試料アナライザー
【課題】 試料、とりわけ生物学的試料のパラレル分析のための新規な改善されたプロセスおよびデバイスに対する必要性が存在する。そのようなプロセスおよびデバイスを提供することが本発明の目的である。
【解決手段】 複数の異なる試料を分析するためのプロセスが提供される。プロセスは以下のステップ:a)分析成分が固定化される支持体に試料を適用すること;およびb)試料を分析成分と相互作用させて、試料の分析を可能にすることを含む。試料はステップa)で支持体の異なる部分に適用されて、支持体上の試料の空間配置を生む。試料の空間配置はステップb)で維持され、それゆえ分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。
【解決手段】 複数の異なる試料を分析するためのプロセスが提供される。プロセスは以下のステップ:a)分析成分が固定化される支持体に試料を適用すること;およびb)試料を分析成分と相互作用させて、試料の分析を可能にすることを含む。試料はステップa)で支持体の異なる部分に適用されて、支持体上の試料の空間配置を生む。試料の空間配置はステップb)で維持され、それゆえ分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料分析の分野、とりわけ生物学的試料のパラレル分析に属する。
【背景技術】
【0002】
試料のパラレル分析は生物学的研究を含む多くの技術分野において重要である。パラレル分析のいくつかの公知の方法には、たとえばマイクロタイタープレートの異なるウェル中の異なる試料を分析することのような、パラレルで異なる試料を別個に分析することが挙げられる。他の公知の方法は、試料を一緒に分析するが、それぞれの試料によって生み出されたシグナルが確認できるように、異なる試料の差別的なラベリングを必要とする。DNAマイクロアレイは差別的にラベルされた試料の同時パラレル分析に使用されてきた(たとえば、参考文献1を参照されたい)。
【0003】
試料、とりわけ生物学的試料のパラレル分析のための新規な改善されたプロセスおよびデバイスに対する必要性が存在する。そのようなプロセスおよびデバイスを提供することが本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO93/22480
【特許文献2】WO03/020415
【特許文献3】PCT/GB2004/004390
【特許文献4】米国特許番号6,156,576
【特許文献5】WO2004/033629
【特許文献6】WO00/25113
【特許文献7】米国公開特許番号2002/0030811
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Harrington et al., Curr. Opin. Microbiol., 2000, 3(3):285-91
【非特許文献2】Sims et al. (1998) Anal Chem 70:4570-7
【非特許文献3】Prinz et al. (2002) Lab Chip 2:207-12
【非特許文献4】Leffhalm et al. (2005) AKB 200.15 Di 17:00 Poster TU C. Berlin 2005, "Physik seit Einstein", Deutsche Physikalische Gesellschaft
【非特許文献5】Przekwas et al. (2001 ) pages 214-217 of Modeling and Simulation of Microsystems. ISBN 0-9708275-0-4
【非特許文献6】Hie et al. (1994) Science 266:1018-21
【非特許文献7】Schmidt et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:2926-9
【非特許文献8】Hesse et al. (2004) Anal Chem 76:5960-4
【非特許文献9】Lizardi et al. (1998) Nature Genetics 19, 225-232
【非特許文献10】Demidov (2005) Encyclopaedia of Diagnostic Genomics and Proteomics 1175
【非特許文献11】Dean et al. (2002) PNAS 99(8):5261-5266
【非特許文献12】Lovmar & Syvanen (2006) Human Mutation 27(7):603-614
【非特許文献13】Akhavan-Tafti et al. (1998) Clinical Chemistry 44(9):2065
【非特許文献14】Rajeevan et al. (1999) J. Histochemistry & Cytochemistry 47(3):337-342
【非特許文献15】Yin et al. (2005) Anal Chem 77:527-33
【非特許文献16】Grainger D. C et al. (2005) PNAS Vol. 102 No. 49 17693-17698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は試料、とりわけ生物学的試料のパラレル分析のためのプロセスおよびデバイスを提供する。本発明の方法では、試料は支持体上でそれらと分析成分を相互作用させることによって分析される。試料中の標的分析物は、試料が分析成分と相互作用する場合に検出される。
【0007】
本発明は複数の異なる試料を分析するためのプロセスを提供する。プロセスは、a)分析成分が固定化される支持体に試料を適用する;およびb)試料を分析成分と相互作用させて、試料の分析を可能にするステップを含む。試料は支持体の異なる部分に対してステップa)で適用されて、支持体上に試料の空間配置を生む。試料の空間配置はステップb)で維持されて、分析結果が個々の試料に一致することを可能にする。この一般的な研究方法は図1で図解して説明する。
【0008】
本発明の方法は、支持体上の試料の空間配置の作製および維持を含み、そのことはパラレル試料分析のための公知の方法に勝る利点を提供する。たとえば、本発明の方法は、同じ分析成分を使用して、複数の試料が分析されることを可能にし、その結果それぞれの試料は実質的に同じ処理および分析に供され、結果が直接比較される。その上、本発明の方法は異なる試料の差別的なラベリングを必要としない‐個々の試料が配置される支持体の部分は既知であるか、または確認することができ、それでそれぞれ個々の試料によって生み出されたシグナルは容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの態様では、異なる分析化合物は支持体上の異なるパッチに固定化される。それらの態様では、図2に図解して説明するように、同じ支持体を使用して複数の試料が複数の標的分析物に関してパラレルに分析されうる。
【0010】
本発明の方法は細胞、または細胞に由来する物質を含む試料のような、生物学的試料の分析に有用である。本発明の方法は個々の細胞または個々の細胞に由来する物質の分析にとりわけ有用である。
【0011】
一態様では、本発明は:a)分析成分が固定化される支持体に個々の細胞に由来する物質を適用する;およびb)物質と分析成分を相互作用させて、物質の分析を可能にするステップを含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのプロセスを提供する。異なる個々の細胞に由来する物質はステップa)において支持体の異なる部分に適用され、支持体上に物質の空間配置を生み、そして空間配置がステップb)で維持されて分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする。
【0012】
いくつかの方法では、図1で説明するように、試料は直接支持体に適用され、試料の空間配置を生み出す。従って、試料が細胞を含む生物学的試料である場合、支持体に試料を適用するステップa)は:(i)細胞を支持体に適用すること;その後(ii)細胞から物質を遊離することを含んでいてもよい。あるいは、ステップa)は:細胞から物質を遊離すること;その後(ii)遊離した物質を支持体に適用することを含んでいてもよい。細胞が個々に分析される場合、それぞれの細胞に由来する物質は支持体の異なる部分に適用されて、支持体上に物質の空間配置を生むことになる。物質の空間配置はステップb)で維持されて、その結果分析結果を個々の細胞に一致させることができる。そのような直接試料適用法は、それらが簡単なデバイスを使用し、そして少ない数の試料取り扱いステップを使用して実施することができるため、いくつかの態様では好都合である。
【0013】
いくつかの方法では、試料は初めに移動基質に適用されて試料の空間配置を生み出し、その後標的分析物は移動基質から支持体まで移される。移動基質が使用される場合、標的分析物の空間配置は、支持体への移動後に移動基質上の試料の初めの空間配置に一致し、そうして分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。この一般的な研究方法は図3で図解して説明する。
【0014】
そのような間接試料適用法はいくつかの態様では好都合であり、なぜなら試料が支持体に直接適用される場合、支持体上の試料の適切な空間配置を容易に生み出し、そして維持することがいつも可能ではないためである。その上、移動基質は、試料の他の成分の支持体への移動を妨害するか、または減らしながら、支持体に標的分析物を移すことによって、試料調製を補助してもよい。
【0015】
従って、本発明はa)試料を移動基質の異なる部分に適用して、移動基質上に試料の空間配置を生む;その後b)移動基質から分析成分が固定化される支持体まで標的分析物を移す;そしてc)標的分析物を分析成分と相互作用させて、試料の分析を可能にするステップを含む、複数の異なる試料を分析するためのプロセスを提供する。標的分析物の空間配置はステップb)およびc)において維持され、そのようにして分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。
【0016】
標的分析物の空間配置を維持しながら、標的分析物を移動基質から支持体まで移すことは、本明細書の他の部分に記載のような多様なやり方で成し遂げることができる。移動基質は支持体に接触して、またはそのごく近くに配置され、基質から支持体への標的分析物の移動を促進することができる。移動基質および/または支持体は移動基質から支持体への標的分析物の移動に好都合である条件に供されてもよい。たとえば、電位または磁場が移動基質および/または支持体に適用されるか、または試薬が移動試薬および/または支持体に適用されて、基質から支持体への標的分析物の移動を促進することができる。
【0017】
本発明はまた、本発明の方法において使用されるデバイスおよびキットを提供する。
【0018】
本発明のデバイスは、分析成分が固定化される支持体を含む。使用中、本発明のデバイスは分析成分が固定化される支持体を含み、支持体上に、分析成分を使用して分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする空間配置で複数の試料が配置される。
【0019】
従って、本発明は分析成分が固定化される支持体を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのデバイスを提供し、該支持体上に、分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に一致させることが可能になる空間配置で、複数の異なる個々の細胞に由来する物質が配置される。
【0020】
本発明はまた、(i)分析成分が固定化される支持体;および(ii)支持体と接触して、またはそのごく近くに位置する移動試薬を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのデバイスを提供する。
【0021】
本発明はまた、(i)分析成分が固定化される支持体;および(ii)分析成分を使用して分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする空間配置で、複数の異なる試料を支持体に適用するための物質アプリケ−ターを含む、複数の異なる試料を分析するためのキットを提供する。
【0022】
本発明はまた、(i)分析成分が固定化される支持体;および(ii)分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする空間配置で、複数の異なる個々の細胞に由来する物質を支持体に適用するための物質アプリケ−ターを含む、複数の個々の細胞を分析するためのキットを提供する。物質アプリケ−ターは支持体の異なる部分に個々の細胞を適用し、その後個々の細胞から物質を遊離するためのアプリケ−ターであってもよい。あるいは、物質アプリケ−ターは個々の細胞から物質を遊離し、その後個々の細胞から遊離された物質を支持体の異なる部分に適用するためのアプリケ−ター、たとえば本明細書に記載のような移動基質であってもよい。本明細書の他の場所で言及するように、細胞が個々に分析されることになる場合、それぞれの細胞に由来する物質は支持体の異なる部分に適用されて支持体上に物質の空間配置を生むことになる。
【0023】
本発明はまた、(i)分析成分が固定化される支持体;(ii)移動基質;および(iii)標的分析物が支持体まで移される場合、移動基質上に試料の空間配置を維持することを可能にする、移動基質から支持体まで標的分析物を移すための手段を含む、複数の異なる試料を分析するためのキットを提供する。
【0024】
本発明のデバイスおよびキットの種々の特徴の次元およびパラメータは、特定の必要性および適用に従って変化することができる。同様に、本発明の方法の明確なステップは特定の必要性および適用に従って変化することができる。異なる分析は、本発明の範囲内で異なるデバイスまたはプロセスを必要とすることができる。たとえば、異なる試料型が異なる次元を持つデバイスを必要としてもよく、または異なる試料調製ステップまたは異なる検出法を必要としてもよい。同じ試料型の異なる分析は、たとえばプロテオーム解析対トランスクリプトーム解析の場合のように、異なる分析成分を使用してもよい。その上、デバイスは以前の実験データに基づいてデザインし、使用することができる。たとえば、デバイスが初めの実験で有用なデータを与えることができない場合、分析成分の型、操作温度、バッファー、タイミングなどのような変数は付加的な実験において変更することができる。
【0025】
いくつかの態様では、本発明の方法、デバイスおよびキットは、個々のmRNA分子のような、個々の標的分析物分子の検出を可能にする。
【0026】
本発明の方法のプロセスおよびデバイスはより詳細に以下に記載される。
支持体
本発明のデバイスは、分析成分が固定化される支持体を含む。
【0027】
支持体はどんな適切な物質でできていてもよい。支持体のための物質の選択は、いくつ
かのデザインの検討によって影響を受け、適切な物質は特定のデバイスの要求に基づいて当業者によって容易に選択されうる。たとえば、物質は使用中にデバイスに適用される試薬に対して安定であり、そして標的分析物を分析するために使用される方法に適合するべきである。
【0028】
いくつかの態様では、デバイスの使用中に使用される試薬に不透過性の物質を使用して支持体が構築される(たとえば、本明細書の実施例1〜10および13を参照されたい)。
【0029】
他の態様では、デバイスの使用中に使用される試薬に透過性の物質を使用して支持体が構築される(たとえば、本明細書の実施例11、12および14を参照されたい)。従って、本発明は、使用中にデバイスに適用される試薬に透過性で、分析成分に固定化される支持体を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのデバイスを提供し、そしてそのような支持体上に、分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする空間配置で、複数の異なる個々の細胞に由来する物質が配置される。そのようなデバイスは支持体の1つの、または両方の表面に試薬を適用するための手段、および/または支持体の1つの、または両方の表面から試薬を除去するための手段を含んでいてもよい。たとえば、デバイスは透過性支持体の1つの、または両方の表面に試薬が適用されることを可能にするための1つ以上の注入口、および/または透過性支持体の1つの、または両方の表面から試薬が除去されることを可能にする1つ以上の放出口を含んでいてもよい。
【0030】
透過性支持体は、たとえばナイロン、ニトロセルロース、GVHP、イモビロン‐Pまたはイモビロン‐FLから構築されていてもよい。
【0031】
いくつかの適用の場合、成分を支持体に共有結合により結合させることが有用であってもよく、従って適切な物質は当業者によって選択されるべきである。いくつかの適用の場合、堅い物質を使用することが望ましくてもよく;他の適用がしなやかな物質を必要としてもよい。検出のために蛍光が使用されることになる場合、物質は励起および発光波長に透過性でなければならず、そしてまた、これらの波長において低い固有の蛍光を持たなければならない。全内部反射によって発光する微細な波長を伝播することができる物質は、ある種の検出技術と一緒の使用にとって好ましくてもよい。
【0032】
従って、本発明の支持体はシリコンオキシド、ポリマー、セラミックス、金属などを含むがそれらに限定されない多様な物質から作ることができる。使用することができる特有の物質には:ガラス;ポリエチレン;PDMS;ポリプロピレン;およびシリコンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
本発明の方法では、試料は分析成分が固定化される支持体に適用される。複数の試料が適用されて試料の空間配置を生み出すことができ、そして分析成分が固定化されうる支持体を使用することができる。支持体は分析成分の単一パッチを使用して、複数の試料が分析されることを可能にする。デバイスの使用中、パッチに適用される個々の試料は液体コミュニケーションを行う、すなわち、それらは溶液相試薬と相互作用する。パッチ上の試料は、デバイスの使用を通して液体コミュニケーションを行う必要がない。パッチ上の試料は、試料が支持体に適用される場合、および/または試料が分析成分との相互作用が許される場合、液体コミュニケーションを行ってもよい。パッチ上の試料は、分析結果が記録される場合のような、本発明の方法の他のステージにおいて液体コミュニケーションを行う必要がない。
