説明

診療費支払機

【課題】従来の病院等の医療機関に設置されている診療費支払機は、当日の診療費の支払いができるに過ぎず、未払いの過去の診療費等は支払うことができないといった課題があった。
【解決手段】病院ホスト30から得られる応答の中に、今回の診療分に対する請求金額に加え、未収金有りの情報が含まれているか否かを判別する判別手段23と、判別手段23が未収金有りを判別したことに応答して、未収金額を病院ホスト30に問い合わせる未収金額取得要求手段24と、問い合わせに応じて病院ホスト30から得られる応答の中の未収金額を、先に得られた今回の診療分に対する請求金額とともに表示する表示手段11と、入金が行われたことに応答して、表示手段11に表示された金額の精算処理を行う精算処理手段25と、を含む診療費支払機10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や医療機関等に設置されていて、診療を受けた患者が診療費を支払うために操作する診療費支払機に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療機関においては、膨大な量の医療事務、特に医療会計事務を迅速かつ適切に処理するために、医事会計用のホストコンピュータおよびそのホストコンピュータに接続された種々の端末処理機が設けられていることが多い。端末処理機の中には、診療を受けた患者自らが操作できる診療費支払機が含まれていることがある。患者は、多くの患者が順番待ちをしている会計窓口での支払いではなく、診療費支払機を操作することにより、迅速に診療費の支払いを済ませることができる。
【0003】
ところが、かかる診療費支払機では、当日に診療を受けた診療費の支払いを行うことはできても、当日以外の診療費の支払いはできないという課題があった。
たとえば、過去に診療を受けた患者が、その診療費を未払いの場合において、その未払いの診療費を今回の診療費と一緒に支払いたい場合などには、その支払いができないといった課題があった。
【0004】
診療を受けた患者が支払うべき診療費は、当日の診療に対する費用のみに限られるわけではない。たとえば過去に診療を受けた際に金銭の持ち合わせがなく、未払いになっている診療費が残っている場合がある。そして、それも含めて今回支払いたいことがある。かかる場合は、診療費支払機によって支払うことはできず、会計窓口において未払いの診療費および今回の診療費を精算するといった手続が必要となる。
【0005】
近年の医療機関は、医事会計処理システムを導入している場合が多く、患者は、診療費支払機を利用して診療費の支払いを行い、支払いに要する時間の短縮を図れるが、特殊な支払いの場合、たとえば患者が今回の診療費用のみでなく、過去に診療を受けて未払いであった診療費用も今回まとめて支払いたい場合には、診療費支払機では支払うことはできず、支払い窓口で支払わなければならなかった。
【0006】
また、特許文献1には、来院毎の未収金を記録しておいて、いつ未収金を精算したかを管理できるようにしつつ、未収金があった過去の会計データを修正する時に、誤りがないようにオペレータに注意喚起するという装置が開示されている。この装置は、窓口で未収金を回収する場合に利用可能な装置である。
さらに、特許文献2には、個々の請求単位に未収金を管理するファイルを設け、それぞれの未収金の額と請求書番号と未収金が解消されたか否かのフラグとそれが解消された日付とを記録して管理する装置および方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、診療費自動計算支払機が提案されている。しかし、このシステムにおいては、窓口で計算済の診療費請求書を受け取り、その請求書に記載の額を支払機によって患者が支払うというもので、患者が窓口で順番を待って支払い額(請求書)を受け取らなければならない点では、患者にとって支払いの利便性は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−355350号公報
【特許文献2】特開平5−290064号公報
【特許文献3】特開2006−350428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の病院等の医療機関に設置されている診療費支払機は、当日の診療費の支払いができるに過ぎず、未払いの過去の診療費等は支払うことができないといった課題があった。
