説明

記録装置

【課題】非定型の被記録媒体であっても良好に搬送することができ、且つ裏面を汚すこと無くフチ無し記録を行うことができる記録装置を提供する
【解決手段】形状が非定型の被記録媒体Pを搬送する搬送部11と、搬送部11により記録領域Aに搬送された被記録媒体Pに対して液体を噴射して記録する記録ヘッド10と、を備えた印刷装置100に関する。搬送部11は、被記録媒体Pを保持するとともに記録ヘッド10から噴射された際に被記録媒体Pの縁から外れた液体を吸収する保持部材21と、被記録媒体Pの搬送方向の上流側及び下流側に配置され、保持部材21が巻き掛けられた一対の回転ローラー部22,23とを有する。そして、回転ローラー部22,23を回転させることで保持部材21とともに被記録媒体Pを記録領域Aへと搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば用紙などの媒体を搬送する記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式記録装置は、被記録媒体である記録用紙に対してインク滴を吐出する記録ヘッドと、記録用紙を支持して記録ヘッドに対する記録用紙の位置を規定するプラテンと、を備えている。このようなインクジェット式記録装置として、記録用紙に余白無く記録を行う、所謂縁無し記録を実現可能なものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では上記被記録媒体の形状が非定型である場合、被記録媒体の外縁からインクが外れてしまい、被記録媒体を保持するプラテンにインクが付着するおそれがある。すると、他の被記録媒体の裏面を汚してしまうおそれがある。また、被記録媒体の形状が非定型であると、記録ヘッドの下方に安定して搬送することが難しいといった問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、非定型の被記録媒体であっても良好に搬送することができ、且つ裏面を汚すこと無くフチ無し記録を行うことができる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の記録装置は、形状が非定型の被記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により記録領域に搬送された前記被記録媒体に対して液体を噴射して記録する記録ヘッドと、を備えた印刷装置において、前記搬送部は、前記被記録媒体を保持するとともに前記記録ヘッドから噴射された際に前記被記録媒体の縁から外れた前記液体を吸収する保持部材と、前記被記録媒体の搬送方向の上流側及び下流側に配置され、前記保持部材が巻き掛けられた一対の回転ローラー部とを有し、前記回転ローラー部を回転させることで前記保持部材とともに前記被記録媒体を前記記録領域へと搬送することを特徴とする。
【0007】
本発明の記録装置によれば、非定型の被記録媒体のように外縁が種々の形状であっても被記録媒体を保持する保持部材が被記録媒体の縁から外れた液体を吸収することができる。よって、保持部材に載置される他の被記録媒体の裏面が液体で汚れてしまうといった不具合の発生を防止できる。また、保持部材が例えば吸着或いは粘着により被記録媒体を良好に保持するため、被記録媒体の形状が非定型であっても良好に記録領域に搬送することができ、且つ裏面を汚すこと無くフチ無し記録を行うことができる。
【0008】
本発明の記録装置においては、前記搬送部は、前記記録領域を通過した前記保持部材を巻き取る巻取り部を有するのが好ましい。
この構成によれば、記録領域を通過することで被記録媒体の縁から外れた液体を吸収した保持部材を確実に回収することができる。よって、常に新しい保持部材によって被記録媒体が保持されることとなるので、被記録媒体の裏面が液体で汚されるといった不具合の発生を防止できる。
【0009】
本発明の記録装置においては、前記搬送部は前記保持部材を介して前記被記録媒体を吸着保持する吸着部を有し、前記保持部材が多孔質部材から構成されるのが好ましい。
この構成によれば、保持部材が多孔質部材から構成されるので、吸着部による吸引力が保持部材を良好に通過することで被記録媒体の裏面を吸引することができる。よって、被記録媒体を保持部材に良好に吸着保持することができる。従って、非定型の被記録媒体であっても良好に記録領域に搬送することができる。
【0010】
本発明の記録装置においては、前記保持部材は、前記被記録媒体の保持面に粘着層が設けられるのが好ましい。
