説明

記録装置

【課題】湾曲した複数枚の記録媒体を積載可能な給紙経路からの給紙であっても、平坦なな搬送経路に記録媒体を搬送してから行うことで、ユーザの手を煩わせることなく高品位の記録を行うことができるようにする。
【解決手段】湾曲した給紙経路から給紙された記録媒体を、記録動作を行うことなく記録媒体の後端部が給糸経路から抜ける位置まで搬送を行った後、平坦な搬送路まで逆送する。その後、記録媒体を平坦な搬送経路内で搬送しながら記録を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、特に記録媒体の種類や選択される記録品位に応じて、複数の搬送経路から適切な搬送経路を選択することのできる記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置等の記録装置では、記録剤を付与するための記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動走査しながら、当該記録媒体に画像を形成する。普通紙のような比較的柔軟な記録媒体は、傾斜した給紙トレイに複数積載可能であり、1枚ずつ給紙ローラによって分離給送(給紙)され、当該給紙ローラに沿って緩やかに湾曲しながら給送経路を変えた後に、記録および排出が行われる。もしくは、記録媒体は装置下部に配置されるカセットに収納された状態から1枚ずつ給紙ローラによって給紙され、当該給紙ローラや反転のためのローラ等によって湾曲させられて搬送方向が反転された上で、記録・搬送が行われる。
【0003】
しかし、厚みのある記録媒体や、湾曲させたくない記録媒体、さらには実質的に湾曲させることのできないCD−Rなどの記録媒体(すなわち比較的剛性の高い記録媒体)への記録を行う場合には、全ての搬送は同一平面内で行われる。そこで、上述のような搬送経路とは別にこのような同一平面内での搬送経路を有する記録装置が提案および実施されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。なお本明細書では、このような同一平面内での搬送経路および該経路を介した搬送動作を伴う記録を、それぞれ、フラットパスおよびフラットパス記録と称する。
【0004】
特許文献1では、フラットパス記録の際に記録媒体の表裏からこれを挟持し搬送するための搬送ローラ対を、ユーザによって離間させたり圧接させたりして、記録媒体のセットを行う構成が開示されている。具体的には、フラットパス記録を実行する際、ユーザは搬送ローラ対を一度離間させ、厚紙等の記録媒体を装置背面に設けられている手差し口より水平に挿入し、さらに搬送ローラ対を圧接させることによって、記録媒体をセットする。すなわち、給紙工程をユーザの手によって水平に行うので、給紙動作に伴う記録媒体の湾曲が起こらない状態で、フラットパスを実現することができる。
【0005】
また、特許文献2では、記録媒体の表裏からこれを挟持し搬送するための搬送ローラ対の離間・圧接動作を自動で行う構成が開示されている。さらには、装置前面から記録媒体を装置内に水平に挿入できる構成を採用しているため、ユーザが行う処理が簡単であるという利点を有している。
【0006】
【特許文献1】特開2002−192782号公報
【特許文献2】特開2007−70105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献に記載の方法においては、幾つかの問題点が生じていた。例えば特許文献1のように、ユーザが手動で搬送ローラの離間および圧接を行う構成では、ユーザの手を煩わせることになり、また誤操作の可能性もある。さらに、装置背面から記録媒体を挿入するため、記録媒体のセット時の操作性が低いという問題がある。一方、特許文献2は、自動で搬送ローラの離間および圧接を行う構成であり、かつ装置前面からの記録媒体の挿入であるために操作性は高い。しかしフラットパス記録は、上述のような比較的剛性の高い記録媒体のほか、普通紙やフォト用紙など薄手の記録媒体、すなわち比較的柔軟な記録媒体に対して行うことが望まれる場合もある。このような比較的柔軟な記録媒体を用いる場合、たとえこれを装置前面からセットを行う構成であっても、ユーザが精度良くセットを行うことは難しい。
【0008】
本発明は、以上に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的柔軟な記録媒体へのフラットパス記録を行う場合であっても、記録装置への容易なセットを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明は、記録媒体を複数積載可能であるとともに、前記記録媒体の分離給送が可能な給送部であって、当該給送経路が、記録部による記録位置に関する記録媒体の搬送面に対して湾曲している給送部を具えた記録装置において、
前記搬送面に連続した平坦な搬送経路であって、前記記録位置に向けて前記記録媒体を搬送するための搬送経路と、
前記記録部による記録を行うことなく、前記給送部から前記記録媒体をその後端が前記給送経路から抜ける位置まで搬送させ、当該搬送後に前記記録媒体を前記搬送経路内に逆送させてから、前記記録媒体を前記記録位置に対して搬送することで記録を行わせる制御手段と、
を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録装置に配置され、記録媒体の分離給送を行う給送部に対して記録媒体をセットしてもフラットパス記録を行うことが可能となる。従って、比較的柔軟な記録媒体へのフラットパス記録を行う場合であっても、記録装置への容易かつ確実なセットが可能となり、記録品位を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0012】
1.機構部の基本構成
まず、本実施形態で適用する記録装置の機構部の基本的な構成を説明する。本実施形態における記録装置本体は、各機構部の役割から、概して、給紙部(給送部)、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部、およびフラットパス部等に分類することができ、これらは外装部に収納されている。
【0013】
図1、図2、および図3は、本実施形態で適用する記録装置の外観を示す斜視図である。ここで、図1は記録装置の非使用時における前面から見た状態、図2は記録装置の非使用時における背面から見た状態、図3は記録装置の使用時における前面から見た状態をそれぞれ示している。また、図4〜図6は、記録装置本体の内部機構を説明するための図である。ここで、図4は右上部からの斜視図、図5は左上部からの斜視図、図6は記録装置本体の側断面図である。
【0014】
以下、これらの図面を適宜参照しながら、各部を順次説明する。
【0015】
(A)外装部(図1、図2)
外装部は、給紙部、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部およびフラットパス部等の回りを覆うように取り付けられている。外装部は主に、下ケースM7080、上ケースM7040、アクセスカバーM7030、コネクタカバーおよびフロントカバーM7010から構成されている。
【0016】
