記録装置
【課題】詰まった被記録媒体を取り除く際、キャリッジに接続された信号線やインク供給チューブなどがその妨げになってしまうことを考慮した記録装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出して記録する記録ヘッド64が設けられているキャリッジ63は、用紙Pの送り方向に直交する方向に移動する。インク供給チューブ67またはヘッド信号線68は、キャリッジ63から延出してキャリッジ63の移動に追従して変形する。ロッド72、クリップ73、およびホルダ74は、詰まった用紙Pを送り経路から除去するための作業が行われる領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させる。本発明は記録装置に適用できる。
【解決手段】インクを吐出して記録する記録ヘッド64が設けられているキャリッジ63は、用紙Pの送り方向に直交する方向に移動する。インク供給チューブ67またはヘッド信号線68は、キャリッジ63から延出してキャリッジ63の移動に追従して変形する。ロッド72、クリップ73、およびホルダ74は、詰まった用紙Pを送り経路から除去するための作業が行われる領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させる。本発明は記録装置に適用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置に関し、特に、被記録媒体に記録する記録装置に関する。
記録装置には、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリ等の装置が含まれる。
【背景技術】
【0002】
印字ヘッド(記録ヘッド)を用紙幅方向に往復運動させ印字を行うプリンターにおいて、インクヘッドへの信号線や、オフキャリッジ方式のインクジェットプリンターではインク供給用チューブが、印字ヘッドを搭載したキャリッジに接続されている。インクヘッドへの信号線またインク供給用チューブは、キャリッジの往復動作によりその位置や形状を変化させる。
【0003】
ところで従来、プリンターにはジャム検知時にギャップ調整モーターを利用してキャリッジを紙から離間させる方向に移動させた後、主走査モーターによってジャム発生前のキャリッジの移動方向と反対へキャリッジを移動させ、ユーザーへジャム処理を要求するようにしているものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−166370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紙詰まり解除時に、インク供給チューブが紙詰まりの生じた領域に残っており、インク供給チューブが邪魔になる恐れがある。
すなわち、ジャム(紙詰まり)等のエラーによりキャリッジが停止する位置によっては、ユーザーのエラー復帰操作を妨げる位置に信号線やインク供給チューブが存在する場合があり、詰まった紙を取り除く作業の邪魔になる。
【0006】
また、この場合、ユーザーは手で信号線やインク供給チューブに直接触れて、これを紙詰まりの生じた領域から退避させる必要がある。これにより、信号線や供給チューブの緩みや、最悪の場合抜け、破損に至る可能性がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、経路内から被記録媒体を取り除くユーザー作業を行う際、キャリッジに接続された信号線やインク供給チューブなどがその妨げになってしまうことを考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の記録装置は、被記録媒体が送られる経路を形成する経路形成部材と、前記経路の送り方向に前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、前記経路を送り方向に搬送されている前記被記録媒体の部分のうち、前記経路形成部材から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッドが設けられ、前記被記録媒体の送り方向に交差する方向に移動するキャリッジと、前記キャリッジから延出して前記キャリッジの移動に追従して変形する可撓性部材と、前記可撓性部材が占有する空間から、前記可撓性部材が退避する方向に前記可撓性部材を移動させる退避手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、可撓性部材が占有する空間から退避する方向に可撓性部材を移動させる退避手段を備えるので、装置内部にユーザーが手を差し入れて作業を行う必要が生じた場合に可撓性部材が退避することで、当該可撓性部材がユーザー作業の妨げにならず、またユーザーの手が可撓性部材に触れることを防止できる。
【0010】
従って、可撓性部材にインクが付着していた場合に、該付着していたインクによって手または衣服が汚れる虞がない。また、可撓性部材としてのインク供給チューブや信号線が破損してしまう虞がない。またさらに、インク供給チューブや信号線がキャリッジの接続部から抜けてしまう虞がない。尚、可撓性部材が占有する空間とは、可撓性部材を退避させる前に可撓性部材が占有する空間を意味する。
【0011】
また、可撓性部材を退避させる方向は、ユーザー作業の内容や装置構成に基づいて、適宜設定し得る事項である。また、可撓性部材としては、インク供給チューブやフラットケーブル(平型電線ともいう)などの信号線を挙げることができる。
【0012】
本発明の第2の態様の記録装置は、被記録媒体が送られる経路を形成する経路形成部材と、前記経路の送り方向に前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、前記経路を送り方向に搬送されている前記被記録媒体の部分のうち、前記経路形成部材から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッドが設けられ、前記被記録媒体の送り方向に交差する方向に移動するキャリッジと、前記キャリッジから延出して前記キャリッジの移動に追従して変形する可撓性部材と、前記記録装置の内部にユーザーが手を差し入れて作業を行う際のユーザー作業領域から、前記可撓性部材が退避する方向に前記可撓性部材を変形または移動させる退避手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば記録装置の内部にユーザーが手を差し入れて作業を行う必要が生じた場合、例えば、経路に被記録媒体が詰まる所謂、ジャムが生じた場合に、退避手段によって可撓性部材がユーザー作業領域から退避する方向に変形または移動するので、可撓性部材がユーザー作業の妨げにならず、またユーザーの手が可撓性部材に触れることを防止できる。
【0014】
従って、可撓性部材にインクが付着していた場合に、該付着していたインクによって手または衣服が汚れる虞がない。また、可撓性部材としてのインク供給チューブや信号線が破損してしまう虞がない。またさらに、インク供給チューブや信号線がキャリッジの接続部から抜けてしまう虞がない。
尚、本明細書において「ユーザー」とは、エンドユーザーに限られず、記録装置の組立作業或いはアフターメンテナンスを行う人など、記録装置を扱う全ての人を意味するものである。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、退避手段は、前記記録装置の内部にアクセスする為の開閉可能なカバーの開放動作に連動して可撓性部材を変形または移動させることを特徴とする。
本態様によれば、第1のまたは第2の態様と同様の作用効果に加え、カバーを開放すると、可撓性部材が変形または移動するので、面倒な操作を必要とせずに被記録媒体を除去することができ、より確実にユーザーの手が可撓性部材に触れることを防止することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記退避手段は、その一端側が前記カバーに接続され、他端側において前記可撓性部材を支持するとともに当該他端が当該可撓性部材の変形に応じて変位可能な支持部材で構成されることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、可撓性部材を支持する部分が変位可能であることから、可撓性部材に加わる応力をより小さくすることができ、これより、インク供給チューブや信号線が破損してしまう可能性をより小さくすることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一の態様において、可撓性部材は、インクを記録ヘッドに供給するためのインク供給チューブであることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第4の態様と同様の作用効果に加え、インク供給チューブの破損によるインクの飛び散りを防止することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一の態様において、可撓性部材は、インクを吐出するための電気的な信号を伝送するための電線であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第4の態様と同様の作用効果に加え、電線の破損による記録ができなくなってしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】プリンター複合機の外観を示す前方斜視図である。
【図2】プリンター複合機の内部の概略を示す側断面図である。
【図3】プリンター複合機の内部の概略を示す斜視図である。
【図4】フロントカバーが閉じられているプリンター複合機の内部の概略を示す平面図である。
【図5】フロントカバーが開かれているプリンター複合機の内部の概略を示す平面図である。
【図6】フロントカバーが閉じられているプリンター複合機のフロントカバー、インク供給チューブ、ヘッド信号線、ロッド、クリップ、およびホルダの状態を示す図である。
【図7】フロントカバーが開かれているプリンター複合機のフロントカバー、インク供給チューブ、ヘッド信号線、ロッド、クリップ、およびホルダの状態を示す図である。
【図8】キャリッジが本体の左側に位置し、フロントカバーが閉じられているプリンター複合機のロッド、クリップ、およびホルダを示す平面図である。
【図9】キャリッジが本体の左側に位置し、フロントカバーが閉じられているプリンター複合機のロッド、クリップ、およびホルダを示す斜視図である。
【図10】キャリッジが本体の左側に位置し、フロントカバーが開かれているプリンター複合機のロッド、クリップ、およびホルダを示す平面図である。
【図11】キャリッジが本体の左側に位置し、フロントカバーが開かれているプリンター複合機のロッド、クリップ、およびホルダを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態のプリンター複合機1の外観を示す前方斜視図である。図2は、本実施例のプリンター複合機1の内部の概略を示す側断面図である。図3は、プリンター複合機1の内部の概略を示す斜視図である。
【0021】
プリンター複合機1は、記録装置の一例であり、印刷装置、複写機、およびファクシミリ装置の機能を有し、被記録媒体の一例である用紙P(後述する)に記録する。プリンター複合機1は、本体11と媒体搬送部12とを備えている。本体11は、記録および読み取りの機能を有する。媒体搬送部12は、写真や文書等の情報が記録されている用紙Sを、本体11によって用紙Sに記録されている情報が読み取りできるように搬送する。
【0022】
本体11は、ケース21、フロントカバー22、スキャナー23、操作部24、載置部25、搬送部26、送り経路形成部27、反転経路形成部28、記録部29、排出部30、フレーム31、およびスタッカー32を備える。なお、プリンター複合機1の側面のうち、フロントカバー22、操作部24、およびスタッカー32が設けられている側がプリンター複合機1の前側、すなわち、正面である。また、プリンター複合機1の側面のうち、媒体搬送部12が設けられている側がプリンター複合機1の上側、すなわち、上面である。