この構成によれば、粘着層の粘着力によって被記録媒体を保持部材上に良好に保持することができる。よって、非定型の被記録媒体を良好に記録領域に搬送することができる。
【0011】
本発明の記録装置においては、前記保持部材は、前記粘着層が設けられた面の反対面側に前記液体を吸収しない非吸収層が設けられるのが好ましい。
保持部材は非透過層が設けられた面が回転ローラー部に巻き掛けられている。そのため、保持部材が吸収した液体が保持部材を透過することで回転ローラー部を汚してしまうといった不具合の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施形態に係るプリンターの概略構成を示す側面図。
【図2】吸着部の概略構成を示す図。
【図3】プリンターの動作を説明するための図。
【図4】第二実施形態に係るプリンターの概略構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、記録装置の一例について説明する。記録装置は、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある)から構成されるものである。
【0014】
また、以下の説明における図面中においては、XYZ座標系を用いる場合があり、具体的に記録が施された記録用紙がプリンターから排紙容器へと搬送される方向をX方向で示し、印刷処理を行う記録ヘッドの記録用紙に対する走査方向をY方向で示し、これらXY方向にそれぞれ直交する方向をZ方向で示すものとする。なお、図面中のX方向、Y方向及びZ方向を示す矢印において、「○」の中に「・」が記載されたもの(矢の先端を前から見た図)は紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたもの(矢の羽根を後ろから見た図)は紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0015】
(第一実施形態)
図1は第一実施形態に係るプリンター100の概略構成を示す側面図である。プリンター100は、図1に示すように記録媒体としての用紙Pに対してインクを噴射するための記録ヘッド10と、用紙Pを記録ヘッド10の下方の記録領域Aに搬送する搬送部11と、記録ヘッド10による記録(印刷)が施された後、搬送部11から排出された用紙Pを収容する用紙収容部12と、搬送部11に用紙Pを供給する用紙供給部13と、を備えている。
【0016】
ここで、本実施形態に係るプリンター100は、非定型の用紙Pに対して記録ヘッド10からインクを噴射するためのものである。ここで、非定型の形状とは、例えば円板型、星型(図2に示す本実施形態に係る形状)、リング型、台形型、或いは菱型等の一般的に用いられる矩形形状以外の形状を意味する。
【0017】
記録ヘッド10は、用紙Pの搬送経路の上側に配置されたガイド軸(不図示)に沿って同図中におけるY方向に沿って走査可能となっており、用紙Pの幅方向に沿って往復移動するようになっている。記録ヘッド10には、液体としてのインクを噴射する複数のノズルが設けられている。記録ヘッド10は搬送部11により搬送される用紙Pの表面にインクを噴射することで用紙Pに記録が施されるようになっている。
【0018】
プリンター100は、1つの印刷ジョブに含まれる印刷データを複数に分割し、分割された各印刷データに基づく印刷処理を記録ヘッド10の走査毎に行うとともに、各印刷処理の合間に、用紙Pの印刷が施された部分が間欠的に搬送されるようになっている。すなわち、プリンター100は、記録ヘッド10が用紙Pの幅方向に走査しながらインクを噴射する動作と用紙Pの紙送り動作とを交互に繰り返すことで、1つの印刷ジョブに基づく画像を形成するようになっている。
【0019】
搬送部11は、用紙Pを保持するとともに記録ヘッド10の下方に搬送する保持部材21と、用紙Pの搬送方向の上流側及び下流側に配置され、保持部材21が巻き掛けられる搬送ローラー22及び従動ローラー23(一対のローラー)と、これら一対のローラー22,23間に設けられる吸着部30と、保持部材21をロール状に巻き重ねたロール体RSの状態で保持する保持部24と、ローラー23を通過した保持部材21を巻き取る巻取り部25と、を備えている。
【0020】
ところで、本実施形態に係るプリンター100は、上述のように非定型の用紙Pに対してフチ無し印刷を行うため、用紙Pの縁の形状(外形形状)が複雑なため、従来の矩形形状の用紙に対して行われるフチ無し印刷に対し、記録ヘッド10のノズルから噴射されたインクが用紙Pの縁から大きく外れる可能性が高い。
【0021】
