説明

記録装置、制御プログラム

【課題】帯電防止処理が施されている被記録材支持部材を用いることなく、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させる。
【解決手段】吸引装置を動作させて吸引ON状態とし(ステップS21)、記録前の単票紙を待機位置へ給送する(ステップS22)。つづいて、吸引OFF状態で、副走査方向の先端が第2搬送位置に到達する位置まで記録前の単票紙を副走査方向へ搬送する(ステップS23、S24)。つづいて、副走査方向の先端が待機位置に到達する位置まで記録前の単票紙を逆送り方向へ搬送する(ステップS25)。それによって、記録前の単票紙を待機位置へ給送する過程で記録紙支持部材と単票紙との間に蓄積された静電気は、その単票紙に記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、を備えた記録装置、及び当該記録装置の制御をコンピューターに実行させる制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェットプリンターやドットインパクトプリンター等の記録装置においては、記録実行領域へ被記録材を搬送するとともに、その記録実行領域で被記録材支持部材に支持される被記録材の記録面にドットを形成することによって、被記録材に記録が実行される。このとき被記録材は、被記録材支持部材に支持された状態で搬送されるので、被記録材支持部材に摺接しながら搬送されることになる。そのため、被記録材支持部材と被記録材とが摺接する部分に、主に摩擦帯電によって静電気が発生し、その静電気が被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されていくことになる。そして、その静電気によって被記録材支持部材と被記録材との間に吸引力が作用し、それによって摺接抵抗が増加して被記録材の搬送負荷が増加することとなる。つまり、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気は、被記録材の搬送精度が低下する要因となり、記録装置における搬送精度の低下は記録精度が低下する要因となり得る。
【0003】
このような課題を解決可能な従来技術としては、例えば帯電防止処理が施された被記録材支持部材等を備えた記録装置が公知である。この従来技術の被記録材支持部材等は、より具体的には、導電性物質又は表面活性剤を混入したプラスチックにより形成され、あるいは表面に静電防止塗料が塗布されている。当該従来技術によれば、被記録材が摺接する被記録材支持部材に帯電防止処理が施されていることによって、静電気の発生が低減されるので、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−289290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら導電性物質又は表面活性剤を混入したプラスチックは、そうでないプラスチックと比較して一般的に高価である。そのため、このようなプラスチックで成形した被記録材支持部材を採用すると、それによって記録装置のコストが大幅に上昇してしまう虞が生ずる。また、被記録材支持部材の表面に静電防止塗料を塗布するとなると、それによって製造工程が増加し、やはり記録装置のコストが大幅に上昇してしまう虞が生ずる。そして、このような帯電防止処理が施されている部材は、摩耗や経年変化による劣化によって帯電防止処理効果が徐々に低下していく場合が多いことから、近年の記録装置の長寿命化に対するニーズに対応できない可能性がある。
【0006】
このような状況に鑑み本発明は成されたものであり、本発明の目的は、帯電防止処理が施されている被記録材支持部材を用いることなく、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、制御装置と、を備えた記録装置であって、前記制御装置は、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで記録前の被記録材を搬送する手段と、当該被記録材への記録を開始する前に、前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、正送り方向への搬送及び逆送り方向への搬送を行うことにより、いったん前記待機位置と異なる位置まで当該被記録材を搬送した後、再度前記待機位置まで当該被記録材を搬送する手段と、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で当該被記録材に記録を実行する手段と、を有する、ことを特徴とした記録装置である。
【0008】
被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで記録前の被記録材を搬送する過程においては、例えば被記録材の所謂スキュー取り動作や頭出し・位置決め動作等が行われるのが一般的である。これらの動作は、被記録材支持部材の支持面(被記録材を支持する面であり、被記録材が摺接する部分。以下同じ。)に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置を備えた記録装置においては、より高精度なスキュー取りや被記録材の頭出し・位置決めを実現する上で、その吸引孔に負圧を発生させている状態で行うのが望ましい。また被記録材への記録実行時には、より高精度な被記録材の搬送を行ってより高精度な記録を実現する上で、やはり被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させている状態とするのが望ましい。吸引孔に負圧を発生させた状態では、その被記録材支持部材の支持面に被記録材が吸着するため、被記録材の反りやカール等の変形に起因して被記録材支持部材の支持面から被記録材が浮き上がることが抑制されるからである。
【0009】
他方、記録材支持部材の支持面に被記録材が吸着することによって、被記録材の摺接抵抗が増加することとなる。そのため、被記録材支持部材と被記録材とが摺接する部分に発生する静電気が増加することとなり、その結果、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積される静電気が増加することとなる。特に被記録材の所謂スキュー取り動作や頭出し・位置決め動作等においては、被記録材支持部材の支持面に吸着した状態の被記録材に対して、正送り方向への搬送と逆送り方向への搬送とが交互に連続して複数回繰り返される場合が多く、そのため特に静電気が蓄積されやすい傾向となる。
【0010】
このようなことから本発明の第1の態様は、まず記録前の被記録材を待機位置まで搬送する際には、吸引孔に負圧を発生させている状態とする。それによって、例えば被記録材の所謂スキュー取り動作や頭出し・位置決め動作等を高精度に行うことができる。
【0011】
つづいて、その待機位置にある被記録材に記録を開始する前に、吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を吸引孔に発生させている状態で、正送り方向への搬送及び逆送り方向への被記録材の搬送を行う。それによって、記録前の被記録材を待機位置まで搬送する過程で被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積された静電気は、その被記録材に記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。これは、吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を吸引孔に発生させている状態とすることによって、被記録材支持部材の支持面から被記録材がやや浮き上がって両者の間隔が広がり、それによって、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気の大気中への自然放電が促進されることによるものと考えられる。さらに、その状態から正送り方向への搬送及び逆送り方向への搬送を行うことによって、その被記録材の広い範囲に搬送装置が接することとなり、それによって、被記録材から搬送装置を経由して筐体等へと静電気が放電されることが促進されることによるものと考えられる。
【0012】
