説明

記録用紙

【課題】用紙水分が高くてもカールを低減することができる記録用紙を提供する。
【解決手段】少なくともセルロースパルプを原料とし、下記式で表される用紙のCD方向永久歪みεが0.001〜0.050%の範囲である記録用紙である。
用紙のCD方向永久歪みε(%)=(ΔL/L)×100
(上記式において、ΔLは幅4mm長さ30mmの用紙サンプルを50℃・65%RH環境下に0.0025N/mmの引張応力をかけながら20分放置した後、15N/secの速度で1.4N/mmまで引張応力をかけた直後、15N/secの速度で0.0025N/mmまで引張応力を解放した際、引張応力の最大値をかけてから3秒後の用紙サンプルの寸法変化量(μm)を表し、Lは用紙サンプルの初期寸法(μm)を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙(以下、「用紙」と称す場合がある)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真記録方式(電子写真方式)の複写機やプリンタなどで定着した後に用紙がカールし、コピー時の紙詰まりや、ミスステッチ等の後処理装置収容性不良等の問題が発生することがあった。特に最近の複写機やプリンタは、小型化、自動両面コピー、自動製本等といった多機能化に伴って、装置の機構やペーパーパスが複雑化し、また熱定着ロールの小径化、複雑化も進んでいるため、従来の技術では熱定着後のカールが大きくなり、用紙端部がマシン内の部材と接触して紙詰まり等が発生し易いことがあった。
【0003】
上記の課題から電子写真記録方式でのカールを低減するべく様々な検討がなされてきた。例えば、転写用紙表裏の紙層の特性差に着目し、用紙の表裏の伸縮率差を制御する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、電子写真記録方式の複写機やプリンタではトナーを熱定着する際、高圧力がかけられて用紙が変形させられることからカールの原因になることがあり、強い用紙強度が必要になるため、用紙の強度に着目し、例えば特許文献2ではキトサンを用いて、特許文献3ではポリアクリルアミドを用いて、強度が弱い用紙の補強を狙っている。これらは強度補強のメカニズムとして水素結合量を増加させ、繊維間の接触面積を増やすことで用紙の強度を上昇させている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−236062号公報
【特許文献2】特開平11−174719号公報
【特許文献3】特開平11−227346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子写真記録方式に限らずインクジェット記録方式等においても、用紙水分が高くてもカールを低減することができる記録用紙である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくともセルロースパルプを原料とし、下記式で表される用紙のCD方向永久歪みεが0.001〜0.050%の範囲である記録用紙である。
用紙のCD方向永久歪みε(%)=(ΔL/L)×100
(上記式において、ΔLは幅4mm長さ30mmの用紙サンプルを50℃・65%RH環境下に0.0025N/mmの引張応力をかけながら20分放置した後、15N/secの速度で1.4N/mmまで引張応力をかけた直後、15N/secの速度で0.0025N/mmまで引張応力を解放した際、引張応力の最大値をかけてから3秒後の用紙サンプルの寸法変化量(μm)を表し、Lは用紙サンプルの初期寸法(μm)を表す。)
【0008】
また、前記記録用紙において、前記記録用紙は基材、あるいは基材及び塗被層を含んで構成され、前記基材及び前記塗被層のうち少なくとも1つが以下の構造式で示される化合物を含有することが好ましい。
Ti(OR)4−n(OR’)
(上記構造式において、Rは前記化合物に化合している置換基、R’は前記記録用紙を構成する高分子鎖、nは1〜4の整数を各々表す。)
【0009】
また、前記記録用紙において、前記記録用紙は基材、あるいは基材及び塗被層を含んで構成され、前記基材及び前記塗被層のうち少なくとも1つが熱硬化材料を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1によると、本構成を有していない場合に比較して、用紙水分が高くてもカールを低減することができる記録用紙を提供することができる。
【0011】
本発明の請求項2によると、本構成を有していない場合に比較して、用紙水分が高くても定着後のカールを、より低減することができる記録用紙を提供することができる。
【0012】
本発明の請求項3によると、本構成を有していない場合に比較して、用紙水分が高くても定着後のカールを、より低減することができる記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、記録用紙と画像記録方法とに大きく分けて詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0014】
<記録用紙>
本発明者らは、用紙のカールを低減すべく鋭意検討を行った結果、上記のような従来技術では、カール低減効果が十分機能しないことがわかった。また電子写真記録方式の複写機やプリンタではトナーを熱定着する際、圧力がかけられるため、用紙が変形させられ、カールや紙詰まりの原因になることがあり、強い用紙強度が必要とされている。特に用紙の生産性を上げるために製造速度をあげる場合、同時に用紙の繊維配向比が上昇し、CD(Cross Directionの略)方向、つまり抄紙機の進行方向に対して垂直に交わる方向の強度がより低下してしまう。また、原料として古紙を用いた場合にも、パルプの強度が低下し、用紙のCD方向の強度が低下してしまう。これらを補強するため、従来技術として、水素結合量を増すことで用紙強度を増す手法、具体的にはポリアクリルアミド、キトサン、バクテリアセルロース等の材料を添加することで、用紙の強度を補強していたが、これら技術範囲では、補強効果はあるが、水素結合量が増大しているため、水分による影響を受け、用紙の強度が大幅に低減してしまうことから、電子写真記録方式での定着した際のカールが大きくなってしまい、強度向上を達成することはできなかった。そこで、特定の条件で測定した用紙のCD方向永久歪みεを0.001〜0.050%の範囲に制御する対策を取ることで、高水分用紙の強度を大幅に補強することができ、カールを大幅に低減できることを見出した。更に、用紙の強度も向上することから、定着器への巻きつきや転写ベルトへの巻きつき等が低減され、より安定して複写機やプリンタで走行できることを見出した。
【0015】
つまり高水分用紙強度向上を達成できるものは、本実施形態の技術以外では、存在しない。すなわち本実施形態に係る記録用紙は、少なくともセルロースパルプを原料とし、下記式で表される用紙のCD方向永久歪みεが0.001〜0.050%の範囲である。