下ケースM7080の下部には、不図示の排紙トレイレールが設けられており、分割された排紙トレイM3160が収納可能に構成されている。また、フロントカバーM7010は、非使用時に排紙口を塞ぐ構成になっている。
【0017】
上ケースM7040には、アクセスカバーM7030が取り付けられており、回動可能に構成されている。上ケースの上面の一部は開口部を有しており、この位置で、インクタンクH1900および記録部である記録ヘッドH1001(後述)が交換可能となるように構成されている。なお、本実施形態の記録装置においては、記録ヘッドH1001は、1色のインクを吐出可能な吐出部を複数色分、一体的に構成したユニットの形態である。そして、インクタンクH1900が色毎に独立に着脱可能な記録ヘッドカートリッジH1000として構成されている。上ケースM7040には、アクセスカバーM7030の開閉を検知用の不図示のドアスイッチレバー、LEDの光を伝達・表示するLEDガイドM7060、電源キーE0018、リジュームキーE0019およびフラットパスキーE3004等が設けられている。また、多段式の給紙トレイM2060が回動可能に取り付けられており、給紙部が使われない時は、給紙トレイM2060を収納することにより、給紙部のカバーにもなるように構成されている。
【0018】
上ケースM7040と下ケースM7080は、弾性を持った嵌合爪で取り付けられており、その間のコネクタ部分が設けられている部分を、不図示のコネクタカバーが覆っている。
【0019】
(B)給紙部(図3、図6)
図3および図6を参照するに、給紙部は次のように構成されている。すなわち、記録媒体を積載する圧板M2010、記録媒体を1枚ずつ給紙する給紙ローラM2080、記録媒体を分離する分離ローラM2041、記録媒体を積載位置に戻すための戻しレバーM2020等がベースM2000に取り付けられることで構成されている。
【0020】
(C)用紙搬送部(図3〜図6)
曲げ起こした板金からなるシャーシM1010には、記録媒体を搬送する搬送ローラM3060が回動可能に取り付けられている。搬送ローラM3060は、金属軸の表面にセラミックの微小粒がコーティングされた構成となっており、両軸の金属部分を不図示の軸受けが受ける状態で、シャーシM1010に取り付けられている。搬送ローラM3060にはローラテンションバネ(不図示)が設けられており、搬送ローラM3060を付勢することにより、回転時に適量の負荷を与えて安定した搬送が行えるようになっている。
【0021】
搬送ローラM3060には、従動する複数のピンチローラM3070が当接して設けられている。ピンチローラM3070は、ピンチローラホルダM3000に保持されているが、不図示のピンチローラバネによって付勢されることで、搬送ローラM3060に圧接し、ここで記録媒体の搬送力を生み出している。この時、ピンチローラホルダM3000の回転軸は、シャーシM1010の軸受けに取り付けられ、この位置を中心に回転する。
【0022】
記録媒体が搬送されてくる入口には、記録媒体をガイドするためのペーパガイドフラッパM3030およびプラテンM3040が配設されている。また、ピンチローラホルダM3000には、PEセンサレバーM3021が設けられている。PEセンサレバーM3021は、記録媒体の先端および後端の検出をシャーシM1010に固定されたペーパエンドセンサ(以下PEセンサと称す)E0007に伝える役割を果たす。プラテンM3040は、シャーシM1010に取り付けられ、位置決めされている。ペーパガイドフラッパM3030は、不図示の軸受け部を中心に回転可能で、シャーシM1010に当接することで位置決めされる。
【0023】
搬送ローラM3060の記録媒体搬送方向における下流側は、記録部である記録ヘッドH1001が走査される領域となる。
【0024】
上記構成における搬送の過程を説明する。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000およびペーパガイドフラッパM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。このとき、PEセンサレバーM3021が記録媒体の先端を検知して、これにより記録媒体に対する記録位置が求められる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。プラテンM3040には、搬送基準面となるリブが形成されており、このリブにより、記録ヘッドH1001と記録媒体表面との間のギャップが管理されている。また同時に、当該リブが、後述する排紙部と合わせて、記録媒体の波打ちを抑制する役割も果たしている。
【0025】
搬送ローラM3060が回転するための駆動力は、例えばDCモータからなるLFモータE0002の回転力が、不図示のタイミングベルトを介して、搬送ローラM3060の軸上に配設されたプーリM3061に伝達されることによって得られる。また、搬送ローラM3060の軸上には、搬送ローラM3060による搬送量を検出するためのコードホイールM3062が設けられている。そして、隣接するシャーシM1010には、コードホイールM3062に形成されたマーキングを読み取るためのエンコードセンサM3090が配設されている。なお、コードホイールM3062に形成されたマーキングは、150〜300lpi(ライン/インチ;参考値)のピッチで形成されているものとする。
【0026】
(D)排紙部(図3〜図6)
排紙部は、第1の排紙ローラM3100および第2の排紙ローラM3110、複数の拍車M3120およびギア列などから構成されている。
【0027】
第1の排紙ローラM3100は、金属軸に複数のゴム部を設けて構成されている。第1の排紙ローラM3100の駆動は、搬送ローラM3060の駆動が、アイドラギアを介して第1の排紙ローラM3100まで伝達されることによって行われている。
【0028】
第2の排紙ローラM3110は、樹脂の軸にエラストマの弾性体M3111を複数取り付けた構成になっている。第2の排紙ローラM3110の駆動は、第1の排紙ローラM3100の駆動が、アイドラギアを介して伝達すること行われる。
【0029】
拍車M3120は、周囲に凸形状を複数設けた例えばSUSでなる円形の薄板を樹脂部と一体としたもので、拍車ホルダM3130に複数取り付けられている。この取り付けは、コイルバネを棒状に設けた拍車バネによって行われているが、同時に拍車バネのばね力は、拍車M3120を排紙ローラM3100およびM3110に対し所定圧で当接させている。この構成によって拍車M3120は、2つの排紙ローラM3100およびM3110に従動して回転可能となっている。拍車M3120のいくつかは、第1の排紙ローラM3100のゴム部、あるいは第2の排紙ローラM3110の弾性体M3111の位置に設けられており、主に記録媒体の搬送力を生み出す役割を果たしている。また、その他のいくつかは、ゴム部あるいは弾性体M3111が無い位置に設けられ、主に記録時の記録媒体の浮き上がりを抑える役割を果たしている。
【0030】
また、ギア列は、搬送ローラM3060の駆動を排紙ローラM3100およびM3110に伝達する役割を果たしている。
【0031】