尚、この正送り方向への搬送及び逆送り方向への搬送は、吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を吸引孔に発生させている状態で行われるため、被記録材の摺接抵抗を大幅に減少させた状態で行われることになる。したがって、このときに被記録材支持部材と被記録材とが摺接する部分に発生する静電気は、極めて少ない量に抑制されると考えられる。
【0013】
そして、再度待機位置まで被記録材を搬送した後、吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材への記録を実行する。それによって、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気が比較的少ない状態で、その被記録材に記録を実行することができるので、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。また、吸引孔に負圧を発生させている状態で記録を実行することによって、高精度な被記録材の搬送が可能になるため、高精度な記録を実現することができる。
【0014】
このようにして本発明の第1の態様によれば、帯電防止処理が施されている被記録材支持部材を用いることなく、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0015】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、制御装置と、を備えた記録装置であって、前記制御装置は、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行する手段と、前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置に未記録部分がある状態となる位置まで記録実行後の当該被記録材を搬送する手段と、を有する、ことを特徴とした記録装置である。
【0016】
前述したように、吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行することによって、高精度な被記録材の搬送が可能になるため、高精度な記録を実現することができる。しかし例えば軸体に巻かれた長尺な被記録材(いわゆるロール紙等)に連続して記録を実行していくような場合には、吸引孔に発生させている負圧によって高い摺接抵抗が生ずる状態で、被記録材支持部材の支持面に被記録材が摺接し続けることとなる。そのため被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気は、少しずつ大気中に自然放電されてはいくものの、それを上回るペースで徐々に増加していくことが多い。
【0017】
このような静電気に対し、本発明の第2の態様は、被記録材に記録を実行した後、待機位置に未記録部分がある状態となる位置まで当該被記録材を搬送する際に、吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を吸引孔に発生させている状態とする。それによって、記録実行中に被記録材と被記録材支持部材との間に蓄積された静電気は、前述した第1の態様と同様に、その放電が促進され、減少する。
【0018】
そして、その状態から被記録材の未記録部分への記録を開始する。それによって、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気が比較的少ない状態で、その被記録材の未記録部分への記録を続行することができる。また、吸引孔に負圧を発生させている状態で記録を実行することによって、高精度な被記録材の搬送が可能になるため、高精度な記録を実現することができる。
【0019】
このようにして本発明の第2の態様によれば、帯電防止処理が施されている被記録材支持部材を用いることなく、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0020】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、被記録材を切断可能な切断装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、制御装置と、を備えた記録装置であって、前記制御装置は、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行する手段と、記録済み部分と未記録部分との境界近傍で当該被記録材を切断して当該記録済み部分を排出する手段と、前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで切断後の当該被記録材の未記録部分を搬送する手段と、を有する、ことを特徴とした記録装置である。
【0021】
被記録材に記録を実行した後、当該被記録材の記録済み部分を切断し、切断後、待機位置に未記録部分がある状態となる位置まで当該被記録材を搬送する際に、吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を吸引孔に発生させている状態とする。それによって、記録実行中に被記録材と被記録材支持部材との間に蓄積された静電気は、前述した第1の態様と同様に、その放電が促進され、減少する。
【0022】
そして、その状態から被記録材の未記録部分への記録を開始する。それによって、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気が比較的少ない状態で、その被記録材の未記録部分への記録を続行することができる。また、吸引孔に負圧を発生させている状態で記録を実行することによって、高精度な被記録材の搬送が可能になるため、高精度な記録を実現することができる。
【0023】
このようにして本発明の第3の態様によれば、帯電防止処理が施されている被記録材支持部材を用いることなく、被記録材支持部材と被記録材との間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0024】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、を備えた記録装置の制御をコンピューターに実行させる制御プログラムであって、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで記録前の被記録材を搬送する手順と、当該被記録材への記録を開始する前に、前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、正送り方向への搬送及び逆送り方向への搬送を行うことにより、いったん前記待機位置と異なる位置まで当該被記録材を搬送した後、再度前記待機位置まで当該被記録材を搬送する手順と、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で当該被記録材に記録を実行する手順と、を実行させる、ことを特徴とした制御プログラムである。
本発明の第4の態様に記載の制御プログラムによれば、この制御プログラムを実行するコンピューターにより制御される記録装置において、前述した第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0025】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、を備えた記録装置の制御をコンピューターに実行させる制御プログラムであって、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行する手順と、前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置に未記録部分がある状態となる位置まで記録実行後の当該被記録材を搬送する手順と、を実行させる、ことを特徴とした制御プログラムである。
本発明の第5の態様に記載の制御プログラムによれば、この制御プログラムを実行するコンピューターにより制御される記録装置において、前述した第2の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、被記録材を切断可能な切断装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、を備えた記録装置の制御をコンピューターに実行させる制御プログラムであって、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行する手順と、記録済み部分と未記録部分との境界近傍で当該被記録材を切断して当該記録済み部分を排出する手順と、前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで切断後の当該被記録材の未記録部分を搬送する手順と、を実行させる、ことを特徴とした制御プログラムである。