用紙のCD方向永久歪みε(%)=(ΔL/L)×100
(上記式において、ΔLは幅4mm長さ30mmの用紙サンプルを50℃・65%RH環境下に0.0025N/mmの引張応力をかけながら20分放置した後、15N/secの速度で1.4N/mmまで引張応力をかけた直後、15N/secの速度で0.0025N/mmまで引張応力を解放した際、引張応力の最大値(すなわち、1.4N/mm)をかけてから3秒後の用紙サンプルの寸法変化量(μm)を表し、Lは用紙サンプルの初期寸法(μm)を表す。)
【0016】
本実施形態に係る記録用紙のCD方向永久歪みεは、熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、EXSTAR6100 TMA/SS)を用いて測定する。図1に熱機械分析装置(TMA)の概略を示す。図1において、10が記録用紙、12が張力発生部、14が寸法検出部、16が加熱部、18がつかみ具、20が引張プローブ、22が加温加湿チャンバー、24が湿度空気供給口、26が湿度供給装置を示す。熱機械分析装置1に於いて、引張プローブ20を用い、測定対象の用紙サンプル(記録用紙10)を23℃50%RHの環境にて16時間保持した後、用紙のCD方向(用紙の製造方向と直角の方向)を長手方向にして、幅が4mm、長さが30mmのサイズに調整し、2個のつかみ具18の間隔が20mmになるように記録用紙10をつかみ、引張プローブ20にセットし、加温加湿チャンバー22を上昇させ、引張プローブ20を加温加湿チャンバー22内に密閉する。その後、0.0025N/mmの引張応力をかけながら加温加湿チャンバー22内を50℃まで昇温し、湿度供給装置26より湿度空気供給口24を通して、65%RHになるよう湿度空気を加温加湿チャンバー22内に供給し、50℃・65%RH環境を20分保持した後、15N/secの速度で1.4N/mmまで引張応力をかけた直後、15N/secの速度で0.0025N/mmまで引張応力を解放する。CD方向永久歪み量ΔLは、引張応力の最大値をかけてから3秒後の記録用紙10の寸法変化量(μm)を表し、Lは記録用紙10の初期寸法(μm)を表し、CD方向永久歪みε(%)=(ΔL/L)×100によりε(%)が算出される。図2には熱機械分析装置(TMA)による測定グラフの一例を示す。
【0017】
CD方向永久歪みεは、0.001%以上0.050%以下であり、0.020%以上0.040%以下が好ましく、0.020%以上0.030%以下がより好ましい。CD方向永久歪みεが0.001%未満であると、用紙を転写装置に巻きつける電子写真記録方式複写機において、用紙の腰が強すぎて、用紙が転写装置に追従せずに転写不良が発生してしまったり、製本適正が悪くなることがある。また、CD方向永久歪みεが0.050%より大きいと、熱定着時に圧力がかけられる際、用紙が変形させられ易く、カールや紙詰まりの原因になる。
【0018】
本実施形態において記録用紙の上記CD方向永久歪みεを0.001〜0.050%の範囲にするためには、水素結合以外の結合を導入する材料を記録用紙の基材あるいは塗被層、または記録用紙の基材及び塗被層に内添あるいは塗布することが好ましい。内添による方法の方が塗工液の増粘等の心配がない。そのような材料としては、用紙の主成分であるセルロース間を水素結合以外の結合、例えば、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合等で補強できる、架橋剤、反応剤、接着剤、熱硬化剤等を用いることができる。
【0019】
そのような水素結合以外の結合を導入することができる材料である架橋剤、反応剤、接着剤としては、具体的には、架橋能をもつ水溶性金属塩化合物、例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウム、水溶性チタン化合物等のチタン化合物、エポキシ基を持つグリシジルエーテル、ポリアミドエポキシ樹脂、イソシアネート基を持つMDI(ジフエニルメタンジイソシアネート)、HMDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)等、アルデヒド類であるグリオキザール、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド化合物等があり、加熱することにより、記録用紙のセルロース鎖間に反応が進み、三次元的な構造が形成され、再加熱によっても不融の状態に硬化する性質を持ち、形態安定化及び強度補強できればこの限りではないが、塗工液が増粘しにくい等の使い易さや、色味、熱硬化温度、強度、安全性等の観点からHDMI、炭酸ジルコニウムアンモニウム、水溶性チタン化合物等のチタン化合物、ポリアミドエポキシ樹脂が好ましく、水溶性チタン化合物等のチタン化合物がより好ましい。
【0020】
記録用紙に含まれるチタン化合物としては具体的には下記構造式、
Ti(OR)4−n(OR’)
(上記構造式において、Rはチタン化合物に化合している置換基、R’は記録用紙を構成する高分子鎖、nは1〜4の整数を各々表す。)
で示される化合物であり、例えば水溶性チタン化合物、チタンアルコキシド、チタンアシレート等が挙げられる。チタン化合物としては、加熱することにより、記録用紙のセルロース鎖間に反応が進み、三次元的な構造が形成され、再加熱によっても不融の状態に硬化する性質を持ち、形態安定化及び強度補強できればこの限りではないが、塗工液が増粘しにくい等の使い易さや、色味、熱硬化温度、強度、安全性等の観点から水溶性チタン化合物が好ましく、温度感応型水溶性チタン化合物がより好ましい。
【0021】
水溶性チタン化合物は、Ti−(O−R)(Rは、直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、アルキルチオ基、無置換又は置換アリールチオ基、トリエタノールアミノ基、乳酸基、水酸基等の置換基を示し、炭素数1〜5の直鎖、分岐、環状であることが好ましい。)の構造を有するチタン錯体であり、加熱により用紙のセルロースの水酸基等と架橋する性質を有する化合物である。また、水溶性チタン化合物としては、加熱によりある温度閾値を越えたときに急激に架橋反応が進む温度感応型チタン化合物であることが好ましい。温度感応型チタン化合物は、常温下では安定であるが特定の温度ではじめて架橋反応を起こす特徴を持ち、反応を一時的に抑制する補助剤とともに使用されるものである。温度感応型チタン化合物を使用することにより、少ない使用量で確実に架橋を行うことができ、また、塗工液の増粘を抑制することができる。取り扱い性等の点からチタン化合物の架橋温度は90℃〜120℃程度の範囲であることが好ましい。
【0022】
