説明

設備保全装置、設備保全システム、設備保全方法、および設備保全プログラム

【課題】保全情報の提供に対する設備からの対価の回収率を向上させる。
【解決手段】設備保全装置400は、風力発電設備200−1〜200−nから通信ネットワーク300を介して送信された機器状態信号を受信する信号送受信部402と、複数の機器状態信号の種類のそれぞれに対応して、保全対象の機器に関する保全情報と、この保全情報を設備に提供するための設備の保全レベルに係る条件とが設定された保全情報DB410と、信号送受信部402で受信された機器状態信号に対応し、かつ保全情報の提供の対価として設備が支払った額に応じてあらかじめ設備に設定された保全レベルが設備の保全レベルに係る条件を満たす保全情報を、保全情報DB410から読み出す保全情報演算部414とを備え、保全情報演算部414で読み出された保全情報を通信ネットワーク300経由で設備に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備保全装置、設備保全システム、設備保全方法、および設備保全プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電所、太陽光発電所、水力発電所、火力発電所、変電所などの各種の発電設備や電力設備に状態監視保全技術を導入することが知られている。状態監視保全技術は、発電設備や電力設備に設置された発電機器や電力機器の状態を、例えば振動センサや歪センサなどのセンサによって定常的に計測し、計測結果に基づいて機器の故障や異常の発生の前触れを検出して機器を保全する技術である。センサで計測された機器の状態を表す機器状態信号は、例えば複数の設備の機器を集中監視して保全を行う設備保全装置に送信される。設備保全装置は、各設備から受信した機器状態信号に基づいて各設備の機器の故障や異常の発生の前触れを検出して、対応策とともに該当する設備に提供して機器の保全を図る。
【0003】
例えば風力発電設備においては、風力発電用の翼(ブレード)や発電装置の保全を要するが、目視などの保全技術では時間とコストが多くかかるので、状態監視保全技術の活用が有効である。風力発電設備の状態監視保全技術では、例えば翼に光ファイバー温度・振動センサを埋込んで、翼の温度や振動の計測信号を通信ネットワーク経由で設備保全装置に送信する。また、風力発電設備の状態監視保全技術では、例えば発電装置に振動センサ、歪センサ、カメラなどの各種センサを設置して、各種センサの計測信号を通信ネットワーク経由で設備保全装置に送信する。
【0004】
設備保全装置には、各種センサの計測信号に対応して、翼や発電装置の過去の保全履歴が格納されたデータベースが設けられている。設備保全装置は、受信した各種センサの計測信号をデータベースと照らし合わせることにより、翼や発電装置の損傷や材料の劣化などの健全性の状態監視を行う。設備保全装置は、例えば翼の損傷の発生の前触れを検出したら、例えば近い将来翼に損傷が発生するおそれがある旨および対応策として翼の部品交換を行うべき旨の勧告を保全情報として設備に提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−86368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の状態監視保全技術では、保全情報の提供に対する設備からの対価の回収率を向上させることについては考慮されていない。
【0007】
すなわち、近年、海外に建設された発電設備や電力設備の発電機器や電力機器の状態監視保全を国内で行う保全サービスが検討されているが、海外の発電設備や電力設備では、保全情報の提供に対する対価の支払いが滞りやすい。また、海外の発電設備や電力設備だけに限らず、国内においても、特に規模が比較的小さい風力発電設備、太陽光発電設備、および水力発電設備では同様に、保全情報の提供に対する対価の支払いが滞りやすく、対価を十分に回収できないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、保全情報の提供に対する設備からの対価の回収率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の設備保全装置は、保全対象の機器の状態を計測するセンサの計測信号に基づいて求められる機器状態信号を、保全対