説明

記録装置

【課題】大型化することなく、被記録媒体のカールによる排出ジャムを考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置(1)は、記録ヘッド13と、媒体支持部15と、前記記録ヘッド13より被記録媒体(P)の送り方向下流側に設けられた案内部材(18)と、該案内部材(18)の位置を変える変位手段20と、を備え、前記案内部材(18)の位置は、前記記録ヘッド13と前記媒体支持部15とが対向する方向Zにおいて、前記媒体支持部15に対して接近した第1位置と、該第1位置より前記媒体支持部15に対して離間した位置である第2位置と、を切り換え可能な構成であり、前記第1位置の前記案内部材(18)を、被記録媒体(P)の送り方向下流端である先端が前記案内部材(18)にかかる位置に到達した際、前記第2位置へ移動させてから前記第1位置へ移動させる構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に対して記録をする記録ヘッドと、該記録ヘッドと対向する位置に設けられ、被記録媒体を支持する媒体支持部と、前記記録ヘッドより被記録媒体の送り方向下流側、かつ、被記録媒体が送られる送り経路を基準として前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向における前記記録ヘッド側に設けられ、被記録媒体における送り方向下流側である先端側を送り方向下流側へ案内する案内部材と、を備えた記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、プリンターは、エアーを吸引することにより、被記録媒体の浮き上がりを防止することができるように構成されていた。また、エアーを吸引しない場合は、用紙を送る際、記録ヘッドを有するキャリッジを用紙押さえ部材として使用していた。
また、特許文献2に示す如く、プリンターは、用紙の浮きを検知する検知装置を備えていた。そして、用紙の浮きを検知すると、記録ヘッドより送り方向上流側の搬送ローラーおよびニップローラーから構成されるローラー対において、前記ニップローラーを前記搬送ローラーから離間させるように設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−160551号公報
【特許文献2】特開2006−231557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す構成では、エアーを吸引する場合、吸引ファンが必要となり、プリンター全体として大型化する虞がある。また、コストが高くなる虞がある。一方、エアーを吸引しない場合、前記キャリッジで用紙全体を押さえることができない。そのため、用紙の浮き上がりが大きいとき、押さえられていない部分で浮き上がりに起因したジャムが生じる虞がある。
また、特許文献2に示す構成では、前記検知装置および前記ニップローラーを離間させる手段が必要であり、プリンター全体として大型化する虞がある。また、コストが高くなる虞がある。またさらに、用紙のカールがジャムの原因である場合は、前記ニップローラーの押し付けを解除しても用紙の浮き上がりを防止することができなく、ジャムが生じる虞がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、大型化することなく、被記録媒体のカールによる排出ジャムを考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、被記録媒体に対して記録をする記録ヘッドと、該記録ヘッドと対向する位置に設けられ、被記録媒体を支持する媒体支持部と、前記記録ヘッドより被記録媒体の送り方向下流側、かつ、被記録媒体が送られる送り経路を基準として前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向における前記記録ヘッド側に設けられ、被記録媒体における送り方向下流側である先端側を送り方向下流側へ案内する案内部材と、該案内部材の位置を変える変位手段と、を備え、前記案内部材の位置は、前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向において、前記媒体支持部に対して接近した第1位置と、該第1位置より前記媒体支持部に対して離間した位置である第2位置と、を切り換え可能な構成であり、前記第1位置の前記案内部材を、被記録媒体の送り方向下流端である先端が前記案内部材にかかる位置に到達した際、前記第2位置へ移動させてから前記第1位置へ移動させる構成であることを特徴とする。
【0007】
