説明

記録装置

【課題】所定数のラベルに印刷済みのラベル台紙を切り離したロール本体側未印刷台紙をバックフィード(逆搬送)させてから印刷再開するとき、再開時正回転方向への搬送機構の搬送性能が低下してラベル上の画像に生じる斜行不良を防止する。
【解決手段】所定数の白紙ラベル302に印刷が終了すると、それら印刷済みラベル301を保持したラベル台紙216をカッターユニット215で裁断し、残ったロール本体側の未印刷ラベル台紙を所定位置までバックフィード(逆搬送)させる。印刷再開に備え、予行運転調整手段が作動して主搬送機構214を正回転方向へ一定時間、空運転させて慣らす。空運転によって正回転方向への駆動性能が適正になったら、予行運転調整手段を作動させて副搬送機構218を駆動させ、未印刷の白紙ラベル302を保持するラベル台紙216を記録部に向けて搬送し、印刷を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のラベルを感圧接着剤で剥離可能に貼着したラベル台紙やTOF(Top of Form)マーク付連続紙などを搬送して記録を施すラベルプリンタのごとき記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラベルプリンタにおいては、記録媒体であるラベル台紙がロール状に巻かれた連続紙の場合、ロールから繰り出されたラベル台紙を記録部へ搬送して所定数のラベルに印刷を施した後、一定の長さごとにラベル台紙を切り揃える。図9(a)に示すように、ロールユニット103にはラベル台紙216がロール状に巻かれて収容され、繰り出されたラベル台紙216上の所定数のラベル301に印刷が施され(以下、記録済みラベルという)て終了した段階で、後続の未印刷ラベル302(以下、白紙ラベルという)は記録部に対応する搬送機構303のプラテン上に停止して待機状態になる。そうした白紙ラベル302を有効使用するために、白紙ラベル302を保持するラベル台紙216を逆送機構(バックフィード手段)によって正回転駆動による印刷送り方向とは逆方向へ引き戻してバックフィード距離だけ逆搬送させ、図9(b)に示す位置まで後退させて待機させ、その待機位置から搬送機構303を再起動させてラベル台紙216を記録部まで搬送し、印刷記録を再開する。
【0003】
ラベルプリンタに関しては例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平08−133540号公報 ------------------------------------------------------------
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように、バックフィード手段によって搬送機構303を逆回転方向へ駆動させ、待機後に再び正回転方向へ駆動させて印刷を再開する際、正回転駆動時と逆回転駆動時とでは機械的負荷が微妙に異なる。それが原因で印刷再開時に先頭の白紙ラベル302が斜行走行し、画像が斜行して歪んで印刷が進行するにつれて徐々にそうした斜行が少なく補正されていくといった現象が見られる。したがって、再開時の印刷品位が低下することから、搬送機構303における再開直後の搬送精度を向上させることが望まれてきた。
【0006】
本発明の目的は、特にロール状連続紙によるラベル台紙上のラベルに印刷を施すラベルプリンタのごとき記録装置において、所定数のラベルに印刷済みのラベル台紙を切り離したロール本体側未印刷台紙をバックフィード(逆搬送)させてから印刷再開する構造方式の場合、再開時正回転方向への搬送機構の搬送不良が原因でラベル上に印刷された画像が斜行不良を起こす不具合を解消した記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、正回転駆動して記録媒体を記録部へ搬送する主搬送機構と、正回転駆動の反対方向に逆回転駆動させて記録媒体を前記主搬送機構から上流側の所定距離の位置まで後退させるバックフィード手段と、前記所定位置に後退した記録媒体を再び記録部に搬送して記録を再開する前に、予め前記主搬送機構を正回転方向に一定時間空転させて正回転駆動を復調させるための予行運転調整手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の記録装置によれば、記録媒体を記録に送り込む搬送機構の正回転駆動時と、記録媒体を逆搬送させる逆回転駆動(バックフィード)時の機械的負荷に起因して、正回転再開時の搬送機構の搬送精度が低下することで記録画像に斜行不良が生じるのを有効に抑え、特に逆回転駆動から正回転駆動に切り替わる際の出力画像を安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明による記録装置の実施形態であるラベルプリンタについて図を参照して詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、例えばカラー印刷を行うカラーラベルプリンタ100を外部処理を行うホストコンピュータ102など上位装置にケーブル101で接続し、画像情報やデータを転送し、ロールユニット103に内蔵されている記録媒体であるロール紙をプリンタ本体に給紙するシステムを示す。
【0011】
図2および図3(a),(b)に示すように、プリンタ本体200は、この場合ブラック201と、シアン202と、淡シアン203と、マゼンタ204と、淡マゼンタ205と、イエロー206によるインクジェット方式のライン記録ヘッドの6本を内蔵し、各色ヘッドに対応するインクカートリッジ207〜212からインクを供給して記録媒体上に記録を行う。記録媒体は、ロールユニット103にロール状に巻かれて収納されている連続紙のラベル台紙216であり、台紙全長にわたって多数の白紙ラベル302が例えば感圧接着剤で剥離可能に貼着され、各白紙ラベル302に印刷を施した記録済みラベル301を引き剥がしできるようになっている。