かかる課題を解決するためには、たとえば診療費支払機という端末処理機の改良ではなく、医事会計用ホストコンピュータを含むシステム全体を再構築すれば可能かもしれないが、そのような大がかりなシステムの入れ替えは、医療機関にとって現実的なことではない。
【0010】
この発明は、このような背景のもとになされたもので、医療機関等において使用される診療費支払機において、当日の診療費のみならず過去の未払いの診療費も支払うことができる診療費支払機を提供することを主たる目的とする。
また、この発明は、医事会計用ホストコンピュータとのインタフェイス接続が良好にでき、ホストコンピュータ側のソフトウェアのわずかな改変により、未払い診療費の支払いができる診療費支払機を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この出願の請求項1にかかる発明は、診療費を支払う患者の操作に応答して、ホストコンピュータと通信回線を介して情報の授受を行い、患者が支払い金額を入金して精算できる診療費支払機であって、診療費を支払おうとする患者を特定する患者識別データを受け付けるための患者識別データ受け付け手段と、前記患者識別データ受け付け手段で受け付けられた患者識別データに対応した請求金額があるか否かを、前記ホストコンピュータに問い合わせる請求金額取得要求手段と、前記問い合わせに応じて前記ホストコンピュータから得られる応答の中に、今回の診療分に対する請求金額に加え、未収金有りの情報が含まれているか否かを判別する判別手段と、前記判別手段が未収金有りを判別したことに応答して、未収金額を前記ホストコンピュータに問い合わせる未収金額取得要求手段と、前記問い合わせに応じて前記ホストコンピュータから得られる応答の中の未収金額を、前記先に得られた今回の診療分に対する請求金額とともに表示する表示手段と、入金が行われたことに応答して、前記表示手段に表示された金額の精算処理を行う精算処理手段と、を含むことを特徴とする診療費支払機である。
【0012】
請求項2にかかる発明は、前記判別手段が未収金有りか否かを判別する情報は、未収金有りのビット情報および未収請求書番号を含むことを特徴とする、請求項1記載の診療費支払機である。
請求項3にかかる発明は、前記表示手段は、請求書番号と請求金額とを対応付けて請求書番号別に、各請求金額を表示することを特徴とする、請求項2記載の診療費支払機である。
【0013】
請求項4にかかる発明は、前記精算処理手段は、入金金額がいずれかの請求書番号に対応した請求金額に達したときは、前記表示手段において、その請求書番号の請求金額を精算する旨の表示をさせ、請求書番号に対応した請求金額ごとに、入金額に応じて精算処理を行うことを特徴とする、請求項3記載の診療費支払機である。
請求項5にかかる発明は、前記患者識別データは、患者が保持する診察券に記録された患者のID番号を含み、前記患者識別データ受け付け手段は、患者の所持する前記診察券を受け付ける診察券受け付け手段を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の診療費支払機である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、診療費支払機とホストコンピュータとの間での情報の授受において、情報量の大幅な増加(通信シーケンスの増加)を伴わず、ホストコンピュータから未収金情報を得て、診療費支払機において未収金額を支払い可能とすることができる。
請求項2記載の発明では、未収金有りか否かの判別情報が、未収金有りのビット情報(フラグ)および未収請求番号からなるので、ホストコンピュータとの間で行う情報の授受における通信シーケンスの増加を極力抑えることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求書番号と請求金額とを対応付けて取得し、表示するので、ホストコンピュータとの情報の授受は従来のシーケンスを用いて行うことができ、しかも診療費支払機における診療額の表示が、請求書番号毎に、すなわち診療を受けた内容毎に表示できるので、患者にとって確認のし易い診療額表示を行うことができる。
請求項4記載の発明によれば、診療費支払機で表示された請求額のうち、総額が入金されない場合であっても、請求書毎に個別に請求額を入金することにより精算が行えるので、患者はその時の持ち合わせの金額に応じて、診療費を精算でき、未払いの未精算額を残したままであっても、医療機関を後にすることができる。そして、かかる費用は、次回に診療費支払機を用いて、窓口の事務員等に臆することなく、支払うことが可能となる。
【0016】
