説明

記録装置

【課題】 記録装置において、給送される被記録材に反りや波打ち変形等が生じていたときに、給送される被記録材のスキューをスキュー取り動作によって解消できない虞を低減させる。
【解決手段】 紙押さえローラ77は、給送方向Yへ回転自在に支持された回転体であり、搬送駆動ローラ51と略平行に、給送経路76に配設されている。紙押さえローラ77は、外周面が各案内リブ761の頂面に当接した状態で押圧されている。給送経路76を給送される記録紙Pの給送方向Yの先端は、その各案内リブ761の頂面と紙押さえローラ77の外周面との間に進入していく。給送される記録紙Pは、各案内リブ761の頂面と紙押さえローラ77の外周面とで挟持されながら給送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材を所定の搬送方向へ搬送する搬送装置と被記録材を搬送装置へ給送する給送装置とを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ、ドットインパクトプリンタ、レーザプリンタ等、被記録材を所定の搬送方向へ搬送する搬送装置と被記録材を搬送装置へ給送する給送装置とを備えた記録装置が公知である。
【0003】
ここで、給送装置により給送される被記録材は、記録装置に設けられた給送用トレイや給送用カセット等にユーザの手によって載置される。そのため、給送用トレイや給送用カセット等に、被記録材が給送方向に対して斜めに傾いた状態で載置されてしまう可能性がある。つまり、搬送装置に対して傾いた姿勢で被記録材が給送されてしまう可能性がある。また、給送装置の給送精度によっては、給送装置により被記録材が給送される過程において、被記録材が給送方向に対して僅かに斜めに傾いてしまうこともある。
【0004】
そして、搬送装置に対して斜めに傾いた姿勢で給送された被記録材がそのまま搬送装置により搬送されて記録が実行されると、被記録材は、搬送装置による搬送方向に対して斜めに傾いた状態(以下、「スキュー」という。)で搬送されながら記録面に記録が実行されることになる。つまり、被記録材の記録面には、斜めに記録が実行されてしまうことになるため、記録精度が低下してしまうことになる。
【0005】
このようなスキューに起因した記録精度の低下を防止するために、記録装置においては、給送装置により被記録材が搬送装置へ給送される過程で、被記録材のスキューを除去するスキュー取り動作が行われるようになっているのが一般的である。このスキュー取り動作は、例えば、駆動力源の回転駆動力で回転する搬送駆動ローラと搬送駆動ローラの外周面に被記録材を押圧する搬送従動ローラとを有する搬送装置を備えた記録装置においては、搬送駆動ローラを回転させていない状態で、その搬送駆動ローラと搬送従動ローラとの当接部分に、給送される被記録材の給送方向の先端を突き当てることによって行われるのが一般的である。それによって、被記録材は、給送方向の先端が搬送駆動ローラと搬送従動ローラとの圧接線に略平行な状態となるので、スキューが解消されることになる。
【0006】
また、他のスキュー取り動作としては、いわゆる食い付き及び吐き出し動作によってスキューを解消するものが公知である(例えば、特許文献1を参照)。いずれにしても、搬送駆動ローラと搬送従動ローラとの圧接線に被記録材の給送方向の先端が略平行に突き当たる状態になるようにしてスキューを解消する点では同じである。
【特許文献1】特開2000−318881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本来的には反り等がなく真っ直ぐな状態であるべき被記録材は、例えば、インクジェットプリンタにおいて記録ヘッドからインクが噴射されると、被記録材にインクが吸収されて膨張し、反りやコックリングと呼ばれる波打ち変形が生ずることがある。また、プリンタ用紙等の被記録材は、その被記録材の構造や保管環境等に起因して記録実行前に反りが生ずることもある。例えば、写真用紙等の多層構造の被記録材においては、表面と裏面とで温度や水分の吸脱湿による収縮率が異なることに起因して、その保管環境によっては、被記録材の全面にわたって反りが生ずることがある。
【0008】