【0012】
ラベル台紙216をロールユニット103から繰り出して上記記録ヘッドへ搬送させる搬送系として主搬送機構214を備え、この主搬送機構214の上流側に独自の駆動が可能となっている副搬送機構218が備わっている。これら搬送機構を作動させてロールユニット103からラベル台紙216を繰り出して搬送する。
【0013】
図3(a)は、ラベル台紙216上の所定数の白紙ラベル302に印刷を施すごとに、その所定数の印刷済みラベル301を保持したラベル台紙216を一定の長さ寸法にカッターユニット215で裁断し、それを繰り返し行う台紙一枚記録終了状態を示す。その際、裁断端から手元に残されたロール紙本体側ラベル台紙216は、その裁断先端をカッターユニット215の出口付近にして停止する。
【0014】
それに対して、図3(b)は、かかる停止中の未印刷の白紙ラベル302を保持しているラベル台紙216を、主搬送装置214から切り離された上流側の所定位置まで逆搬送して後退させた状態を示す。このようなラベル台紙216の後退はバックフィード手段の作動によって行われる。また、図3(b)のように、ラベル台紙216が後退した位置は、再び正搬送されて記録ヘッドで記録を再開する前の待機状態を示すものである。ラベル台紙216をどれくらい逆搬送させるか、つまりバックフィード距離をいくらにするかは、記録済ラベル301を保持して裁断されたラベル台紙216が、カッターユニット215にて裁断されたという例えば光学式検出センサからの検出信号に基づいて演算され、後退位置つまり待機位置が位置出しされる。バックフィード手段とは、プリンタ本体200に内蔵されて装置全体の制御を司る制御装置(図示略)に接続された駆動回路、この駆動回路から出力された駆動信号によって正回転駆動または逆回転駆動する主搬送機構214と、これを補助する副搬送機構218を含んで構成される。すなわち、バックフィード手段は、広義にはロールユニット103を含めた主副搬送機構214,218を同期して逆回転駆動させ、ラベル台紙216を上記裁断位置から所定のバックフィード距離だけ逆搬送させる一連の搬送系をいう。
【0015】
つぎに、かかる図3(b)に示すラベル台紙216の記録再開前の待機状態において、本発明による搬送精度向上を目的に設けられた予行運転調整手段を作動させることにより、ラベル台紙216を待機させたまま、主搬送機構214のみ正回転方向へ一定の時間空運転させる。すなわち、プリンタ本体200に内蔵されて装置およびシステム全体の制御を司る制御装置は、予行運転調整手段および駆動回路に対して作動信号を送り、一定時間空運転終了した主搬送機構214を正回転方向へ駆動させ、これに同期して副搬送機構218を駆動させることで、未印刷の白紙ラベル302を保持したラベル台紙216をプリンタ本体200に向けて給送し、記録ヘッドにて印刷を行う、以下一連の作動を繰り返す。
【0016】
図4は、この第1の実施形態における動作フローを示す。印刷による記録が終了すると(ステップ:S500)、バックフィード量(距離)を算出し(ステップ:S501)、バックフィードを開始する(ステップ:S502)。図3(b)に示す位置でバックフィード処理が終了すると(ステップ:S504)、主搬送機構214の正回転方向への空運転を一定時間行い(ステップ:S505)、空運転処理を終了した段階で記録再開状態となる(ステップ:S506)。
【0017】
すなわち、バックフィード時に主搬送機構214を逆回転駆動させる際の機械的負荷の微妙な違いから、再開時の主搬送機構214における正回転立ち上がり性能が落ち、搬送精度が低下して白紙ラベル302上に印刷される画像に斜行が生じる。それを防ぐため、再開時に主搬送機構214をいきなり正回転駆動させてラベル台紙216を送るのではなく、一定時間搬送性能が落ち着くまで主搬送機構214を正回転方向へ慣らし運転させる。搬送性能が落ち着いた状態でラベル台紙216を記録ヘッドに向けて搬送して印刷再開すれば、白紙ラベル302上の印刷画像に斜行が生じるのを抑えることができる。
【0018】
図4の動作フローは一例であり、それに限定されるものではなく、例えば図5(a),(b)に示す動作も可能である。図5(a)の場合のように、印刷命令(ステップ:S600)の後にバックフィードを開始(ステップ:S601)することもできる。また、図5(b)の場合のように、主搬送機構214で空転運転終了後、副搬送機構218を駆動させ(ステップ:S602)、ラベル台紙216上の白紙ラベル302を図3(b)に示す位置から、従来例として示された図9(b)の位置まで搬送して次の印刷命令に備えるようにすることもできる。
【0019】
(第2の実施例)
つぎに、本発明による第2の実施形態を示す。なお、上記第1の実施形態で示された部材に対応するものには同一符号を付して重複する部分の説明は省く。
【0020】
図6(a),(b)は、予行運転調整手段を構成する上記副搬送機構218を作動させた際に、記録終了状態と記録再開待機位置を示す。記録再開待機位置(同図b)は、記録終了状態(同図a)からバックフィード距離を演算して求めることで位置出しされる。そのときのバックフィード距離(同図a→同図b)は、従来慣行のバックフィード距離に副搬送機構218による搬送距離を加算して計算される。同図(b)の状態において、副搬送旗鼓218を主搬送機構214に同期させて記録時の正回転方向へ駆動させる〔従来例の図9(b)状態〕。そうすることで印刷開始の準備と同時にバックフィードの影響による斜行要因を排除している。副搬送機構218による作動終了後、その副搬送機構218と主搬送機構214を同時駆動させることによって、ラベル台紙216上の未印刷白紙ラベル302をプリンタ本体200内に給送し、記録ヘッドにて記録を行なう。