医療機関側にとっては、患者からの未収金がなくなるようになる。また、診療費支払機により患者が支払いの度毎に未収金が表示され、その表示された未収金を患者が支払い可能であるから、未収金の支払いを促進することができ、医療機関にとっても良好な診療費支払機とすることができる。
なお、請求項5の発明のように、診察券を受け付けて診療費の支払いができる構成とするのが、患者情報の把握の上で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態に係る診療費支払機10の外観構成の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す診療費支払機10の構成ブロック図である。
【図3】たとえばある医療機関におけるこの発明の一実施形態に係る診療費支払機10の位置づけを説明するための図である。
【図4】診療費支払機10と病院ホスト30との間で行われるデータの授受(通信シーケンス)の一例を示す図解図である。
【図5】診療費支払機10における処理動作を表わすフローチャートである。
【図6】図6Aは、図5のステップS6における表示器11の表示例であり、図6Bは、図5のステップS12における表示器11の表示例である。
【図7】この発明の他の実施形態に係る診療費支払機10と病院ホスト30とカード決済センター37との間の情報(信号)の送受信の仕方を説明するためのブロック図である。
【図8】診療費支払機10を用いた診療費支払いの別のやり方を説明するための参考図であり、再来受付機50がLAN31を介して診療費支払機10や病院ホスト30と接続されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下には、図面を参照してこの発明の実施形態について詳細に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る診療費支払機10の外観構成の一例を示す斜視図である。診療費支払機10は、その正面に患者が立ち、患者自らが操作可能な機器である。診療費支払機10の正面には、操作案内や診療費等が表示される表示器11、支払った診療費のレシートが発行されるレシート発行口12、診察券(診察カード)やクレジットカードを挿入するためのカード挿入口14、紙幣入口15、紙幣出口16、硬貨投入・返却口17、バーコード情報を読み取るためのバーコードリーダ18、数値データ(たとえば支払う請求書番号、暗証番号、金額その他)を入力するためのテンキー19等が備えられている。
【0019】
図2は、図1に示す診療費支払機10の構成ブロック図である。表示器11は制御部20に接続されており、制御部20により表示制御がされる。レシート発行口12はプリンタ12Aとつながっている。プリンタ12Aは制御部20によりその駆動が制御される。カード挿入口14はカードリーダ14Aとつながっていて、カード挿入口14から挿入された診察券(診察カード)やクレジットカードのデータは、カードリーダ14Aにより読み取られる。カードリーダ14Aの動作は制御部20で制御されており、カードリーダ14Aで読み取られたカードデータは制御部20へ送られる。
【0020】
紙幣入口15および紙幣出口16は紙幣処理機15Aにつながっている。また、硬貨投入・返却口17は硬貨処理機17Aとつながっている。そして紙幣処理機15Aおよび硬貨処理機17Aで受け付けられた紙幣や硬貨を収納するための金庫21が設けられている。金庫21は、紙幣収納用と、硬貨収納用とが同じものでも、別々に設けられたものでも、どちらでも構成できる。
【0021】
紙幣処理機15A、硬貨処理機17Aおよび金庫21は、いずれも、制御部20の制御下に置かれている。
バーコードリーダ18は制御部20と接続されていて、バーコードリーダ18で読み取られたデータは制御部20へ与えられる。また、テンキー19も制御部20と接続されており、テンキー19から入力される数値データは制御部20へ与えられる。
【0022】
制御部20は、診療費支払機10の制御中枢であり、たとえばマイクロコンピュータ、ROM、RAM等の電子回路で構成されており、たとえば所定のソフトウェアに従って機能する。制御部20には、ハードウェア的に構成されるか、あるいはソフトウェア的に構成された機能実現手段としての請求金額取得要求手段22、判別手段23、未収金額取得要求手段24および精算処理手段25等が含まれている。
【0023】
制御部20には、さらに、通信用インタフェイス26が接続されている。制御部20は、通信用インタフェイス26を介して医事会計用ホストコンピュータとの間でデータの授受を行うことができる。