これに対し、本実施形態に係る搬送部11は、用紙Pを保持する保持部材21を用いて記録ヘッド10から噴射された際に用紙Pの縁から外れたインクを吸収するようにしている。保持部材21は用紙Pの横幅(搬送方向に直交するY方向における幅)よりも大きい横幅を有している(図3参照)。これにより、形状が非定型の用紙Pに対してフチ無し印刷を行う場合であっても、用紙Pの縁から外れたインクを保持部材21が確実に吸収できるようになっている。これにより、プリンター100内がインクによって汚れるのを防止している。
【0022】
ここで、保持部材21としては多孔質部材から構成されるものが望ましい。具体的に本実施形態では、保持部材21の構成材料として不織布を用いている。なお、保持部材21の厚さは、例えば1mm以下に設定される。
【0023】
巻取り部25は保持部材21を巻き取る巻取り軸25aと、該巻取り軸25aを回転駆動する回転モーター25bと、を有する。巻取り部25は、回転モーター25bの駆動に伴って半時計方向に回転すると、用紙Pの搬送方向上流側においてはロール体RSから保持部材21を巻き解くとともに搬送方向下流側においては保持部材21を巻き取るようになっている。
【0024】
また、搬送部11は、記録ヘッド10の下流側に、保持部材21とともに用紙Pを挟持する挟持ローラー対26を有する。挟持ローラー対26は、上面側ローラー26a及び下面側ローラー26bを含み、各ローラー26a,26bは例えば弾性部材から構成されている。これにより、用紙Pにおける印刷面及び保持部材を挟持する際において、ダメージを与えるのを回避するようにしている。
【0025】
吸着部30は、保持部材21を保持するとともに該保持部材21を介して保持部材21を吸着保持するための吸引力を発生させるためのものである。
図2は吸着部30の概略構成を示す図である。図2に示すように、吸着部30は保持部材21を載置する本体部30aと、該本体部30a内に設けられたファン30bと、を備えている。本体部30aの保持部材21を載置する上面側には、複数の開口(不図示)が形成されている。このような構成に基づき、吸着部30は上記ファン30bを回転させることで上記複数の開口から本体部30a内に空気を吸い込めるようになっている。
【0026】
本実施形態では、上述のように保持部材21として不織布からなるものを用いている。不織布は多孔質部材であるため、上述のように記録ヘッド10から噴射されたインクを良好に吸収することができる。さらに、保持部材21は吸着部30による吸引力を良好に通過させることが可能となっている。よって、図2に示すように、吸着部30による吸引力が用紙Pの裏面に確実に付与されることで用紙Pを保持部材21上に良好に吸着保持できるようになっている。
【0027】
用紙収容部12は用紙Pを収容可能なトレイ状の部材から構成されるものである。用紙収容部12は搬送部11から投げ出された用紙Pを回収できる位置に配置されている。具体的に、用紙収容部12は搬送部11に平面的に重なる位置に配置されている。このようにすれば、用紙収容部12が搬送部11から離れすぎることで用紙Pを良好に回収できない、或いは用紙収容部12が搬送部11に近すぎることで用紙Pが用紙収容部12とは異なる位置に落下するといった不具合の発生を防止している。
【0028】
なお、本実施形態では、用紙収容部12が固定された構成としたが、用紙収容部12が搬送部11に対して昇降する構成であっても構わない。この構成によれば、例えば搬送部11における用紙Pの排出位置の高さまで用紙収容部12を上昇させることで、用紙収容部12が用紙Pをスムーズに受け取ることが可能となる。また、用紙収容部12における用紙Pを載置する載置面を搬送部11側から離間するに従って下方に傾斜する傾斜面とするようにしても構わない。この構成によれば、搬送部11から排出された用紙Pがはじめに傾斜面に当接した後、傾斜面に沿って用紙収容部12内に良好に滑り込ませることができる。よって、用紙収容部12内に用紙Pを良好に収容することが可能となる。
【0029】
用紙供給部13は、用紙Pを保持する用紙保持部13aと、該用紙保持部13aに保持された用紙Pを搬送部11に向けて給紙する給紙ローラー13bと、を有する。用紙保持部13aは、搬送部11側の一端部を該一端部と反対の他端部に対して下方に傾けることで用紙Pの保持面が搬送部11の保持部材21に向かって傾斜した状態に設置されている。また、給紙ローラー13bは、用紙保持部13aに保持されている用紙Pに当接する外形を有しており、回転駆動することで用紙Pに対して搬送部11に向かう搬送力を付与できるようになっている。このように用紙供給部13は、用紙保持部13aの用紙載置面が傾斜面をなしており、該斜面に載置される用紙Pに対して給紙ローラー13bの搬送力が付与されるので、搬送部11に対して用紙Pを確実に供給できるようになっている。
