説明

記録装置

【課題】被記録媒体の側端を位置決めするために移動された状態のエッジガイドにおいて、適切な摩擦力を保持させることが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】用紙Pに記録を行う記録部と、記録部へ給送される用紙が載置される内底面21sと、内底面に設けられ、用紙の給送方向と交差する幅方向に移動して当該用紙の幅方向における側端を位置決めするエッジガイド50と、エッジガイドに設けられ、当該エッジガイドが用紙の側端を位置決めした状態で、内底面に設けられた当接面22に当接して摩擦力を発生させる摩擦面を有する摩擦パッド80と、摩擦パッドの移動方向における少なくとも一方側に摩擦面よりも外側に設けられ、エッジガイドの移動に伴って当接面に摺接することによって当接面上の粉体を捕捉する第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、特に記録部に給送される被記録媒体の載置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、装置内に設けられた搬送経路によって給送される用紙(被記録媒体)に、記録部において液体を噴射して文字や図形を含む画像を記録する記録装置が実用化されている。この種の記録装置には、給送される用紙を載置する載置部から用紙が搬送経路へ適切に給送されるように載置部において給送方向と交差する用紙の幅方向の側端を位置決めするエッジガイドが設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、載置部において用紙の幅方向に移動して用紙の側端を位置決めするとともに、載置部の基体部との間に摩擦力を発生させることにより、その位置決めをした位置から幅方向に移動しないように構成されたエッジガイドが開示されている。このエッジガイドは、記録装置の背面側に設けられた用紙の載置部に採用され、左右で一対の各エッジガイドにはコルク材等からなる摩擦発生部材が設けられている。一方、基体部側においてエッジガイドの移動方向に沿って設けられた面であって、摩擦発生部材と当接した場合に摩擦力発生面となる当接面は、載置部における載置面に載置される用紙と同様に水平に対して傾斜している。このため、そのような斜面状の当接面上に紙粉や埃が堆積する確率は小さく、この当接面に対して摩擦発生部材は適切な摩擦力が発生された状態で押し付けられるので、かかる摩擦力によって移動を抑制されたエッジガイドにより用紙の幅方向の位置決めを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−76869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年は、装置本体の前面から用紙を給送する所謂フロント給紙カセットを載置部とする構成が、その利便性がよいことから多く採用されている。そして、フロント給紙カセットの載置部においても、その載置部から用紙が搬送経路へ適切に給送されるようにするためには、用紙の幅方向の側端を位置決めするエッジガイドを用いることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載されたエッジガイドの構成を、用紙が水平に載置されるフロント給紙カセットにおいて採用した場合は、用紙が載置される載置面が水平になっているので、載置部における載置面と平行な面もしくは載置面そのものが摩擦発生部材との当接面とされた場合、この当接面上に紙粉や埃が堆積しやすくなる。
【0006】
従って、かかる当接面と当接するエッジガイド側の摩擦発生部材との間に紙粉や埃が介在しやすくなり、この紙粉や埃の介在によって摩擦力が急激に低下することになる。この結果、エッジガイドは、位置決めされた状態を維持するための適切な摩擦力を保持することができなくなる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、被記録媒体の側端を位置決めするために移動された状態のエッジガイドにおいて、適切な摩擦力を保持させることが可能な記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、被記録媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部へ給送される前記被記録媒体が載置される載置部と、前記載置部に設けられ、前記被記録媒体の給送方向と交差する幅方向に移動して当該被記録媒体の前記幅方向における側端を位置決めするエッジガイドと、前記エッジガイドに設けられ、当該エッジガイドが前記被記録媒体の前記側端を位置決めした状態で、前記載置部に設けられた当接面に当接して摩擦力を発生させる摩擦面を有する摩擦部と、前記摩擦部の移動方向における少なくとも一方側に前記摩擦面よりも外側に設けられ、前記エッジガイドの移動に伴って前記当接面に摺接することによって前記当接面上の粉体を捕捉する粉体捕捉部と、を備えた。