このようにして反りや波打ち変形が生じた被記録材は、その反りや波打ち変形によって、被記録材の先端が真っ直ぐな状態になっていないことが多い。そのため、反りや波打ち変形が生じた被記録材を給送して記録を実行すると、前記のスキュー取り動作を行ったときに、被記録材の先端が搬送駆動ローラと搬送従動ローラとの圧接線に略平行に突き当たった状態にならない場合があり、被記録材のスキューを解消できない虞があった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、記録装置において、給送される被記録材に反りや波打ち変形等が生じていたときに、給送される被記録材のスキューをスキュー取り動作によって解消できない虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、被記録材を所定の搬送方向へ搬送する搬送装置と、被記録材を前記搬送装置へ給送する給送装置とを備えた記録装置において、前記給送装置から前記搬送装置への給送経路で、前記給送装置により給送される被記録材の給送方向と交差する方向の変形を矯正する矯正装置を備えている、ことを特徴とした記録装置である。
【0011】
反りや波打ち変形等が生じている被記録材は、給送方向の先端近傍における給送方向と交差する方向の変形を真っ直ぐに矯正することによって、給送方向の先端を略真っ直ぐな状態にすることができる。したがって、搬送装置の手前の給送経路で、搬送装置へ給送される被記録材の給送方向と交差する方向の変形を矯正することによって、給送方向の先端を略真っ直ぐな状態にして被記録材を搬送装置へ給送することができる。それによって、給送される被記録材に反りや波打ち変形等が生じていても、搬送装置において、給送される被記録材の給送方向の先端を利用したスキュー取り動作を高精度に行うことが可能になる。
【0012】
これにより、本発明の第1の態様に記載の記録装置によれば、記録装置において、給送される被記録材に反りや波打ち変形等が生じていたときに、給送される被記録材のスキューをスキュー取り動作によって解消できない虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0013】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記矯正装置は、前記給送経路を給送される被記録材に対して、前記給送方向と交差する方向の全幅にわたって接する矯正部材を有している、ことを特徴とした記録装置である。
【0014】
反りが生じている被記録材は、記録面側から観て凹面状に反っている場合もあれば、逆に記録面側から観て凸面状に反っている場合もある。また、被記録材に生じている反りや波打ち変形は、規則性や対称性がなく不均一な変形状態である場合も多い。そこで、本発明の第2の態様に記載の記録装置は、給送方向と交差する方向の全幅にわたって接する矯正部材で、給送経路を給送される被記録材の反りや波打ち変形等を矯正する。それによって、給送方向と交差する方向の被記録材の反りや波打ち変形を全幅にわたって真っ直ぐな状態に矯正することができる。したがって、被記録材の反りや波打ち変形の状態にかかわらず、常に給送方向の先端を略真っ直ぐな状態にして被記録材を搬送装置へ給送することができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、前述した第2の態様に記載の記録装置において、前記矯正装置は、前記給送経路から離間する方向へ前記矯正部材を変位させる変位機構を有している、ことを特徴とした記録装置である。
【0016】
給送後、スキュー取り動作がなされた後に、その被記録材を搬送装置で搬送する際には、その被記録材に矯正部材が接していると、それによって、その搬送中の被記録材にバックテンションが作用することになる。したがって、その状態では、そのバックテンションに起因して被記録材の搬送精度が低下し、記録精度が低下してしまう虞が生ずる。
【0017】
本発明の第3の態様に記載の記録装置は、矯正部材を給送経路から離間する方向へ変位させる変位機構を備えているので、搬送装置により被記録材が搬送される際に、矯正部材を給送経路から離間する方向へ変位させることによって、搬送中の被記録材に矯正部材が接しない状態にすることができる。それによって、搬送中の被記録材に矯正部材が接することに起因したバックテンションが作用しないようにすることができる。したがって、そのバックテンションによって記録精度が低下してしまうことを未然に防止することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、前述した第3の態様に記載の記録装置において、前記搬送装置は、駆動力源の回転駆動力で回転する搬送駆動ローラと、前記搬送駆動ローラの外周面に被記録材を押圧する搬送従動ローラとを有し、前記変位機構は、前記搬送駆動ローラの搬送方向への回転に連動して、前記給送経路から離間する方向へ前記矯正部材を変位させる、ことを特徴とした記録装置である。