【0030】
次に、プリンター100の動作について説明する。
プリンター100は、用紙供給部13の給紙ローラー13bを駆動させ、用紙保持部13aに保持される用紙Pを搬送部11に向けて給紙する。搬送部11では、搬送ローラー22を駆動する。搬送部11は、搬送ローラー22の回転に伴って従動ローラー23が回転する。これにより、搬送ローラー22及び従動ローラー23に巻き掛けられた保持部材21が図1に示した+X方向に移動し、保持部材21上に載置されている用紙Pを搬送することができる。
【0031】
このとき、搬送部11は搬送ローラー22の駆動に同期させて巻取り部25を駆動させる。なお、搬送ローラー22及び巻取り部25の駆動力は、後述する吸着部30が用紙Pを吸着する力よりも大きく設定される。
【0032】
巻取り部25は、回転モーター25bの駆動により巻取り軸25aを回転させて保持部材21の移動方向前方側の端部を巻取り軸25aに巻き取る。一方、用紙Pの搬送方向上流側においてはロール体RSから保持部材21が巻き解かれている。このように搬送部11では、搬送ローラー22の駆動に伴ってロール体RSから巻き解かれた保持部材21を巻取り部25が順次巻き取ることで保持部材21が移動するので、保持部材21には弛みが生じることなく所定の張力が付与された状態となる。よって、用紙Pが載置される面の平面度を高く保つことができ、記録ヘッド10は用紙Pに対して良好にインクを噴射することができる。
【0033】
また、本実施形態においては、搬送部11が用紙Pを搬送する際に、吸着部30を駆動させるようにしている。吸着部30はファン30bを回転させることで本体部30a上に載置される保持部材21に対して吸引力を付与することができる。ここで、保持部材21は上述のように多孔質部材である不織布から構成されているため、吸着部30による吸引力を良好に通過させることができる。よって、図2に示したように、搬送部11は、吸着部30による吸引力を用紙Pの裏面に確実に付与することで用紙Pを保持部材21上に良好に吸着保持することができる。
【0034】
このように本実施形態に係る搬送部11は、吸着保持した状態で用紙Pを搬送できるので、記録ヘッド10の下方に搬送する過程において用紙Pの載置位置にズレが生じるのを防止することができる。よって、非定型の用紙Pであっても安定保持した状態で記録ヘッド10による記録領域に搬送することで高品質な印刷を行うことができる。
【0035】
プリンター100は、図3に示すように搬送部11により搬送される用紙Pに対して記録ヘッド10を同図Y方向に走査しつつ、ノズル(不図示)からインクを噴射することで所定の記録動作を行う。ここで、本実施形態では用紙Pに対してフチ無し印刷を行うため、図3に示したように用紙Pの縁からはずれたインクIが保持部材21に着弾する。なお、本実施形態では、用紙Pとして図3に示すように星型のものを用いている。
【0036】
保持部材21は、上述のように不織布から構成されているため、用紙Pの縁から外れたインクIを吸収することができる。よって、用紙Pの縁から外れたインクによってプリンター100の内部が汚れてしまうといった不具合の発生を防止できる。また、本実施形態では、記録ヘッド10の下方を通過した保持部材21(すなわち、用紙Pの縁から外れたインクを吸収した保持部材)が巻取り部25によって巻き取られる構成となっている。そのため、保持部材21が再利用されることで用紙Pの裏面が汚れるといった不具合の発生を防止できる。
【0037】
記録ヘッド10による記録処理が行われた用紙Pは、搬送部11により用紙収容部12へと受け渡される。用紙収容部12に受け渡される際、用紙Pは搬送方向の上流側において保持部材21から離間した状態となるものの、搬送方向の下流側において挟持ローラー対26により良好に保持されたものとなっている。そのため、用紙Pは図1中の1点鎖線で示すように搬送方向上流側の端部が下方に垂れ下がることで用紙収容部12内に収容された後、搬送方向下流側の端部が挟持ローラー対26から排出されることで用紙収容部12内へと落下することで用紙Pの全体が用紙収容部12に収容される。
【0038】
以上述べたように、本実施形態に係るプリンター100によれば、用紙Pの形状が非定型であっても用紙Pを搬送する保持部材21が用紙Pの縁から外れたインクを吸収できる。また、搬送部11は、使用済みの保持部材21は巻取り部25によって回収することで再利用しないため、他の用紙Pの裏面が汚れるといった不具合を防止できる。また、搬送部1は、吸着部30により用紙Pを吸着保持して搬送することができるので、形状が非定型の用紙Pであっても記録ヘッド10の下方に良好に搬送することができ、且つ裏面を汚すこと無くフチ無し記録を行うことができる。
