設計支援装置及び設計支援プログラム
【課題】溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)がより容易な設計支援装置を、提供する。
【解決手段】設計支援装置を、溶接距離を指定した上で、ディスプレイ(メッシュモデル)上の一点をマウスピックすれば、各辺の長さの総和が指定溶接距離とほぼ一致する(S111;YES),マウスピック位置最近傍の辺で始まる,連続した,隣接するいずれの2辺のなす角も180°近傍の角度(予め設定されている範囲内の角度)となっている辺群を検索する装置として構成しておく。
【解決手段】設計支援装置を、溶接距離を指定した上で、ディスプレイ(メッシュモデル)上の一点をマウスピックすれば、各辺の長さの総和が指定溶接距離とほぼ一致する(S111;YES),マウスピック位置最近傍の辺で始まる,連続した,隣接するいずれの2辺のなす角も180°近傍の角度(予め設定されている範囲内の角度)となっている辺群を検索する装置として構成しておく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接設計作業を支援するための設計支援装置及び設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車メーカー等では、CADに分類される装置(以下、設計支援装置と表記する)を用いることによって、溶接設計作業(溶接図面を作成する作業,自動溶接装置用の制御データを作成する作業等)が、行われている。
【0003】
そのような設計支援装置としては、各種数値データに基づき,溶接箇所を自動的に設計できる装置(例えば、特許文献2,3参照。)も存在している。ただし、一般的な設計支援装置は、“溶接箇所とする辺を、メッシュモデル上から一個ずつマウスで選択する”,“溶接箇所とする連続した辺を、メッシュモデル上からマウスで矩形選択する”ことが必要な装置(例えば、特許文献1参照。)として構成されている。なお、自動/手動設計が可能な設計支援装置も、手動設計時には、同様の操作が必要な装置として構成されている。
【0004】
そして、一般的な溶接設計対象物(自動車等)は、曲面を有するもの(そのメッシュモデル上に、曲線を表している辺群が多数あるもの)となっていることに加え、既存の設計支援装置は、選択した辺の数や長さの総和を、オペレータが管理しなければならない装置ともなっている。このため、既存の設計支援装置は、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)に失敗することが結構あるものとなっている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−330212号公報
【特許文献2】特開2002−45965号公報
【特許文献3】特開平11−291039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)がより容易な設計支援装置、及び、そのような設計支援装置としてコンピュータを動作させることが出来る設計支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の設計支援装置は、物体の形状を,複数の辺を有する板要素の集合で表現したメッシュモデルを、ディスプレイ上に表示する表示制御手段と、距離条件を指定する距離条件指定操作と,メッシュモデルのいずれかの辺を指定する辺指定操作とを含むサーチ処理開始指示操作がなされたときに、辺指定操作によって指定されている辺を含む,各辺の端点で順々に繋がった辺群であって、隣接する2辺の間の角度が所定条件(例えば、165°〜180°)を満たし,かつ,各辺の長さの総和が距離条件指定操作によって指定されている距離条件を満たしている辺群を、メッシュモデルの辺の中から特定する特定手段と、この特定手段による辺群の特定結果を、読み出し可能な形で記憶しておくための記憶手段とを、備える。
【0008】
すなわち、本発明の設計支援装置は、距離条件を指定する距離条件指定操作と,メッシュモデルのいずれかの辺を指定する辺指定操作とを含むサーチ処理開始指示操作とをオペレータが行うだけで、溶接箇所の指定が完了する構成を有している。従って、この設計支
援装置を用いれば、“溶接箇所とする辺を、メッシュモデル上から一個ずつマウスで選択する”,“溶接箇所とする連続した辺を、メッシュモデル上からマウスで矩形選択する”といったような複雑/煩雑な辺の指定操作が必要な既存の設計支援装置を用いた場合よりも、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)が容易に行えることになる。
【0009】
本発明の設計支援装置の特定手段としては、さまざまなものを採用することが出来る。例えば、特定手段として、『その一方の末端に辺指定操作によって指定されている辺を含む辺群を特定する手段』を採用することが出来る。また、特定手段として、『ディスプレイに表示されているメッシュモデル上の1点が指定されたときに、その指定された点に最も近い辺を開始辺として指定する辺指定操作がなされたと認識する手段であると共に、その一方の末端に開始辺が含まれ、辺指定操作時に指定されたメッシュモデル上の点に近い方の開始辺の端点側に他の各辺が繋がっている辺群を特定する手段』を採用することも出来る。
【0010】
なお、本発明における“距離条件を指定する距離条件指定操作”は、最終的に、特定手段によって特定される辺群が,それらの長さの総和で規定されることになるものでありさえすれば、どのようなものであっても良い。例えば、“距離条件を指定する距離条件指定操作”として実際に行われる操作が“溶接距離を指定する操作”となるように(請求項4),しておくことが出来る。
【0011】
また、特定手段として、メッシュモデルのいずれかの二辺を指定する二辺指定操作を含む連続辺サーチ処理開始指示操作がなされた場合には、二辺指定操作によって指定された二辺を両端に含む繋がった辺群であって、隣接する二辺の間の角度が所定条件を満たす辺群を、メッシュモデルの辺の中から特定する手段を採用しておけば、より溶接設計作業が容易な設計支援装置を実現できることになる。
【0012】
また、この種の装置は、処理結果がオペレータに示されるものであることが望ましい。このため、本発明の設計支援装置を実現する際には、ディスプレイに表示されているメッシュモデルの,特定手段によって特定された各辺の表示形態を、通常のものとは異なる表示形態に変更する検索結果提示手段を付加しておくことが望ましい。
【0013】
そして、本発明の設計支援プログラムは、コンピュータを、本発明の設計支援装置(請求項1記載のもの)として動作させることが出来るものとなっている。従って、この設計支援プログラムを用いても、従来よりも、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)が容易な作業環境を実現できることになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来よりも、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)が容易な作業環境を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1に模式的に示してあるように、本発明の一実施形態に係る設計支援装置10は、メッシュモデル表示機能,溶接設計支援機能,溶接図面出力機能及び制御データ出力機能を有する装置である。
【0017】
この設計支援装置10は、ディスプレイ,キーボード,マウス等が接続されているコンピュータ(OS等がインストール済みのもの)に、新たに開発した設計支援プログラムをインストールすることによって構成した装置である。このため、以下では、設計支援装置
10の具体的なハードウェア構成の説明は省略し、設計支援プログラムにより設計支援装置10に付与されている各機能の内容のみを説明することにする。
【0018】
設計支援プログラムにより設計支援装置10に付与されているメッシュモデル表示機能は、或る物体に関するメッシュデータに基づき、当該物体に関するメッシュモデルをディスプレイ上に表示する機能である。ここで、メッシュモデルとは、複数の辺を有する板状の要素(本実施形態では、通常、四辺形の要素;以下、板要素と表記する)の集合で物体を表現するモデルのことである。また、メッシュデータとは、メッシュモデルの表示に必要な各種のデータ(各種板要素の各頂点の座標データ等)を含むデータのことである。
【0019】
このメッシュモデル表示機能は、各種の記憶装置(可搬型の記録媒体,自装置内/他装置内のHDD等)上のメッシュデータに基づき,任意の視点位置からの,任意サイズ(任意拡縮率)のメッシュモデルを表示できるものとなっている。すなわち、メッシュモデル表示機能は、例えば、図2に示したような形(物体の一部のみがディスプレイ上に表示される形)でメッシュモデルを表示することができる機能となっている。
【0020】
溶接設計支援機能(図1)は、それを利用することにより溶接設計(溶接箇所の指定等)が行える機能である。この溶接設計支援機能は、溶接設計対象物のメッシュモデルをディスプレイ上に表示させた状態で利用する機能(メッシュモデル表示機能と共に利用する機能)となっている。