象の機器を有する設備から通信ネットワークを介して受信する状態信号受信部と、複数の機器状態信号の種類のそれぞれに対応して、保全対象の機器に関する保全情報と、この保全情報を設備に提供するための設備の保全レベルに係る条件とが設定された保全情報データベースと、状態信号受信部で受信された機器状態信号に対応し、かつ保全情報の提供の対価として設備が支払った額に応じてあらかじめ設備に設定された保全レベルが設備の保全レベルに係る条件を満たす保全情報を、保全情報データベースから読み出す保全情報演算部と、保全情報演算部で読み出された保全情報を通信ネットワーク経由で設備に送信する保全情報送信部とを備える。
【0010】
すなわち、保全情報演算部は、設備にあらかじめ設定された保全レベルが保全情報を提供するための条件を満たす場合には、保全情報を設備に提供する。これによれば、設備保全装置は、状態信号受信部で受信された機器状態信号に対応する保全情報を無条件で設備に提供するのではなく、設備が保全情報の対価として過去に支払った額に応じて、設備ごとに保全サービスに差を設けることができる。例えば、保全サービスの対価を十分に支払わない設備に対しては、必要最低限の保全サービスとして、近い将来に機器に破損が発生するおそれがあるので運転の緊急停止をすべき旨の勧告を行う。これに対して、保全サービスの対価を十分に支払っている設備に対しては、機器の中長期先の破損のおそれを見越して計画的に部品交換を行うべき旨の勧告や、設備が発電所である場合には、発電効率を向上させるための方策を提供する。その結果、本発明によれば、保全情報の提供の対価の支払いに対するインセンティブを設備に与えることができるので、保全情報の提供に対する設備からの対価の回収率を向上させることができると考えられる。
【0011】
また、設備保全装置は、保全情報の提供の対価として設備が支払った額を入力する支払い額入力部と、設備が保全情報の提供の対価として支払う額に応じて、保全レベルが段階的に設定された保全レベル算出データベースと、支払い額入力部で入力された支払い額に対応する保全レベルを保全レベル算出データベースから読み出して設備の保全レベルを設定する保全レベル演算部とをさらに備えることができる。
【0012】
これによれば、設備が保全情報の提供の対価として支払った額を支払額入力部に入力すれば、その設備の保全レベルが保全レベル演算部によって自動で設定されるので、設備の保全レベルの設定あるいは再設定の作業を簡易化することができる。
【0013】
また、本発明の設備保全システムは、保全対象の機器を有する設備と、機器の状態に応じた保全情報を設備に提供する設備保全装置とを備える。設備は、機器の状態を計測するセンサの計測信号を例えばフーリエ変換などで変換し、この変換された信号に、あらかじめ設定された周波数帯相当域内でかつあらかじめ設定された信号レベルより大きなピーク出力が発生した場合には、この周波数相当帯域および出力信号レベルを機器状態信号として通信ネットワーク経由で設備保全装置に送信する状態信号送信部を備える。
【0014】
これによれば、センサで計測された計測信号をそのまま定常的に設備保全装置に送信する場合に比べて、信号の通信量を低減することができる。また、設備保全装置の監視員は、機器状態信号の到着を待って監視活動を開始すればよいので、複数の発電設備の機器の状態を少ない監視員で集中的に監視することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保全情報の提供に対する設備からの対価の回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、設備保全システムの全体構成を示す図である。
【図2】図2は、光ファイバー温度・振動センサと歪センサの設置例を示す図である。
【図3】図3は、信号送受信部から風力発電設備に送信する機器状態信号の一例を説明する図である。
【図4】図4は、設備DBの一例を示す図である。
【図5】図5は、保全レベル算出DBの一例を示す図である。
【図6】図6は、保全レベル演算部の処理のフローチャートである。
【図7】図7は、保全情報DBの一例を示す図である。