【0009】
この構成によれば、エッジガイドの移動に際して、例えば被記録媒体の媒体粉などの粉体を捕捉して当接面を綺麗にするので、エッジガイドが移動されて被記録媒体の側端が位置決めされた状態のエッジガイドにおいて、摩擦部は適切な摩擦力を保持する。
【0010】
本発明の記録装置において、前記載置部は、前記当接面に前記粉体が入り込み可能な溝部が設けられている。
この構成によれば、載置台の当接面に付着した粉体はエッジガイドの移動によって当接面に設けられた溝部に入り込む確率が高い。従って、摩擦部の摩擦面は当接面との間に粉体を介在させることなく当接するので、摩擦部は適切な摩擦力を保持する。
【0011】
本発明の記録装置において、前記摩擦部は、該摩擦部の移動方向における前記当接面と対向する面に前記粉体が入り込み可能な溝部が設けられ、前記溝部は、前記摩擦面の少なくとも一部が前記当接面に摺接することによって前記溝部に前記当接面上の粉体を収納する粉体収納部として機能する。
【0012】
この構成によれば、例えば溝部の縁に位置する摩擦面は粉体捕捉部として機能し、摩擦部の摩擦面に付着しようとする粉体を、エッジガイドの移動に伴って当接面と対向する面に設けられた溝部内に収納する確率が高くなる。従って、摩擦部の摩擦面は当接面との間に粉体が介在されることなく当接するので、摩擦部は適切な摩擦力を保持する。
【0013】
本発明の記録装置において、前記溝部は、前記エッジガイドの移動方向と交差する方向に長手方向を有するスリット形状に形成されている。
この構成によれば、例えば摩擦部の摩擦面において、エッジガイドの移動方向と交差する方向の全域に溝部を形成することができるので、当接面上の粉体を溝部内に確実に捕捉できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る一実施形態としての記録装置を断面で示した側面図。
【図2】記録装置に備えられる給紙カセットの斜視図。
【図3】給紙カセットに備えられるエッジガイドを示す斜視図。
【図4】エッジガイドが位置決め状態にある給紙カセットの一部分を示す断面図。
【図5】エッジガイドが移動状態にある給紙カセットの一部分を示す断面図。
【図6】(a)(b)(c)は、摩擦パッドの摩擦面に設けられた溝部を示す斜視図。
【図7】給紙カセットにおける摩擦パッドの当接面に設けられた溝部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を具体化した一実施形態として、液体噴射ヘッドから液体を噴射して被記録媒体に記録を行う記録装置について、図を参照して説明する。なお、以降の説明において各図において示す方向は、例えば図1に示したように、上方向が鉛直方向における反重力方向であり、前方向が、鉛直方向と交差する方向であってプリンターに給送された用紙Pが画像の形成時において搬送される搬送方向である。さらに右方向は、鉛直方向および搬送方向の双方と交差する方向であって前方から見たときの右手側、すなわち図1においては図面手前側の方向である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の記録装置11は、装置本体12と、装置本体12に取り付けられた増設ユニット30と、によって構成されている。装置本体12には、液体噴射ヘッド25から液体を噴射して用紙Pに記録を行う液体噴射装置としての記録部20と、積層された用紙Pを一枚ずつ記録部20へ送り出す載置部としての給紙カセット21とが、複数の部材で構成された筐体としての装置ケース14によって内装されて備えられている。また、装置本体12の後側上部には、傾斜面となっている載置面16aに沿って手差しで一枚ずつ用紙Pを記録部20へ送り出す手差し給紙部16が、用紙Pの載置部の一つとして備えられている。
【0017】
給紙カセット21は、用紙P(P2)の載置面となる略水平の内底面21sを底部21bに有する略箱型の形状を有し、装置本体12内に対して前後方向において挿抜可能に装着される。また、給紙カセット21は、その前面側が、給紙カセット21を前方に抜き出す際に作業者が手をかけるための把持部となる庇が形成された庇形状部21aとされている。
【0018】
一方、増設ユニット30は装置本体12の下側に積層されて一体化されるとともに、装置本体12に対して着脱可能とされている。そして、増設ユニット30には、積層された用紙Pを一枚ずつ装置本体12の記録部20へ送り出す載置部としての給紙カセット31が備えられている。