【0021】
より具体的には、溶接設計支援機能は、以下のような形で設計支援装置10に実装された機能となっている。
【0022】
溶接設計支援機能を利用するための操作がオペレータによってなされた場合、設計支援装置10は、まず、図3に示した構成のアーク作成ダイアログボックス20をディスプレイ上(設計支援プログラムに関するウィンドウ内)に表示する。
【0023】
このアーク作成ダイアログボックス20上の連続辺ラジオボタン22は、それを選択した後、メッシュモデル上の一点をマウスピックする(マウスを用いて指定する)と、設計支援装置10が連続辺サーチ処理(詳細は後述)を開始することになるアイテムである。
【0024】
辺ラジオボタン21は、第1サーチ処理或いは第2サーチ処理を設計支援装置10に行わせるためのアイテムである。各サーチ処理の内容については後述するが、第1サーチ処理は、溶接距離を予め指定しておくことが必要な,メッシュモデル上の一点をマウスピックすることにより開始される処理となっている。一方、第2サーチ処理は、溶接距離の指定が不必要な,メッシュモデル上の二点をマウスピックすることにより開始される処理となっている。
【0025】
チェックボックス23は、設計支援装置10が行うべきサーチ処理が,溶接距離の指定が必要な第1サーチ処理,溶接距離の指定が不要な第2サーチ処理のいずれであるかを指定するためのアイテムである。テキストボックス24は、設計支援装置10に第1サーチ処理を行わせる場合(チェックボックス23をチェックした場合)に、溶接距離を設定しておくアイテムである。なお、チェックボックス23は、辺ラジオボタン21が選択されている場合にのみ有効となるアイテムとなっており、テキストボックス24は、チェックボックス23がチェックされている場にのみ有効となるアイテムとなっている。
【0026】
このようなアーク作成ダイアログボックス20の表示を終えた設計支援装置10は、アーク作成ダイアログボックス20に対する設定操作や、表示中のメッシュモデルに対する操作(メッシュモデル上の一点或いは二点のマウスピック操作)がなされることを監視す
る状態となる。そして、設計支援装置10は、いずれかのサーチ処理の開始を指示する操作がオペレータによってなされた場合には、開始が指示されたサーチ処理を開始する。
【0027】
以下、各サーチ処理の内容(各サーチ処理時の設計支援装置10の動作内容)を、順に、説明する。
【0028】
《第1サーチ処理》
設計支援装置10は、第1サーチ処理の開始が指示された場合(辺ラジオボタン21が選択されており,テキストボックス24に溶接距離が入力されている状態で,メッシュモデル上の一点がマウスピックされた場合)には、図4に示した手順の第1サーチ処理を開始する。
【0029】
すなわち、この場合、設計支援装置10は、まず、Lsumを“0”に初期化すると共に
,マウスピック位置下の板要素を,表示中のメッシュモデル(処理対象となっているメッシュデータ)から検索する処理(ステップS101)を行う。なお、Lsumとは、検索が
完了している辺の長さの総和を記憶しておくための変数(RAM上の所定の記憶領域)のことである。
【0030】
ステップS101の処理でマウスピック位置下の板要素を検索できなかった場合(ステップS102;NO)、設計支援装置10は、その旨を示すエラーメッセージをディスプレイ上に表示(図示せず)してから、この第1サーチ処理を終了する。
【0031】
これに対して、マウスピック位置下の板要素を検索できた場合(ステップS102;YES)、設計支援装置10は、検索した板要素の,マウスピック位置に最も近い辺を特定する処理(ステップS103)を行う。また、設計支援装置10は、このステップS103において、特定した辺が,その後に処理対象とすべき辺(以下、注目辺と表記する)であることを記憶すると共に、特定した辺を,検索が完了した辺(以下、検索辺と表記する)として記憶する処理も行う。
【0032】
なお、ステップS103にて設計支援装置10が実際に行うのは、検索した板要素の,マウスピック位置に最も近い辺の識別情報を特定する処理、注目辺の識別情報を記憶しておくための変数に,特定した辺の識別情報を設定する処理、及び、特定した辺の識別情報を,検索辺に関する識別情報として記憶する処理である。ただし、そのような説明を各ステップについて行うと説明が複雑なものとなるため、以下の設計支援装置10の動作内容の説明も、“識別情報”関連の説明を省略した形で行うことにする。
【0033】
ステップS103の処理を終えた設計支援装置10は、注目辺上の,マウスピック位置に最も近い点を求め(ステップS104)てから、求めた点に近い方の,注目辺の端点が、その後に処理対象とすべき端点(以下、注目端点と表記する)であることを記憶する(ステップS105)。
【0034】
その後、設計支援装置10は、注目辺の隣接辺を全て特定する処理(ステップS106)を行う。ここで、注目辺の隣接辺とは、その一方の端点が注目端点と一致している,他の板要素(注目辺を有していない板要素)の辺のことである。
【0035】
ステップS106の処理にて1個以上の隣接辺が特定できた場合(ステップS107;YES)、設計支援装置10は、特定した各隣接辺の注目辺に対する傾斜角を算出する(ステップS108)。なお、本明細書において、隣接辺の注目辺に対する傾斜角とは、図5における角度α,βのことである。すなわち、隣接辺の注目辺に対する傾斜角とは、注目辺を延長した線分と隣接辺との間の角度のことである
【0036】
ステップS108(図4)の処理を終えた設計支援装置10は、算出した傾斜角(以下、算出角度とも表記する)の中に,予め設定されている共用範囲(例えば、0°〜15°)内の角度があるか否かを判断する(ステップS109)。
【0037】
算出角度中に共用範囲内の角度があった場合(ステップS109;YES)、設計支援装置10は、注目辺を,傾斜角が最小の隣接辺(最小の傾斜角が算出された隣接辺)に変更する処理(ステップS110)を行う。また、設計支援装置10は、このステップS110において、変更後の注目辺(傾斜角が最小の隣接辺)の長さLをLsumに加算する処
理も行う。
【0038】
その後、設計支援装置10は、Lsum(Lsumの値)が,指定されている溶接距離(以下、指定距離と表記する)未満であるか否かを判断する(ステップS111)。
【0039】
Lsumが指定距離未満であった場合(ステップS111;YES)、設計支援装置10
は、注目辺を検索辺として記憶し、注目端点を,注目辺の,注目端点と一致していない方の端点に変更する(ステップS112)。そして、設計支援装置10は、ステップS106に戻って、前回とは異なる辺/端点を,注目辺/注目端点とした処理を開始する。
【0040】
ステップS106〜S112の処理を繰り返しているうちに,Lsumが指定距離以上と
なった場合(ステップS111;NO)、設計支援装置10は、Lsum>指定距離である
場合には,LsumからLを減じ、Lsum=指定距離である場合には,注目辺を検索辺として記憶する処理(ステップS113)を行う。なお、このステップS113の処理が行われるようにしてあるのは、ステップS106〜S112の処理が,ステップS111の判断時点では,Lsumの値と検索辺の長さの総和とが一致しない処理となっているからである
。
【0041】
ステップS113の処理を終えた設計支援装置10は、検索結果提示処理(ステップS114;詳細は後述)を開始する。また、設計支援装置10は、隣接辺の特定に失敗した場合(ステップS107;NO)や、隣接辺は特定できたが,いずれの隣接辺の傾斜角も共用範囲内に入っていなかった場合(ステップS109;NO)にも、検索結果提示処理(ステップS114)を開始する。
【0042】
検索結果提示処理を開始した設計支援装置10は、まず、表示中のメッシュモデルの,検索辺として記憶している各辺を,特殊な表示形態(本実施形態では、赤)で表示する検索辺表示処理を行う。
【0043】
既に説明した処理手順から明らかなように、第1サーチ処理は、マウスピック位置に近い辺,端点を,最初の注目辺,注目端点として特定した後、注目辺,注目端点を,注目辺の隣接辺,当該隣接辺の現注目端点とは異なる方の端点に変更していくことにより、辺を検索していく処理となっている。換言すれば、第1サーチ処理は、図6(A),(B)に模式的に示してあるように、最初のマウスピック位置によって指定される方向へ、辺を検索していく処理となっている。
【0044】
そして、検索辺表示処理は、そのような形で検索された各辺を特殊な表示形態で表示する処理,すなわち、ディスプレイの表示内容を図7に示したようなものに変更する処理となっている。なお、図7に示した画面例は、実際の画面例上に、マウスピック位置を示すための白矢印(白抜き矢印)と、辺の検索方向を示すための黒矢印とを追加してあるものである。
【0045】
検索辺表示処理を終えた設計支援装置10は、長さ表示指示操作,データ保存指示操作,終了指示操作(いずれも、操作手順が定められている操作)がオペレータによってなされるのを待機する状態に移行する。ただし、設計支援装置10は、ステップS107或いはS109で“NO”側へ分岐することにより、検索結果提示処理を開始していた場合には、当該状態に移行する前に、検索結果が指定距離に満たないものである旨のメッセージをディスプレイ上に表示する処理を行う。