【0039】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態に係るプリンターについて説明する。本実施形態と上記実施形態との違いは搬送部の構成であり、それ以外の構成については第一実施形態と共通である。そのため、第一実施形態と同一及び共通の構成については、同一の符号を付し、その説明については省略若しくは簡略化するものとする。
【0040】
図4は第二実施形態に係るプリンター200の概略構成を示す側面図である。プリンター200は、図4に示すように記録ヘッド10と、用紙Pを記録ヘッド10の下方に搬送する搬送部111と、搬送部111から排出された用紙Pを収容する用紙収容部12と、搬送部111に用紙Pを供給する用紙供給部13と、を備えている。
【0041】
搬送部111は、用紙Pを保持するとともに記録ヘッド10の下方に搬送する保持部材121と、用紙Pの搬送方向の上流側及び下流側に配置され、保持部材121が巻き掛けられる搬送ローラー22及び従動ローラー23と、保持部24と、巻取り部25と、用紙Pの搬送方向の上流側及び下流側において保持部材121とともに用紙Pを挟持する挟持ローラー対126,127を備えている。
【0042】
本実施形態に係る搬送部111は、第一実施形態に係る搬送部11と異なり、吸着部30を有しない構成となっている。本実施形態に係る搬送部111の保持部材121は、例えば3層構造となっている。具体的に保持部材は、下地層(非透過層)121a、インク吸収層121b、及び粘着層121cが順に積層された構造を有している。下地層121aは搬送ローラー22及び従動ローラー33に当接する面側に設けられ、粘着層121cは用紙Pを載置する載置面側に設けられている。
【0043】
下地層121aは、インク吸収層121bが吸収したインクを透過させない部材、例えばゴム部材や樹脂部材から構成されている。また、インク吸収層121bは、上記第一実施形態に係る保持部材21の構成材料と同じ不織布から構成されている。そのため、用紙Pの縁から外れたインクを良好に吸収することができるようになっている。また、粘着層121cは、保持部材121上に載置される用紙Pの裏面に粘着力を付与することで用紙Pを保持するためのものである。なお、粘着層121cとしては、搬送時に用紙Pを安定して保持することができ、且つ保持部材121が巻取り部25に巻き取られる際に用紙Pの裏面から容易に剥離可能な程度の粘着力を付与することのできる接着材が用いられている。
【0044】
挟持ローラー対126は上面側ローラー126a及び下面側ローラー126bを有し、挟持ローラー対127は上面側ローラー126a及び下面側ローラー126bを有している。各ローラー126a,126b,127a,127bは例えば弾性部材から構成されている。これにより、用紙Pにおける印刷面及び保持部材を挟持する際において、ダメージを与えるのを回避するようにしている。
【0045】
次に、プリンター200の動作について説明する。
プリンター200は、用紙保持部13aに保持される用紙Pを搬送部111に向けて給紙する。搬送部111は搬送ローラー22の回転に伴って従動ローラー23が回転すると、搬送ローラー22及び従動ローラー23に巻き掛けられた保持部材21が図4に示した+X方向に移動し、保持部材21上に載置されている用紙Pを搬送することができる。なお、保持部材21は用紙Pの搬送方向下流側において巻取り部25に巻き取られ、搬送方向上流側においてロール体RSから巻き解かれる。
【0046】
搬送部111の保持部材121上に載置された用紙Pは、保持部材121の最上層に形成された粘着層121cの粘着力により保持部材121上に良好に保持された状態で記録ヘッド10の下方へと搬送される。
【0047】
このように本実施形態に係る搬送部111は、粘着層121cによる粘着力によって用紙Pを良好に保持した状態で搬送できるので、記録ヘッド10の下方に搬送する過程において用紙Pの載置位置にズレが生じるのを防止することができる。よって、非定型の用紙Pであっても安定保持した状態で記録ヘッド10による記録領域に搬送することで高品質な印刷を行うことができる。
【0048】
プリンター200は、搬送部111により搬送される用紙Pに対して記録ヘッド10を走査しつつ、ノズル(不図示)からインクを噴射することで所定のフチ無し記録動作を行う。このとき、用紙Pの縁からはずれたインクが保持部材121に着弾する。