【0019】
すなわち、給紙カセット31は、用紙P(P3)を積層状態で載置する載置面となる略水平の内底面31sを底部31bに有する略箱型の形状を有し、上側部材32と下側部材33とによって略箱状に構成されたユニットケース38に対して前後方向において挿抜可能に装着される。また、給紙カセット31は、その前面側が、給紙カセット31を前方に抜き出す際に作業者が手をかけるための把持部となる庇が形成された庇形状部31aとされている。
【0020】
本実施形態では、手差し給紙部16および給紙カセット21,31からそれぞれ送り出された用紙P1,P2,P3が、記録装置11が有する搬送経路40によって記録部20へ搬送される。すなわち、給紙カセット21および給紙カセット31からは、記録装置11の後端部において搬送経路40に用紙Pが送り出される。具体的には装置本体12の後側の手差し給紙部16から供給される用紙P1は、装置本体12に備えられた搬送ローラー41まで用紙を押し込むことによって搬送経路40に送り出される。また、給紙カセット21に収容され、その内底面21s上に積層して載置された用紙P(P2)は、搬送経路形成部材43に揺動自在に軸支された給紙ローラー44によって一枚ずつ搬送経路40に送り出される。また、給紙カセット31に収容され、その内底面31s上に積層して載置された用紙P(P3)は、上側部材32に揺動自在に軸支された給紙ローラー34によって一枚ずつ搬送経路40に送り出される。
【0021】
搬送経路40は、図1に示すように、搬送経路形成部材43などによって装置ケース14内に形成され、用紙Pを記録部20へ搬送するように形成されている。この搬送経路40には、用紙Pを液体噴射ヘッド25側へ給送するための搬送ローラー41、および用紙Pを液体噴射ヘッド25側から排出するための排紙ローラー42が備えられている。
【0022】
また、搬送経路40はここでは反転搬送路になっている。すなわち、給紙カセット21から送り出された用紙P2および給紙カセット31から送り出された用紙P3は、各給紙カセット21,31の後方において必要に応じて設けられた不ずしの分離斜面に沿って移動したのち、装置ケース14の一部に形成された案内壁14a,14bに沿って搬送される。その後、湾曲形状をなす搬送経路40によって装置本体12の後方において反転され、記録部20に向けて前方へ搬送される。
【0023】
記録部20は、用紙Pに対して液体を噴射して画像を記録する。すなわち、装置ケース14内には主走査方向(本実施形態では左右方向)に沿って延びるガイド軸23が架設され、そのガイド軸23には主走査方向に沿って移動可能な状態でキャリッジ24が支持されている。キャリッジ24は、図示しないキャリッジモーターの駆動に伴って、主走査方向に沿って往復移動する。また、キャリッジ24の下面側には、用紙Pに対して液体の一例としてのインクを噴射して記録(印刷)を行う液体噴射ヘッド25が支持されている。
【0024】
なお、キャリッジ24の主走査方向に沿う移動領域の端部(本実施形態では左側の端部)には、インクを液体噴射ヘッド25に供給するための液体供給機構26が配置されている。液体供給機構26は、インクを収容した複数のインクカートリッジ27を着脱可能に装着するためのカートリッジホルダ28と、カートリッジホルダ28側からキャリッジ24側に向けてインクを供給するためのインク供給チューブ29と、を備えている。そして装置本体12の前側上方には、前面カバー15が装置ケース14において開閉可能に取り付けられ、この前面カバー15を開いた状態でカートリッジホルダ28に対してインクカートリッジ27の着脱が可能とされている。
【0025】
記録が施された用紙Pは装置本体12外へ排出される。すなわち、装置ケース14において開閉可能に取り付けられた前面カバー15の下方に、記録部20から排出される用紙Pを下方から受ける排紙台17が設けられ、この排紙台17と前面カバー15との間に開口する排紙口19から、用紙Pが装置本体12外へ排出される。
【0026】
さて、記録装置11では、給紙カセット21に載置された用紙Pが搬送経路40へ送り出される際に、用紙Pの幅方向の両側端を、幅方向において位置決めするエッジガイド50,60(図2参照)が給紙カセット21に備えられている。このように用紙Pを幅方向つまりキャリッジ24の主走査方向(左右方向)において位置決めすることで、キャリッジ24とともに主走査方向に移動する液体噴射ヘッド25から噴射されるインクが用紙Pにおいて正しい位置に着弾するようにしている。次に、給紙カセット21について図2を参照して説明する。
【0027】
