が設けられている。
【0019】
中間転写ベルト20は、3本のロール部材21〜23に掛け渡され、回転するように設けられている。これら3本のロール部材21〜23のうち、ロール部材22は、中間転写ベルト20を駆動するようになっている。また、ロール部材23は、中間転写ベルト20を挟んで二次転写ロール31に対向配置されており、これら二次転写ロール31およびロール部材23によって二次転写装置30が構成されている。なお、中間転写ベルト20を挟んでロール部材21と対向する位置には、中間転写ベルト20上の残留トナーを除去するベルト清掃装置24が設けられている。
【0020】
また、本実施形態の画像形成装置100では、第1用紙供給装置410等から供給された用紙Pの第1面に画像を形成することができるのに加え、用紙Pの第2面に画像を形成することができるようになっている。より具体的に説明すると、この画像形成装置100では、定着装置50を通過した用紙Pの表裏が反転機構500によって反転され、表裏が反転された用紙Pが再度二次転写装置30へと搬送される。そして二次転写装置30にて用紙Pの第2面に対して画像が転写される。その後、この用紙Pは定着装置50を再び通過し、転写されたこの画像は用紙Pに定着される。これにより、用紙Pの第1面のみならず第2面にも画像が形成されるようになる。
【0021】
図2は、反転機構500を説明するための図である。
上記にて説明したとおり、本実施形態では、第3用紙搬送経路R3に、この第3用紙搬送経路R3に沿って用紙Pを搬送する搬送ロール48が複数設けられている。また、第1用紙搬送経路R1にも、第1用紙搬送経路R1に沿って用紙Pを搬送する搬送ロール48が複数設けられている。また第3用紙搬送経路R3には、第3用紙搬送経路R3における用紙Pの搬送方向と直交する方向(交差する方向)に向けて用紙Pを搬送する搬送ロール91が設けられている。付言すると、第3用紙搬送経路R3の側方に向けて用紙Pを搬送する搬送ロール91が設けられている。
【0022】
さらに本実施形態では、搬送ロール91により搬送された用紙Pが上方に向かって移動するように、また、上方へ移動したこの用紙Pが第1用紙搬送経路R1に向かってさらに移動するように、この用紙Pを案内する案内部材92が設けられている。さらに、本実施形態では、案内部材92により案内され先端部が上方を向いた用紙Pをニップし、この用紙Pをさらに上方に向けて搬送する搬送ロール93が設けられている。また第1用紙搬送経路R1には、搬送ロール93により搬送されてきた用紙Pを第1用紙搬送経路R1上の予め定められた箇所まで搬送する搬送ロール94が設けられている。
【0023】
なお、搬送ロール48の各々は、上記のとおり、一対のロール状部材により構成されている。また、搬送ロール91、搬送ロール93、および搬送ロール94も、互いに対向すするように設けられ互いに押し合う一対のロール状部材により構成されている。また本実施形態では、搬送ロール48に設けられた一対のロール状部材が互いに離間できるようになっている。また、搬送ロール91および搬送ロール94も同様であり、一対のロール状部材が互いに離間できるようになっている。また本実施形態では、搬送ロール48、搬送ロール91、および、搬送ロール94に設けられたロール状部材を第1用紙搬送経路R1や第3用紙搬送経路R3に対して進退させる進退機構が設けられている(後述)。
【0024】
反転機構500により用紙Pの表裏の反転が行われる際には、まず、搬送ロール48により第3用紙搬送経路R3に沿って用紙Pが搬送されてくる。なおこのとき、第3用紙搬送経路R3に設けられた搬送ロール91を構成する一対のロール状部材のうちの一方のロール状部材(図中、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pよりも上方に位置する一方のロール状部材91A)は、上方に退避している。また、搬送ロール91を構成する一対のロール状部材のうちの他方のロール状部材(図中、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pよりも下方に位置する他方のロール状部材91B)は、下方に退避している。
【0025】
なお、上記一方のロール状部材91Aおよび他方のロール状部材91Bのうちの一方のロール状部材のみを退避させる構成も考えられるが、この場合、搬送ロール48により第3用紙搬送経路R3に沿って搬送されてきた用紙Pの先端が、退避していない方のロール状部材の側面に突き当たり用紙Pの搬送が規制されるおそれがある。このため本実施形態では、ロール状部材91Aおよびロール状部材91Bの両方のロール状部材を第3用紙搬送経路R3から退避させるようにしている。
【0026】