媒体搬送部12は、載置部33およびスタッカー34を備える。
【0023】
なお、プリンター複合機1に対して前後の方向をY軸で図示し、上下の方向をZ軸で図示し、左右の方向をX軸で図示する。また、以下、X軸方向のうち、図1中の左側を単に左側と称し、X軸方向のうち、図1中の右側を単に右側と称する。さらに、以下、Y軸方向のうち、図1中の手前側を単に前側と称し、Y軸方向のうち、図1中の奥側を単に後側と称する。さらにまた、以下、Z軸方向のうち、図1中の上側を単に上側と称し、Z軸方向のうち、図1中の下側を単に下側と称する。
【0024】
ケース21は、本体11の筐体であり、スキャナー23、搬送部26、送り経路形成部27、反転経路形成部28、記録部29、排出部30、およびスタッカー32などを格納する。フロントカバー22は、本体11の前側(正面)に設けられている。フロントカバー22は、一対のヒンジ51によってケース21に回動自在に支えられることで、ケース21に開閉可能に取り付けられている。
【0025】
言い換えると、フロントカバー22は、一対のヒンジ51を中心にフロントカバー22の上側の端部が前方へ倒れることで、開くように構成されている。フロントカバー22を開くことにより、本体11の前面に開口部が形成され、ユーザーが本体11の内部を操作することができるようになる。例えば、紙詰まりの場合など、ユーザーは、フロントカバー22を開き、本体11の内部から詰まった紙を取り出すことができる。
【0026】
スキャナー23は、本体11の上側に設けられ、用紙Sに記録されている写真や文書等の情報を読み取る。例えば、媒体搬送部12によって、用紙Sが送られた場合、スキャナー23は、用紙Sに記録されている情報を読み取る。
【0027】
操作部24は、プリンター複合機1の状態に関する情報を表示すると共に、ユーザーからの指示を取得する。操作部24は、表示部52およびボタン53を備える。表示部52は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)表示パネル、またはLED(Light Emitting Diode)などのランプ等からなり、プリンター複合機1の状態に関する情報を表示する。
【0028】
ボタン53は、ユーザーによって押圧された場合、所定の信号を図示せぬ制御部に出力し、これによりユーザーの指示を取得する。すなわち、ユーザーは、表示部52によってプリンター複合機1の状態を確認し、所望のボタン53に押圧する操作を加えることにより、プリンター複合機1の設定条件の変更や、各種実行指示をすることができる。
【0029】
載置部25は、被記録媒体の一例である用紙Pを載置することができるように構成されている。載置部25は、ペーパーサポート54およびホッパー55からなる。ペーパーサポート54は、載置されている用紙Pを支える。ホッパー55は、その下側が搬送部26から離反したり搬送部26に近接したりすることで、載置部25に載置されている用紙Pを搬送部26に供給しないで保持したり、用紙Pを搬送部26に供給したりする。
【0030】
なお、被記録媒体の一例である用紙Pは、本体11の下方に着脱可能に設けられたカセット56にも格納され、プリンター複合機1は、載置部25の用紙Pまたはカセット56の用紙Pのいずれかを選択して記録できる。
【0031】
搬送部26は、搬送手段の一例であり、載置部25に載置された用紙Pまたはカセット56に格納された用紙Pを、送り経路形成部27によって形成される送り経路を介して、記録する場合の方向である送り方向に記録部29に搬送する。送り経路形成部27は、経路形成部材の一例であり、各種のプラスチック材料や金属製の案内部材などによって構成される。送り経路形成部27は、用紙Pが送られる送り経路であって、載置部25またはカセット56から記録部29を介してスタッカー32までの送り経路を形成する。なお、図2中において黒い矢印は、送り経路を示す。
【0032】
搬送部26は、ローラー57、ローラー58、ローラー59、アーム60、およびローラー対61からなる。ローラー57、ローラー58、ローラー59、アーム60、およびローラー対61は、図示せぬモーター、ギア、またはベルトなどからなる駆動部によって駆動される。
【0033】
ローラー57は、駆動部によって図2中の時計方向に回転させられ、ホッパー55の下方が近接すると、載置部25に載置されている用紙Pのうち、最も上側に載置されている用紙Pの下方の端部と接触し、これにより、送り経路を介して、用紙Pを下側に搬送することで、送り経路下流側のローラー58に送る。
ローラー58は、駆動部によって図2中の反時計方向に回転させられ、ローラー57から送り経路を介して搬送されてきた用紙Pをローラー対61に送る。
【0034】
ローラー59は、カセット56に格納されている用紙Pに対して接離移動可能なアーム60の自由端に設けられ、駆動部によって図2中の反時計方向に回転させられる。アーム60が用紙Pに接する側に移動すると、ローラー59は、カセット56に格納されている用紙Pのうち、最も上側に格納されている用紙Pの奥側の端部と接触し、送り経路を介して、用紙Pを上側に搬送することで、送り経路下流側のローラー58に送る。この場合、ローラー58は、ローラー59によって送り経路を介して搬送されてきた用紙Pをローラー対61に送る。
【0035】
ローラー対61は、相対する一対のローラーからなり、駆動部によって上側のローラーが図2中の時計方向に、下側のローラーが図2中の反時計方向に回転させられ、用紙Pを挟持して、ローラー58から送り経路を介して搬送されてきた用紙Pを記録部29および排出部30に送る。
【0036】
記録部29は、送り経路を介してローラー対61によって搬送されてきた用紙Pにインクを吐出して記録する。すなわち、記録部29は、送り経路を介して搬送されてきた用紙Pの部分のうち、送り経路形成部27から露出している部分にインクを吐出して記録する。より詳細には、記録部29は、用紙Pの用紙幅で往復運動し、印字または描画を行う。
【0037】
また、反転経路形成部28は、各種のプラスチック材料や金属製の案内部材などによって構成され、用紙Pの裏表を反転させるための経路である反転経路を形成する。なお、図2中において白抜きの矢印は、反転経路を示す。両面記録モードの場合、用紙Pの一方の面(表面)に対しての記録された後に、駆動部によってローラー対61およびローラー対62(後述する)が逆回転させられ、用紙Pは、反転経路を介して、ローラー58の下側の2つのローラーに送られる。すなわち、用紙Pは、ローラー58の下側から上側へ回り込んで再びローラー対61へ送られる。
【0038】
これによって、用紙Pの面のうち、既に記録された用紙Pの面(表面)が媒体支持部65側となり、用紙Pの他方の面(裏面)が記録ヘッド64側となる。そして、ローラー58から送られ、駆動部によって正転させられたローラー対61によって送り経路に送られた用紙Pの裏面(このとき裏面には、まだ記録されていない)に、記録部29は、インクを吐出して記録する。
【0039】
記録部29は、キャリッジ63、記録ヘッド64、および媒体支持部65を含む。キャリッジ63は、記録部29が記録を実行する場合、一例として図示しないモーターの動力によってX軸方向、すなわち用紙Pの幅方向に延設された図示しないガイド部材にガイドされながら移動する。記録ヘッド64は、キャリッジ63における用紙Pと対向する側に設けられている。記録ヘッド64の面のうち、用紙Pと対向する面には、インクを吐出するノズル(図示せず)が形成されている。媒体支持部65は、記録ヘッド64と対向する位置に設けられており、用紙Pと記録ヘッド64との間の距離を所定の長さに保つ。
【0040】
言い換えれば、キャリッジ63には、送り経路を送り方向に搬送されている用紙Pの部分のうち、送り経路形成部27から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッド64が設けられ、キャリッジ63は、用紙Pの送り方向に直交する方向に移動する。
【0041】
また、インクを格納するインクカートリッジ66からキャリッジ63にインクを供給するためのインク供給チューブ67が設けられている。キャリッジ63とは別にインクカートリッジ66を設けることにより、インクカートリッジ66により多くのインクを格納することができる。
【0042】
インク供給チューブ67は、可撓性部材の一例であり、樹脂製のチューブなどで形成され、キャリッジ63からから延出してキャリッジ63の移動に追従して変形する。さらに、インクを吐出するための電気的な信号を伝送するためのヘッド信号線68が設けられている。ヘッド信号線68は、可撓性部材の一例であり、1または複数の電線からなる配線ケーブルまたはワイヤーハーネスなどであり、キャリッジ63からから延出してキャリッジ63の移動に追従して変形する。
【0043】
インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の一端は、キャリッジ63の前側に設けられたコネクタ69によってキャリッジ63に接続されている。インク供給チューブ67の他端は、インクカートリッジ66からインクが供給されるコネクタ70に接続されている。コネクタ70は、本体11の内部であって、インクカートリッジ66の左側に設けられている。
【0044】
すなわち、コネクタ70からコネクタ69までのインク供給チューブ67の配置を説明すると、コネクタ70が本体11の左側奥に設けられているので、コネクタ70から延出するインク供給チューブ67は、本体11の左側の側面の内側に沿うように本体11の前面まで延びる。さらに、インク供給チューブ67は、ケース21の前面の全部または一部の内側を左側から右側に横方向に横断するように延びる。そしてさらに、インク供給チューブ67は、右側から左側に湾曲するように弧(弦が左側となる弧)を描き、右側からコネクタ69に接続される。
【0045】
また、ヘッド信号線68の他端は、図示せぬ制御部と電気的に接続されているコネクタ71に接続されている。コネクタ71は、インクカートリッジ66の左側であって、コネクタ70の前側に設けられている。
【0046】
すなわち、コネクタ71からコネクタ69までのヘッド信号線68の配置を説明すると、コネクタ71が本体11の左側略中央に設けられているので、コネクタ71から延出するヘッド信号線68は、インク供給チューブ67と共に、本体11の左側の側面の内側に沿うように本体11の前面まで延びる。さらに、ヘッド信号線68は、インク供給チューブ67と共に、ケース21の前面の全部または一部の内側を左側から右側に横方向に横断するように延びる。そして、ヘッド信号線68は、インク供給チューブ67と共に、右側から左側に湾曲するように弧を描き、右側からコネクタ69に接続される。
【0047】
排出部30は、記録部29によって記録された用紙Pをスタッカー32に排出する。排出部30は、ローラー対62を有している。ローラー対62は、相対する一対のローラーからなり、駆動部によって上側のローラーが図2中の時計方向に、下側のローラーが図2中の反時計方向に回転させられ、用紙Pを挟持して、ローラー対61から送り経路を介して搬送され、記録部29によって記録された用紙Pをスタッカー32に送る。
【0048】
尚、フレーム31は、ローラー対62のうち図中上側のローラーを支持するフレームであって、このフレーム31の上流側と下流側では、用紙搬送経路が露呈する様になっている。
スタッカー32は、伸縮自在に設けられ、記録された用紙Pを載置する。
【0049】
次に、媒体搬送部12の載置部33は、写真や文書等の情報が記録されている用紙Sが載置され、用紙Sを保持する。媒体搬送部12の図示せぬ搬送部は、本体11のスキャナー23によって用紙Sに記録されている情報が読み取りできるように用紙Sを搬送し、情報が読み取られた用紙Sは、スタッカー34に載置される。スタッカー34は、読み取り後の用紙Sを保持する。
【0050】