図2に示すように、給紙カセット21は、内底面21sの前端から上方に立設された庇形状部21aと、内底面21sの左右両端から、それぞれ上方に立設された側壁部21cとを有し、上方および後方が開口した略箱形状で形成されている。そして、内底面21sの面に沿う方向であって左右方向に移動するエッジガイド50と、このエッジガイド50の移動に連動してエッジガイド50の移動方向と反対方向に移動するエッジガイド60と、を備えている。
【0028】
エッジガイド50は、内底面21sに載置される用紙Pの幅方向の側端(ここでは左側端)を位置決めする側壁部51と、用紙Pの側端を下方から受ける基台部52とを有している。そして内底面21sに沿う面であって内底面21sよりも少し下がった略水平面である摺動面21d上を基台部52が摺動してエッジガイド50が左右方向に移動する。また、エッジガイド50には、基台部52から右方向に延設されたラック53が設けられている。ラック53は給紙カセット21の底部21bにおいて内底面21sとは反対の外底面側に位置するとともに、同じく給紙カセット21の外底面側に回動自在に軸支されたピニオン65と噛み合うように基台部52と連結部53a(図3参照)によって連結して取り付けられている。
【0029】
一方エッジガイド60は、内底面21sに載置される用紙Pの幅方向の側端(ここでは右側端)を位置決めする側壁部61と、用紙Pの右側端を下方から当接して受ける基台部62とを有している。そして内底面21sに沿う面であって内底面21sよりも少し下がった略水平面である摺動面21d上を基台部62が摺動してエッジガイド60が左右方向に移動する。また、エッジガイド60には、基台部62から左方向に延設されたラック63が設けられている。ラック63は給紙カセット21の外底面側に位置するとともに、同じく給紙カセット21の外底面側に回動自在に軸支されたピニオン65と噛み合うようにエッジガイド50と同様に連結部(不図示)によって基台部62と連結して取り付けられている。
【0030】
従って、エッジガイド50が図中二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで右方向に移動すると、エッジガイド50のガイド部材に設けられたラック53の右方向の移動に伴って、ピニオン65が回転する。すると、この回転に連動してラック63が左方向へ移動し、エッジガイド60は、図中二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで左方向に移動する。また逆に、エッジガイド50が図中実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで左方向に移動すると、ラック53の左方向の移動に伴ってピニオン65が回転する。すると、この回転に連動してラック63が右方向へ移動し、エッジガイド60は、図中実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで右方向に移動する。こうして、用紙Pは、その左右方向の両側端が、左右方向に連動して移動するエッジガイド50の側壁部51とエッジガイド60の側壁部61とによって位置決めされる。なお、内底面21sには、左右上下方向に延設された壁面であって、その略中央において前後方向に移動可能に設けられ、前方から後方に移動することによって内底面21sに載置された用紙Pの前側端を位置決めする位置決め用の壁面21eを備えている。
【0031】
給紙カセット21には、基台部52が摺動する摺動面21dよりもさらに少し重力方向側に下がった位置に、前後方向に所定幅を有し、左右方向に延びる略水平面の当接面22が設けられている。一方エッジガイド50には、当接面22と対向する下面側に、当接面22に当接することによってエッジガイド50(60)に対して左右方向の移動を抑制する摩擦力を発生させる摩擦部としての摩擦パッド80(図3参照)が備えられている。また、エッジガイド50には、エッジガイド50,60の左右方向の移動に際して操作するレバー55が備えられている。レバー55は、摩擦パッド80をエッジガイド50の移動に際して当接面22から離れさせる。
【0032】
次に、レバー55を含め、エッジガイド50の具体的な構成について図3および図4を参照して説明する。なお、図3はエッジガイド50を後方左側斜め下方から見た状態で示し、図4は、エッジガイド50および給紙カセット21の一部を、当接面22と交差する面であって上下左右方向に延びる面で切断した状態で示している。
【0033】