本発明の第6の態様に記載の制御プログラムによれば、この制御プログラムを実行するコンピューターにより制御される記録装置において、前述した第3の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インクジェットプリンターの要部側面図。
【図2】インクジェットプリンターの概略のブロック図。
【図3】制御装置により実行される記録制御の第1実施例のフローチャート。
【図4】制御装置により実行される記録制御の第2実施例のフローチャート。
【図5】制御装置により実行される記録制御の第3実施例のフローチャート。
【図6】制御装置により実行される記録制御の第4実施例のフローチャート。
【図7】制御装置により実行される記録制御の第5実施例のフローチャート。
【図8】制御装置により実行される記録制御の第6実施例のフローチャート。
【図9−1】制御装置により実行される記録制御の第7実施例のフローチャート。
【図9−2】制御装置により実行される記録制御の第7実施例のフローチャート。
【図10】搬送位置と各構成要素との位置関係を模式的に図示した要部側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
<インクジェットプリンター1の概略構成>
インクジェットプリンター1の概略構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンター1の要部側面図である。
「記録装置」としてのインクジェットプリンター1は、「被記録材」としての単票紙P又はロール紙RPに記録を実行する手段として、搬送駆動ローラー11、搬送従動ローラー12、記録紙支持部材13、排出駆動ローラー14、排出従動ローラー15、キャリッジ16及び記録ヘッド17を備えている。
【0030】
搬送駆動ローラー11、搬送従動ローラー12、排出駆動ローラー14及び排出従動ローラー15は、記録紙支持部材13に支持される単票紙P又はロール紙RPを搬送する「搬送装置」を構成する。搬送駆動ローラー11は、金属軸体の外周面に高摩擦被膜が施されて形成されており、PFモーター31(図2)の回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラー12は、搬送駆動ローラー11に当接する方向へ付勢された状態で従動回転可能に軸支されている。排出駆動ローラー14は、PFモーター31(図2)の回転駆動力が伝達されて回転する。排出従動ローラー15は、従動回転可能に軸支されるとともに、排出駆動ローラー14に当接する方向へ付勢されている。
【0031】
「被記録材支持部材」としての記録紙支持部材13は、記録ヘッド17による記録実行領域で単票紙P又はロール紙RPを支持する部材である。記録紙支持部材13の支持面(単票紙P又はロール紙RPを支持する面であり、単票紙P又はロール紙RPが摺接する部分。以下同じ。)には、多数の吸引孔(図示せず)が形成されている。また記録紙支持部材13は、「負圧発生装置」としての吸引装置37が底部に配設されており、吸引装置37を動作させることによって支持面の吸引孔に負圧を発生させることができる。この吸引装置37は、後述する制御装置100により制御される。記録紙支持部材13と排出駆動ローラー14との間には、記録紙支持部材13を通過した単票紙P又はロール紙RPを支持して排出駆動ローラー14へ案内する補助支持部材131が配設されている。
【0032】
キャリッジ16は、キャリッジガイド軸18及びキャリッジ支持フレーム19によって、主走査方向へ往復動可能に支持されている。この主走査方向は、記録紙支持部材13に支持された状態の単票紙P又はロール紙RPの記録面(記録が実行される面。以下同じ。)に沿って副走査方向Y(単票紙P又はロール紙RPの搬送方向)と交差する方向である。キャリッジガイド軸18及びキャリッジ支持フレーム19は、主走査方向に沿って配設されている。キャリッジ16は、CRモーター32(図2)の回転駆動力で双方向回転する無端ベルト(図示せず)が連結されている。当該無端ベルトは、CRモーター32の駆動プーリーと従動プーリー(図示せず)に掛架され、キャリッジガイド軸18及びキャリッジ支持フレーム19に対して略平行に配設されている。キャリッジ16は、CRモーター32の駆動力で当該無端ベルトを双方向回転させることによって主走査方向へ往復動させることができる。
【0033】
キャリッジ16には、PWセンサー36(図2)及び記録ヘッド17が搭載されている。PWセンサー36及び記録ヘッド17は、記録紙支持部材13に支持された状態の単票紙P又はロール紙RPの記録面に対面するようにキャリッジ16に搭載されている。PWセンサー36は、単票紙P又はロール紙RPを非接触で検出可能な光学式センサーであり、例えば単票紙P又はロール紙RPの頭出し・位置決め動作等を行う際に、その単票紙P又はロール紙RPの端部を検出するためのセンサーである。記録ヘッド17は、単票紙P又はロール紙RPの記録面にインクを噴射してドットを形成するための多数の噴射ノズルがヘッド面に設けられている(図示せず)。記録ヘッド17へのインクの供給は、インクジェットプリンター1の本体に設けられたインクタンク(図示せず)からインクチューブ(図示せず)を介して行われる。
【0034】
さらにインクジェットプリンター1は、単票紙Pを搬送駆動ローラー11へ給送する公知の自動給送装置(図示せず)、及びロール紙RPを搬送駆動ローラー11へ給送するロール紙給送装置20を備えている。ロール紙RPは符号Aで示した経路で給送され、単票紙Pは符号Bで示した経路で給送される。ロール紙給送装置20は、ロール紙支持軸21、第1案内部材22、給送駆動ローラー23、給送従動ローラー24、第2案内部材25、フラップ26、2つのロール紙案内ローラー27及び第3案内部材28を有している。
【0035】
ロール紙支持軸21は、ロール紙RPが巻かれた軸体RSを支持するとともに、ASFモーター33(図2)の回転駆動力が伝達されて回転する。第1案内部材22はロール紙RPを給送駆動ローラー23へ案内する部材である。給送駆動ローラー23はASFモーター33(図2)の回転駆動力が伝達されて回転する。給送従動ローラー24は、給送駆動ローラー23に当接する方向へ付勢された状態で従動回転可能に軸支されている。第2案内部材25はロール紙RPをフラップ26へ案内する部材である。フラップ26は、揺動可能に支持されており、図示していない揺動機構によって揺動する。このフラップ26は、ロール紙RPの給送経路Aと単票紙Pの給送経路Bとを選択的に切り換える部材である。2つのロール紙案内ローラー27は、従動回転可能に支持されており、ロール紙RPに接して従動回転する。第3案内部材28はロール紙RPを搬送駆動ローラー11へ案内する部材である。ロール紙支持軸21に支持されたロール紙RPは、ロール紙支持軸21及び給送駆動ローラー23の回転によって搬送駆動ローラー11へ給送される。
【0036】
さらにインクジェットプリンター1は、排出駆動ローラー14より副走査方向Yの下流側に、単票紙P又はロール紙RPを切断可能な切断装置29を備えている。切断装置29は、円板状の下刃291と上刃292を有し、回転しながら主走査方向へ移動する下刃291と上刃292とで単票紙P又はロール紙RPを挟み切るものである。
【0037】
以上説明した構成のインクジェットプリンター1において、給送された単票紙P又はロール紙RPは、記録紙支持部材13に支持され、主走査方向へ往復動する記録ヘッド17のヘッド面からインクが噴射されて記録面にドットが形成される動作と、所定の搬送量で副走査方向Yへ搬送される動作とが交互に繰り返されることによって、記録面に記録が実行される。またロール紙RPに複数の画像等を連続して記録するときは、そのロール紙RPの記録済み部分と未記録部分との境界近傍を切断装置29で切断することができる。これらの一連の記録制御は、公知のマイコン制御回路を有する制御装置100により実行される。
【0038】
図2は、インクジェットプリンター1の概略のブロック図である。
【0039】
制御装置100は、ROM101、RAM102、ASIC(特定用途向け集積回路)103、CPU(中央処理装置)104、不揮発性メモリー105、PFモータードライバー106、CRモータードライバー107、ASFモータードライバー108及びヘッドドライバー109を備えている。ROM101、RAM102、ASIC103、CPU104及び不揮発性メモリー105は、制御装置100のシステムバスに接続されている。PFモータードライバー106、CRモータードライバー107、ASFモータードライバー108及びヘッドドライバー109は、ASIC103に接続されている。
