説明

記録装置

【課題】手差し用の給送経路に沿って給送される媒体に発生したスキューを解消させることができる記録装置を提供する。
【解決手段】複合機の記録部は、手差し用の給送経路に沿って給送された用紙Pに記録を施す記録ヘッド26と、PFモーターからの駆動力によって正逆両方向に回転し、正方向への回転によって用紙Pを記録ヘッド26側に給送する給送ローラー対40と、給送方向において給送ローラー対40よりも上流側に配置されると共に、給送ローラー対40の逆方向への回転によって先端が給送方向における上流側に戻される用紙Pに対して給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷を付与する負荷付与機構52と、を備え、給送方向において給送ローラー対40と負荷付与機構52との間には、用紙Pの撓みを許容する撓み許容空間36が介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙などの媒体に記録を施す記録ヘッドを備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体の一例としての用紙を手差しで給紙(給送)するための手差し用の給送経路を有する記録装置として、例えば特許文献1に記載のプリンターが提案されている。手差し用の給送経路は、給送方向における最上流位置に配置される手差しトレイから記録ヘッドによって記録が施される記録領域までの経路である。こうした手差し用の給送経路において記録領域の手前(給送方向における上流側)には、モーターからの駆動力によって回転する一対のローラーを有する給送ローラー対が設けられている。
【0003】
手差しで給紙した用紙に対して記録処理を行わせる場合、手差しトレイにセットした用紙は、該用紙の先端が手差し用の給送経路に沿って移動するようにユーザーによって給紙される。そして、給紙ローラー対の手前に配置された紙端センサーによって用紙の先端が検知されると、給送ローラー対が駆動し始める。すると、用紙は、両ローラーによって挟持され、該両ローラーの回転によって上記記録領域まで給紙される。そして、記録領域まで給送された用紙には、記録ヘッドによって記録が施される。
【0004】
なお、手差し用の給送経路において給送ローラー対と手差しトレイとの間には、モーターなどの駆動源からの駆動力に基づき用紙を搬送すべく駆動する被駆動部(例えば、ローラー)が設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4640179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、手差しで用紙をプリンター内に給紙した場合、当該用紙が給送方向に対して斜行する所謂スキューが発生するおそれがある。特許文献1に記載のプリンターにおいては、手差しで給紙された用紙に発生したスキューを解消させる機構が搭載されていない。そのため、スキューが発生した用紙は、スキューが解消されることなく記録領域まで給紙される。そして、スキューの発生した用紙に記録が施され、用紙が無駄に消費されるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものである。その目的は、手差し用の給送経路に沿って給送される媒体に発生したスキューを解消させることができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、手差し用の給送経路に沿って給送された媒体に記録を施す記録ヘッドと、駆動源からの駆動力によって正逆両方向に回転し、正方向への回転によって前記手差し用の給送経路に沿って媒体を前記記録ヘッド側に給送する給送ローラー対と、前記手差し用の給送経路に沿った媒体の給送方向において前記給送ローラー対よりも上流側に配置されると共に、前記給送ローラー対の逆方向への回転によって先端が前記給送方向における上流側に戻される媒体に対して前記給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷を付与する負荷付与手段と、を備え、前記給送方向において前記給送ローラー対と前記負荷付与手段との間には、前記手差し用の給送経路に沿って給送される媒体の撓みを許容する撓み許容空間が介在している。
【0009】
上記構成によれば、ユーザーによって手差し用の給送経路に沿って上流側から下流側に向けて給送された媒体は、正方向に回転する給送ローラー対によって挟持される。すると、給送ローラー対の正方向への回転によって、媒体の先端は、記録ヘッドによって記録が行われる記録領域に向けて給送される。この状態で給送ローラー対が逆方向に回転し始めると、該給送ローラー対に挟持される媒体の先端は、給送方向における上流側に戻される。その結果、給送ローラー対による媒体の挟持が解消される。
【0010】
このとき、媒体において先端よりも給送方向における上流側に位置する部分(以下、「被当接部分」ともいう。)には、負荷付与手段によって、給送方向における上流側への移動を規制するための負荷が付与される。そのため、媒体の後端が給送方向における上流側に移動することは、負荷付与手段によって抑制される。その結果、給送方向において給送ローラー対と負荷付与手段との間に位置する撓み許容空間で、媒体に撓みが発生する。この状態では、媒体は、その先端を介して撓みを解消させる力を、逆方向に回転する給送ローラー対に付与する。その結果、媒体にスキューが発生していたとしても、当該スキューが徐々に解消される。そして、スキューが解消されてから給送ローラー対が再び正方向に回転し始めると、媒体の先端は給送ローラー対によって再び挟持され、媒体は給送ローラー対によって記録ヘッド側に給送される。その結果、スキューが解消された媒体に、記録ヘッドによって記録が施される。
【0011】
本発明の記録装置には、給送ローラー対よりも給送方向における上流側に、駆動源からの駆動力を手差し用の給送経路に沿って給送される媒体に付与する機構が設けられていない。こうした構成であっても、駆動源からの駆動力によって正逆両方向に回転する給送ローラー対よりも給送方向における上流側に負荷付与手段を設けることにより、媒体に発生していたスキューを解消させることができる。したがって、手差し用の給送経路に沿って給送される媒体に発生したスキューを解消させることができる。
【0012】