ここで、「被記録媒体の送り方向下流端である先端が前記案内部材にかかる位置」とは、被記録媒体の先端が前記案内部材に引っ掛からなかったとしたとき、前記先端と前記案内部材とが僅かにオーバーラップする関係となる送り方向における被記録媒体の位置をいう。被記録媒体の先端が前記案内部材に引っ掛かったときは、該先端側がさらに撓むため、該先端と前記案内部材とはオーバーラップしないが、引っ掛からなかったものとして被記録媒体の位置を判断する。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、被記録媒体の先端が前記案内部材に引っ掛かっていた場合、被記録媒体の先端を前記案内部材の下方に導くことができる。言い換えると、前記案内部材の位置を、前記第1位置から前記第2位置へ退避させるように移動させることにより、引っ掛かりを解除する。そして、前記第2位置から前記第1位置へ移動させる。これにより、前記対向する方向の前記記録ヘッド側に浮き上がった被記録媒体の先端を前記媒体支持部側へ押さえ付けるようにして、被記録媒体の先端を案内することができる。その結果、記録装置を大型化することなく、被記録媒体の先端が前記案内部材に引っ掛かることによる排出ジャムを防止することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の記録装置は、被記録媒体に対して記録をする記録ヘッドと、該記録ヘッドと対向する位置に設けられ、被記録媒体を支持する媒体支持部と、前記記録ヘッドより被記録媒体の送り方向下流側、かつ、被記録媒体が送られる送り経路を基準として前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向における前記記録ヘッド側に設けられ、被記録媒体における送り方向下流側である先端側を送り方向下流側へ案内する案内部材と、該案内部材の位置を変える変位手段と、を備え、前記案内部材の位置は、前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向において、前記媒体支持部に対して接近した第1位置と、該第1位置より前記媒体支持部に対して離間した位置である第2位置と、を切り換え可能な構成であり、前記第2位置の前記案内部材を、被記録媒体の送り方向下流端である先端が前記案内部材にかかる位置に到達した際、前記第1位置へ移動させる構成であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、被記録媒体の先端がカールしていた場合、被記録媒体の先端を前記案内部材の下方に導くことができる。言い換えると、前記対向する方向の前記記録ヘッド側に浮き上がった被記録媒体の先端を前記媒体支持部側へ押さえ付けるようにして、被記録媒体の先端を案内することができる。その結果、被記録媒体の先端が前記案内部材に引っ掛かることによる排出ジャムを防止することができる。
尚、上記第1の態様と比較して、前記案内部材の移動量が少ない。これにより、前記案内部材の移動時間を短くすることができる。従って、その分、被記録媒体一枚当たりの給送開始から記録して排出するまでの所要時間を短くすることができる。所謂、スループットを短くすることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、被記録媒体の種類またはサイズに応じて、被記録媒体の先端が前記案内部材にかかる位置に到達した際、前記案内部材を移動させる構成であることを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、被記録媒体にカールが生じない場合は実行しないようにすることができる。即ち、被記録媒体の先端が前記案内部材に引っ掛かる虞がない場合は、前記案内部材の位置の切り換えを実行しないようにすることができる。係る場合、スループットを短いままにすることができる。言い換えると、前記案内部材を移動させることによる時間のロスによりスループットが長くなる虞がない。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記案内部材の上流側において、送り方向に対して傾斜した傾斜部が形成されており、該傾斜部の傾斜は、下流側に進むに従って前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向において前記媒体支持部側となることを特徴とする。
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記第1位置のとき、被記録媒体の先端が前記案内部材に引っ掛かりにくくすることができる。即ち、被記録媒体の先端をスムーズに案内しやすくなる。