図3および図4に示すように、エッジガイド50は、当接面22と対向する下面側に略矩形形状の摩擦面80sを有する摩擦パッド80を備えている。摩擦パッド80は、基台部52の左端部分において薄肉部56dを介して左方に延設された延設部位56の下面に、接着等によって固定されている。さらに、延設部位56には、本実施形態では摩擦パッド80(摩擦面80s)をその移動方向となる左右方向において挟む位置であって、摩擦パッド80(摩擦面80s)の外側である左側に粉体捕捉部としての第1粉体捕捉材85と、右側に同じく粉体捕捉部としての第2粉体捕捉材86とが設けられている。
【0034】
第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86は板状の可撓性部材で形成され、前後方向において当接面22の全範囲に渡る長さと、前後方向と交差する方向においてそれぞれ所定の長さを有する矩形形状で形成されている。第1粉体捕捉材85は、前後方向と交差する方向の一端側が接着などによって固定されるとともに、他端側が自由端になった左方先下がりの状態で、延設部位56に取り付けられている。そして、エッジガイド50が左方向に移動する際に、自由端となった他端側が、当接面22に対して前後方向の略全範囲に渡って、すくい角を形成して接触または当接するように設けられている。また、第2粉体捕捉材86は、前後方向と交差する方向の一端側が接着などによって固定されるとともに、他端側が自由端になった右方先下がりの状態で、延設部位56または薄肉部56dに取り付けられている。そして、エッジガイド50が左方向に移動する際に、自由端となった他端側が、当接面22に対して前後方向の略全範囲に渡って、すくい角を形成して接触または当接するように設けられている。
【0035】
また、延設部位56は、前後それぞれの両端近傍において上面から上方に突出する突出部位56aが、先端部が折れ曲がったフック形状であって双方の先端部が互いに近接するように対称な形で設けられている。一方、レバー55は、側壁部51と間隔を設けて形成された括れ部を有する略直方体の部材であって、その下端部55dから、突出部位56aの先端部間を通って延設されたのち、さらに前後双方向に延設された先端部を有する逆T字形の突出部位55aが、下方に突出して設けられている。そして、突出部位55aは、一対の突出部位56a間に形成される空間領域内に位置するように配設され、突出部位55aの先端部と突出部位56aの先端部とが、上下方向において少なくとも一部が重なるように配設されている。
【0036】
また、レバー55は、その下端部55dが前後左右の双方向に延設された薄肉の板状で形成されるとともに側壁部51と連結することによって、側壁部51と一体の部材として形成されている。なお、本実施形態では、側壁部51と基台部52とは部材が連結する一体形状で形成されており、従って、レバー55は側壁部51を介して基台部52とも一体で形成されている。
【0037】
さらに、本実施形態では、当接面22において、エッジガイド50の左右方向への移動に際して第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86が通過する範囲に溝部22hが設けられ、溝部22hが後述する紙粉や埃などの分体を収納可能な粉体収納部となっている。溝部22hは、エッジガイド50の移動方向(左右方向)と交差する方向(ここでは前後方向)に長手方向を有するスリット形状で、左右方向に複数並んで形成されている(図2参照)。
【0038】
次に、用紙Pの幅方向(左右方向)の側端を位置決めするべくエッジガイド50,60を移動させる場合におけるエッジガイド50,60の作用(動作)について、図5を参照して説明する。
【0039】
図5に示すように、エッジガイド50,60を移動させる際には、作業者は、まずエッジガイド50に対してレバー55の左側面と側壁部51の右側面とを摘む。すると、レバー55は、薄肉部分となっている下端部55dが、主に側壁部51と連結する近傍部分において曲げられ、この近傍部分を支点にして側壁部51に接近するように揺動する。
【0040】
この揺動に伴って、下端部55dの下方に突出形成された突出部位55aが上昇し、突出部位56aに対してその先端部が下方から当接するとともに、これを押し上げる。すると、突出部位56aが設けられた延設部位56は、主に薄肉部56dが基台部52と連結する部分において曲がることにより傾きながら上昇する。この結果、延設部位56の下面に固定された摩擦パッド80も傾きながら上昇し、その摩擦面80sが当接面22から少なくとも一部が離れた状態になる。なお、この場合、本実施形態では、摩擦面80sの全面が当接面22から離れる。
【0041】