次に、図4〜図11を参照して、送り経路において用紙Pが詰まった場合、送り経路形成部27から露出している露出部分から用紙Pを取り出すことで詰まった用紙Pを送り経路から除去するための作業が行われるユーザー作業領域から退避する方向のインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の変形または移動について説明する。
【0051】
図4は、フロントカバー22が閉じられているプリンター複合機1の内部の概略を示す平面図である。図5は、フロントカバー22が開かれているプリンター複合機1の内部の概略を示す平面図である。
【0052】
図4および図5において、領域Aは、送り経路において用紙Pが詰まった場合、送り経路形成部27から露出している露出部分から取り出すことで詰まった用紙Pを送り経路から除去するための作業(以下、除去作業と称する)がユーザーによって行われるユーザー作業領域を示す。
【0053】
また、図4および図5において、キャリッジ63が本体11の左側に位置している場合のキャリッジ63、記録ヘッド64、コネクタ69、インク供給チューブ67、およびヘッド信号線68は、実線で示され、キャリッジ63が本体11の右側に位置している場合のキャリッジ63、記録ヘッド64、コネクタ69、インク供給チューブ67、およびヘッド信号線68は、点線で示されている。
【0054】
キャリッジ63が本体11の左側に位置している場合、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、ケース21の内側の前側に配置される部分は、ケース21の内側の前側ほぼ中央に弧が描かれるように撓み、略U字状に曲げられる。この場合、U字を形成するインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、コネクタ69側のU字の半分の直線部分および湾曲部分が領域Aに懸かることになる。
【0055】
一方、キャリッジ63が本体11の右側に位置している場合、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、ケース21の内側の前側に配置される部分は、ケース21の前側の内側に沿うように延び、ケース21の内側の前側の右側に弧が描かれるように撓み、略J字状に曲げられる。この場合、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68は、領域Aに懸からない。
【0056】
インク供給チューブ67およびヘッド信号線68は、退避手段の一例である、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74によって、フロントカバー22に繋がれている。ロッド72は、金属または樹脂などにより棒状に形成されている。ロッド72の一端は、クリップ73に止められている。ロッド72の他端は、ホルダ74に止められている。
【0057】
クリップ73は、樹脂または金属などにより形成され、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68を支持する。キャリッジ63が移動するとインク供給チューブ67およびヘッド信号線68は変形する。これに対応して、クリップ73は、キャリッジ63の移動に追従してインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の支持位置を変位可能に支持する。
【0058】
ホルダ74は、樹脂または金属などにより形成され、フロントカバー22の内側の上側に止められている。ホルダ74は、キャリッジ63の往復運動の阻害とならないよう、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の動作にあわせて左右に(X軸方向に)自由に首を振る構造となっている。
【0059】
図5に示されるように、キャリッジ63が本体11の左側に位置している場合、フロントカバー22が開かれると、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74によってインク供給チューブ67およびヘッド信号線68が前方に引っ張られるので、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68は、除去作業が行われる領域Aから退避する方向に変形または移動させられる。
【0060】
図6は、フロントカバー22が閉じられているプリンター複合機1のフロントカバー22、インク供給チューブ67、ヘッド信号線68、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74の状態を示す図である。図7は、フロントカバー22が開かれているプリンター複合機1のフロントカバー22、インク供給チューブ67、ヘッド信号線68、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74の状態を示す図である。
【0061】
図6に示されるように、クリップ73によるインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の支持位置が変位可能とされているので、フロントカバー22が閉じられている状態において、キャリッジ63の移動によるインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の変形が妨げられない。従って、記録を行う際のキャリッジ63の移動に影響を与えることがなく、確実に記録が行われる。
【0062】
図7に示されるように、矢印Bのように、一対のヒンジ51によってケース21に回動自在に支えられているフロントカバー22が開かれると、フロントカバー22の内側の上側に止められているホルダ74によって、ロッド72がプリンター複合機1の前方向に移動させられる。これにより、矢印Cに示されるように、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68を支持するクリップ73がプリンター複合機1の前方向に移動することで、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68が前方向に移動し、領域Aの外に出される。
【0063】
このように、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68が、キャリッジ63から延出してキャリッジ63の移動に追従して変形する構成において、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74は、送り経路から用紙を除去するための作業が行われる領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させる。
【0064】
エラーなどによりキャリッジが左側付近で停止した場合、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68は除去作業が行われる領域に侵入する。このとき、従来、ユーザーはインク供給チューブ67またはヘッド信号線を退避させてエラー処理を実施しなければならなかった。キャリッジを退避させる際、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68がエラー処理の邪魔になり、インク供給チューブ67またはヘッド信号線を破損させてしまう恐れがあった。
【0065】
これに対して、プリンター複合機1においては、キャリッジ63が左側付近で停止した場合でも、フロントカバー22にリンクさせ、フロントカバー22の開動作によりインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を引き寄せるので、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68が邪魔にならず、これにより、ユーザーの除去作業を行うことのできる領域を広げることができる。
【0066】
また、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74は、フロントカバー22の開放動作に連動してインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させる。
【0067】
さらに、ロッド72は、その一端がフロントカバー22に接続され、他端がキャリッジ63の移動(インク供給チューブ67またはヘッド信号線68の変形)に応じてインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を支持する部分が変位可能である。
【0068】
インクを記録ヘッド64に供給するためのインク供給チューブ67は、可撓性部材の一例である。
インクを吐出するための電気的な信号を伝送するためのヘッド信号線68は、可撓性部材の一例である。
【0069】
なお、キャリッジ63の移動に応じて、ホルダ74がフロントカバー22の内側を左右に移動できるように、ホルダ74をフロントカバー22に装着するようにしても良い。これにより、ロッド72の長さがインク供給チューブ67またはヘッド信号線68の変形・移動に追従できる長さでない場合(長さが足りない場合)であっても、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68の変形・移動に追従して支持位置を適切に変位させることができる。
【0070】
次に、図8〜図11を参照して、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74の機能・作用についてより詳細に説明する。図8は、キャリッジ63が本体11の左側に位置し、フロントカバー22が閉じられているプリンター複合機1のロッド72、クリップ73、およびホルダ74を示す平面図である。図9は、キャリッジ63が本体11の左側に位置し、フロントカバー22が閉じられているプリンター複合機1のロッド72、クリップ73、およびホルダ74を示す斜視図である。
【0071】
図10は、キャリッジ63が本体11の左側に位置し、フロントカバー22が開かれているプリンター複合機1のロッド72、クリップ73、およびホルダ74を示す平面図である。図11は、キャリッジ63が本体11の左側に位置し、フロントカバー22が開かれているプリンター複合機1のロッド72、クリップ73、およびホルダ74を示す斜視図である。
【0072】
図8および図9に示されるように、ホルダ74は、閉じられているフロントカバー22の上側に装着され、ロッド72の一端を保持している。すなわち、一対のヒンジ51を結ぶ線からホルダ74までの距離は、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68を領域Aから退避させるのに十分な長さ(少なくとも、キャリッジ63が本体11の左側に位置しているときのクリップ73の位置から領域Aの前側までのY軸方向の距離よりも長い長さ)とされる。
【0073】
また、ロッド72は、くの字状に形成されている。より詳細には、フロントカバー22が閉じられている状態において、ホルダ74に保持されている端部側のロッド72の直線的な部分は、本体11の内部に向かって、斜め下に向かうように配置される。
【0074】
また、クリップ73と接続されている端部側のロッド72の直線的な部分は、本体11の内部において、クリップ73(すなわち、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の支持位置)から略上方向に向かうように配置される。
【0075】
尚、クリップ73は、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68がクリップ73に対して動かない様に、確実にインク供給チューブ67およびヘッド信号線68を保持することが好ましい。本実施形態では、その様に構成されているが、場合により、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68がクリップ73に対して或る程度動くように、クリップ73がインク供給チューブ67およびヘッド信号線68を緩やかに保持する様にすることもできる。