搬送ロール48により第3用紙搬送経路R3に沿って用紙Pが搬送されてきた後、本実施形態では、上記一方のロール状部材91Aが用紙Pに向かって進出し、上記他方のロール状部材91Bが用紙Pに向かって進出する。これにより、押し当て部材の一例としてのロール状部材91A、および、ロール状部材91Bが、用紙Pに対して押し当てられる。次いで、搬送ロール48を構成する一対のロール状部材のうちの一方のロール状部材(図中、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pよりも上方に位置する一方のロール状部材48A)が図中上方に移動するとともに、搬送ロール48のうちの他方のロール状部材(図2では不図示、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pよりも下方に位置する他方のロール状部材)が図中下方に移動する。
【0027】
次いで、搬送ロール91が回転駆動される。具体的には、本実施形態では、用紙Pの下方に位置するロール状部材91Bが回転駆動される。また、搬送ロール93の回転駆動も行なわれる。具体的には、図2に示す搬送ロール93を構成する一対のロール状部材のうちの図中奥側に位置する一方のロール状部材(不図示)が回転駆動される。さらに、搬送ロール94も回転駆動される。ここで搬送ロール94では、一対のロール状部材のうち、第1用紙搬送経路R1よりも上方に位置する一方のロール状部材94Aが回転駆動される。
【0028】
これにより、用紙Pが第1用紙搬送経路R1に向けて搬送される。なおこのとき、第1用紙搬送経路R1に設けられた搬送ロール48を構成する一対のロール状部材のうちの一方のロール状部材(図中、第1用紙搬送経路R1よりも上方に位置する一方のロール状部材48C)は、図中上方に退避し、搬送ロール48のうちの他方のロール状部材(不図示、第1用紙搬送経路R1よりも下方に位置する他方のロール状部材)は、図中下方に退避している。
【0029】
そして、第1用紙搬送経路R1上の予め定められた箇所まで用紙Pが搬送されると、搬送ロール91、搬送ロール93、および、搬送ロール94の回転駆動が停止される。その後、第1用紙搬送経路R1上の用紙Pよりも上方に位置する上記一方のロール状部材48Cが用紙Pに向かって進出し、用紙Pの下方に位置する他方のロール状部材(不図示)も用紙Pに向かって進出し、一方のロール状部材48Cおよび他方のロール状部材が用紙Pに対して押し当てられる。
【0030】
次いで、搬送ロール94における一方のロール状部材(図中、第1用紙搬送経路R1上の用紙Pよりも上方に位置する一方のロール状部材94A)が第1用紙搬送経路R1から退避するとともに、搬送ロール94における他方のロール状部材(不図示、第1用紙搬送経路R1上の用紙Pよりも下方に位置する他方のロール状部材)が第1用紙搬送経路R1から退避する。
【0031】
その後、第1用紙搬送経路R1に設けられた上記搬送ロール48が回転駆動され第1用紙搬送経路R1に沿って用紙Pが搬送される。具体的には、図中、用紙Pよりも上方に位置するロール状部材48Cが回転駆動され第1用紙搬送経路R1に沿って用紙Pが搬送される。なおこのとき用紙Pの表裏が既に反転された状態となっている。ここで、本実施形態における反転機構500では、用紙Pの搬送方向における先端部と後端部とが入れ替わることなく表裏の反転が行われる。その一方で本実施形態における反転機構500では、用紙の一方の側辺と他方の側辺とが入れ替わるようになる。
【0032】
本実施形態では、上記のとおり、第1用紙搬送経路R1や第3用紙搬送経路R3に設けられたロール状部材が、第1用紙搬送経路R1や第3用紙搬送経路R3に対して進退するようになっている。付言すると、第1用紙搬送経路R1や第3用紙搬送経路R3に接近する方向および離れる方向に、第1用紙搬送経路R1や第3用紙搬送経路R3に設けられたロール状部材が移動するようになっている。
ここで、図3および図4を参照し、ロール状部材を進退させる進退機構について詳細に説明する。なお、図3、図4では、搬送ロール91(図2参照)を構成する一対のロール状部材91A,91Bを進退させる進退機構を例示するが、他のロール状部材を進退させる進退機構も図3および図4で説明する進退機構と同様に構成されている。
【0033】
図3は、ロール状部材91A,91Bを進退させる進退機構600を図2の矢印III方向から眺めた場合の状態を示した図である。図4は、図3のIV−IV線における断面図である。
図3に示すように、また、上記にて説明したように、本実施形態では、第3用紙搬送経路R3に一対のロール状部材(ロール状部材91A,91B)が設けられるとともに、一方のロール状部材91Aが第3用紙搬送経路R3よりも上方に位置し、他方のロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3よりも下方に配置されている。
【0034】