【0019】
搬送駆動ローラの搬送方向への回転により被記録材が搬送される際には、その搬送駆動ローラの搬送方向への回転に連動して、矯正部材が給送経路から離間する方向へ変位する。つまり、少なくとも搬送駆動ローラが搬送方向へ回転して被記録材が搬送方向へ搬送されている間は、その搬送中の被記録材から矯正部材を自動的に離間させることができるとともに、その離間させた状態を維持することができる。それによって、被記録材の搬送中は、自動的に、その搬送中の被記録材に矯正部材が接しない状態にすることができる。したがって、搬送中の被記録材に矯正部材が接することに起因したバックテンションによって記録精度が低下してしまうことを確実に防止することができる。
【0020】
また、本発明の第4の態様に記載の記録装置は、搬送駆動ローラの搬送方向への回転に連動して矯正部材が自動的に変位する変位機構を有しているので、矯正部材を変位させるための専用の駆動力源及びそれを制御する制御手段を別個に設ける必要がない。したがって、本発明に係る記録装置をより低コストに実現することができる。
【0021】
本発明の第5の態様は、前述した第2〜第4の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記給送経路は、被記録材を前記搬送装置へ案内しつつ支持する支持面を有し、前記矯正装置は、前記支持面へ前記矯正部材を付勢する付勢手段を有している、ことを特徴とした記録装置である。
【0022】
このように、給送経路において被記録材を搬送装置へ案内しつつ支持する支持面へ矯正部材を付勢することによって、支持面に支持されながら給送経路を給送される被記録材は、矯正部材と支持面とで挟持されることになる。つまり、給送経路を給送される被記録材は、付勢手段の付勢力で矯正部材が押圧されることになるので、被記録材により強い矯正力を作用させることができる。それによって、給送方向と交差する方向の被記録材の反りや波打ち変形をより確実に矯正することができる。
【0023】
本発明の第6の態様は、前述した第2〜第5の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記矯正部材は、前記給送方向へ回転自在に支持された回転体である、ことを特徴とした記録装置である。
【0024】
本発明の第6の態様に記載の記録装置によれば、矯正部材で反りや波打ち変形が矯正されながら被記録材が給送される際に、矯正部材が従動して回転するので、矯正部材に起因した給送負荷を低減させることができる。また、矯正部材が従動して回転することによって、矯正部材と被記録材との接触部分において被記録材に傷等が付いてしまう虞を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
<インクジェットプリンタの概略構成>
まず、本発明に係る「記録装置」の一例であるインクジェットプリンタ50の概略構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るインクジェットプリンタ50の側断面図である。図2は、本発明に係るインクジェットプリンタ50の一部を拡大図示した斜視図である。
【0027】
インクジェットプリンタ50は、記録紙Pをインクジェットプリンタ50の内部へ給送するための自動給送装置70を備えている。また、インクジェットプリンタ50は、プラテン53に支持されている「被記録材」としての記録紙Pを搬送方向Yへ搬送する「搬送装置」としての搬送駆動ローラ51及び搬送従動ローラ52を備えている。さらに、インクジェットプリンタ50は、プラテン53に支持されている記録紙Pの記録面にインクを噴射してドットを形成する記録ヘッド62を備えている。さらに、インクジェットプリンタ50は、記録実行後の記録紙Pを搬送方向Yへ排出するための排出駆動ローラ54及び排出従動ローラ55を備えている。
【0028】