【図8】図8は、保全情報演算部の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願の開示する設備保全装置、設備保全システム、設備保全方法、および設備保全プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により開示技術が限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
図1は、設備保全システムの全体構成を示す図である。設備保全システム100は、複数の風力発電設備200−1〜200−n(nは2以上の自然数)と、風力発電設備200−1〜200−nと通信ネットワーク300を介して接続された設備保全装置400とを有する。
【0019】
風力発電設備200−1にはそれぞれ、風力発電用の翼201を有する風車202と、風車202の回転による機械エネルギから電気エネルギを得る発電装置204とが設けられる。また、風力発電設備200−1〜200−nにはそれぞれ、発電装置204における発電量などの制御を行う制御装置206と、通信ネットワーク300を介して設備保全装置400と各種信号の送受信を行う信号送受信部208が設けられる。
【0020】
翼201には、翼201の状態を計測するセンサである光ファイバー温度・振動センサ210が設けられる。また、発電装置204には、発電装置204の状態を計測するセンサである歪センサ212が設けられる。発電装置204における発電量と、光ファイバー温度・振動センサ210で時系列に計測された計測信号と、歪センサ212で時系列に計測された計測信号は、信号送受信部208に送られる。なお、風力発電設備200−2〜200−nは、風力発電設備200−1と同様の構成であるから、説明を省略する。
【0021】
図2は、光ファイバー温度・振動センサ210と歪センサ212の設置例を示す図である。図2に示すように、光ファイバー温度・振動センサ210は、翼201の内部にそれぞれ埋め込まれる。光ファイバー温度・振動センサ210で計測された計測信号は、信号線214を介して信号送受信部208に送られる。また、歪センサ212は、発電装置204に取り付けられる。歪センサ212で計測された計測信号は、信号線214を介して信号送受信部208に送られる。なお、本実施例は、発電装置204に歪センサ212を設ける例を示したが、これに限らず、発電装置204に振動センサまたはカメラなどのセンサを設けることもできる。
【0022】
図3は、信号送受信部208から風力発電設備200−1〜200−nに送信する機器状態信号の一例を説明する図である。信号送受信部208は、光ファイバー温度・振動センサ210および歪センサ212の計測信号を、デジタルの標準管理信号に標準化する。具体的には、図3に示すように、信号送受信部208は、光ファイバー温度・振動センサ210および歪センサ212の時系列の計測信号216をフーリエ変換してフーリエ信号218を求める。
【0023】
信号送受信部208は、フーリエ信号218を用いて例えば損傷に特徴的な周波数帯域の信号を探す。すなわち、信号送受信部208は、フーリエ信号218に、あらかじめ設定された周波数帯域220内でかつあらかじめ設定された信号レベル222より大きなピーク出力が発生するか否かを監視する。信号送受信部208は、フーリエ信号218に周波数帯域220内でかつ信号レベル222より大きなピーク出力が発生したら、その周波数帯域および出力信号レベルを、機器の状態を表す機器状態信号とする。信号送受信部208は、機器状態信号を、通信ネットワーク300を介して設備保全装置400に送信する。
【0024】
なお、信号送受信部208は、フーリエ信号218に周波数帯域220内でかつ信号レベル222より大きなピーク出力が発生したら、そのピーク出力の発生時刻、周波数帯域、および信号の時間変化パターンを機器状態信号とすることもできる。また、発電装置204の状態を計測するセンサとしてカメラを設置した場合には、信号送受信部208は、カメラで撮像された画像信号を画像解析して、特徴的な変化が発生したら機器状態信号を設備保全装置400に送信することができる。具体的には、信号送受信部208は、カメラで撮像された画像信号に特徴的な変化が発生したら、その特徴的な変化の発生時刻、変化パターン、および該当時刻の画像情報などのデジタル信号を、機器状態信号として設備保全装置400に送信することができる。
【0025】