また、本実施形態において記録用紙の上記CD方向永久歪みεを0.001〜0.050%の範囲にするために、記録用紙に含有させる物質は熱硬化材料でも良い。熱硬化材料は、ある一定の温度を加えたときに不可逆的に硬化するもの、すなわち、加熱することにより、高分子鎖間に複雑な反応が進み、三次元的な構造が形成され、再加熱によっても、不融の状態であるように硬化する性質を持つ材料のことである。熱硬化材料の場合、電子写真方式の画像形成装置での定着時、高水分用紙に応力が与えられた場合でも、記録用紙のセルロースパルプ間で熱硬化材料が強固な結合を形成するため、高水分用紙の形態安定性が良くなり、カールが起こりにくくなる。また、従来用いられてきた水溶性の紙力増強剤(例えばポリアクリルアミド等)の場合、高湿環境下では、セルロース繊維との間で構成する水素結合間に水分子が侵入することで記録用紙の強度低下が顕著であったが、熱硬化材料は、水に対して感度が低いため、記録用紙の強度低下が小さく、定着装置での定着部材への記録用紙の巻き付き現象は起こり難い。
【0023】
そのような熱硬化材料として、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、キシレン系樹脂、熱硬化性ポリウレタン等の合成樹脂や、β−1,3−グルカン、β−1,3−グルカン誘導体、たんぱく質、カゼイン、天然リグニンのフェノ−ル誘導体、セラック(シェラックと呼ばれることもある)、ウルシオール等の天然物もしくは天然物の抽出物もしくは天然物の誘導体などが使用でき、用紙の永久歪みが抑制できれば、この限りではないが、環境負荷、用紙再生時の離解性、色味、熱硬化温度、用紙強度上昇等の観点からβ−1,3−グルカン、セラック、もしくはβ−1,3−グルカン誘導体、セラック誘導体の中から選ばれることが好ましい。
【0024】
本実施形態において記録用紙の上記CD方向永久歪みεを0.001〜0.050%の範囲にするために、上記水素結合以外の結合を導入する材料と熱硬化材料とを記録用紙に含有させても良い。
【0025】
本実施形態における水素結合以外の結合を導入する材料は用紙のセルロースに反応していることが好ましいが、非反応部分が残っていても良い。また、熱硬化材料は、熱硬化していることが好ましいが、非硬化部分が残っていても良い。その際の確認方法としては、熱分解ガスクロマトグラフィ(GC)−質量分析装置(MASS)によって、反応物由来の化合物と用紙構成材料、Ti由来の化合物と用紙構成材料、例えばセルロース、または酸化澱粉が結合した物質を同定しても良いし、セルラーゼで用紙を分解した後、誘導体化しGC−MASSにて分離同定しても良い。また赤外分光装置(IR)にて、用紙を粉砕し、シリカゲル等で脱湿させた後、KBr粉末とともによく混合し、錠剤形成器により錠剤化した後、赤外吸収スペクトルを測定し、反応材料と用紙構成材料、チタンと用紙構成材料、例えば反応材料にセルロース、または酸化澱粉が結合した構造由来の吸収波長が存在していることを確認しても良い。また、用紙を良く脱湿したのち、ATR(Attenuated Total Reflection)法にて、赤外吸収スペクトルを測定してもよい。またアルカリ性の冷水または熱水で抽出した後、液体クロマトグラフィ(LC)、ガスクロマトグラフィ(GC)等で分離・同定しても良い。
【0026】
本実施形態における水素結合以外の結合を導入する材料及び熱硬化材料の記録用紙中の合計含有量としては、0.1g/m以上10.0g/m以下であることが好ましく、0.5g/m以上5.0g/m以下であることがより好ましい。含有量が10.0g/mを上回ると、材料の絶対量が多く、用紙を再生することが難しくなり、また、用紙の強度が高くなりすぎて紙詰まりが発生し易くなったり、電気抵抗率が低くなりトナーの転写不良が起きやすくなる。また、処理量が0.1g/mを下回ると、材料の絶対量が少なく、上記CD方向永久歪みεが低減せず、電子写真記録方式の複写機等で記録用紙を走行させた際、カールが大きくなってしまう場合がある。
【0027】
本実施形態に係る記録用紙は表面サイズ剤により処理してもよい。表面サイズ液は、水などの溶媒を主体として構成され、表面サイズ液の濃度は5から15質量%の範囲であることが好ましく、8から12質量%の範囲であることがより好ましい。前記表面サイズ液による付与量としては、記録用紙片面当り0.1から3.0g/mの範囲であることが好ましく、1.0から2.0g/mの範囲であることがより好ましい。処理量が3.0g/mを上回ると、表面サイズ剤の絶対量が多く、カール低減効果が阻害され、カールが大きくなる場合がある。また、0.1g/mを下回ると、表面サイズ剤の絶対量が少なく、表面サイズ剤と一緒に付与する顔料などを用紙表面に定着できず、複写機等で記録用紙を走行させた際、紙粉が大量に発生し機械にトラブルを発生させてしまう場合がある。
【0028】
本実施形態における表面サイズ剤として具体的には、表面サイズ剤の中でも、表面サイズ剤として通常使用される酸化澱粉だけではなく、澱粉を酵素で変性した澱粉(酵素変性澱粉)、疎水性を向上させたアセチル化澱粉、燐酸エステル化澱などを用いてもよい。表面サイズ剤の疎水性の観点から親水性のカルボキシル基を低減するため、従来使用されている酸化澱粉よりも、澱粉を酵素で変性した澱粉、アセチル化澱粉、シリコン化澱粉などが好ましい。また、ポリビニルアルコールのけん化度を極めて低くして疎水基を残すか、けん化度を極めて高くして結晶化度を向上させ、疎水性を向上させたものも好ましく用いられる。またインクジェット方式での画質を向上させる目的で、ポリビニルアルコールの重合度が低いものを使用しても良い。また更に、疎水性を向上させたシラノール変性した表面サイズ剤等を用いても良く、これらは混合して、または単独で使用しても良い。
【0029】
本実施形態における記録用紙のCD伸縮率は0.70以下が好ましく、特に0.30〜0.60%がより好ましい。CD伸縮率とは、温度が23℃に保たれた恒温環境下に記録用紙を放置した際に、湿度を「65%R.H.→25%R.H.→65%R.H.→90%R.H.」で変化させる吸脱湿処理を3サイクル繰り返し、3サイクル目に湿度を「65%R.H.→25%R.H.」に変化させた時の記録用紙の寸法変化率を意味する。記録用紙の寸法は王子エンジニアリング製H・K式伸縮度試験器を用いて測定することができる。なお、「CD(方向)」とは記録用紙製造時の流れ方向を横断する方向であり、記録用紙の寸法測定に際しては、記録用紙製造時の流れ方向を横断する方向の寸法を測定する。用紙のCD伸縮率(%)を0.70以下、好ましくは0.30から0.60%の範囲にコントロールするには、本実施形態の上記形態安定効果による方法、使用するパルプの叩解を弱めた高濾水度パルプを原料に使用する、角質化したパルプを原料に使用する、坪量を高くする、乾燥紙力増強剤を添加する、紙厚を厚くする、用紙内部のサイズ剤・填料を最適化する、ウエットプレス圧を低減化する、繊維配向比を低減する等の方法が挙げられる。この際、本実施形態におけるパルプの濾水度とは、カナダ標準濾水度のことでありJIS−P−8121に準じた測定法で測定された値である。
【0030】