「給送装置」としての自動給送装置70は、ホッパ71、一対のエッジガイド72、給送用ローラ74、分離パッド75及び給送経路76を備えている。ホッパ71は、給送する記録紙Pが載置され、給送用ローラ74の回転に連動して動作する揺動機構(図示せず)により、給送用ローラ74へ向けて揺動する。それによって、ホッパ71に載置されている記録紙Pを給送用ローラ74の外周面に押圧することができる。また、ホッパ71には、対をなす対称構造のエッジガイド72が配設されている。
【0029】
給送用ローラ74は、給送用ローラ軸741に一体的に配設されており、図示していない給送用モータの回転力で給送用ローラ軸741が回転することによって回転する。記録紙Pは、給送用ローラ74の回転により、給送経路76を通じて搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52との当接面へ向けて給送される。給送経路76には、図示の如く複数の案内リブ761が形成されており、この各案内リブ761の頂面は、給送経路76において記録紙Pを支持する「支持面」として機能するとともに、記録紙Pを搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52との当接部分へ向けて案内する案内面となる。また、給送経路76には、公知の分離パッド75が配設されており、この分離パッド75によって、給送される記録紙Pから他の記録紙Pが分離され、記録紙Pの重送が防止される。
【0030】
搬送駆動ローラ51は、表面に高摩擦被膜が施されており、図示していない搬送用モータの駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラ52は、従動回転可能に軸支され、図示していないばね等の付勢手段によって搬送駆動ローラ51の外周面に押圧付勢されている。自動給送装置70により給送された記録紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持され、搬送駆動ローラ51の駆動回転により搬送方向Yへ所定の搬送量でプラテン53上を搬送される。
【0031】
記録ヘッド62は、キャリッジ61の底部に配設されている。記録ヘッド62のヘッド面には、インクを噴射するための多数の噴射ノズル(図示せず)が配設されている。キャリッジ61は、記録ヘッド62のヘッド面とプラテン53上の記録紙Pの記録面とが略平行となる状態を維持しつつ幅方向X(搬送方向Yと交差する方向(図2))へ往復動可能に、キャリッジガイド軸56に支持されている。キャリッジ61は、キャリッジ駆動用モータ(図示せず)の回転軸に配設された駆動プーリ(図示せず)と、従動回転可能に軸支された従動プーリ(図示せず)との間に掛架された無端ベルト(図示せず)が連結されており、無端ベルトを介してキャリッジ駆動用モータの回転駆動力が伝達されて幅方向Xへ往復動する。
【0032】
プラテン53上を搬送される記録紙Pは、キャリッジ61が幅方向Xへ往復動しながら記録ヘッド62のヘッド面から記録紙Pの記録面にインクを噴射してドットを形成する動作と、搬送駆動ローラ51の駆動回転により搬送方向Yへ所定の搬送量で搬送する動作とが交互に繰り返されることによって、記録面への記録が実行される。インク噴射後の記録紙Pは、排出駆動ローラ54と排出フレーム12に従動回転可能に軸支されている排出従動ローラ55とで挟持され、排出駆動ローラ54の駆動回転により搬送方向Yへ搬送されて排出される。これらの一連の記録制御は、図示していない制御装置により実行される。
【0033】
<矯正装置の概略構成>
本発明に係るインクジェットプリンタ50は、自動給送装置70により給送方向(搬送方向Yと同じ方向。以下、「給送方向Y」という。)へ給送される記録紙Pの幅方向Xの反りや波打ち変形を矯正する矯正装置80が給送経路76に配設されている。以下、矯正装置80の構成及び動作について、図2を参照しながら説明する。
【0034】
矯正装置80は、「矯正部材」としての紙押さえローラ77と、紙押さえローラ77の両端を支持する支持装置40R、40Lとで構成されている。紙押さえローラ77は、給送方向Yへ回転自在に支持された回転体であり、搬送駆動ローラ51と略平行に、給送経路76に配設されている(図2)。支持装置40Rは、紙押さえローラ77の一端側を支持し、支持装置40Lは、紙押さえローラ77の他端側を支持する。
【0035】
<支持装置40R、40Lの構成>