【0040】
ROM101は、CPU104によるインクジェットプリンター1の制御に必要な記録制御プログラム(ファームウェア)等が格納される。RAM102は、CPU104の作業領域や記録データー等の格納領域として用いられる。ASIC103は、DCモーターであるPFモーター31及びCRモーター32の速度制御並びに記録ヘッド17のノズル駆動制御を行うための制御回路を有している。ASIC103は、PFモーター31の制御信号をPFモータードライバー106へ、CRモーター32の制御信号をCRモータードライバー107へ、ASFモーター33の制御信号をASFモータードライバー108へ、記録ヘッド17の制御信号をヘッドドライバー109へ、それぞれ送出する。さらに、ASIC103は、パーソナルコンピューター200とのインターフェース機能も有している。CPU104は、インクジェットプリンター1の記録制御を実行するための演算処理やその他必要な演算処理を行う。不揮発性メモリー105は、記録制御プログラムの処理に必要な各種データー等が記憶されている。
【0041】
さらに、インクジェットプリンター1は、キャリッジ16の位置や移動速度等を検出するための公知のリニアエンコーダー34と、搬送駆動ローラー11の回転量等を検出するための公知のロータリーエンコーダー35とを備えている。リニアエンコーダー34からは、キャリッジ16が主走査方向へ往復動することによって、その移動速度に応じた周期のパルス信号が移動量に相当する数だけ出力される。ロータリーエンコーダー35からは、搬送駆動ローラー11が回転することによって、その回転速度に応じた周期のパルス信号が回転量に相当する数だけ出力される。このリニアエンコーダー34、ロータリーエンコーダー35及び前記のPWセンサー36の出力信号は、ASIC103を介してCPU104へ入力される。
【0042】
<第1実施例>
インクジェットプリンター1において制御装置100により実行される記録制御の第1実施例について、図3及び図10を参照しながら説明する。
【0043】
図10は、インクジェットプリンター1の要部側面図であり、単票紙P又はロール紙RPの搬送位置と各構成要素との位置関係を模式的に図示したものである。
待機位置Cは、記録ヘッド17のヘッド面からインクを噴射して記録を実行するときの記録開始位置である。切断位置Dは、切断装置29によりロール紙RPを切断可能な位置である。第1搬送位置Y1は、記録紙支持部材13より副走査方向Yの上流側に設定されており、単票紙P又はロール紙RPの副走査方向Yの先端がその第1搬送位置Y1に位置する状態で、記録紙支持部材13の支持面が開放される位置(記録紙支持部材13の支持面が単票紙P又はロール紙RPに略接していない状態となる位置)に設定されている。第2搬送位置Y2は、記録紙支持部材13より副走査方向Yの下流側に設定されており、待機位置Cより副走査方向Yの下流側であれば、任意の位置に設定することができる。
【0044】
図3は、第1実施例のフローチャートであり、単票紙Pに記録を実行する手順を図示したものである。
尚、当該実施例においては、吸引装置37を吸引OFF状態(記録紙支持部材13の吸引孔に負圧を発生させていない状態。以下同じ。)として全ての手順を実行する。つまり当該実施例においては、インクジェットプリンター1に吸引装置37を設けなくても良い。
【0045】
まず、記録前の単票紙Pを待機位置C(図10)へ給送する(ステップS1)。より具体的には、自動給送装置(図示せず)により単票紙Pを給送し、給送された単票紙Pに対して所謂スキュー取り動作や頭出し・位置決め動作等を実行する。そして副走査方向Yの先端が待機位置Cに到達する位置まで記録前の単票紙Pを搬送する。
【0046】
つづいて、記録前の単票紙Pを開放位置まで逆送する(ステップS2)。より具体的には、副走査方向Yの先端が第1搬送位置Y1(図10)に到達する位置まで記録前の単票紙Pを逆送方向RYへ搬送することによって、記録紙支持部材13の支持面を一旦開放する。それによって、所謂スキュー取り動作や頭出し・位置決め動作等の過程で記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積された静電気は、その放電が促進され、減少する。
【0047】
これは、記録紙支持部材13の支持面を一旦開放することによって、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気の大気中への自然放電が促進されることによるものと考えられる。さらには、少なくとも記録紙支持部材13の支持面が開放される位置まで単票紙Pを搬送する過程において、その単票紙Pの広い範囲に搬送駆動ローラー11が接することによって、単票紙Pから搬送駆動ローラー11を経由してインクジェットプリンター1の筐体等へと静電気が放電されることが促進されることによるものと考えられる。
【0048】
つづいて、記録前の単票紙Pを待機位置Cまで再度搬送する(ステップS3)。より具体的には、副走査方向Yの先端が待機位置Cに到達する位置まで記録前の単票紙Pを副走査方向Yへ搬送する。すなわち、記録前の単票紙Pを待機位置Cから第1搬送位置Y1まで搬送して記録紙支持部材13の支持面を一旦開放した後、再度待機位置Cまで単票紙Pを搬送することになる(図10の符号E2)。それによって、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気が比較的少ない状態で、その単票紙Pに記録を実行することが可能な状態になるので、その静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0049】
この状態から、その単票紙Pに記録を実行し(ステップS4)、記録実行後の単票紙Pを排出する(ステップS5)。つづいて、未記録データーが残っているか否かを判定する(ステップS6)。未記録データーが残っている場合には(ステップS6でYes)、ステップS1へ戻り、次の単票紙Pを給送する。未記録データーが残っていない場合には(ステップS6でNo)、そのまま当該手順を終了する。
【0050】
このようにして本発明によれば、帯電防止処理が施されている記録紙支持部材等を用いることなく、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0051】
<第2実施例>
インクジェットプリンター1において制御装置100により実行される記録制御の第2実施例について、図4及び引き続き図10を参照しながら説明する。
図4は、第2実施例のフローチャートであり、ロール紙RPに記録を実行する手順を図示したものである。
尚、当該実施例においては、吸引装置37を吸引OFF状態として全ての手順を実行する。つまり当該実施例においては、インクジェットプリンター1に吸引装置37を設けなくても良い。
【0052】
第2実施例のステップS11〜S14までの手順(図4)については、対象がロール紙RPである以外は、前述した第1実施例のステップS1〜S4までの手順(図3)と同じである。つまり第2実施例のステップS12及びS13においては、第1実施例と同様に、記録前のロール紙RPを待機位置Cから第1搬送位置Y1まで搬送して記録紙支持部材13の支持面を一旦開放した後、再度待機位置Cまでロール紙RPを搬送する(図10の符号E2)。それによって、所謂スキュー取り動作や頭出し・位置決め動作等の過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、その放電が促進され、減少する。
【0053】
ロール紙RPに記録を実行した後(ステップS14)、記録済み部分と未記録部分との境界近傍でロール紙RPを切断し(ステップS15)、切断したロール紙RPの記録済み部分を排出する(ステップS16)。より具体的には、記録実行後、記録済み部分と未記録部分との境界近傍が切断位置D(図10)に到達する位置までロール紙RPを副走査方向Yへ搬送し、その記録済み部分と未記録部分との境界近傍を切断装置29で切断し、切断したロール紙RPの記録済み部分を排出する。
【0054】