図3は、たとえばある医療機関におけるこの発明の一実施形態に係る診療費支払機10の位置づけを説明するための図である。一例として、医事会計用ホストコンピュータ(以下「病院ホスト」という。)30を備えた医療機関におけるコンピュータシステム全体の構成例を示すブロック図である。
【0024】
図3を参照して、この医療機関には、病院ホスト30が備えられている。当該病院ホスト30はLAN31に接続されていて、LAN31を介して種々の端末装置との間でデータ伝送が可能となっている。端末装置としては、この発明の一実施形態に係る診療費支払機10、会計窓口端末処理機32、その他の端末処理機33が例示できる。さらに、LAN31にはたとえば医事課管理サーバー34が接続されていて、病院ホスト30と医事課管理サーバー34との間でもデータの授受が可能である。また、LAN31にはルータ35を介してたとえばVPN網やインターネット36が接続され、VPN網やインターネット36につながったたとえばクレジットカード会社のカード決済センター37と通信ができる。
【0025】
図3に示すシステム構成において、この実施形態に係る診療費支払機10は、LAN31を介して病院ホスト30との間でデータの送受信を行うことができる。また、医事課管理サーバー34との間でデータの送受信を行うことができる。
さらには、診療費支払機10は、LAN31、ルータ35、VPN網やインターネット36を介してカード決済センター37と通信を行うことができる。
【0026】
図4は、診療費支払機10と病院ホスト30との間で行われるデータの授受(通信シーケンス)の一例を示す図解図である。
診療費支払機10によって診療費を支払おうとする患者は、診察券40を診療費支払機10のカード挿入口14(図1参照)へ挿入する。これにより、カードリーダ14A(図2参照)により診察券40のデータが読み取られる。診察券40のデータは、たとえば患者を特定するIDコードである。診療費支払機10は、IDコードを読み取ると、そのIDコードに対応した診療費請求額があるか否かを病院ホスト30に問い合わせる。すなわち、a.請求情報取得要求を病院ホスト30に送信する(処理a)。
【0027】
病院ホスト30では、a.請求情報取得要求に応答して、データベースを検索し、その結果をb.請求情報取得応答として診療費支払機10に送る(処理b)。このb.請求情報取得応答には、ア.請求金額情報(今回の診療分)に加え、イ.未収金有無のビット情報(フラグ)、および、ウ.未収金請求書番号、が含まれている。
病院ホスト30において、b.請求情報取得応答に、イ.未収金有無のビット情報(フラウ)およびウ.未収金請求書番号を追加することは、プログラム(ソフトウェア)を一部修正することにより比較的容易に行うことができる。
【0028】
また、b.請求情報取得応答に、イ.未収金有無のビット情報およびウ.未収請求書番号を追加しても、通信シーケンス(通信量)の増加は少なく、b.請求情報取得応答はスムーズに伝送できる。
診療費支払機10では、病院ホスト30からのb.請求情報取得応答を受信すると、その応答に含まれるイ.未収金有無のビット情報(フラグ)に基づき、未収金の有無を判別する。そして、未収金がある場合には、受信したウ.未収金請求書番号をキーワードとしてc.請求情報取得要求(未収金情報取得要求)を病院ホスト30へ送信する(処理c)。
【0029】
このc.請求情報取得要求に応じ、病院ホスト30では、データベースを検索し、未収金請求書番号に対応したエ.未収請求金額情報を、d.請求情報取得応答として診療費支払機10へ送信する(処理d)。
診療費支払機10では、先のb.請求情報取得応答で受信したア.請求金額情報(今回の診療分)と、今回のd.請求情報取得応答で受信したエ.未収請求金額情報とを表示器11に表示し、請求金額合計表示を行う。
【0030】
この請求金額合計表示を確認した患者は、たとえば紙幣入口15から紙幣を投入し、硬貨投入・返却口17から硬貨を投入する。これに応答して、診療費支払機10は精算処理を行う。
なお、紙幣や貨幣の投入に代えて、後述するように、クレジットカードを挿入することにより、カード決済による精算処理を行うこともできる。
【0031】
診療費支払機10は精算処理を行うと、病院ホスト30に対しe.消込要求を送信する。これに応じて、病院ホスト30では、データベースにストアされている請求金額情報(今回の診療分)および未収請求金額情報についての消込を行う。そしてf.消込応答を診療費支払機10へ送り、それを受信して、診療費支払機10の処理が完了する。