つづいて、紙押さえローラ77を支持する支持装置40R、40Lの構成について、図3〜図5を参照しながら説明する。尚、支持装置40Rと支持装置40Lは、左右対称となる同じ構成の支持機構であるため、以下、支持装置40Rを例に説明し、支持装置40Lの説明は省略する。
【0036】
図3は、支持装置40Rを前面側から観た斜視図であり、図4は、支持装置40Rを後方側から観た斜視図である。図5は、支持装置40Rの側面図である。
摩擦クラッチによる「変位機構」を備えた支持装置40Rは、支持板41、ばね受け部材42、内ストッパ421、コイルばね43、外ストッパ44及び「付勢手段」としてのねじりコイルばね45で構成される。支持板41は、支持板41の一端側に形成されている取付孔411に搬送駆動ローラ51が挿通された状態で、揺動可能に搬送駆動ローラ51に支持される。支持板41の他端側に形成されている支持孔412は、紙押さえローラ77の軸部771が挿通された状態で、紙押さえローラ77を回転自在に支持する。支持板41は、搬送駆動ローラ51に固設された外ストッパ44に係止されて、軸方向外側への移動が規制される。
【0037】
搬送駆動ローラ51に環装されるばね受け部材42は、搬送駆動ローラ51に固設された内ストッパ421に係止されて、軸方向内側への移動が規制される。ばね受け部材42と支持板41との間には、コイルばね43が縮設されている。支持板41は、このコイルばね43のばね力によって、外ストッパ44に押圧され、それによって、一定の揺動抵抗(摺動抵抗)が付与された状態となる。
【0038】
搬送駆動ローラ51の外周面には、環状溝511が形成されており、この環状溝511には、ねじりコイルばね45が支持されている。ねじりコイルばね45の一端側451は、インクジェットプリンタ50の基体11に形成された係止部112に係止されている。他方、ねじりコイルばね45の他端側452は、紙押さえローラ77の軸部771に当接係合している。
【0039】
このような構成の支持装置40R、40Lに支持されている紙押さえローラ77は、両端の軸部771で支持板41に回転自在に軸支される。また、紙押さえローラ77は、搬送駆動ローラ51を揺動軸として、一定の揺動抵抗が付与された状態で揺動可能に支持される。さらに、紙押さえローラ77は、ねじりコイルばね45のばね力によって、符号Aで示した方向へ付勢されている。そして、インクジェットプリンタ50の基体11には、規制凸部111が設けられている。この規制凸部111と支持板41の側端と係合することによって、紙押さえローラ77の符号Bで示した方向への変位が規制される。
【0040】
<矯正装置の動作>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50における矯正装置80の動作について、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6及び図7は、本発明に係るインクジェットプリンタ50の要部を図示した側断面図である。
【0041】
図6は、自動給送装置70により記録紙Pが給送されるときの状態を図示したものである。
ホッパ71によって給送用ローラ74の外周面に押圧された記録紙Pは、給送用ローラ74が符号Cで示した回転方向へ回転することによって、符号Dで示したように、給送経路76の案内リブ761の頂面に摺接しながら、案内リブ761の頂面に沿って給送経路76を給送されていく。給送用ローラ74の下流側には、浮き抑えローラ78が回転自在に軸支されており、この浮き抑えローラ78が記録紙Pに接しながら符号Eで示した回転方向へ従動回転する。それによって、給送される記録紙Pに作用する給送負荷を最小限に止めつつ、給送される記録紙Pの姿勢を規制して、給送される記録紙Pが案内リブ761の頂面から浮き上がることを防止することができる。
【0042】
紙押さえローラ77は、ねじりコイルばね45(図3〜図5)のばね力によって、外周面が各案内リブ761の頂面に当接した状態で押圧されている(符号A)。そして、給送経路76を給送される記録紙Pの給送方向Yの先端は、その各案内リブ761の頂面と紙押さえローラ77の外周面との間に進入していく。そのとき、給送される記録紙Pの給送方向Yの先端は、各案内リブ761の頂面と紙押さえローラ77の外周面とで挟持された状態となる。それによって、給送される記録紙Pの給送方向Yの先端は、反りや波打ち変形等が生じていても、紙押さえローラ77の外周面に沿って真っ直ぐに矯正されることになる。
【0043】