また、前記案内部材を移動させる場合において、移動させた際に被記録媒体の先端を前記案内部材の下方へ案内しやすくなる。これにより、前記第2位置を前記第1位置から近い位置にすることができる。移動量を少なくすることができるので、スループットを考慮する場合に有効である。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、被記録媒体が送られる送り経路上における前記案内部材より送り方向上流側の箇所は、側視湾曲している構成であることを特徴とする。
本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、送り経路が側視湾曲している場合は、被記録媒体がカールしやすい傾向にある。従って、係る場合に、被記録媒体の送り方向下流端である先端が前記案内部材にかかる位置に到達した際、前記案内部材を移動させる構成は、特に有効である。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、被記録媒体の表裏を反転させる反転手段をさらに備えており、被記録媒体の一の面である表面に対して記録をした後、被記録媒体を前記記録ヘッドより送り方向上流側へ移動させる際に被記録媒体の表裏を反転させ、被記録媒体を送り方向下流側へ送り、被記録媒体の表面と反対の面である裏面に対して記録をする構成であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、例えば、前記記録装置がインクジェットプリンターであり、被記録媒体が用紙である場合、裏面に対して記録をする際に表面に吐出されたインクにより表面が膨潤している。これにより表面が延びて外側となるようにカールする傾向にある。
また、前記記録装置がレーザープリンターであり、被記録媒体が用紙である場合、トナーを用紙に付着させ、熱と圧力をかけることにより表面が縮んで内側となるようにカールする傾向にある。これらの場合に、被記録媒体の送り方向下流端である先端が前記案内部材にかかる位置に到達した際、前記案内部材を移動させる構成は、特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るプリンターの概略を示す側面図。
【図2】本発明に係る排出フレームを示す側面図(第1位置)。
【図3】本発明に係る排出フレームを示す側面図(第2位置)。
【図4】本発明に係る排出フレームを示す側面図(第1位置)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明に係る記録装置の一例であるプリンターの概略を示す側面図である。
図1に示す如く、本発明に係るプリンター1は、媒体送り手段2と、送り経路R1と、記録部11と、排出部16と、を備えている。
【0018】
このうち、媒体送り手段2は、被送り媒体の一例である用紙Pを送り方向Yに送ることができるように設けられている。また、送り経路R1は、媒体送り手段等によって送られる用紙Pを案内する媒体案内部によって構成されており、用紙Pが送られる経路を示す。送り経路上の記録部11より送り方向上流側の区間Aは、側視湾曲している。
また、記録部11は、媒体送り手段2によって送られた用紙Pに対して記録を実行することができるように構成されている。またさらに、排出部16は、記録された用紙Pを排出し、排出トレイ上(図示せず)に載置することができるように設けられている。
【0019】
具体的に、媒体送り手段2は、載置部6と、ピックアップローラー3と、アーム部4と、分離手段7と、第1ローラー対9と、第2ローラー対10と、を備えている。このうち、載置部6は、用紙Pが載置されるように設けられている。また、ピックアップローラー3は、モーターの動力によって駆動することができ、載置部6に積層された用紙Pのうち、積層方向最上位に用紙Pと接触することができるように設けられている。
【0020】
またさらに、アーム部4は、送り方向上流側である一端側の揺動軸5を中心に揺動可能に設けられている。そして、送り方向下流側である他端側にピックアップローラー3を回動可能に保持するように構成されている。
また、分離手段7は、載置部6における用紙Pがセットされる箇所より送り方向下流側に設けられている。具体的には、ピックアップローラー3によって送られる用紙Pの側視した姿勢に対して傾斜した傾斜面8と有している。そして、用紙Pが重送された場合、ピックアップローラー3に対して最上位の用紙Pと次位以降の用紙Pとを分離することができるように設けられている。所謂、土手分離機構である。
ここで、「土手分離機構」とは、所定の角度で用紙Pが進入するように面を設け用紙Pの先端に負荷を与えることにより分離する機構をいう。
【0021】