以上の構成によって、画像形成された記録媒体は、第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ、搬送されて排紙トレイM3160に排出され、ここに保持される。排紙トレイM3160は、複数に分割され、後述する下ケースM7080の下部に収納できる構成になっている。使用時は、引出して使用する。また、排紙トレイM3160は、先端に向けて高さが上がり、更にその両端は高い位置に保持されるよう設計されており、排出された記録媒体の積載性を向上し、記録面の擦れなどを防止している。
【0032】
(E)キャリッジ部(図4〜図6)
キャリッジ部は、記録ヘッドH1001を取り付けるためのキャリッジM4000を有しており、キャリッジM4000は、ガイドシャフトM4020およびガイドレールM1011によって支持されている。ガイドシャフトM4020は、シャーシM1010に取り付けられており、記録媒体の搬送方向に対して直角方向にキャリッジM4000を往復走査させるように案内支持している。ガイドレールM1011は、シャーシM1010に一体に形成されており、キャリッジM4000の後端を保持して記録ヘッドH1001と記録媒体との隙間を維持する役割を果たしている。また、ガイドレールM1011のキャリッジM4000との摺動側には、ステンレス等の薄板からなる摺動シートM4030が張設され、記録装置の摺動音の低減化を図っている。
【0033】
キャリッジM4000は、シャーシM1010に取り付けられたキャリッジモータE0001によりタイミングベルトM4041を介して駆動される。また、タイミングベルトM4041は、アイドルプーリM4042によって張設、支持されている。さらに、タイミングベルトM4041は、キャリッジM4000とゴム等からなるキャリッジダンパを介して結合されており、キャリッジモータE0001等の振動を減衰することで、記録される画像のむら等を低減している。
【0034】
キャリッジM4000の位置を検出するためのエンコーダスケールE0005(図8について後述)が、タイミングベルトM4041と平行に設けられている。エンコーダスケールE0005上には、150lpi〜300lpiのピッチでマーキングが形成されている。そして、当該マーキングを読み取るためのエンコーダセンサE0004(図8について後述)が、キャリッジM4000に搭載されたキャリッジ基板E0013(図8について後述)に設けられている。キャリッジ基板E0013には、記録ヘッドH1001と電気的な接続を行うためのヘッドコンタクトE0101も設けられている。また、キャリッジM4000には、電気基板E0014から記録ヘッドH1001へ、駆動信号を伝えるための不図示のフレキシブルケーブルE0012(図18について後述)が接続されている。
【0035】
記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に固定するための構成として次のものが設けられている。すなわち、記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に押し付けながら位置決めするための不図示の突き当て部と、所定の位置に固定するための不図示の押圧手段が、キャリッジM4000上に設けられている。押圧手段は、ヘッドセットレバーM4010に搭載され、記録ヘッドH1001をセットする際に、ヘッドセットレバーM4010を回転支点を中心に回して、記録ヘッドH1001に作用する構成になっている。
【0036】
さらに、キャリッジM4000には、CD−R等の特殊メディアへ記録を行う際や、記録結果や用紙端部等の位置検出用として、反射型の光センサからなる位置検出センサM4090が取り付けられている。位置検出センサM4090は、発光素子より発光し、その反射光を受光することで、キャリッジM4000の現在位置を検出することができる。
【0037】
上記構成において記録媒体に画像形成する場合、列方向の位置に対しては、搬送ローラM3060およびピンチローラM3070からなるローラ対が記録媒体を搬送して位置決めする。また、行方向の位置に対しては、キャリッジモータE0001によりキャリッジM4000を上記搬送方向と垂直な方向に移動させて、記録ヘッドH1001を目的の画像形成位置に配置させる。位置決めされた記録ヘッドH1001は、電気基板E0014からの信号に従って、記録媒体に対しインクを吐出する。記録ヘッドH1001についての詳細な構成および記録システムは後述する。本実施形態の記録装置においては、記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する記録主走査と、搬送ローラM3060により記録媒体が行方向に搬送される副走査とを交互に繰り返す。これにより、記録媒体上に画像を形成していく構成となっている。
【0038】
(F)ヘッドカートリッジ
キャリッジM4000には、ヘッドカートリッジH1000が着脱可能に搭載される。本実施形態におけるヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段およびインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有している。
【0039】
本実施形態の記録装置に用いられる記録ヘッドH1001は、1色のインクを吐出可能な吐出部が複数色分、一体的に構成されている。各吐出部は、1色のインクあたり例えば1200dpi(ドット/インチ)の記録が可能となるよう、記録走査の方向と交差する方向に配列された768個のノズルを有する。
【0040】
図7は、本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。本実施形態の記録装置は、10色の顔料インクによって画像を形成する。10色とはシアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)、第1ブラック(K1)、第2ブラック(K2)、レッド(R)、グリーン(G)およびグレー(Gray)である。従ってインクタンクT0001もこれら10色分のものが独立に用意されている。そして、図に示すように、インクタンクそれぞれがヘッドカートリッジH1000に対して着脱自在となっている。なお、インクタンクH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行えるようになっている。
【0041】
(G)その他の構成
本実施形態の記録装置には、上述した機構部のほか、記録ヘッドH1001の吐出性能を維持または回復させるために用いられる機構としての回復処理部が設けられる。これは、記録ヘッドの吐出口形成面をキャッピングするキャップ、当該キャップ状態で吸引力を作用させることで吐出口からインクを強制的に排出させるべく作動可能なポンプ、キャップを吐出口形成面に対して接合/離脱させるための機構を有する。また、吐出口形成面をワイピングすることで、吐出口形成面に残留するインクや塵埃などを払拭するためのワイパを設けることもできる。
【0042】
さらに、記録装置には、本実施形態の主要部をなすフラットパスが設けられており、これについては後述する。
【0043】
2.電気回路の構成
次に本実施形態における電気回路の構成を説明する。
【0044】
図8は、記録装置における電気的回路の全体構成を概略的に説明するためのブロック図である。本実施形態の記録装置では、主にキャリッジ基板E0013、メイン基板E0014、電源ユニットE0015およびフロントパネルE0106等によって構成されている。