【0076】
この場合、ロッド72をくの字状に形成することにより、クリップ73を上から吊ることになり、クリップ73とインク供給チューブ67およびヘッド信号線68との間の摩擦力が小さくなるので、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68に対して、より少ない力でクリップ73をスライドできるようになる。従って、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の変形を阻害せず、記録を行う際のキャリッジ63の移動に影響を与えることがなく、確実に記録が行われるようになる。
【0077】
図8および図9に示されるように、領域Aは、3次元的な広がりを有する領域である。キャリッジ63が本体11の左側に位置している場合、フロントカバー22が閉じられている状態において、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、クリップ73に保持されているコネクタ69側の部分がクリップ73と共に領域Aに入る。
【0078】
図10および図11に示されるように、フロントカバー22が開かれると、一対のヒンジ51を結ぶ線からホルダ74までの距離だけ、ホルダ74が前側に移動することになる。ホルダ74の移動に応じて、ロッド72がクリップ73と共に前側に移動し、クリップ73は、領域Aの外に出ることになる。
【0079】
従って、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、クリップ73に保持されているコネクタ69側の部分が、領域Aの外に出る。すなわち、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74は、領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67およびヘッド信号線68を変形または移動させる。
【0080】
このように、送り経路形成部27によって、用紙Pが送られる送り経路が形成され、搬送部26によって、送り経路の送り方向に用紙Pが搬送され、送り経路を送り方向に搬送されている用紙Pの部分のうち、送り経路形成部27から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッド64が設けられているキャリッジ63が、用紙Pの送り方向に直交する方向に移動し、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68がキャリッジ63から延出してキャリッジ63の移動に追従して変形し、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74が、送り経路において用紙Pが詰まった場合、露出部分から取り出すことで詰まった用紙Pを送り経路から除去するための作業が行われる領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させる。
【0081】
従って、紙詰まり等のエラーによりキャリッジ63が左側付近で停止したとき、除去作業が行われる領域Aをインク供給チューブ67またはヘッド信号線68が遮ってしまうことを防ぎ、操作エリアを広く確保することができるため操作性が改善される。
【0082】
また、ユーザーがフロントカバー22を開いて本体11に手を入れて領域Aへアクセスした際、ユーザーの手や衣服がインク供給チューブ67またはヘッド信号線68に触れることを防止することができる。その結果、ユーザーの手や衣服が、例えば、インク供給チューブ67に付着したインクミストによって汚れる虞がない。また、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68が破損する虞や、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68がキャリッジ63から引き抜かれてしまう虞がない。
【0083】
以上のように、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68が領域Aから退避する方向に変形または移動させられるので、ユーザーは、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68に邪魔されずに、領域Aで作業をすることができ、容易に詰まった用紙Pを取り除くことができる。
【0084】
なお、キャリッジ63が左側に停止しているときにロッド72、クリップ73、およびホルダ74が効果的である旨を説明したが、停止している位置は、左側に限らない。何らかの原因でインク供給チューブ67またはヘッド信号線68が領域Aに係るようにキャリッジ63が移動可能な範囲にいずれかの位置に停止した場合であっても、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74が、領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させることができる。
【0085】
また、ロッド72の一端に設けられたクリップ73でインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を保持し、ロッド72の他端のホルダ74を固定とするため、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68の垂れを防止する機能を持たせることも出来る。
【0086】
なお、ロッド72は、金属または樹脂などにより棒状に形成されていると説明したが、紐や帯としても良く、またはバネ若しくはゴム紐などの弾性体から形成しても良い。
【0087】
また、可撓性部材の一例として、樹脂製のチューブなどで形成されるインク供給チューブ67または電線からなる配線ケーブルまたはワイヤーハーネスなどのヘッド信号線68を挙げたが、線形の可撓性の部材であれば良く、例えば、金属製のフレキシブルケーブルや電源を伝達する動力線、または光ファイバなどであっても良い。
【0088】
さらに、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74を、フロントカバー22の開放動作に連動してインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させると説明したが、これに限らず、カセット56を本体11から引き出した場合にその引き出しの動作に連動してインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させるようにしてもよい。
【0089】
なお、プリンター複合機1は、印刷装置、複写機、およびファクシミリ装置の機能を有すると説明したが、印刷装置、複写機、またはファクシミリ装置その他の装置である記録装置であってもよい。
【0090】
尚、領域A(ユーザー作業領域)は、必ずしもその領域が明確に定まるものとは限らず、また記録装置の構成要素の配置に応じて変化するものであり、専ら、何らかの理由によって装置内部に滞留している用紙を取り除く作業を行う際にユーザーの手が入る可能性のある領域である。上述した実施例における領域Aは、その一例を示すものである。
また領域Aは、フレーム31の上流側或いは下流側の様に、必ずしも経路が露呈している部分の上方領域のみならず、装置内部において用紙が滞留する可能性のある領域であったり、或いはその様な領域をも含むものである。
【0091】
また、領域Aは、上記実施形態では装置内部に滞留している用紙を取り除く作業を行う際にユーザーの手が差し入れられる可能性のある領域であるが、装置内部に手を差し入れて行う作業には用紙除去作業以外にも、例えばインクカートリッジの交換作業や、可動部への潤滑剤供給作業、摩耗部品の交換作業、など種々のものがある。従って領域Aは、ユーザー作業の内容と装置構成に応じて設定されるものであり、上記実施例には限られない。
【0092】
そして、インク供給チューブ67が占有する空間(図4において実線で示されるインク供給チューブ67が占有する空間)から、インク供給チューブ67が退避する方向にインク供給チューブ67を移動させる退避手段を備えることにより、当該インク供給チューブ67がユーザー作業の妨げにならず、またユーザーの手がインク供給チューブ67に触れることを防止できる。その際のインク供給チューブ67の退避方向は、上記実施形態の様に装置手前側とは限られず、装置奥側として設定される場合もあり、或いは上方向、下方向に設定される場合もある。
【0093】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
1 プリンター複合機、11 本体、12 媒体搬送部、21 ケース、22 フロントカバー、23 スキャナー、24 操作部、25 載置部、26 搬送部、27 送り経路形成部、28 反転経路形成部、29 記録部、30 排出部、31 フレーム、32 スタッカー、33 載置部、34 スタッカー、51 ヒンジ、52 表示部、53 ボタン、54 ペーパーサポート、55 ホッパー、56 カセット、57 ローラー、58 ローラー、59 ローラー、60 アーム、61 ローラー対、62 ローラー対、63 キャリッジ、64 記録ヘッド、65 媒体支持部、66 インクカートリッジ、67 インク供給チューブ、68 ヘッド信号線、69 コネクタ、70 コネクタ、71 コネクタ、72 ロッド、73 クリップ、74 ホルダ
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置に関し、特に、被記録媒体に記録する記録装置に関する。
記録装置には、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリ等の装置が含まれる。
【背景技術】
【0002】
印字ヘッド(記録ヘッド)を用紙幅方向に往復運動させ印字を行うプリンターにおいて、インクヘッドへの信号線や、オフキャリッジ方式のインクジェットプリンターではインク供給用チューブが、印字ヘッドを搭載したキャリッジに接続されている。インクヘッドへの信号線またインク供給用チューブは、キャリッジの往復動作によりその位置や形状を変化させる。
【0003】
ところで従来、プリンターにはジャム検知時にギャップ調整モーターを利用してキャリッジを紙から離間させる方向に移動させた後、主走査モーターによってジャム発生前のキャリッジの移動方向と反対へキャリッジを移動させ、ユーザーへジャム処理を要求するようにしているものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−166370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紙詰まり解除時に、インク供給チューブが紙詰まりの生じた領域に残っており、インク供給チューブが邪魔になる恐れがある。
すなわち、ジャム(紙詰まり)等のエラーによりキャリッジが停止する位置によっては、ユーザーのエラー復帰操作を妨げる位置に信号線やインク供給チューブが存在する場合があり、詰まった紙を取り除く作業の邪魔になる。
【0006】