またさらに、第1ローラー対9および第2ローラー対10は、分離手段7を通過した用紙Pを記録部11へ送ることができるように設けられている。このうち、第1ローラー対9は、第1駆動ローラー9aと、第1従動ローラー9bとを有している。
尚、第1従動ローラー9bに代えて回動に所定の負荷を伴う所謂、リタードローラーでもよい。係る場合、土手分離機構での分離が十分でない場合に、重送された用紙Pを確実に分離することができる。即ち、第1駆動ローラー9aと直接的に接触する用紙を、該用紙よりリタードローラー側の用紙から分離することができる。
【0022】
また、第2ローラー対10は、送り経路R1において第1ローラー対9より下流側に設けられている。具体的には、第2ローラー対10は、第2駆動ローラー10aと第2従動ローラー10bとを有している。そして、例えば、ステッピングモーターによって精度よく用紙Pを記録部11へ送ることができるように設けられている。
尚、用紙Pの先端が第2ローラー対10に到達した際、送り方向Yに対する用紙Pの姿勢を正す所謂、スキュー取りが実行されるように構成されているのは言うまでもない。
【0023】
また、記録部11は、キャリッジ12と、記録ヘッド13と、媒体支持部15と、を備えている。このうち、キャリッジ12は、用紙Pの幅方向Xへ延設されたガイド軸(図示せず)に案内されながら移動手段(図示せず)の動力によって幅方向Xへ移動するように構成されている。また、記録ヘッド13は、キャリッジ12に設けられており、ノズル列14からインクを用紙Pに対して吐出することができるように設けられている。所謂、インクジェット式の記録である。
【0024】
またさらに、媒体支持部15は、記録ヘッド13と対向する位置に設けられ、用紙Pを支持し、用紙Pと記録ヘッド13との間の距離を所定の間隔にすることができるように構成されている。
尚、Z軸方向は、記録ヘッド13と、媒体支持部15とが対向する方向である。
また、本実施形態では、インクを吐出するインクジェット式の記録部11を採用したが他の構成でもよい。例えば、トナーを用紙Pに付着させ、熱と圧力をかけて用紙Pに記録する所謂、レーザープリンターの構成でもよい。
【0025】
また、排出部16は、第3ローラー対17と、上側の案内部材としての排出フレーム18と、下側案内部材23と、図示しない排出トレイと、を備えている。第3ローラー対17は、送り経路R1において記録部11より下流側に設けられている。そして、記録された用紙Pは、下側案内部材23に案内されながら、第3ローラー対17によって排出トレイへ送られるように設けられている。具体的には、第3ローラー対17は、第3駆動ローラー17aと第3従動ローラー17bとを有している。このうち、第3駆動ローラー17aは第2駆動ローラー10aと同様に駆動するように設けられている。一方、第3従動ローラー17bは、用紙Pとの接触面積を小さくするべく、外周が凹凸状に形成されている。また、第3従動ローラー17bは、回動自在に排出フレーム18に保持されている。
【0026】
また、プリンター1は、用紙Pの表裏を反転させる反転手段21を備えている。用紙Pの一の面を表面とし、反対の面を裏面とした場合、反転手段21は、表面に対して記録がされた用紙Pの表裏を反転するように構成されている。具体的には、反転手段21は、反転経路R2と、第4ローラー対22とを有している。このうち、反転経路R2の両端は、送り経路R1と繋がっており、反転経路R2と送り経路R1とによってループを構成する。また、第4ローラー対22は、反転経路上において用紙Pを一の方向へ送ることができるように設けられている。
【0027】
そして、反転経路R2の一端側から記録された用紙Pの表面記録時の後端が進入し、他端側から該後端を排出する。これにより、表裏が反転すると共に、表面の記録時の後端が、裏面の記録時の先端となる。そして、第2ローラー対10によって記録部11へ送られ、記録部11が裏面に対して記録をすることができるように構成されている。
尚、本実施例において、反転経路R2の両端を、記録ヘッド13より上流側において送り経路R1と繋がるように構成したがこれに限られない。一方を、記録ヘッド13より下流側において送り経路R1と繋がるように構成してもよいのは勿論である。
続いて、本発明の要部である排出フレーム18についてさらに詳しく説明する。
【0028】
図2〜図4に示すのは、用紙の送り方向下流端である先端が排出フレームにかかる位置に到達した際の排出フレームの位置を示す側面図である。このうち、図2および図4は第1位置である。一方、図3は第2位置である。
ここで、「第1位置」とは、記録ヘッドと媒体支持部とが対向する方向における排出フレームが移動可能な範囲において、媒体支持部に接近した位置をいう。一方、「第2位置」とは、前記対向する方向における第1位置より媒体支持部に対して離間した位置をいう。