つづいて、未記録データーが残っているか否かを判定する(ステップS17)。未記録データーが残っていない場合には(ステップS17でNo)、ロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで逆送し(ステップS18)、当該手順を終了する。より具体的には、副走査方向Yの先端が待機位置Cに到達する位置までロール紙RPの未記録部分を逆送方向RYへ搬送し、当該手順を終了する(図10の符号E4)。
【0055】
他方、未記録データーが残っている場合には(ステップS17でYes)、ステップS12へ戻る。すなわち、ロール紙RPの未記録部分を開放位置まで逆送する(ステップS12)。より具体的には、副走査方向Yの先端が切断位置Dにある状態のロール紙RPの未記録部分を第1搬送位置Y1(図10)に到達する位置まで逆送方向RYへ搬送することによって、記録紙支持部材13の支持面を一旦開放する。それによって、ロール紙RPに記録を実行する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、その放電が促進され、減少する。つづいて、切断後のロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで搬送する(ステップS13)。より具体的には、副走査方向Yの先端が待機位置Cに到達する位置までロール紙RPの未記録部分を副走査方向Yへ搬送する。
【0056】
すなわち、切断後のロール紙RPの未記録部分を切断位置Dから第1搬送位置Y1まで逆送して記録紙支持部材13の支持面を一旦開放した後、そのロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで搬送する(図10の符号E5)。それによって、切断後のロール紙RPの未記録部分と記録紙支持部材13との間に蓄積されている静電気が比較的少ない状態で、その切断後のロール紙RPの未記録部分に記録を続行することが可能な状態になる。したがって、ロール紙RPに連続して記録を実行するとともに記録済み部分を順次切断していくような場合においても、その静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0057】
このようにして本発明によれば、帯電防止処理が施されている記録紙支持部材等を用いることなく、記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0058】
<第3実施例>
インクジェットプリンター1において制御装置100により実行される記録制御の第3実施例について、図5及び引き続き図10を参照しながら説明する。
図5は、第3実施例のフローチャートであり、単票紙Pに記録を実行する手順を図示したものである。
【0059】
まず、吸引装置37を動作させて吸引ON状態(記録紙支持部材13の吸引孔に負圧を発生させている状態。以下同じ。)とし(ステップS21)、記録前の単票紙Pを待機位置C(図10)へ給送する(ステップS22)。このステップS22の給送手順は、第1実施例のフローチャートのステップS1(図3)の給送手順と同じである。このように吸引ON状態で所謂スキュー取り動作や頭出し・位置決め動作等を行うことによって、これらの動作時に記録紙支持部材13から単票紙Pが浮き上がることが抑制されるので、これらの動作をより高精度に行うことができる。
【0060】
つづいて、吸引装置37の動作を停止させて吸引OFF状態とし(ステップS23)、記録前の単票紙Pを正送り方向(副走査方向Y)へ搬送する(ステップS24)。より具体的には、吸引OFF状態で、副走査方向Yの先端が第2搬送位置Y2(図10)に到達する位置まで記録前の単票紙Pを副走査方向Yへ搬送する。つづいて、記録前の単票紙Pを逆送り方向(逆送方向RY)へ搬送する(ステップS25)。より具体的には、吸引OFF状態で、副走査方向Yの先端が待機位置Cに到達する位置まで記録前の単票紙Pを逆送り方向(逆送方向RY)へ搬送する。
【0061】
すなわち、吸引OFF状態で、記録前の単票紙Pを待機位置Cから第2搬送位置Y2まで搬送した後、再度待機位置Cまで搬送することになる(図10の符号E1)。それによって、記録前の単票紙Pを待機位置Cへ給送する過程で記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積された静電気は、その単票紙Pに記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。
【0062】
これは、吸引装置37の動作を停止させて吸引OFF状態にすることによって、記録紙支持部材13の支持面から単票紙Pがやや浮き上がって両者の間隔が広がり、それによって、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気の大気中への自然放電が促進されることによるものと考えられる。さらに、その状態から正送り方向(副走査方向Y)への搬送及び逆送り方向(逆送方向RY)への搬送を行うことによって、その単票紙Pの広い範囲に搬送駆動ローラー11が接することとなり、それによって、単票紙Pから搬送駆動ローラー11を経由してインクジェットプリンター1の筐体等へと静電気が放電されることが促進されることによるものと考えられる。
【0063】
尚、この正送り方向への搬送及び逆送り方向への単票紙Pの搬送は、吸引OFF状態で行われるため、単票紙Pの摺接抵抗を大幅に減少させた状態で行われることになる。したがって、このときに記録紙支持部材13と単票紙Pとが摺接する部分に発生する静電気は、極めて少ない量に抑制されると考えられる。
【0064】
そして、再度待機位置Cまで単票紙Pを搬送(ステップS25)した後、吸引ON状態とし(ステップS26)、単票紙Pに記録を実行する(ステップS27)。それによって、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気が比較的少ない状態で、その単票紙Pに記録を実行することができるので、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。また、吸引ON状態で記録を実行することによって、高精度な単票紙Pの搬送が可能になるため、高精度な記録を実現することができる。
【0065】
つづいて、記録実行後の単票紙Pを排出し(ステップS28)、吸引OFF状態とする(ステップS29)。つづいて、未記録データーが残っているか否かを判定する(ステップS30)。未記録データーが残っている場合には(ステップS30でYes)、ステップS21へ戻り、吸引ON状態として次の単票紙Pを給送する。未記録データーが残っていない場合には(ステップS30でNo)、そのまま当該手順を終了する。
【0066】
このようにして本発明によれば、帯電防止処理が施されている記録紙支持部材等を用いることなく、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0067】
<第4実施例>
インクジェットプリンター1において制御装置100により実行される記録制御の第4実施例について、図6及び引き続き図10を参照しながら説明する。
図6は、第4実施例のフローチャートであり、ロール紙RPに記録を実行する手順を図示したものである。
【0068】
第4実施例のステップS31〜S37までの手順(図6)については、対象がロール紙RPである以外は、前述した第3実施例のステップS21〜S27までの手順(図5)と同じである。つまり第4実施例のステップS34及びS35においては、第3実施例と同様に、吸引OFF状態で、記録前のロール紙RPを待機位置Cから第2搬送位置Y2まで搬送した後、再度待機位置Cまで搬送することになる(図10の符号E1)。それによって、記録前のロール紙RPを待機位置Cへ給送する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、そのロール紙RPに記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。
【0069】
ロール紙RPに記録を実行した後(ステップS37)、未記録データーが残っているか否かを判定する(ステップS38)。未記録データーが残っている場合には(ステップS38でYes)、吸引OFF状態とし(ステップS39)、ロール紙RPの未記録部分が待機位置Cとなる位置までロール紙RPを逆送方向RYへ搬送した後(ステップS40)、ステップS34へ戻る。より具体的には、吸引OFF状態で、ロール紙RPの記録済み部分と未記録部分との境界近傍が待機位置Cに到達する位置までロール紙RPを逆送方向RYへ搬送した後(図10の符号E3)、ステップS34へ戻る。このように吸引OFF状態でロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで逆送することによって、ロール紙RPに記録を実行する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、ステップS33〜S35の手順を実行した場合と同様に、そのロール紙RPの未記録部分に次の記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。