本発明の記録装置は、媒体保持部に保持される媒体を、自動給送用の給送経路に沿って前記給送ローラー対まで給送する自動給送装置をさらに備え、前記自動給送装置には、駆動源からの駆動力によって回転する搬送用ローラーが設けられており、前記搬送用ローラーは、前記撓み許容空間を挟んで前記給送ローラー対の反対側に位置している。
【0013】
上記構成によれば、手差し用の給送経路に沿って給送された媒体の撓みを発生させる空間は、自動給送用の給送経路に沿って給送された媒体の撓みを発生させるための撓み許容空間を利用している。つまり、撓み許容空間を共有できる分、記録装置の大型化を抑制することができる。
【0014】
本発明の記録装置において、前記負荷付与手段は、前記手差し用の給送経路に沿って給送される媒体に当接する当接部材を有する。
上記構成によれば、当接部材は、手差し用の給送経路に沿って給送される媒体に対して摩擦力を付与する。こうした摩擦力は、媒体のスキューを解消させるために給送ローラー対が逆方向に回転する際にも媒体に付与される。そして、媒体の後端の給送方向における上流側への移動は、当接部材と媒体の上記被当接部分との間に発生する摩擦力によって抑制される。その結果、給送ローラー対を逆方向に回転させることにより撓み許容空間内で媒体を撓ませることができ、ひいては媒体のスキューを解消させることができる。
【0015】
本発明の記録装置において、前記手差し用の給送経路において前記給送ローラー対よりも前記給送方向における上流側の経路の少なくとも一部分は、前記手差し用の給送経路に沿って搬送される媒体の被記録面と直交する方向の成分を含むように蛇行する蛇行経路であり、前記負荷付与手段は、前記蛇行経路に沿って媒体を案内するための案内部を有する。
【0016】
上記構成によれば、媒体において蛇行経路を通過する部分(被当接部分)には、案内部によって、給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷が付与される。その結果、媒体を挟持する給送ローラー対を逆方向に回転させることにより、撓み許容空間内で媒体を撓ませることができる。したがって、媒体のスキューを解消させることができる。
【0017】
本発明の記録装置は、手差し用の給送経路に沿って給送された媒体に記録を施す記録ヘッドと、駆動源からの駆動力によって正逆両方向に回転し、正方向への回転によって前記手差し用の給送経路に沿って媒体を前記記録ヘッド側に給送する給送ローラー対と、前記手差し用の給送経路に沿った媒体の給送方向において前記給送ローラー対よりも上流側に配置されると共に、逆方向に回転する前記給送ローラー対の前記給送方向における上流側に先端が当接する媒体に対して前記給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷を付与する負荷付与手段と、を備え、前記給送方向において前記給送ローラー対と前記負荷付与手段との間には、前記手差し用の給送経路に沿って給送される媒体の撓みを許容する撓み許容空間が介在している。
【0018】
上記構成によれば、ユーザーによって手差し用の給送経路に沿って上流側から下流側に向けて給送された媒体は、逆方向に回転する給送ローラー対の前記給送方向における上流側に先端が当接する。このとき、媒体において先端よりも給送方向における上流側に位置する部分には、負荷付与手段によって、給送方向における上流側への移動を規制するための負荷が付与される。そのため、媒体の後端が給送方向における上流側に移動することは、負荷付与手段によって抑制される。その結果、給送方向において給送ローラー対と負荷付与手段との間に位置する撓み許容空間で、媒体に撓みが発生する。この状態では、媒体は、その先端を介して撓みを解消させる力を、逆方向に回転する給送ローラー対に付与する。その結果、媒体にスキューが発生していたとしても、当該スキューが徐々に解消される。そして、スキューが解消されてから給送ローラー対が再び正方向に回転し始めると、媒体の先端は給送ローラー対によって再び挟持され、媒体は給送ローラー対によって記録ヘッド側に給送される。その結果、スキューが解消された媒体に、記録ヘッドによって記録が施される。
【0019】
本発明の記録装置において、媒体保持部に保持される媒体を、自動給送用の給送経路に沿って前記給送ローラー対まで給送する自動給送装置をさらに備え、前記自動給送装置には、駆動源からの駆動力によって回転する搬送用ローラーが設けられており、前記搬送用ローラーは、前記撓み許容空間を挟んで前記給送ローラー対の反対側に位置している。
【0020】
上記構成によれば、手差し用の給送経路に沿って給送された媒体の撓みを発生させる空間は、自動給送用の給送経路に沿って給送された媒体の撓みを発生させるための撓み許容空間を利用している。つまり、撓み許容空間を共有できる分、記録装置の大型化を抑制することができる。
【0021】
本発明の記録装置は、手差し用の給送経路に沿って給送された第1および第2の媒体に記録を施す記録ヘッドと、駆動源からの駆動力によって正逆両方向に回転し、正方向への回転によって前記手差し用の給送経路に沿って前記第1および第2の媒体を前記記録ヘッド側に給送する給送ローラー対と、前記手差し用の給送経路に沿った媒体の給送方向において前記給送ローラー対よりも上流側に配置されると共に、正方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて先端が前記給送方向における下流側に移動した後、逆方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて前記先端が前記給送方向における上流側に戻される前記第1の媒体、および逆方向に回転する前記給送ローラー対の前記給送方向における上流側に先端が当接する前記第2の媒体に対して前記給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷を付与する負荷付与手段と、を備え、前記給送方向において前記給送ローラー対と前記負荷付与手段との間には、前記手差し用の給送経路に沿って給送される前記第1および第2の媒体の撓みを許容する撓み許容空間が介在している。
【0022】
上記構成によれば、手差し用の給送経路に沿って第1および第2の媒体を給送するとき、負荷付与手段は、正方向に回転する給送ローラー対に挟持されて先端が給送方向における下流側に移動した後、逆方向に回転する給送ローラー対に挟持されて先端が給送方向における上流側に戻される第1の媒体、および逆方向に回転する給送ローラー対の給送方向における上流側に先端が当接する第2の媒体に対して給送方向における上流側への移動を抑制する。これにより、厚さや剛性などが異なる第1の媒体、第2の媒体によって、第1および第2の媒体の撓みの大きさを選択し、第2の媒体の撓みを、第1の媒体の撓みより小さくすることができるので、第2の媒体が損傷することを抑制できる。