【0045】
ここで、電源ユニットE0015は、メイン基板E0014と接続され、各種駆動電源を供給するものとなっている。
【0046】
キャリッジ基板E0013は、キャリッジM4000に搭載されたプリント基板ユニットであり、ヘッドコネクタE0101を通じて記録ヘッドH1001との信号の授受と、ヘッド駆動電源の供給とを行うインターフェースとして機能する。ヘッド駆動電源の制御に供する部分として、記録ヘッドH1001の各色吐出部に対する複数チャネルのヘッド駆動電圧変調回路E3001を有する。そして、フレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメイン基板E0014から指定された条件に従ってヘッド駆動電源電圧を発生する。また、キャリッジM4000の移動に伴ってエンコーダセンサE0004から出力されるパルス信号に基づいて、エンコーダスケールE0005とエンコーダセンサE0004との位置関係の変化を検出する。更にその出力信号をフレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメイン基板E0014へと出力する。
【0047】
メイン基板E0014は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の各部の駆動制御を司るプリント基板ユニットである。その基板上にホストインタフェース(ホストI/F)E0017を有しており、ホスト装置J0012からの受信データをもとに記録動作の制御を行う。
【0048】
ホスト装置J0012は、記録すべき画像を示す画像データの生成やそのデータ生成のためのUI(ユーザインタフェース)の設定等を行うコンピュータの形態を具える。ホスト装置J0012のオペレーティングシステムで動作するプログラムとしてアプリケーションやプリンタドライバがある。アプリケーションは記録装置で記録するための画像データを作成する処理を実行する。この画像データもしくはその編集等がなされる前のデータは種々の媒体を介してPCに取り込むことができる。これらの取り込まれたデータは、ホスト装置のモニタに表示されてアプリケーションを介した編集、加工等がなされ、記録装置で記録すべき画像データが作成される。ホスト装置J0012のモニタに表示されるUI画面において、ユーザは、記録に使用する記録媒体の種類や記録の品位等の設定を行うと共に記録指示を出す。この記録指示に応じて画像データRがプリンタドライバを介し、適宜の画像処理が行われた上で記録装置に送信される。
【0049】
記録装置はまた、キャリッジモータE0001、LFモータE0002、APモータE3005、PRモータE3006など、各種モータと接続されてこれらを制御している。キャリッジモータE0001は、キャリッジM4000を主走査させるための駆動源となるモータである。LFモータE0002、記録媒体を搬送するための駆動源となるモータである。APモータE3005は、記録ヘッドH1001の回復動作および記録媒体の給紙動作の駆動源となるモータである。PRモータE3006は、フラットパス記録動作の駆動源となるモータである。さらに、PEセンサ、CRリフトセンサ、LFエンコーダセンサ、PGセンサのような、プリンタ各部の動作状態を検出する様々なセンサに対して、制御信号および検出信号の送受信を行うためのセンサ信号E0104に接続される。また、メイン基板E0014は、CRFFC E0012および電源ユニットE0015にそれぞれ接続されるとともに、さらにパネル信号E0107を介してフロントパネルE0106と情報の授受を行うためのインターフェースを有している。
【0050】
フロントパネルE0106は、ユーザ操作の利便性のために、記録装置本体の正面に設けたユニットである。これは、リジュームキーE0019、LED E0020および電源キーE0018を有するほか(図1)、さらにデジタルカメラ等の周辺デバイスとの接続に用いるデバイスI/F E0100を有している。
【0051】
図9は、メイン基板E1004の内部構成を示すブロック図である。
【0052】
図において、E1102はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。これは、制御バスE1014を通じてROM E1004に接続され、ROM E1004に格納されたプログラムに従って、各種制御を行っている。例えば、各種センサに関連するセンサ信号E0104の送受信を行う。そのほか、エンコーダ信号E1020、フロントパネルE0106上の電源キーE0018、リジュームキーE0019およびフラットパスキーE3004からの出力の状態を検出している。また、ホストI/F E0017、フロントパネル上のデバイスI/F E0100の接続およびデータ入力状態に応じて、各種論理演算や条件判断等を行い、各構成要素を制御し、インクジェット記録装置の駆動制御を司っている。
【0053】
E1103はドライバ・リセット回路である。これは、ASIC E1102からのモータ制御信号E1106に従って、CRモータ駆動信号E1037、LFモータ駆動信号E1035、APモータ駆動信号E4001およびPRモータ駆動信号E4002を生成し、各モータを駆動する。さらに、ドライバ・リセット回路E1103は、電源回路を有しており、メイン基板E0014、キャリッジ基板E0013、フロントパネルE0106など各部に必要な電源を供給する。さらには電源電圧の低下を検出して、リセット信号E1015の発生および初期化を行う。
【0054】
E1010は電源制御回路であり、ASIC E1102からの電源制御信号E1024に従って発光素子を有する各センサ等への電源供給を制御する。
【0055】
ホストI/F E0017は、ASIC E1102からのホストI/F信号E1028を、外部に接続されるホストI/FケーブルE1029に伝達し、またこのケーブルE1029からの信号をASIC E1102に伝達する。
【0056】
一方、電源ユニットE0015からは電力が供給される。供給された電力は、メイン基板E0014内外の各部へ、必要に応じて電圧変換された上で供給される。また、ASIC E1102からの電源ユニット制御信号E4000が電源ユニットE0015に接続され、記録装置本体の低消費電力モード等を制御する。
【0057】
ASIC E1102は1チップの演算処理装置内蔵半導体集積回路であり、前述したモータ制御信号E1106、電源制御信号E1024および電源ユニット制御信号E4000等を出力する。そして、ホストI/F E0017との信号の授受を行うとともに、パネル信号E0107を通じて、フロントパネル上のデバイスI/F E0100との信号の授受を行う。さらに、センサ信号E0104を通じてPEセンサ、ASFセンサ等各部センサ類により状態を検知する。またパネル信号E0107の状態を検知して、パネル信号E0107の駆動を制御してフロントパネル上のLED E0020の点滅を行う。
【0058】