【0034】
異なる分析成分が同じ支持体上の異なるパッチに固定化される場合、必要に応じて図1に示す配置が反復される。
【0035】
いくつかの態様では、デバイスの使用中、支持体は支持体上の異なるパッチがお互いに
液体コミュニケーションを行うことを許す。たとえば、異なるパッチが顕微鏡スライドグラスの表面のような、実質的に平坦な表面に配置されてもよい。異なるパッチがお互いに液体コミュニケーションを行う態様はいくつかの態様において好都合であり、なぜならそれらは異なるパッチに適用された試料に同じ溶液相試薬が適用されることを可能にするからである(たとえば、異なる核酸標的分析物を分析する場合)。先に記載のように、異なるパッチはデバイスの使用中、液体コミュニケーションを行う必要がない。
【0036】
他の態様では、それぞれ個々のパッチに適用される異なる試料が液体コミュニケーションを行っていても、デバイスの使用中、支持体は異なるパッチにお互いの体コミュニケーションを行わせない。たとえば、異なるパッチは96‐ウェルマイクロタイタープレートのウェルの中のような、実質的に平坦でない表面上に配置されてもよい。使用中、複数の試料がそれぞれのウェルに適用されて、それぞれのウェルにおける試料の空間配置を生み出すことができた。いくつかの態様では、異なるパッチがお互いに液体コミュニケーションを行わない態様が好都合であり、なぜなら同じ支持体上のたとえばタンパク質および核酸標的分析物を分析するために、それらは溶液相試薬を異なる分析成分に適用することを可能にするからである
いくつかの態様では、デバイスの使用中、とりわけ試料適用および/または(たとえば、個々の試料が支持体の異なるウェルまたはチャンネルに適用されるか、またはそれらの中で分析される)分析ステップの間に、異なる個々の試料が液体コミュニケーションを行わない方法およびデバイスは、本発明の範囲から特に排除される。
【0037】
いくつかの態様では、デバイスの使用中、とりわけ試料適用および/または(たとえば、パッチが支持体の異なるウェルまたはチャンネルの中にある)分析ステップの間に異なるパッチが液体コミュニケーションを行わない方法およびデバイスは、本発明の範囲から特に排除される。
【0038】
本発明の方法における試料の空間配置の維持は、たとえ試料が分析成分の単一パッチに適用され、デバイス使用中のあるステージで液体コミュニケーションを行っても、それぞれの試料から発生するシグナルを区別させる。本発明の使用にとって適切な支持体は当業者に明らかである。
分析成分
本発明のデバイスは、試料中の標的分析物と相互作用し、分析結果を与えることができる分析成分を含む。デバイスは、試料中の異なる標的分析物と相互作用することができる、単一のまたは異なる分析成分を含み、その結果デバイスの異なる部位において、図1に示す配置が必要に応じて反復される。単一分析成分を含むデバイスは、同じ支持体を使用した単一の型の標的分析物の複数の試料のパラレル分析を許す。異なる分析成分を含むデバイスは、同じ支持体を使用した複数の異なる標的分析物に関する複数の試料をパラレルに分析させる。
【0039】
いずれか指定のデバイスにおける分析成分は、関心のある分析データを与えるために、一般に試料型および関心のある標的分析物の知識に基づいて選択される。典型的には、分析成分はハイブリダイゼーションのための核酸分子、抗原結合のための抗体、抗体結合のための抗原、糖および/または糖タンパク質への結合のためのレクチンなどのような生物学的分子である。ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームなどの分析はそのようにして実施することができる。
【0040】
好ましい分析成分はハイブリダイゼーションのための核酸分子、抗原結合のための抗体、抗体結合のための抗原、糖および/または糖タンパク質捕捉のためのレクチンなどのような、固定化結合試薬である。好ましい分析成分は、選択された標的に対して特異的である特異的結合試薬、たとえば関心のある標的に特異的にハイブリダイズするための核酸配
列、関心のある標的抗原を特異的に結合するための抗体である。特異性の程度は個々の実験の必要性に従って変化することができ、たとえば、いくつかの実験では固定化された配列に関してヌクレオチドミスマッチを持つ標的を捕捉することが望ましくてもよいが、他の実験が完全なストリンジェンシーを必要としてもよい。
【0041】
デバイスが単一の分析成分を含む場合、分析成分は好ましくは支持体上の別個のパッチに配置されて、データ解析を促進する。
【0042】
デバイスが一連の異なる分析成分を含む場合、異なる分析成分は好ましくは支持体上の別個のパッチに配置され、データ解析を促進する。異なる分析成分が別個でない場合、異なる標的分析物のどれが観察されるシグナルを生じるかは明らかでなくてもよい。しかし、1つのパッチから発生したシグナルが異なるパッチから発生したシグナルと区別可能ならば、異なる分析成分の隣接したパッチにとって、わずかに重複すること、またはしっかりした境界を持たないことは可能である。いくつかの態様では、パッチにとって重複すること、または異なる分析成分が単一のパッチ上に固定化されることさえが好都合であってもよい(本明細書の他の部分を参照されたい)。
【0043】
デバイスが一連の異なる分析成分を含む場合、異なる分析成分は好ましくは実質的に平坦な表面(たとえば顕微鏡スライドガラス)上に固定化される。しかし、本明細書の他の部分に記載のように、実質的に平坦でない表面(たとえば、異なるウェルまたはチャンネルの中)の異なる部分のパッチに固定化される異なる分析成分を有するデバイスも、予想される。
【0044】
デバイスはハイブリダイゼーションによって特異的な核酸を捕捉するための固定化された核酸を含んでいてもよい。核酸の配列は関心のある標的分析物に従って選択されることになる。いっそう好ましくは、分析成分は特異的mRNA転写物を保持する。固定化された核酸は好ましくはDNAであり、好ましくは1本鎖であり、そして好ましくは(たとえば、約500ヌクレオチドより短い、<450nt、<400nt、<350nt、<300nt、<250nt、<200nt、<150nt、<100nt、<50nt、またはそれより短い)オリゴヌクレオチドである。
【0045】
デバイスはまた、タンパク質を捕捉するための固定化分析成分を含んでいてもよい。これらは典型的には、抗体のような免疫化学試薬であるが、たとえばタンパク質リガンドを捕捉するための受容体および逆の場合のような、他の特異的結合試薬も使用することができる。タンパク質を捕捉するためのアプタマーの使用が予想される。
【0046】
分析成分が、たとえば低分子薬物候補のような低分子であってもよいことも予想される。従って、本発明の方法およびデバイスを低分子スクリーニングアッセイにおいて使用し、試料の成分と相互作用する低分子(たとえば、細胞に由来する物質と相互作用する低分子)を確認するか、または低分子と相互作用する試料の成分を確認することができる。好ましくは、低分子は2000ダルトンより少ない、または1500ダルトンより少ない、または1000ダルトンより少ない、または750ダルトンより少ない、または500ダルトンより少ない、または350ダルトンより少ない、または250ダルトンより少ない分子量を持つ有機分子である。低分子はペプチドまたはペプチド類似体、たとえば少なくとも5アミノ酸残基、少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも25アミノ酸残基、またはそれより多くを含むペプチドまたはペプチド類似体であってもよい。従って、本発明の方法およびデバイスをペプチドおよびペプチド類似体スクリーニングアッセイに使用して、試料の成分と相互作用するペプチドまたはペプチド類似体(たとえば、細胞に由来する物質と相互作用するペプチドまたはペプチド類似体)を確認するか、またはペプチドまたはペプチド類似体と相互作用する試料の成分を確認することができる。
【0047】
本発明の単一のデバイスは核酸およびタンパク質の両方を分析するための分析成分を含むことができる。
【0048】
支持体に分析成分を固定化するための方法は当該技術分野で公知である。マイクロアレイ分野に由来する、ハイブリダイズ可能なフォーマットの支持体に核酸を結合するための方法、たとえば、支持体上のマトリックス、支持体上のゲルなどへのリンカーによる結合などは公知である。最もよく知られた方法は、ガラス支持体上へのヌクレオチドのin situ合成のためのAffymetrixによって使用される写真平板マスキング法であるが、インクジェット沈着法のような電気化学的in situ合成法も公知である。支持体にタンパク質(とりわけ抗体)を結合する方法は同様に公知である。
【0049】
固定化された核酸は前もって合成し、その後支持体に結合することができ、または成長する核酸鎖に前駆体を送達することによって支持体上にin situで合成することができる。これらの方法のいずれかを使用して、本発明のデバイスを構築することができる。好ましい固定化された核酸は、(参考文献2、3&4に記載のように)成長する核酸鎖の電気化学的脱保護を使用してin situ合成により形成される。
【0050】
本発明と一緒に使用することができる分析手順の1つは、固定化された捕捉DNAに対するハイブリダイゼーションによるmRNAの捕捉、続いてプライマーとして固定化されたDNAを使用したmRNAの逆転写を含む。従って、この手順では逆転写酵素が存在しなければならず、そして該酵素はmRNAが固定化された後、dNTPおよび他の試薬と一緒に導入することができる。逆転写プロセスは固定化されたプライマーを伸長して固定化されたcDNAを合成し、そのようにして本発明のデバイスの共有結合による改変を導く。逆転写によるデバイス上のDNAの鎖伸長を促進するために、それは5′末端を介して、または内部ヌクレオチドを介して固定化され、その結果自由な3′末端を持つことになる。この技術のそれ以上の詳細は以下に示す。
【0051】
デバイスは1以上の分析成分を含んでいてもよい。たとえば、デバイスはN個の異なる分析成分を含んでいてもよく、ここでNは2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、400、500またはそれより多い数から選択される。デバイスは少なくとも10N個の異なる分析成分を含んでいてもよく、ここでNは0、1、2、3、4、5またはそれより多い数から選択される。Nまたは10N個の異なる分析成分は、典型的にはそれぞれ支持体上のNまたは10N個の異なるパッチに配置されることになる。
【0052】
デバイスは、同じ分析成分の3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上のパッチのように、2以上の単一分析成分のパッチを含んでいてもよい。
【0053】
分析成分のパッチは少なくとも2つの試料のパラレル分析を可能にするような大きさに作られる。好ましくは、パッチはそれぞれの試料から発生するシグナルを区別させるための適切な間隔で、5以上(たとえば10以上、15以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、150以上、または200以上)の異なる試料をパッチに適用させる大きさに作られる。
【0054】
従って、使用において本発明のデバイスは分析成分が固定化される支持体を含んでいてもよく、そして該支持体には、5以上(たとえば10以上、15以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、150以上、または200以上)の異なる試料が分析成分の単一パッチに配置される。
【0055】
試料のパラレル分析を可能にするために必要なパッチサイズは、それぞれの試料の容積、支持体に適用された場合の試料の分散、検出装置の感度および解像度、およびパッチ上でパラレルに分析されることになる試料数のような因子に依存して変化することになる。好ましくは(図1のように)パッチサイズは、重複せずにパッチの別個の領域に複数の試料を適用してデータ解析を促進させることになり‐異なる試料が適切な間隔で配置されない場合、どの試料が観察されたシグナルを生み出すかは明確でないことになる。しかし、1つの試料から発生したシグナルが別の試料から発生したものと区別することができるならば、隣接する試料にとって、パッチに適用される場合、わずかに重複することは可能である。
【0056】
パッチへの適用後の試料の平均した中心から中心までの距離は好ましくは少なくとも2pであり、ここでpはパッチへの適用後の試料の平均した最長の寸法(長さまたは直径)である。たとえば、試料がパッチへの適用後およそ25μmの平均直径を有する場合、試料の中心から中心までの距離は好ましくは少なくとも50μmである。パッチへの適用後の試料の中心から中心までの距離は3p、4p、5p、6p、8p、10p、またはそれ以上であってもよい。
【0057】
パッチへの適用後、試料の平均した中心から中心までの距離は好ましくは少なくとも10Ymであり、ここでYは‐3、‐4、‐5などから選択される。
【0058】
パッチ上の試料の所望する中心から中心までの距離は、本明細書の他の部分で言及したように、異なる試料の溶液または懸濁液の適切な希釈によって成し遂げられてもよい。個々の細胞を分析する場合、細胞を処理して細胞凝集を減らし、所望する中心から中心までの距離を確実にすることが必要であってもよい。
【0059】
現行のマイクロアレイにおけるパッチサイズは直径約1μmから直径約1mmまで変動する。本発明のデバイスでは、パッチは好ましくは少なくとも10Xm2の面積を有し、ここでXは‐2、‐3、‐4、‐5、‐6、‐7、‐8、‐9、‐10、‐11、−12などから選択される。約10μmx10μm(すなわち、10−10m2)のパッチサイズのマイクロアレイは現行の技術を使用して容易に調製される。
【0060】
本発明がパッチ上の個々の細胞のパラレル分析に使用される場合、パッチは少なくとも2つの細胞、または少なくとも2つの細胞に由来する物質をパッチに適用することを可能にする大きさに作られる。これには一般に>2aの面積のパッチを必要とし、ここでaは関心のある細胞型の平均断面積である。通常、パッチはそれぞれの細胞の容積、それぞれの細胞に由来する物質の分散、検出装置の感度および解像度、およびそれぞれのパッチ上でパラレルに分析されることになる細胞数を考慮して、>3a、>4a、>5a、>10a、>15a、>20aまたは>25aである(本明細書の実施例6を参照されたい)。
【0061】
典型的な細胞およびオルガネラの寸法は以下の表に示される:
【0062】
【表1】
【0063】
@0001
従って、分析されることになる細胞に依存して、パッチは1μmより長い、たとえば3μmより長い、5μmより長い、10μmより長い、25μmより長い、50μmより長い、100μmより長い、250μmより長い、500μmより長い、750μmより長い、1000μm(1mm)より長い、最長の寸法(長さまたは直径)を有していてもよい。
【0064】
たとえば、当業者が分析成分の1つのパッチ上で16個の個々のヒトTリンパ球を分析することを望む場合、16個の細胞が容易にパッチ上でパラレルに個々に分析できることを確実にするためには、通常>32μmx32μm(1024μm2)の正方形のパッチが必要である。
【0065】
当業者は関心のある試料の数および型にとって適切なパッチサイズを容易に選択することができる。より大きなパッチは一般に、パッチ上で多数の個々の試料がパラレルに分析されることを可能にする。より大きなパッチはまた、パッチ上の適切な試料間隔を維持しながら、多数の個々の試料が適用されることを可能にしてもよい。より大きなパッチはまた、試料がさらに離れた間隔で配置されうることにより、等価な試料が検出装置によっていっそう容易に解像されることを可能にしてもよい。しかし、パッチの総数が減少しない限りは、より大きなパッチがより大きな支持体を必要としてもよい。
【0066】
本発明のデバイス内のパッチは同じサイズ、または異なるサイズを有していてもよい。
【0067】
パッチの端から端までの距離は好ましくは少なくとも10Ymであり、ここでYは‐3、‐4、‐5などから選択される。近くのパッチは隣接してもよく、重複してもよいが、近くのパッチはギャップによって分離されることが好ましい。
【0068】
パッチは好ましくは長方形または正方形を有するが、円形を有していてもよい。いくつかの態様では、パッチの形およびサイズは支持体の特徴によって確定されることになる(たとえば、支持体がマイクロタイタープレートである場合、パッチのサイズおよび形はウェルベースのサイズおよび形に一致してもよい)。本発明のデバイス内のパッチは同じ形、または異なる形を有していてもよい。
【0069】
本発明の方法は、分析成分のパッチ毎の複数の試料のパラレル分析に使用される場合、とりわけ好都合である。しかし、本発明は、分析成分のパッチ毎の単一試料の分析に使用
することもできる。たとえば、単一細胞が本発明のデバイスのそれぞれのパッチ上で分析されてもよい。たとえば、同一で同期の細胞集団における遺伝子発現のパターンが分析されることになる場合、そのような配置が有用であってもよい。そのような場合、該集団の単一細胞は異なる標的分析物に対してそれぞれのパッチ上で分析することができる。従って、本発明はまた以下のステップ:a)分析成分が固定化される支持体に、個々の細胞に由来する物質を適用すること;およびb)物質を分析成分と相互作用させて、物質の分析を可能にすることを含む、複数の個々の細胞を分析するためのプロセスを提供する。異なる個々の細胞に由来する物質は、支持体上の異なる分析成分のパッチにステップa)で適用され、支持体上の物質の空間配置を生む。空間配置はステップb)で維持され、そのようにして分析結果が個々の細胞に一致することを可能にする。
【0070】
単一細胞が分析成分のパッチ上で分析される場合、本発明の方法は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)による分析に類似性を有する。しかし、本発明の方法では、単一細胞は分析成分が固定化される支持体上で分析される。対照的に、FISHでは単一細胞が分析されるが、分析成分は溶液相において提供され、その結果異なる標的分析物は容易にパラレルに検出することができない。