【0046】
そして、設計支援装置10は、長さ表示指示操作がなされた場合には、Lsumの値と指定距離とをディスプレイ上に表示する処理を行う。なお、Lsumの値と指定距離とを表示できるようにしているのは、以下の理由による。既に説明した処理手順から明らかなように、第1サーチ処理は、長さの総和が,指定距離以下の,指定距離に最も近い,端点で連続している辺群を検索する処理となっている。従って、第1サーチ処理による辺の検索時には、図8に示したように、Lsumの値(図では、25mm)と指定距離(図では、28mm)とが一致しないことがあることになる。このため、Lsumの値と指定距離とを表示できるようにすることによって、オペレータが,指定距離と,検索された各辺の長さの総和(=Lsumの値)とを確認できるようにしているのである。
【0047】
設計支援装置10は、データ保存指示操作がなされた場合には、記憶している検索辺群を示すデータ,指定距離,Lsumの値等からなるデータを、1つの溶接箇所を指定するデ
ータ(以下、溶接箇所データと表記する)としてHDD上に保存するデータ保存処理を行う。このデータ保存処理は、メッシュデータとの対応関係が分かる形で溶接箇所データを保存する処理となっている。
【0048】
そして、設計支援装置10は、終了指示操作がなされた場合には、検索結果提示処理を終了すると共に、この第1サーチ処理(図4の処理)を終了する。
【0049】
《連続辺サーチ処理》
設計支援装置10は、連続辺サーチ処理の開始が指示された場合(連続辺ラジオボタン22が選択されている状態で,メッシュモデル上の一点がマウスピックされた場合)には、図9に示した手順の連続辺サーチ処理を開始する。
【0050】
すなわち、この場合、設計支援装置10は、まず、マウスピック位置下の板要素を,表示中のメッシュモデル(処理対象となっているメッシュデータ)から検索する処理(ステップS201)を行う。
【0051】
そして、設計支援装置10は、マウスピック位置下の板要素を検索できなかった場合(ステップS202;NO)には、その旨を示すエラーメッセージをディスプレイ上に表示(図示せず)してから、この連続辺サーチ処理を終了する。
【0052】
一方、マウスピック位置下の板要素を検索できた場合(ステップS202;YES)、設計支援装置10は、最初の注目辺及び注目端点を決定するために、既に説明したステップS103〜S105の処理と同内容の処理を行う(ステップS203〜S205)。
【0053】
その後、設計支援装置10は、注目辺の隣接辺を全て特定する処理(ステップS206)を行う。そして、設計支援装置10は、1個以上の隣接辺が特定できた場合(ステップS207;YES)には、特定した各隣接辺の注目辺に対する傾斜角(図5参照)を算出する(ステップS208)。
【0054】
各隣接辺に関する傾斜角を算出した設計支援装置10は、算出した傾斜角の中に,予め設定されている共用範囲(例えば、0°〜15°)内の角度があるか否かを判断する(ス
テップS209)。
【0055】
算出角度中に共用範囲内の角度があった場合(ステップS209;YES)、設計支援装置10は、ステップS210にて、注目辺を検索辺として記憶する処理を行う。また、設計支援装置10は、このステップS210にて、注目辺を,傾斜角が最小の隣接辺に変更し、注目端点を,注目辺(傾斜角が最小の隣接辺)の,注目端点と一致していない方の端点(変更前の注目辺と繋がっていない方の端点)に変更する処理も行う。
【0056】
そして、ステップS210の処理を終えた設計支援装置10は、ステップS206に戻って、前回とは異なる辺/端点を,注目辺/注目端点とした処理を開始する。
【0057】
連続辺サーチ処理を行っている設計支援装置10は、このような処理を、隣接辺の特定に失敗する(ステップS207;NO)か、傾斜角が共用範囲内の隣接辺が見いだせなくなる(ステップS209;NO)まで、繰り返す。
【0058】
そして、設計支援装置10は、いずれかの状態となった場合(ステップS207;NO、ステップS209;NO)には、検索結果提示処理(ステップS211)を行う。
【0059】
このステップS211で行われる検索結果提示処理は、第1サーチ処理時に行われる検索結果提示処理(図4,ステップS114)とほぼ同内容の処理である。すなわち、ステップS211で行われる検索結果提示処理は、ディスプレイの表示内容を,例えば,図11に示したようなものに変更する検索辺表示処理が最初に行われる処理となっている。ただし、連続辺サーチ処理が,検索対象を溶接距離(辺の長さの総和)で制限しない処理であるため、ステップS211の検索結果提示処理は、Lsumの値及び指定距離を含まない
データを溶接箇所データとして保存する処理となっている。さらに、検索結果提示処理は、検索された辺の長さの総和等の表示機能を有さない処理となっている。
【0060】
そして、設計支援装置10は、終了指示操作がなされたときに、検索結果提示処理及び連続辺サーチ処理を終了して、オペレータによって各種指示操作がなされるのを待機する状態に移行する。
【0061】
《第2サーチ処理》
設計支援装置10は、第2サーチ処理の開始が指示された場合(ラジオボタン21が選択されており,チェックボックス23がチェックされていない状態で,メッシュモデル上の一点がマウスピックされた場合)には、図11に示した手順の第2サーチ処理を開始する。
【0062】
すなわち、この場合、設計支援装置10は、まず、各マウスピック位置下の板要素(2個の板要素)を,表示中のメッシュモデル(処理対象となっているメッシュデータ)から検索する処理(ステップS301)を行う。
【0063】
そして、設計支援装置10は、2個の板要素を検索できなかった場合(ステップS302;NO)には、その旨を示すエラーメッセージをディスプレイ上に表示(図示せず)してから、この第2サーチ処理を終了する。
【0064】
一方、2個の板要素を検索できた場合(ステップS302;YES)、設計支援装置10は、ステップS303にて、まず、マウスピック位置毎に、検索した板要素の,マウスピック位置に最も近い辺を特定する処理を行う。次いで,設計支援装置10は、特定した一方の辺(本実施形態では、最初のマウスピック位置に近い辺)が開始辺であり、他方の辺が終了辺であることを記憶する処理を行う。
【0065】
その後、設計支援装置10は、ステップS304にて、開始辺が注目辺であり、開始辺の,終了辺に近い方の端点が、開始端点及び注目端点であり、終了辺の,開始辺に近い方の端点が、終了端点であることを記憶する処理を行う。さらに、設計支援装置10は、ステップS305にて、“開始辺の,開始端点とは異なる方の端点と、終了辺の,終了端点とは異なる方の端点との間の距離”である遠隔端点間距離を求め、2×遠隔端点間距離を,検索上限距離として記憶する処理を行う。
【0066】
要するに、設計支援装置10は、図12に示したような状態を示すものとなるように各種の処理パラメータ(“開始辺”等)に値を設定する処理を、行う。
【0067】
その後、設計支援装置10は、注目辺の隣接辺を全て特定する処理(ステップS306)を行う。
【0068】
1個以上の隣接辺が特定できた場合(ステップS307;YES)、設計支援装置10は、特定した各隣接辺の注目辺に対する傾斜角(図5参照)を算出する処理(ステップS308)を行う。また、設計支援装置10は、このステップS308において、算出した傾斜角が共用範囲内の角度であった場合には、その傾斜角を,隣接辺及び注目端点との対応関係が分かる形で記憶する処理も行う。
【0069】
そして、設計支援装置10は、ステップS308の処理で,注目辺に対する傾斜角が共用範囲内の1個以上の隣接辺を見い出していた場合(ステップS309;YES)には、注目端点を,傾斜角が最小の隣接辺の,現注目端点とは異なる方の端点に変更し、注目辺を,当該隣接辺に変更する処理(ステップS310)を行う。また、このステップS310において、設計支援装置10は、開始端点から現注目辺までの各辺(詳細は後述)の長さの総和をLsumとして算出する処理も行う。
【0070】
その後、設計支援装置10は、Lsumと検索上限距離とを比較(ステップS311)し
、Lsumが検索上限距離未満であった場合(ステップS311;YES)には、注目端点
が終了端点と一致しているか否かを判断する(ステップS312)。そして、設計支援装置10は、注目端点が終了端点と一致していなかった場合(ステップS312;NO)には、ステップS306に戻って、前回とは異なる辺/端点を,注目辺/注目端点とした処理を開始する。
【0071】
上記のような処理を繰り返しているうちに、注目端点が終了端点と一致した場合(ステップS312;YES)、設計支援装置10は、検索結果提示処理(ステップS313)を行う。この検索結果提示処理は、連続辺サーチ処理中で行われる検索結果提示処理とほぼ同内容の処理である。ただし、ステップS313で行われる検索結果提示処理は、開始端点から現注目辺までの各辺(詳細は後述)と,開始辺と,終了辺とが、検索辺として取り扱われるものとなっている。
【0072】