【0023】
本発明の記録装置において、媒体保持部に保持される媒体を、自動給送用の給送経路に沿って前記給送ローラー対まで給送する自動給送装置をさらに備え、前記自動給送装置には、駆動源からの駆動力によって回転する搬送用ローラーが設けられており、前記搬送用ローラーは、前記撓み許容空間を挟んで前記給送ローラー対の反対側に位置している。
【0024】
上記構成によれば、手差し用の給送経路に沿って給送された媒体の撓みを発生させる空間は、自動給送用の給送経路に沿って給送された媒体の撓みを発生させるための撓み許容空間を利用している。つまり、撓み許容空間を共有できる分、記録装置の大型化を抑制することができる。
【0025】
本発明の記録装置において、前記搬送用ローラーは、正方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて先端が前記給送方向における下流側に移動した後、逆方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて先端が前記給送方向における上流側に戻される前記第1の媒体、および逆方向に回転する前記給送ローラー対の前記給送方向における上流側に先端が当接する前記第2の媒体に対して回転を停止させることにより前記給送方向における上流側への移動を抑制する。
【0026】
上記構成によれば、自動給送経路に沿って第1および第2の媒体を給送するとき、搬送用ローラーは、正方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて先端が前記給送方向における下流側に移動した後、逆方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて先端が前記給送方向における上流側に戻される第1の媒体、および逆方向に回転する給送ローラー対の給送方向における上流側に先端が当接する第2の媒体に対して、回転を停止させることにより給送方向における上流側への移動を規制する。これにより、厚さや剛性などが異なる第1の媒体、第2の媒体によって、第1の媒体、第2の媒体の撓みの大きさを選択し、第2の媒体の撓みを、第1の媒体の撓みより小さくすることができるので、第2の媒体が損傷することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の記録装置にかかる複合機の一実施形態を示す側断面図。
【図2】記録部の概略構成を示すブロック図。
【図3】記録部の要部を拡大した拡大図。
【図4】用紙のスキューを解消させるための動作を説明する動作図。
【図5】用紙のスキューを解消させるための動作を説明する動作図。
【図6】用紙のスキューを解消させるための動作を説明する動作図。
【図7】用紙のスキューを解消させるための動作を説明する動作図。
【図8】手差し記録処理ルーチンを示すフローチャート。
【図9】負荷付与機構の別の実施形態を示す模式図。
【図10】負荷付与機構の他の別の実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図1〜図8に基づいて説明する。なお、図1における左側を「前側」といい、図1における右側を「後側」というものとする。
図1に示すように、記録装置の一例としての複合機11は、装置本体12内に配置されると共に媒体の一例としての用紙Pに記録処理を行う記録部13と、図1において記録部13の上側に配置された画像読取り部14とを備えている。この画像読取り部14は、該画像読取り部14にセットされた被読取り媒体(例えば、用紙)に記録された画像の読取りを行う。
【0029】
次に、記録部13について、図1、図2及び図3を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の記録部13は、インクジェット式のプリンターであって、自動給送用の給送経路と、手差し用の給送経路とを有している。こうした記録部13において各給送経路から用紙Pが給送(給紙)される記録領域20には、給送された用紙Pを支持する支持台21と、用紙Pを挟んで支持台21の反対側に位置する記録機構22とが設けられている。この記録機構22は、走査方向(図1及び図2では紙面と直交する方向)に延びるガイド軸23と、該ガイド軸23に支持されるキャリッジ24とを備えている。このキャリッジ24は、図示しない動力伝達機構を介してCRモーター25からの駆動力が伝達されることにより、ガイド軸23にガイドされつつ走査方向に進退移動する。
【0030】
キャリッジ24において支持台21に対向する部分(図1では下部)には、支持台21に支持される用紙Pに記録を施すための記録ヘッド26が搭載されている。この記録ヘッド26は、キャリッジ24に搭載されるインクカートリッジ27から供給された記録材の一例としてのインクを噴射することにより用紙Pに対して記録を施す。
【0031】
また、装置本体12において記録領域20の図1における下方には、複数枚の用紙Pを積層した状態で保持する媒体保持部の一例としての給紙カセット30が設けられている。この給紙カセット30は、装置本体12に対して、その前側から着脱可能となっている。そして、給紙カセット30からは、自動給送装置31によって、自動給送用の給送経路を上流側(給紙カセット30側)から下流側(記録領域20側)に向けて用紙Pが一枚ずつ給送される。
【0032】
自動給送装置31は、給紙カセット30に保持される用紙Pのうち最上位の用紙を、給紙カセット30外(図1における右斜め上方)に送り出すための送出し機構(図示略)を備えている。そして、自動給送用の給送経路において上記送出し機構の下流側には、駆動源の一例としてのASFモーター32から駆動力が伝達される搬送用ローラーとしての中間ローラー33が設けられている。
【0033】
中間ローラー33の近傍には、該中間ローラー33の回転に基づき従動回転するリタードローラー34及びアシストローラー35が設けられている。リタードローラー34及びアシストローラー35のうち給送方向における上流側に位置するリタードローラー34は、給紙カセット30から送り出された用紙Pを中間ローラー33と共に挟持し、給送方向における下流側に給送する。また、アシストローラー35は、中間ローラー33及びリタードローラー34によって給送された用紙Pを中間ローラー33と共に挟持し、該用紙Pを前方に給送する。また、アシストローラー35は、用紙Pの幅方向における長さは短く、用紙Pの幅方向における中間ローラー33の中央に配置されている。