【0071】
本発明のデバイスおよび方法を使用して、デバイスに適用される細胞の集団から細胞の亜集団を選択してもよいことが予想される。たとえば、細胞周期の特定のステージでの個々の細胞(同期細胞)は、固定化された抗体またはアプタマーを使用して、細胞表面抗原発現に基づいて選択されてもよい。そのような態様では、それぞれのパッチは1つより多い分析成分を含むことによって、複数の細胞型の選択、または単一パッチ上の細胞表面抗原のある種の組み合わせを有する細胞の選択を可能にしてもよい。
【0072】
細胞の選択は、固定化された分析成分に結合しない細胞型を除去するためにデバイスの洗浄を必要としてもよい。
【0073】
細胞の亜集団の選択後、その亜集団は、本発明の方法を使用してさらに分析されてもよい。たとえば、細胞の亜集団が細胞表面抗原発現に基づいて選択される場合、細胞の亜集団がその後溶解され、個々の細胞の内容物が本明細書に記載のようにパラレルに分析されてもよい。そのような態様では、それぞれのパッチは1つより多い型の分析成分(たとえば2つまたは3つの型の分析成分)を含むことによって単一パッチ上、たとえば固定化された抗体および核酸を有する単一パッチ上で細胞の選択および分析を可能にしてもよい。
【0074】
先に記載の固定化された分析成分に加えて、溶液相プローブが本発明のデバイスおよび方法と一緒に使用されてもよいことが予想される。典型的には、溶液相プローブは固定化された分析成分による標的分析物の捕捉後にデバイスに適用されることになる。溶液相プローブは一般に、関心のある分析データを生むために、試料型および関心のある標的分析物の知識に基づいて選択されることになる。典型的には、プローブは本明細書の他の部分に記載のように、生物学的分子である。
【0075】
いくつかの態様では、溶液相プローブはいっそう詳細な試料分析を可能にするため、その使用は好都合である。たとえば、固定化されたオリゴdTのパッチを使用してmRNAを捕捉し、そして細胞のポリA+集団のすべてを表す固定化されたcDNAを生み出した後(本明細書の実施例を参照されたい)、溶液相遺伝子特異的プローブをパッチに適用して、特異的mRNAの確認および定量を可能にしてもよい。付加的な例として、非特異的分析成分(たとえば、相対的に特異的でない抗原)のパッチを使用して抗原を捕捉した後、捕捉された抗原が溶液相プローブ(たとえば、抗原に特異的に結合する抗体)を使用して、いっそう詳細に分析されてもよい。
【0076】
溶液相プローブが使用される態様では、複数の異なる溶液相プローブの組を使用して、
パラレルに複数の異なる標的分析物を分析してもよい。これらの異なる溶液相プローブは、必要とされる分析に依存して、個々の標的分析物に対してそれぞれ特異的(たとえば、個々の遺伝子に特異的)であってもよく、または複数の関連する標的分析物に対して特異的(たとえば、遺伝子を越えて保存される配列に対して特異的)であってもよい。複数の異なる溶液相プローブの組は少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、または少なくとも600の異なるプローブからなっていてもよい。
【0077】
標的分析物が核酸(たとえば、mRNA)である場合、溶液相プローブは遺伝子特異的である必要がなく、そしてたとえば複数の異なる遺伝子によって共有されるヌクレオチド配列、または複数の異なる生物によって共有される配列を確認してもよい。
【0078】
標的分析物が核酸である場合、溶液相プローブは鋳型として固定化されたcDNAを使用してポリメラーゼによる伸長のためのプライマーを形成してもよい。プライマー配列は遺伝子特異的または非特異的伸長に関して選択することができる。
【0079】
異なる溶液相プローブは、たとえばチャンネルまたはピンを含むプローブアプリケ−ターを使用して、単一パッチ(たとえば固定化されたcDNAを持つパッチ)の異なる部分に適用されてもよい。適切なプローブアプリケ−ターは米国意匠特許D413,390号に記載される。1つより多いプローブが使用される場合、適切なラベリングおよび検出方法は当該技術分野で公知のものから選択することができる。たとえば、異なる蛍光色素でラベルされた異なるプローブがパッチに同時に適用されてもよい。あるいは、またはその上、異なるプローブが順次適用されてもよい。この場合、第1プローブ(またはプローブの組)がデバイスに適用され、生み出されたシグナルが観察され、そしてプローブが除去される。第2のプローブ(またはプローブの組)はその後デバイスに適用され、生み出されたシグナルが観察され、そしてプローブが除去される。これらのステップは付加的なプローブにより適宜反復することができる。
デバイスの他の特徴
本発明のデバイスはさらに以下のものを含んでいてもよい:
‐1以上の電極。電極を使用してデバイスを横切る電位を生み出すこと、細胞のエレクトロポレーションを引き起こすこと、試料移動などができる。
‐細胞を溶解するための圧電性デバイス。
‐光源、たとえばレーザー。レーザーを使用して細胞を溶解すること、および/またはデータ収集ができる。
‐検出器、たとえば質量分析機。
標的分析物
本発明の方法を使用して種々の標的分析物の確認および定量ができる。標的分析物は当業者が試料中に検出または定量することを望んでもよい、いずれかの化学的実体でありうる。本発明の方法を使用して生物学的または非生物学的標的分析物を分析することができる。好ましくは、標的分析物は生物学的標的分析物である。
【0080】
本発明はとりわけ、たとえば核酸およびポリペプチドのような、それらに対するマイクロアレイ分析が以前記載されている生物学的標的分析物の分析に適する。適切な核酸標的分析物には、ゲノムDNA、プラスミドDNA、増幅産物(たとえばPCRに由来する)、cDNAおよびmRNAが挙げられるが、それらに限定されない。
【0081】
本発明の方法は、標的分析物の存在または量に関する試料の分析を含む。本発明の方法を使用して試験された試料のすべてが標的分析物を含まないことは理解される。従って、標的分析物を移すこと、標的分析物を検出することなどに対する本明細書における言及は
、試料が標的分析物を含む状況に限定されない(たとえば、病原体のアッセイが陰性結果を生んでもよく、あるいは陰性対照が分析されてもよい)。
試料
本発明の方法を使用して種々の型の試料を分析することができる。
【0082】
試料は、当業者が標的分析物の存在または量を分析することを望む可能性があるどんなものでもあり得る。本発明の方法を使用して生物学的または非生物学試料を分析することができる。好ましくは、試料は、細胞または細胞に由来する物質を含む試料のような、生物学試料である。
【0083】
生物学試料は、真核細胞および原核細胞の両方を含む多様な生物および細胞型を含むか、またはそれらに由来することができる。たとえば、本発明を使用して、大腸菌;枯草菌;髄膜炎菌;淋菌;肺炎球菌;ミュータンス菌;B群連鎖球菌;化膿連鎖球菌;緑膿菌;ピロリ菌;カタル球菌;インフルエンザ菌;百日咳菌;ジフテリア菌;破傷風菌などが挙げられるが、それらに限定されない細菌、または細菌に由来する試料を分析することができる。真核細胞の中で、本発明を使用して、動物細胞、植物細胞、真菌細胞(とりわけ酵母)など、およびそのような細胞に由来する試料を分析することができる。関心のある好ましい動物細胞は哺乳類細胞である。好ましい哺乳類はヒトを含む霊長類である。
【0084】
関心のある特有の細胞型には、とりわけヒトの場合:血液細胞、たとえばリンパ球、ナチュラルキラー細胞、白血球、好中球、単球、血小板など;腫瘍細胞、たとえば、癌腫、リンパ腫、白血病細胞;卵子および精子を含む配偶子;心臓細胞;腎臓細胞;膵臓細胞;肝臓細胞;脳細胞;皮膚細胞;成体幹細胞および胚性幹細胞を含む幹細胞などが挙げられるが、それらに限定されない。細胞系統も分析することができる。
【0085】
試料が細胞、または細胞に由来する物質を含む場合、それぞれの試料は複数の細胞または複数の細胞に由来する物質を含んでいてもよく、その結果本発明は異なる細胞集団のパラレル分析に使用される。あるいは、それぞれの試料は個々の細胞、または個々の細胞に由来する物質を含んでいてもよく、その結果本発明は個々の細胞のパラレル分析に使用される。
【0086】
従って、いくつかの態様ではそれぞれの試料は:1x108より少ない細胞、1x107より少ない細胞、1x106より少ない細胞、1x105より少ない細胞、1x104より少ない細胞、1x103より少ない細胞、100より少ない細胞、50より少ない細胞、25より少ない細胞、20より少ない細胞、15より少ない細胞、10より少ない細胞、5より少ない細胞、3より少ない細胞、または単一細胞を含んでいてもよい。
【0087】
他の態様では、それぞれの試料は:3より多い細胞、5より多い細胞、10より多い細胞、15より多い細胞、20より多い細胞、25より多い細胞、50より多い細胞、100より多い細胞、1x103より多い細胞、1x104より多い細胞、1x105より多い細胞、1x106より多い細胞、1x107より多い細胞、または1x108より多い細胞を含んでいてもよい。
【0088】
他の態様では、それぞれの試料は:1x108より少ない細胞に由来する物質、1x107より少ない細胞に由来する物質、1x106より少ない細胞に由来する物質、1x105より少ない細胞に由来する物質、1x104より少ない細胞に由来する物質、1x103より少ない細胞に由来する物質、100より少ない細胞に由来する物質、50より少ない細胞に由来する物質、25より少ない細胞に由来する物質、20より少ない細胞に由来する物質、15より少ない細胞に由来する物質、10より少ない細胞に由来する物質、5より少ない細胞に由来する物質、または3より少ない細胞に由来する物質を含んでいて
もよい。
【0089】
他の態様では、それぞれの試料は:3より多い細胞に由来する物質、5より多い細胞に由来する物質、10より多い細胞に由来する物質、15より多い細胞に由来する物質、20より多い細胞に由来する物質、25より多い細胞に由来する物質、50より多い細胞に由来する物質、100より多い細胞に由来する物質、1x103より多い細胞に由来する物質、1x104より多い細胞に由来する物質、1x105より多い細胞に由来する物質、1x106より多い細胞に由来する物質、1x107より多い細胞に由来する物質、または1x108より多い細胞に由来する物質を含んでいてもよい。
【0090】
本発明はとりわけ、真核細胞および原核細胞の両方を含む、異なる個々の細胞の分析に適する。たとえば、それぞれの試料が個々の細胞、または個々の細胞に由来する物質を含む場合、本発明を使用して、同じ型(たとえばある細胞系統)であるが、非同時性、すなわち細胞周期の異なるステージにある複数の細胞を分析することができる。本発明を使用して、同じ型に由来し、同時性、すなわち細胞周期の同じステージにある複数の細胞を分析することもできる。
【0091】
本発明のデバイスを使用して単一の型の細胞を分析することができる。本発明のデバイスを使用して、1つより多い、たとえば2以上、3以上、4以上、5以上などの細胞型を分析することもできる。たとえば、本発明のデバイスを使用して、異なる型の細菌を含む試料(たとえば、食物試料)、または異なる型のヒト細胞を含む試料(たとえば、血液または組織試料)を分析することができる。
【0092】
試料の他の成分から関心のある細胞型の分離を可能にする試料調整ステップを含むことが、本発明の方法にとって望ましくてもよい。とりわけ、試料中の他の細胞型から関心のある細胞型を分離することが望ましくてもよい。たとえば、血液試料が本発明のデバイスを使用して分析されることになる場合、白血球の分析の前に試料から赤血球を除去することが望ましくてもよい。従って、いくつかの態様では、本発明の方法は、出発試料中の他の成分から関心のある1以上の細胞型を分離するステップを含んでいてもよい。とりわけ、本発明の方法は出発試料中の他の細胞型から関心のある1以上の細胞型を分離するステップを含んでいてもよい。いくつかの態様では、異なる細胞型の分離は本明細書の他の部分に記載のように、移動基質を使用して成し遂げられてもよい。他の適切な分離法(たとえば、FACS)は当業者に公知である。出発試料中の他の成分から関心のある細胞型を分離後、関心のある細胞は、本発明のデバイスを使用して分析することができる。試料の他の成分(すなわち、関心のある細胞が分離された成分)は廃棄されてもよく、または本発明のデバイスを使用してそれら自体が分析されてもよい。
【0093】
好ましくは、試料の1以上の他の成分から関心のある1以上の細胞型を分離後、結果として生じた、分離された細胞集団の少なくとも75%以上(たとえば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)は所望する型の細胞である。
【0094】
細胞内容を分析することに加えて、真核細胞のオルガネラ、とりわけ細胞核(たとえば、転写因子に関して)、ミトコンドリアおよびプラスチド(たとえば、葉緑体)を分析することが可能である。オルガネラは細胞から調製され、全細胞に関して本明細書で記載のように分析することができる。
支持体への試料の適用
本発明のいくつかの方法では、試料は支持体に直接適用され、試料の空間配置を生み出す。試料は、ピペッティング、プリンティング、スポッティングおよび散布を含むがそれらに限定されない、いずれか適切な方法によって支持体に直接適用することができる。た
とえば、試料は、米国意匠特許第D413,390号に記載された型の試料アプリケ−ターを使用して支持体に適用することができる。
【0095】
試料が細胞を含む場合、細胞は支持体に適用され、その後物質が細胞から遊離されうる。あるいは、物質が細胞から遊離され、その後遊離された物質が支持体に適用されうる。
【0096】
物質はいずれか適切な方法により細胞から遊離することができる。機械的および化学的方法が共に予想され;代表的な方法は以下に記載される。
【0097】
たとえば、溶解溶液は支持体上の細胞に適用することができ、そして細胞はin situで溶解することができる。使用することができる典型的な溶解溶液は以下のような成分を含んでいてもよい:界面活性剤、たとえば核酸を分析する場合のSDSのようなイオン性洗浄剤、またはタンパク質を分析する場合のTriton−X100のような非イオン性洗浄剤;タンパク質を消化するための酵素、たとえばプロテイナーゼK;核酸を消化するための酵素、たとえばDNアーゼおよび/またはRNアーゼ;炭水化物を消化するための酵素(たとえば、β(1−6)およびβ(1−3)グリカナーゼ、マンナーゼ);酵素を不活性化し、細胞成分を可溶化するためのカオトロープ、たとえばグアニジニウムイソチオシアネートのようなグアニジン塩;有機溶媒(たとえば、トルエン、エーテル、フェニルエチルアルコール DMSO、ベンゼン、メタノール、またはクロロホルム);抗生物質;チオニン;キレート剤(たとえば、EDTA);塩基性タンパク質(たとえば、プロタミン、またはキトサン)など。そのような試薬は一般に、大量の細胞溶解のための既存の技術において使用される。試薬の選択は関心のある分析物の性質に依存することになり;たとえば目的がmRNAを分析することである場合、プロテアーゼおよびDNアーゼが溶解溶液に含まれるが、mRNAを分解する試薬が含まれてはならない。
【0098】
単一細胞の機械的破壊については記載されている。参考文献5はショック波を生み出すことによる単一細胞(またはその細胞成分)の迅速溶解のための方法を開示し、そして操作による外傷を最少化するために細胞はレーザーピンセットにより置かれるか、または接着細胞として培養される。参考文献6におけるように、単一細胞を溶解するために以前使用されていたレーザー光と同じように、超音波振動も細胞を溶解するためにデバイスに適用することができる。浸透圧ショックによるマイクロ流体デバイス中の単一細胞の溶解は参考文献7に報告されている。参考文献8は、流動特性が電気泳動および電気浸透によって制御することができる、マイクロ流体ネットワークの異なる部分への、光学ピンセットによる単一細胞の誘導および操縦を記載する。細胞は2つの電極間に捕捉され、そこで電気パルスによって溶解することができる。
【0099】
エレクトロポレーションに使用される電場の大きさに依存して、膜は簡単に開かれて、細胞内容への接近を可能にしてもよく、または破壊されて細胞溶解を導いてもよい(参考文献9を参照されたい)。溶解を起こすために十分な強さの電場が好ましい。
【0100】
試料が支持体に適用される前に、または試料が支持体に適用された後に、試料からある種の成分を除去することおよび/または試料のある種の成分を改変することが望ましくてもよい。標的分析物と分析成分との相互作用に関して、または結果の利用もしくは解釈に関してのいずれかにおいて、生化学的分析は妨害する可能性のある物質を除去するためのそのような精製または改変ステップにしばしば先行される。
【0101】
マイクロアレイによる分析のための試料調製、たとえば細胞破壊、mRNA精製、cDNA調製、ゲノムDNA精製、ポリペプチド精製、ラベリングなどのためのプロトコルは当該技術分野で公知である。
【0102】
たとえば、mRNAが固定化されたプローブによる捕捉にとっての所望する分析物であ
る場合、DNAまたはタンパク質は分析の前に除去されてもよい。本明細書の実施例では、支持体に結合したmRNAの逆転写により試料を分析する場合、細胞タンパク質に由来する非特異的シグナルを減らすために多重特異的プロテアーゼ組成物を使用することが好都合であることが見いだされた。標的分析物および分析されることになる試料の観点から適切な試料プロセッシングステップは当業者には明らかである。
移動基質への試料の適用
本発明のいくつかの方法では、試料は移動基質の異なる部分に適用されて試料の空間配置を生み出し、その後標的分析物は移動基質から支持体に移される。移動基質が使用される場合、支持体への移動後の標的分析物の空間配置は移動基質上の使用の空間配置に一致し、そうして分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。移動基質の使用は試料の適切な空間配置の初期の生成を促進することができる。
【0103】
