説明

診断システム

【課題】オプション品が取り付けられている電子機器を修理受付した場合に、修理受付した電子機器からオプション品を取り外したまま返却することを未然に防止することのできる診断システムを提供する。
【解決手段】診断システムは、筐体外部から電子機器の筐体内部の画像情報を取得する撮影部と、前記電子機器の工場出荷前である第1の状態の画像情報と、前記撮影部によって前記電子機器の修理受付時である第2の状態の時に撮影された画像情報と、前記撮影部によって前記電子機器の修理完了後である第3の状態の時に撮影された画像情報とを格納する記憶部と、前記記憶部に格納された前記第2の状態の時に撮影された画像情報と、前記第3の状態の時に撮影された画像情報とを比較して差分を検出する第1の比較部と、前記第1の比較部によって検出された差分を示す情報を表示する表示部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を利用した電子機器等の診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータをはじめとする電子機器は、多くの部品で構成されており、修理の工程において、部品の交換履歴を残すことが一般的に行われている。
【0003】
従来は、部品交換の受付、故障部品の診断、故障部品の修理等の修理のそれぞれの工程ごとに、電子機器に荷札をくくりつけるなどして、修理工程の情報を管理することが行われていた。これにより、電子機器の部品交換等の状況は、外観で目視によって確認することができた。しかしながら、このような手法では、修理作業員の負担にもなり、現実的ではなかった。
【0004】
そこで、特許文献1には、部品に予め非接触型ICカードを添付して、カードリーダーライターを用いて、電子機器等の修理工程の情報を管理するシステムが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−135080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電子機器には、メモリーカード等のオプション品が取り付け可能となっている状態の場合が多い。利用者が、誤ってオプション品を電子機器に装着したまま、修理工場に発送してしまう場合がある。
【0007】
修理受付後、修理作業員は、電子機器を分解して、装着されているオプション品を一旦取り外す。しかしながら、修理が完了後、修理作業員が、装着されていたオプション品を取り付けるのを忘れて、修理品を利用者のもとへ返却してしまう問題が、発生する可能性がある。
【0008】
特許文献1に開示されている発明では、予めICカードが添付されていないようなオプション品が取り付けられている状態であるかどうかまでは考慮されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、オプション品が取り付けられている電子機器を修理受付した場合に、修理受付した電子機器からオプション品を取り外したまま返却することを未然に防止することのできる診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の診断システムは、電子機器の筐体内部の画像情報を取得する撮影部と、前記電子機器の第1の状態の画像情報と、前記撮影部によって前記電子機器の修理受付時である第2の状態の時に撮影された画像情報と、前記撮影部によって前記電子機器の修理完了後である第3の状態の時に撮影された画像情報とを格納する記憶部と、前記記憶部に格納された前記第2の状態の時に撮影された画像情報と、前記第3の状態の時に撮影された画像情報とを比較して差分を検出する第1の比較部と、前記第1の比較部によって検出された差分を示す情報を表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の診断システムは、さらに、前記第1の状態の画像情報と、前記第3の状態の時に撮影された画像情報とを比較して差分を検出する第2の比較部とを備え、前記表示部は、前記第2の比較部によって検出された差分を示す情報を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オプション品が取り付けられている電子機器を修理受付した場合に、修理受付した電子機器からオプション品を取り外したまま返却することを未然に防止することのできる診断システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の診断システムを説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の診断システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態の診断システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の診断システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態の診断システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態の回路図情報を示す第1の例である。
【図7】本発明の実施の形態の回路図情報を示す第2の例である。
【図8】本発明の実施の形態のX線画像を示す一例である。
【図9】本発明の実施の形態のX線画像を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1を参照すると、本発明の実施の形態の診断システム100は、入力部10と、撮影部20と、比較部30と、表示部40と、ネットワーク500を介して、回路DB200と、画像DB300と、装置情報DB400とを備えている。
【0015】