また上記では説明を省略したが、搬送部材の一例としてのロール状部材91Bには、シャフト911と、このシャフト911に取り付けられるとともに円柱状に形成され第3用紙搬送経路R3上の用紙Pに接触する複数の接触部材912が設けられている。ここで、シャフト911は、ロール状部材91Aおよびロール状部材91Bによって用紙Pが案内部材92(図2参照)に向けて搬送される際の用紙Pの搬送方向と直交する方向に沿って配置されている。なお、ロール状部材91Aもロール状部材91Bと同様に構成されており、このロール状部材91Aにも、シャフト911および複数の接触部材912が設けられている。
【0035】
ここで、本実施形態における進退機構600には、ロール状部材91Aを第3用紙搬送経路R3に対して進退させる第1進退機構610、ロール状部材91Bを第3用紙搬送経路R3に対して進退させる第2進退機構620が設けられている。
【0036】
ここで、第1進退機構610には、ロール状部材91Aに設けられたシャフト911を下方から支持する支持部材611が設けられている。なおこの支持部材611は2つ設けられており、一方の支持部材611がシャフト911の一方の端部を下方から支持し、他方の支持部材611がシャフト911の他方の端部を下方から支持している。また、第1進退機構610には、支持部材611に接触した状態で設けられたカム(不図示)、このカムを回転させるモータM1が設けられている。また、第1進退機構610には、ロール状部材91Bに向けてロール状部材91Aを付勢するコイルスプリング(不図示)が設けられている。
【0037】
第3用紙搬送経路R3からロール状部材91Aが退避するときには、上記カムがモータM1により駆動され回転する。これにより、支持部材611が第3用紙搬送経路R3から離れる方向に移動する。そして支持部材611のこの移動によって、ロール状部材91Aも第3用紙搬送経路R3から離れる方向に移動する。これにより、ロール状部材91Aが第3用紙搬送経路R3から退避するようになる。一方で、第3用紙搬送経路R3に向かってロール状部材91Aが移動するときには、モータM1の逆転が行われる。これにより、コイルスプリングにより押圧されているロール状部材91Aが第3用紙搬送経路R3(ロール状部材91B)に向かって進出する。
【0038】
次に、ロール状部材91Bを第3用紙搬送経路R3に対して進退させる第2進退機構620について説明する。
移動機構の一例としての第2進退機構620には、図3に示すように、ロール状部材91Bのシャフト911の図中右端部を支持する支持部材621が設けられている。ここで、揺動部材の一例としてのこの支持部材621は、図3に示すように図中上下方向に沿って配置されている。また、支持部材621は、図4に示すようにL字状の形成されており、第1片部621Aと、この第1片部621Aと直交する関係で配置され第1片部621Aよりも長い第2片部621Bとを有している。ここで、ロール状部材91Bのシャフト911は、第1片部621Aの端部(自由端側の端部)により支持されている。
【0039】
さらに、第2進退機構620には、図3に示すように、不図示の駆動伝達機構から駆動力を受ける駆動力受けギア623を有し、この駆動力受けギア623にて駆動力を受けることで回転する回転部材629が設けられている。
【0040】
回転部材629には、ロール状部材91Bのシャフト911と平行に配置されるとともに支持部材621に貫通配置され、この支持部材621を回転可能な状態で支持する支持シャフト622が設けられている。付言すると本実施形態では、この支持シャフト622を揺動軸として、支持部材621がこの支持シャフト622の周方向に沿って揺動できるようになっている。なおこの支持シャフト622は、図4に示すように、支持部材621のうちの第1片部621Aと第2片部621Bとが接続する箇所を貫通している。
【0041】
また、回転部材629には、ロール状部材91Bの端部に取り付けられたロール側ギア913に噛み合うように設けられるとともに、支持シャフト622から回転駆動力を受けて回転し、このロール側ギア913に駆動力を伝達する駆動力伝達ギア624が設けられている。また、第2進退機構620には、図3に示すように、支持シャフト622の一端部側を支持する装置フレームFが設けられている。また本実施形態では、ロール状部材91Bのシャフト911と、上記ロール側ギア913との間には、ワンウェイクラッチ914が設けられている。
【0042】
なお、ロール状部材91Bの図中左端部側も図中右端部側と同様に構成されており、L字状に形成されロール状部材91Bのシャフト911の図中左端部を支持する支持部材621、この支持部材621に貫通配置され支持部材621を回転可能な状態で支持する支持シャフト622、この支持シャフト622を支持する装置フレームFが設けられている。
【0043】