試料は、ピペッティング、プリンティング、スポッティングおよび散布を含むがそれらに限定されないいずれか適切な方法によって移動基質に適用することができる。たとえば、試料は、米国意匠特許第D413,390号に記載の型の試料アプリケ−ターを使用して移動基質に適用することができる。
【0104】
移動基質はいずれか適切な物質から構築されてもよい。移動基質のための物質の選択はいくつかのデザインの考慮により影響を受け、適切な物質は特定のデバイスの要求に基づいて当業者が容易に選択することができる。たとえば、物質は使用中に移動基質に適用される試薬に対して安定であるべきであり、そして支持体への標的分析物の移動のために選択される方法と適合しなければならない。いくつかの態様では、移動基質はニトロセルロースから作られてもよい。
【0105】
移動基質は実質的に平坦、たとえばシート物質でありうる。移動基質は実質的に平坦でないこともあり得、たとえば、試料の初期の空間配置はスポッターのピン上に生み出すことができる。スポッターは一般にDNAアレイの生産に使用され、本発明の方法において容易に使用することができる。スポッターの個々のピンを使用して、支持体上の異なる分析成分のパッチに異なる個々の試料を適用することができる。スポッターの個々のピンを使用して、支持体上の単一パッチに異なる個々の試料を適用することもできる。当業者により適切なピン配置が選択されて、支持体上のパッチの配置および必要な分析の型を完全にすることができる。
【0106】
移動基質から支持体への標的分析物の移動は、標的分析物の空間配置を維持しながら、多様なやり方で成し遂げることができる。適切な移動方法は、特有の移動基質物質、試料、および関与する標的分析物に基づいて選択することができる。
【0107】
いくつかの態様では、標的分析物の移動は支持体を移動基質と接触させることにより促進される。他の態様では、標的分析物の移動は支持体のごく近くに移動基質を置くことにより促進される。移動基質および/または支持体は、支持体への標的分析物の移動に好都合な条件に供することができる。たとえば、移動試薬は基質および/または支持体に適用することができる。移動試薬は移動基質から支持体への標的分析物の移動を促進することができるいずれかの試薬である。
【0108】
標的分析物は、拡散のような受動的移動法により、または吸引もしくは発電によるような能動的移動法により移動試薬から支持体まで移動することができる。たとえば、移動試薬は電気的に、または磁気的に伝導性物質であってもよく、その結果電位または磁場が移動試薬および/または支持体に適用されて基質から支持体への標的分析物の移動を促進してもよい。
【0109】
いくつかの態様では、移動試薬は標的分析物に不透過性である。移動試薬が標的分析物に不透過性である場合、試料は移動試薬の表面に適用され、その表面は基質から支持体への標的分析物の移動のために支持体と接触して、またはそのごく近くに位置することができる。
【0110】
いくつかの態様では、移動基質は移動試薬に不透過性である。いくつかの態様では、移動基質は標的分析物に、および移動試薬に不透過性である。
【0111】
いくつかの態様では、移動基質は標的分析物および移動試薬に透過性である。移動基質が標的分析物および移動試薬に透過性である場合、移動基質から支持体への標的分析物の移動は、移動基質内を通って、またはその中から外への標的分析物の移動を含んでいてもよい。たとえば、試料は基質の第1の面に適用されて基質上に試料の空間配置を生み出すことができる。移動試薬はその後基質に適用されることができ、その結果標的分析物は基質を通って基質の第2の面に運ばれ、その第2の面からそれらは支持体に移されうる。たとえば、移動基質は多孔性膜であり得、そして移動試薬はバッファーでありうる。
【0112】
従って、移動試薬に透過性の移動基質が使用される場合、移動試薬は移動基質に適用されて移動基質から支持体への標的分析物の移動を引き起こすことができる。移動試薬は、移動試薬に透過性(そして好ましくは、標的分析物にも透過性)の基質と一緒に使用される場合好都合であるが、移動試薬は不透過性基質と一緒に使用することもできる。適切な移動試薬は当業者が選択することができ、そして使用されることになるデバイスの型、および分析されることになる試料に依存することになる。たとえば、移動試薬はバッファーでありうる。
【0113】
いくつかの態様では、試料全体が分析のために支持体に移されることが必要でない。実際、いくつかの態様では、たとえば試料が望ましくない妨害成分を含む可能性がある複合試料(たとえば、細胞)である場合、それぞれの試料のある種の成分だけが移されることが好ましくてもよい。
【0114】
従って、いくつかの態様では、移動基質は標的分析物および標的試薬に透過性であるが、細胞または細胞成分のような試料の他の成分に不透過性である。たとえば、移動基質は全細胞、ある種の細胞型、細胞膜のような細胞フラグメントおよび/またはオルガネラなどに不透過性であってもよい。それらの態様では、細胞(または細胞に由来する物質)を含む試料は、移動基質の第1の面に適用されて移動基質上に試料の空間配置を生み出すことができる。移動試薬はその後基質に適用することができ、その結果標的分析物は基質を通って基質の第2の面に運ばれ、その第2の面からそれらは、全細胞、ある種の細胞型、細胞フラグメント、オルガネラなどの共移動なしに支持体に移されうる。従って、支持体への試料の他の成分の移動を妨害するか、または減らしながら、標的分析物を支持体に移すことによって、移動基質が試料調製を補助してもよい。
【0115】
細胞が移動基質に適用される態様では、移動試薬は好ましくは溶解試薬としても機能し、その結果必要とされる試薬の数は最少限に抑えられる。
【0116】
いくつかの態様では、移動基質は標的分析物以外の、試料の1以上の成分を特異的に、または非特異的に捕捉してもよい。試料成分の特異的、または非特異的捕捉は、それらの成分によって引き起こされたバックグラウンドシグナルを減らし、それによって分析結果を改善してもよい。
【0117】
たとえば、標的分析物がタンパク質の場合、移動基質は特異的に、または非特異的に核酸を捕捉してもよい。核酸の特異的捕捉は、本明細書に記載のような固定化された結合試薬を使用して成し遂げることができる。核酸の非特異的捕捉は、核酸を吸着するか、または吸収するが、タンパク質を吸着または吸収しない移動基質を使用して成し遂げられても
よい。たとえば、正に荷電したある種のナイロンは核酸を吸着するようにデザインされる。
【0118】
たとえば、標的分析物が核酸である場合、移動基質は特異的に、または非特異的にタンパク質を捕捉してもよい。タンパク質の特異的捕捉は、本明細書に記載のような固定化結合試薬を使用して成し遂げることができる。タンパク質の非特異的捕捉は、タンパク質を吸着するか、または吸収するが、核酸を吸着または吸収しない移動基質を使用して成し遂げられてもよい。たとえば、ニトロセルロースはタンパク質および1本鎖DNAを吸着するが、RNAまたは2本鎖DNAを吸着しない。
【0119】
いくつかの態様では、それぞれの試料においてmRNAのような特有の型の標的分析物の50%以上(たとえば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%)は移動基質から支持体まで移される。85%以上((たとえば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%)が移される態様は、標的分析物のいっそう正確な定量を可能にする。
【0120】
いくつかの態様では、それぞれの試料における50%より少ない(たとえば5%より少ない、10%より少ない、20%より少ない、30%より少ない、または40%より少ない)特有の標的分析物、またはmRNAのような特有の型の分析物が移動基質から支持体まで移される。そのような態様は、他の方法、たとえばPCRによるその後の操作のために、支持体上に標的分析物の一部を残す。
【0121】
移動基質から支持体まで適切に標的分析物を移すために使用される方法を変化させることにより、移動基質から支持体まで移されるそれぞれの試料における特有の標的分析物、またはmRNAのような特有の型の分析物の画分は変えることができる。たとえば、支持体への移動基質の接近、使用される移動試薬、電位または磁場の強度、移動が発生する温度、および/または移動が許される時期を変化させて所望するレベルの標的分析物移動を提供することができる。
【0122】
また、酵素反応は、移動基質への適用後であるが、移動基質から支持体への標的分析物の移動前に試料上で実施されてもよいことが予想される。
試料の空間配置
本発明の方法では、試料は支持体または移動基質に適用されて、試料の空間配置を生み出し、そしてその空間配置は方法のその後のステップ中維持される。試料の空間配置、とりわけ標的分析物の空間配置の生成は本発明の重要な特徴である。
【0123】
本発明の方法における試料の空間配置の生成はサザンブロッティングのような、他の方法における分析物の空間配置の生成に類似する。しかし、本発明の方法では、標的分析物の空間配置は分析成分が固定化される支持体上に生み出される。対照的に、たとえば、サザンブロッティングでは、標的分析物の空間配置は支持体上に生み出され、そして、分析成分は溶液相に提供され、その結果異なる標的分析物は容易にパラレルに検出されるはずがない。
試料の空間配置の生成
試料の空間配置は初めに試料が支持体に、または移動基質に適用される場合に生み出される。
【0124】
いくつかの態様では、試料は支持体または移動基質に適用されて、試料の任意の空間配置を生み出す(図4を参照されたい)。たとえば、試料が細胞を含む生物学的試料である
場合、細胞懸濁液は適切に希釈されて支持体または移動基質に適用され、細胞の任意の空間配置を生み出すことができる。そのような方法において生み出された空間配置は、慣用の血球計算機の使用中に観察される細胞の空間配置に類似する。任意の試料適用法は、予め決められた試料適用パターンを必要とせず、より短時間で実行されてもよい。
【0125】
任意の試料適用法は、確認されることになる試料の空間配置を必要としてもよく、その結果、分析ステップで観察されるシグナルの空間配置は試料の空間配置と相関することができる(図5を参照されたい)。さもなければ、状況によっては陰性結果を確認することが可能でなくてもよい。支持体または移動基質上の試料の空間配置は、いずれか適切な方法、たとえば特異的または非特異的ラベリング(たとえば、試料が細胞を含む場合、タンパク質または膜成分に対する染色)によって可視化されてもよい。支持体または移動基質上の試料の空間配置は、所望する場合、いずれか適切な方法、たとえばデジタル画像捕捉によって記録されてもよい。本明細書の実施例では、ガラス支持体上の個々の細胞の空間配置は明視野顕微鏡または高解像度レーザースキャニングによって確認された。
【0126】
試料の空間配置の確認が必要である場合、支持体または移動基質に対して選択された物質は選択された確認方法に適合するべきである。たとえば、空間配置がデジタル画像捕捉によって確認されることになる場合、半透明もしくは透明な支持体または移動基質が好ましくてもよい。
【0127】
試料が支持体または移動基質に任意に適用されるいくつかの態様では、試料の空間配置を確認することは必要ではない。とりわけ、それぞれのパッチに、またはデバイスに適用された試料の実際の、または平均の数が既知である場合、試料の空間配置を確認することが必要でなくてもよい。たとえば、図5の実験において10個の試料が支持体に適用されていることが既知であった場合、5つのシグナルスポットが観察されれば、試料の半数が標的分析物を含んでいたと結論してもよい。懸濁液の単位容量毎の細胞数は一般に既知であるため、この型の統計解析は細胞の懸濁液が支持体または基質に適用される場合にとりわけ有用である。たとえば、平均50個の細胞が支持体上のそれぞれのパッチに適用され、5個のシグナルスポットだけが特定のパッチ上で観察される場合、約10%の細胞が適切な標的分析物を含んでいたと結論してもよい。
【0128】
他の態様では、試料は支持体または移動基質に適用されて、試料の整った空間配置を生み出す(図4Bを参照されたい)。たとえば、試料それぞれが細胞または細胞集団の内容を含む場合、たとえばプリンターまたはプロッターを使用して、試料は指示された様式で支持体または移動基質に適用されて、支持体または移動基質上の予め決められた試料の空間配置を生み出すことができる。任意でない試料適用法は、先に記載のように試料の空間配置の確認を必要としなくてもよく(なぜならそれは予め決められているため)、そして利用可能な空間のいっそう効率的な使用のために、より多い試料をそれぞれのパッチに適用してもよい。本明細書の実施例では、試料は手動スポッターを使用して支持体に適用された(実施例10を参照されたい)。
【0129】
試料は支持体または移動基質に個々に適用することができる。試料が支持体または移動基質に適用され、試料の整った空間配置を生み出す場合、個々の試料適用が好ましい。
【0130】
試料は1以上の試料のグループで支持体または移動基質に適用することができる。試料が支持体または移動基質に適用されて、試料の任意の空間配置を生み出す場合、グループによる試料適用が好ましい。
【0131】
好ましくは、試料は分析成分の1つのパッチだけに適用され、その結果試料はデバイス上の>1のパッチと接触しない。しかし、いくつかの態様では分析成分の1つより多いパッチに適用されることが試料にとって好ましくてもよく、その結果試料は>1のパッチ、
たとえば2パッチ、3パッチ、4パッチ、またはそれより多いパッチと接触する。
標的分析物の空間配置の維持
支持体または移動基質に試料を適用することによって試料の空間配置が初めに生み出された後、試料中の標的分析物の空間配置はその後のステップ中維持されることになる。標的分析物の空間配置の維持は本発明の重要な特徴である。
【0132】
本発明の方法およびデバイスにおいて使用される試薬および物質は標的分析物の空間配置を考慮して選択されるべきである。標的分析物の空間配置は、分析成分による捕捉前に、3次元における標的分析物の拡散(すなわち、横方向および垂直方向両方への拡散)により影響を受ける。発生する拡散の量は種々の因子、たとえば捕捉前に分析成分への標的分析物の接近、デバイスが使用される温度、試料適用と標的分析物捕捉の期間、および使用される特有の試薬に依存する。
【0133】
従って、本発明のデバイスおよび試薬は標的分析物の横方向および/または垂直方向の拡散を最小限にするために選択された成分を含んでいてもよい。たとえば、溶解バッファーのような液体試薬を試料に適用しながら、透析膜を使用して支持体から離れた標的分析物の垂直方向の拡散を減らしてもよい(本明細書の実施例を参照されたい)。たとえば、試料調製物は標的分析物の横方向の拡散を妨害するために選択された添加剤を含んでいてもよい(本明細書の実施例を参照されたい)。
【0134】
また、本発明の方法における試料操作および分析ステップを最適化して、標的分析物の拡散を減らしてもよい。
【0135】
試料の空間配置は本発明の方法の間維持され、その結果1つの試料の他の試料に比較した著しい動きはない。従って、たとえ本発明の方法の間に標的分析物の多少の分散があり、その結果試料間の間隔(端から端までの距離)が減らされても、試料の中心から中心までの距離における著しい変化はないことになる。1つの試料から発生したシグナルが異なる試料から発生したシグナルと区別することができる試料の空間配置は適切に維持され、分析ステップ中に生み出されたシグナルの空間配置は、試料の初期の空間配置と相関することができる。一般に、試料の3次元配置が維持されない(たとえば、個々の細胞の形が溶解中に失われる)場合でさえ、試料の2次元配置は維持される。
【0136】
いくつかの態様では、標的分析物の空間配置は、固定化された分析成分に関連した標的分析物の著しい動きがないように維持される。従って、いくつかの態様では、試料中の標的分析物の空間配置は、他の試料に比べた標的分析物の著しい動きがないように、および固定化された分析成分に比べた試料の著しい動きがないように維持される。たとえば、いくつかの態様では支持体上の異なるパッチに比べた標的分析物の位置が維持され、支持体の端から端までの標的分析物の著しい動きはない。
【0137】
本明細書の他の部分で言及するように、本発明の方法は異なる試料の差別的ラベリングを必要としない‐個々の試料が適用される支持体または基質の異なる部分は既知であるか、または確認することができ、それゆえそれぞれ個々の試料によって生み出されたシグナルは容易に確認することができる。しかし、本発明のいくつかの態様では差別的ラベリングが有用であってもよい。たとえば、分析成分の単一パッチを使用して、異なる供給源に由来する試料をパラレル分析(たとえば、2つの異なる血液、または食物、試料における個々の細胞のパラレル分析)させるために差別ラベリングが使用されてもよい。本発明と一緒の差別ラベリングの使用は、より多くの情報が分析成分のそれぞれのパッチから読み取れることを可能にしてもよいが、結果の分析を複雑にしてもよい。
【0138】
本発明の方法では、維持されるものはすべての試料成分の空間配置よりむしろ、標的分析物の空間配置である。たとえば、本発明の方法は一部の試料成分がデバイスから失われ
る洗浄ステップを含んでいてもよい。そのような方法では、標的分析物の空間配置は維持されるが、他の試料成分の空間配置は維持されないことになる。
【0139】
本明細書に記載のような試料の空間配置の生成および維持は分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。しかし、分析結果を個々の試料に一致させることが常に必要ではない。個々の試料に分析結果を一致させるステップは従って付加的である。いくつかの態様では、たとえばパッチに対する平均シグナル強度を記録することにより、パッチ全体に渡って観察されるシグナルを分析することが十分であることになる。他の態様では、個々の試料に一致させることが分析結果にとって必要である。たとえば、本発明に記載のデバイスを使用して、食物試料から分析成分のパッチに複数の細胞を適用し、パッチに対する平均シグナルを記録することによって、食物試料中の細菌の存在を検出することができた。その状況では、細菌の存在はシグナルの観察(または陰性対照に比較して増加したシグナルの観察)によって定量的に示されることになった。試料細胞中の細菌の相対的存在量は、所望する場合、いっそう詳細な定量的分析を実施することにより測定することができた。
分析結果