図1の説明に戻ると、設備保全装置400は、風力発電設備200−1〜200−nの信号送受信部208のそれぞれから通信ネットワーク300を介して送信された機器状態信号を受信する信号送受信部402を有する。また、設備保全装置400は、風力発電設備200−1〜200−nのそれぞれが、翼201や発電装置204の保全サービスの対価として支払った額を入力する支払い額入力部404を有する。支払い額入力部404は、例えば風力発電設備200−1〜200−nが支払った額を、通信ネットワーク300を介して受信する受信部として構成することもできるし、人手により入力する入力部として構成することもできる。
【0026】
また、設備保全装置400は、風力発電設備200−1〜200−nの各種情報を管理するための設備DB(Data Base)406と、各設備の保全レベルを設定するための保全レベル算出DB408とを有する。また、設備保全装置400は、各設備の保全情報を求めるための保全情報DB410を有する。また、設備保全装置400は、設備DB406と保全レベル算出DB408とを用いて、各設備の保全レベルを設定する保全レベル演算部412を有する。また、設備保全装置400は、設備DB406と保全情報DB410とを用いて、各設備の保全情報を求める保全情報演算部414を有する。
【0027】
図4は、設備DB406の一例を示す図である。図4に示すように、設備DB406には、風力発電設備200−1〜200−nのそれぞれに対して付与された設備ID(identification)が格納される。また、設備DB406には、各設備IDに対応して、保全サービスの提供に対する費用、保全サービスの提供に対して各風力発電設備が支払った額、費用と支払い額の割合、および保全レベルがそれぞれ格納される。なお、保全レベルは、風力発電設備200−1〜200−nに提供する保全サービスの質の程度を表すものである。
【0028】
図5は、保全レベル算出DB408の一例を示す図である。図5に示すように、保全レベル算出DB408には、保全サービスの提供に要する費用と実際の支払い額の割合に応じて、保全レベルがあらかじめ段階的に設定される。具体的には、保全サービスの提供に対する支払い額が「0」の場合には、保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合は「0」となり、保全レベルは「0」になる。保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合が「1%〜30%」の場合には、保全レベルは「1」になる。保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合が「31%〜70%」の場合には、保全レベルは「2」になる。保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合が「71%〜100%」の場合には、保全レベルは「3」になる。なお、本実施例は、保全サービスの提供に要する費用と実際の支払い額の割合に応じて保全レベルを設定する例を示したが、これには限られない。保全レベル算出DB408は、例えば、保全サービスに対する実際の支払い額に応じて保全レベルを設定することもできるし、各設備の累積の未支払い額に応じて保全レベルを設定することもできる。
【0029】
図6は、保全レベル演算部412の処理のフローチャートである。保全レベル演算部412は、風力発電設備200−1〜200−nのそれぞれが保全サービスの提供の対価として支払った額が、支払い額入力部404を介して入力されたら、支払い額を設備DB406に格納する(ステップS101)。保全レベル演算部412は、設備DB406にあらかじめ設定された風力発電設備200−1〜200−nの保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合を算出して、設備DB406に格納する(ステップS102)。保全レベル演算部412は、保全レベル算出DB408を参照して、ステップS102で算出した保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合に対応する保全レベルを読み出し、設備DB406に格納する(ステップS103)。
【0030】