一方、注目端点が終了端点と一致する前に、隣接辺の特定に失敗した場合(ステップS307;NO)、設計支援装置10は、注目端点をバックさせていく形で,未評価辺(注目辺として取り扱われたことがない辺)が残っている端点を探索する処理(ステップS314)を行う。
【0073】
このステップ314で行われる処理は、例えば、図13(A)における端点4が注目端点である状況下で実行された場合には、図13(B)に示したように、端点3,端点2の順で(注目端点をバックさせていく形で),各端点に未評価辺が残っているか否かをチェックしていき、未評価辺が残っている端点2を探索結果とする処理である。この処理は、
ステップS308の処理で傾斜角が算出・記憶されている辺(共用範囲内の傾斜角が算出された辺)のみに基づき、未評価辺の有無を判断する処理となっている。また、ステップS312の処理は、傾斜角が最小の未評価辺の探索も行う処理ともなっている。
【0074】
そして、上記したステップS310,S313の処理は、“注目端点がその上を移動したが,注目点がその上を戻っていない各辺”のみを、“開始端点から現注目辺までの各辺”として取り扱う処理となっている。
【0075】
ステップS314の処理で端点等を探索できなかった場合(ステップS315;NO)、設計支援装置10は、その旨を示すエラーメッセージをディスプレイ上に表示(図示せず)してから、この第2サーチ処理を終了する。
【0076】
これに対して、端点等を探索できた場合(ステップS315;YES)、設計支援装置10は、ステップS316にて、注目辺を、探索した未評価辺に変更し、注目端点を、注目辺(探索できた未評価辺)の,探索した端点と一致していない方の端点に変更する処理を行う。そして、ステップS316の処理を終えた設計支援装置10は、ステップS306以降の処理を開始する。
【0077】
すなわち、設計支援装置10は、例えば、図13(B)に示した状況にある場合には、注目辺を、端点#5,端点#2間の辺に変更し、注目端点を、端点#5に変更する処理を、このステップS316にて行う。そして、設計支援装置10は、注目辺と,端点#5で接続されている辺を検索するために、ステップS306以降の処理を開始する。
【0078】
図1に戻って、設計支援装置10が有している溶接図面出力機能,制御データ出力機能の内容を、説明する。
【0079】
設計支援装置10が有している溶接図面出力機能は、上記した溶接箇所データと、それに対応するメッシュデータとに基づき、溶接図面用の印刷データを生成して設計支援装置10と接続されている印刷装置(大判プリンタ/プロッタ)に送信する機能である。この溶接図面出力機能は、溶接図面として印刷する部分を,ディスプレイ上で確認しながら指定できるものとなっている。
【0080】
制御データ出力機能は、溶接箇所データ及びメッシュデータから,自動溶接装置用の制御データを生成して出力する機能である。この制御データ出力機能は、生成した制御データを、指定された記憶装置上に記憶することも可能な機能となっている。
【0081】
以上、詳細に説明したように、本発明の一実施形態に係る設計支援装置10は、溶接距離を指定した上で、ディスプレイ(メッシュモデル)上の一点をマウスピックすれば、各辺の長さの総和が指定溶接距離とほぼ一致する,マウスピック位置最近傍の辺で始まる連続した辺群の検索が開始される装置となっている。また、設計支援装置10は、辺の検索方向を、別途指定しなくても良い装置(マウスピック位置から辺の検索方向を決定する装置;図6参照)ともなっている。
【0082】
従って、この設計支援装置10は、複雑/煩雑な辺の指定操作が必要な既存の設計支援装置よりも、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)が容易な装置となっていると言うことが出来る。
【0083】
《変形形態》
上記した設計支援装置10は、各種の変形を行えることが出来る。例えば、設計支援装置10を、溶接距離及び開始辺が指定されたときに、開始辺を中心部分に含む,各辺の長
さの総和がほぼ指定されている溶接距離と一致している辺群を検索する処理も行える装置に変形することが出来る。また、設計支援装置10を、各辺の長さの総和が、指定溶接距離と一致する/指定溶接距離よりも若干ながい辺群を検索する装置(最後の注目辺も検索結果に含める第1サーチ処理を実行する装置)に変形することも出来る。
【0084】
さらに、設計支援装置10を、辺の検索結果を自動的に保存する装置や、各サーチ処理の具体的な手順が上記したものとは異なる装置(例えば、幅優先探索法により指定された2辺をその両端に含む連続辺を検索する装置)に変形することも出来る。また、設計支援装置10を、各サーチ処理の開始指示操作の具体的な手順が上記したものとは異なる装置,溶接距離を指定するためのダイアログボックスの構成が上記したものとは異なる装置等に変形することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施形態に係る設計支援装置の説明図。
【図2】実施形態に係る設計支援装置がディスプレイ上に表示するメッシュモデルの説明図。
【図3】実施形態に係る設計支援装置がディスプレイ上に表示するアーク作成ダイアログボックスの説明図。
【図4】実施形態に係る設計支援装置が実行する第1サーチ処理の流れ図。
【図5】傾斜角の説明図。
【図6】第1サーチ処理における辺の検索方向の説明図。
【図7】第1サーチ処理による処理結果/処理内容を説明するための図。
【図8】第1サーチ処理による検索結果と指定距離との間の関係の説明図。
【図9】実施形態に係る設計支援装置が実行する連続辺サーチ処理の流れ図。
【図10】連続辺サーチ処理による処理結果/処理内容を説明するための図。
【図11】実施形態に係る設計支援装置が実行する第2サーチ処理の流れ図。
【図12】第2サーチ処理で使用される各種パラメータの説明図。
【図13】第2サーチ処理中の,ステップS314で実行される処理の説明図。
【符号の説明】
【0086】
10 設計支援装置
20 アーク作成ダイアログボックス
21 辺ラジオボタン
22 連続辺ラジオボタン
23 チェックボックス
24 テキストボックス
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接設計作業を支援するための設計支援装置及び設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車メーカー等では、CADに分類される装置(以下、設計支援装置と表記する)を用いることによって、溶接設計作業(溶接図面を作成する作業,自動溶接装置用の制御データを作成する作業等)が、行われている。
【0003】
そのような設計支援装置としては、各種数値データに基づき,溶接箇所を自動的に設計できる装置(例えば、特許文献2,3参照。)も存在している。ただし、一般的な設計支援装置は、“溶接箇所とする辺を、メッシュモデル上から一個ずつマウスで選択する”,“溶接箇所とする連続した辺を、メッシュモデル上からマウスで矩形選択する”ことが必要な装置(例えば、特許文献1参照。)として構成されている。なお、自動/手動設計が可能な設計支援装置も、手動設計時には、同様の操作が必要な装置として構成されている。
【0004】
そして、一般的な溶接設計対象物(自動車等)は、曲面を有するもの(そのメッシュモデル上に、曲線を表している辺群が多数あるもの)となっていることに加え、既存の設計支援装置は、選択した辺の数や長さの総和を、オペレータが管理しなければならない装置ともなっている。このため、既存の設計支援装置は、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)に失敗することが結構あるものとなっている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−330212号公報
【特許文献2】特開2002−45965号公報
【特許文献3】特開平11−291039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)がより容易な設計支援装置、及び、そのような設計支援装置としてコンピュータを動作させることが出来る設計支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の設計支援装置は、物体の形状を,複数の辺を有する板要素の集合で表現したメッシュモデルを、ディスプレイ上に表示する表示制御手段と、距離条件を指定する距離条件指定操作と,メッシュモデルのいずれかの辺を指定する辺指定操作とを含むサーチ処理開始指示操作がなされたときに、辺指定操作によって指定されている辺を含む,各辺の端点で順々に繋がった辺群であって、隣接する2辺の間の角度が所定条件(例えば、165°〜180°)を満たし,かつ,各辺の長さの総和が距離条件指定操作によって指定されている距離条件を満たしている辺群を、メッシュモデルの辺の中から特定する特定手段と、この特定手段による辺群の特定結果を、読み出し可能な形で記憶しておくための記憶手段とを、備える。
【0008】
すなわち、本発明の設計支援装置は、距離条件を指定する距離条件指定操作と,メッシュモデルのいずれかの辺を指定する辺指定操作とを含むサーチ処理開始指示操作とをオペレータが行うだけで、溶接箇所の指定が完了する構成を有している。従って、この設計支