本実施形態の記録用紙は、地合指数10以上50以下が好ましく、15以上40以下がより好ましい。地合指数が10を下回ると地合むらから、電子写真記録方式における画像転写むらが発生しやすくなる。また地合指数が50を超えるとその均質性を確保するため用紙叩解を強くする必要がありカールが大きくなってしまうことがある。ここで、地合指数とは、M/K Systems,Inc.(MKS社)製の3Dシートアナライザ(M/K950)を使い、そのアナライザの絞りを直径1.5mmとし、マイクロフォーメーションテスタ(MFT)を用いて測定したものである。すなわち、3Dシートアナライザにおける回転するドラム上にサンプルを取り付け、ドラム軸に取り付けられた光源と、ドラムの外側に光源と対応して取り付けられたフォトディテクタによって、サンプルにおける局部的な坪量差を光量差として測定する。この時の測定対象範囲は、フォトディテクタの入光部に取り付けられる絞りの径で設定される。次にその光量差(偏差)を増幅し、A/D変換し、64の光測定的な坪量階級に分級し、1回のスキャンで1000000個のデータを取り、そのデータ分のヒストグラム度数を得る。そしてそのヒストグラムの最高度数(ピーク値)を64の微小坪量に相当する階級に分級されたもののうち100以上の度数を持つ階級の数で割り、それを1/100にした値が地合い指数として算出される。この地合い指数はその値が大きいほど地合いがよいことを示す。
【0031】
また電子写真記録方式において用紙の電気特性は重要であり、特に本実施形態では、用紙の電気特性を変化させうる界面活性剤やカチオン化材料を多用しており、その組み合わせや含有量によっては、電子写真記録方式において画像転写むらが発生してしまうことがある。従って本実施形態では、記録用紙の少なくとも印字される面の表面抵抗率が1.0×10から1.0×1011Ω/□の範囲であり、前記記録用紙の体積抵抗率が1.0×1010から1.0×1012Ω・cmの範囲に規定することによって上記問題を回避することができ、好ましい。上記の範囲に入っていない場合には、電子写真記録方式において画像転写むらが発生してしまうことがある。
【0032】
本実施形態に用いられる記録用紙は、少なくとも印字される面の表面抵抗率は1.0×10から1.0×1011Ω/□の範囲であることが好ましく、5.0×10から7.0×1010Ω/□の範囲であることがより好ましく、5.0×10から2.0×1010Ω/□の範囲であることがさらに好ましい。なお、表面電気抵抗率は、多価金属塩及び/またはカチオン性樹脂を塗布してなる表面の抵抗を示す。また、本実施形態に用いられる記録用紙の体積電気抵抗率は1.0×1010から1.0×1012Ω・cmの範囲であることが好ましく、1.0×1010から1.6×1011Ω・cmの範囲であることがより好ましく、1.3×1010から4.3×1010Ω・cmの範囲であることがさらに好ましい。
【0033】
なお、前記表面抵抗率及び体積抵抗率は、23℃50%RHの条件下に24時間保存し、調湿された記録用紙を、JIS−K−6911に準拠した方法で測定したものである。
【0034】
本実施形態における記録用紙は、少なくともセルロースパルプを原料とするものであり、下記原紙であってもよく、該原紙を基材とするものの表面に顔料やバインダなどを処理した普通紙であってもよい。また、基材にサイズプレスを施した上から顔料を含むコート層(塗被層)を付与したコート紙(塗被紙)であってもよい。前記原紙は、セルロースパルプを含むものであるが、セルロースパルプとしては公知のものを用いることができ、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等を使用することができる。
【0035】
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、サーモメカニカルパルプ等も使用できる。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを加えてもよい。
【0036】
特にバージンで使用するパルプは、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free;ECF)や塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free;TCF)で漂白処理されたものであることが好ましい。
【0037】
また、前記古紙パルプの原料として、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;等を配合することができる。
【0038】
本実施形態に用いられる原紙に使用される古紙パルプとしては、前記古紙原料を、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものが好ましい。また、より白色度の高い原紙を得るためには、上記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50%以上100%以下とすることが好ましい。さらに資源の再利用という観点からは、前記古紙パルプの配合率を70%以上100%以下とすることがより好ましい。
【0039】
前記オゾン処理は、上質紙に通常含まれている蛍光染料等を分解する作用があり、過酸化水素処理は脱墨処理時に使用されるアルカリによる黄変を防ぐ。特にこの二つを組み合わせた処理によって古紙の脱墨を容易にするだけでなく、パルプの白色度も向上する。また、パルプ中の残留塩素化合物を分解・除去する作用もあるため、塩素漂白されたパルプを使用した古紙の有機ハロゲン化合物含有量低減において多大な効果を持つ。
【0040】
また、本実施形態に係る記録用紙には、不透明度、白さ及び表面性を調整するため、填料を添加することが好ましい。特に用紙中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない填料を使用することが好ましい。使用できる填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、サポナイト、ベントナイト等の白色無機顔料、及びプラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂、等の有機顔料を挙げることができる。また、古紙を配合する場合には、古紙原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
【0041】
更に、本実施形態に用いられる用紙には、内添サイズ剤を添加することが好ましく、内添サイズ剤としては、中性抄紙に用いられる、中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマ(AKD)、石油樹脂系サイズ剤が使用できる。
【0042】
また、記録用紙の表面をカチオン性に調整する場合には、カチオン性物質として、例えば、親水性のカチオン樹脂等を表面に処理することができるが、このカチオン性樹脂の内部への浸透を抑制するためには、このカチオン性樹脂を塗布する前の用紙サイズ度は10秒以上60秒未満であることが好ましい。
【0043】