一方、摩擦面80sが当接面22から離れた状態において、第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86は、当接面22に対して少なくとも接触もしくは当接した状態を維持する。換言すれば、第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86は、このような状態になるように、前後方向と交差する方向における部材長さがそれぞれ設定されている。
【0042】
そして、作業者はレバー55を摘んだ状態を維持しながら、例えば図中実線で示した位置と、図中二点鎖線で示した当接面22において最も左端に寄った位置と、の間でエッジガイド50を左右方向に適宜移動させ、用紙Pの側端(左側端)を位置決めする。もとより、エッジガイド50の移動に連動して同時にエッジガイド60も移動し、用紙Pのもう一方の側端(右側端)を位置決めする。
【0043】
本実施形態では、このエッジガイド50(60)の位置決め動作において、第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86は、当接面22に対してすくい角を形成しつつ少なくとも接触もしくは当接した状態を継続して維持しながら当接面22上を摺接する。さらに、本実施形態では第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86は、当接面22上を摺接する際に、当接面22上に存在する紙粉や埃などの粉体を捕捉する。従って、第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86は、粉体を捕捉することができる材料を用いて形成することが好ましい。ちなみに本実施形態では表面に粉体が捕捉可能な不織布(フェルト)を採用している。
【0044】
次いで、作業者は用紙Pの位置決めが完了した時点でエッジガイド50のレバー55を掴んだ状態を開放する。この開放によって、レバー55は元の状態に戻ることにより摩擦パッド80が降下し、摩擦面80sが当接面22に当接してエッジガイド50に対して左右方向における摩擦力を作用させる。この結果、エッジガイド50(60)は左右方向の移動が抑制されて用紙Pの幅方向の側端の位置決め状態を維持する。従って、摩擦パッド80は、その摩擦面80sが当接面22との間で大きな摩擦力が得られる材料を用いて形成することが好ましい。ちなみに本実施形態では、摩擦パッド80はマイクロセルポリマーシートであり、その摩擦面80sとなる表面をコーティングによって高い摩擦係数が得られるように処理が施された材料を採用している。
【0045】
また、本実施形態では、エッジガイド50の左右方向への移動に際して、当接面22において摺接する第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86が通過する範囲に設けられた溝部22hに粉体が捕捉される。換言すれば、スリット状に形成された複数の溝部22hは、粉体を捕捉可能な幅と溝深さ、および左右方向における間隔が定められて形成されている。
【0046】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)エッジガイド50の移動に際して、例えば内底面21s上に堆積したのち当接面22に移動した用紙Pの紙粉などの粉体を捕捉して当接面22を綺麗にするので、エッジガイド50が移動されて用紙Pの側端が位置決めされた状態のエッジガイド50において、摩擦パッド80は適切な摩擦力を保持する。
【0047】
(2)当接面22に付着した粉体はエッジガイド50の移動によって当接面22に設けられた溝部22hに入り込む確率が高い。従って、摩擦パッド80の摩擦面80sは当接面22との間に粉体を介在させることなく当接するので、摩擦パッド80は適切な摩擦力を保持する。
【0048】
(3)当接面22において、エッジガイド50の移動方向と交差する方向の全域に溝部22hを形成することができるので、当接面22の略全域において粉体を溝部22h内に確実に捕捉できる。
【0049】
(4)摩擦パッド80は、エッジガイド50が移動する際に、摩擦面80sの少なくとも一部が当接面22から離れるので、エッジガイド50の移動に際して摩擦パッド80の摩擦面80sに粉体が付着することが抑制される。したがって、エッジガイドが移動されて被記録媒体の側端が位置決めされた状態のエッジガイドにおいて、摩擦パッドは適切な摩擦力を保持する。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、摩擦パッド80に粉体捕捉部を設けるようにしてもよい。本変形例について、図6(a)(b)(c)を参照して説明する。
【0051】