結果を分析するために使用される検出方法は、標的分析物の性質および使用されてもよいいずれかのラベルに依存する。それらはまた、以下でより詳細に説明するように、一定の分析部位におけるシグナルの強度に依存してもよい。DNAおよびタンパク質マイクロアレイと一緒に、および/または膜を基礎にした方法と一緒に使用される検出方法は本発明と共同した使用に適切であり;そのような方法の一部はより詳細に以下に記載される。
【0140】
本発明の方法は標的分析物の定性的および/または定量的検出を含んでいてもよい。定量的検出方法が好ましい。
【0141】
いくつかの態様では、結果を分析することは、生み出されたシグナルの空間配置を試料の空間配置と相関させることを含む(図5を参照されたい)。この相関は手動で実施されてもよいが、好ましくは、たとえばシグナルの空間配置を試料の空間配置と比較するための画像解析ソフトウェアを使用して自動化される。この相関の出力は、試料の空間配置およびシグナルの空間配置の両方が示される合成画像であってもよい。
【0142】
好ましい分析物(mRNAおよびタンパク質)の場合、標的分析物と固定化された結合試薬が相互作用した後に検出可能なラベルを導入するために、付加的な生化学的プロセッシングが必要であってもよい。蛍光ラベルが本発明の使用にとって好ましい。検出される蛍光は2つの生物学的分子、たとえば2つの核酸、抗体&抗原などの特異的結合に起因する。インターカレート色素が標的分析物の検出に使用されてもよい。
【0143】
蛍光はエバネッセント波を使用して励起することができる。これらの波は照明光の波長の約1/2だけ物質の表面から及び、すなわちそれらは外側に約150〜350nmだけ及び、そしてそれは固定化されたオリゴヌクレオチドのパッチ全体にわたって照明を及ぼすために十分以上である。本明細書の他の部分で言及したように、本発明のデバイスはレーザー供給源(および/またはレーザー検出器)を含んでいてもよい。励起のための光の他の供給源、たとえばランプ、LEDなども使用することができる。
【0144】
タンパク質は抗体を利用するいくつかの既知の方法の1つにより検出することができる。たとえば、固定化された抗体によって捕捉されているタンパク質は、第1の抗体に由来する異なるエピトープに特異的な第2のラベルされた抗体を適用して「サンドイッチ」複合体を形成することによって、またはタンパク質の染色を使用することによって検出することができる。
【0145】
RNA分析の場合、検出は逆転写酵素(たとえば、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AM
V)逆転写酵素)のような酵素を使用して蛍光ヌクレオチドを相補鎖に組み込むことにより成し遂げることができる。たとえば、cDNAは支持体上のオリゴヌクレオチドプローブにmRNAをハイブリダイズすること、およびプライマーとして固定化されたプローブを使用することによりin situで作られてもよい。ハイブリダイゼーションの検出を促進するために、逆転写反応は、好ましくはラベルされたヌクレオチドをcDNAに組み込む[10]。これは、結合した適切なフルオロフォアを持つdNTPの使用により成し遂げることができる。シークエンシング反応とは異なり、異なるヌクレオチドに対して異なる着色フルオロフォアを使用することは必要ではなく、なぜなら個々のヌクレオチドは区別されることが必要でないからである。同様に、すべてのヌクレオチドをラベルする必要はなく、それゆえ1、2、3または4個のdATP、dCPT、dGTPおよびdTTPがラベルされてもよく、そしてラベルされた、およびラベルされないdNTPの混合物が使用されうる。cDNAへの多数のフルオロフォアの組み込み(たとえば、≧10%、≧20%、≧30%、≧40%、≧50%、≧75%、またはそれ以上のように、組み込まれたcDNAの少なくとも5%において)は、cDNAが蛍光検出のいずれかよく知られた手段により容易に検出され、それゆえ単一のハイブリダイゼーション事象に対してさえ、陽性シグナルを明らかにできることを意味する。従って、低い存在量のmRNAでさえ、検出することができる。
【0146】
フルオロフォアを直接組み込むよりむしろ、たとえば、逆転写、洗浄などのようなステップの後に、フルオロフォアが後に結合することができる特有の官能基を組み込むこと(「ポストラベリング」)も可能である。
【0147】
しかし、感度の高い技術が単一フルオロフォアの検出に利用可能であり[11、12]、それゆえ複数のフルオロフォアを含む、個々のcDNA/mRNAハイブリッドの検出は十分に現行の技術力の範囲内である。単一フルオロフォアを確認できる現行の装置は約150nmのピクセル解像度を有する。たとえば、参考文献13&14は単一分子リーダー(Upper Austrian Research GmbHの「CytoScout」として市販される)を記載し、その中のCCD検出器は試料スキャニングステージの動きとシンクロナイズし、129nmのピクセルサイズにおいて11分以内に面積5mmx5mmからデータを集めるための継続したデータ獲得を可能にする。本明細書のいくつかの実施例では、専有の高解像度レーザースキャナーを使用して130nm解像度データを得て、単一mRNA分子の検出が可能であった。従って、いくつかの態様では、本発明の方法、デバイスおよびキットは、個々のmRNA分子のような、個々の標的分析物分子を検出させる。
【0148】
insitu逆転写が実施された後、初めにRNA/DNAハイブリッドが存在し、ここで、DNAは典型的には検出のためのラベルを含む。本発明のいくつかの態様では、このハイブリッドのRNA鎖は、たとえばRNアーゼHを使用して除去される。この除去ステップは、固定化されたプライマーの伸長により調製されている1本鎖DNAを残す。除去ステップ後、この1本鎖cDNAは相補的cDNA鎖の合成のための鋳型として使用され、それによって2本鎖cDNAを生じることができる。この第2鎖の合成は、既存のcDNA鎖に相補的なプライマーを使用して開始されることになる。初めの逆転写後、このプライマーの位置まで伸長しているDNAだけが第2鎖合成を開始するために利用可能である。第2のcDNA鎖が同様に合成されてラベルを組み込んでもよく、そしてラベルは第1鎖の合成中に使用されるラベルと同じであること、または異なることがあり得る。
【0149】
固定化された分析成分に結合した標的分析物はまた、ローリングサークル型増幅(RCA、たとえば参考文献15および16)または、多重置換増幅(MDA:たとえば参考文献17および18)により増幅されてもよい。適切な試薬は市販されている(たとえば、Qiagen Ltd.,Crawley)。
【0150】
固定化された分析成分に結合した標的分析物はまた化学ルミネセンス法によって検出されてもよい。化学ルミネセンスにより標的分析物を検出するための適切な方法は報告されていて(たとえば、参考文献19および20)、適切な試薬は市販されている(たとえば、Applied Biosystems,Foster City,CAから)。たとえば、捕捉されたRNAの逆転写は、ビオチン化dNTPを使用して実施し、生成物は(ストレプト)アビジン‐HRPまたは(ストレプト)アビジン‐AP、続いて化学ルミネセンス基質を適用し、そしてその後画像を捕捉することにより検出することができる。
【0151】
本明細書の他の部分で言及するように、本発明のデバイスは質量分析機と連動することもできる。MSとマイクロ流体デバイスの統合は公知である。たとえば、参考文献21は、統合されたHPLCカラム、試料濃縮カラム、およびナノエレクトロスプレイチップを備えたペプチド分析のためのマイクロ流体チップを記載し、そしてこの「HPLC‐Chip/MS Technology」はAgilentから入手可能である。
【0152】
異なる細胞上でパラレルに同一の個々の分析を実施することはとりわけ効果的であり、明らかに同一の細胞において違いを容易に検出させる。
【0153】
本発明は細胞の組の中の標的分析物を含む割合(たとえば、百分率)の定量を可能にする。
【0154】
好ましくは、一定の標的分析物に対してパラレルに分析することができる試料の数は、少なくとも5(たとえば、≧10、≧15、≧20、≧25、≧30、≧35、≧40、≧45、≧50、≧60、≧70、≧80、≧90、≧100、≧200、≧300、≧400、≧500、≧600、≧700、≧800、≧900、≧1000、など)である。
一般
「含む(comprising」という用語は「含む(including)」および「含む(consisting)」を包含し、たとえば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXからなっていてもよく、または付加的なもの、たとえばX+Yを含んでいてもよい。
【0155】
数値に関する「約」という用語は、たとえばx±10%を意味する。必要な場合には、「約」という用語は省略することができる。
【0156】
「実質的に」という語は「完全に」を排除せず、たとえば「実質的にYを含まない」組成物は完全にYを含まなくてもよい。必要な場合には、「実質的に」という語は本発明の定義から省略されてもよい。
【0157】
要素に関した「直径」および「外周」のような用語の使用は、要素が円形(または三次元の状況では球形)であることを必ずしも意味しない。
【0158】
「抗体」という用語は、種々の天然の、および合成の抗体、ならびに入手可能な抗体に由来するタンパク質、およびそれらの誘導体のいずれかを含み、たとえばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単一ドメイン抗体、全抗体、F(ab′)2およびF(ab)フラグメントのような抗体フラグメント、Fvフラグメント(共有結合でないヘテロダイマー)、1本鎖Fv分子(scFv)のような1本鎖抗体、ミニボディー、オリゴボディー、二量体もしくは三量体抗体フラグメントまたはコンストラクトなどを含むが、それらに限定されない。「抗体」という用語は、いずれか特定の起源を意味せず、ファージディスプレイのような、慣用でないプロセスによって得られる抗体を含む。本発明の抗体はいずれのイソ型(たとえば、IgA、IgG、IgM、すなわち、α、γまたはμ重鎖)からなることもでき、そしてκまたはλ軽鎖を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】図1は単一分析成分だけが使用される場合の一般的方法を図解して説明する。
【図2】図2は異なる分析成分が支持体上の異なるパッチに固定化される場合の一般的方法を図解して説明する。
【図3】図3は移動基質が使用される場合の本発明の一般的方法を図解して説明する。
【図4】図4は試料の任意の(図4A)および任意でない(図4B)空間配置の生成を説明する。
【図5】図5はシグナルの空間配置が試料の空間配置とどのように相関しうるかを説明する。
【図6】図6は本明細書実施例1で使用されるデバイスを図解して説明する。
【図7】図7は本明細書実施例1で使用される2枚のスライドの走査画像を示す。
【図8】図8は本明細書実施例1で使用される2枚のスライドの領域をより詳細に示す。
【図9】図9は本明細書実施例2で使用されるデバイスを図解して説明する。
【図10】図10は本明細書実施例2で使用される2枚のスライドの走査画像を示す。
【図11】図11は本明細書実施例3で使用されるデバイスを図解して説明する。
【図12】図12は本明細書実施例3で使用されるスライドの領域を詳細に示す。
【図13】図13は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域を示す。
【図14】図14は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域を示す。
【図15】図15は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域を示す。
【図16】図16は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域をより詳細に示す。
【図17】図17は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域をより詳細に示す。
【図18】図18は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域をより詳細に示す。
【図19】図19は本明細書実施例8で使用されるスライドの領域を示す。
【図20】図20は本明細書実施例9で使用されるスライドの領域を示す。
【図21】図21は本明細書実施例10で使用されるスライドを示す。
【図22】図22は透過性支持体を含む、可能なデバイスを図解して説明する。
【図23】図23Aは、実施例12で使用されるプローブ適用パターンを図解して説明する。図23Bは、実施例12における10秒暴露の結果を説明する。
【図24】図24Aは、実施例13で使用されるプローブ適用パターンを図解して説明する。図24Bは、実施例13で使用される試料適用パターンを図解で説明する。
【図25】図25Aは、ハイブリダイゼーション後であるが、逆転写前の、実施例13で使用されるスライドの走査画像を示す。図25Bは、ハイブリダイゼーションおよび逆転写後の実施例13で使用されるスライドの付加的な走査画像を示す。図25Cは、ハイブリダイゼーション、逆転写およびSDS溶液中で一晩混合後の、実施例13で使用されるスライドの付加的な走査画像を示す。
【図26】実施例14で使用される試料適用パターンを図解して説明する。
【図27】実施例14における異なる暴露の結果を示す。
【実施例】
【0160】
実施例1:個々の細胞の分析
予備実験を実施し、個々の試料、とりわけ個々の細胞が支持体に適用されて試料の空間配置を生み出しうること、および試料の空間配置がその後の操作および分析ステップ中に維持されうることを確証した。
物質と方法
オリゴdT30ガラススライドは、1μl(100μM)オリゴdT30を100μlのリン酸バッファー(pH9.0):DMSOの1:1混合物に添加することにより調製した。オリゴおよびカップリングバッファー混合物は、21mmx40mmx0.1mmHybriwellチャンバー(Sigma)を使用してNHS誘導体化スライド(Scott)に適用した。オリゴは15分間スライドに結合させた。Hybriwellチャンバーは除去し、スライドは蒸留水で5分間洗浄した。陰性対照スライドはオリゴの3′結合により調製した。
【0161】
マウス骨髄腫懸濁液(非接着性)細胞系統が使用された。3000細胞/μlの懸濁液は反復した遠心分離および1xPBS中での洗浄により調製した。細胞は20%のPEG2000および20%のPEG200と混合した。PEG200を使用して支持体表面の疎水性に起因する細胞の凝集を妨げた。PEG2000を使用してポリマー排除による横方向の拡散を妨げた。
【0162】
いくつかの態様では、プロナーゼが1mg/mlで細胞懸濁液に添加された。プロナーゼはエンド−およびエキソ−プロテイナーゼの混合物であり、ほとんどすべてのペプチド結合を開裂することが可能である。
【0163】
0.5μlの細胞懸濁液はスライド上に散布し、乾燥させた。細胞懸濁液中にプロナーゼを含む細胞はスライドの左側に散布した。細胞懸濁液中にプロナーゼを含まない細胞はスライドの右側に散布した。
【0164】
水中に10%ポリアクリルアミド(19:1)の100mmx100mmx1mmのポリアクリルアミドゲルパッドを注ぎ、凝固させた。約5mmx5mmの長方形ゲルが切断され、1%SDS溶解バッファー(1%SDS、3xSSC)に少なくとも30分間浸漬させた。
【0165】
透析膜を試料細胞に接触して置き、標的分析物の垂直方向の拡散を最少化させた。ゲルパッドはセルロースニトレート膜に接触して置き、膜を通して溶解バッファーを拡散させて細胞と接触させた。ガラススライドはゲルパッドの先端に置き、ゲルパッド、膜、および試料細胞間で十分に液体接触させた。組み立てられたデバイスは図6に図解して説明する。
【0166】
組み立てられたデバイスは50℃で30分間インキュベーションし、細胞タンパク質のプロナーゼによる消化を促進させた。次にデバイスは室温で30分間インキュベーションし、細胞mRNAをオリゴdT結合試薬にハイブリダイゼーションさせた。インキュベーションステップ後、スライドは洗浄し、結合したmRNAは100μl反応容量中で逆転写された。Hybriwellチャンバーはそれぞれのスライドに適用し、50℃でインキュベーションし、その後逆転写ミックスを適用した。100μl逆転写ミックスには:水(63.6μl)、5xFSバッファー(20μl)、RNasin(1μl)、0.1M DTT(10μl)、25mM dNTPミックス(0.4μl)、CY3 dCTP(1μl)SuperscriptIII酵素(4μl)が含まれた。反応物は50℃で30分間インキュベーションした。その後スライドは洗浄し、Agilent G2563BAスキャナーでスキャンした。
結果
オリゴdTおよび陰性対照スライドの走査画像は図7に示す。
【0167】
図7のオリゴdTスライドの右側を見ると、明らかに個々の細胞に由来するシグナルに対応する多数のスポットが見られる。しかし、スポットは図7の陰性対照スライドの右側
にも見られ、このことはスポットの一部は非特異的シグナルに起因することを示唆する。非特異的シグナルは細胞タンパク質と色素の相互作用から発生する可能性があると見なされた。従って、実験の第2シリーズでは、プロナーゼ処理した細胞が分析された。図7の左側を見ると、プロナーゼの添加が観察される非特異的シグナルの顕著な減少を提供することを明確に認めることができる。2つのスライドの左および右側の領域は図8により詳細に示される。その図は、プロナーゼの添加が観察される非特異的シグナルの顕著な減少を提供することをさらに説明する。
【0168】
図8のプロナーゼ処理した細胞のオリゴdTコーティングスライド上で見られた特徴は、オリゴ結合mRNAのプライマー伸長に由来する特異的シグナルである可能性がある。幅8〜10ピクセル(幅40〜50μm)の等しいサイズの画像が観察され、強度は細胞内容の分散が限定された、単一細胞の10μmの転写物の検出と一致した。
結論
これらの実験は、支持体上に細胞の空間配置が生み出され、細胞の空間配置を維持しながら細胞が分析されうることを説明する。これらの実験は、mRNAのような特有の細胞標的分析物の分析の場合、タンパク質のような他の試料成分の除去が非特異的シグナルを減らすために必要であってもよいことを示唆する。