【0021】
図7は、かかる第2の実施形態における副搬送機構218の作動を中心とする動作フローを示す。ステップS800〜807の各ステップにおいて、第1の実施形態として図4で示された動作フローと異なっているステップはステップS805だけであり、他のすべてのステップは図4の各ステップに対応している。
【0022】
図8(a),(b)は、同じく第2の実施形態において、上記図7の動作フローの応用例であり、印刷命令(ステップ:S900)の後にバックフィードを開始(ステップ:S901)することも可能であり(同図a)、またバックフィード後の印刷命令(ステップ:S902)で副搬送機構218を開始させ(ステップ:S903)、ラベル位置検出センサ217が白紙ラベル302を検出するまで、副搬送機構218と主搬送機構214を同時駆動させ、そのまま記録を開始することもできる(同図b)。
【0023】
なお、本発明においては上記第1,第2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であればその他の実施形態および応用例、変形例も可能である。例えば、第1,第2の実施形態では、印刷終了後にバックフィードし、搬送精度向上を目標とする予行運転調整手段を無条件で駆動させてはいるが、駆動させるか否かの有無を判別する機能を有し、その判断に従って実行または実行しない場合があってもよい。また、上記各実施形態では印刷時の自動バックフィードを例に説明載したが、操作パネル等による手動バックフィードによる斜行要因を排除する目的/タイミングで予行運転調整手段を駆動実行させる構造も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるラベルプリンタを上位装置に接続したシステム図。
【図2】第1の実施形態によるラベルプリンタ本体を示す図。
【図3】同図(a),(b)は第1の実施形態において主搬送機構の作動を説明する図。
【図4】第1の実施形態の動作フロー図。
【図5】同図(a),(b)は第1の実施形態において図4の動作フローの他例を示す動作フロー図。
【図6】同図(a),(b)は第2の実施形態において副搬送機構の作動を説明する図。
【図7】第2の実施形態の動作フロー図。
【図8】同図(a),(b)は第1の実施形態において図4の動作フローの他例を示す動作フロー図。
【図9】同図(a),(b)は従来例の白紙ラベル戻しを説明する図。
【符号の説明】
【0025】
100 カラーラベルプリンタ
200 プリンタ本体
213 ロールユニット
214 主搬送機構
215 カッターユニット
216 連続紙ラベル台紙(記録媒体)
217 ラベル位置検出センサ
218 副搬送機構
301 印刷済みラベル
302 白紙ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正回転駆動して記録媒体を記録部へ搬送する主搬送機構と、
正回転駆動の反対方向に逆回転駆動させて記録媒体を前記主搬送機構から上流側の所定距離の位置まで後退させるバックフィード手段と、
前記所定位置に後退した記録媒体を再び記録部に搬送して記録を再開する前に、予め前記主搬送機構を正回転方向に一定時間空転させて正回転駆動を復調させるための予行運転調整手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記バックフィード手段は、記録媒体が連続紙である場合、所定量の記録を終了した記録媒体が一定長さ寸法で裁断されたことの検出信号に基づいてバックフィード距離が算定され、そのバックフィード距離だけ未記録の連続紙本体側記録媒体を後退させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記予行運転調整手段は、一定時間空転後の前記主搬送機構に記録媒体を送り込むための補助をする副搬送機構を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記予行運転調整手段は、前記バックフィード距離に対応して選択を行い、前記主搬送機構を空転させる駆動源、または前記副搬送機構を駆動させる駆動源の少なくとも一方に作動信号を送信する制御が可能となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置が、前記連続紙の記録媒体がロール状に巻かれたラベル台紙である場合に台紙全長にわたって貼着されているラベルに記録を行うことを特徴とするラベルプリンタ。
【請求項6】
前記請求項5に記載のラベルプリンタにおいて、
所定数のラベルに記録後にラベル台紙が一定長さ寸法で裁断されたことの検出信号に基づいて、所定のバックフィード距離をロール本体側ラベル台紙が後退するようにしてなっていることを特徴とするラベルプリンタ。
【請求項7】
一定時間空転により前記主搬送機構の正回転駆動を復調させて、記録再開時に後退位置から前記副搬送機構によって前記主搬送機構に送り込まれた前記ラベル台紙の斜行を抑えるようにしてなっていることを特徴とする請求項6に記載のラベルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−327130(P2006−327130A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156877(P2005−156877)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】