さらにASIC E1102は、エンコーダ信号(ENC)E1020の状態を検知してタイミング信号を生成し、ヘッド制御信号E1021で記録ヘッドH1001とのインターフェースをとり記録動作を制御する。ここにおいて、エンコーダ信号(ENC)E1020はCRFFC E0012を通じて入力されるエンコーダセンサE0004の出力信号である。また、ヘッド制御信号E1021は、フレキシブルフラットケーブルE0012を通じてキャリッジ基板E0013に接続される。そして、前述のヘッド駆動電圧変調回路E3001およびヘッドコネクタE0101を経て記録ヘッドH1001に供給されるとともに、記録ヘッドH1001からの各種情報をASIC E1102に伝達する。このうち吐出部毎のヘッド温度情報については、メイン基板上のヘッド温度検出回路E3002で信号増幅された後、ASIC E1102に入力され、各種制御判断に用いられる。
【0059】
図中、E3007はDRAMであり、記録用のデータバッファ、ホストコンピュータからの受信データバッファ等として、また各種制御動作に必要なワーク領域としても使用されている。
【0060】
3.特徴構成
次に、本実施形態の特徴構成をなすフラットパス部の構成および動作について説明する。
【0061】
3.1 フラットパス部
図10および図11は、フラットパス記録時において、本実施形態の記録装置をそれぞれ前面から見た状態および背面から見た状態を示している。また、図12は、フラットパス記録を行う記録装置本体の内部機構を説明するための断面図である。
【0062】
給紙部からの給紙は、図6に示したように記録媒体が通る経路がピンチローラに達するまで曲がっているため、記録媒体を曲げた状態で行われることになる。従って、曲げられた記録媒体の反力が発生する一方、記録媒体後端が湾曲部を抜ける際にこの反力が無くなることにより、記録途中で搬送負荷が大きく変動する。この搬送負荷の変動により記録品位が低下することがある。
【0063】
かかる不具合を回避するため本実施形態のフラットパス記録は、記録媒体を給紙部から給紙した後、記録を行うことなく記録媒体の後端部が湾曲部から抜けるまで搬送する。当該搬送後、記録媒体を平坦かつ水平な搬送経路に逆送して所定位置に設定し、さらにその位置から記録位置に向けて搬送を行うことにより記録を行うものである。
【0064】
フロントカバーM7010は、通常記録した記録媒体を数十枚程度積載しておくためのトレイを兼ねるために排紙部より下方にある(図3)。フラットパス記録時には、記録媒体を水平に搬送するために、フロントカバーM7010を排紙口の位置まで上げる(図10)。フロントカバーM7010には不図示のフック等が設けられており、フラットパス給紙位置にフロントカバーM7010を固定可能である。フロントカバーM7010がフラットパス給紙位置にあることはセンサで検知可能であり、当該検知に応じてフラットパス記録モードと判断することができる。
【0065】
またリアトレイボタンM7110を押すことによってリアトレイM7090を開き、さらにリアサブトレイM7091をV字に開くことも可能である(図11)。リアトレイM7090およびリアサブトレイM7091は、長い記録媒体を逆送させる際に本体前面から記録媒体が突出する場合に備え、長い記録媒体を本体背面でも支えるためのトレイである。厚い記録媒体は記録中にフラットな姿勢を保たないと搬送負荷が変化することから記録品位に影響を及ぼすおそれがあるので、これらのトレイの配設は有効である。しかし本体背面からはみ出ない程度の長さの記録媒体であれば、必ずしもリアトレイM7090等を開く必要はない。
【0066】
以上のようにフロントカバーM7010を上昇位置に設定することで(さらに必要に応じてリアトレイM7090を開状態にすることで)、記録媒体のフラットパス搬送の準備が完了する。このときフラットパスは図12に示すように略水平となる。
【0067】
図13(a)および(b)は、フラットパス記録において記録媒体の端部を検出するためのセンサ(FPPEセンサ)を作動させるFPPEセンサレバーM3041の詳細を説明するための図である。FPPEセンサレバーM3041は第2の排紙ローラM3110を回転中心として回動可能に構成されている。記録媒体の無い状態では、同図(a)に示すように、FPPEセンサレバーM3041はFPPEセンサレバーばねM3042の作用により図示の位置に付勢されている。これにより、FPPEセンサレバーM3041の遮光板部が透過型光センサの形態を有するFPPEセンサE9001の光軸を透過状態としている。
【0068】
本実施形態では、給紙部からの給紙時およびフラットパス記録時における記録媒体の搬送方向は、図13(b)においてF方向となる。この状態において記録媒体がプラテンM3040方向から搬送されて来ると、その先端部がFPPEセンサレバーM3041を第2の排紙ローラM3110を中心に図中反時計回りに回動させる。この回転により、FPPEセンサレバーM3041の遮蔽板はFPPEセンサE9001の光軸を遮光する位置となり、遮光状態となったFPPEセンサE9001は、そのタイミングで記録媒体の端部を検出する。一方、記録媒体をフラットパス記録のために本体内に再度引き込むための搬送方向は、図13(b)においてB方向となる。この場合も記録媒体の先端部がFPPEセンサレバーM3041を回転させることにより、FPPEセンサE9001によって記録媒体の端部の検出が行われる。
【0069】
このような構成により、記録媒体の先端部あるいは後端部を検知することができる。なお、上述したPEセンサレバーM3021も同様に記録媒体の端部によって回動させられ、PEセンサE0007の遮光/透光状態の検出に応じて、図13(b)に示すF方向およびB方向において記録媒体の先端部あるいは後端部を検知することができる。
【0070】
図14は、フラットパス記録時において搬送にかかわる機構部の概略構成を示す斜視図である。図14(a)は上ケースM7040を取り外した状態の後方からの斜視図であり、図14(b)は図14(a)からさらに給紙部を取り外した状態の斜視図である。
【0071】
図14(a)は、
・排紙トレイM3160、
・フロントカバーM7010、
・プラテンM3040、
・ペーパガイドフラッパM3030、
・フラットパスガイドM3050、
・リアトレイM7090、および
・リアサブトレイM7091
によって、記録媒体の平坦な搬送経路(フラットパス)が形成されている状態を示している。図14(b)において、PGF入力ギアM9210は、ペーパガイドフラッパ回動軸(以下PGF回動軸と称す)M9200によってシャーシM1010に回転可能に軸支されている。
【0072】
さらに、PGF回動軸M9200の片方の端部に位置するPGF入力ギアM9210には、ペーパガイドフラッパM3030の一端を押し下げるためのカム形状M9211が一体に形成されている。また、PGF回動軸M9200の他方の軸端部にも、ペーパガイドフラッパM3030の他方の端部を押し下げるためのペーパガイドフラッパリリースカム(以下PGFリリースカムと称す)M9240が配置されている。これら2つのカム形状は対称形状になっており、同じタイミングでペーパガイドフラッパM3030を押し下げることにより、ペーパガイドフラッパM3030の記録媒体搬送面を概ね水平にし、フラットパスを形成している。
【0073】
PGF入力ギアM9210には不図示の円筒状のリブが更に配設されている。PGF回動軸M9200の回転に伴い、リブが赤外線センサである不図示のペーパーガイドフラッパセンサを開放および遮蔽することにより、PGF回動軸M9200の回転角度が検出できるようになっている。
【0074】