援装置を用いれば、“溶接箇所とする辺を、メッシュモデル上から一個ずつマウスで選択する”,“溶接箇所とする連続した辺を、メッシュモデル上からマウスで矩形選択する”といったような複雑/煩雑な辺の指定操作が必要な既存の設計支援装置を用いた場合よりも、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)が容易に行えることになる。
【0009】
本発明の設計支援装置の特定手段としては、さまざまなものを採用することが出来る。例えば、特定手段として、『その一方の末端に辺指定操作によって指定されている辺を含む辺群を特定する手段』を採用することが出来る。また、特定手段として、『ディスプレイに表示されているメッシュモデル上の1点が指定されたときに、その指定された点に最も近い辺を開始辺として指定する辺指定操作がなされたと認識する手段であると共に、その一方の末端に開始辺が含まれ、辺指定操作時に指定されたメッシュモデル上の点に近い方の開始辺の端点側に他の各辺が繋がっている辺群を特定する手段』を採用することも出来る。
【0010】
なお、本発明における“距離条件を指定する距離条件指定操作”は、最終的に、特定手段によって特定される辺群が,それらの長さの総和で規定されることになるものでありさえすれば、どのようなものであっても良い。例えば、“距離条件を指定する距離条件指定操作”として実際に行われる操作が“溶接距離を指定する操作”となるように(請求項4),しておくことが出来る。
【0011】
また、特定手段として、メッシュモデルのいずれかの二辺を指定する二辺指定操作を含む連続辺サーチ処理開始指示操作がなされた場合には、二辺指定操作によって指定された二辺を両端に含む繋がった辺群であって、隣接する二辺の間の角度が所定条件を満たす辺群を、メッシュモデルの辺の中から特定する手段を採用しておけば、より溶接設計作業が容易な設計支援装置を実現できることになる。
【0012】
また、この種の装置は、処理結果がオペレータに示されるものであることが望ましい。このため、本発明の設計支援装置を実現する際には、ディスプレイに表示されているメッシュモデルの,特定手段によって特定された各辺の表示形態を、通常のものとは異なる表示形態に変更する検索結果提示手段を付加しておくことが望ましい。
【0013】
そして、本発明の設計支援プログラムは、コンピュータを、本発明の設計支援装置(請求項1記載のもの)として動作させることが出来るものとなっている。従って、この設計支援プログラムを用いても、従来よりも、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)が容易な作業環境を実現できることになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来よりも、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)が容易な作業環境を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1に模式的に示してあるように、本発明の一実施形態に係る設計支援装置10は、メッシュモデル表示機能,溶接設計支援機能,溶接図面出力機能及び制御データ出力機能を有する装置である。
【0017】
この設計支援装置10は、ディスプレイ,キーボード,マウス等が接続されているコンピュータ(OS等がインストール済みのもの)に、新たに開発した設計支援プログラムをインストールすることによって構成した装置である。このため、以下では、設計支援装置
10の具体的なハードウェア構成の説明は省略し、設計支援プログラムにより設計支援装置10に付与されている各機能の内容のみを説明することにする。
【0018】
設計支援プログラムにより設計支援装置10に付与されているメッシュモデル表示機能は、或る物体に関するメッシュデータに基づき、当該物体に関するメッシュモデルをディスプレイ上に表示する機能である。ここで、メッシュモデルとは、複数の辺を有する板状の要素(本実施形態では、通常、四辺形の要素;以下、板要素と表記する)の集合で物体を表現するモデルのことである。また、メッシュデータとは、メッシュモデルの表示に必要な各種のデータ(各種板要素の各頂点の座標データ等)を含むデータのことである。
【0019】
このメッシュモデル表示機能は、各種の記憶装置(可搬型の記録媒体,自装置内/他装置内のHDD等)上のメッシュデータに基づき,任意の視点位置からの,任意サイズ(任意拡縮率)のメッシュモデルを表示できるものとなっている。すなわち、メッシュモデル表示機能は、例えば、図2に示したような形(物体の一部のみがディスプレイ上に表示される形)でメッシュモデルを表示することができる機能となっている。
【0020】
溶接設計支援機能(図1)は、それを利用することにより溶接設計(溶接箇所の指定等)が行える機能である。この溶接設計支援機能は、溶接設計対象物のメッシュモデルをディスプレイ上に表示させた状態で利用する機能(メッシュモデル表示機能と共に利用する機能)となっている。
【0021】
より具体的には、溶接設計支援機能は、以下のような形で設計支援装置10に実装された機能となっている。
【0022】
溶接設計支援機能を利用するための操作がオペレータによってなされた場合、設計支援装置10は、まず、図3に示した構成のアーク作成ダイアログボックス20をディスプレイ上(設計支援プログラムに関するウィンドウ内)に表示する。
【0023】
このアーク作成ダイアログボックス20上の連続辺ラジオボタン22は、それを選択した後、メッシュモデル上の一点をマウスピックする(マウスを用いて指定する)と、設計支援装置10が連続辺サーチ処理(詳細は後述)を開始することになるアイテムである。
【0024】
辺ラジオボタン21は、第1サーチ処理或いは第2サーチ処理を設計支援装置10に行わせるためのアイテムである。各サーチ処理の内容については後述するが、第1サーチ処理は、溶接距離を予め指定しておくことが必要な,メッシュモデル上の一点をマウスピックすることにより開始される処理となっている。一方、第2サーチ処理は、溶接距離の指定が不必要な,メッシュモデル上の二点をマウスピックすることにより開始される処理となっている。
【0025】
チェックボックス23は、設計支援装置10が行うべきサーチ処理が,溶接距離の指定が必要な第1サーチ処理,溶接距離の指定が不要な第2サーチ処理のいずれであるかを指定するためのアイテムである。テキストボックス24は、設計支援装置10に第1サーチ処理を行わせる場合(チェックボックス23をチェックした場合)に、溶接距離を設定しておくアイテムである。なお、チェックボックス23は、辺ラジオボタン21が選択されている場合にのみ有効となるアイテムとなっており、テキストボックス24は、チェックボックス23がチェックされている場にのみ有効となるアイテムとなっている。
【0026】
このようなアーク作成ダイアログボックス20の表示を終えた設計支援装置10は、アーク作成ダイアログボックス20に対する設定操作や、表示中のメッシュモデルに対する操作(メッシュモデル上の一点或いは二点のマウスピック操作)がなされることを監視す
る状態となる。そして、設計支援装置10は、いずれかのサーチ処理の開始を指示する操作がオペレータによってなされた場合には、開始が指示されたサーチ処理を開始する。
【0027】
以下、各サーチ処理の内容(各サーチ処理時の設計支援装置10の動作内容)を、順に、説明する。
【0028】
《第1サーチ処理》
設計支援装置10は、第1サーチ処理の開始が指示された場合(辺ラジオボタン21が選択されており,テキストボックス24に溶接距離が入力されている状態で,メッシュモデル上の一点がマウスピックされた場合)には、図4に示した手順の第1サーチ処理を開始する。
【0029】
すなわち、この場合、設計支援装置10は、まず、Lsumを“0”に初期化すると共に
,マウスピック位置下の板要素を,表示中のメッシュモデル(処理対象となっているメッシュデータ)から検索する処理(ステップS101)を行う。なお、Lsumとは、検索が
完了している辺の長さの総和を記憶しておくための変数(RAM上の所定の記憶領域)のことである。
【0030】
ステップS101の処理でマウスピック位置下の板要素を検索できなかった場合(ステップS102;NO)、設計支援装置10は、その旨を示すエラーメッセージをディスプレイ上に表示(図示せず)してから、この第1サーチ処理を終了する。
【0031】
これに対して、マウスピック位置下の板要素を検索できた場合(ステップS102;YES)、設計支援装置10は、検索した板要素の,マウスピック位置に最も近い辺を特定する処理(ステップS103)を行う。また、設計支援装置10は、このステップS103において、特定した辺が,その後に処理対象とすべき辺(以下、注目辺と表記する)であることを記憶すると共に、特定した辺を,検索が完了した辺(以下、検索辺と表記する)として記憶する処理も行う。
【0032】