以上述べたような記録用紙に、前記表面サイズ液を表面処理することで本実施形態の記録用紙が得られる。表面処理は、表面サイズ液をサイズプレス、シムサイズ、ゲートロール、ロールコータ、バーコータ、エアナイフコータ、ロッドブレードコータ、ブレードコータ等の通常使用されている塗布手段によって、前記用紙に塗布することにより行うことができる。その後乾燥工程を経て、本実施形態の記録用紙を得ることができる。
【0044】
本実施形態の記録用紙の坪量は特に限定されるものではないが、60から128g/mの範囲内が好ましく、60から100g/mの範囲内がより好ましく、60から90g/mの範囲内が更に好ましい。坪量が高い程、カール、波打ちには有利であるが、坪量が128g/mを超えると用紙の腰が強くなり過ぎるためプリンタ等の用紙走行性が低下することがある。また60g/mより低いと、カールの発生を小さく抑え難く、また、裏移りの観点からも好ましくない。
【0045】
本実施形態における記録用紙の繊維配向比とは、超音波伝播速度法による繊維配向比であり、用紙のMD方向(抄紙機の進行方向)の超音波伝播速度を、用紙のCD方向(抄紙機の進行方向に対する垂直方向)の超音波伝播速度で除した値を示すもので、次式で表されるものである。
原紙の超音波伝播速度法による繊維配向比(T/Y比)=MD方向超音波伝播速度/CD方向超音波伝播速度
なお、この超音波伝播速度法による繊維配向比はSonicSheetTester210(野村商事(株)社製)を使用して測定する。本実施形態の記録用紙は、繊維配向比1.1以上1.8以下が好ましく、1.2以上1.7以下がより好ましい。
【0046】
本実施形態に係る記録用紙は、電子写真記録方式の複写機やプリンタ、特に小型化・多機能化する複写機やプリンタで使用した場合においてもカールが小さく、紙詰まりを大幅に低減することができる。特に定着機構から用紙の片側により多くの熱がかかる機構の複写機やプリンタに高湿環境下で適用するときの、記録用紙の走行信頼性を改善することができる。また、本実施形態に係る記録用紙をインクジェット記録方式等に用いた場合でも用紙の寸法変化を抑制することができることから、両面コピー・プリント時の紙詰まりを大幅に低減することができる。つまり本実施形態に係る転写用紙は、(1)これを用いて印字した場合に、カールを抑制することが可能、(2)電子写真記録方式に用いた場合、定着器での巻きつきがほとんど発生しない。このため、用紙のカールが小さくなるばかりか、出力機械内で紙詰まりなく出力することができる。
【0047】
<画像記録方法>
(電子写真記録方式の画像記録方法)
本実施形態に係る画像記録方法は、静電潜像担持体表面を均一に帯電する帯電工程と、前記静電潜像担持体表面を露光し静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像工程と、前記トナー画像を記録用紙表面に転写する転写工程と、前記記録用紙表面のトナー画像を定着する定着工程とを含み、記録用紙が上記記録用紙である。
【0048】
本実施形態における電子写真記録方式の画像記録方法では、上記記録用紙を用いることにより、従来と同様に高画質な画像が得られると共に、印字直後に発生するカールを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態における電子写真記録方式の画像記録方法に用いられる画像形成装置は、前記帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程を有する電子写真記録方式を利用するものであれば特に限定されない。たとえば、シアン、マゼンタ、イエロー、および、ブラックの4色のトナーを用いる場合には、1つの感光体に、各色のトナーを含む現像剤を順次付与してトナー像を形成する4サイクルの現像方式によるカラー画像形成装置や、各色毎に対応した現像ユニットを4つ備えたカラー画像形成装置(所謂タンデム機)等が利用できる。
【0050】
画像形成に際して用いられるトナーも公知のものであれば特に限定されないが、例えば、高精度な画像が得られる点で、球状で、粒子径、粒度分布の小さいトナーを用いたり、省エネルギーに対応するために、低温定着が可能な融点の低い結着樹脂を含むトナーを用いたりすることができる。
【0051】
(インクジェット記録方式の画像記録方法)
本実施形態に係る画像記録方法は、インクの液滴を記録用紙へ吐出させ、該記録用紙表面に画像を記録するインクジェット記録方式の画像記録方法であって、記録用紙が上記記録用紙である。
【0052】
本実施形態におけるインクジェット記録方法は、公知のインクジェット装置であれば、いずれのインクジェット記録方式を用いたものであっても良好な印字品質を得ることができる。さらに、印字中または印字の前後に記録用紙等の加熱手段を設け、記録用紙及びインクを50℃から200℃の温度で加熱し、インクの吸収及び定着を促進する機能を持った方式に対しても、本実施形態におけるインクジェット記録方法を適用することができる。
【0053】
次に、本実施形態におけるインクジェット記録方法を実施するのに適したインクジェット記録装置の一例について説明する。この例はいわゆるマルチパス方式と呼ばれるもので、記録ヘッドが記録用紙表面を複数回走査することによって画像を形成するものである。
【0054】
ノズルからインクを吐出する方式は、まず、ノズル内に備えられたヒータに通電加熱することによってノズル内のインクを発泡させ、その圧力によってインクを吐出する、いわゆるサーマルインクジェット方式がある。また、圧電素子に通電することにより該素子を物理的に変形させて、その変形によって生ずる力を利用してノズルからインクを吐出する方式もある。この方式では、圧電素子にピエゾ素子を使用したものが代表的である。本実施形態におけるインクジェット記録方法において用いられるインクジェット記録装置においては、ノズルからインクを吐出する方式は前記いずれの方式であってもよく、またこれらの方式に限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
<用紙の作製>
(実施例1)
濾水度380mLの中質脱墨パルプをパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1000m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースA)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、50質量部の水溶性チタン化合物1(松本製薬工業株式会社製、オルガチックスTC−310、Ti−(O−R)(RはOHおよびC基))、30質量部のβ−1,3−グルカン(武田キリン食品(株)製、商品名:カードラン)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を、チタン化合物及び熱硬化材料(β−1,3−グルカン)の含有量が1.0g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.33m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(1)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。フーリエ変換赤外分光分析装置(株式会社パーキンエルマージャパン製、Spectrum1000)により、チタン化合物と記録用紙のセルロースとの間に共有結合が形成されていることを確認した。