上記説明から明らかなように、診療費支払機10と病院ホスト30との間で送受信される1回の通信シーケンス(通信量)は、データ量が少ないため、スムーズにデータの送受信を行うことができる。つまり、診療費支払機10から病院ホスト30に対して送信する請求情報取得要求に対し、病院ホスト30が診療費支払機10に送信する請求情報取得応答には、ア.請求金額情報(今回の診療分)、イ.未収金有無のビット情報(フラグ)およびウ.未収金請求書番号だけであるから、通信シーケンス(通信量)の増加を抑えることができる。
【0032】
そして、診療費支払機10では、未収金有りと判別した場合には、未収金請求書番号をキーワードに、再度、請求情報取得要求(未収金情報取得要求)を送信する。病院ホスト30は、その要求に応じて、再び未収請求金額情報を含む取得応答を返信するので、1回毎の通信シーケンスの増加を抑えることができ、スムーズなデータ伝送が実現できる。
図5は、診療費支払機10における処理動作を表わすフローチャートである。診療費支払機10と病院ホスト30との間のデータの授受を診療費支払機10側の処理として把握した場合、図5に示すフローチャートのように表わすことができる。
【0033】
診療費支払機10では、稼働中(電源投入中)において、患者のID入力待機状態となっており、患者のID入力があるか否かを常に判別している(ステップS1)。患者のID入力は、たとえば、診察券をカード挿入口14(図1参照)から挿入することにより、カードリーダ14A(図2参照)が診察券に記録されたIDを読み取ることにより入力することができる。あるいは、患者の診察券にバーコードでIDが記録されている場合には、バーコードリーダ18により入力することもできる。また、テンキー19等によって患者のIDを入力するやり方も考えられる。
【0034】
なお、ここに、患者のIDとは、患者毎に付与された識別番号等の当該医療機関において採用している患者識別データのことである。
患者のID入力があった場合は、診療費支払機10の制御部20は、入力IDをキーワードとして請求情報取得要求を病院ホスト30に送信する(ステップS2)。そして、制御部20は、病院ホスト30からの請求情報取得応答を待つ(ステップS3)。
【0035】
図4を参照して説明したように、病院ホスト30は、請求情報取得要求に対して、請求情報取得応答を送信する。この応答には、ア.請求金額情報(今回の治療分)、イ.未収金有無フラグ、および、ウ.未収金請求書番号が含まれている。
制御部20では、病院ホスト30からの応答があるか否かを判別し(ステップS3)、所定時間が経過するまでに応答がなければ(ステップS4でYES)、エラーを報知する。通常は、病院ホスト30から請求情報取得応答が送られてくるので(ステップS3でYES)、制御部20は、当該応答の中に今回の診療分の請求金額があるか否かの判別をする(ステップS5)。そして、今回の診療分の請求金額がある場合には、その請求金額を表示器11に表示する(ステップS6)。
【0036】
ステップS6における表示器11の表示例を、図6Aに示す。
図6Aでは、患者氏名、IDおよび本日(○月○日)分の請求である旨の表示がされ、診療金額として、たとえば「内科:1500円(請求番号:A」および「耳鼻科:800円(請求番号:B)」という表示がされる。
また、制御部20では、ステップS6で上記請求金額を表示するとともに、病院ホスト30から送られてきた請求情報取得応答に含まれる未収金有無フラグを判別し(ステップS7)、未収金がある場合には、表示器11に、図6Aの下方に示すように、たとえば「未収金額を検索中、しばらくお待ち下さい。」といった表示を行ってもよい。
【0037】
未収金有無フラグに基づき未収金があると判別した場合には(ステップS7でYES)、請求情報取得応答に含まれている未収金請求書番号をキーワードとして、制御部20は病院ホスト30に追加の請求情報取得要求、すなわち未収金情報取得要求を送信する(ステップS9)。
図4で説明したように、請求情報取得要求(未収金情報取得要求)を受けた病院ホスト30は、送られてきた請求書番号をキーワードにデータベースを検索して、その請求書番号に対応する請求金額情報を抽出し、請求情報取得応答(未収金情報取得応答)を診療費支払機10へ返信する。この応答には、キーワードとなった請求書番号と、その未収請求金額情報とが含まれている。
【0038】
診療費支払機10の制御部20では、病院ホスト30からの請求情報取得応答が所定時間内にあるか否かを判別し(ステップS11,S12)、もし所定時間内に応答がなければ、エラーを報知する。