また、この場合、ユーザーは手で信号線やインク供給チューブに直接触れて、これを紙詰まりの生じた領域から退避させる必要がある。これにより、信号線や供給チューブの緩みや、最悪の場合抜け、破損に至る可能性がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、経路内から被記録媒体を取り除くユーザー作業を行う際、キャリッジに接続された信号線やインク供給チューブなどがその妨げになってしまうことを考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の記録装置は、被記録媒体が送られる経路を形成する経路形成部材と、前記経路の送り方向に前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、前記経路を送り方向に搬送されている前記被記録媒体の部分のうち、前記経路形成部材から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッドが設けられ、前記被記録媒体の送り方向に交差する方向に移動するキャリッジと、前記キャリッジから延出して前記キャリッジの移動に追従して変形する可撓性部材と、前記可撓性部材が占有する空間から、前記可撓性部材が退避する方向に前記可撓性部材を移動させる退避手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、可撓性部材が占有する空間から退避する方向に可撓性部材を移動させる退避手段を備えるので、装置内部にユーザーが手を差し入れて作業を行う必要が生じた場合に可撓性部材が退避することで、当該可撓性部材がユーザー作業の妨げにならず、またユーザーの手が可撓性部材に触れることを防止できる。
【0010】
従って、可撓性部材にインクが付着していた場合に、該付着していたインクによって手または衣服が汚れる虞がない。また、可撓性部材としてのインク供給チューブや信号線が破損してしまう虞がない。またさらに、インク供給チューブや信号線がキャリッジの接続部から抜けてしまう虞がない。尚、可撓性部材が占有する空間とは、可撓性部材を退避させる前に可撓性部材が占有する空間を意味する。
【0011】
また、可撓性部材を退避させる方向は、ユーザー作業の内容や装置構成に基づいて、適宜設定し得る事項である。また、可撓性部材としては、インク供給チューブやフラットケーブル(平型電線ともいう)などの信号線を挙げることができる。
【0012】
本発明の第2の態様の記録装置は、被記録媒体が送られる経路を形成する経路形成部材と、前記経路の送り方向に前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、前記経路を送り方向に搬送されている前記被記録媒体の部分のうち、前記経路形成部材から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッドが設けられ、前記被記録媒体の送り方向に交差する方向に移動するキャリッジと、前記キャリッジから延出して前記キャリッジの移動に追従して変形する可撓性部材と、前記記録装置の内部にユーザーが手を差し入れて作業を行う際のユーザー作業領域から、前記可撓性部材が退避する方向に前記可撓性部材を変形または移動させる退避手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば記録装置の内部にユーザーが手を差し入れて作業を行う必要が生じた場合、例えば、経路に被記録媒体が詰まる所謂、ジャムが生じた場合に、退避手段によって可撓性部材がユーザー作業領域から退避する方向に変形または移動するので、可撓性部材がユーザー作業の妨げにならず、またユーザーの手が可撓性部材に触れることを防止できる。
【0014】
従って、可撓性部材にインクが付着していた場合に、該付着していたインクによって手または衣服が汚れる虞がない。また、可撓性部材としてのインク供給チューブや信号線が破損してしまう虞がない。またさらに、インク供給チューブや信号線がキャリッジの接続部から抜けてしまう虞がない。
尚、本明細書において「ユーザー」とは、エンドユーザーに限られず、記録装置の組立作業或いはアフターメンテナンスを行う人など、記録装置を扱う全ての人を意味するものである。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、退避手段は、前記記録装置の内部にアクセスする為の開閉可能なカバーの開放動作に連動して可撓性部材を変形または移動させることを特徴とする。
本態様によれば、第1のまたは第2の態様と同様の作用効果に加え、カバーを開放すると、可撓性部材が変形または移動するので、面倒な操作を必要とせずに被記録媒体を除去することができ、より確実にユーザーの手が可撓性部材に触れることを防止することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記退避手段は、その一端側が前記カバーに接続され、他端側において前記可撓性部材を支持するとともに当該他端が当該可撓性部材の変形に応じて変位可能な支持部材で構成されることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、可撓性部材を支持する部分が変位可能であることから、可撓性部材に加わる応力をより小さくすることができ、これより、インク供給チューブや信号線が破損してしまう可能性をより小さくすることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一の態様において、可撓性部材は、インクを記録ヘッドに供給するためのインク供給チューブであることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第4の態様と同様の作用効果に加え、インク供給チューブの破損によるインクの飛び散りを防止することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一の態様において、可撓性部材は、インクを吐出するための電気的な信号を伝送するための電線であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第4の態様と同様の作用効果に加え、電線の破損による記録ができなくなってしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】プリンター複合機の外観を示す前方斜視図である。
【図2】プリンター複合機の内部の概略を示す側断面図である。
【図3】プリンター複合機の内部の概略を示す斜視図である。
【図4】フロントカバーが閉じられているプリンター複合機の内部の概略を示す平面図である。
【図5】フロントカバーが開かれているプリンター複合機の内部の概略を示す平面図である。
【図6】フロントカバーが閉じられているプリンター複合機のフロントカバー、インク供給チューブ、ヘッド信号線、ロッド、クリップ、およびホルダの状態を示す図である。
【図7】フロントカバーが開かれているプリンター複合機のフロントカバー、インク供給チューブ、ヘッド信号線、ロッド、クリップ、およびホルダの状態を示す図である。
【図8】キャリッジが本体の左側に位置し、フロントカバーが閉じられているプリンター複合機のロッド、クリップ、およびホルダを示す平面図である。
【図9】キャリッジが本体の左側に位置し、フロントカバーが閉じられているプリンター複合機のロッド、クリップ、およびホルダを示す斜視図である。
【図10】キャリッジが本体の左側に位置し、フロントカバーが開かれているプリンター複合機のロッド、クリップ、およびホルダを示す平面図である。
【図11】キャリッジが本体の左側に位置し、フロントカバーが開かれているプリンター複合機のロッド、クリップ、およびホルダを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態のプリンター複合機1の外観を示す前方斜視図である。図2は、本実施例のプリンター複合機1の内部の概略を示す側断面図である。図3は、プリンター複合機1の内部の概略を示す斜視図である。
【0021】
プリンター複合機1は、記録装置の一例であり、印刷装置、複写機、およびファクシミリ装置の機能を有し、被記録媒体の一例である用紙P(後述する)に記録する。プリンター複合機1は、本体11と媒体搬送部12とを備えている。本体11は、記録および読み取りの機能を有する。媒体搬送部12は、写真や文書等の情報が記録されている用紙Sを、本体11によって用紙Sに記録されている情報が読み取りできるように搬送する。
【0022】
本体11は、ケース21、フロントカバー22、スキャナー23、操作部24、載置部25、搬送部26、送り経路形成部27、反転経路形成部28、記録部29、排出部30、フレーム31、およびスタッカー32を備える。なお、プリンター複合機1の側面のうち、フロントカバー22、操作部24、およびスタッカー32が設けられている側がプリンター複合機1の前側、すなわち、正面である。また、プリンター複合機1の側面のうち、媒体搬送部12が設けられている側がプリンター複合機1の上側、すなわち、上面である。
媒体搬送部12は、載置部33およびスタッカー34を備える。
【0023】
なお、プリンター複合機1に対して前後の方向をY軸で図示し、上下の方向をZ軸で図示し、左右の方向をX軸で図示する。また、以下、X軸方向のうち、図1中の左側を単に左側と称し、X軸方向のうち、図1中の右側を単に右側と称する。さらに、以下、Y軸方向のうち、図1中の手前側を単に前側と称し、Y軸方向のうち、図1中の奥側を単に後側と称する。さらにまた、以下、Z軸方向のうち、図1中の上側を単に上側と称し、Z軸方向のうち、図1中の下側を単に下側と称する。
【0024】
ケース21は、本体11の筐体であり、スキャナー23、搬送部26、送り経路形成部27、反転経路形成部28、記録部29、排出部30、およびスタッカー32などを格納する。フロントカバー22は、本体11の前側(正面)に設けられている。フロントカバー22は、一対のヒンジ51によってケース21に回動自在に支えられることで、ケース21に開閉可能に取り付けられている。
【0025】
言い換えると、フロントカバー22は、一対のヒンジ51を中心にフロントカバー22の上側の端部が前方へ倒れることで、開くように構成されている。フロントカバー22を開くことにより、本体11の前面に開口部が形成され、ユーザーが本体11の内部を操作することができるようになる。例えば、紙詰まりの場合など、ユーザーは、フロントカバー22を開き、本体11の内部から詰まった紙を取り出すことができる。
【0026】
スキャナー23は、本体11の上側に設けられ、用紙Sに記録されている写真や文書等の情報を読み取る。例えば、媒体搬送部12によって、用紙Sが送られた場合、スキャナー23は、用紙Sに記録されている情報を読み取る。
【0027】
操作部24は、プリンター複合機1の状態に関する情報を表示すると共に、ユーザーからの指示を取得する。操作部24は、表示部52およびボタン53を備える。表示部52は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)表示パネル、またはLED(Light Emitting Diode)などのランプ等からなり、プリンター複合機1の状態に関する情報を表示する。
【0028】
ボタン53は、ユーザーによって押圧された場合、所定の信号を図示せぬ制御部に出力し、これによりユーザーの指示を取得する。すなわち、ユーザーは、表示部52によってプリンター複合機1の状態を確認し、所望のボタン53に押圧する操作を加えることにより、プリンター複合機1の設定条件の変更や、各種実行指示をすることができる。
【0029】
載置部25は、被記録媒体の一例である用紙Pを載置することができるように構成されている。載置部25は、ペーパーサポート54およびホッパー55からなる。ペーパーサポート54は、載置されている用紙Pを支える。ホッパー55は、その下側が搬送部26から離反したり搬送部26に近接したりすることで、載置部25に載置されている用紙Pを搬送部26に供給しないで保持したり、用紙Pを搬送部26に供給したりする。
【0030】
なお、被記録媒体の一例である用紙Pは、本体11の下方に着脱可能に設けられたカセット56にも格納され、プリンター複合機1は、載置部25の用紙Pまたはカセット56の用紙Pのいずれかを選択して記録できる。
【0031】