また第2進退機構620には、図中右方に配置された一方の支持部材621から図中左方に配置された他方の支持部材621に架けて配置されるとともに、この一方の支持部材621と他方の支持部材621の両者に貫通した状態で設けられ、この一方の支持部材621と他方の支持部材621とを接続する棒状の接続部材625が設けられている。
また第2進退機構620には、搬送ロール91によって用紙Pが搬送される際の用紙Pの搬送方向に沿って(図3において、紙面と直交する方向に沿って)、図中右方に配置された支持部材621の図中下端部を移動させる移動機構630が設けられている。なお上記では説明を省略したが、接続部材625は、支持部材621の第2片部621B(図4参照)の端部(自由端側の端部)を貫通した状態で設けられている。
【0044】
図5は、第2進退機構620に設けられた上記移動機構630を説明するための図である。より具体的には、図5は、図3における矢印V方向から移動機構630を眺めた場合の状態を示している。なお図5では、ロール状部材91Aおよび第1進退機構610の図示を省略している。
【0045】
上記では説明を省略したが、本実施形態では、図2に示すように、ロール状部材91Aおよびロール状部材91Bにより構成された搬送ロール91が2組設けられている。より具体的には、図2に示すように、案内部材92に向けて用紙Pが搬送される際の用紙搬送方向上流側に1組目の搬送ロール91が設けられ、案内部材92に向けて用紙Pが搬送される際の用紙搬送方向下流側に2組目の搬送ロール91が設けられている。そして本実施形態では、図5に示すように、2組の搬送ロール91の各々に対応するように、第2進退機構620が2つ(2組)設けられた状態となっている。
【0046】
ここで、移動機構630には、図5に示すように、図中右側に位置する一方の第2進退機構620に設けられた接続部材625と、図中左側に位置する他方の第2進退機構620に設けられた接続部材625とを接続する接続部材631が設けられている。また、移動機構630には、モータM3と、このモータM3により回転するカム632とが設けられている。さらに、移動機構630には、図中左側に位置する第2進退機構620に設けられた接続部材625にその一端が固定されるとともに他端がカム632に接触する接触部材633が設けられている。また、移動機構630には、接続部材631および接触部材633を図中左方に向けて移動させ、接触部材633をカム632に押し付けるコイルスプリング(不図示)が設けられている。
【0047】
ここで、第3用紙搬送経路R3からロール状部材91Bが退避する際には、図5に示す状態からカム632が回転され、カム632のこの回転に伴い、接続部材631および接触部材633が図中左方向に移動する。そして、接続部材631および接触部材633が図中左方向に移動すると、第2進退機構620の各々に設けられた接続部材625も図中左方向に移動する。そして、接続部材625が図中左方向に移動すると、L字状に形成された支持部材621が支持シャフト622を中心として図中時計回り方向に回転する。これにより、ロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3から離れる方向に移動しロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3から退避する。
【0048】
なお、支持部材621が上記のように時計回り方向に回転する際、もう一方の支持部材621(図3にて図中左側に位置する支持部材621)に対し、接続部材625を介し、移動機構630からの駆動力が伝達される。これにより、図3にて右側に位置する支持部材621が移動機構630によって回転される際には、この右側に位置する支持部材621に同期するように左側に位置する支持部材621も回転するようになる。
【0049】
一方、ロール状部材91Bの第3用紙搬送経路R3への進出は、カム632が逆転されることにより行われる。カム632の逆転が行われると、カム632により接触部材633が押圧され、接続部材631および接触部材633が図中右方向に移動する。これに伴い、接続部材625も図中右方向に移動する。そして、接続部材625が図中右方向に移動すると、L字状に形成された支持部材621が支持シャフト622を中心として図中反時計回り方向に回転する。これにより、ロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3に向かって進出する。
【0050】
ところで、ロール状部材91Bの第3用紙搬送経路R3に対する進退は、ロール状部材91Bを、第3用紙搬送経路R3から離れる方向および接近する方向に単に直線状に移動させることでも行なうことができる。付言すると、ロール状部材91Aを進退させる第1進退機構610と同様に構成された進退機構を用いてロール状部材91Bを進退させることもできる。
【0051】