通常は、所定時間内に病院ホスト30から請求情報取得応答が送られてくるから、制御部20は、その応答に含まれる未収請求金額を表示器11に表示する(ステップS12)。
【0039】
そしてさらに未収金があるか否かの判別をする(ステップS13)。この判別は、ステップS3で受け取った請求情報取得応答中に、未収金請求書番号が複数含まれている場合は、さらに未収金有りと判別する。そしてステップS9で送信しなかった未収金請求書番号をキーワードとして、その未収金請求書番号に基づく未収金情報取得要求を、再び病院ホスト30に送信する(ステップS14)。
【0040】
病院ホスト30では、要求のあった未収金請求書番号をキーワードに、データベースを検索し、その未収金請求書番号の未収請求金額情報を抽出して、請求情報取得応答(未収金情報取得応答)として診療費支払機10に送信する。
診療費支払機10では、病院ホスト30からの応答有りを判別すると(ステップS10でYES)、送られてきた未請求金額を表示器11に表示する(ステップS12)。
【0041】
この表示例を図6Bに示す。図6Bにおいて、患者氏名、IDおよび本日(○月○日)分の請求である旨、ならびに、内科:1500円(請求番号:A)、耳鼻科:800円(請求番号:B)の表示は、図6Aに示す内容と同じであり、その表示に加えて、さらに、未収金額として、たとえば、
「内科(×月△日分)300円(請求番号:C)」および「外科(×月×日分)700円(請求番号:D)」と表示される。
【0042】
これら表示中の未収金額である「内科の表示金額」と、「外科の表示金額」とは、それぞれ、診療費支払機10から病院ホスト30に対して個別の請求情報取得要求(未収金情報取得要求)が送信され、病院ホスト30から診療費支払機10へ個別の請求情報取得応答(未収金情報取得応答)が送られてきたことに基づいて、診療費支払機10が取得した請求金額情報である。
【0043】
このように、未収金に関する取得要求および取得応答を、請求番号毎に個別に、診療費支払機10と病院ホスト30との間で授受する通信シーケンスにより、診療費支払機10と病院ホスト30との間の1回あたりの請求情報取得の通信シーケンス(通信量)の増加を抑えることができる。
そして、かかる通信シーケンスの増加抑制は、病院ホスト30側のソフトウェアプログラムの改変を伴わず、診療費支払機10が必要な情報を病院ホスト30から得ることができるので、有利である。
【0044】
図5のステップS5で、制御部20が今回の診療分の請求金額がないと判別し、かつ、未収金もないと判別した場合には、制御部20は表示器11にたとえば「請求金額はありません。」といった請求なしの表示を行う(ステップS8)。
また、図5のフローチャートの流れから明らかなように、ステップS5で今回の診療分の請求金額がないと判別された場合であっても、ステップS7で未収金の有無が判別されるため、表示器11に、未請求金額だけが表示される場合もある(ステップS12)。
【0045】
患者は、表示器11に表示された請求金額を確認し、紙幣入口15から紙幣を診療費支払機10に投入し、あるいは硬貨投入・返却口17(図2参照)から硬貨を診療費支払機10へ投入することにより、診療費の支払い(入金)を行う(ステップS15)。
紙幣や硬貨での支払いに代えて、クレジットカードをクレジットカード挿入口14(図1参照)へ挿入して、クレジットカードによる支払いをすることも可能である。なお、クレジットカードによる支払いにおける処理動作の説明については、後述する。
【0046】
制御部20は、入金有りを判別すると(ステップS15でYES)、精算処理を行う(ステップS17)。
たとえば、図6Bの表示画面に対し、3300円以上の金額が入金された場合は、たとえば全ての請求金額および請求番号の行を反転表示し、患者に対し「反転表示された各診療費用を支払いますか。」といった確認表示をし、患者がたとえばOKキーを押すことにより、全ての診療費の支払いを完了するための精算処理を行う(ステップS17)。
【0047】
なお、精算処理では、表示器11に表示されている全ての請求額の合計金額未満の金額しか入金されない場合には、その入金された金額に応じた請求番号の請求額だけが精算できる構成としてもよい。あるいは、患者が、表示された全ての診療費のうちの任意の診療費だけを選択して精算できる構成としてもよい。
制御部20では、精算処理が完了すると、病院ホスト30に消込要求を送信する(ステップS18)。消込要求を受け取った病院ホスト30は、データベースの未収金を消込処理し、診療費支払機10に消込応答を返信する。