実施例2:溶解の時間経過
別の一連の実験を実施し、観察されたシグナルに対して溶解の時間経過を変化させる効果を検討した。実施例1に記載されたものと類似のデバイスが使用された。
【0169】
実施例1と同じように、マウス骨髄腫懸濁液(非接着性)細胞系統が使用された。これらの実験の細胞懸濁液には20%のPEG2000、20%のPEG200、および1mg/mlプロナーゼ中に3000細胞/μlが含まれた。3μlの細胞懸濁液はオリゴdTスライドに散布し、乾燥させ、透析膜で覆った。2つの同一のオリゴdTスライドが調製され、1つは逆転写酵素を省くことにより陰性対照として使用した。それぞれ2つのオリゴdTスライドの上で、実施例1と同じように4つの別個のポリアクリルアミドゲルパッドを使用して、20分間、55分間、1時間30分または1時間45分、細胞を溶解した。インキュベーションステップ後、スライドは逆転写およびスキャニングにより実施例1に記載のように分析した。
【0170】
組み立てられたデバイスは図9で図解して説明する。2枚のスライドの走査画像は図10に示す。
【0171】
逆転写酵素を含むスライドの場合、20分間溶解後に観察されたシグナルが55分間溶解後のそれより高かったことを除いて、シグナル強度は溶解時間が減少するに従って減少することが見いだされた。これはおそらく、20分後の細胞タンパク質の不完全な消化から発生する非特異的シグナルに起因する。
【0172】
逆転写酵素が添加されていない対照スライド全面にわたり、シグナルはほとんど観察されなかった。
【0173】
従って、これらの実験は完全に細胞を溶解し、標的分析物を捕捉し、そして細胞成分を消化させるためにはより長いインキュベーション時間が好ましいことを示唆する。
実施例3:コロジオンの使用
この実験では、実施例1のデバイスで使用される透析膜がコロジオンの薄膜に置き換えられた。コロジオンはエーテルまたはアセトン中のニトロセルロースの溶液で、時にはアルコールが添加され、そして一般にパイロキシリン溶液と表される。
【0174】
100μlのコロジオンはスライドの一方の末端にピペットにより添加し、その後スライド全体に広げられた。インキュベーションステップ後、スライドは洗浄し、コロジオンは少量のMgCl2を含むアセトン中でスライドを洗浄することにより除去し、結合した
mRNAは他の部分に記載のように逆転写された。
【0175】
この実験で使用される組み立てられたデバイスは図11に図解して説明する。画像は図12に示したスライドの部分を捕らえた。この実験では、個々の細胞から発生した画像は比較的小さく、コロジオンは細胞内容の横方向の拡散を妨げることにおいて効果的であるように見える。とりわけ、図12では、画像は15μmの細胞サイズに対して20〜25μmであり、細胞内容の広がりはほとんど起きなかったことを示す。
実施例4:他の実験
また、細胞の空間配置の生成および維持、標的分析物の検出ならびに偽陽性の減少に影響を与える因子を検討するために他の実験が実施されている。
【0176】
実験の1つでは、ポリアクリルアミドゲルパッドはスライドの表面上に散布されている細胞に直接適用し、空気乾燥させた。別の実験では、細胞は溶融した低いTmのアガロースと混合し、スライドの表面上に薄い層として散布され、その後ポリアクリルアミドゲルパッドがアガロースに直接適用された。別の実験では、細胞はセルロースニトレート膜に散布され、細胞が適用された膜の面はスライドの表面に置かれ、ポリアクリルアミドゲルパッドは膜の他の面に置かれた。それらの実験の結果も、細胞の空間配置が支持体上で生み出され、細胞の空間配置を維持しながら細胞内容が分析されうることを確証する。
【0177】
いくつかの実験では、Triton溶解バッファー(320mM スクロース、5mM
MgCl2、10mM Hepesバッファー、1% Triton X−100、0.2% トリパンブルー染料)をSDS溶解バッファーの代わりに使用した。Triton溶解バッファーはSDSバッファーが使用された場合に生み出されたものとおおよそ等しい結果を生むことが見いだされた。
実施例5:個々の細胞の付加的な分析
この実施例は、個々の細胞の空間配置が支持体上に生み出され、細胞の空間配置が確認され、そして分析ステップで観察されたシグナルの空間配置が個々の細胞の空間配置と相関しうることを証明する。
物質と方法
実施例1と同じように、5′‐固定化オリゴdT30でコーティングしたガラススライドが使用された。実施例1と同じように、マウス骨髄腫懸濁液細胞系統が使用された。この実験では、細胞は80% MeOHを使用してスライドに固定された。スライドは予め(65℃に)温められた。MeOHは予め温められたスライドから速やかに蒸発し、スライドの表面に最も少ない凝集で細胞を固定した。およそ50,000の細胞がスライド上にピペットで移された。この実験では、PEG2000またはPEG200は全く使用されなかった。スライドに固定した後、細胞はコーティング(ピペッティングおよび散布)、またはエアロゾル噴霧のいずれかにより、10mg/mlプロナーゼで覆われた。
【0178】
スライドは、英国特許出願第GB0618131.7号およびGB0618133.3号に記載のように、専有の高解像度レーザースキャナー(130nmピクセル解像度)でスキャンされた。
【0179】
その後細胞は、(実施例1と同じように)ポリアクリルアミドゲルパッチを使用してSDS溶解バッファー中で溶解され、遊離されたmRNAは支持体に捕捉された(50℃で1時間)。捕捉されたmRNAはその後、先のように固定化されたオリゴdT30プライマーから逆転写された。スライドは同じ高解像度レーザースキャナーを使用して再びスキャンされ、蛍光逆転写生成物が確認された。
結果
図13は、明視野顕微鏡によって観察された、プロナーゼ処理前(図13A)および後(図13B)のスライド上の細胞の空間配置を説明する。細胞配置の比較を補助するため
に三角形のアラインメントガイドを示す。それらのアラインメントガイドによって強調されるように、スライド上の細胞の空間配置はプロナーゼ処理後に維持される。
【0180】
図13はまた、明視野顕微鏡を使用して支持体上の個々の細胞の空間配置を確認できることを説明する。
【0181】
図14は、明視野顕微鏡(図14AおよびC)または高解像度レーザースキャニング(図14BおよびD)によって観察された、プロナーゼで処理された、およびプロナーゼで処理されない、スライド上の個々の細胞の空間配置を示す。対角線より上の領域はプロナーゼ処理でされなかった(図14AおよびB)。対角線より下の領域はプロナーゼで処理された(図14CおよびD)。半円形のアラインメントガイドは図14CおよびDに示され、細胞配置の比較を補助した。それらのアラインメントガイドによって強調されるように、支持体上の個々の細胞の空間配置は、プロナーゼ処理およびレーザースキャニング後に維持される。プロナーゼの添加後、個々の細胞は自己蛍光により明確に目に見える(図14D)。従って、プロナーゼの添加は自己蛍光による個々の細胞の空間配置の確認を促進し、その上非特異的シグナルを減らす(実施例1を参照されたい)。
【0182】
図15は、明視野顕微鏡(図15A)または高解像度レーザースキャニング(図15BおよびC)によって観察された、支持体上の個々の細胞の空間配置を示す。図15Bはプロナーゼ処理した細胞の自己蛍光を示し、一方図15Cは捕捉されたmRNAの逆転写後に観察された蛍光シグナルを示す。アラインメントガイドは図15に示し、細胞配置の比較を補助する。それらのアラインメントガイドによって強調されるように、支持体上のmRNAの空間配置は逆転写中に維持され、その結果、図15Cで観察された蛍光シグナルの空間配置は図15AおよびBにおける個々の細胞の空間配置と容易に相関させることができる。
【0183】
図16は、この実施例で使用されるプロトコルのそれぞれのステージにおけるスライドの領域のより詳細な視野を示す。図16Aは、オリゴdT30結合前のブランクガラススライドを示す。図16Bは、オリゴdT30結合後のスライドを示す。図16Cは、細胞が固定された後のオリゴdT30にコーティングされたスライドを示す。図16Dはプロナーゼ添加後のスライドを示す。図16Eは細胞が溶解された後のスライドを示す。図16Fは固定化されたmRNAの逆転写後のスライドを示す。この一連の画像により説明されるように、プロナーゼの添加は、固定化された細胞の観察された自己蛍光の原因となる(とりわけ、図16Dを参照されたい)。プロナーゼで処理した細胞の自己蛍光は細胞溶解後に失われる(図16E)。
【0184】
図16によって説明されるように、個々の細胞の空間配置が支持体上で生み出され、細胞の空間配置が確認され、そして分析ステップで観察されたシグナルの空間配置は試料の空間配置と相関させることができる。
結論
これらの結果は、実施例1〜4の結果を強固にし、そして個々の細胞の空間配置が支持体上で生み出され、細胞の空間配置が確認され、そして分析ステップで観察されたシグナルの空間配置が試料の空間配置と相関しうることをさらに確証した。
実施例6:標的分析物分散の分析
この実施例は細胞溶解後の標的分析物分散を検討する。図17は、実施例5で観察された2つの細胞(AおよびB)の蛍光シグナルの詳細な分析を示す。その図で説明されるように、細胞溶解後の試料フットプリントにおいて3〜4倍の増大(15〜20μmから50〜80μmまで)がある。これらの結果は、溶解後の標的分析物重複を妨げるためにそれぞれ個々の細胞によって必要とされる最少面積はおよそ100μm2であることを示唆する。本発明の付加的な最適化後には、より小さい最少面積が可能である。
実施例7:単一mRNA分子の検出
この実施例は、支持体が高解像度レーザースキャナー(130nmピクセル解像度)によりスキャンされる場合、実施例5における手順が単一mRNA分子の検出を可能にすることを証明する。図18Aは、支持体の250μmx250μmの領域で観察された蛍光シグナルを示し‐個々の細胞が区別されうる。図18BおよびCは、個々の細胞に由来するmRNAの逆転写後に観察された蛍光シグナルの詳細な分析を示す。図18Bは、10μmグリッドオーバーレイにより、単一細胞から観察された蛍光シグナルを示す。図18Cは図18B内の単一分子解像の領域を示す。図18Cの蛍光強度プロットによって強調されるように、連続した4つの個々の蛍光分子がおよそ1μmの間隔で観察された。それらの観察されたシグナルは4つの個々のmRNA分子の逆転写に由来する。従って、本発明の方法は、単一mRNA転写物の検出を可能にする。これは、遺伝子‐特異的分析成分を使用した特異的mRNAの検出にとりわけ有用である(以下の実施例8を参照されたい)。
実施例8:特異的mRNAの検出
この実施例では、オリゴdT30でスライドをコーティングするかわりに、スライドをArbpハウスキーピング遺伝子に特異的な50‐マーオリゴヌクレオチドによりコーティングした以外は、実施例5の手順に従った。従って、この実施例では、支持体を使用して全細胞mRNAよりむしろ、特異的転写物を検出した。図19Aは支持体の250μmx250μmの領域で観察された蛍光シグナルを示す。個々の細胞から観察されたシグナルは図19Aでは丸で囲まれる。図19Bは、10μmグリッドオーバーレイによる、単一細胞に由来する遺伝子‐特異的逆転写物の検出を示す。この実施例は本発明の方法が、遺伝子‐特異的分析成分を使用した特異的mRNAの検出に使用できることを証明する。実施例9:最適試料密度の計算
図20は、細胞が500細胞/mm2の密度で負荷された後、ガラススライドに固定されたマウス骨髄腫細胞の自己蛍光細胞マップを示す。(実施例5と同じように)細胞を固定し、高解像度レーザースキャニング後、自己蛍光細胞マップは111細胞/mm2を明らかにする。この分析は、実施例5の手順に従った場合、最大細胞負荷密度は、およそ100細胞/mm2になるべきであることを示唆する。
実施例10:試料スポッティング
先の実施例では、個々の細胞は支持体に適用されて細胞の任意の空間配置を生み出した。この実施例では、RNA試料はオリゴヌクレオチドプローブの大きなパッチ上の既知の位置にスポットされ、任意でない試料の空間配置を生み出した。
【0185】
5′‐NH2を持つ、ポリA(すなわち、オリゴdT)、HPRTに対するmRNA、ならびに大腸菌K12およびO157系統の16SリボソームRNAに相補的なオリゴヌクレオチドは、カバースリップ下にオリゴヌクレオチド溶液を適用することにより、図21に示すパターンで、NHSエステル誘導体化ガラススライドに結合させた
培養したマウスリンパ母細胞から、および大腸菌K12から抽出されたRNAは、3xSSCに約1.5mg/mlの濃度で溶解した。それぞれのRNA溶液1μlは384ウェルマイクロタイタープレートの中の2つのウェルにピペットで移した。試料は、Schleicher and Schuell手動スポッターを使用して、ピン間隔9mmでプローブのパッチに適用した。図21に示すように、マウスRNAは文字「M」のパターンで、そして大腸菌RNAは文字「C」のパターンで、全部で4つのパッチ全体にわたって適用された。溶液は室温で乾燥させ、スライドは−20℃に冷却した。次にそれらは、実施例5に記載のように、洗浄され、cDNAがin situで合成され、Cy3ラベルされたdCTPを組み込んだ。スライドのスキャン(図21)は、マウスRNAが特異的に捕捉され、オリゴdTおよびHPRTパッチ上に逆転写され、そして大腸菌RNAは16Sオリゴヌクレオチドパッチ上に逆転写されることを示す。
【0186】
従って、この実施例は、試料が任意でなく支持体に適用されて、任意でない試料の空間配置を生み出しうること、および試料の空間配置がその後の操作および分析ステップの間
中維持されうることを証明する。
【0187】
実施例11:膜上での増幅
本発明者らによって予想されるいくつかの態様では、デバイスの使用中に、使用される試薬に透過性の物質を使用して支持体が構築される。そのような支持体はいくつかの態様では好都合であり、なぜならそれらは、試薬が支持体を通過することを可能にし、そのことが細胞捕捉、細胞溶解、標的分析物捕捉および/または標的分析物の分析を促進してもよいからである。
【0188】
可能な配置は図22Aに図解して説明し、その中でデバイスはデバイス中に形成されるチャンバー内に配置される(固定化された分析成分を持つ)透過性支持体を含む。デバイスは、試薬を添加する、および/または除去するための1以上の注入口および/または排出口をさらに含んでいてもよい。注入口および/または排出口の使用は支持体への試薬の適用、および支持体からの試薬の除去を促進する。図22Aでは、デバイスは2つのそのような出入り口を含み、そして透過性支持体は、1つの出入り口が支持体の第1の面とコミュニケーションし、他の出入り口が支持体の第2の面とコミュニケーションするように、チャンバー内に配置される。このことは、出入り口の1つを注入口(すなわち、支持体に試薬を適用するため)として使用させ、他の出入り口を排出口(すなわち、支持体から試薬を除去するため)として使用させる。この型の配置を使用して試料と試薬を容易にデバイスに適用し、そして(たとえば、注入または吸引により)デバイスから除去することができる。
【0189】
また、図22Aのデバイスは蓋を含み、使用中に、蓋を使用してデバイス内に試薬を保持することができる。蓋はデバイスの一部分を成すが、(図22Aおよび図22Bのように)標的分析物を容易に検出させるために除去可能であってもよい。デバイスが蛍光による検出に使用されることになる場合、蓋および/またはデバイスの他の構成要素は蛍光検出に使用される励起及び発光波長に透過性であってもよく、そしてこれらの波長において低い固有の蛍光を有していてもよい。
【0190】
図22に示す配置では試薬は注入口を通って透過性支持体に適用され、排出口を通ってデバイスから除去されうる。たとえば、細胞の懸濁液はデバイスに適用され、そして細胞は透過性支持体物質に捕捉されうる(図22B)。次に溶解溶液が適用されて捕捉された細胞を溶解し、そして個々の細胞に由来する標的分析物を支持体の異なる部分にハイブリダイゼーションさせることができる。その後、異なる個々の細胞における標的分析物の存在は適切な方法によって分析することができる。
【0191】
透過性支持体を含むデバイスと一緒に使用してもよい検出方法を検討するために、膜に閉じ込められたDNAが「Multiple Displacement Amplification」(MDA,Qiagen)により増幅されうるかを確定するための実験が実施された。予備実験が実施され、MDAに使用されるポリメラーゼ酵素が膜によって阻害されないことを示した。
【0192】
大腸菌K12DNAは15ml L‐ブロス中で一晩培養した細胞から調製された。細胞は遠心分離により集め、1ml PBSに再懸濁した。50μl リゾチーム(10mg/ml)が添加された。細胞は遠心分離により集め、300mM NaOAcに再懸濁し、SDS2%にし、30分間60℃に保った。フェノールにより1回、クロロホルムにより2回抽出後、水層が抜かれ、DNAは1容積のi−プロパノールの添加後、巻き取られた。80% EtOHで洗浄後、DNAは100μl TEに溶解した。DNAの理論的収率は25μgである。大腸菌K12ストックは1mg/mlであった。
【0193】
ストックはREPLI−g変性溶液(Qiagen)およびREPLI−g中和溶液(Qiagen)中2.5:10に希釈された。0.2μlのDNA溶液はナイロンおよびセルロースニトレート片(約1mmx6mm)に適用された。MDA Master Mix(MM)は取り扱い説明書(Qiagen)に従って作製された。およそ15μlのMMはそれぞれの細片に適用され、細片は湿ったチャンバー中、30℃でインキュベーションした。ナイロン細片は約1.5時間後に乾燥しているように見えた。水がナイロンおよびセルロースニトレート細片の両方に添加された。
【0194】
他の関連する実験も実施され、その中では0.2μl大腸菌DNAミックスを負荷した膜細片(約1mmx6mm)は試験管内の5μlのMMに浸漬した。対照試験管はDNAおよび膜を全く含まなかった。増幅反応は16時間および68時間後に、4μl溶液に1μlの停止溶液を添加することにより停止した。反応生成物は1%アガロースゲルに適用された。ミックスにより湿らされている細片はゲル負荷スロットに挿入された。
【0195】
結果は、セルロースニトレートがおそらく酵素を吸着することにより増幅を阻害するが、ナイロンは反応を阻害しないことを示唆する。ナイロンに結合した1本鎖DNAは高収率で増幅され、大部分の増幅された産物はナイロン上に残される。