【0049】
保持部材121は、不織布から構成されたインク吸収層121bを備えているため、用紙Pの縁から外れたインクを吸収することができる。よって、用紙Pの縁から外れたインクによってプリンター200の内部が汚れてしまうといった不具合の発生を防止できる。また、本実施形態では、記録ヘッド10の下方を通過した保持部材121(すなわち、用紙Pの縁から外れたインクを吸収した保持部材121)が巻取り部25によって巻き取られるため、保持部材121が再利用されることで用紙Pの裏面が汚れるといった不具合の発生を防止できる。
【0050】
保持部材121のうちインクを吸収したインク吸収層121bの下層には、インクを透過させない下地層121aが形成されているので、保持部材121が巻き掛けられる搬送ローラー22及び従動ローラー23がインク吸収層121bに吸収されたインクによって汚れてしまうといった不具合の発生を防止することができる。記録ヘッド10による記録処理が行われた用紙Pは、搬送部111により用紙収容部12へと受け渡される。
【0051】
以上述べたように、本実施形態に係るプリンター200においても、保持部材121が用紙Pを良好に保持するとともに用紙Pの縁から外れたインクを吸収することができる。よって、非定型の用紙Pであっても記録ヘッド10の下方に良好に搬送することができ、且つ裏面を汚すことなくフチ無し印刷を行うことができる。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0053】
上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0054】
また、搬送装置は、記録装置によって記録が施された媒体を仕分装置に搬送するものに限らない。例えば、媒体に対するシールの貼付処理や、箔の転写処理や、染色処理などの各種処理が施された媒体をその後工程(例えば梱包や検品など)を行う位置に向けて搬送する搬送装置としてもよい。また、媒体は用紙に限らず、金属やプラスチックフィルム、布など、任意の素材から構成することができる。
【符号の説明】
【0055】
A…記録領域、P…用紙(記録媒体)、10…記録ヘッド、11…搬送部、21,121…保持部材、22…搬送ローラー(一対のローラー部の一方)、23…従動ローラー(一対のローラー部の他方)、25…巻取り部、30…吸着部、100,200…プリンター(印刷装置)、121a…下地層(非透過層)、121c…粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状が非定型の被記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により記録領域に搬送された前記被記録媒体に対して液体を噴射して記録する記録ヘッドと、を備えた印刷装置において、
前記搬送部は、前記被記録媒体を保持するとともに前記記録ヘッドから噴射された際に前記被記録媒体の縁から外れた前記液体を吸収する保持部材と、前記被記録媒体の搬送方向の上流側及び下流側に配置され、前記保持部材が巻き掛けられた一対の回転ローラー部とを有し、前記回転ローラー部を回転させることで前記保持部材とともに前記被記録媒体を前記記録領域へと搬送することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記搬送部は、前記記録領域を通過した前記保持部材を巻き取る巻取り部を有することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記搬送部は前記保持部材を介して前記被記録媒体を吸着保持する吸着部を有し、
前記保持部材が多孔質部材から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記被記録媒体の保持面に粘着層が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記粘着層が設けられた面の反対面側に前記液体を透過させない非透過層が設けられることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−218210(P2012−218210A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83600(P2011−83600)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】