【0029】
図2〜図4に示す如く、排出部16は、排出フレーム18の位置を変化させることができる変位手段20を有している。具体的には、変位手段20は、排出フレーム18を前記対向する方向Zへ移動させることができるように設けられている。そして、第1位置と第2位置とを切り換えることができるように構成されている。
尚、変位手段20として、例えば、ラックアンドピニオン、カム機構、電磁的構成のアクチュエーター、等を用いることができる。
【0030】
また、排出フレーム18における送り方向上流側には、送り方向Yに対して傾斜した傾斜部19が形成されている。傾斜部19は、下流側へいくに従って前記対向する方向Zにおいて媒体支持部15に接近するように傾いている。これにより、用紙Pの先端を送り方向下流側へ案内しやすくすることができる。
続いて、排出フレーム18の動作についてより詳しく説明する。
【0031】
図2に示す如く、用紙Pが記録部11に送られる。このとき、排出フレーム18の位置は第1位置である。
ここで、プリンター1は、第2ローラー対10より上流側に設けられた第1用紙検出器(図示せず)および記録ヘッド13における上流側に設けられた第2用紙検出器(図示せず)の少なくとも一方によって用紙Pの先端を検出することができるように構成されている。そして、先端を検出してからの第2ローラー対10による送り量に基づいて用紙Pの先端の現在位置を判断することができるように構成されている。
【0032】
用紙Pの先端側に対して記録が実行されると共に、用紙Pは、徐々に送り方向下流側へ送られる。
ここで、用紙Pの先端側がカールしていなかった場合、鎖線で示す如く、用紙Pの先端側は、媒体支持部15に案内されながら、第3ローラー対17のニップ点へ送られる。
一方、用紙Pの先端側がカールしていた場合、実線で示す如く、用紙Pの先端は、排出フレーム18の上流側と当接する。この際、排出フレーム18の傾斜部19によって、用紙Pの先端を第3ローラー対17のニップ点に案内しやすくすることができる。
【0033】
ところが、何らかの原因によって用紙Pの先端側のカールが大きい場合、用紙Pの先端が媒体支持部15から大きく浮き上がり、用紙Pの先端が傾斜部19より上方に位置するときがある。係る場合、用紙Pの先端が排出フレーム18に引っ掛かることにより、排出ジャムが生じる虞がある。
そこで、図2に示す、用紙Pの先端が排出フレーム18にかかる位置となったとき、図3に示す如く、変位手段20によって排出フレーム18の位置を第1位置から第2位置へ切り換える。
ここで、「用紙の先端が排出フレームにかかる位置」とは、用紙Pの先端が排出フレーム18に引っ掛からなかったとしたとき、前記先端と排出フレーム18とが僅かにオーバーラップする関係となる送り方向Yにおける用紙Pの位置をいう。
【0034】
図3に示す如く、排出フレーム18の位置を第2位置に切り換えることにより、カールした用紙Pの先端を、排出フレーム18の下方に入り込ませることができる。言い換えると、用紙Pの先端を、Z軸方向において排出フレーム18より媒体支持部側に案内することができる。従って、用紙Pの先端が排出フレーム18に引っ掛かった状態を解除することができる。
尚、第1位置から第2位置までの距離が長い程、第1位置から第2位置へ切り換えた際、より確実に用紙Pの先端を排出フレーム18の下方へ入り込ませることができる。
【0035】
その後、図4に示す如く、排出フレーム18の位置を第1位置に切り換えることにより、カールした用紙Pの先端を、下方へ押さえ付けることができる。そして、押さえ付けながら、用紙Pの先端を、下方へ移動させることができる。この状態で、記録を再開すると共に、用紙Pを送り方向下流側へ送る。その結果、用紙Pの先端側が大きくカールしていた場合であっても、用紙Pの先端を、第3ローラー対17のニップ点へ案内することができる。
【0036】
以上、説明したように、用紙Pの先端側が大きくカールしていた場合であっても、用紙Pの先端が排出フレーム18に引っ掛かることによる排出ジャムを防止することができる。
尚、「用紙の先端が排出フレームにかかる位置」となったとき、排出フレーム18の位置を切り換えるか否かは、用紙Pの種類、サイズ、向きに応じて決定するように構成することが望ましい。用紙Pの先端側が殆どカールしない場合は、排出フレーム18の位置の切り換えを行わないことにより、スループットが低下することを防止することができるからである。
【0037】
例えば、用紙Pが厚紙である場合、薄紙と比較して剛性が高いのでカールしにくい傾向にある。係る場合、排出フレーム18の位置の切り換えを行わない。一方、用紙Pが薄紙である場合、カールしやすい傾向にあるので、排出フレーム18の位置の切り換えを行う。