本変形例では、図6(a)に示すように、摩擦面80sにおいて開口し、左右方向に長手方向を有するスリット状の複数(ここでは3本)の溝部81と、前後方向に長手方向を有するスリット状の複数(ここでは2本)の溝部82を、摩擦パッド80に形成する。このように形成した溝部81,82は、エッジガイド50が移動する際に摩擦面80sに付着した粉体を、摩擦面80sの開口から溝部81,82内に収納可能な粉体収納部として機能することができる。従って溝部81,82は、その開口の縁すなわち摩擦面80sの外側に位置する部分が粉体捕捉部として機能し、摩擦面80sに粉体が残存しないように抑制する。
【0052】
あるいは、図6(b)に示すように、摩擦面80sにおいて開口し、左右および前後の双方向に対して傾いた方向を長手方向とするスリット状の複数(ここでは4本)の溝部83を、摩擦パッド80に形成してもよい。このように形成した溝部83は、開口が当接面22の前後方向の全範囲において存在するとともに、開口の一部分において粉体が集中して溝部83に入り込んでも、開口から溝部83内に入り込んだ粉体を、エッジガイド50の移動に伴って、傾斜した溝部83内において移動させて分散させることができる。従って溝部83は、その開口の縁に位置する摩擦面80sが粉体捕捉部として機能し、摩擦面80sに粉体が残存しないように抑制する。
【0053】
あるいは、図6(c)に示すように、摩擦面80sにおいて開口し、上方向へ円柱状に窪んだ複数(ここでは15個)の溝部84を、摩擦パッド80に形成してもよい。このように形成した溝部84は、エッジガイド50が移動する際に摩擦面80sに付着した粉体を、摩擦面80sの開口から円柱状の窪み内に取り込むことができる。従って溝部81,82は、その開口の縁に位置する摩擦面80sが粉体捕捉部として機能し、摩擦面80sに粉体が残存しないように抑制する。
【0054】
従って、本変形例において、図6(a)(b)(c)に示すように、エッジガイド50は、摩擦パッド80の左右側に粉体捕捉部として機能する第1粉体捕捉材85および第2粉体捕捉材86の双方を備えないこととしている。もとより、第1粉体捕捉材85または第2粉体捕捉材86の少なくとも一方を備えても差し支えない。この場合は、エッジガイド50は粉体捕捉部を複数備えることになる。
【0055】
なお、以上の説明から明らかなように、摩擦面80sにおいて開口を有する溝や窪みが設けられた材料(例えば発泡材料)であれば、摩擦パッド80として採用することができることは勿論である。もとより、本変形例では、エッジガイド50の移動に際して、摩擦パッド80は、摩擦面80sの少なくとも一部が当接した状態になっている。
【0056】
本変形例によれば、上記実施形態における効果(1)〜(4)に加えて、次の効果を奏する。
(5)溝部81〜84の開口端に位置する摩擦面80sは粉体捕捉部として機能し、摩擦パッド80の摩擦面80sに付着しようとする粉体を、エッジガイド50の移動に伴って摩擦面80sに設けられた溝部81〜84内に集める確率が高くなる。従って、摩擦パッド80の摩擦面は当接面22との間に粉体が介在されることなく当接するので、摩擦パッド80は適切な摩擦力を保持する。
【0057】
・上記実施形態において、当接面22に設けられた溝部22hは、必ずしも前後方向に長手方向を有するスリット状で形成されなくてもよい。例えば、図7に示すように、当接面22において開口し、左右および前後の双方向に対して傾いた方向を長手方向とするスリット状の複数(ここでは4本)の溝部22sを、給紙カセット21に形成してもよい。
【0058】
このように形成した溝部22sは、例えば当接面22におけるエッジガイド50の移動方向と交差する方向の全域に渡って溝を形成することができる。また、エッジガイド50の左右方向の移動に伴って、第1粉体捕捉材85あるいは第2粉体捕捉材86における当接面22との当接部(接触部)が、相対的に移動する溝部22sの開口によって擦られる。従って、この擦りによって、第1粉体捕捉材85あるいは第2粉体捕捉材86における当接面22との当接部(接触部)は、付着している粉体が開口によって捕捉され、溝部22s内に確実に入りこむ。なお、溝部22sは必ずしも有底の溝でなく給紙カセット21の下面に貫通する貫通孔で形成されていても差し支えない。
【0059】
・上記実施形態において、増設ユニット30の給紙カセット31に、エッジガイド50,60と同様な構成のエッジガイドを備えることとしてもよい。こうすれば、給紙カセット21と同様な効果を得る。また、手差し給紙部16に、エッジガイド50,60と同様な構成のエッジガイドを備えることとしても差し支えない。こおうすれば、摩擦パッドが当接する当接面が傾斜面であっても、より高い確率で当接面から粉体を除去することができる。
【0060】
・上記実施形態において、摩擦パッド80をエッジガイド60に備えてもよい。この場合、エッジガイド60は、エッジガイド50と同様に摩擦パッド80を当接面22から離れるように作用させるレバー55を備えることが好ましい。