なお、ステップS103にて設計支援装置10が実際に行うのは、検索した板要素の,マウスピック位置に最も近い辺の識別情報を特定する処理、注目辺の識別情報を記憶しておくための変数に,特定した辺の識別情報を設定する処理、及び、特定した辺の識別情報を,検索辺に関する識別情報として記憶する処理である。ただし、そのような説明を各ステップについて行うと説明が複雑なものとなるため、以下の設計支援装置10の動作内容の説明も、“識別情報”関連の説明を省略した形で行うことにする。
【0033】
ステップS103の処理を終えた設計支援装置10は、注目辺上の,マウスピック位置に最も近い点を求め(ステップS104)てから、求めた点に近い方の,注目辺の端点が、その後に処理対象とすべき端点(以下、注目端点と表記する)であることを記憶する(ステップS105)。
【0034】
その後、設計支援装置10は、注目辺の隣接辺を全て特定する処理(ステップS106)を行う。ここで、注目辺の隣接辺とは、その一方の端点が注目端点と一致している,他の板要素(注目辺を有していない板要素)の辺のことである。
【0035】
ステップS106の処理にて1個以上の隣接辺が特定できた場合(ステップS107;YES)、設計支援装置10は、特定した各隣接辺の注目辺に対する傾斜角を算出する(ステップS108)。なお、本明細書において、隣接辺の注目辺に対する傾斜角とは、図5における角度α,βのことである。すなわち、隣接辺の注目辺に対する傾斜角とは、注目辺を延長した線分と隣接辺との間の角度のことである
【0036】
ステップS108(図4)の処理を終えた設計支援装置10は、算出した傾斜角(以下、算出角度とも表記する)の中に,予め設定されている共用範囲(例えば、0°〜15°)内の角度があるか否かを判断する(ステップS109)。
【0037】
算出角度中に共用範囲内の角度があった場合(ステップS109;YES)、設計支援装置10は、注目辺を,傾斜角が最小の隣接辺(最小の傾斜角が算出された隣接辺)に変更する処理(ステップS110)を行う。また、設計支援装置10は、このステップS110において、変更後の注目辺(傾斜角が最小の隣接辺)の長さLをLsumに加算する処
理も行う。
【0038】
その後、設計支援装置10は、Lsum(Lsumの値)が,指定されている溶接距離(以下、指定距離と表記する)未満であるか否かを判断する(ステップS111)。
【0039】
Lsumが指定距離未満であった場合(ステップS111;YES)、設計支援装置10
は、注目辺を検索辺として記憶し、注目端点を,注目辺の,注目端点と一致していない方の端点に変更する(ステップS112)。そして、設計支援装置10は、ステップS106に戻って、前回とは異なる辺/端点を,注目辺/注目端点とした処理を開始する。
【0040】
ステップS106〜S112の処理を繰り返しているうちに,Lsumが指定距離以上と
なった場合(ステップS111;NO)、設計支援装置10は、Lsum>指定距離である
場合には,LsumからLを減じ、Lsum=指定距離である場合には,注目辺を検索辺として記憶する処理(ステップS113)を行う。なお、このステップS113の処理が行われるようにしてあるのは、ステップS106〜S112の処理が,ステップS111の判断時点では,Lsumの値と検索辺の長さの総和とが一致しない処理となっているからである
。
【0041】
ステップS113の処理を終えた設計支援装置10は、検索結果提示処理(ステップS114;詳細は後述)を開始する。また、設計支援装置10は、隣接辺の特定に失敗した場合(ステップS107;NO)や、隣接辺は特定できたが,いずれの隣接辺の傾斜角も共用範囲内に入っていなかった場合(ステップS109;NO)にも、検索結果提示処理(ステップS114)を開始する。
【0042】
検索結果提示処理を開始した設計支援装置10は、まず、表示中のメッシュモデルの,検索辺として記憶している各辺を,特殊な表示形態(本実施形態では、赤)で表示する検索辺表示処理を行う。
【0043】
既に説明した処理手順から明らかなように、第1サーチ処理は、マウスピック位置に近い辺,端点を,最初の注目辺,注目端点として特定した後、注目辺,注目端点を,注目辺の隣接辺,当該隣接辺の現注目端点とは異なる方の端点に変更していくことにより、辺を検索していく処理となっている。換言すれば、第1サーチ処理は、図6(A),(B)に模式的に示してあるように、最初のマウスピック位置によって指定される方向へ、辺を検索していく処理となっている。
【0044】
そして、検索辺表示処理は、そのような形で検索された各辺を特殊な表示形態で表示する処理,すなわち、ディスプレイの表示内容を図7に示したようなものに変更する処理となっている。なお、図7に示した画面例は、実際の画面例上に、マウスピック位置を示すための白矢印(白抜き矢印)と、辺の検索方向を示すための黒矢印とを追加してあるものである。
【0045】
検索辺表示処理を終えた設計支援装置10は、長さ表示指示操作,データ保存指示操作,終了指示操作(いずれも、操作手順が定められている操作)がオペレータによってなされるのを待機する状態に移行する。ただし、設計支援装置10は、ステップS107或いはS109で“NO”側へ分岐することにより、検索結果提示処理を開始していた場合には、当該状態に移行する前に、検索結果が指定距離に満たないものである旨のメッセージをディスプレイ上に表示する処理を行う。
【0046】
そして、設計支援装置10は、長さ表示指示操作がなされた場合には、Lsumの値と指定距離とをディスプレイ上に表示する処理を行う。なお、Lsumの値と指定距離とを表示できるようにしているのは、以下の理由による。既に説明した処理手順から明らかなように、第1サーチ処理は、長さの総和が,指定距離以下の,指定距離に最も近い,端点で連続している辺群を検索する処理となっている。従って、第1サーチ処理による辺の検索時には、図8に示したように、Lsumの値(図では、25mm)と指定距離(図では、28mm)とが一致しないことがあることになる。このため、Lsumの値と指定距離とを表示できるようにすることによって、オペレータが,指定距離と,検索された各辺の長さの総和(=Lsumの値)とを確認できるようにしているのである。
【0047】
設計支援装置10は、データ保存指示操作がなされた場合には、記憶している検索辺群を示すデータ,指定距離,Lsumの値等からなるデータを、1つの溶接箇所を指定するデ
ータ(以下、溶接箇所データと表記する)としてHDD上に保存するデータ保存処理を行う。このデータ保存処理は、メッシュデータとの対応関係が分かる形で溶接箇所データを保存する処理となっている。
【0048】
そして、設計支援装置10は、終了指示操作がなされた場合には、検索結果提示処理を終了すると共に、この第1サーチ処理(図4の処理)を終了する。
【0049】
《連続辺サーチ処理》
設計支援装置10は、連続辺サーチ処理の開始が指示された場合(連続辺ラジオボタン22が選択されている状態で,メッシュモデル上の一点がマウスピックされた場合)には、図9に示した手順の連続辺サーチ処理を開始する。
【0050】
すなわち、この場合、設計支援装置10は、まず、マウスピック位置下の板要素を,表示中のメッシュモデル(処理対象となっているメッシュデータ)から検索する処理(ステップS201)を行う。
【0051】
そして、設計支援装置10は、マウスピック位置下の板要素を検索できなかった場合(ステップS202;NO)には、その旨を示すエラーメッセージをディスプレイ上に表示(図示せず)してから、この連続辺サーチ処理を終了する。
【0052】
一方、マウスピック位置下の板要素を検索できた場合(ステップS202;YES)、設計支援装置10は、最初の注目辺及び注目端点を決定するために、既に説明したステップS103〜S105の処理と同内容の処理を行う(ステップS203〜S205)。
【0053】
その後、設計支援装置10は、注目辺の隣接辺を全て特定する処理(ステップS206)を行う。そして、設計支援装置10は、1個以上の隣接辺が特定できた場合(ステップS207;YES)には、特定した各隣接辺の注目辺に対する傾斜角(図5参照)を算出する(ステップS208)。
【0054】
各隣接辺に関する傾斜角を算出した設計支援装置10は、算出した傾斜角の中に,予め設定されている共用範囲(例えば、0°〜15°)内の角度があるか否かを判断する(ス
テップS209)。
【0055】
算出角度中に共用範囲内の角度があった場合(ステップS209;YES)、設計支援装置10は、ステップS210にて、注目辺を検索辺として記憶する処理を行う。また、設計支援装置10は、このステップS210にて、注目辺を,傾斜角が最小の隣接辺に変更し、注目端点を,注目辺(傾斜角が最小の隣接辺)の,注目端点と一致していない方の端点(変更前の注目辺と繋がっていない方の端点)に変更する処理も行う。
【0056】
そして、ステップS210の処理を終えた設計支援装置10は、ステップS206に戻って、前回とは異なる辺/端点を,注目辺/注目端点とした処理を開始する。
【0057】
連続辺サーチ処理を行っている設計支援装置10は、このような処理を、隣接辺の特定に失敗する(ステップS207;NO)か、傾斜角が共用範囲内の隣接辺が見いだせなくなる(ステップS209;NO)まで、繰り返す。
【0058】
そして、設計支援装置10は、いずれかの状態となった場合(ステップS207;NO、ステップS209;NO)には、検索結果提示処理(ステップS211)を行う。