【0057】
(実施例2)
濾水度480mLのLBKPをパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1600m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースA)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、100質量部のβ−1,3−グルカン(武田キリン食品(株)製、商品名:カードラン)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を50℃に加温し、熱硬化材料(β−1,3−グルカン)の含有量が0.59g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で90℃、1.0m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(2)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
濾水度380mLの中質脱墨パルプをパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1750m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースC)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、40質量部の水性セラック溶液(日本シェラック工業株式会社製、SB#25)および、10質量部の水分散性ポリイソシアネート(大日本インキ化学工業株式会社製、バーノックDNW−5000)とを混合し、水分散性ポリイソシアネート及び熱硬化材料(セラック)の用紙への処理量が1.82g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、1.0m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(3)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0059】
(実施例4)
濾水度380mLの中質脱墨パルプをパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1600m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースA)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、40質量部の40質量部の水性セラック溶液(日本シェラック工業株式会社製、SB#25)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を50℃に加温し、熱硬化材料(セラック)の含有量が0.15g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で85℃、1.0m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(4)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
濾水度380mLの中質脱墨パルプをパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1000m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースA)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、50質量部の水溶性チタン化合物1(松本製薬工業株式会社製、オルガチックスTC−310)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を、チタン化合物の含有量が1.0g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.33m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(5)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0061】
(実施例6)
濾水度480mLのLBKPをパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1600m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースA)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、100質量部の温度感応型水溶性チタン化合物(松本製薬工業株式会社製、T−2762)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を50℃に加温し、チタン化合物の含有量が0.59g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で90℃、1.0m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(6)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0062】
(実施例7)
実施例6における濾水度480mLのLBKPを濾水度380mLの中質脱墨パルプに変更した以外は実施例6と同様にして、坪量が70g/mの記録用紙(7)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。記録用紙の特性値を表1に示す。
【0063】
(実施例8)