【0061】
・上記実施形態において、エッジガイド60は、エッジガイド50の移動に関わらず左右方向へ移動しない構成としてもよい。例えば、図2において、用紙P(P2)の右側端が、給紙カセット21において常に右の側壁部21c側に寄せられて位置決めされる場合、載置された用紙P2は、エッジガイド50によって左側端のみを位置決めすればよい。
【0062】
・上記実施形態において、当接面22には必ずしも溝部22hを設けなくてもよい。例えば、第1粉体捕捉材85ないし第2粉体捕捉材86が粉体を当接面22上に残すことなく部材に保持できる場合は、溝部22hは不要である。
【0063】
・上記実施形態において、記録装置11は、増設ユニット30(給紙カセット31)を備えない構成であってもよい。また、記録部20とともに画像読取装置やFAX装置、あるいはコピー装置などの機能を備えた複合機であってもよい。
【0064】
・上記実施形態において、媒体は用紙Pに限るものでなく、金属板、樹脂板、布などを材料とする板状部材であってもよい。すなわち、搬送可能であって、媒体粉や埃などを載置面上に発生させる部材であれば、被記録媒体として採用できる。
【0065】
・上記実施形態において、記録部20は、インクカートリッジ27がキャリッジ24上に搭載されるオンキャリッジタイプであってもよい。あるいは、キャリッジ24が主走査方向に移動するシリアル式のプリンターに限らず、液体噴射ヘッド25を固定したままでも用紙最大幅範囲の印字が可能なラインヘッド式やラテラル式のプリンターであってもよい。
【0066】
・上記実施形態では、記録装置11において記録部20を、液体としてのインクを噴射する液体噴射装置として具体化したが、記録部20をインク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置として具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置を流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
11…記録装置、16a…載置面、20…記録部、21…載置部としての給紙カセット、21s…載置面としての内底面、22…当接面、22h,22s…粉体収納部としての溝部、50…エッジガイド、60…エッジガイド、80…摩擦部としての摩擦パッド、80s…摩擦面、81,82,83,84…粉体収納部としての溝部、85…粉体捕捉部としての第1粉体捕捉材、86…粉体捕捉部としての第2粉体捕捉材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部へ給送される前記被記録媒体が載置される載置部と、
前記載置部に設けられ、前記被記録媒体の給送方向と交差する幅方向に移動して当該被記録媒体の前記幅方向における側端を位置決めするエッジガイドと、
前記エッジガイドに設けられ、当該エッジガイドが前記被記録媒体の前記側端を位置決めした状態で、前記載置部に設けられた当接面に当接して摩擦力を発生させる摩擦面を有する摩擦部と、
前記摩擦部の移動方向における少なくとも一方側に前記摩擦面よりも外側に設けられ、前記エッジガイドの移動に伴って前記当接面に摺接することによって前記当接面上の粉体を捕捉する粉体捕捉部と、
を備えた記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記載置部は、前記当接面に前記粉体が入り込み可能な溝部が設けられていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、
前記摩擦部は、該摩擦部の移動方向における前記当接面と対向する面に前記粉体が入り込み可能な溝部が設けられ、
前記溝部は、前記摩擦面の少なくとも一部が前記当接面に摺接することによって前記溝部に前記当接面上の粉体を収納する粉体収納部として機能することを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の記録装置において、
前記溝部は、前記エッジガイドの移動方向と交差する方向に長手方向を有するスリット形状に形成されていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86963(P2013−86963A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231958(P2011−231958)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】