【0059】
このステップS211で行われる検索結果提示処理は、第1サーチ処理時に行われる検索結果提示処理(図4,ステップS114)とほぼ同内容の処理である。すなわち、ステップS211で行われる検索結果提示処理は、ディスプレイの表示内容を,例えば,図11に示したようなものに変更する検索辺表示処理が最初に行われる処理となっている。ただし、連続辺サーチ処理が,検索対象を溶接距離(辺の長さの総和)で制限しない処理であるため、ステップS211の検索結果提示処理は、Lsumの値及び指定距離を含まない
データを溶接箇所データとして保存する処理となっている。さらに、検索結果提示処理は、検索された辺の長さの総和等の表示機能を有さない処理となっている。
【0060】
そして、設計支援装置10は、終了指示操作がなされたときに、検索結果提示処理及び連続辺サーチ処理を終了して、オペレータによって各種指示操作がなされるのを待機する状態に移行する。
【0061】
《第2サーチ処理》
設計支援装置10は、第2サーチ処理の開始が指示された場合(ラジオボタン21が選択されており,チェックボックス23がチェックされていない状態で,メッシュモデル上の一点がマウスピックされた場合)には、図11に示した手順の第2サーチ処理を開始する。
【0062】
すなわち、この場合、設計支援装置10は、まず、各マウスピック位置下の板要素(2個の板要素)を,表示中のメッシュモデル(処理対象となっているメッシュデータ)から検索する処理(ステップS301)を行う。
【0063】
そして、設計支援装置10は、2個の板要素を検索できなかった場合(ステップS302;NO)には、その旨を示すエラーメッセージをディスプレイ上に表示(図示せず)してから、この第2サーチ処理を終了する。
【0064】
一方、2個の板要素を検索できた場合(ステップS302;YES)、設計支援装置10は、ステップS303にて、まず、マウスピック位置毎に、検索した板要素の,マウスピック位置に最も近い辺を特定する処理を行う。次いで,設計支援装置10は、特定した一方の辺(本実施形態では、最初のマウスピック位置に近い辺)が開始辺であり、他方の辺が終了辺であることを記憶する処理を行う。
【0065】
その後、設計支援装置10は、ステップS304にて、開始辺が注目辺であり、開始辺の,終了辺に近い方の端点が、開始端点及び注目端点であり、終了辺の,開始辺に近い方の端点が、終了端点であることを記憶する処理を行う。さらに、設計支援装置10は、ステップS305にて、“開始辺の,開始端点とは異なる方の端点と、終了辺の,終了端点とは異なる方の端点との間の距離”である遠隔端点間距離を求め、2×遠隔端点間距離を,検索上限距離として記憶する処理を行う。
【0066】
要するに、設計支援装置10は、図12に示したような状態を示すものとなるように各種の処理パラメータ(“開始辺”等)に値を設定する処理を、行う。
【0067】
その後、設計支援装置10は、注目辺の隣接辺を全て特定する処理(ステップS306)を行う。
【0068】
1個以上の隣接辺が特定できた場合(ステップS307;YES)、設計支援装置10は、特定した各隣接辺の注目辺に対する傾斜角(図5参照)を算出する処理(ステップS308)を行う。また、設計支援装置10は、このステップS308において、算出した傾斜角が共用範囲内の角度であった場合には、その傾斜角を,隣接辺及び注目端点との対応関係が分かる形で記憶する処理も行う。
【0069】
そして、設計支援装置10は、ステップS308の処理で,注目辺に対する傾斜角が共用範囲内の1個以上の隣接辺を見い出していた場合(ステップS309;YES)には、注目端点を,傾斜角が最小の隣接辺の,現注目端点とは異なる方の端点に変更し、注目辺を,当該隣接辺に変更する処理(ステップS310)を行う。また、このステップS310において、設計支援装置10は、開始端点から現注目辺までの各辺(詳細は後述)の長さの総和をLsumとして算出する処理も行う。
【0070】
その後、設計支援装置10は、Lsumと検索上限距離とを比較(ステップS311)し
、Lsumが検索上限距離未満であった場合(ステップS311;YES)には、注目端点
が終了端点と一致しているか否かを判断する(ステップS312)。そして、設計支援装置10は、注目端点が終了端点と一致していなかった場合(ステップS312;NO)には、ステップS306に戻って、前回とは異なる辺/端点を,注目辺/注目端点とした処理を開始する。
【0071】
上記のような処理を繰り返しているうちに、注目端点が終了端点と一致した場合(ステップS312;YES)、設計支援装置10は、検索結果提示処理(ステップS313)を行う。この検索結果提示処理は、連続辺サーチ処理中で行われる検索結果提示処理とほぼ同内容の処理である。ただし、ステップS313で行われる検索結果提示処理は、開始端点から現注目辺までの各辺(詳細は後述)と,開始辺と,終了辺とが、検索辺として取り扱われるものとなっている。
【0072】
一方、注目端点が終了端点と一致する前に、隣接辺の特定に失敗した場合(ステップS307;NO)、設計支援装置10は、注目端点をバックさせていく形で,未評価辺(注目辺として取り扱われたことがない辺)が残っている端点を探索する処理(ステップS314)を行う。
【0073】
このステップ314で行われる処理は、例えば、図13(A)における端点4が注目端点である状況下で実行された場合には、図13(B)に示したように、端点3,端点2の順で(注目端点をバックさせていく形で),各端点に未評価辺が残っているか否かをチェックしていき、未評価辺が残っている端点2を探索結果とする処理である。この処理は、
ステップS308の処理で傾斜角が算出・記憶されている辺(共用範囲内の傾斜角が算出された辺)のみに基づき、未評価辺の有無を判断する処理となっている。また、ステップS312の処理は、傾斜角が最小の未評価辺の探索も行う処理ともなっている。
【0074】
そして、上記したステップS310,S313の処理は、“注目端点がその上を移動したが,注目点がその上を戻っていない各辺”のみを、“開始端点から現注目辺までの各辺”として取り扱う処理となっている。
【0075】
ステップS314の処理で端点等を探索できなかった場合(ステップS315;NO)、設計支援装置10は、その旨を示すエラーメッセージをディスプレイ上に表示(図示せず)してから、この第2サーチ処理を終了する。
【0076】
これに対して、端点等を探索できた場合(ステップS315;YES)、設計支援装置10は、ステップS316にて、注目辺を、探索した未評価辺に変更し、注目端点を、注目辺(探索できた未評価辺)の,探索した端点と一致していない方の端点に変更する処理を行う。そして、ステップS316の処理を終えた設計支援装置10は、ステップS306以降の処理を開始する。
【0077】
すなわち、設計支援装置10は、例えば、図13(B)に示した状況にある場合には、注目辺を、端点#5,端点#2間の辺に変更し、注目端点を、端点#5に変更する処理を、このステップS316にて行う。そして、設計支援装置10は、注目辺と,端点#5で接続されている辺を検索するために、ステップS306以降の処理を開始する。
【0078】
図1に戻って、設計支援装置10が有している溶接図面出力機能,制御データ出力機能の内容を、説明する。
【0079】
設計支援装置10が有している溶接図面出力機能は、上記した溶接箇所データと、それに対応するメッシュデータとに基づき、溶接図面用の印刷データを生成して設計支援装置10と接続されている印刷装置(大判プリンタ/プロッタ)に送信する機能である。この溶接図面出力機能は、溶接図面として印刷する部分を,ディスプレイ上で確認しながら指定できるものとなっている。
【0080】
制御データ出力機能は、溶接箇所データ及びメッシュデータから,自動溶接装置用の制御データを生成して出力する機能である。この制御データ出力機能は、生成した制御データを、指定された記憶装置上に記憶することも可能な機能となっている。
【0081】
以上、詳細に説明したように、本発明の一実施形態に係る設計支援装置10は、溶接距離を指定した上で、ディスプレイ(メッシュモデル)上の一点をマウスピックすれば、各辺の長さの総和が指定溶接距離とほぼ一致する,マウスピック位置最近傍の辺で始まる連続した辺群の検索が開始される装置となっている。また、設計支援装置10は、辺の検索方向を、別途指定しなくても良い装置(マウスピック位置から辺の検索方向を決定する装置;図6参照)ともなっている。
【0082】
従って、この設計支援装置10は、複雑/煩雑な辺の指定操作が必要な既存の設計支援装置よりも、溶接箇所の指定作業(辺の選択作業)が容易な装置となっていると言うことが出来る。
【0083】
《変形形態》
上記した設計支援装置10は、各種の変形を行えることが出来る。例えば、設計支援装置10を、溶接距離及び開始辺が指定されたときに、開始辺を中心部分に含む,各辺の長
さの総和がほぼ指定されている溶接距離と一致している辺群を検索する処理も行える装置に変形することが出来る。また、設計支援装置10を、各辺の長さの総和が、指定溶接距離と一致する/指定溶接距離よりも若干ながい辺群を検索する装置(最後の注目辺も検索結果に含める第1サーチ処理を実行する装置)に変形することも出来る。
【0084】