ところで、用紙Pの搬送を行うため、ロール状部材91Bには回転駆動力を伝達する必要が生じる。かかる場合に、ロール状部材91Bが上記のように直線状に移動する構成であると、構成の複雑化を招きやすい。例えば、循環移動を行う駆動ベルトを用いることで、直線運動を行うように配置されたロール状部材91Bに対して回転駆動力を伝達することが可能となるが、この場合、この駆動ベルトの張力を一定に保つ機構などが必要となり、構成の複雑化を招きやすくなる。
【0052】
その一方で、本実施形態における構成では、ロール状部材91Bに設けられたロール側ギア913の外周面が、駆動力伝達ギア624の外周面に接しながら、ロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3に対して進退する構成となっている。付言すると、第3用紙搬送経路R3に対しロール状部材91Bが進出した第1の状態、および、第3用紙搬送経路R3からロール状部材91Bが退避した第2の状態の何れの状態においても、被駆動側のロール状部材91Bと、駆動側の駆動力伝達ギア624との接続が維持された状態となっている。そしてこの場合、上記駆動ベルトや、上記張力を一定に保つ機構などの省略が可能となり構成の簡素化が図られる。
【0053】
なお、上記では、搬送ロール91が2組設けられ、ロール状部材91Bが2つ設けられている場合について説明したが、搬送ロール91の追加が行われ、例えば、ロール状部材91Bが3つ設けられている場合には、図6(移動機構630の他の構成例を示した図)に示すように、追加された搬送ロール91(図中右端の搬送ロール91)に対応するように、接続部材631(図中右側の接続部材631)の追加が行われる。
【0054】
なお、搬送ロール91が複数設けられ、これに対応して第2進退機構620が複数設けられている場合、駆動力受けギア623(図3参照)に対して駆動力を与えるモータ(不図示)を、第2進退機構620の各々に対応させて複数設けることもできるし、駆動力受けギア623に対して駆動力を与えるモータを共用するようにし、一つのモータから複数の駆動力受けギア623に対して駆動力を伝達するようにしてもよい。
【0055】
ここで、複数の駆動力受けギア623への、一つのモータからの駆動力の伝達は、例えば、図7(進退機構600の他の構成例を示した図)に示す構成で行なうことができる。なお、図7に示す構成では、搬送ロール91が3組設けられ、ロール状部材91Bおよび第2進退機構620が3つ設けられている場合を例示している。また図7では、装置フレームF(図3参照)、ロール状部材91A、および、第1進退機構610の図示を省略している。
【0056】
図7に示す構成では、環状に形成されたベルト状部材626Aが設けられている。また、本構成では、第2進退機構620の各々に設けられた駆動力受けギア623がこのベルト状部材626Aの内側に配置されている。さらに、駆動力受けギア623の外周面に形成された歯部(不図示)がベルト状部材626Aの内周面に形成された歯部(不図示)に噛み合った状態となっている。
【0057】
また、図7に示す構成では、ベルト状部材626Aの内周面に接触しベルト状部材626Aを内側から支持する2つの支持ロール626B、ベルト状部材626Aの外周面側からベルト状部材626Aを押圧しベルト状部材626Aに張力を付与する3つの押圧ロール626Cが設けられている。また、ベルト状部材626Aの内周面に接触しベルト状部材626Aに駆動力を付与する駆動ロール626Dと、この駆動ロール626Dを回転させるモータM5が設けられている。
【0058】
ここで、第2進退機構620の各々に設けられた駆動力受けギア623が回転される際には(ロール状部材91Bが回転駆動される際には)、モータM5が回転駆動される。これにより、ベルト状部材626Aが循環移動するようになり、循環移動を行っているこのベルト状部材626Aから各駆動力受けギア623に駆動力が供給される。これにより、駆動力受けギア623が回転するとともに、駆動力受けギア623のこの回転により、ロール状部材91Bが回転するようになる。なお、上記ベルト状部材626Aは、複数設けられた回転部材629の各々にモータM5から回転駆動力を供給する供給機構の一部として機能している。
【0059】
次に、ロール側ギア913の内部に設けられたワンウェイクラッチ914(図3参照)の役割について説明する。
第3用紙搬送経路R3から退避していたロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3に向かって進出する際には、図3に示す移動機構630によって、図3における紙面の奥側方向に向けて支持部材621が押圧される。これにより、支持部材621の図中下端部が図3における紙面の奥側方向に向かって移動し、支持部材621の図中上端部が図3における紙面の手前側方向に向かって移動する。そして、支持部材621の図中上端部が図3における紙面の手前側方向に向かって移動すると、ロール状部材91Bもこの手前側方向に向かって移動する。さらに、ロール状部材91Bは、第3用紙搬送経路R3に向かって進出し第3用紙搬送経路R3上の用紙Pに接触するようになる。