すなわち、自動給送装置70により給送される記録紙Pは、各案内リブ761の頂面と紙押さえローラ77の外周面との当接面を通過する過程で、幅方向X(給送方向Yと交差する方向)の反りや波打ち変形等が矯正されて略真っ直ぐな状態になる。それによって、給送方向Yの先端を略真っ直ぐな状態にしてから記録紙Pを搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52との当接部分へ給送することができる。したがって、本発明に係るインクジェットプリンタ50は、給送される記録紙Pに反りや波打ち変形等が生じていても、給送される記録紙Pの給送方向Yの先端を利用した突き当て動作等によるスキュー取り動作を高精度に行うことが可能になる。
【0044】
このようにして、本発明に係るインクジェットプリンタ50は、給送される記録紙Pに反りや波打ち変形等が生じていたときに、給送される記録紙Pのスキューをスキュー取り動作によって解消できない虞を低減させることができる。
【0045】
また、矯正装置80は、当該実施例のように、給送経路76を給送される記録紙Pに対して、紙押さえローラ77が幅方向Xの全幅にわたって接するのが好ましい。それによって、幅方向Xの記録紙Pの反りや波打ち変形を全幅にわたって真っ直ぐな状態に矯正することができる。したがって、記録紙Pの反りや波打ち変形の状態にかかわらず、常に給送方向Yの先端を略真っ直ぐな状態にして記録紙Pを給送することができる。
【0046】
さらに、紙押さえローラ77は、自重で各案内リブ761の頂面に当接するようにしても良いが、当該実施例のように、ねじりコイルばね45のばね力で各案内リブ761の頂面へ付勢した状態とするのが好ましい。それによって、給送経路76を給送される記録紙Pは、紙押さえローラ77が押圧されることになるので、記録紙Pにより強い矯正力を作用させることができる。したがって、幅方向Xの記録紙Pの反りや波打ち変形をより確実に矯正することができる。
【0047】
さらに、「矯正部材」は、当該実施例の紙押さえローラ77のように、給送方向Yへ回転自在に支持された回転体とするのが好ましい。すなわち、反りや波打ち変形が矯正されながら記録紙Pが給送される際に、その記録紙Pの給送に従動して紙押さえローラ77が符号Fで示した回転方向へ回転することによって、記録紙Pの反りや波打ち変形等が紙押さえローラ77で矯正されるときに生ずる給送負荷を低減させることができる。また、紙押さえローラ77が記録紙Pの給送に従動して回転することによって、紙押さえローラ77と記録紙Pとの接触部分において記録紙Pに傷等が付いてしまう虞を低減させることができる。
【0048】
図7は、自動給送装置70により記録紙Pが給送された後の状態を図示したものである。
自動給送装置70により給送された記録紙Pは、突き当て動作等によるスキュー取り動作によってスキューが除去された後、搬送駆動ローラ51が符号Gで示した回転方向へ回転することによって、搬送方向Yへ搬送されていく。また、記録紙Pを搬送駆動ローラ51へ押圧している搬送従動ローラ52は、その記録紙Pの搬送に従動して符号Hで示した回転方向へ回転する。このとき、搬送駆動ローラ51が符号Gで示した回転方向へ回転することによって、紙押さえローラ77を軸支する支持板41が符号Bで示した方向へ揺動する。それによって、紙押さえローラ77は符号Bで示した方向へ変位し、紙押さえローラ77が給送経路76から離間した状態となる。そして、搬送駆動ローラ51の回転が停止すれば、紙押さえローラ77は、ねじりコイルばね45(図3〜図5)のばね力によって、元の位置、つまり外周面が各案内リブ761の頂面に当接する位置に、自動的に変位する。
【0049】
このように、自動給送装置70により記録紙Pを給送した後、搬送駆動ローラ51の駆動回転によって記録紙Pが搬送方向Yへ搬送される際には、紙押さえローラ77を給送経路76から離間させる方向へ変位させるのが好ましい。それによって、搬送中の記録紙Pに紙押さえローラ77が接しない状態にすることができるので、紙押さえローラ77が接することに起因したバックテンションが搬送中の記録紙Pに作用しないようにすることができる。したがって、そのバックテンションによって記録精度が低下してしまうことを未然に防止することができる。
【0050】