【0196】
この実施例は、個々のDNA分子が膜上in situで増幅できることを証明することから、透過性基質と一緒に非常に感度の高い検出方法が使用可能なはずである。捕捉された標的分析物のin situでの増幅は、たとえばリボソームRNAよりむしろ単一コピー遺伝子からの細菌タイピング、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、単一ヌクレオチド多形(SNP)検出および単一分子シークエンシングのような広範な役に立つ適用を可能にするはずである。
実施例12:膜上での逆転写
先に言及したように、本発明者らによって予想されるいくつかの態様では、デバイスの使用中に使用される試薬に透過性の物質を使用して支持体が構築される。透過性支持体を含むデバイスと一緒に使用してもよい検出方法をさらに検討するために実験が実施され、透過性支持体に固定化されたプローブにハイブリダイズしたRNAの逆転写を検討した。物質&方法
それぞれ5′−NH2末端を持つ、HPRTに対するmRNAの3′末端、および大腸菌K12系統の16SリボソームRNAに相補的なプローブが使用された。これらの実験では、HPRT‐Endプローブは陽性対照として、そしてC1プローブは陰性対照としての役割を果たす。プローブの配列は以下のとおりであった:
HPRT‐End
5′[アミノC6]TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT
TTT TTT AAT TTT TAG CAT TTA TTT ATT TGC
ATT TAA AAG GA3′(65マー)
K12 16S rRNAに相補的なC1プローブ
5′[アミノC6]TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT
TTT TTT TGT TCC CGA AGG CAC ATT CT3′(50マー)
7つの異なる透過性支持体物質:ポリアミド、ナイロン、ニトロセルロース、Durapore GVHP、イモビロンPSQ、イモビロンPおよびイモビロンFLが試験された。それぞれの膜物質はおよそ1cmx2.5cmの大きさに切断された。PVDF膜(GVHP、イモビロンPSQ、イモビロンPおよびイモビロンFL)は初めにメタノール、その後TEバッファー(10mM Tris/HClおよび1mM EDTA)で湿らせ、一方他の膜は直接TEバッファーで湿らせた。PVDF膜は疎水性が非常に高く、予め湿らせないと水性溶液で湿らないため、メタノールで予め湿らせた。その後膜はTEバッファー中で湿らせた組織上に置かれ、プローブが適用された。
【0197】
とりわけ、TEバッファー中に濃度5μMの2つのプローブが作られ、その後2つの0.2μlのそれぞれのプローブが図23Aに示すパターンで7種の膜のそれぞれに適用された。その後プローブは、Stratalinkerクロスリンカー(Stratalinkerは10分間温め、その後湿った組織上のStratalinkerに膜が置かれた)を使用して、2分間膜にクロスリンクさせた。クロスリンク後、膜は15mlのFalconチューブ(Falcon毎に3または4種の膜)に入れ、55℃の回転インキュベーター中、5xSSPE/0.5% SDSで30分間洗浄した。
【0198】
これらの実験においてプローブに適用された標的は、長さおよそ1250塩基のマウスHPRT mRNAのラベルされないin vitro転写物(IVT)であった。HPRT IVTはEpicentre AmpliCap T7 High Yield Messenger Maker Kitを使用して調製された。in vitroでの転写後、Qiagen RNeasy MinElute Spin Columnを使用してRNAを取り除いた。
【0199】
20mlのハイブリダイゼーションバッファー(参考文献22)は50mlFalconチューブ中に作製された。10.2μlのラベルされないHPRT IVTは20mlのハイブリダイゼーションバッファー(2ug/10ml)に添加された。次に5xSSPE/0.5% SDSはそれぞれのFalconチューブから除去され、10mlのハイブリダイゼーションバッファーはそれぞれのFalconチューブに添加された。チューブは回転インキュベーター中に、45℃で1時間入れられた。インキュベーション後、ハイブリダイゼーションバッファーは除去され、10mlの1xFSバッファー(5x=250mM Tris−HCl、15mM MgCl2および375mM KCl)がそれぞれのFalconチューブに添加された。その後、Falconチューブは逆転写の用意ができるまで回転シェイカーに入れられた(約10分間)。
【0200】
逆転写はニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素を使用して実施された。500μlの逆転写ミックスは以下のように作られた:428μl 水、50μl 10xAMV 逆転写酵素反応バッファー(New England Biolabs、1x=50mM Tris−HCl、75mM 酢酸カリウム、8mM 酢酸マグネシウムおよび10mM DTT)、5μl RNasin、5μl ビオチン dUTP、2μl 25mM dNTP、および10μl AMV逆転写酵素(New England Biolabs、MO277S 10000ユニット/ml)。膜はFalconチューブから除去され、それぞれの膜は、3つの面が熱シールでシールされた、小さなプラスチック容器(すなわち、それらは一面だけ開かれたままであった)に入れられた。70μlの逆転写ミックスがそれぞれの膜に添加され、その後容器はヒートシーラーを使用してシールされ、インキュベーターに42℃で1時間入れられた。
【0201】
インキュベーション後、膜はプラスチック容器から除去され、ペトリ皿(1つのペトリ皿に7種の膜すべて)、25mlの洗浄バッファー(参考文献22)が添加され、そして膜はシェイカー上で5分間洗浄された。洗浄バッファーはその後除去し、第2の洗浄バッファー(参考文献22)と交換し、そして膜はさらに5分間洗浄された。第2の洗浄バッファーはその後除去し、PBS/0.1% Tweenと交換し、そして膜は5分間洗浄された。PBS/0.1% Tweenは新しいPBS/0.1% Tweenと交換し、そしてその後膜はさらに5分間洗浄された。
【0202】
ストレプトアビジン‐ホースラディッシュペルオキシダーゼは膜に結合させた。PBS/0.1% Tween(50ml中1g)中2%のブロッキングバッファー(ECL Advance Western Blotting Detection Kit:G
E RPN2135に由来する)が作られ、必要になるまで4℃に保たれた。PBS/0.1% Tweenは除去され、ペトリ皿毎に25mlのブロッキングバッファーと交換された。皿はその後1時間振り混ぜられた。別の25mlのブロッキングバッファーに、5μlのECLストレプトアビジン‐ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(GE:RPN1231に由来する)が添加され、その後古いブロッキングバッファーは除去され、ストレプトアビジンを含むブロッキングバッファー25mlが添加された。膜はシェイカー上で1時間、ストレプトアビジン‐HRP溶液中でインキュベーションした。溶液を捨て、膜は回転ミキサー上で15分間、25mlのPBS/0.1% Tween中で洗浄された。その後PBS/0.1Tweenを捨て、新しいPBS/0.1%
Tweenと交換し、膜は回転ミキサー上でさらに15分間洗浄された。ここで膜は化学ルミネセンス検出の用意ができた。
【0203】
化学ルミネセンス検出はECL Advanceにより実施した。検出試薬は開封前に室温まで平衡化させた。1mlの検出溶液Aは、1mlの検出溶液Bと混合した(ECL
Advance Western Blotting Detection Kit:GE RPN2135に由来する)。過剰な洗浄バッファーは膜から汲み出し、その後膜はサランラップの1片にオリゴ面を上にして平らに置いた。100μlの混合検出溶液は湿った膜のそれぞれの上に適用し、その後膜は室温で5分間インキュベーションした。過剰な検出溶液は膜をピンセットでつかみ、組織のそばに端を触れることにより汲み出された。その後膜はプラスチック片上にオリゴ面を下に向けて置き、プラスチックは折りたたみ、膜は完全に平らになってプラスチックに包まれるように、シールされた。シール前に空気泡を注意深く取り除いた。
【0204】
検出はBiomax XARフィルムを使用して実施した。シールした膜は、オリゴ面を上にして、カセットの片側半分の上に置いた。カセットは暗室に持って行き、7種の膜の上面に1つのフィルムを置き、10秒間曝し、その後除去した。フィルムは現像液(Sigma製、水で5倍希釈したものを500ml)に1分間入れ、その後水で5〜10秒間すすいだ。フィルムは固定液(Sigma製、水で5倍に希釈したものを500ml)に1分間入れた。その後フィルムを除去し、水で完全に洗浄し、一晩つるして乾燥させた。このプロセスは5秒間および30秒間暴露時間に対して反復された。
結果と結論
10秒間暴露の結果は図23Bに示す。5秒間および30秒間暴露時間の結果は実質的に同じであった。これらの結果は、逆転写が、ニトロセルロースおよびGVHP上でAMV逆転写酵素を使用することにより十分に行われ、そしてイモビロン‐Pおよびイモビロン‐FLを使用することによりやや劣って行われることを示唆した。従って、これらの結果はRNA分子が膜上、in situで逆転写できることを確証するから、感度の高い検出方法が透過性支持体と一緒に使用できるはずである。結果はまた、透過性物質を使用して支持体を構築する場合、特定の支持体物質の選択が、使用されるべき検出方法に影響を与えてもよいという実施例11の発見を確証する。これらの実験は、透過性支持体上に固定化された分析成分にハイブリダイズした標的分析物が、標的分析物の空間配置を維持しながら、化学ルミネセンス法によって検出されてもよいことをさらに確証する。
実施例13:移動基質の使用
先に言及したように、発明者らにより予想されるいくつかの態様では、試料は初めに移動基質に適用されて、試料の空間配置を生み出し、その後標的分析物は移動基質から支持体まで移される。移動基質の使用をさらに検討するために、移動基質上の細菌細胞溶解、続く基質から支持体への標的分析物移動を検討するための実験が実施された。
物質&方法
これらの実験では、支持体はガラススライドであり、それは大腸菌K12系統の16S
rRNAのハイブリダイゼーションおよび逆転写、その後のCY3 cDNAの検出に使用された。支持体は図24Aに示すようにデザインされ、C1プローブ1パッチおよび
HPRTプローブ1パッチを有した。これらの実験は、実施例12と同じプローブを使用したが、今回はC1プローブを陽性対照とし、そしてHPRTプローブを陰性対照として使用した。
【0205】
ガラスNHS誘導体化スライド(Scott)はフリーザーから取り出し、室温まで温めてからケースを除いた。10μl C1オリゴ(100μM)は、90μlの1:1の0.2M リン酸バッファー(pH9):DMSOで希釈し、最終オリゴ濃度を10μMのとした。10μl HPRTオリゴ(100μM)は90μlの1:1の0.2M リン酸バッファー(pH9):DMSOで希釈し、10μMの最終オリゴ濃度を生じた。リフタースリップは2つに切断し、NHS誘導体化スライドとリフタースリップ間のスペーサーとしてのカバースリップと共にスライドの上面に置いた。10μMのC1オリゴ100μlは左側のリフタースリップの眞下に適用した。10μMのHPRTオリゴ100μlは右側のリフタースリップの眞下に適用した。スライドは室温に30分間置き、オリゴをスライドに結合させた。結合の最後にスライドは水のペトリ皿に置き、表面の残部を非活性化した。スライドは水と共にFalconチューブに入れ、回転ミキサー上で30分間洗浄した。
【0206】
SDS/ポリアクリルアミドゲルは以下のように調製した。キャスティングジグは2枚の大きな顕微鏡スライドと2枚の小さな顕微鏡スライドにより調製し、ブルドッグクリップを使用してそれをあわせてつかんだ。ゲルミックス(1ml 水、625μl アクリルアミド、500μl 10% SDS、375μl 10xSSCバッファー、30μl 10% AMPSおよび5μl TEMED)を調製し、その後キャスティングユニットに適用し、気泡がないことを確かめた。ゲルはおよそ30分間放置して固まらせた。ゲルは使用直前にキャスティングユニットから除去した。
【0207】
大腸菌細胞は、以下のようにRNAハイブリダイゼーションに対して調製した。細胞3mlをLB培地7mlに添加し、その後37℃のインキュベーターに約2時間入れた。調製された培養物1mlを1.5mlのエッペンドルフチューブに取り、125μlの冷たいエタノール中の5%フェノールを添加した。チューブの内容は逆さにして混合して大腸菌を殺し、8.8rpmで2分間回転させた。上清を除去し、1xPBSを添加した。細胞は吸引により再懸濁し、その後8.8rpmで2分間回転させた。上清を除去し、1mlの1xPBSを添加した。大腸菌は再び吸引により再懸濁した。再懸濁した細胞は8.8rpmで2分間回転させ、上清を再び除去した。これらのステップは痕跡量のフェノールをすべて除去する。
【0208】
200μlの0.5mg/ml リゾチーム(10μlの10mg/ml ストック+190μlの1xPBSバッファー)を添加し、その後大腸菌細胞を吸引により再懸濁した。混合物は室温に3〜5分間放置し、細胞壁を消化させた。細胞はここで膜に適用する準備が整った。2片のニトロセルロース膜はスライド上にフィットするサイズに切断した。膜は熱いPBS中に5〜10分間入れた(PBSは水浴中で90℃に加熱した)。膜は熱いPBSから除去し、PBSに浸漬されている組織片上に置いた。4x1μlの細胞は、図24Bに示すパターンで膜のそれぞれに適用した。10mg/mlのプロナーゼ溶液2μlは膜上のそれぞれの試料の表面に適用した。
【0209】
スライドは45℃の熱いブロックに置いた。調製された膜は表面を下にしてスライドに適用し、その結果細胞は直接プローブパッチに接した。膜は成型されたポリアクリルアミドゲルで覆い、ブランク顕微鏡スライドは、図24Cのようにゲルの表面に置いた。組み立て品は30分間放置してハイブリダイゼーションさせた。スライドはその後熱いブロックから除去し、ゲルパッドおよび膜を除去した。スライドは洗浄バッファー(参考文献22)を含む50mlのFalconチューブに入れ、回転ミキサー上に置き、5分間洗浄
された。その後、スライドは50mlの第2洗浄バッファー(参考文献22)に移し、回転ミキサーに置き、5分間洗浄された。スライドはAxon GenePix 4000Bスキャナーを使用してスキャンされた(図25Aを参照されたい)。
【0210】
捕捉された16S rRNAは、CY3−dCTPを使用して逆転写された。250μlのRTミックス(水 159μl、5xFSバッファー 50μl、RNasin 2.5μl、0.1M DTT 25μl、25mM dNTPミックス 1μl、CY3−dCTP 2.5μl、SuperscriptIII酵素 10μl)が作られた。スライドは45℃の熱いブロックに置かれ、HybriWellチャンバーが表面に置かれた。250μlのRTミックスをスライドに適用し、その後HybriWellの表面はスライド上に置かれた。スライドは45℃で30分間インキュベーションされた。HybriWellチャンバーはスライドから除去し、そしてスライドはFalconチューブに入れた。50mlの洗浄バッファー(参考文献22)を添加し、回転ミキサー上で5分間混合した。スライドは新しいFalconチューブに移し、50mlの第2洗浄バッファー(参考文献22)を添加し、その後回転ミキサー上で5分間混合した。スライドはその後、Axonスキャナーを使用して再びスキャンした(図25Bを参照されたい)。スライドは、回転ミキサー上、一晩1% SDS溶液に入れ、再び、Axon GenePix 4000Bスキャナーを使用してスキャンされた(図25Cを参照されたい)。結果と結論
図25A〜Cから明らかなように、CY3 cDNAに由来する蛍光シグナルは、大腸菌細胞が適用されるニトロセルロース膜上の部分に対応する支持体の部分においてだけ観察された。細胞が移動基質に適用されるパターン(図24B)は蛍光シグナルパターンによって反映される(図25A〜C)。その上、CY3 cDNAに由来する蛍光シグナルは、C1プローブが存在する支持体の部分においてだけ観察され、シグナルが実際に大腸菌16S RNAの逆転写に由来することを確証する。言い換えると、プローブが移動基質に適用されるパターン(図24A)も蛍光シグナルパターンによって反映される(図25A〜C)。
【0211】
従ってこれらの実験は、試料が移動基質に適用されて試料の空間配置を生み出し、その後標的分析物の空間配置を維持しながら、標的分析物が移動基質から支持体まで移されうることを確証する。これらの実験はまた、本発明の方法およびデバイスが真核および原核細胞の両方に適用できることを確証する。
実施例14:膜化学ルミネセンスの付加的な検討
透過性支持体物質と一緒の化学ルミネセンス検出の使用を検討するための付加的な実験を実施した。
物質&方法
2枚のナイロン膜を切断し、顕微鏡スライド上にフィットさせた。膜はペトリ皿に置き、TEバッファーで湿らせた。膜は湿った組織上に置き、オリゴ適用のために湿気を保った。
【0212】
(実施例12および13と同じように)100μMのHPRT‐EndはTEバッファーで20倍に希釈し、最終濃度5μM(200μl TE中10μl)を得た。
【0213】
殺菌チューブ(UVランプ)ハウジングが調製された。殺菌チューブは使用前10分間スイッチを入れ、温めた。100μlのHPRT‐Endオリゴはそれぞれの膜に適用し、プローブで膜全体を覆った。膜は湿った組織上に置かれ、その後殺菌チューブハウジングに移され、プローブは2分間クロスリンクさせた。殺菌チューブはスイッチを切り、膜はハウジングから除去し、照射面を曝して50mlのFalconチューブに置いた。25mlの5xSSPE/0.5% SDSを添加し、膜は回転インキュベーター中、55℃で30分間、洗浄された。その後5xSSPE/0.5% SDSは廃棄された。
【0214】