【0060】
ところで、ロール状部材91Bの上記手前側方向への移動が行われる際、ロール状部材91Bに設けられたロール側ギア913は、駆動力伝達ギア624(図3参照)に接しながら駆動力伝達ギア624の周囲を移動する。これにより、ロール側ギア913の回転が起こる。付言すると、ロール状部材91Bに設けられたロール側ギア913の外周面のうちの駆動力伝達ギア624の外周面に接触する部位に対し、駆動力伝達ギア624の外周面から抗力が付与されるために、ロール側ギア913の回転が起こる。そしてこの場合、ロール側ギア913の回転に追随して接触部材912も回転するようになる。ここで、このように接触部材912が回転すると、第3用紙搬送経路R3上にて停止している用紙Pが移動するおそれがある。付言すると、用紙Pの位置ずれが生じる可能性がある。
【0061】
また、接触部材912の回転が起こると、用紙P上の画像にキズが生じたり用紙Pが屈曲したりするおそれもある。より具体的に説明すると、ロール状部材91Bが第3用紙搬送経路R3に向かって進出する際、この第3用紙搬送経路R3上の用紙Pには搬送ロール48が押し当てられた状態にあり用紙Pの移動が生じにくくなっている。このような状況下において、ロール状部材91Bが回転しながら用紙Pに接触すると、用紙P上の画像がロール状部材91Bにより擦られるようになり、この画像にキズが生じるおそれがある。また、このように用紙Pの移動が生じにくい状況下において、ロール状部材91Bが回転しながら用紙Pに接触すると、用紙Pの一部のみが移動しようとし用紙Pが屈曲等するおそれがある。
【0062】
このため本実施形態では、このような不具合の発生を抑えるため、抑制手段の一例としてのワンウェイクラッチ914をロール側ギア913の内部に設けた構成としている。本実施形態の構成では、上記のとおり、ロール状部材91Bの第3用紙搬送経路R3への進出に伴い、ロール側ギア913が回転しようとするが、この際、ロール側ギア913は、矢印3A(図3参照)に示す方向に回転しようとする。ところで本実施形態では、この際、ワンウェイクラッチ914によって、ロール側ギア913からシャフト911への駆動力の伝達が阻止される。これにより、接触部材912の回転が抑制されるようになり、用紙Pの位置ずれなどの上記不具合の発生が抑制される。
【0063】
なお、搬送ロール91によって、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pが案内部材92(図2参照)に向けて搬送される際には、駆動力伝達ギア624によって、ロール側ギア913は、矢印3Aで示した方向とは逆方向に回転される。この場合、ワンウェイクラッチ914は、ロール側ギア913からの回転駆動力をシャフト911に伝達する。そしてこの場合、シャフト911が回転するとともにシャフト911の回転に伴い接触部材912が回転する。これにより、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pは、案内部材92に向けて搬送される。
【0064】
なお、上記では、ワンウェイクラッチ914を用いて用紙Pの位置ずれ等の発生を抑制したが、ワンウェイクラッチ914を用いないでも、用紙Pの位置ずれ等の発生を抑制することができる。例えば、第1進退機構610よりも先に第2進退機構620を駆動し、ロール状部材91Bをロール状部材91Aよりも先に、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pへ進出させることでも、用紙Pの位置ずれ等の発生を抑制することができる。付言すると、ロール状部材91Bが用紙Pに向かって移動しロール状部材91Bが用紙Pに対して接触する際に、ロール状部材91Aを用紙Pから離間させておくことでも、用紙Pの位置ずれ等の発生を抑制することができる。
【0065】
この場合、用紙Pに接触部材912が接触した状態で接触部材912が回転する状態が生じるが、この回転が行われるときには、用紙Pから、ロール状部材91Aが離間した状態となっている。付言すると、ロール状部材91Bの接触部材912に対して用紙Pを押し付けるロール状部材91Aが用紙Pから離れた状態となっている。かかる場合、ロール状部材91Bの接触部材912と用紙Pとの接触圧が低い状態で、ロール状部材91Bが回転する状態となり、用紙Pの位置ずれなどが生じにくくなる。
【0066】