【0070】
他方、未記録データーが残っていない場合には(ステップS38でNo)、記録済み部分と未記録部分との境界近傍でロール紙RPを切断し(ステップS41)、切断したロール紙RPの記録済み部分を排出する(ステップS42)。より具体的には、記録実行後、記録済み部分(最後の記録部分)と未記録部分との境界近傍が切断位置D(図10)に到達する位置までロール紙RPを副走査方向Yへ搬送し、その記録済み部分と未記録部分との境界近傍を切断装置29で切断し、切断したロール紙RPの記録済み部分を排出する。そして、吸引OFF状態とした後(ステップS43)、ロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで逆送し(ステップS44)、当該手順を終了する。より具体的には、吸引OFF状態とした後、副走査方向Yの先端が待機位置Cに到達する位置までロール紙RPの未記録部分を逆送方向RYへ搬送し、当該手順を終了する(図10の符号E4)。
【0071】
このようにして本発明によれば、帯電防止処理が施されている記録紙支持部材等を用いることなく、記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0072】
<第5実施例>
インクジェットプリンター1において制御装置100により実行される記録制御の第5実施例について、図7及び引き続き図10を参照しながら説明する。
図7は、第5実施例のフローチャートであり、ロール紙RPに記録を実行する手順を図示したものである。
前述した第4実施例は、切断せずに連続してロール紙RPに記録を実行するのに対し、第5実施例は、ロール紙RPに連続して記録を実行する際に、ロール紙RPに記録を実行する度に記録済み部分を切断する点で相違している。
【0073】
第5実施例のステップS51〜S57までの手順(図7)については、前述した第4実施例のステップS31〜S37までの手順(図6)と同じであるため、説明を省略する。
【0074】
ロール紙RPに記録を実行した後(ステップS57)、記録済み部分と未記録部分との境界近傍でロール紙RPを切断し(ステップS58)、切断したロール紙RPの記録済み部分を排出する(ステップS59)。より具体的には、記録実行後、記録済み部分と未記録部分との境界近傍が切断位置D(図10)に到達する位置までロール紙RPを副走査方向Yへ搬送し、その記録済み部分と未記録部分との境界近傍を切断装置29で切断し、切断したロール紙RPの記録済み部分を排出する。
【0075】
つづいて、吸引OFF状態とした後(ステップS60)、ロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで逆送する(ステップS61)。より具体的には、吸引OFF状態で、副走査方向Yの先端が待機位置Cに到達する位置までロール紙RPの未記録部分を逆送方向RYへ搬送する(図10の符号E4)。このように吸引OFF状態でロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで逆送することによって、ロール紙RPに記録を実行する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、ステップS53〜S55の手順を実行した場合と同様に、そのロール紙RPの未記録部分に次の記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。
【0076】
そして、未記録データーが残っているか否かを判定し(ステップS62)、未記録データーが残っていない場合には(ステップS62でNo)、そのまま当該手順を終了する。未記録データーが残っている場合には(ステップS62でYes)、ステップS54へ戻り、ロール紙RPの未記録部分に記録を続行する。
尚、ロール紙RPに記録を実行する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、ステップS61の手順において、既にその放電が促進され、減少している。したがって、ステップS61の手順を実行した時点で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積されている静電気の程度によっては、そのままステップS56へ戻ってロール紙RPの未記録部分にすぐに記録を続行するようにしても良い。
【0077】
このようにして本発明によれば、帯電防止処理が施されている記録紙支持部材等を用いることなく、記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0078】
<第6実施例>
インクジェットプリンター1において制御装置100により実行される記録制御の第6実施例について、図8及び引き続き図10を参照しながら説明する。
図8は、第6実施例のフローチャートであり、単票紙Pに記録を実行する手順を図示したものである。
【0079】
第6実施例のステップS71〜S73までの手順(図8)については、前述した第3実施例のステップS21〜S23までの手順(図5)と同じであるため、説明を省略する。吸引OFF状態とした後(ステップS73)、給送した単票紙Pの種類が光沢紙か否かを判定する(ステップS74)。ここで給送した単票紙Pの種類は、例えば、プリンタードライバーの設定画面等においてユーザーが選択した単票紙Pの種類を参照することで特定することが可能である。
【0080】
給送した記録前の単票紙Pの種類が光沢紙ではない場合には(ステップS74でNo)、その記録前の単票紙Pを正送り方向(副走査方向Y)へ搬送した後(ステップS75)、逆送り方向(逆送方向RY)へ搬送する(ステップS76)。このステップS75及びS76の手順(図8)は、前述した第3実施例のステップS24及びS25の手順(図5)と同じである。すなわち、吸引OFF状態で、記録前の単票紙Pを待機位置Cから第2搬送位置Y2まで搬送した後、再度待機位置Cまで搬送する(図10の符号E1)。この手順によって、記録前の単票紙Pを待機位置Cへ給送する過程で記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積された静電気は、その単票紙Pに記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。以下、このステップS75及びS76の手順(図8)を「第1記録前搬送動作」という。
【0081】
他方、給送した記録前の単票紙Pの種類が光沢紙である場合には(ステップS74でYes)、その記録前の単票紙Pを開放位置まで逆送した後(ステップS77)、待機位置Cまで再度搬送する(ステップS78)。このステップS77及びS78の手順(図8)は、前述した第1実施例のステップS2及びS3の手順(図3)と同じである。すなわち、吸引OFF状態で、記録前の単票紙Pを待機位置Cから第1搬送位置Y1まで搬送して記録紙支持部材13の支持面を一旦開放した後、再度待機位置Cまで単票紙Pを搬送する(図10の符号E2)。この手順によって、記録前の単票紙Pを待機位置Cへ給送する過程で記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積された静電気は、その単票紙Pに記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。以下、このステップS77及びS78の手順(図8)を「第2記録前搬送動作」という。
【0082】
第1記録前搬送動作(ステップS75及びS76の手順)及び第2記録前搬送動作(ステップS77及びS78の手順)は、いずれも記録前の単票紙Pを待機位置Cへ給送する過程で記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積された静電気の放電を促進させ、その静電気を減少させることができるものである。そして両動作を対比すると、第1記録前搬送動作(図10の符号E1)は、記録紙支持部材13の支持面が開放される位置まで単票紙Pを搬送しないため、動作時における単票紙Pの搬送量を第2記録前搬送動作(図10の符号E2)よりも少なくすることが可能である。したがって、より短時間で行うことが可能であり、スループットの面では第2記録前搬送動作より有利である。他方、第2記録前搬送動作は、記録紙支持部材13の支持面を一旦開放することから、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気の放電がより促進されることとなるため、その静電気を減少させる効果が第1記録前搬送動作よりも高くなる。