まず、本発明の実施の形態の診断システムの概略を説明すると、修理受付時に、修理対象の筐体の外部から電子機器の製品出荷時の内部を撮影したX線画像と、修理受付時の電子機器の内部のX線画像とを、比較して表示し、電子機器の修理が完了した後に、修理品出荷前に、製品出荷時の修理対象の電子機器のX線画像と、修理受付時の修理対象の電子機器のX線画像とを比較した画像と、製品出荷時のX線画像と、修理品出荷前のX線画像とを比較した画像を表示する。このように比較して表示することで、故障箇所を修理してX線画像に変化があった箇所と、オプション品を取り付け忘れてX線画像に変化があった箇所とを目視で確認することができる。以下、詳細に説明する。
【0016】
診断システム100は、入力部10と、撮影部20と、比較部30と、表示部40とを備えている。
【0017】
入力部10は、修理を受け付けた電子機器の装置情報を入力するための入力機器である。
【0018】
撮影部20は、修理を受け付けた電子機器の内部をX線撮影するための撮影装置である。一例としては、昭61−189446号公報に、密閉機器内の内部部品を撮影するための外部診断装置が開示されている。
【0019】
比較部30は、画像DB300に格納されている画像データと、撮影部20によって撮影された画像データとを比較する機能を備える機器である。
【0020】
さらに、表示部40は、比較部30によって比較された結果を表示する表示装置である。
【0021】
制御部50は、修理対象となる電子機器の受付処理等の制御を行う装置であり、具体的にはCPU等が挙げられる。
【0022】
制御部50についてより詳細に説明すると、制御部50は、各ステップを実行するプログラムを論理的に備えており、該プログラムが各ステップに係る処理を実行する。
【0023】
回路DB200には、修理対象となる電子機器のそれぞれの回路図情報と、それに対応する装置情報とが予め格納されている。図6は回路図情報の一例であるが、図6のような回路図情報と、電子機器の装置情報(装置固有の識別番号や製造番号、装置型番などの情報で良い。)とが、関連付けされている。なお、回路図情報は、図7のようにより簡略化されていても良い。
【0024】
回路図情報には、それぞれの領域にどのような部品が配置されるかといった情報も併せて関連付けされている。また、オプション品が装着される可能性のある領域についての情報も関連付けされている。
【0025】
画像DB300には、修理対象となる電子機器のX線画像と、それに対応する装置情報とが予め格納されている。図9は、電子機器のX線画像の一例である。X線画像は、修理対象となる電子機器の装置情報(装置固有の識別番号や製造番号等が挙げられる)と関連付けされているが、修理受付時や修理品出荷前のX線画像も追加されて互いに関連付けされることになる。
【0026】
装置情報DB400は、修理対象となる電子機器の装置情報と、それに対応する修理履歴等の情報が対応付けて格納される。
【0027】
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態における、電子機器の修理受付時の動作について説明する。図2は、電子機器の修理受付時の動作について説明するためのフローチャートである。
【0028】
まず、利用者から、修理依頼された電子機器が届くと、修理作業員による入力部10へ操作がされることで、制御部50が、電子機器の受付処理を行なう(ステップS11)。詳細については、図3を用いて説明する。図3は、ステップS11の受付処理の具体的な動作を説明するためのフローチャートである。
【0029】
図3を参照すると、修理作業員によって、まず修理対象の電子機器を示す装置情報(装置固有の識別番号や製造番号等が挙げられる)が入力部10を用いて入力される(ステップS111)。
【0030】
ステップS111で装置情報が入力されると、制御部50が、装置情報に対応する回路図情報A1を回路DB200から取得する(ステップS112)。
【0031】
ステップS112で、回路図情報A1が取得されると、制御部50が、装置情報に対応するX線画像データA2を画像DB300から取得する(ステップS113)。
【0032】
ステップS113で、X線画像データA2が取得されると、最後に、修理受付された電子機器の受付時のX線画像Bを、制御部50が、撮影部20を用いて撮影する(ステップS114)。
【0033】
以上が、ステップS11の受付処理の一連の動作である。
【0034】
受付処理が行われると(ステップS11)、比較部20が、ステップS114で撮影された受付時のX線画像Bと、工場出荷時のX線画像A2とを比較して、オプション品の有無を検出する(ステップS12)。
【0035】
なお、回路図情報A1を用いることで、オプション品が設置される領域を絞り込むことができるので、さらに回路図情報A1を用いることで、オプション品の有無をより正確に検出することができる。
【0036】
ステップS12で、オプション品の有無が検出されるとその結果を示す情報を、制御部50が、装置情報DB400に、修理受付した電子機器を示す装置情報に対応付けて、格納する。さらに、制御部50は、修理受付時に撮影された電子機器のX線画像B1を、装置情報DB400に格納する(ステップS13)。
【0037】
これによって、修理作業員も修理中に装置情報を参照するなどして、オプション品が取り付けられたままであることを認識することができることになる。
【0038】
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態における、修理作業員が修理を行った後の、修理済みの電子機器の出荷前の動作について説明する。図4は、修理済みの電子機器の出荷前の動作について説明するためのフローチャートである。
【0039】
図4を参照すると、修理作業員による入力部10への操作がされることで、制御部50が、出荷処理を行なう(ステップS21)。詳細については、図5を用いて説明する。図5は、ステップS21の出荷処理の具体的な動作を説明するためのフローチャートである。
【0040】
図5を参照すると、修理作業員によって、まず修理済みの電子機器を示す装置情報が入力部10を用いて入力される(ステップS211)。