【0034】
また、図2及び図3に示すように、中間ローラー33よりも給送方向における下流側、即ち中間ローラー33の前側には、自動給送用の搬送経路に沿って給送された用紙Pを撓ませるための撓み許容空間36を介在させた状態で給送ローラー対40が設けられている。この給送ローラー対40は、用紙Pを挟持可能に配置される一対の給送用ローラー40a,40bを有している。各給送用のローラーのうち一方のローラーは、駆動源の一例としてのPFモーター41から駆動力が伝達される駆動ローラー40aであり、他方のローラーは、駆動ローラー40aの回転に基づき従動回転する従動ローラー40bである。これら各給送用ローラー40a,40bは、用紙Pを記録領域20に給送する際には正方向Aに回転する一方、用紙Pを給送方向における上流側に戻す際には逆方向Bに回転する。
【0035】
また、図3において給送ローラー対40の上側には、従動ローラー40bに対して、駆動ローラー40aに接近させる方向への付勢力を付与する付勢機構42が設けられている。これにより、厚みの異なる種々の用紙Pが給送される場合であっても、各給送用ローラー40a,40bは、用紙Pを適切な保持力で挟持可能である。
【0036】
また、給送方向において給送ローラー対40の後側(図3では右側)には、給送される用紙Pの先端を検知するための用紙検知機構43が設けられている。この用紙検知機構43は、キャリッジ24の走査方向と同一方向に延びる図示しない回転軸線を中心に回転可能なセンサーレバー44と、図3においてセンサーレバー44よりも下側に配置される用紙検知センサー45とを備えている。センサーレバー44は、用紙Pの先端によって押されることにより回転する。そして、用紙検知センサー45は、センサーレバー44の回転を検知することにより用紙Pの先端が通過したことを検知し、検知した旨の検知信号を制御手段の一例としての制御装置CONTに出力する。
【0037】
次に、手差し用の給送経路に沿って用紙を給送するための構成について、図2及び図3を参照して説明する。
図2及び図3に示すように、手差し用の給送経路における最上流側には、手差しトレイ50が設けられている。この手差しトレイ50には、該手差しトレイ50上にセットされる用紙Pの幅方向における両側に配置される一対のエッジガイド51が設けられている。本実施形態において手差しトレイ50は、図1における中間ローラー33の直上であって且つ画像読取り部14の後側となる位置に配置されている。
【0038】
そして、手差し用の給送経路は、図2にて一点鎖線で示すように、手差しトレイ50から用紙検知機構43の後側まで図3における左斜め下方に向けて延び、その後、水平方向に延びている。つまり、本実施形態の手差し用の給送経路は、撓み許容空間36の上部を通過した後、自動給送用の給送経路に合流する。そのため、本実施形態では、手差し用の給送経路に沿って給送される用紙Pを撓み許容空間36で撓ませることが可能である。
【0039】
こうした手差し用の給送経路において手差しトレイ50の下流側には、PFモーター41やASFモーター32などの駆動源から駆動力が伝達されない負荷付与手段の一例としての負荷付与機構52が設けられている。この負荷付与機構52には、当接部材の一例としての負荷用ローラー53と、該負荷用ローラー53と共に用紙Pを挟持可能に配置されるコロローラー54と、コロローラー54に対して負荷用ローラー53に接近する方向への付勢力を付与する図示しない付勢部材とが設けられている。負荷用ローラー53及びコロローラー54は、用紙Pの幅方向における長さは短く、手差し用の給送経路に沿って給送される用紙Pの幅方向における中央にそれぞれ配置されている。また、負荷用ローラー53及びコロローラー54は、それらの中央に位置する回転軸線(図示略)を中心に正逆両方向に回転可能となっている。なお、手差しトレイ50にセットされた用紙Pを給送方向における下流側に給送する際の負荷用ローラー53及びコロローラー54の回転方向(図2における矢印方向)が、正方向である。
【0040】
また、負荷付与機構52には、負荷用ローラー53の逆方向(図2の矢印方向とは反対方向)への回転を規制するための力を負荷用ローラー53に付与する規制機構の一例としてのトルクリミッター55が設けられている。そして、負荷用ローラー53は、該負荷用ローラーを逆方向に回転させるための力(以下、「反転力」ともいう。)が所定の力未満である場合には、トルクリミッター55によって逆方向への回転が規制される。一方、トルクリミッター55は、所定の力以上の上記反転力が負荷用ローラー53に伝達された場合には、負荷用ローラー53の逆方向への回転を許容する。なお、トルクリミッター55は、負荷用ローラー53の正方向への回転を規制しない。
【0041】
次に、自動給送用の給送経路に沿って用紙Pを給送する際の記録部13の動作について説明する。
さて、給紙カセット30で保持される用紙Pを給送する場合、上記送出し機構及び中間ローラー33が駆動される。すると、給紙カセット30内の最上位の用紙Pが、自動給送用の給送経路に沿って上流側から下流側に向けて給送される。こうした用紙Pの先端がセンサーレバー44に接触し、該センサーレバー44が回転すると、用紙検知センサー45によって用紙Pの先端が検知される。すると、給送ローラー対40を構成する各給送用ローラー40a,40bが正方向Aに回転し始め、用紙Pは、各給送用ローラー40a,40bに挟持された状態で記録領域20側に導かれる。
【0042】
この状態では用紙Pにスキューが発生している可能性がある。そのため、スキューを解消させるために、中間ローラー33の回転が停止される。すると、中間ローラー33は、正方向にも逆方向にも回転しにくくなる。その結果、用紙Pにおいて中間ローラー33とアシストローラー35に挟持される部分(以下、「被挟持部分」ともいう。)の移動は、中間ローラー33とアシストローラー35によって規制される。
【0043】
また、中間ローラー33の回転が規制されると、各給送用ローラー40a,40bは逆方向Bに回転し始める。すると、用紙Pの先端は、給送方向における上流側に戻される。その結果、各給送用ローラー40a,40bによる用紙Pの挟持が解消される。この状態では用紙P自体の給送方向における上流側への移動は、中間ローラー33とアシストローラー35によって規制されている。そのため、用紙Pにおいて被挟持部分よりも先端側の部分は、撓み許容空間36内で撓む。すると、逆方向Bに回転する各給送用ローラー40a,40bに接触する用紙Pの先端は、用紙Pの撓みを解消させる反発力を各給送用ローラー40a,40bに付与する。これにより、用紙Pの先端のスキューが徐々に解消される。