図15(a)および(b)は、ペーパガイドフラッパM3030の回避動作を模式的に示す部分断面図である。図15(a)はペーパガイドフラッパM3030が給紙部からの記録媒体搬送を案内するために上昇した状態を示している。ペーパガイドフラッパM3030は、図示しないばね部材により持ち上げられる方向に付勢されている。そして、上述したとおり、不図示の軸受け部を中心に回転可能になっており、シャーシM1010に当接することで位置決めされている。
【0075】
図15(b)はペーパガイドフラッパM3030が下降した状態を示す部分断面図である。PGF回動軸M9200の両端には、前述したようにPGF入力ギアM9210に形成されたカム形状M9211とPGFリリースカムM9240(図14参照)が対称に形成されており、ペーパガイドフラッパM3030の腕部M3031に当接している。上記2つのカム形状が回転することにより、腕部M3031は矢印M3030a方向に押し下げられ、ペーパガイドフラッパM3030の上昇した側も押し下げられる。これにより、ペーパガイドフラッパM3030の記録媒体搬送面は概ね水平となる。フラットパス記録時には、このような水平状態の下、記録媒体が排紙口側から搬送される。
【0076】
以上説明した機構により、本実施形態のペーパガイドフラッパM3030は、図15(a)に示す給紙部からの給紙時の状態と、図15(b)に示すフラットパス搬送状態と、の2つの状態に変位することができる。かかる変位は、上述したPRモータE3006からの動力の伝達によって行われる。
【0077】
3.2 フラットパス記録制御
図16は、本実施形態の記録装置が行う動作シーケンスを説明するためのフローチャートである。また図17は図14(a)の断面図であり、図18は図16のフローチャートにおける特徴的な動作状態を説明するための断面図である。
【0078】
フラットパス記録モードを行う際、まずステップS1において、現在記録動作中であるか否かの判定を行う。もし、記録中であると判断された場合には、ステップS2に進み、記録中のページのみを記録する。さらに後続する記録データが存在する場合には、ステップS3で当該データをキャンセルする。本実施形態の記録装置では、通常の記録モードでは先端に向けて高さが上がり、排出された記録媒体の積載性を向上するように構成されているフロントカバーM7010を、フラットパス記録時には概ね水平にする。記録中にフロントカバーM7010の姿勢を変更すると記録媒体の搬送に影響を与え記録品位の低下を招いてしまう。よって、本実施形態ではこのような状況を回避するために、記録中である1枚の記録媒体のみ、記録を完了させてこれを排出するようにしている。
【0079】
ステップS1で記録中ではないと判断された場合にはステップS4へ進み、PEセンサE0007およびFPPEセンサE9001双方の出力を確認する。ステップS1で記録中ではないと判断された場合であっても、記録媒体搬送部には前回の記録媒体が残っている恐れがある。よって、本実施形態では、念のために2つのセンサを用いて記録媒体の有無の最終確認を行う。ここでどちらか一方でも用紙有り状態(ON状態)が検出された場合には、ステップS5に進み、記録媒体の排出処理を行う。以上の工程まで終了した時点で、記録媒体搬送経路内には用紙が残っていないことが確実となる。
【0080】
ステップS6では、ホスト装置J0012からの記録制御信号に基いて、指定された印刷品位や記録媒体種類についての確認を行う。指定された記録品位が高品位であったり、記録媒体種類がフォト用紙であったりした場合にはステップS7に進み、その他の場合はステップS29に進む。本実施形態では、ステップS6の判断は記録品位と記録媒体種類とのいずれかが指定の条件に合致している場合にステップS7に進むシーケンスとしているが、両方が条件に合致する場合のみステップS7に進むものとしてもよい。
【0081】
ステップ7からステップ28まではフラットパス記録動作に対応したもの、ステップ29からステップ36は通常の記録動作に対応したものである。
【0082】
ステップ7に進んだ場合は、フラットパス記録のためにフロントカバーM7010の位置をセンサ出力より検知する。さらにステップS8においてリアトレイM7090の開閉状態をセンサ出力より検知する。ステップS7において、フロントカバーM7010がフラットパス位置であること、ステップS8においてリアトレイM7090が開状態であることを確認した後、ステップS9へ進む。
【0083】
ステップS9において、給紙部からの記録媒体の給紙に備え、ペーパガイドフラッパM3030を給紙位置まで回動させる。図18(a)は、ステップS8で給紙位置まで回動した状態のペーパガイドフラッパM3030を示している。本状態において、給紙から搬送部までの記録媒体搬送パスが図中矢印A方向に連結される。
【0084】
続くステップS10において、給紙部に積載された記録媒体を給紙する。ステップS11では、給紙された記録媒体の先端をPEセンサE0007の出力によって検知する。ステップS11で記録媒体の先端を検知できない場合は、給紙部に記録媒体がセットされていなかったことを意味するため、ステップS12へ進み紙無しエラーとして動作を終了する。
【0085】
ステップS11において記録媒体の先端を検知した場合は、記録媒体の搬送力を生み出すための搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのニップ部まで、記録媒体を所定量搬送する。そして、ステップS13において、搬送ローラM3060およびピンチローラM3070(この時点では、これらのローラは回転していない)のニップ部に記録媒体先端を突き当て、記録媒体先端が搬送方向と直交する方向に揃うようにする。これにより、主として給紙部に依存する記録媒体の斜行を補正する動作(「レジ取り動作」と称されることもある)が行われる。従来のフラットパス記録では、ユーザがフラットパスに対して記録媒体をセットする構成であったため、そのような斜行補正動作を行うことができなかった。しかし本実施形態では、給紙部からの給紙を行うことで、そのような斜行補正動作が可能であり、これにより高精度の搬送を実現することができるものとなる。
【0086】
続くステップS14では、記録媒体をその後端部が給紙部から抜ける位置まで搬送する。記録媒体の後端部が給紙部から抜けていればペーパガイドフラッパM3030を回動させることにより、記録媒体をフラットパスに導くことができるが、本実施形態ではステップS15でPEセンサE0007の出力がOFF状態(紙無し状態)となるまで搬送する。これにより、記録媒体後端が給紙部を抜けていないことによるステップS19の記録媒体逆送による記録媒体の給紙部への戻しを防止する。またステップS15でPEセンサE0007がON状態の場合は、給紙途中での紙ジャムが発生したことを意味するのでステップS16に進み、紙ジャムエラーとして動作を終了する。
【0087】
ステップS17では同様にFPPEセンサE9001の出力を判定し、OFF状態(紙無し状態)の場合は搬送ローラM3060とピンチローラM3070のローラ対部で紙ジャムが発生したと判断してステップS18に進み、紙ジャムエラーとして動作を終了する。
【0088】