【0083】
このようなことから本発明の第6実施例は、普通紙等の比較的静電気が帯電しにくい性質を有するその他の単票紙Pについては(ステップS74でNo)、スループットの低下を抑えることを優先し、より短時間で実行可能な第1記録前搬送動作を選択して実行する(ステップS75及びS76)。他方、光沢紙等の比較的静電気が帯電しやすい性質を有する単票紙Pについては(ステップS74でYes)、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気を減少させる効果を優先し、その効果がより高い第2記録前搬送動作を選択して実行する(ステップS77及びS78)。それによって、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を的確に低減させつつ、それによるスループットの低下を最小限に止めることが可能になる。
尚、静電気が帯電しやすい単票紙Pか否かは、単票紙Pの材質やコート層の構造・材質等によって異なる。つまり静電気が帯電しやすい単票紙Pか否かは、その単票紙Pの種類によって特定することができる。
【0084】
そして、吸引ON状態とした後(ステップS79)、単票紙Pへの記録を開始する(ステップS80)。それによって、高精度な単票紙Pの搬送が可能になるため、高精度な記録を実現することができる。第6実施例のステップS79〜S83までの手順(図8)については、前述した第3実施例のステップS26〜S30までの手順(図5)と同じであるため、説明を省略する。
【0085】
このようにして本発明によれば、帯電防止処理が施されている記録紙支持部材等を用いることなく、記録紙支持部材13と単票紙Pとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0086】
<第7実施例>
インクジェットプリンター1において制御装置100により実行される記録制御の第7実施例について、図9及び引き続き図10を参照しながら説明する。
図9は、第7実施例のフローチャートであり、ロール紙RPに記録を実行する手順を図示したものである。
【0087】
第7実施例のステップS91〜S100までの手順(図9)については、対象がロール紙RPである以外は、前述した第6実施例のステップS71〜S80までの手順(図8)と同じである。つまり第7実施例のステップS95〜S98においては、前述した第1記録前搬送動作(ステップS95及びS96)又は第2記録前搬送動作(ステップS97及びS98)によって、記録前のロール紙RPを待機位置Cへ給送する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、そのロール紙RPに記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。
【0088】
ロール紙RPに記録を実行した後(ステップS100)、記録済み部分と未記録部分との境界近傍でロール紙RPを切断し(ステップS101)、切断したロール紙RPの記録済み部分を排出する(ステップS102)。より具体的には、記録実行後、記録済み部分と未記録部分との境界近傍が切断位置D(図10)に到達する位置までロール紙RPを副走査方向Yへ搬送し、その記録済み部分と未記録部分との境界近傍を切断装置29で切断し、切断したロール紙RPの記録済み部分を排出する。
【0089】
つづいて、吸引OFF状態とした後(ステップS103)、ロール紙RPの種類が光沢紙か否かを判定する(ステップS104)。ロール紙RPの種類が光沢紙ではない場合には(ステップS104でNo)、そのロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで逆送する(ステップS105)。より具体的には、吸引OFF状態で、副走査方向Yの先端が待機位置Cに到達する位置まで切断後のロール紙RPの未記録部分を逆送方向RYへ搬送する(図10の符号E4)。この手順によって、ロール紙RPに記録を実行する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、その切断後のロール紙RPの未記録部分に次の記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。以下、このステップS105の手順(図9)を「第1記録後搬送動作」という。
【0090】
他方、ロール紙RPの種類が光沢紙である場合には(ステップS104でYes)、そのロール紙RPの未記録部分を開放位置まで逆送した後(ステップS106)、待機位置Cまで再度搬送する(ステップS107)。このステップS106及びS107の手順(図9)は、前述した第2実施例のステップS12及びS13の手順(図4)と同じである。すなわち、吸引OFF状態で、切断後のロール紙RPの未記録部分を切断位置Dから第1搬送位置Y1まで逆送して記録紙支持部材13の支持面を一旦開放した後、そのロール紙RPの未記録部分を待機位置Cまで搬送する(図10の符号E5)。この手順によって、ロール紙RPに記録を実行する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気は、その切断後のロール紙RPの未記録部分に次の記録を開始する前に、その放電が促進され、減少する。以下、このステップS106及びS107の手順(図9)を「第2記録後搬送動作」という。
【0091】
第1記録後搬送動作(ステップS105の手順)及び第2記録後搬送動作(ステップS106及びS107の手順)は、いずれもロール紙RPに記録を実行する過程で記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積された静電気の放電を促進させ、その静電気を減少させることができるものである。そして両動作を対比すると、第1記録後搬送動作(図10の符号E4)は、記録紙支持部材13の支持面が開放される位置までロール紙RPを搬送しないため、動作時におけるロール紙RPの搬送量を第2記録後搬送動作(図10の符号E5)よりも少なくすることが可能である。したがって、より短時間で行うことが可能であり、スループットの面では第2記録後搬送動作より有利である。他方、第2記録後搬送動作は、記録紙支持部材13の支持面を一旦開放することから、記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積されている静電気の放電がより促進されることとなるため、その静電気を減少させる効果が第1記録後搬送動作よりも高くなる。
【0092】
このようなことから本発明の第7実施例は、普通紙等の比較的静電気が帯電しにくい性質を有するその他のロール紙RPについては(ステップS104でNo)、スループットの低下を抑えることを優先し、より短時間で実行可能な第1記録後搬送動作を選択して実行する(ステップS105)。他方、光沢紙等の比較的静電気が帯電しやすい性質を有する単票紙Pについては(ステップS104でYes)、記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積されている静電気を減少させる効果を優先し、その効果がより高い第2記録後搬送動作を選択して実行する(ステップS106及びS107)。それによって、記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を的確に低減させつつ、それによるスループットの低下を最小限に止めることが可能になる。
【0093】
そして、未記録データーが残っているか否かを判定し(ステップS108)、未記録データーが残っていない場合には(ステップS108でNo)、そのまま当該手順を終了する。未記録データーが残っている場合には(ステップS108でYes)、ステップS99へ戻り、ロール紙RPの未記録部分に記録を続行する。
【0094】
このようにして本発明によれば、帯電防止処理が施されている記録紙支持部材等を用いることなく、記録紙支持部材13とロール紙RPとの間に蓄積されている静電気に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0095】