搬送部26は、搬送手段の一例であり、載置部25に載置された用紙Pまたはカセット56に格納された用紙Pを、送り経路形成部27によって形成される送り経路を介して、記録する場合の方向である送り方向に記録部29に搬送する。送り経路形成部27は、経路形成部材の一例であり、各種のプラスチック材料や金属製の案内部材などによって構成される。送り経路形成部27は、用紙Pが送られる送り経路であって、載置部25またはカセット56から記録部29を介してスタッカー32までの送り経路を形成する。なお、図2中において黒い矢印は、送り経路を示す。
【0032】
搬送部26は、ローラー57、ローラー58、ローラー59、アーム60、およびローラー対61からなる。ローラー57、ローラー58、ローラー59、アーム60、およびローラー対61は、図示せぬモーター、ギア、またはベルトなどからなる駆動部によって駆動される。
【0033】
ローラー57は、駆動部によって図2中の時計方向に回転させられ、ホッパー55の下方が近接すると、載置部25に載置されている用紙Pのうち、最も上側に載置されている用紙Pの下方の端部と接触し、これにより、送り経路を介して、用紙Pを下側に搬送することで、送り経路下流側のローラー58に送る。
ローラー58は、駆動部によって図2中の反時計方向に回転させられ、ローラー57から送り経路を介して搬送されてきた用紙Pをローラー対61に送る。
【0034】
ローラー59は、カセット56に格納されている用紙Pに対して接離移動可能なアーム60の自由端に設けられ、駆動部によって図2中の反時計方向に回転させられる。アーム60が用紙Pに接する側に移動すると、ローラー59は、カセット56に格納されている用紙Pのうち、最も上側に格納されている用紙Pの奥側の端部と接触し、送り経路を介して、用紙Pを上側に搬送することで、送り経路下流側のローラー58に送る。この場合、ローラー58は、ローラー59によって送り経路を介して搬送されてきた用紙Pをローラー対61に送る。
【0035】
ローラー対61は、相対する一対のローラーからなり、駆動部によって上側のローラーが図2中の時計方向に、下側のローラーが図2中の反時計方向に回転させられ、用紙Pを挟持して、ローラー58から送り経路を介して搬送されてきた用紙Pを記録部29および排出部30に送る。
【0036】
記録部29は、送り経路を介してローラー対61によって搬送されてきた用紙Pにインクを吐出して記録する。すなわち、記録部29は、送り経路を介して搬送されてきた用紙Pの部分のうち、送り経路形成部27から露出している部分にインクを吐出して記録する。より詳細には、記録部29は、用紙Pの用紙幅で往復運動し、印字または描画を行う。
【0037】
また、反転経路形成部28は、各種のプラスチック材料や金属製の案内部材などによって構成され、用紙Pの裏表を反転させるための経路である反転経路を形成する。なお、図2中において白抜きの矢印は、反転経路を示す。両面記録モードの場合、用紙Pの一方の面(表面)に対しての記録された後に、駆動部によってローラー対61およびローラー対62(後述する)が逆回転させられ、用紙Pは、反転経路を介して、ローラー58の下側の2つのローラーに送られる。すなわち、用紙Pは、ローラー58の下側から上側へ回り込んで再びローラー対61へ送られる。
【0038】
これによって、用紙Pの面のうち、既に記録された用紙Pの面(表面)が媒体支持部65側となり、用紙Pの他方の面(裏面)が記録ヘッド64側となる。そして、ローラー58から送られ、駆動部によって正転させられたローラー対61によって送り経路に送られた用紙Pの裏面(このとき裏面には、まだ記録されていない)に、記録部29は、インクを吐出して記録する。
【0039】
記録部29は、キャリッジ63、記録ヘッド64、および媒体支持部65を含む。キャリッジ63は、記録部29が記録を実行する場合、一例として図示しないモーターの動力によってX軸方向、すなわち用紙Pの幅方向に延設された図示しないガイド部材にガイドされながら移動する。記録ヘッド64は、キャリッジ63における用紙Pと対向する側に設けられている。記録ヘッド64の面のうち、用紙Pと対向する面には、インクを吐出するノズル(図示せず)が形成されている。媒体支持部65は、記録ヘッド64と対向する位置に設けられており、用紙Pと記録ヘッド64との間の距離を所定の長さに保つ。
【0040】
言い換えれば、キャリッジ63には、送り経路を送り方向に搬送されている用紙Pの部分のうち、送り経路形成部27から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッド64が設けられ、キャリッジ63は、用紙Pの送り方向に直交する方向に移動する。
【0041】
また、インクを格納するインクカートリッジ66からキャリッジ63にインクを供給するためのインク供給チューブ67が設けられている。キャリッジ63とは別にインクカートリッジ66を設けることにより、インクカートリッジ66により多くのインクを格納することができる。
【0042】
インク供給チューブ67は、可撓性部材の一例であり、樹脂製のチューブなどで形成され、キャリッジ63からから延出してキャリッジ63の移動に追従して変形する。さらに、インクを吐出するための電気的な信号を伝送するためのヘッド信号線68が設けられている。ヘッド信号線68は、可撓性部材の一例であり、1または複数の電線からなる配線ケーブルまたはワイヤーハーネスなどであり、キャリッジ63からから延出してキャリッジ63の移動に追従して変形する。
【0043】
インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の一端は、キャリッジ63の前側に設けられたコネクタ69によってキャリッジ63に接続されている。インク供給チューブ67の他端は、インクカートリッジ66からインクが供給されるコネクタ70に接続されている。コネクタ70は、本体11の内部であって、インクカートリッジ66の左側に設けられている。
【0044】
すなわち、コネクタ70からコネクタ69までのインク供給チューブ67の配置を説明すると、コネクタ70が本体11の左側奥に設けられているので、コネクタ70から延出するインク供給チューブ67は、本体11の左側の側面の内側に沿うように本体11の前面まで延びる。さらに、インク供給チューブ67は、ケース21の前面の全部または一部の内側を左側から右側に横方向に横断するように延びる。そしてさらに、インク供給チューブ67は、右側から左側に湾曲するように弧(弦が左側となる弧)を描き、右側からコネクタ69に接続される。
【0045】
また、ヘッド信号線68の他端は、図示せぬ制御部と電気的に接続されているコネクタ71に接続されている。コネクタ71は、インクカートリッジ66の左側であって、コネクタ70の前側に設けられている。
【0046】
すなわち、コネクタ71からコネクタ69までのヘッド信号線68の配置を説明すると、コネクタ71が本体11の左側略中央に設けられているので、コネクタ71から延出するヘッド信号線68は、インク供給チューブ67と共に、本体11の左側の側面の内側に沿うように本体11の前面まで延びる。さらに、ヘッド信号線68は、インク供給チューブ67と共に、ケース21の前面の全部または一部の内側を左側から右側に横方向に横断するように延びる。そして、ヘッド信号線68は、インク供給チューブ67と共に、右側から左側に湾曲するように弧を描き、右側からコネクタ69に接続される。
【0047】
排出部30は、記録部29によって記録された用紙Pをスタッカー32に排出する。排出部30は、ローラー対62を有している。ローラー対62は、相対する一対のローラーからなり、駆動部によって上側のローラーが図2中の時計方向に、下側のローラーが図2中の反時計方向に回転させられ、用紙Pを挟持して、ローラー対61から送り経路を介して搬送され、記録部29によって記録された用紙Pをスタッカー32に送る。
【0048】
尚、フレーム31は、ローラー対62のうち図中上側のローラーを支持するフレームであって、このフレーム31の上流側と下流側では、用紙搬送経路が露呈する様になっている。
スタッカー32は、伸縮自在に設けられ、記録された用紙Pを載置する。
【0049】
次に、媒体搬送部12の載置部33は、写真や文書等の情報が記録されている用紙Sが載置され、用紙Sを保持する。媒体搬送部12の図示せぬ搬送部は、本体11のスキャナー23によって用紙Sに記録されている情報が読み取りできるように用紙Sを搬送し、情報が読み取られた用紙Sは、スタッカー34に載置される。スタッカー34は、読み取り後の用紙Sを保持する。
【0050】
次に、図4〜図11を参照して、送り経路において用紙Pが詰まった場合、送り経路形成部27から露出している露出部分から用紙Pを取り出すことで詰まった用紙Pを送り経路から除去するための作業が行われるユーザー作業領域から退避する方向のインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の変形または移動について説明する。
【0051】
図4は、フロントカバー22が閉じられているプリンター複合機1の内部の概略を示す平面図である。図5は、フロントカバー22が開かれているプリンター複合機1の内部の概略を示す平面図である。
【0052】
図4および図5において、領域Aは、送り経路において用紙Pが詰まった場合、送り経路形成部27から露出している露出部分から取り出すことで詰まった用紙Pを送り経路から除去するための作業(以下、除去作業と称する)がユーザーによって行われるユーザー作業領域を示す。
【0053】
また、図4および図5において、キャリッジ63が本体11の左側に位置している場合のキャリッジ63、記録ヘッド64、コネクタ69、インク供給チューブ67、およびヘッド信号線68は、実線で示され、キャリッジ63が本体11の右側に位置している場合のキャリッジ63、記録ヘッド64、コネクタ69、インク供給チューブ67、およびヘッド信号線68は、点線で示されている。
【0054】
キャリッジ63が本体11の左側に位置している場合、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、ケース21の内側の前側に配置される部分は、ケース21の内側の前側ほぼ中央に弧が描かれるように撓み、略U字状に曲げられる。この場合、U字を形成するインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、コネクタ69側のU字の半分の直線部分および湾曲部分が領域Aに懸かることになる。
【0055】
一方、キャリッジ63が本体11の右側に位置している場合、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、ケース21の内側の前側に配置される部分は、ケース21の前側の内側に沿うように延び、ケース21の内側の前側の右側に弧が描かれるように撓み、略J字状に曲げられる。この場合、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68は、領域Aに懸からない。
【0056】
インク供給チューブ67およびヘッド信号線68は、退避手段の一例である、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74によって、フロントカバー22に繋がれている。ロッド72は、金属または樹脂などにより棒状に形成されている。ロッド72の一端は、クリップ73に止められている。ロッド72の他端は、ホルダ74に止められている。
【0057】
クリップ73は、樹脂または金属などにより形成され、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68を支持する。キャリッジ63が移動するとインク供給チューブ67およびヘッド信号線68は変形する。これに対応して、クリップ73は、キャリッジ63の移動に追従してインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の支持位置を変位可能に支持する。
【0058】