本実施形態では、記録媒体の搬送長さとして、記録媒体後端がPEセンサE0007がOFF状態になってから記録媒体後端が搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのニップ部に到達しない長さを設定している。これにより、記録媒体が搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対によって挟持されている状態が継続するため、ステップS13で行った斜行補正動作の効果がなくなることは無い。
【0089】
以上のようにステップS15およびS17によって記録媒体が正常に搬送されていることを確認した後、ステップS19でペーパガイドフラッパM3030を回動させ、記録媒体の搬送路を図18(b)に示すようにフラットパスに切り替える。
【0090】
続くステップS20では、給紙部の底面とフラットパスガイドM3050とリアトレイM7090とで構成されるフラットパスまで、記録媒体を図18(b)の矢印Bに示す方向に逆送する。この逆送過程においても、ステップ21およびS23でそれぞれPEセンサE0007およびFPPEセンサE9001の出力を確認する。これにより紙ジャムと判断される場合はそれぞれステップS22およびS24に進み、紙ジャムエラーとして動作を終了する。
【0091】
ステップ20での逆送の搬送量は記録媒体先端がFPPEセンサE9001で検知された後、記録媒体先端が搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのニップ部に到達しない長さを設定している。これにより、記録媒体が搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対によって挟持されている状態が継続するため、ステップS13で行った斜行補正動作の効果がなくなることは無い。
【0092】
ステップS25においては、記録動作に先立って記録媒体M9900の頭出し、すなわち記録開始位置の検出を行う。その後ステップS26およびS27において通常の記録動作ならびに記録後の排紙動作を行う。そして、ステップS28で一連の記録動作を終了させる。ステップS25からステップS28までの記録媒体の搬送方向は、図18(b)の矢印Fに示す方向となる。
【0093】
一方、ステップS6において指定された印刷品位や記録媒体種類についての確認を行い、条件に合致しない場合はステップS29に進み、通常の記録動作を行う。まずステップ29にて、ペーパガイドフラッパM3030を給紙位置まで回動させて給紙から搬送部までの記録媒体搬送パスを連結する。その後、ステップS31でPEセンサによってOFF状態(紙無し状態)を検出した場合は、給紙途中で紙ジャムが発生したことを意味するのでステップS32に進み、紙ジャムエラーとして動作を終了する。ステップS31でON(紙有り状態)を検出した場合はステップS32に進み、前述した斜行補正動作を行う。その後ステップ34からステップ37まではフラットパス記録のステップS25からステップS28と同様の動作を行い、通常の記録動作を終了させる。つまりステップS29からステップS37までの間、ペーパガイドフラッパM3030は図18(a)に示す位置を維持し、回動することは無い。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によれば、給紙部からの給紙でありながらフラットパス記録を行うことができるので、搬送負荷の変動をなくすことによって記録品位の低下を招くことが無い。また、積載された記録媒体の給紙から排出に至るまでの動作を装置本体によって行うので、ユーザ自らがフラットパスに記録媒体をセットする煩雑さや、斜行等が発生する可能性も排除できる。さらには、給紙部からの給紙を行うものであるので、複数枚のフラットパス記録を連続して行うことも可能となる。
【0095】
3.3 フラットパス部の他の実施形態
図19はフラットパス部の他の実施形態を示す記録装置の断面図である。また、図20(a)および(b)は、図19に示す構成におけるフラットパス記録を説明するための主要部の断面図である。
【0096】
上述の実施形態は基本的に、傾斜した給紙トレイに積載された記録媒体が給紙ローラによって給紙され、当該給紙ローラに沿って緩やかに湾曲しながら搬送される構成に適したものであった。これに対して、本実施形態は、装置下部に配置されるカセットに収納された記録媒体が給紙ローラによって給紙され、当該給紙ローラや反転のためのローラ等によって大きくU字状に湾曲させられて搬送方向が反転される構成(Uターンパス)に適したものである。
【0097】
図19において、カセットM8000に積載される不図示の複数枚の記録媒体はピックアップローラM8010によって分離・給紙され、第1UターンローラM8020と第1従動ローラM8021のニップ部にガイドされる。その後UターンインナーガイドM8040とUターンアウターガイドM8050とでガイドされながら、第2UターンローラM8030と第2従動ローラとで挟持・搬送され、給紙位置に回動待機しているペーパガイドフラッパM3030へと搬送される。
【0098】
その後の記録媒体の搬送経路は、図17、図18(a)および(b)で説明したものと同等である。つまり、図20(a)に示すように給紙時はUターンインナーガイドM8040からペーパガイドフラッパM3030へと矢印A’に示すように搬送される。そして、記録媒体後端部がPEセンサレバーM3000を通過し、搬送ローラM3060とピンチローラM3070のニップ部手前まで搬送されると、ペーパガイドフラッパM3030を図20(b)で示す位置まで回動させる。記録媒体は図中矢印B’へと逆送されるが、ペーパガイドフラッパM3030がフラットパス位置にあるため、UターンインナーガイドM8040の下部に配置されるフラットパスガイドM3050上を搬送されることとなる。
【0099】
本実施形態のシーケンスは図16で説明したものと同等であり、ステップS10とステップS30で示す給紙動作の経路が異なるのみである。従って本実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
4. その他
なお、上例においては、フロントカバーM7010の上昇、さらにはリアトレイM7090の開放によってフラットパス記録を可能としているが、前述したように記録媒体の長さが本体内に収まる場合などはこの限りではない。
【0101】
また、給紙部からの搬送経路が緩やかに湾曲する構成に本発明を適用した実施形態と、大きく湾曲するUターンパス構成に本発明を適用した実施形態とについて説明した。しかしこれらの構成の双方を具える記録装置に対しても本発明を適用可能であることは勿論である。
【0102】
また、上述の実施形態では、リアトレイM7090から排紙トレイM3160に至る搬送経路(フラットパス)を平坦かつ水平なものとした。しかし本発明で言う「平坦」とは、必ずしも厳密な意味で平坦であることを必須としない。用いられ得る記録媒体との関連にもよるが、搬送負荷の変動により記録品位の低下が生じないのであれば、ある程度の湾曲や凹凸も許容されるものである。また、「水平」についても同様であり、水平面からの傾斜も許容され得るものである。
【0103】
さらに、上述の実施形態においては、コンピュータ形態のホスト装置J0012で稼動するプリンタドライバに対して設定される記録品位および/または記録媒体の種類に応じてフラットパス記録実施の有無を定めるようにした。しかしユーザがフラットパス記録実行の有無を指定するものであってもよい。また、プリンタドライバに対してではなく、記録装置本体に対しフラットパス記録実行の有無を指定するものとすることもできる。