さらに、設計支援装置10を、辺の検索結果を自動的に保存する装置や、各サーチ処理の具体的な手順が上記したものとは異なる装置(例えば、幅優先探索法により指定された2辺をその両端に含む連続辺を検索する装置)に変形することも出来る。また、設計支援装置10を、各サーチ処理の開始指示操作の具体的な手順が上記したものとは異なる装置,溶接距離を指定するためのダイアログボックスの構成が上記したものとは異なる装置等に変形することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施形態に係る設計支援装置の説明図。
【図2】実施形態に係る設計支援装置がディスプレイ上に表示するメッシュモデルの説明図。
【図3】実施形態に係る設計支援装置がディスプレイ上に表示するアーク作成ダイアログボックスの説明図。
【図4】実施形態に係る設計支援装置が実行する第1サーチ処理の流れ図。
【図5】傾斜角の説明図。
【図6】第1サーチ処理における辺の検索方向の説明図。
【図7】第1サーチ処理による処理結果/処理内容を説明するための図。
【図8】第1サーチ処理による検索結果と指定距離との間の関係の説明図。
【図9】実施形態に係る設計支援装置が実行する連続辺サーチ処理の流れ図。
【図10】連続辺サーチ処理による処理結果/処理内容を説明するための図。
【図11】実施形態に係る設計支援装置が実行する第2サーチ処理の流れ図。
【図12】第2サーチ処理で使用される各種パラメータの説明図。
【図13】第2サーチ処理中の,ステップS314で実行される処理の説明図。
【符号の説明】
【0086】
10 設計支援装置
20 アーク作成ダイアログボックス
21 辺ラジオボタン
22 連続辺ラジオボタン
23 チェックボックス
24 テキストボックス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の形状を,複数の辺を有する板要素の集合で表現したメッシュモデルを、ディスプレイ上に表示する表示制御手段と、
距離条件を指定する距離条件指定操作と,前記メッシュモデルのいずれかの辺を指定する辺指定操作とを含むサーチ処理開始指示操作がなされたときに、前記辺指定操作によって指定されている辺を含む,各辺の端点で順々に繋がった辺群であって、隣接する2辺の間の角度が所定条件を満たし,かつ,各辺の長さの総和が前記距離条件指定操作によって指定されている前記距離条件を満たしている辺群を、前記メッシュモデルの辺の中から特定する特定手段と、
この特定手段による前記辺群の特定結果を、読み出し可能な形で記憶しておくための記憶手段と
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
前記特定手段が、
その一方の末端に前記辺指定操作によって指定されている辺を含む辺群を特定する手段である
ことを特徴とする請求項1記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記特定手段が、
前記ディスプレイに表示されている前記メッシュモデル上の1点が指定されたときに、その指定された点に最も近い辺を開始辺として指定する前記辺指定操作がなされたと認識する手段であると共に、
その一方の末端に前記開始辺が含まれ、前記辺指定操作時に指定された前記メッシュモデル上の点に近い方の前記開始辺の端点側に他の各辺が繋がっている辺群を特定する手段である
ことを特徴とする請求項1記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記特定手段が、
溶接距離を指定する操作がなされたときに、1辺を追加した場合,各辺の長さの総和が,その指定された溶接距離を超えることになるという条件が、前記距離条件として指定されたと認識する手段である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記特定手段が、
前記メッシュモデルのいずれかの二辺を指定する二辺指定操作を含む連続辺サーチ処理開始指示操作がなされた場合には、前記二辺指定操作によって指定された二辺を両端に含む繋がった辺群であって、隣接する二辺の間の角度が所定条件を満たす辺群を、前記メッシュモデルの辺の中から特定する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記ディスプレイに表示されている前記メッシュモデルの,前記特定手段によって特定された各辺の表示形態を、通常のものとは異なる表示形態に変更する検索結果提示手段を、さらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の設計支援装置。
【請求項7】
コンピュータを、
物体の形状を、複数の辺を有する板要素の集合で表すメッシュモデルをディスプレイ上に表示する表示制御手段と、
溶接距離,及び,前記メッシュモデルのいずれかの板要素の一辺が指定されたときに、
指定された辺を含む,各辺の端点で順々に繋がった辺群であって、隣接する二辺の間の角度が所定条件を満たす辺群を、前記メッシュモデルを構成している辺群の中から特定する特定手段と、
この特定手段による辺群の特定結果を、読み出し可能な形で記憶しておくための記憶手段と
を備える装置として動作させることを特徴とする設計支援プログラム。
【請求項1】
物体の形状を,複数の辺を有する板要素の集合で表現したメッシュモデルを、ディスプレイ上に表示する表示制御手段と、
距離条件を指定する距離条件指定操作と,前記メッシュモデルのいずれかの辺を指定する辺指定操作とを含むサーチ処理開始指示操作がなされたときに、前記辺指定操作によって指定されている辺を含む,各辺の端点で順々に繋がった辺群であって、隣接する2辺の間の角度が所定条件を満たし,かつ,各辺の長さの総和が前記距離条件指定操作によって指定されている前記距離条件を満たしている辺群を、前記メッシュモデルの辺の中から特定する特定手段と、
この特定手段による前記辺群の特定結果を、読み出し可能な形で記憶しておくための記憶手段と
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
前記特定手段が、
その一方の末端に前記辺指定操作によって指定されている辺を含む辺群を特定する手段である
ことを特徴とする請求項1記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記特定手段が、
前記ディスプレイに表示されている前記メッシュモデル上の1点が指定されたときに、その指定された点に最も近い辺を開始辺として指定する前記辺指定操作がなされたと認識する手段であると共に、
その一方の末端に前記開始辺が含まれ、前記辺指定操作時に指定された前記メッシュモデル上の点に近い方の前記開始辺の端点側に他の各辺が繋がっている辺群を特定する手段である
ことを特徴とする請求項1記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記特定手段が、
溶接距離を指定する操作がなされたときに、1辺を追加した場合,各辺の長さの総和が,その指定された溶接距離を超えることになるという条件が、前記距離条件として指定されたと認識する手段である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記特定手段が、
前記メッシュモデルのいずれかの二辺を指定する二辺指定操作を含む連続辺サーチ処理開始指示操作がなされた場合には、前記二辺指定操作によって指定された二辺を両端に含む繋がった辺群であって、隣接する二辺の間の角度が所定条件を満たす辺群を、前記メッシュモデルの辺の中から特定する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記ディスプレイに表示されている前記メッシュモデルの,前記特定手段によって特定された各辺の表示形態を、通常のものとは異なる表示形態に変更する検索結果提示手段を、さらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の設計支援装置。
【請求項7】
コンピュータを、
物体の形状を、複数の辺を有する板要素の集合で表すメッシュモデルをディスプレイ上に表示する表示制御手段と、
溶接距離,及び,前記メッシュモデルのいずれかの板要素の一辺が指定されたときに、
指定された辺を含む,各辺の端点で順々に繋がった辺群であって、隣接する二辺の間の角度が所定条件を満たす辺群を、前記メッシュモデルを構成している辺群の中から特定する特定手段と、
この特定手段による辺群の特定結果を、読み出し可能な形で記憶しておくための記憶手段と
を備える装置として動作させることを特徴とする設計支援プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−134353(P2009−134353A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307755(P2007−307755)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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