また、例えば、用紙Pの厚みに拘わらず、比較的コシが強い用紙である場合、コシが弱い用紙と比較してカールしにくい傾向にある。係る場合、排出フレーム18の位置の切り換えを行わない。一方、比較的コシが弱い用紙である場合、カールしやすい傾向にあるので、排出フレーム18の位置の切り換えを行う。
【0038】
またさらに、例えば、比較的大きいサイズの用紙Pである場合、カールによって媒体支持部15から浮き上がる量も大きくなる傾向にある。係る場合、排出フレーム18の位置の切り換えを行う。
一方、比較的小さいサイズの用紙である場合、カールしたとしても浮き上がる量は小さいので、排出フレーム18の位置の切り換えを行わない。
【0039】
また、例えば、用紙の長辺が送り方向Yと同じ向きである場合、用紙の短辺が送り方向Yと同じ向きである場合と比較して、用紙Pの先端が上方にカールしにくい傾向にある。これは、通常、紙の繊維方向が長辺の方向と同じ方向になるように構成されており、紙は繊維方向にカールしにくく、繊維方向と直交する方向にカールしやすい傾向にあるからである。従って、係る場合、排出フレーム18の位置の切り換えを行わない。一方、用紙の短辺が送り方向Yと同じ向きである場合、用紙Pの先端が上方にカールしやすい傾向にあるので、排出フレーム18の位置の切り換えを行う。
尚、用紙の長辺が送り方向Yと同じ向きである場合であっても、用紙Pの両側側端が上方へカールしやすい傾向にあるので、排出フレーム18の位置の切り換えを行ってもよいのは勿論である。
【0040】
また、用紙Pの送り経路R1における排出フレーム18より上流側において、送り経路R1が側視湾曲した箇所(区間A)を含んでいるため、排出フレーム18の位置の切り換えを行う構成として説明したがこれに限られない。用紙Pの送り経路R1における排出フレーム18より上流側において、送り経路R1が側視湾曲した箇所(区間A)を含むか否かで、排出フレーム18の位置を切り換えるか否かを決定するように構成してもよい。用紙Pが側視湾曲した箇所(区間A)を通過することにより、用紙Pの先端側がカールする傾向にあるからである。従って、送り経路R1が側視湾曲した箇所(区間A)を含む場合、排出フレーム18の位置の切り換えを行う。一方、送り経路R1が側視湾曲した箇所(区間A)を含まない場合、排出フレーム18の位置の切り換えを行わない。
【0041】
またさらに、両面記録モードであるか片面記録モードであるかによって、排出フレーム18の位置を切り換えるか否かを決定するように構成してもよい。両面記録モードにおいて、裏面に対して記録を実行する際、用紙Pが既にカールしている傾向にあるからである。インクジェットプリンターである場合、用紙Pの表面に吐出されたインクにより表面が膨潤する。そして、表面が外側となり、裏面が内側となるようにカールする傾向がある。一方、レーザープリンターである場合、トナーを用紙Pの表面に付着させ、熱と圧力をかけることにより表面が縮んで内側となり、裏面が外側となるようにカールする傾向にある。従って、両面記録モードにおいて裏面に対して記録を実行する際、排出フレーム18の位置の切り換えを行うように構成することが望ましい。
【0042】
また、両面記録モードにおいて、裏面に対して記録を実行する前の段階で、用紙Pがループの少なくとも一部を構成する反転経路R2を通過するので、用紙Pがカールする傾向にある。反転経路R2によるカールの向きと、インクの膨潤によるカールの向きまたは前記熱による縮みによるカールの向きとが同じ向きである場合、必ず排出フレーム18の位置の切り換えを行うように構成する。一方、カールの向きが異なる場合、用紙Pのカールが除去される傾向にあるため、必ずしも、排出フレーム18の位置の切り換えを行うことを要しないが、行うように構成することが望ましい。用紙Pの先端が排出フレーム18に引っ掛かることによる排出ジャムを確実に防止するためである。
【0043】
尚、本実施例において、排出フレーム18に傾斜部19を形成したが、傾斜部19がない構成でもよいのは勿論である。傾斜部19がない構成であっても、排出フレーム18の位置を切り換えることにより、用紙Pの先端が排出フレーム18に引っ掛かることによる排出ジャムを防止することができるからである。傾斜部がない構成である場合、第1位置から第2位置までの距離を長くすることにより、引っ掛かることによる排出ジャムを低減することができる。
【0044】