なお、本実施形態では、第3用紙搬送経路R3上に設けられた搬送ロール48(図2参照)も、上記にて説明した進退機構600によって移動するようになっている。そしてこの場合、搬送ロール48を構成する一対のロール状部材が第3用紙搬送経路R3から退避する際に、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pに対し、この一対のロール状部材のうちの駆動側のロール状部材が回転した状態で接触するようになる。そしてこの場合は、上記と同様、用紙Pの位置ずれなどが生じるおそれがある。
【0067】
ここで、図8および図9を参照してより具体的に説明する。なお、図8は、搬送ロール48を構成する一対のロール状部材を第3用紙搬送経路R3に対して進退させる進退機構600を、図2における矢印VIII方向から眺めた場合の状態を示した図である。また、図9は、図8におけるIX−IX線における断面図である。なお上記にて説明した各部材と同一の機能を有する部材に対して、上記にて用いた符号と同一の符号を付している。また、上記にて説明した各部材と同一の機能を有する部材についての説明は省略する。
【0068】
搬送ロール48(図8参照)を構成する一対のロール状部材が第3用紙搬送経路R3から退避する際には、ロール状部材48Aの対向位置に配置されたもう一方のロール状部材(図中符号48B参照、以下、「ロール状部材48B」と称する)に取り付けられたロール側ギア913が矢印8Aに示す方向に回転する。付言すると、ロール側ギア913の外周面のうちの駆動力伝達ギア624の外周面に接触する部位に対し、駆動力伝達ギア624の外周面から抗力が付与されるために、ロール側ギア913の回転が起こる。
【0069】
ここで、ワンウェイクラッチ914が設けられていない状態にて、このようにロール側ギア913が回転すると、このロール側ギア913の回転に伴い、ロール状部材48Bの接触部材912が回転する。そして接触部材912の回転が起こると、上記と同様、用紙Pの位置ずれなどが生じうる。
【0070】
なお、搬送ロール91を構成する一対のロール状部材を進退させる上記進退機構600では、図4に示すように、ロール状部材91Bよりも用紙Pの搬送方向における上流側に支持シャフト622が設けられている。その一方で、搬送ロール48を構成する一対のロール状部材を進退させる進退機構600では、図9に示すように、ロール状部材48Bよりも用紙Pの搬送方向における下流側に支持シャフト622が設けられている。このため、ロール状部材48Bが第3用紙搬送経路R3から退避するときには、図8における紙面の手前側方向に向かってロール状部材48Bは移動するようになる。
【0071】
ここで、ロール側ギア913の内部にワンウェイクラッチ914を設けられている場合は、回転するロール側ギア913から、ロール状部材48Bのシャフト911への駆動力の伝達が遮断される。これにより、シャフト911に取り付けられた接触部材912の回転が抑制されるようになる。これにより、用紙Pの位置ずれ等が抑制される。
【0072】
なお、上記と同様、ロール状部材48Aをロール状部材48Bよりも先に、第3用紙搬送経路R3上の用紙Pから離間させることでも、用紙Pの位置ずれ等の発生は抑制される。付言すると、ロール状部材48Bの移動よりも前に、用紙Pからロール状部材48Aを離間させることでも、用紙Pの位置ずれ等の発生は抑制される。
【0073】
なお、第3用紙搬送経路R3(図2参照)に沿って上流側から用紙Pが搬送されてくる際には、駆動力伝達ギア624(図8参照)によって、矢印8Aに示す方向とは反対方向にロール側ギア913が回転される。この場合、ロール側ギア913からシャフト911に駆動力が伝達され、ロール状部材48Bの回転が行われる。これにより、第3用紙搬送経路R3に沿って用紙Pが搬送される。
【0074】
なお、用紙Pの位置ずれ等の不具合は、第1用紙搬送経路R1(図2参照)に設けられた搬送ロール94における駆動側のロール状部材94Aを第1用紙搬送経路R1上の用紙Pから退避させる際にも生じるが、ロール状部材94Aを進退させる第2進退機構620に対してワンウェイクラッチ914を設けることで、この不具合の発生は抑制される。また、ロール状部材94Aに対向するもう一つのロール状部材(不図示)を、このロール状部材94Aよりも先に用紙Pから退避させることでも、不具合の発生は抑制される。
【0075】
また、用紙Pの位置ずれ等の不具合は、第1用紙搬送経路R1(図2参照)に設けられた搬送ロール48における駆動側のロール状部材48Cを第1用紙搬送経路R1上の用紙Pに向けて進出させる際にも生じるが、ロール状部材48Cを進退させる第2進退機構620に対してワンウェイクラッチ914を設けることで、この不具合の発生は抑制される。また、ロール状部材48Cに対向するもう一つのロール状部材(不図示)を、ロール状部材48Cよりも後に用紙Pへ進出させることでも、不具合の発生は抑制される。
【0076】