図4の例では、設備IDが「A」の風力発電設備は、保全サービスの提供の対価を全く支払っていないので、保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合が「0」となり、保全レベルが「0」になる例を示している。また、設備IDが「B」の風力発電設備は、保全サービスの提供の対価と同額を支払っているので、保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合が「100%」となり、保全レベルが「3」になる例を示している。また、設備IDが「C」の風力発電設備は、保全サービスの提供に要する費用と支払い額の割合が「20%」であるので、保全レベルが「1」になる例を示している。
【0031】
図7は、保全情報DB410の一例を示す図である。保全情報DB410には、風力発電設備200−1〜200−nの過去の保全履歴を基に、あらかじめ保全情報が格納される。また、保全情報DB410には、複数の保全情報のそれぞれに対応して、当該保全情報を設備に提供するための設備の保全レベルに係る条件(保全情報の提供条件)が格納される。
【0032】
具体的には、保全情報が、機器の近い将来の破損が予想されるので機器の緊急停止の勧告を行うという内容の場合には、保全レベルが0〜3の提供条件が設定される。また、保全情報が、機器の3ヶ月以内の故障が予想されるので部品交換の勧告を行うという内容の場合には、保全レベルが1〜3の提供条件が設定される。また、保全情報が、機器の半年以内の故障が予測されるので部品メンテナンスの勧告を行い、さらに発電効率の向上の方策を提供するという内容の場合には、保全レベルが2,3の提供条件が設定される。また、保全情報が、機器の故障に関する情報とは別に、発電効率を最大にする方策、計画的な機器交換計画、および計画的な部品調達計画を定期的に提供するという内容の場合には、保全レベルが3の提供条件が設定される。なお、発電効率の向上の方策としては、例えば翼201の角度の設定などの運転パラメータを変えることの提言が挙げられる。
【0033】
図8は、保全情報演算部414の処理のフローチャートである。保全情報演算部414は、信号送受信部408を介して風力発電設備200−1〜200−nから機器状態信号を受信する(ステップS201)。一方、保全情報演算部414は、設備DB408を参照して、当該機器状態信号を送信した設備の保全レベルを読み出す(ステップS202)。続いて、保全情報演算部414は、保全情報DB410を参照して、ステップS201で受信した機器状態信号に対応する保全情報を当該設備の保全情報履歴を考慮して検索する(ステップS203)。機器状態信号の発生が頻発していても保全対策が不十分な場合は、緊急停止の勧告を行うなど、保全情報DB410の保全情報履歴を参照して保全情報が提供される。ここで、保全情報DB410の保全情報履歴には、例えば、「機器状態信号のある周波数帯域に出力ピークが出現した場合には、機器に破損が発生していたため機器の部品交換を行った」という保全情報の履歴が格納される。また、保全情報履歴には、例えば、「機器状態信号の別のある周波数帯域に出力ピークが出現した場合には、その3ヶ月後に機器の破損が発生したので機器の部品交換を行った」という保全情報の履歴が格納される。また、保全情報履歴には、その他、機器状態信号の出力ピークが出現した周波数帯域ごとの、機器の破損の状態と、その破損の状態に対して行った対策の履歴が格納される。保全情報演算部414は、受信した機器状態信号のピークが出現した周波数帯域と、保全情報履歴に格納されている複数の周波数帯域とを対比することにより、機器状態信号に対応する保全情報を検索する。
【0034】
保全情報演算部414は、ステップS203で保全情報DB410を検索した結果、機器状態信号に対応する保全情報が存在した場合には、ステップS203で読み出した保全レベルが当該保全情報の提供条件を満足するか否かを確認する(ステップS204)。保全情報演算部414は、ステップS203で読み出した保全レベルが当該保全情報の提供条件を満足する場合には(ステップS204でYES)、当該保全情報を保全情報DB410から読み出して、信号送受信部408を介して対応する設備に送信する(ステップS205)。一方、保全情報演算部414は、ステップS203で読み出した保全レベルが当該保全情報の提供条件を満足しない場合には(ステップS204でNO)、当該保全情報を保全情報DB410から読み出さずに処理を終了する。風力発電設備200−1〜200−nではそれぞれ、設備保全装置400から保全情報を受信したら、現地の保全員が、受信した保全情報にしたがって、例えば翼201や発電装置204の緊急停止、パラメータの調整、部品の取り換えなどの保全業務を行う。