本実施形態の記録装置としてのプリンター1は、被記録媒体の一例である用紙Pに対して記録をする記録ヘッド13と、記録ヘッド13と対向する位置に設けられ、用紙Pを支持する媒体支持部15と、記録ヘッド13より用紙Pの送り方向下流側、かつ、用紙Pが送られる送り経路R1を基準として記録ヘッド13と媒体支持部15とが対向する方向Zにおける記録ヘッド側に設けられ、用紙Pにおける送り方向下流側である先端側を送り方向下流側へ案内する案内部材である排出フレーム18と、排出フレーム18の位置を変える変位手段20と、を備え、排出フレーム18の位置は、記録ヘッド13と媒体支持部15とが対向する方向Zにおいて、媒体支持部15に対して接近した第1位置と、該第1位置より媒体支持部15に対して離間した位置である第2位置と、を切り換え可能な構成であり、前記第1位置の排出フレーム18を、用紙Pの送り方向下流端である先端が排出フレーム18にかかる位置に到達した際、前記第2位置へ移動させてから前記第1位置へ移動させる構成であることを特徴とする。
【0045】
また、本実施形態において、用紙Pの種類またはサイズに応じて、用紙Pの先端が排出フレーム18にかかる位置に到達した際、排出フレーム18を移動させる構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、排出フレーム18の上流側において、送り方向Yに対して傾斜した傾斜部19が形成されており、傾斜部19の傾斜は、下流側に進むに従って記録ヘッド13と媒体支持部15とが対向する方向Zにおいて媒体支持部側となることを特徴とする。
【0046】
また、本実施形態において、用紙Pが送られる送り経路上における排出フレーム18より送り方向上流側の区間Aは、側視湾曲している構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、用紙Pの表裏を反転させる反転手段21をさらに備えており、用紙Pの一の面である表面に対して記録をした後、用紙Pを記録ヘッド13より送り方向上流側へ移動させる際に用紙Pの表裏を反転させ、用紙Pを送り方向下流側へ送り、用紙Pの表面と反対の面である裏面に対して記録をする構成であることを特徴とする。
[他の実施形態]
【0047】
他の実施形態では、前述した実施形態と同様、プリンター1は、「用紙の先端が排出フレームにかかる位置」となったとき、排出フレーム18の位置を切り換えるように構成されている。以下、異なる点について説明する。
尚、各部材については、前述した実施形態と同様であるので、同じ符号を用いるものとする。
【0048】
他の実施形態では、「用紙の先端が排出フレームにかかる位置」となる前に排出フレーム18の位置を予め第2位置に切り換えておく。
ここで、第2位置に切り換えるタイミングは、用紙Pに対して記録を開始する前でもよいし、開始した後でもよい。尚、当該用紙Pよりも先行する用紙を第3ローラー対17によって排出している場合は、先行する用紙の後端が第3ローラー対17を通過した後であることは言うまでもない。
【0049】
そして、「用紙の先端が排出フレームにかかる位置」となったとき、排出フレーム18の位置を第2位置から第1位置へ切り換えるように構成されている。これにより、前述した実施形態と同様、用紙Pの先端側が大きくカールしていた場合であっても、用紙Pの先端が排出フレーム18に引っ掛かることによる排出ジャムを防止することができる。
さらに、前述した実施形態と比較して、「用紙の先端が排出フレームにかかる位置」となったときに排出フレーム18を移動させる距離(移動量)を短く(小さく)することができる。従って、その分、排出フレーム18を移動させる時間を短くすることができる。この間、用紙Pの送りを停止させているが、停止させている時間を短くすることができる。その結果、前述した実施形態と比較して、スループットを短くすることができる。
【0050】
他の実施形態のプリンター1は、用紙Pに対して記録をする記録ヘッド13と、記録ヘッド13と対向する位置に設けられ、用紙Pを支持する媒体支持部15と、記録ヘッド13より用紙Pの送り方向下流側、かつ、用紙Pが送られる送り経路R1を基準として記録ヘッド13と媒体支持部15とが対向する方向Zにおける記録ヘッド側に設けられ、用紙Pにおける送り方向下流側である先端側を送り方向下流側へ案内する排出フレーム18と、排出フレーム18の位置を変える変位手段20と、を備え、排出フレーム18の位置は、記録ヘッド13と媒体支持部15とが対向する方向Zにおいて、媒体支持部15に対して接近した第1位置と、該第1位置より媒体支持部15に対して離間した位置である第2位置と、を切り換え可能な構成であり、前記第2位置の排出フレーム18を、用紙Pの送り方向下流端である先端が排出フレーム18にかかる位置に到達した際、前記第1位置へ移動させる構成であることを特徴とする。
【0051】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 プリンター、2 媒体送り手段、3 ピックアップローラー、4 アーム部、
5 揺動軸、6 載置部、7 分離手段、8 傾斜面、9 第1ローラー対、