【0104】
加えて、上述したインクの色調(色や濃度など)の数やインクの種類などもあくまでも例示であることは勿論である。
【0105】
さらに加えて、上記実施形態では、インクを滴として吐出するインクジェット記録ヘッドを用いる記録方法について説明したが、本発明の効果はこのような記録方法に限定されるものではない。ノズルに限らず、複数の記録素子が配列された記録ヘッドが用いられる構成であれば、いかなる記録方法にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、非使用時における前面から見た状態を示している。
【図2】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、非使用時における背面から見た状態を示している。
【図3】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、使用時における前面から見た状態を示している。
【図4】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、右上部からの斜視図である。
【図5】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、左上部からの斜視図である。
【図6】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための側断面図である。
【図7】実施形態で適用したヘッドカートリッジの構成を説明するための斜視図である。
【図8】本発明の実施形態における電気的回路の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図9】図8におけるメイン基板の内部構成例を示すブロック図である。
【図10】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、フラットパス記録時における前面から見た状態を示している。
【図11】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、フラットパス記録時における背面から見た状態を示している。
【図12】実施形態で行われるフラットパス記録を説明するための模式的側断面図である。
【図13】(a)および(b)は、フラットパス記録において記録媒体の端部を検出するためのセンサ(FPPEセンサ)を作動させるFPPEセンサレバーの構成および動作を説明するための図である。
【図14】フラットパス記録時において搬送にかかわる機構部の概略構成を示す斜視図であり、(a)は記録装置本体の上ケースを取り外した状態で示す後方からの斜視図、(b)は(a)からさらに給紙部を取り外した状態で示す斜視図である。
【図15】搬送経路を制御するためのペーパガイドフラッパの動作を模式的に示す部分断面図であり、(a)はペーパガイドフラッパが上昇している状態で示す図、(b)ペーパガイドフラッパが下降している状態で示す図である。
【図16】実施形態の記録装置が行う動作シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【図17】図14(a)の断面図である。
【図18】記録媒体の搬送経路を示す断面図であり、(a)は搬送経路が給紙部からのものに、(b)は搬送経路がフラットパスに切り替えられている状態を示している。
【図19】本発明の他の実施形態に係るフラットパス部を示す断面図である。
【図20】(a)および(b)は、図19に示す構成におけるフラットパス記録を説明するための主要部の断面図である。
【符号の説明】
【0107】
M2041 分離ローラ
M2060 給紙トレイ
M2080 給紙ローラ
M3030 ペーパガイドフラッパ
M3041 FPPEセンサレバー
M3042 FPPEセンサばね
M3050 フラットパスガイド
M3060 搬送ローラ
M3100、M3110 排紙ローラ
M3160 排紙トレイ
M3170 フラットパス紙検知センサ
M7010 フロントカバー
M7090 リアトレイ
M7091 リアサブトレイ
M8000 カセット
M8010 ピックアップローラ
M8020 第1Uターンローラ
M8021 第1従動ローラ
M8030 第2Uターンローラ
M8031 第2従動ローラ
M8040 Uターンインナーガイド
M8050 Uターンアウターガイド
M9200 PGF回動軸
M9210 PGF入力ギア
M9240 PGFリリースカム
E0007 ペーパエンドセンサ
E9001 FPPEセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を複数積載可能であるとともに、前記記録媒体の分離給送が可能な給送部であって、当該給送経路が、記録部による記録位置に関する記録媒体の搬送面に対して湾曲している給送部を具えた記録装置において、
前記搬送面に連続した平坦な搬送経路であって、前記記録位置に向けて前記記録媒体を搬送するための搬送経路と、
前記記録部による記録を行うことなく、前記給送部から前記記録媒体をその後端が前記給送経路から抜ける位置まで搬送させ、当該搬送後に前記記録媒体を前記搬送経路内に逆送させてから、前記記録媒体を前記記録位置に対して搬送することで記録を行わせる制御手段と、
を具えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記給送部は、前記搬送面に対して傾斜する給送経路を形成するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記給送部は、前記搬送面に対してU字状となる前記給送経路を形成するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御手段による記録モードと、前記給送部から前記記録媒体の給送を行わせ、そのまま前記記録部による記録を行わせる記録モードと、を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体の種類および記録の品位の少なくとも一方に応じて、前記記録モードのいずれかを選択するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記搬送経路から前記記録部による記録が行われた記録媒体を保持する部分までの搬送面が水平とされ、前記記録部による記録動作中に前記記録媒体には搬送負荷の変動が生じないようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記給送部から給送される記録媒体が前記搬送面に至るにあたり、前記記録媒体の斜行が補正されることを具えたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−298028(P2009−298028A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155246(P2008−155246)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】