【0035】
以上、本実施例によれば、機器状態信号に対応する保全情報を無条件で風力発電設備に提供するのではなく、風力発電設備が保全サービスの対価として支払った額に応じて、風力発電設備ごとに保全サービスに差を設けることができる。例えば、設備IDが「A」の風力発電設備は、保全サービスの対価を全く支払っていないので保全レベルを「0」に設定する。そして、設備IDが「A」の風力発電設備には、近い将来に機器に破損が発生するおそれがあるので運転の緊急停止をすべき旨の保全情報だけを必要最低限の保全サービスとして提供する。このように、支払いが十分でない設備であっても必要最低限の保全サービスを提供することにより、設備の機器に故障が発生して対価の支払いの機会を失うおそれを抑制することができる。
【0036】
また、設備IDが「B」の風力発電設備は、保全サービスの対価を支払っているが、支払い額が十分ではないから保全レベルを「1」に設定する。そして、設備IDが「B」の風力発電設備には、保全レベル「0」のサービスに加えて、例えば機器の3ヶ月以内の故障が予想されるので部品の交換を行うべき旨の保全情報を提供する。これに対して、設備IDが「C」の風力発電設備は、保全サービスの対価を全額支払っているので、保全レベルを「3」に設定する。そして、設備IDが「C」の風力発電設備には、保全レベルが「0」や「1」の保全サービスに加えて、発電効率を最大にするための方策や中長期的に保全費用を抑えるための機器の交換や部品調達の計画を提供する。
【0037】
その結果、本実施例によれば、保全情報の提供の対価の支払いのインセンティブを設備に対して与えることにより、保全情報の提供に対する設備からの対価の回収率を向上させることができると考えられる。特に、海外に建設した発電設備や電力設備または国内でも比較的中小規模の風力発電設備、太陽光発電設備、および水力発電設備などの保全業務を請け負う場合には、保全情報に係る対価の回収率を向上させることが望まれているので、本実施例は有用である。
【0038】
また、本実施例は、支払い額入力部404と、保全レベル算出DB408と、保全レベル演算部412を備える。したがって、設備が保全情報の提供の対価として支払った額を支払額入力部404に入力すれば、その設備の保全レベルが保全レベル演算部412によって自動で設定されるので、設備の保全レベルの設定あるいは再設定の作業を簡易化することができる。
【0039】
また、本実施例は、光ファイバー温度・振動センサ210や歪センサ212で計測された時系列の計測信号をフーリエ変換して標準化し、例えば損傷に特徴的な周波数帯域の信号を検出したら機器状態信号を設備保全装置400に送信する。したがって、本実施例によれば、光ファイバー温度・振動センサ210や歪センサ212で計測された時系列の計測信号をそのまま定常的に設備保全装置400に送信する場合に比べて、信号の通信量を低減することができる。また、本実施例によれば、設備保全装置400の監視員は、機器状態信号の到着を待って監視活動を開始すればよいので、複数の発電設備の機器の状態を1つの設備保全装置400の少ない監視員で集中的に監視することができる。その結果、設備保全装置400に配置する要員数を削減することができる。なお、本実施例は、計測信号をフーリエ変換して標準化する例を示したが、これには限られない。例えば、計測信号をウェーブレット変換により変換して標準化することができる。また、計測信号をラプラス変換により変換して標準化することもできる。
【0040】
また、本実施例は、設備保全装置400に、保全対象の機器の過去の保全履歴を機器状態信号に対応させてデータベース化しているので、機器状態信号を受信した際に設備保全装置400により自動的に保全情報を求めることができ、保全員の負荷が低減される。また、時差が大きい海外の発電設備または電力設備に本実施例を適用した場合には、時差を利用して、現地の昼間の機器の保全業務は現地で行い、現地の夜間の機器の保全業務は設備保全装置400で昼間に行うことができる。その結果、本実施例によれば、設備保全装置400の保全員や設備の現地の保全員の勤務時間を合理化することができるので、保全業務にかかる費用をさらに削減することができる。
【0041】