【0044】
そして、用紙Pの先端のスキューが解消されたタイミングで、各給送用ローラー40a,40bが再び正方向Aに回転し始めると共に、中間ローラー33の回転が再開される。すると、用紙Pは、スキューが解消された状態で記録領域20内に導かれる。そして、用紙Pには、記録機構22の駆動によって記録が施され、最終的には記録部13外に排出される。
【0045】
次に、手差し用の給送経路に沿って用紙Pを給送する際の記録部13の動作について、図4〜図7を参照して説明する。
さて、手差しトレイ50にセットされた用紙Pが手差し用の給送経路に沿って給送される途中において、用紙Pは、図4に示すように、負荷用ローラー53とコロローラー54とによって挟持される。このとき、負荷用ローラー53は正方向に回転するため、トルクリミッター55は、負荷用ローラー53の回転を規制しない。そのため、用紙Pを給送するユーザーは、用紙Pが負荷用ローラー53とコロローラー54とによって挟持されたことによる引っかかり感を余り感じることなく、用紙Pが手差し用の給送経路に沿って給送されるように該用紙Pを押し込む。
【0046】
そして、図5に示すように、用紙Pの先端がセンサーレバー44に接触すると、該センサーレバー44が回転する。すると、用紙Pの先端が用紙検知センサー45によって検知され、各給送用ローラー40a,40bが正方向Aに回転し始める。すると、用紙Pは、各給送用ローラー40a,40bに挟持された状態で記録領域20側に導かれる。
【0047】
この状態では用紙Pにスキューが発生している可能性がある。そのため、図6に示すように、スキューを解消させるために、各給送用ローラー40a,40bは逆方向Bに回転し始める。すると、用紙Pの先端は、給送方向における上流側に戻される。その結果、各給送用ローラー40a,40bによる用紙Pの挟持が解消される。このとき、コロローラー54と共に用紙Pを挟持する負荷用ローラー53には、該負荷用ローラー53を逆方向に回転させるための力、即ち反転力が付与される。しかし、この反転力は上記所定の力未満であるため、負荷用ローラー53の逆方向への回転は、トルクリミッター55によって規制される。その結果、用紙Pが給送方向における上流側に戻されることが、規制される。
【0048】
すると、用紙Pにおいて負荷用ローラー及びコロローラー54によって挟持される部分よりも先端側の部分は、撓み許容空間36内で撓む。そして、逆方向Bに回転する各給送用ローラー40a,40bに接触する用紙Pの先端は、用紙Pの撓みを解消させる反発力を各給送用ローラー40a,40bに付与する。これにより、用紙Pの先端のスキューが徐々に解消される。そして、図7に示すように、用紙Pの先端のスキューが解消されたタイミングで、各給送用ローラー40a,40bが再び正方向Aに回転し始めると、用紙Pは、スキューが解消された状態で記録領域20内に導かれる。そして、用紙Pには、記録機構22の駆動によって記録が施され、最終的には記録部13外に排出される。その結果、スキューの発生に起因した用紙Pへの記録ミスが抑制される。
【0049】
次に、手差しで用紙Pが給送される際に制御装置CONTが実行する手差し記録処理ルーチンについて、図8に示すフローチャートを参照して説明する。なお、この手差し記録処理ルーチンは、手差し記録(印刷)モードに設定された場合に実行される処理ルーチンである。
【0050】
さて、手差し記録処理ルーチンにおいて、制御装置CONTは、用紙検知センサー45を用いて用紙Pの先端を検知できたか否かを判定する(ステップS10)。用紙Pの先端を検知できていない場合(ステップS10:NO)、制御装置CONTは、手差し記録処理ルーチンを一旦終了する。一方、用紙Pの先端を検知できた場合(ステップS10:YES)、制御装置CONTは、給送ローラー対40を構成する各給送用ローラー40a,40bを正方向Aに回転させるべくPFモーター41を駆動させる(ステップS11)。続いて、制御装置CONTは、PFモーター41の駆動が開始されてからの経過時間が、予め設定された紙送り許容時間Tth1を経過したか否かを判定する(ステップS12)。なお、紙送り許容時間Tth1を、手差しで給送される媒体の種類などに応じて変更してもよい。
【0051】
経過時間が紙送り許容時間Tth1を経過していない場合(ステップS12:NO)、制御装置CONTは、経過時間が紙送り許容時間Tth1を経過するまでステップS12の判定処理を繰り返し行う。一方、経過時間が紙送り許容時間Tth1を経過した場合(ステップS12:YES)、制御装置CONTは、各給送用ローラー40a,40bを逆方向Bに回転させるべくPFモーター41を駆動させる(ステップS13)。
【0052】
続いて、制御装置CONTは、各給送用ローラー40a,40bの逆方向Bへの回転が開始されてからの経過時間が、予め設定されたスキュー解消用時間Tth2を経過したか否かを判定する(ステップS14)。このスキュー解消用時間Tth2は、紙送り許容時間Tth1よりも長い時間に設定されている。経過時間がスキュー解消用時間Tth2を経過していない場合(ステップS14:NO)、制御装置CONTは、経過時間がスキュー解消用時間Tth2を経過するまでステップS14の判定処理を繰り返し行う。一方、経過時間がスキュー解消用時間Tth2を経過した場合(ステップS14:YES)、制御装置CONTは、各給送用ローラー40a,40bを正方向Aに回転させるべくPFモーター41を駆動させる(ステップS15)。そして、制御装置CONTは、用紙Pに対して記録を施すための記録処理を行う(ステップS16)。そして、記録が完了した用紙Pが排出されると、制御装置CONTは、手差し記録処理ルーチンを一旦終了する。
【0053】
以上、説明したスキューの解消方法は、用紙Pの先端を、給送ローラー対40に挟持した状態で給送方向における下流側に移動させた後、給送方向における上流側に戻す方法であるが、逆方向に回転している給送ローラー対40の給送方向における上流側に用紙Pの先端を当接させる方法でもよい。
【0054】
初めに、自動給送経路に沿って用紙Pを給送する際に、逆方向に回転している給送ローラー対40の給送方向における上流側に用紙Pの先端を当接させてスキューを解消する方法について説明する。送出し機構及び中間ローラー33の駆動によって、給紙カセット30内の最上位の用紙Pが、自動給送用の給送経路に沿って上流側から下流側に向けて給送される。