【0041】
ステップS211で、装置情報が入力されると、制御部50が、装置情報DB400から、修理受付した際に撮影されたX線画像B1と、ステップS12で取得されたオプション品の有無を示す情報を取得する(ステップS212)。
【0042】
ステップS212で、X線画像B1とオプション品の有無を示す情報を取得すると、次に、制御部50が、画像DB300から、工場出荷時のX線画像A2を取得する(ステップS213)。
【0043】
ステップS213で、X線画像A2を取得したら、制御部50が、撮影部20を用いて、修理済みの電子機器のX線画像C1を撮影する(ステップS214)。
【0044】
以上が、ステップS21の出荷処理の一連の動作である。
【0045】
出荷処理が行われると(ステップS21)、比較部30が、X線画像A2と、X線画像C1とを比較する(ステップS22)。さらに、比較部30が、X線画像B1と、X線画像C1とを比較する(ステップS22)。
【0046】
ステップS22での比較が行われると、制御部50が、画像比較した結果、変化のある箇所をハイライト表示するなどして、それぞれ表示部40に表示する(ステップS23)。例えば、制御部50は、X線画像A2とX線画像C1とを並べて表示させ、X線画像C1の変化のある箇所をハイライトさせるといった表示方法がある。また、制御部50は、X線画像A2と、X線画像C1とを並べて表示させ、両方の画像に変化の箇所をハイライト表示させるといった表示方法もある。
【0047】
オプション品の有無を示す情報が取得されていてと、X線画像A2と、X線画像C1とを比較した結果変化のある箇所があれば、オプション品が、修理品の出荷時に取り付けられている可能性が高いが、それを修理作業員が目視で確認できる。
【0048】
例えば、図8に示すX線画像が、画像A2だったとする。一方、図9に示す画像B1では、中央下部に物体が存在することを示している。しかし、同じく図9に示す画像C1では、存在していた物体が存在しないことを示すことで、修理作業員が、オプション品の取り付け忘れなどを目視で確認できることになる。
【0049】
一方、X線画像B1と、X線画像C1とを比較した結果、変化のある箇所があって、オプション品の有無を示す情報が取得されている場合には、変化のある箇所がオプション品の取り付けが忘れられている可能性が高いが、それを修理作業員が目視で確認できる。また、この場合に、自動的に制御部50が警告音を鳴らすようにしても良い。
【0050】
なお、X線画像A2と、X線画像C1とを比較した結果、さらに、X線画像B1と、X線画像C1とを比較した結果、それぞれ変化がある箇所が見つかった場合には、オプション品の付け忘れと併せて、修理したことによって画像が変化している可能性もあるので、修理状況についても目視で確認することができる。
【0051】
なお、制御部50が、X線画像C1を装置情報DB400に格納することもできる。修理済みの電子機器を、利用者の自宅まで輸送中に、衝撃を受けたことによって故障が発生することが稀にある。その場合に、修理済みの電子機器を出荷する際には、故障がなかったことを証明するためにも有効であるからである。
【0052】
また、ステップS12で画像比較を行った結果、オプション品の有無を示す情報を装置情報DB400に格納することとしているが、オプション品の有無を示す情報を格納しなくても良い。装置情報と、それに対応するX線画像A2、B1、C1とを目視で比較することができれば、本発明の目的を達成することができるからである。
【0053】
以上のような処理によって、オプション品が取り付けられている電子機器を修理受付した場合に、修理受付した電子機器からオプション品を取り外したまま返却することを未然に防止することができる。
【0054】
また、X線画像を用いることにより、非接触型ICカード等が付されていないオプション品が組み込まれたどうかを判定することを、電子機器の筐体を外すことなく、筐体内部を目視で確認することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 入力部
20 撮影部
30 比較部
40 表示部
50 制御部
100 診断システム
200 回路DB
300 画像DB
400 装置情報DB
500 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体外部から電子機器の筐体内部の画像情報を取得する撮影部と、
前記電子機器の工場出荷前である第1の状態の画像情報と、前記撮影部によって前記電子機器の修理受付時である第2の状態の時に撮影された画像情報と、前記撮影部によって前記電子機器の修理完了後である第3の状態の時に撮影された画像情報とを格納する記憶部と、
前記記憶部に格納された前記第2の状態の時に撮影された画像情報と、前記第3の状態の時に撮影された画像情報とを比較して差分を検出する第1の比較部と、
前記第1の比較部によって検出された差分を示す情報を表示する表示部とを備えることを特徴とする診断システム。
【請求項2】
前記診断システムは、さらに、前記第1の状態の画像情報と、前記第3の状態の時に撮影された画像情報とを比較して差分を検出する第2の比較部とを備え、
前記表示部は、前記第2の比較部によって検出された差分を示す情報を表示することを特徴とする請求項1に記載の診断システム。
【請求項3】
前記第1の比較部によって検出された差分が存在し、かつ前記第2の比較部によって検出された差分が存在する場合に、修理受付時に組み込まれていた部品が存在していないことを示す情報を表示することを特徴とする請求項2に記載の診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−209781(P2011−209781A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74049(P2010−74049)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】