【0048】
制御部20では消込応答有りを判別して(ステップS19でYES)、一連の処理を終える。
もし、消込応答が送られてこない場合には、エラーを報知する。
図7は、この発明の他の実施形態に係る診療費支払機10と病院ホスト30とカード決済センター37との間の情報(信号)の送受信の仕方を説明するためのブロック図である。
【0049】
図3で説明したように、診療費支払機10を用いて診療費を支払う際には、クレジットカード決済が可能である。クレジットカード決済をする場合には、診療費支払機10は病院ホスト30との間でLAN31を介して情報の授受を行うとともに、診療費支払機10はLAN31、ルータ35、VPN網36を介してカード決済センター37と情報の授受を行う(図3参照)。
【0050】
図7を参照して、診療費支払機10、病院ホスト30およびカード決済センター37の間の情報の授受(通信シーケンスの内容および順序)について説明をする。
診療費支払機10は、まず、患者が入力した患者ID情報を基に、病院ホスト30に対し請求情報取得要求Aを送信する。応じて、病院ホスト30は、請求情報取得応答Bを診療費支払機10へ返信する。この応答Bには請求金額情報が含まれているから、診療費支払機10はその金額を表示器11に表示する。表示内容を見た患者は、診療費支払機10に対しクレジットカード決済のためにクレジットカードを挿入する。これに応じて、診療費支払機10はカード決済センター37に決済要求Cを送信する。カード決済センター37では決済要求Cに対し、そのクレジットカードデータ等の照合を行い、クレジットカード決済がOKであれば、OK信号Dを診療費支払機10に返信する。診療費支払機10では、カード決済センター37から受信したOK信号Dに基づき精算処理が終了するわけであるから、病院ホスト30に対して消込要求Eを送る。
【0051】
通常は、病院ホスト30からは、消込要求Eに対する返答として消込応答Fが送られてくるはずであるが、何らかの理由で、消込NG信号Gが送られてくることがある。
すなわち、診療費の支払いをクレジットカード決済しようとした場合に、病院ホスト30が何らかの理由で、患者のクレジットカード決済を拒否することが考えられる。
そこで、診療費支払機10においては、病院ホスト30からの消込応答Fを受信するまでは、精算処理の完了を行わないことにした。
【0052】
そして、もし、病院ホスト30から消込NG信号Gを受信した場合は、直ちにカード決済センター37に決済取消要求Hを送信する。この要求Hに応答して、カード決済センター37は、患者のクレジットカード情報に基づき行った決済を取り消す処理を行い、取消OK信号Iを診療費支払機10に返信する。
診療費支払機10では、取消OK信号Iの受信に応じ、病院ホスト30に対し、精算未完了の旨の通知を行ってもよい。
【0053】
かかる通信シーケンスによれば、仮に、病院ホスト30からクレジットカードによる決済に対して不許可の信号(NG)を受信した場合でも、患者のクレジットカードは診療費支払機10内に取り込まれた状態のままであり、そのクレジットカードを用いて、自動で決済取消処理をカード決済センター37へ要求することができる。
従って、患者は、手続上は何の追加もなく、診療費支払機10により、クレジットカードを用いた決済ができ、また、万一その決済ができない場合は、クレジットカード決済ができないことを報知され、クレジットカードを返却されることになる。
【0054】
よって、この実施例によれば、クレジットカード決済の利便性が向上した診療費支払機となる。
図8を参照して、診療費支払機10を用いた診療費支払いの別のやり方を説明する。
医療機関には、診察券を所持する患者が受け付けを行うための再来受付機50が備えられている場合がある。再来受付機50は、LAN31(図3参照)を介して診療費支払機10や病院ホスト30と接続されている。
【0055】
このような場合に、次のように診療費の支払いを行うことができる。
患者は、医療機関に再来した時に、まず、診察券を再来受付機50に挿入する。
再来受付機50は、診察券挿入があると、その診察券のIDをキーワードとして病院ホスト30に請求情報取得要求を出す。病院ホスト30は、請求情報取得要求に応答して、再来受付機50に請求情報取得応答を返信する。これにより再来受付機50で得られた診察券の患者の未収請求金額情報を、その診察券に書き込む。すなわち、未収金が診察券に書き込まれることとなる。
【0056】
なお、診察券は、たとえば磁気式、IC式等のデータの読み書き可能なカードとする。