【0055】
給送された用紙Pの先端がセンサーレバー44に接触し、センサーレバー44が回転すると、用紙検知センサー45によって用紙Pの先端が検知される。すると、給送ローラー対40を構成する各給送用ローラー40a,40bが逆方向に回転し始める。
【0056】
逆方向に回転する給送ローラー対40の給送方向における上流側に、中間ローラー33の回転により給送方向における下流側に給送される用紙Pの先端が当接する。そして、中間ローラー33の回転が停止される。すると、中間ローラー33は、正方向にも逆方向にも回転しにくくなる。その結果、中間ローラー33とアシストローラー35とによる用紙Pにおける被挟持部分の移動は、中間ローラー33とアシストローラー35によって規制される。
【0057】
この状態では、用紙Pの先端は、各給送用ローラー40a,40bの給送方向における上流側に当接するとともに、用紙P自体の給送方向における上流側への移動は、中間ローラー33とアシストローラー35によって規制されている。そのため、用紙Pにおいて被挟持部分よりも先端側の部分は、撓み許容空間36内で撓む。すると、逆方向に回転する各給送用ローラー40a,40bに接触する用紙Pの先端は、用紙Pの撓みを解消させる反発力を各給送用ローラー40a,40bに付与する。これにより、用紙Pの先端のスキューが徐々に解消される。
【0058】
次に、手差し用の給送経路に沿って用紙Pを給送する際に、逆方向に回転している給送ローラー対40の給送方向における上流側に用紙Pの先端を当接させてスキューを解消する方法について説明する。ユーザーは、用紙Pが手差し用の給送経路に沿って給送されるように用紙Pを押し込む。
【0059】
給送された用紙Pの先端がセンサーレバー44に接触し、センサーレバー44が回転すると、用紙検知センサー45によって用紙Pの先端が検知される。すると、給送ローラー対40を構成する各給送用ローラー40a,40bが逆方向に回転し始める。
【0060】
この状態では、用紙Pの先端は、各給送用ローラー40a,40bの給送方向における上流側に当接するとともに、コロローラー54と共に用紙Pを挟持する負荷用ローラー53には、負荷用ローラー53を逆方向に回転させるための力、即ち反転力が付与される。しかし、この反転力は上記所定の力未満であるため、負荷用ローラー53の逆方向への回転は、トルクリミッター55によって規制される。その結果、用紙Pが給送方向における上流側に戻されることが、規制される。
【0061】
すると、用紙Pにおいて負荷用ローラー及びコロローラー54によって挟持される部分よりも先端側の部分は、撓み許容空間36内で撓む。そして、逆方向に回転する各給送用ローラー40a,40bに接触する用紙Pの先端は、用紙Pの撓みを解消させる反発力を各給送用ローラー40a,40bに付与する。これにより、用紙Pの先端のスキューが徐々に解消される。
【0062】
次に、剛性などが異なる記録媒体によって、スキューを解消する方法を選択することについて説明する。剛性が比較的小さい普通紙などを第1の媒体とする。剛性が比較的大きい写真専用紙や封筒などを第2の媒体とする。
【0063】
自動給送経路に沿って第1の媒体を給送する際には、第1の媒体の先端を、正方向に回転する給送ローラー対40に挟持された状態で給送方向における下流側に移動させた後、逆方向に回転する給送ローラー対40に挟持された状態で給送方向における上流側に戻す方法を用いる。自動給送経路に沿って第2の媒体を給送する際には、逆方向に回転している給送ローラー対40の給送方向における上流側に第2の媒体の先端を当接させる方法を用いる。これにより、撓み許容空間において、第2の媒体の撓みは、第1の媒体の撓みより小さい。
【0064】
同様に、手差し用の給送経路に沿って第1の媒体を給送する際には、第1の媒体の先端を、正方向に回転する給送ローラー対40に挟持された状態で給送方向における下流側に移動させた後、逆方向に回転する給送方向における上流側に戻す方法を用い、手差し用の給送経路に沿って第2の媒体を給送する際には、逆方向に回転している給送ローラー対40の給送方向における上流側に第2の媒体の先端を当接させる方法を用いる。これにより、撓み許容空間において、第2の媒体の撓みは、第1の媒体の撓みより小さい。尚、剛性が同じ場合であっても、厚さによって、上記方法を採用してもよい。
【0065】
このようにすることにより、厚さや剛性などが異なる第1の媒体、第2の媒体によって、第1の媒体、第2の媒体の撓みの大きさを選択することができる。すなわち、第2の媒体の撓みを、第1の媒体の撓みより小さくすることができるので、第2の媒体が損傷することを抑制できる。
【0066】
本実施形態における記録部13では、手差し用の給送経路と自動給送経路とは、負荷用ローラー53の給送方向における下流側かつアシストローラー35の給送方向における下流側で合流したが、アシストローラー35を備えずに、トルクリミッター55を設けた負荷用ローラー53を中間ローラー33の上部に従動可能に当接させ、負荷用ローラー53と中間ローラー33とのニップ位置で合流する構成でもよい。すなわち、手差しトレイ50に載置された用紙Pが負荷用ローラー53と中間ローラー33とに挟持されて給送方向における下流側に給送され、給紙カセット30に載置された用紙Pが負荷用ローラー53と中間ローラー33とに挟持されて給送方向における下流側に給送される構成でもよい。
【0067】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)手差し用の給送経路に負荷付与機構52を設けたことにより、自動給送装置31での用紙Pのスキュー解消方法と同等の方法で、手差しで給送された用紙Pのスキューを解消させることができる。その結果、手差しで給送した用紙Pに対する記録ミスの発生を抑制することができる。
【0068】
(2)しかも、手差しで給送された用紙Pを撓ませる空間は、自動給送用の給送経路に沿って給送された用紙Pを撓ませるための撓み許容空間36である。そのため、撓み許容空間36とは別の位置に、手差し用の撓み許容空間を設ける場合と比較して、装置全体の大型化を抑制することができる。
【0069】
(3)負荷用ローラー53の正方向への回転はトルクリミッター55によって規制されない。そのため、ユーザーは、引っかかり感を余り感じることなく、用紙Pの先端を給送ローラー対40の近傍にセットすることができる。