ホルダ74は、樹脂または金属などにより形成され、フロントカバー22の内側の上側に止められている。ホルダ74は、キャリッジ63の往復運動の阻害とならないよう、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の動作にあわせて左右に(X軸方向に)自由に首を振る構造となっている。
【0059】
図5に示されるように、キャリッジ63が本体11の左側に位置している場合、フロントカバー22が開かれると、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74によってインク供給チューブ67およびヘッド信号線68が前方に引っ張られるので、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68は、除去作業が行われる領域Aから退避する方向に変形または移動させられる。
【0060】
図6は、フロントカバー22が閉じられているプリンター複合機1のフロントカバー22、インク供給チューブ67、ヘッド信号線68、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74の状態を示す図である。図7は、フロントカバー22が開かれているプリンター複合機1のフロントカバー22、インク供給チューブ67、ヘッド信号線68、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74の状態を示す図である。
【0061】
図6に示されるように、クリップ73によるインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の支持位置が変位可能とされているので、フロントカバー22が閉じられている状態において、キャリッジ63の移動によるインク供給チューブ67およびヘッド信号線68の変形が妨げられない。従って、記録を行う際のキャリッジ63の移動に影響を与えることがなく、確実に記録が行われる。
【0062】
図7に示されるように、矢印Bのように、一対のヒンジ51によってケース21に回動自在に支えられているフロントカバー22が開かれると、フロントカバー22の内側の上側に止められているホルダ74によって、ロッド72がプリンター複合機1の前方向に移動させられる。これにより、矢印Cに示されるように、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68を支持するクリップ73がプリンター複合機1の前方向に移動することで、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68が前方向に移動し、領域Aの外に出される。
【0063】
このように、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68が、キャリッジ63から延出してキャリッジ63の移動に追従して変形する構成において、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74は、送り経路から用紙を除去するための作業が行われる領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させる。
【0064】
エラーなどによりキャリッジが左側付近で停止した場合、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68は除去作業が行われる領域に侵入する。このとき、従来、ユーザーはインク供給チューブ67またはヘッド信号線を退避させてエラー処理を実施しなければならなかった。キャリッジを退避させる際、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68がエラー処理の邪魔になり、インク供給チューブ67またはヘッド信号線を破損させてしまう恐れがあった。
【0065】
これに対して、プリンター複合機1においては、キャリッジ63が左側付近で停止した場合でも、フロントカバー22にリンクさせ、フロントカバー22の開動作によりインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を引き寄せるので、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68が邪魔にならず、これにより、ユーザーの除去作業を行うことのできる領域を広げることができる。
【0066】
また、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74は、フロントカバー22の開放動作に連動してインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させる。
【0067】
さらに、ロッド72は、その一端がフロントカバー22に接続され、他端がキャリッジ63の移動(インク供給チューブ67またはヘッド信号線68の変形)に応じてインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を支持する部分が変位可能である。
【0068】
インクを記録ヘッド64に供給するためのインク供給チューブ67は、可撓性部材の一例である。
インクを吐出するための電気的な信号を伝送するためのヘッド信号線68は、可撓性部材の一例である。
【0069】
なお、キャリッジ63の移動に応じて、ホルダ74がフロントカバー22の内側を左右に移動できるように、ホルダ74をフロントカバー22に装着するようにしても良い。これにより、ロッド72の長さがインク供給チューブ67またはヘッド信号線68の変形・移動に追従できる長さでない場合(長さが足りない場合)であっても、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68の変形・移動に追従して支持位置を適切に変位させることができる。
【0070】
次に、図8〜図11を参照して、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74の機能・作用についてより詳細に説明する。図8は、キャリッジ63が本体11の左側に位置し、フロントカバー22が閉じられているプリンター複合機1のロッド72、クリップ73、およびホルダ74を示す平面図である。図9は、キャリッジ63が本体11の左側に位置し、フロントカバー22が閉じられているプリンター複合機1のロッド72、クリップ73、およびホルダ74を示す斜視図である。
【0071】
図10は、キャリッジ63が本体11の左側に位置し、フロントカバー22が開かれているプリンター複合機1のロッド72、クリップ73、およびホルダ74を示す平面図である。図11は、キャリッジ63が本体11の左側に位置し、フロントカバー22が開かれているプリンター複合機1のロッド72、クリップ73、およびホルダ74を示す斜視図である。
【0072】
図8および図9に示されるように、ホルダ74は、閉じられているフロントカバー22の上側に装着され、ロッド72の一端を保持している。すなわち、一対のヒンジ51を結ぶ線からホルダ74までの距離は、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68を領域Aから退避させるのに十分な長さ(少なくとも、キャリッジ63が本体11の左側に位置しているときのクリップ73の位置から領域Aの前側までのY軸方向の距離よりも長い長さ)とされる。
【0073】
また、ロッド72は、くの字状に形成されている。より詳細には、フロントカバー22が閉じられている状態において、ホルダ74に保持されている端部側のロッド72の直線的な部分は、本体11の内部に向かって、斜め下に向かうように配置される。
【0074】
また、クリップ73と接続されている端部側のロッド72の直線的な部分は、本体11の内部において、クリップ73(すなわち、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の支持位置)から略上方向に向かうように配置される。
【0075】
尚、クリップ73は、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68がクリップ73に対して動かない様に、確実にインク供給チューブ67およびヘッド信号線68を保持することが好ましい。本実施形態では、その様に構成されているが、場合により、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68がクリップ73に対して或る程度動くように、クリップ73がインク供給チューブ67およびヘッド信号線68を緩やかに保持する様にすることもできる。
【0076】
この場合、ロッド72をくの字状に形成することにより、クリップ73を上から吊ることになり、クリップ73とインク供給チューブ67およびヘッド信号線68との間の摩擦力が小さくなるので、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68に対して、より少ない力でクリップ73をスライドできるようになる。従って、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の変形を阻害せず、記録を行う際のキャリッジ63の移動に影響を与えることがなく、確実に記録が行われるようになる。
【0077】
図8および図9に示されるように、領域Aは、3次元的な広がりを有する領域である。キャリッジ63が本体11の左側に位置している場合、フロントカバー22が閉じられている状態において、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、クリップ73に保持されているコネクタ69側の部分がクリップ73と共に領域Aに入る。
【0078】
図10および図11に示されるように、フロントカバー22が開かれると、一対のヒンジ51を結ぶ線からホルダ74までの距離だけ、ホルダ74が前側に移動することになる。ホルダ74の移動に応じて、ロッド72がクリップ73と共に前側に移動し、クリップ73は、領域Aの外に出ることになる。
【0079】
従って、インク供給チューブ67およびヘッド信号線68の部分のうち、クリップ73に保持されているコネクタ69側の部分が、領域Aの外に出る。すなわち、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74は、領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67およびヘッド信号線68を変形または移動させる。
【0080】
このように、送り経路形成部27によって、用紙Pが送られる送り経路が形成され、搬送部26によって、送り経路の送り方向に用紙Pが搬送され、送り経路を送り方向に搬送されている用紙Pの部分のうち、送り経路形成部27から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッド64が設けられているキャリッジ63が、用紙Pの送り方向に直交する方向に移動し、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68がキャリッジ63から延出してキャリッジ63の移動に追従して変形し、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74が、送り経路において用紙Pが詰まった場合、露出部分から取り出すことで詰まった用紙Pを送り経路から除去するための作業が行われる領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させる。
【0081】
従って、紙詰まり等のエラーによりキャリッジ63が左側付近で停止したとき、除去作業が行われる領域Aをインク供給チューブ67またはヘッド信号線68が遮ってしまうことを防ぎ、操作エリアを広く確保することができるため操作性が改善される。
【0082】