患者は、当日の診療が終わって診療費支払機10で診療費の支払いをするために、診察券を診療費支払機10に挿入する。診療費支払機10は、病院ホスト30に請求情報取得要求を送信し、病院ホスト30から請求情報取得応答が返信される。この応答には請求金額情報が含まれているから、診療費支払機10は、病院ホストから受け取った請求金額を表示する。また、診療費支払機10は、診察券に記録されている未収金額を合わせて表示し、患者に、今回の診療費用と、未収の診療費用とを支払わせることができる。換言すれば、患者は、診療費支払機10を用いて、今回の診療費用に加えて、未払いの診療費用を診療費支払機10によって支払うことができる。
【0057】
さらに、次のような運用も可能である。
診療費支払機10に診察券が挿入され、これに応じて診療費支払機10から病院ホスト30に請求情報取得要求が出される。これに応じて病院ホスト30から請求情報取得応答が返信される。診療費支払機10では、請求情報取得応答に含まれる請求金額情報(今回の診療分)を表示器に表示する。
【0058】
患者は、表示された請求金額の全額ではなく、一部を支払う場合もある。たとえば、その日に請求金額全額の持ち合わせがなく、一部を支払いたいこともある。
かかる場合に、その一部が支払われると、残った残額は、未収金として、診察券に書き込む構成とする。
また、診察券に書き込まれた未収金は、病院ホスト30に対して未収金として送信する。
【0059】
このように、診察券に未収金情報を書き込む構成とすることにより、診療費支払機10を用いて、今回の診療分の請求金額のみならず、過去の診療に対する未収金の支払いが可能となる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 診療費支払機
11 表示器
20 制御部
22 請求金額取得要求手段
23 判別手段
24 未収金額取得要求手段
25 精算手段
26 通信用インタフェイス
30 病院ホスト(医事会計用ホストコンピュータ)
31 LAN
37 カード決済センター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療費を支払う患者の操作に応答して、ホストコンピュータと通信回線を介して情報の授受を行い、患者が支払い金額を入金して精算できる診療費支払機であって、
診療費を支払おうとする患者を特定する患者識別データを受け付けるための患者識別データ受け付け手段と、
前記患者識別データ受け付け手段で受け付けられた患者識別データに対応した請求金額があるか否かを、前記ホストコンピュータに問い合わせる請求金額取得要求手段と、
前記問い合わせに応じて前記ホストコンピュータから得られる応答の中に、今回の診療分に対する請求金額に加え、未収金有りの情報が含まれているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段が未収金有りを判別したことに応答して、未収金額を前記ホストコンピュータに問い合わせる未収金額取得要求手段と、
前記問い合わせに応じて前記ホストコンピュータから得られる応答の中の未収金額を、前記先に得られた今回の診療分に対する請求金額とともに表示する表示手段と、
入金が行われたことに応答して、前記表示手段に表示された金額の精算処理を行う精算処理手段と、
を含むことを特徴とする診療費支払機。
【請求項2】
前記判別手段が未収金有りか否かを判別する情報は、未収金有りのビット情報および未収請求書番号を含むことを特徴とする、請求項1記載の診療費支払機。
【請求項3】
前記表示手段は、請求書番号と請求金額とを対応付けて請求書番号別に、各請求金額を表示することを特徴とする、請求項2記載の診療費支払機。
【請求項4】
前記精算処理手段は、入金金額がいずれかの請求書番号に対応した請求金額に達したときは、前記表示手段において、その請求書番号の請求金額を精算する旨の表示をさせ、請求書番号に対応した請求金額ごとに、入金額に応じて精算処理を行うことを特徴とする、請求項3記載の診療費支払機。
【請求項5】
前記患者識別データは、患者が保持する診察券に記録された患者のID番号を含み、
前記患者識別データ受け付け手段は、患者の所持する前記診察券を受け付ける診察券受け付け手段を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の診療費支払機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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