【0070】
(4)また、負荷付与機構52に設けられるトルクリミッター55は、所定の力以上の反転力が負荷用ローラー53から伝達される場合には、該負荷用ローラー53の逆方向への回転が許容される。そのため、給送ローラー対40への給送途中の用紙Pを、ユーザーからの力によって手差し用の給送経路から引き抜くことができる。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・実施形態において、トルクリミッターは、負荷用ローラーを正方向に回転させるための力が規定力未満である場合には、該負荷用ローラー53の正方向への回転を規制するような構成であってもよい。
【0072】
・実施形態において、負荷付与機構52Aは、負荷用ローラー53の外周側に、図9に示すように、用紙Pとの間で大きな摩擦力を発生させるために、コルクやゴムなどで構成されるリング部材(当接部材)60を設けてもよい。この場合、トルクリミッター55を省略してもよい。
【0073】
・実施形態において、負荷用ローラー53及びコロローラー54の代わりに、コルクやゴムなどで構成される当接部材を設けてもよい。この場合、手差し用の給送経路に沿って給送される用紙Pに、当接部材を押し付けるための付勢部材を設けてもよい。
【0074】
・実施形態において、手差し用の給送経路において給送ローラー対40よりも給送方向における上流側の経路の少なくとも一部分を、図10に示すように、手差し用の給送経路に沿って搬送される用紙Pの被記録面と直交する方向の成分を含むように蛇行する蛇行経路としてもよい。この場合、負荷付与機構52Bは、蛇行経路に沿って媒体を案内するための案内部65を有しており、該案内部65は、撓み許容空間36を挟んで給送ローラー対40の反対側に配置されることが好ましい。
【0075】
このように構成しても、給送用ローラー40a,40bが逆方向に回転した際に、用紙P自体が給送方向における上流側に戻されることを、案内部65によって抑制できる。その結果、撓み許容空間36で用紙Pを撓ませることができ、該用紙Pのスキューを解消することができる。
【0076】
・実施形態において、記録装置は、自動給送装置31を備えない構成であってもよい。この場合、手差し用の給送経路は、水平方向に延びる形状であってもよい。
・実施形態において、記録装置は、画像読取り部14を備えない構成であってもよい。
【0077】
・実施形態において、記録機構は、キャリッジ24の走査方向が用紙Pの給送方向と一致する所謂ラテラルスキャンタイプであってもよい。また、記録機構は、記録時にはキャリッジ24に支持される記録ヘッド26を移動させないタイプであってもよい。
【0078】
・実施形態において、記録部は、インクカートリッジ27がキャリッジ24に搭載されない所謂オンキャリッジタイプであってもよい。
・実施形態において、媒体は、撓むことが可能な媒体であれば用紙P以外の他の媒体(例えば、プラスチックフィルム、布あるいは金属箔)であってもよい。
【0079】
・実施形態において、記録機構は、ワイヤインパクト式、熱転写式、電子写真式などの記録ヘッドを備える記録機構であってもよい。
・上記実施形態では、記録部を、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置としてもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置としてもよい。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。
【0080】
次に、上記実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記駆動源を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記給送方向における上流側から給送された媒体の先端を前記給送ローラー対が挟持する場合に、該給送ローラー対を逆方向に回転させ、
前記給送ローラー対による媒体の先端の挟持が解消された後に、該給送ローラー対を正方向に回転させ、該媒体を前記記録ヘッド側に給送することを特徴とする記録装置。
【0081】
(ロ)前記当接部材は、正逆両方向に回転自在な負荷用ローラーであり、
前記負荷付与手段は、前記給送方向における下流側に給送される媒体に前記負荷用ローラーが当接する場合に該負荷用ローラーの正方向への回転を許容する一方で、前記給送方向における上流側に戻される媒体に前記負荷用ローラーが当接する場合に該負荷用ローラーに対して逆方向への回転を規制する力を付与する規制機構をさらに有し、
前記規制機構は、前記給送方向における上流側に戻される媒体から前記負荷用ローラーに付与される力が所定の力以上である場合に、該負荷用ローラーの逆方向への回転を許容することを特徴とする記録装置。
【0082】
上記構成によれば、ユーザーが、手差し用の給送経路に沿って媒体を差し込む際には、負荷付与手段(負荷用ローラー)と媒体との間に発生する負荷を小さくすることができる。そのため、ユーザーは、引っかかり感を余り感じることなく、媒体の先端を給送ローラー対の近傍にセットすることができる。
【0083】
一方、媒体の先端を挟持する各給送用ローラーの逆方向への回転が開始された場合、規制機構によって負荷用ローラーの逆方向への回転が規制される。その結果、負荷用ローラーは、媒体の被当接部分に対して、給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷を付与することができる。したがって、撓み許容空間内で媒体を撓ませることができ、ひいては媒体のスキューを解消させることができる。
【0084】
しかも、媒体の被当接部分に上記負荷を付与するための規制機構は、給送方向における上流側に戻される媒体から負荷用ローラーに付与される力が所定の力以上である場合、負荷用ローラーの逆方向への回転が許容される。そのため、給送ローラー対への給送途中の媒体を、ユーザーからの力によって手差し用の給送経路から引き抜くことができる。
【符号の説明】
【0085】
11…記録装置の一例としての複合機、26…記録ヘッド、30…給紙カセット、31…自動給送装置、33…搬送用ローラーの一例としての中間ローラー、36…撓み許容空間、40…給送ローラー対、41…駆動源の一例としてのPFモーター、52,52A,52B…負荷付与機構、53…当接部材の一例としての負荷用ローラー、55…規制機構の一例としてのトルクリミッター、60…当接部材の一例としてのリング部材、65…案内部、CONT…制御手段の一例としての制御装置、P…媒体の一例としての用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手差し用の給送経路に沿って給送された媒体に記録を施す記録ヘッドと、