また、ユーザーがフロントカバー22を開いて本体11に手を入れて領域Aへアクセスした際、ユーザーの手や衣服がインク供給チューブ67またはヘッド信号線68に触れることを防止することができる。その結果、ユーザーの手や衣服が、例えば、インク供給チューブ67に付着したインクミストによって汚れる虞がない。また、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68が破損する虞や、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68がキャリッジ63から引き抜かれてしまう虞がない。
【0083】
以上のように、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68が領域Aから退避する方向に変形または移動させられるので、ユーザーは、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68に邪魔されずに、領域Aで作業をすることができ、容易に詰まった用紙Pを取り除くことができる。
【0084】
なお、キャリッジ63が左側に停止しているときにロッド72、クリップ73、およびホルダ74が効果的である旨を説明したが、停止している位置は、左側に限らない。何らかの原因でインク供給チューブ67またはヘッド信号線68が領域Aに係るようにキャリッジ63が移動可能な範囲にいずれかの位置に停止した場合であっても、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74が、領域Aから退避する方向にインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させることができる。
【0085】
また、ロッド72の一端に設けられたクリップ73でインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を保持し、ロッド72の他端のホルダ74を固定とするため、インク供給チューブ67またはヘッド信号線68の垂れを防止する機能を持たせることも出来る。
【0086】
なお、ロッド72は、金属または樹脂などにより棒状に形成されていると説明したが、紐や帯としても良く、またはバネ若しくはゴム紐などの弾性体から形成しても良い。
【0087】
また、可撓性部材の一例として、樹脂製のチューブなどで形成されるインク供給チューブ67または電線からなる配線ケーブルまたはワイヤーハーネスなどのヘッド信号線68を挙げたが、線形の可撓性の部材であれば良く、例えば、金属製のフレキシブルケーブルや電源を伝達する動力線、または光ファイバなどであっても良い。
【0088】
さらに、ロッド72、クリップ73、およびホルダ74を、フロントカバー22の開放動作に連動してインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させると説明したが、これに限らず、カセット56を本体11から引き出した場合にその引き出しの動作に連動してインク供給チューブ67またはヘッド信号線68を変形または移動させるようにしてもよい。
【0089】
なお、プリンター複合機1は、印刷装置、複写機、およびファクシミリ装置の機能を有すると説明したが、印刷装置、複写機、またはファクシミリ装置その他の装置である記録装置であってもよい。
【0090】
尚、領域A(ユーザー作業領域)は、必ずしもその領域が明確に定まるものとは限らず、また記録装置の構成要素の配置に応じて変化するものであり、専ら、何らかの理由によって装置内部に滞留している用紙を取り除く作業を行う際にユーザーの手が入る可能性のある領域である。上述した実施例における領域Aは、その一例を示すものである。
また領域Aは、フレーム31の上流側或いは下流側の様に、必ずしも経路が露呈している部分の上方領域のみならず、装置内部において用紙が滞留する可能性のある領域であったり、或いはその様な領域をも含むものである。
【0091】
また、領域Aは、上記実施形態では装置内部に滞留している用紙を取り除く作業を行う際にユーザーの手が差し入れられる可能性のある領域であるが、装置内部に手を差し入れて行う作業には用紙除去作業以外にも、例えばインクカートリッジの交換作業や、可動部への潤滑剤供給作業、摩耗部品の交換作業、など種々のものがある。従って領域Aは、ユーザー作業の内容と装置構成に応じて設定されるものであり、上記実施例には限られない。
【0092】
そして、インク供給チューブ67が占有する空間(図4において実線で示されるインク供給チューブ67が占有する空間)から、インク供給チューブ67が退避する方向にインク供給チューブ67を移動させる退避手段を備えることにより、当該インク供給チューブ67がユーザー作業の妨げにならず、またユーザーの手がインク供給チューブ67に触れることを防止できる。その際のインク供給チューブ67の退避方向は、上記実施形態の様に装置手前側とは限られず、装置奥側として設定される場合もあり、或いは上方向、下方向に設定される場合もある。
【0093】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
1 プリンター複合機、11 本体、12 媒体搬送部、21 ケース、22 フロントカバー、23 スキャナー、24 操作部、25 載置部、26 搬送部、27 送り経路形成部、28 反転経路形成部、29 記録部、30 排出部、31 フレーム、32 スタッカー、33 載置部、34 スタッカー、51 ヒンジ、52 表示部、53 ボタン、54 ペーパーサポート、55 ホッパー、56 カセット、57 ローラー、58 ローラー、59 ローラー、60 アーム、61 ローラー対、62 ローラー対、63 キャリッジ、64 記録ヘッド、65 媒体支持部、66 インクカートリッジ、67 インク供給チューブ、68 ヘッド信号線、69 コネクタ、70 コネクタ、71 コネクタ、72 ロッド、73 クリップ、74 ホルダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体が送られる経路を形成する経路形成部材と、
前記経路の送り方向に前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記経路を送り方向に搬送されている前記被記録媒体の部分のうち、前記経路形成部材から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッドが設けられ、前記被記録媒体の送り方向に交差する方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジから延出して前記キャリッジの移動に追従して変形する可撓性部材と、
前記可撓性部材が占有する空間から、前記可撓性部材が退避する方向に前記可撓性部材を移動させる退避手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
被記録媒体が送られる経路を形成する経路形成部材と、
前記経路の送り方向に前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記経路を送り方向に搬送されている前記被記録媒体の部分のうち、前記経路形成部材から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッドが設けられ、前記被記録媒体の送り方向に交差する方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジから延出して前記キャリッジの移動に追従して変形する可撓性部材と、
前記記録装置の内部にユーザーが手を差し入れて作業を行う際のユーザー作業領域から、前記可撓性部材が退避する方向に前記可撓性部材を変形または移動させる退避手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記退避手段は、前記記録装置の内部にアクセスする為の開閉可能なカバーの開放動作に連動して前記可撓性部材を変形または移動させることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記退避手段は、その一端側が前記カバーに接続され、他端側において前記可撓性部材を支持するとともに当該他端が当該可撓性部材の変形に応じて変位可能な支持部材で構成されることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記可撓性部材は、前記インクを前記記録ヘッドに供給するためのインク供給チューブであることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記可撓性部材は、前記インクを吐出するための電気的な信号を伝送するための電線であることを特徴とする記録装置。
【請求項1】
被記録媒体が送られる経路を形成する経路形成部材と、
前記経路の送り方向に前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記経路を送り方向に搬送されている前記被記録媒体の部分のうち、前記経路形成部材から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッドが設けられ、前記被記録媒体の送り方向に交差する方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジから延出して前記キャリッジの移動に追従して変形する可撓性部材と、
前記可撓性部材が占有する空間から、前記可撓性部材が退避する方向に前記可撓性部材を移動させる退避手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
被記録媒体が送られる経路を形成する経路形成部材と、
前記経路の送り方向に前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記経路を送り方向に搬送されている前記被記録媒体の部分のうち、前記経路形成部材から露出している部分である露出部分にインクを吐出して記録する記録ヘッドが設けられ、前記被記録媒体の送り方向に交差する方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジから延出して前記キャリッジの移動に追従して変形する可撓性部材と、
前記記録装置の内部にユーザーが手を差し入れて作業を行う際のユーザー作業領域から、前記可撓性部材が退避する方向に前記可撓性部材を変形または移動させる退避手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記退避手段は、前記記録装置の内部にアクセスする為の開閉可能なカバーの開放動作に連動して前記可撓性部材を変形または移動させることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記退避手段は、その一端側が前記カバーに接続され、他端側において前記可撓性部材を支持するとともに当該他端が当該可撓性部材の変形に応じて変位可能な支持部材で構成されることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記可撓性部材は、前記インクを前記記録ヘッドに供給するためのインク供給チューブであることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記可撓性部材は、前記インクを吐出するための電気的な信号を伝送するための電線であることを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−75436(P2013−75436A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216872(P2011−216872)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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