さらに、当該実施例のように、紙押さえローラ77は、記録紙Pが搬送方向Yへ搬送される回転方向(符号Gで示した回転方向)への搬送駆動ローラ51の回転に連動して、給送経路76から離間する方向へ自動的に変位するのが好ましい。それによって、少なくとも搬送駆動ローラ51の回転により記録紙Pが搬送方向Yへ搬送されている間は、その搬送中の記録紙Pから紙押さえローラ77を自動的に離間させることができるとともに、その離間させた状態を維持することができる。
【0051】
したがって、記録紙Pの搬送中は、自動的に、その搬送中の記録紙Pに紙押さえローラ77が接しない状態にすることができるので、紙押さえローラ77が接することに起因したバックテンションによって記録精度が低下してしまうことを確実に防止することができる。また、紙押さえローラ77を変位させるための専用の駆動力源及びそれを制御する制御手段を別個に設ける必要がないので、本発明に係るインクジェットプリンタ50をより低コストに実現することができる。
【0052】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの側断面図。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンタの一部を拡大図示した斜視図。
【図3】紙押さえローラの支持装置を前面側から観た斜視図。
【図4】紙押さえローラの支持装置を後方側から観た斜視図。
【図5】紙押さえローラの支持装置の側面図。
【図6】本発明に係るインクジェットプリンタの要部を図示した側断面図。
【図7】本発明に係るインクジェットプリンタの要部を図示した側断面図。
【符号の説明】
【0054】
40R、40L 支持装置、41 支持板、42 ばね受け部材、43 コイルばね、45 ねじりコイルばね、50 インクジェットプリンタ、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排出駆動ローラ、55 排出従動ローラ、56 キャリッジガイド軸、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、70 自動給送装置、71 ホッパ、74 給送用ローラ、75 分離パッド、76 給送経路、77 紙押さえローラ、80 矯正装置、761 各案内リブ、P 記録紙、X 幅方向、Y 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を所定の搬送方向へ搬送する搬送装置と、被記録材を前記搬送装置へ給送する給送装置とを備えた記録装置において、
前記給送装置から前記搬送装置への給送経路で、前記給送装置により給送される被記録材の給送方向と交差する方向の変形を矯正する矯正装置を備えている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記矯正装置は、前記給送経路を給送される被記録材に対して、前記給送方向と交差する方向の全幅にわたって接する矯正部材を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記矯正装置は、前記給送経路から離間する方向へ前記矯正部材を変位させる変位機構を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記搬送装置は、駆動力源の回転駆動力で回転する搬送駆動ローラと、前記搬送駆動ローラの外周面に被記録材を押圧する搬送従動ローラとを有し、
前記変位機構は、前記搬送駆動ローラの搬送方向への回転に連動して、前記給送経路から離間する方向へ前記矯正部材を変位させる、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記給送経路は、被記録材を前記搬送装置へ案内しつつ支持する支持面を有し、前記矯正装置は、前記支持面へ前記矯正部材を付勢する付勢手段を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の記録装置において、前記矯正部材は、前記給送方向へ回転自在に支持された回転体である、ことを特徴とした記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−208879(P2009−208879A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52487(P2008−52487)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】