駆動源からの駆動力によって正逆両方向に回転し、正方向への回転によって前記手差し用の給送経路に沿って媒体を前記記録ヘッド側に給送する給送ローラー対と、
前記手差し用の給送経路に沿った媒体の給送方向において前記給送ローラー対よりも上流側に配置されると共に、前記給送ローラー対の逆方向への回転によって先端が前記給送方向における上流側に戻される媒体に対して前記給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷を付与する負荷付与手段と、を備え、
前記給送方向において前記給送ローラー対と前記負荷付与手段との間には、前記手差し用の給送経路に沿って給送される媒体の撓みを許容する撓み許容空間が介在していることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
媒体保持部に保持される媒体を、自動給送用の給送経路に沿って前記給送ローラー対まで給送する自動給送装置をさらに備え、
前記自動給送装置には、駆動源からの駆動力によって回転する搬送用ローラーが設けられており、
前記搬送用ローラーは、前記撓み許容空間を挟んで前記給送ローラー対の反対側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記負荷付与手段は、前記手差し用の給送経路に沿って給送される媒体に当接する当接部材を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記手差し用の給送経路において前記給送ローラー対よりも前記給送方向における上流側の経路の少なくとも一部分は、前記手差し用の給送経路に沿って搬送される媒体の被記録面と直交する方向の成分を含むように蛇行する蛇行経路であり、
前記負荷付与手段は、前記蛇行経路に沿って媒体を案内するための案内部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
手差し用の給送経路に沿って給送された媒体に記録を施す記録ヘッドと、
駆動源からの駆動力によって正逆両方向に回転し、正方向への回転によって前記手差し用の給送経路に沿って媒体を前記記録ヘッド側に給送する給送ローラー対と、
前記手差し用の給送経路に沿った媒体の給送方向において前記給送ローラー対よりも上流側に配置されると共に、逆方向に回転する前記給送ローラー対の前記給送方向における上流側に先端が当接する媒体に対して前記給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷を付与する負荷付与手段と、を備え、
前記給送方向において前記給送ローラー対と前記負荷付与手段との間には、前記手差し用の給送経路に沿って給送される媒体の撓みを許容する撓み許容空間が介在していることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
媒体保持部に保持される媒体を、自動給送用の給送経路に沿って前記給送ローラー対まで給送する自動給送装置をさらに備え、
前記自動給送装置には、駆動源からの駆動力によって回転する搬送用ローラーが設けられており、
前記搬送用ローラーは、前記撓み許容空間を挟んで前記給送ローラー対の反対側に位置していることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
手差し用の給送経路に沿って給送された第1および第2の媒体に記録を施す記録ヘッドと、
駆動源からの駆動力によって正逆両方向に回転し、正方向への回転によって前記手差し用の給送経路に沿って前記第1および第2の媒体を前記記録ヘッド側に給送する給送ローラー対と、
前記手差し用の給送経路に沿った媒体の給送方向において前記給送ローラー対よりも上流側に配置されると共に、正方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて先端が前記給送方向における下流側に移動した後、逆方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて前記先端が前記給送方向における上流側に戻される前記第1の媒体、および逆方向に回転する前記給送ローラー対の前記給送方向における上流側に先端が当接する前記第2の媒体に対して前記給送方向における上流側への移動を抑制するための負荷を付与する負荷付与手段と、を備え、
前記給送方向において前記給送ローラー対と前記負荷付与手段との間には、前記手差し用の給送経路に沿って給送される前記第1および第2の媒体の撓みを許容する撓み許容空間が介在していることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
媒体保持部に保持される媒体を、自動給送用の給送経路に沿って前記給送ローラー対まで給送する自動給送装置をさらに備え、
前記自動給送装置には、駆動源からの駆動力によって回転する搬送用ローラーが設けられており、
前記搬送用ローラーは、前記撓み許容空間を挟んで前記給送ローラー対の反対側に位置していることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記搬送用ローラーは、正方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて先端が前記給送方向における下流側に移動した後、逆方向に回転する前記給送ローラー対に挟持されて先端が前記給送方向における上流側に戻される前記第1の媒体、および逆方向に回転する前記給送ローラー対の前記給送方向における上流側に先端が当接する前記第2の媒体に対して回転を停止させることにより前記給送方向における上流側への移動を抑制することを特徴とする請求項8に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−100185(P2013−100185A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178143(P2012−178143)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】