9a 第1駆動ローラー、9b 第1従動ローラー(リタードローラー)、
10 第2ローラー対、10a 第2駆動ローラー、10b 第2従動ローラー、
11 記録部、12 キャリッジ、13 記録ヘッド、14 ノズル列、
15 媒体支持部、16 排出部、17 第3ローラー対、17a 第3駆動ローラー、
17b 第3従動ローラー、18 排出フレーム(案内部材)、19 傾斜部、
20 変位手段、21 反転手段、22 第4ローラー対、23 下側案内部材、
A 送り経路の側視湾曲した区間、R1 送り経路、R2 反転経路、P 用紙、
X 幅方向、Y 送り方向、Z 記録ヘッドと媒体支持部とが対向する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対して記録をする記録ヘッドと、
該記録ヘッドと対向する位置に設けられ、被記録媒体を支持する媒体支持部と、
前記記録ヘッドより被記録媒体の送り方向下流側、かつ、被記録媒体が送られる送り経路を基準として前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向における前記記録ヘッド側に設けられ、被記録媒体における送り方向下流側である先端側を送り方向下流側へ案内する案内部材と、
該案内部材の位置を変える変位手段と、を備え、
前記案内部材の位置は、前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向において、前記媒体支持部に対して接近した第1位置と、該第1位置より前記媒体支持部に対して離間した位置である第2位置と、を切り換え可能な構成であり、
前記第1位置の前記案内部材を、被記録媒体の送り方向下流端である先端が前記案内部材にかかる位置に到達した際、前記第2位置へ移動させてから前記第1位置へ移動させる構成である記録装置。
【請求項2】
被記録媒体に対して記録をする記録ヘッドと、
該記録ヘッドと対向する位置に設けられ、被記録媒体を支持する媒体支持部と、
前記記録ヘッドより被記録媒体の送り方向下流側、かつ、被記録媒体が送られる送り経路を基準として前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向における前記記録ヘッド側に設けられ、被記録媒体における送り方向下流側である先端側を送り方向下流側へ案内する案内部材と、
該案内部材の位置を変える変位手段と、を備え、
前記案内部材の位置は、前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向において、前記媒体支持部に対して接近した第1位置と、該第1位置より前記媒体支持部に対して離間した位置である第2位置と、を切り換え可能な構成であり、
前記第2位置の前記案内部材を、被記録媒体の送り方向下流端である先端が前記案内部材にかかる位置に到達した際、前記第1位置へ移動させる構成である記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、被記録媒体の種類またはサイズに応じて、被記録媒体の先端が前記案内部材にかかる位置に到達した際、前記案内部材を移動させる構成である記録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記案内部材の上流側において、送り方向に対して傾斜した傾斜部が形成されており、
該傾斜部の傾斜は、下流側に進むに従って前記記録ヘッドと前記媒体支持部とが対向する方向において前記媒体支持部側となる記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、被記録媒体が送られる送り経路上における前記案内部材より送り方向上流側の箇所は、側視湾曲している構成である記録装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置において、被記録媒体の表裏を反転させる反転手段をさらに備えており、
被記録媒体の一の面である表面に対して記録をした後、被記録媒体を前記記録ヘッドより送り方向上流側へ移動させる際に被記録媒体の表裏を反転させ、
被記録媒体を送り方向下流側へ送り、被記録媒体の表面と反対の面である裏面に対して記録をする構成である記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256010(P2011−256010A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131875(P2010−131875)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】