なお、本実施例は、保全レベルが高い場合の保全サービスとして、発電効率を最大にするための方策や保全費用を抑えるための方策を提供する例を示したが、これには限られない。例えば、設備保全装置400は、保全レベルが高い設備には保全情報の提供の頻度を高くしてきめ細かく保全サービスを高くすることにより、保全サービス費用の支払いに対するインセンティブを与えることができる。また、設備保全装置400は、例えば保全レベルが低い設備には、発電効率を向上させるための方策等をリアルタイムには提供せず事後的に提供することにより、保全サービス費用の支払いに対するインセンティブを与えることができる。
【0042】
なお、本実施例は、主に設備保全システム、設備保全装置、および設備保全方法を中心に説明したが、本発明は、あらかじめ用意された設備保全プログラムをコンピュータで実行することによって、上述の実施例と同様の機能を実現することができる。すなわち、設備保全プログラムは、保全対象の機器の状態を計測するセンサの計測信号に基づいて求められる機器状態信号を、保全対象の機器を有する設備から通信ネットワークを介して受信する状態信号受信手順をコンピュータに実行させる。また、設備保全プログラムは、複数の機器状態信号の種類のそれぞれに対応して、保全対象の機器に関する保全情報と、該保全情報を設備に提供するための設備の保全レベルに係る条件とが設定された保全情報データベースに基づいて、状態信号受信ステップで受信された機器状態信号に対応し、かつ保全情報の提供の対価として設備が支払った額に応じてあらかじめ設備に設定された保全レベルが設備の保全レベルに係る条件を満たす保全情報を読み出す保全情報演算手順をコンピュータに実行させる。また、設備保全プログラムは、保全情報演算手順で読み出された保全情報を通信ネットワーク経由で設備に送信する保全情報送信手順をコンピュータに実行させる。
【0043】
また、設備保全プログラムは、保全レベルの提供の対価として設備が支払った額を入力する支払い額入力手順と、設備が保全情報の提供の対価として支払う額に応じて保全レベルが段階的に設定された保全レベル算出データベースに基づいて、支払い額入力手順で入力された支払い額に対応する保全レベルを読み出して設備の保全レベルを設定する保全レベル演算手順とをさらにコンピュータに実行させることができる。なお、設備保全プログラムは、インターネットなどの通信ネットワークを介してコンピュータに配布することができる。また、設備保全プログラムは、コンピュータに設けられたメモリ、ハードディスク、その他のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【符号の説明】
【0044】
100 設備保全システム
200 風力発電設備
208 信号送受信部
210 光ファイバー温度・振動センサ
212 歪センサ
216 計測信号
218 フーリエ信号
220 周波数帯域
222 信号レベル
300 通信ネットワーク
400 設備保全装置
402 信号送受信部
404 支払い額入力部
408 保全レベル算出DB
410 保全情報DB
412 保全レベル演算部
414 保全情報演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保全対象の機器の状態を計測するセンサの計測信号に基づいて求められる機器状態信号を、前記保全対象の機器を有する設備から通信ネットワークを介して受信する状態信号受信部と、
複数の前記機器状態信号の種類のそれぞれに対応して、前記保全対象の機器に関する保全情報と、該保全情報を前記設備に提供するための設備の保全レベルに係る条件とが設定された保全情報データベースと、
前記状態信号受信部で受信された機器状態信号に対応し、かつ前記保全情報の提供の対価として前記設備が支払った額に応じてあらかじめ設備に設定された保全レベルが前記設備の保全レベルに係る条件を満たす保全情報を、前記保全情報データベースから読み出す保全情報演算部と、
前記保全情報演算部で読み出された保全情報を前記通信ネットワーク経由で前記設備に送信する保全情報送信部と
を備えた設備保全装置。
【請求項2】
前記保全情報の提供の対価として前記設備が支払った額を入力する支払い額入力部と、
前記設備が前記保全情報の提供の対価として支払う額に応じて、前記保全レベルが段階的に設定された保全レベル算出データベースと、