なお上記では、画像形成部を備えた画像形成装置100を一例に説明したが、上記にて説明した構成は、画像形成部が設けられていない装置に対しても用いることができる。例えば、用紙Pに対して穴あけを施したり、複数枚の用紙Pから用紙束を生成したりする装置などにも用いることができる。また、単に用紙Pを搬送する装置に対しても用いることができる。
【0077】
また、上記では、駆動力伝達ギア624に対しロール状部材91Bが直接接触する構成を説明したが(図3参照)、駆動力伝達ギア624とロール状部材91Bとの間に、駆動力伝達ギア624からロール状部材91Bへ駆動力を伝達するギアを更に設けてもよい。付言すると、上記では、駆動力伝達ギア624に対しロール状部材91Bが直接接触する構成であったが、駆動力伝達ギア624とロール状部材91Bとの間にギアなどの他の部材を介在させることもできる。
【符号の説明】
【0078】
91B…ロール状部材、620…第2進退機構、621…支持部材、626A…ベルト状部材、629…回転部材、914…ワンウェイクラッチ、M5…モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面を有し、駆動力を受け回転する回転部材と、
前記回転部材の前記外周面に対して直接又は他の部材を介して接触し、当該回転部材から駆動力を受け回転し、記録材搬送経路上の記録材を搬送する搬送部材と、
前記記録材搬送経路から離れる方向および当該記録材搬送経路に接近する方向に前記搬送部材を移動させて当該搬送部材を当該記録材搬送経路に対して進退させるとともに、当該進退に際し、前記回転部材の前記外周面に対して直接又は前記他の部材を介して当該搬送部材を接触させながら当該搬送部材を移動させる進退機構と、
を備える記録材搬送装置。
【請求項2】
前記進退機構は、前記記録材搬送経路上に記録材が停止しているときに、当該記録材に向けて前記搬送部材を移動させ、又は、当該記録材搬送経路上に記録材が停止しているときに、当該記録材に接触している当該搬送部材を当該記録材から離れる方向に移動させ、
前記記録材搬送経路上にて停止している前記記録材に向かって前記搬送部材が移動する際、および、当該記録材搬送経路上にて停止している当該記録材に接触している当該搬送部材が当該記録材から離れる方向に移動する際、当該搬送部材の外周面のうちの前記回転部材の前記外周面に接触する部位に対し、当該回転部材の当該外周面から抗力が付与され、
前記搬送部材の前記外周面に付与される前記抗力によって回転しようとする当該搬送部材の当該回転を抑制する抑制手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の記録材搬送装置。
【請求項3】
外周面を有し、駆動力を受け回転する回転部材と、
前記回転部材の前記外周面に対して直接又は他の部材を介して接触し、当該回転部材から駆動力を受け回転し、記録材搬送経路上の記録材を搬送する搬送部材と、
前記回転部材を揺動軸として当該回転部材の周方向に沿った揺動が可能に設けられるとともに、当該回転部材の前記外周面に対して接触した状態で設けられた前記搬送部材を支持する揺動部材と、
前記回転部材を揺動軸として前記揺動部材を揺動させ、前記搬送部材を前記記録材搬送経路から離れる方向および当該記録搬送経路に接近する方向に移動させる移動機構と、
を備える記録材搬送装置。
【請求項4】
前記記録材搬送経路を挟み前記搬送部材の対向位置には当該記録材搬送経路上の記録材に押し当てられる押し当て部材が設けられ、
前記記録材搬送経路上に記録材が位置し前記搬送部材と前記押し当て部材とにより当該記録材が挟まれている状態から、前記移動機構によって、当該記録材搬送経路から離れる方向へ当該搬送部材が移動される際、当該搬送部材の当該移動よりも前に、当該押し当て部材の当該記録材からの離間が行われることを特徴とする請求項3記載の記録材搬送装置。
【請求項5】
前記記録材搬送経路を挟み前記搬送部材の対向位置には当該記録材搬送経路上の記録材に押し当てられる押し当て部材が設けられ、
前記移動機構によって、前記記録材搬送経路に接近する方向へ前記搬送部材が移動され当該搬送部材が当該記録材搬送経路上の記録材に接触する際、前記押し当て部材が、当該記録材から離間した状態で配置されていることを特徴とする請求項3記載の記録材搬送装置。
【請求項6】
前記搬送部材は、前記記録材搬送経路上に複数設けられ、
前記回転部材および前記移動機構は、複数の前記搬送部材に対応するように複数設けられ、
モータを備えるとともに、複数設けられた前記回転部材の各々に接続して設けられ、複数設けられた当該回転部材の各々に当該モータから回転駆動力を供給する供給機構を更に備えることを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載の記録材搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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