<他の実施例、変形例>
本発明は、上記説明した実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0096】
例えば、第1実施例のステップS2(図3)、第2実施例のステップS12(図4)、第6実施例のステップS77(図8)及び第7実施例のステップS97、S106(図9)においては、その記録紙支持部材13の支持面の大部分が概ね開放されているような状態とすれば、例えば単票紙P又はロール紙RPの一部が記録紙支持部材13の支持面に接しているような状態であっても、静電気の大気中への自然放電を促進させるという目的は達成される。そして、記録紙支持部材13の支持面が全て開放される状態とすれば、静電気の大気中への自然放電をより促進させることができるので、より好ましい。
【0097】
また例えば、第3実施例〜第7実施例においては、「吸引OFF状態」とするのに代えて、給送時及び記録実行時よりも弱い吸引力で吸引ON状態としても良い。つまり、単票紙P又はロール紙RPの給送時及び記録実行時よりも低い負圧を記録紙支持部材13の支持面の吸引孔に発生させている状態としても良い。
【0098】
また第1実施例及び第2実施例においては、吸引装置37は必須の構成要素ではなく、吸引装置37を設けない態様(常時吸引OFF状態とした態様)を例に説明したが、例えば吸引装置37を設ける場合には、常時吸引ON状態としても良い。あるいは、給送時及び記録実行時においてのみ吸引ON状態とし、それ以外のときは吸引OFF状態とすれば、給送時及び記録実行時において記録紙支持部材13の支持面から単票紙P又はロール紙RPが浮き上がることを防止しつつ、記録紙支持部材13と単票紙P又はロール紙RPとの間に蓄積される静電気をより低減させることができるので、より好ましい。
【0099】
また、第2実施例、第4実施例、第5実施例及び第7実施例においては、切断装置29でロール紙RPを切断する態様を例に説明したが、ロール紙RPに限らず、例えば、記録実行後の単票紙Pを切断装置29で切断する態様としても良い。例えば、A3サイズの単票紙PにA4サイズの横長の画像を2つ縦方向(副走査方向Y)へ並べて記録し、その際に、一つめの画像を記録した後、記録済み部分を切断し、切断後の単票紙Pの未記録部分に二つめの画像を記録すれば、1枚のA3の単票紙Pから2枚のA4サイズの写真を得ることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 インクジェットプリンター、11 搬送駆動ローラー、12 搬送従動ローラー、13 記録紙支持部材、14 排出駆動ローラー、15 排出従動ローラー、16 キャリッジ、17 記録ヘッド、29 切断装置、37 吸引装置、100 制御装置、C 待機位置、D 切断位置、P 単票紙、RP ロール紙、RY 逆送方向、Y 副走査方向、Y1 第1搬送位置、Y2 第2搬送位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、
前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、
前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、
制御装置と、を備えた記録装置であって、
前記制御装置は、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで記録前の被記録材を搬送する手段と、
当該被記録材への記録を開始する前に、前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、正送り方向への搬送及び逆送り方向への搬送を行うことにより、いったん前記待機位置と異なる位置まで当該被記録材を搬送した後、再度前記待機位置まで当該被記録材を搬送する手段と、
前記吸引孔に負圧を発生させている状態で当該被記録材に記録を実行する手段と、を有する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、
前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、
前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、
制御装置と、を備えた記録装置であって、
前記制御装置は、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行する手段と、
前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置に未記録部分がある状態となる位置まで記録実行後の当該被記録材を搬送する手段と、を有する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、
前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、
被記録材を切断可能な切断装置と、
前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、
制御装置と、を備えた記録装置であって、
前記制御装置は、前記吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行する手段と、
記録済み部分と未記録部分との境界近傍で当該被記録材を切断して当該記録済み部分を排出する手段と、
前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで切断後の当該被記録材の未記録部分を搬送する手段と、を有する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、を備えた記録装置の制御をコンピューターに実行させる制御プログラムであって、
前記吸引孔に負圧を発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで記録前の被記録材を搬送する手順と、
当該被記録材への記録を開始する前に、前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、正送り方向への搬送及び逆送り方向への搬送を行うことにより、いったん前記待機位置と異なる位置まで当該被記録材を搬送した後、再度前記待機位置まで当該被記録材を搬送する手順と、
前記吸引孔に負圧を発生させている状態で当該被記録材に記録を実行する手順と、を実行させる、ことを特徴とした制御プログラム。
【請求項5】
記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、を備えた記録装置の制御をコンピューターに実行させる制御プログラムであって、
前記吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行する手順と、
前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置に未記録部分がある状態となる位置まで記録実行後の当該被記録材を搬送する手順と、を実行させる、ことを特徴とした制御プログラム。
【請求項6】
記録実行領域で被記録材を支持する被記録材支持部材と、前記被記録材支持部材に支持される被記録材を搬送する搬送装置と、被記録材を切断可能な切断装置と、前記被記録材支持部材の支持面に形成された吸引孔に負圧を発生させる負圧発生装置と、を備えた記録装置の制御をコンピューターに実行させる制御プログラムであって、
前記吸引孔に負圧を発生させている状態で被記録材に記録を実行する手順と、
記録済み部分と未記録部分との境界近傍で当該被記録材を切断して当該記録済み部分を排出する手順と、
前記吸引孔に負圧を発生させていない状態又は記録実行時よりも低い負圧を前記吸引孔に発生させている状態で、前記被記録材支持部材に支持される所定の待機位置まで切断後の当該被記録材の未記録部分を搬送する手順と、を実行させる、ことを特徴とした制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−190031(P2011−190031A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57144(P2010−57144)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】