前記支払い額入力部で入力された支払い額に対応する保全レベルを前記保全レベル算出データベースから読み出して前記設備の保全レベルを設定する保全レベル演算部と
をさらに備えた設備保全装置。
【請求項3】
保全対象の機器を有する設備と、前記機器の状態に応じた保全情報を前記設備に提供する設備保全装置とを備えた設備保全システムであって、
前記設備は、
前記機器の状態を計測するセンサの計測信号をフーリエ変換し、該フーリエ変換された信号に、あらかじめ設定された周波数帯相当域内でかつあらかじめ設定された信号レベルより大きなピーク出力が発生した場合には、該周波数帯相当域および出力信号レベルを機器状態信号として通信ネットワーク経由で前記設備保全装置に送信する状態信号送信部を備え、
前記設備保全装置は、
前記信号送信部から前記通信ネットワーク経由で送信された前記機器状態信号を受信する状態信号受信部と、
複数の前記機器状態信号の種類のそれぞれに対応して、前記保全対象の機器に関する保全情報と、該保全情報を前記設備に提供するための設備の保全レベルに係る条件とが設定された保全情報データベースと、
前記状態信号受信部で受信された機器状態信号に対応し、かつ前記保全情報の提供の対価として前記設備が支払った額に応じてあらかじめ設備に設定された保全レベルが前記設備の保全レベルに係る条件を満たす保全情報を、前記保全情報データベースから読み出す保全情報演算部と、
前記保全情報演算部で読み出された保全情報を前記通信ネットワーク経由で前記設備に送信する保全情報送信部と
を備える設備保全システム。
【請求項4】
保全対象の機器の状態を計測するセンサの計測信号に基づいて求められる機器状態信号を、前記保全対象の機器を有する設備から通信ネットワークを介して受信する状態信号受信ステップと、
複数の前記機器状態信号の種類と履歴のそれぞれに対応して、前記保全対象の機器に関する保全情報と、該保全情報を前記設備に提供するための設備の保全レベルに係る条件とが設定された保全情報データベースに基づいて、前記状態信号受信ステップで受信された機器状態信号に対応し、かつ前記保全情報の提供の対価として前記設備が支払った額に応じてあらかじめ設備に設定された保全レベルが前記設備の保全レベルに係る条件を満たす保全情報を読み出す保全情報演算ステップと、
前記保全情報演算ステップで読み出された保全情報を前記通信ネットワーク経由で前記設備に送信する保全情報送信ステップと
を備えた設備保全方法。
【請求項5】
前記保全情報の提供の対価として前記設備が支払った額を入力する支払い額入力ステップと、
前記設備が前記保全情報の提供の対価として支払う額に応じて前記保全レベルが段階的に設定された保全レベル算出データベースに基づいて、前記支払い額入力ステップで入力された支払い額に対応する保全レベルを読み出して前記設備の保全レベルを設定する保全レベル演算ステップと
をさらに備えた設備保全方法。
【請求項6】
保全対象の機器の状態を計測するセンサの計測信号に基づいて求められる機器状態信号を、前記保全対象の機器を有する設備から通信ネットワークを介して受信する状態信号受信手順と、
複数の前記機器状態信号の種類のそれぞれに対応して、前記保全対象の機器に関する保全情報と、該保全情報を前記設備に提供するための設備の保全レベルに係る条件とが設定された保全情報データベースに基づいて、前記状態信号受信ステップで受信された機器状態信号に対応し、かつ前記保全情報の提供の対価として前記設備が支払った額に応じてあらかじめ設備に設定された保全レベルが前記設備の保全レベルに係る条件を満たす保全情報を読み出す保全情報演算手順と、
前記保全情報演算手順で読み出された保全情報を前記通信ネットワーク経由で前記設備に送信する保全情報送信手順と
をコンピュータに実行させる設備保全プログラム。
【請求項7】
前記保全レベルの提供の対価として前記設備が支払った額を入力する支払い額入力手順と、
前記設備が前記保全情報の提供の対価として支払う額に応じて前記保全レベルが段階的に設定された保全レベル算出データベースに基づいて、前記支払い額入力手順で入力された支払い額に対応する保全レベルを読み出して前記設備の保全レベルを設定する保全レベル演算手順と
をさらにコンピュータに実行させる設備保全プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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