濾水度380mLの中質脱墨パルプをパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1750m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの記録用紙を得た。この記録用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースC)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、1200質量部の温度感応型水溶性チタン化合物(松本製薬工業株式会社製、T−2762)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を50℃に加温し、チタン化合物の用紙への処理量が1.82g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、1.0m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(8)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0064】
(実施例9)
濾水度380mLのLBKPをパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部と、6質量部の温度感応型水溶性チタン化合物(松本製薬工業株式会社製、T−2762)とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1600m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。チタン化合物の用紙への添加量は2.5g/mになるようにした。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースC)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を50℃に加温し、用紙への処理量が2.48g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、1.0m/min条件で乾燥し、坪量が71g/mの記録用紙(9)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0065】
(実施例10)
実施例9における濾水度380mLのLBKPを濾水度380mLの中質脱墨パルプに変更し、温度感応型水溶性チタン化合物(松本製薬工業株式会社製、T−2762)6質量部から、水溶性チタン化合物2(松本製薬工業株式会社製、TC−400、Ti−(O−R)(Rは(C14N)および(CO)))12質量部に変更し、用紙への添加量が3.85g/mになるようにした以外は実施例9と同様にして、坪量が74g/mの記録用紙(10)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0066】
(実施例11)
濾水度380mLの中質古紙をパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製、Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速800m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースA)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、100質量部の温度感応型水溶性チタン化合物(松本製薬工業株式会社製、T−2762)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を50℃に加温し、チタン化合物の含有量が0.91g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で85℃、1.0m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(11)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
実施例5の水溶性チタン化合物1をポリアクリルアミド(荒川化学工業株式会社製、ポリマセットHP−715)に変更した以外は実施例5と同様にして、坪量が70g/mの記録用紙(R−1)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0068】
(比較例2)
市販用紙(富士セロックスオフィスサプライ製Green100用紙)を比較例2として、記録用紙の特性値を表1に示す。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0069】
(比較例3)
実施例2のβ−1,3−グルカンの添加量を100質量部から2000質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、坪量が70g/mの記録用紙(R−3)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0070】
(比較例4)
実施例5の水溶性チタン化合物1をキトサン(大日精化製ダイキトサン)に変更した以外は実施例5と同様にして、坪量が70g/mの記録用紙(R−4)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0071】
(比較例5)
濾水度380mLの中質古紙をパルプ固形分が0.3質量%になるようパルプ分散液を調整した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100質量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製Fibran−81)0.3質量部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製Cato−304)0.5質量部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1600m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量68g/mの用紙を得た。この用紙に、表面サイズバインダとして酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースA)固形分100質量部に対して10質量部のボウ硝、10質量部の表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355)、10質量部の温度感応型水系チタン化合物(松本製薬工業株式会社製、T−2762)を含む8質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を50℃に加温し、チタン化合物の含有量が0.15g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で85℃、1.0m/min条件で乾燥し、坪量が70g/mの記録用紙(R−5)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0072】
(比較例6)
実施例10における水溶性チタン化合物2(松本製薬工業株式会社製、TC−400)を12質量部から30質量部に変更した以外は実施例10と同様にして、坪量が70g/mの記録用紙(R−6)を得た。記録用紙の特性値を表1に示す。
【0073】
(比較例7)
実施例7におけるチタン化合物を添加しないこと以外は、実施例7と同様にして、坪量が70g/mの記録用紙(R−7)を得た。図3に熱機械分析装置(TMA)によるCD方向永久歪みεの測定結果を示す。また、記録用紙の特性値を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
<評価方法>
(1)電子写真記録方式でのカール評価
上記実施例1〜11及び比較例1〜4にて作製された各記録用紙を23℃、65%RH環境にて12時間調湿し、用紙のフェルトサイド面(FS面:抄紙時での脱水面の反対面)が印字面になるようにし、富士ゼロックスプリンティングシステムズ(株)製のDocuPrint260を使用して片面コピーを行い、下記の評価を行った。MD方向(用紙の抄造方向)が長手方向になるようにA4サイズに断裁した用紙に、画像を載せずプリンタ出力を行い、下記の評価基準で走行性能を評価した。図4は、熱定着後のカールの測定についての説明図であり、hは熱定着後の記録用紙10のカール高さを示す。◎、○が許容レベルである。結果を表2に示す。
◎:h<30mm
○:30mm≦h<45mm
△:45mm≦h<60mm
×:h≧60mm
【0076】
(2)複写機内紙詰まり評価
上記実施例1〜11及び比較例1〜4にて作製された各記録用紙を23℃、65%RH環境にて12時間調湿し、用紙のフェルトサイド面(抄紙時での脱水面の反対面)が印字面になるようにし、富士ゼロックス(株)製のDocuCentreColor 500を使用して片面コピーを行い、下記の評価を行った。MD方向(用紙の抄造方向)が長手方向になるようにA4サイズに断裁した用紙に、網点面積率が100%の単色の黒色画像を載せ、1000枚出力を行い、下記の評価基準で走行性能を評価した。◎、○が許容レベルである。結果を表2に示す。
◎:特に走行性能に問題はない。実用上問題はない。
○:3/1000以下の確率で機械内での紙詰まりが発生する。実用上問題はない。
△:10/1000以下の確率で機械内での紙詰まりが発生する。実用上問題がある。
×:10/1000以上の確率で機械内での紙詰まりが発生する。実用上問題がある。
【0077】
(3)トナー転写性評価
上記実施例1〜11及び比較例1〜4にて作製された各記録用紙を23℃、50%RH環境にて12時間以上調湿し、用紙のフェルトサイド面(抄紙時での脱水面の反対面)が印字面になるようにし、富士ゼロックス(株)製のA Color936を使用して、網点面積率が100%の単色の黒色画像を載せ、下記の評価基準でトナーの転写むらを評価した。◎、○が許容レベルである。結果を表2に示す。
◎:トナー転写むらがなく極めて優れている。実用上問題ない。
○:トナー転写むらがごく軽微に発生。実用上問題ない。
△:トナー転写むらが軽微に発生。実用上問題がある。
×:トナー転写むらが多くあり劣っている。実用上問題がある。
【0078】
(4)インクジェット方式放置乾燥後カール評価
上記実施例1〜11及び比較例1〜4にて作製された各記録用紙を23℃、65%RH環境にて12時間調湿し、はがきサイズの記録用紙に余白を5mm取り、キャノン(株)製のインクジェットプリンタ(N2100)を使用して、黒100%ベタ画像を印字し、23℃、50%RHの環境に印字面を上に平置きに放置し、印字後100時間放置した後に発生するハンギングカール発生量を測定した。測定値をカール曲率に換算し評価を行った。評価基準は以下の通りで、◎、○が許容レベルである。結果を表2に示す。
◎:30m−1未満
○:30m−1以上55m−1未満
△:55m−1以上75m−1未満
×:75m−1以上
【0079】
【表2】

【0080】
表2からわかるように、CD方向永久歪みεを所定の範囲とした実施例1〜11の記録用紙は、定着後カール、複写機内紙詰まり、転写性共に良好で電子写真方式特性に優れ、さらにインクジェット方式適性にも優れる。一方、CD方向永久歪みεが所定の範囲外である比較例1〜4の記録用紙は電子写真方式特性及びインクジェット方式適性が劣る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態で使用する熱機械分析装置(TMA)の一例の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における熱機械分析装置(TMA)による測定結果の一例の概要を示す図である。
【図3】本発明の実施例及び比較例におけるCD方向永久歪みεを示す図である。
【図4】本発明の実施例における熱定着後のカールの測定について説明する概略図である。
【符号の説明】
【0082】
1 熱機械分析装置、10 記録用紙、12 張力発生部、14 寸法検出部、16
加熱部、18 つかみ具、20 引張プローブ、22 加温加湿チャンバー、24 湿度空気供給口、26 湿度供給装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともセルロースパルプを原料とし、下記式で表される用紙のCD方向永久歪みεが0.001〜0.050%の範囲であることを特徴とする記録用紙。
用紙のCD方向永久歪みε(%)=(ΔL/L)×100
(上記式において、ΔLは幅4mm長さ30mmの用紙サンプルを50℃・65%RH環境下に0.0025N/mmの引張応力をかけながら20分放置した後、15N/secの速度で1.4N/mmまで引張応力をかけた直後、15N/secの速度で0.0025N/mmまで引張応力を解放した際、引張応力の最大値をかけてから3秒後の用紙サンプルの寸法変化量(μm)を表し、Lは用紙サンプルの初期寸法(μm)を表す。)
【請求項2】
前記記録用紙は基材、あるいは基材及び塗被層を含んで構成され、前記基材及び前記塗被層のうち少なくとも1つが以下の構造式で示される化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の記録用紙。
Ti(OR)4−n(OR’)
(上記構造式において、Rは前記化合物に化合している置換基、R’は前記記録用紙を構成する高分子鎖、nは1〜4の整数を各々表す。)
【請求項3】
前記記録用紙は基材、あるいは基材及び塗被層を含んで構成され、前記基材及び前記塗被層のうち少なくとも1つが熱硬化材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の記録用紙。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−116842(P2008−116842A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301918(P2006−301918)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】