これらの実験では、転写中にビオチン化ヌクレオチドを組み込むことによりIVTがビオチン化される以外は、ハイブリダイゼーションのためのHPRT IVT RNAは実施例12にと同じように調製された。ビオチン化IVTを使用し、以下の濃度:0.7ug/ul、0.6ug/ul、0.5ug/ul、0.4ug/ul、0.3ug/ul、0.2ug/ul、0.1ug/ul、および0.05ug/ulのRNAを、RNアーゼフリー水を使用して調製した。
【0215】
10mlのハイブリダイゼーションバッファー(参考文献22)が調製された。膜は50mlのFalconチューブに入れ、10mlのハイブリダイゼーションバッファーを添加した。膜は45℃で30分間、または必要なだけインキュベーションした。膜はペトリ皿中の温かいハイブリダイゼーションバッファーに浸漬されていた組織の表面に置かれた。それぞれの濃度3x0.5μlがカラムの膜上にスポットされた(図26を参照されたい)。
【0216】
ペトリ皿にふたをし、皿は30分間、45℃のインキュベーターに入れた。膜は除去し、Falconチューブに入れた。50mlの洗浄バッファー(参考文献22)を添加し、Falconチューブは回転ミキサーに置き、5分間洗浄された。膜は50mlの第2洗浄バッファー(参考文献22)に移し、回転ミキサー上でさらに5分間洗浄された。膜は50mlFalconチューブに表面を上にして置いた。50mlのPBS/0.1%
Tweenが添加された。Falconチューブは回転ミキサーに置き、15分間洗浄された。PBS/0.1% Tweenは新しいPBS/0.1% Tweenと交換し、膜はさらに15分間洗浄された。
【0217】
1mlの混合したECL Advance 検出溶液が湿ったナイロン膜のそれぞれに適用された以外は、化学ルミネセンス検出は本質的に実施例12に記載のように実施された。
結果&結論
試験したビオチン化IVTの濃度のすべては、基質としてHRPを使用して化学ルミネセンスにより検出可能であった(図27を参照されたい)。これらの実験は、透過性支持体に固定化された分析成分にハイブリダイズされた標的分析物は化学ルミネセンス法により検出されてもよいというさらに付加的な確証を提供する。これらの実験は化学ルミネセンス検出の限界を計算させた。化学ルミネセンス検出の限界は最適化システムの使用により高められることが期待される。要するに、これらの実験は、高度に発現された遺伝子は、最適下検出システムを使用してさえ、化学ルミネセンスにより検出されうることを示す。背面照射型CCDカメラでの近接検出のような高い外部量子収率を持つ、代わりとなる検出法はさらにより低い検出限界を提供し、低レベルで発現される遺伝子でさえ化学ルミネセンスにより検出させるべきである。
【0218】
本発明は例としてだけ記載されていて、詳細の改変が本発明の意図および範囲から逸脱することなく行われてもよい。
参考文献(それらの内容はすべて参照として本明細書に援用される)
[表2]
[1] Harrington et al., Curr. Opin. Microbiol., 2000, 3(3):285-91
[2] WO93/22480
[3] WO03/020415
[4] PCT/GB2004/004390
[5] 米国特許番号6,156,576
[6] Sims et al. (1998) Anal Chem 70:4570-7
[7] Prinz et al. (2002) Lab Chip 2:207-12
[8] Leffhalm et al. (2005) AKB 200.15 Di 17:00 Poster TU C. Berlin 2005, "Physik seit Einstein", Deutsche Physikalische Gesellschaft
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[10] WO2004/033629
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[12] Schmidt et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:2926-9
[13] Hesse et al. (2004) Anal Chem 76:5960-4
[14] WO00/25113. 米国公開特許番号2002/0030811も参照
[15] Lizardi et al. (1998) Nature Genetics 19, 225-232
[16] Demidov (2005) Encyclopaedia of Diagnostic Genomics and Proteomics 1175
[17] Dean et al. (2002) PNAS 99(8):5261-5266
[18] Lovmar & Syvanen (2006) Human Mutation 27(7):603-614
[19] Akhavan-Tafti et al. (1998) Clinical Chemistry 44(9):2065
[20] Rajeevan et al. (1999) J. Histochemistry & Cytochemistry 47(3):337-342
[21] Yin et al. (2005) Anal Chem 77:527-33
[22] Grainger D. C et al. (2005) PNAS Vol. 102 No. 49 17693-17698
【技術分野】
【0001】
本発明は試料分析の分野、とりわけ生物学的試料のパラレル分析に属する。
【背景技術】
【0002】
試料のパラレル分析は生物学的研究を含む多くの技術分野において重要である。パラレル分析のいくつかの公知の方法には、たとえばマイクロタイタープレートの異なるウェル中の異なる試料を分析することのような、パラレルで異なる試料を別個に分析することが挙げられる。他の公知の方法は、試料を一緒に分析するが、それぞれの試料によって生み出されたシグナルが確認できるように、異なる試料の差別的なラベリングを必要とする。DNAマイクロアレイは差別的にラベルされた試料の同時パラレル分析に使用されてきた(たとえば、参考文献1を参照されたい)。
【0003】
試料、とりわけ生物学的試料のパラレル分析のための新規な改善されたプロセスおよびデバイスに対する必要性が存在する。そのようなプロセスおよびデバイスを提供することが本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO93/22480
【特許文献2】WO03/020415
【特許文献3】PCT/GB2004/004390
【特許文献4】米国特許番号6,156,576
【特許文献5】WO2004/033629
【特許文献6】WO00/25113
【特許文献7】米国公開特許番号2002/0030811
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Harrington et al., Curr. Opin. Microbiol., 2000, 3(3):285-91
【非特許文献2】Sims et al. (1998) Anal Chem 70:4570-7
【非特許文献3】Prinz et al. (2002) Lab Chip 2:207-12
【非特許文献4】Leffhalm et al. (2005) AKB 200.15 Di 17:00 Poster TU C. Berlin 2005, "Physik seit Einstein", Deutsche Physikalische Gesellschaft
【非特許文献5】Przekwas et al. (2001 ) pages 214-217 of Modeling and Simulation of Microsystems. ISBN 0-9708275-0-4
【非特許文献6】Hie et al. (1994) Science 266:1018-21
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【非特許文献8】Hesse et al. (2004) Anal Chem 76:5960-4
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【非特許文献11】Dean et al. (2002) PNAS 99(8):5261-5266
【非特許文献12】Lovmar & Syvanen (2006) Human Mutation 27(7):603-614
【非特許文献13】Akhavan-Tafti et al. (1998) Clinical Chemistry 44(9):2065
【非特許文献14】Rajeevan et al. (1999) J. Histochemistry & Cytochemistry 47(3):337-342
【非特許文献15】Yin et al. (2005) Anal Chem 77:527-33
【非特許文献16】Grainger D. C et al. (2005) PNAS Vol. 102 No. 49 17693-17698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は試料、とりわけ生物学的試料のパラレル分析のためのプロセスおよびデバイスを提供する。本発明の方法では、試料は支持体上でそれらと分析成分を相互作用させることによって分析される。試料中の標的分析物は、試料が分析成分と相互作用する場合に検出される。
【0007】
本発明は複数の異なる試料を分析するためのプロセスを提供する。プロセスは、a)分析成分が固定化される支持体に試料を適用する;およびb)試料を分析成分と相互作用させて、試料の分析を可能にするステップを含む。試料は支持体の異なる部分に対してステップa)で適用されて、支持体上に試料の空間配置を生む。試料の空間配置はステップb)で維持されて、分析結果が個々の試料に一致することを可能にする。この一般的な研究方法は図1で図解して説明する。
【0008】
本発明の方法は、支持体上の試料の空間配置の作製および維持を含み、そのことはパラレル試料分析のための公知の方法に勝る利点を提供する。たとえば、本発明の方法は、同じ分析成分を使用して、複数の試料が分析されることを可能にし、その結果それぞれの試料は実質的に同じ処理および分析に供され、結果が直接比較される。その上、本発明の方法は異なる試料の差別的なラベリングを必要としない‐個々の試料が配置される支持体の部分は既知であるか、または確認することができ、それでそれぞれ個々の試料によって生み出されたシグナルは容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの態様では、異なる分析化合物は支持体上の異なるパッチに固定化される。それらの態様では、図2に図解して説明するように、同じ支持体を使用して複数の試料が複数の標的分析物に関してパラレルに分析されうる。
【0010】
本発明の方法は細胞、または細胞に由来する物質を含む試料のような、生物学的試料の分析に有用である。本発明の方法は個々の細胞または個々の細胞に由来する物質の分析にとりわけ有用である。
【0011】
一態様では、本発明は:a)分析成分が固定化される支持体に個々の細胞に由来する物質を適用する;およびb)物質と分析成分を相互作用させて、物質の分析を可能にするステップを含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのプロセスを提供する。異なる個々の細胞に由来する物質はステップa)において支持体の異なる部分に適用され、支持体上に物質の空間配置を生み、そして空間配置がステップb)で維持されて分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする。
【0012】
いくつかの方法では、図1で説明するように、試料は直接支持体に適用され、試料の空間配置を生み出す。従って、試料が細胞を含む生物学的試料である場合、支持体に試料を適用するステップa)は:(i)細胞を支持体に適用すること;その後(ii)細胞から物質を遊離することを含んでいてもよい。あるいは、ステップa)は:細胞から物質を遊離すること;その後(ii)遊離した物質を支持体に適用することを含んでいてもよい。細胞が個々に分析される場合、それぞれの細胞に由来する物質は支持体の異なる部分に適用されて、支持体上に物質の空間配置を生むことになる。物質の空間配置はステップb)で維持されて、その結果分析結果を個々の細胞に一致させることができる。そのような直接試料適用法は、それらが簡単なデバイスを使用し、そして少ない数の試料取り扱いステップを使用して実施することができるため、いくつかの態様では好都合である。
【0013】
いくつかの方法では、試料は初めに移動基質に適用されて試料の空間配置を生み出し、その後標的分析物は移動基質から支持体まで移される。移動基質が使用される場合、標的分析物の空間配置は、支持体への移動後に移動基質上の試料の初めの空間配置に一致し、そうして分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。この一般的な研究方法は図3で図解して説明する。
【0014】
そのような間接試料適用法はいくつかの態様では好都合であり、なぜなら試料が支持体に直接適用される場合、支持体上の試料の適切な空間配置を容易に生み出し、そして維持することがいつも可能ではないためである。その上、移動基質は、試料の他の成分の支持体への移動を妨害するか、または減らしながら、支持体に標的分析物を移すことによって、試料調製を補助してもよい。
【0015】
従って、本発明はa)試料を移動基質の異なる部分に適用して、移動基質上に試料の空間配置を生む;その後b)移動基質から分析成分が固定化される支持体まで標的分析物を移す;そしてc)標的分析物を分析成分と相互作用させて、試料の分析を可能にするステップを含む、複数の異なる試料を分析するためのプロセスを提供する。標的分析物の空間配置はステップb)およびc)において維持され、そのようにして分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。
【0016】
標的分析物の空間配置を維持しながら、標的分析物を移動基質から支持体まで移すことは、本明細書の他の部分に記載のような多様なやり方で成し遂げることができる。移動基質は支持体に接触して、またはそのごく近くに配置され、基質から支持体への標的分析物の移動を促進することができる。移動基質および/または支持体は移動基質から支持体への標的分析物の移動に好都合である条件に供されてもよい。たとえば、電位または磁場が移動基質および/または支持体に適用されるか、または試薬が移動試薬および/または支持体に適用されて、基質から支持体への標的分析物の移動を促進することができる。
【0017】
本発明はまた、本発明の方法において使用されるデバイスおよびキットを提供する。
【0018】
本発明のデバイスは、分析成分が固定化される支持体を含む。使用中、本発明のデバイスは分析成分が固定化される支持体を含み、支持体上に、分析成分を使用して分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする空間配置で複数の試料が配置される。
【0019】
従って、本発明は分析成分が固定化される支持体を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのデバイスを提供し、該支持体上に、分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に一致させることが可能になる空間配置で、複数の異なる個々の細胞に由来する物質が配置される。
【0020】
本発明はまた、(i)分析成分が固定化される支持体;および(ii)支持体と接触して、またはそのごく近くに位置する移動試薬を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのデバイスを提供する。
【0021】
本発明はまた、(i)分析成分が固定化される支持体;および(ii)分析成分を使用して分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする空間配置で、複数の異なる試料を支持体に適用するための物質アプリケ−ターを含む、複数の異なる試料を分析するためのキットを提供する。
【0022】
本発明はまた、(i)分析成分が固定化される支持体;および(ii)分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする空間配置で、複数の異なる個々の細胞に由来する物質を支持体に適用するための物質アプリケ−ターを含む、複数の個々の細胞を分析するためのキットを提供する。物質アプリケ−ターは支持体の異なる部分に個々の細胞を適用し、その後個々の細胞から物質を遊離するためのアプリケ−ターであってもよい。あるいは、物質アプリケ−ターは個々の細胞から物質を遊離し、その後個々の細胞から遊離された物質を支持体の異なる部分に適用するためのアプリケ−ター、たとえば本明細書に記載のような移動基質であってもよい。本明細書の他の場所で言及するように、細胞が個々に分析されることになる場合、それぞれの細胞に由来する物質は支持体の異なる部分に適用されて支持体上に物質の空間配置を生むことになる。
【0023】
本発明はまた、(i)分析成分が固定化される支持体;(ii)移動基質;および(iii)標的分析物が支持体まで移される場合、移動基質上に試料の空間配置を維持することを可能にする、移動基質から支持体まで標的分析物を移すための手段を含む、複数の異なる試料を分析するためのキットを提供する。
【0024】
本発明のデバイスおよびキットの種々の特徴の次元およびパラメータは、特定の必要性および適用に従って変化することができる。同様に、本発明の方法の明確なステップは特定の必要性および適用に従って変化することができる。異なる分析は、本発明の範囲内で異なるデバイスまたはプロセスを必要とすることができる。たとえば、異なる試料型が異なる次元を持つデバイスを必要としてもよく、または異なる試料調製ステップまたは異なる検出法を必要としてもよい。同じ試料型の異なる分析は、たとえばプロテオーム解析対トランスクリプトーム解析の場合のように、異なる分析成分を使用してもよい。その上、デバイスは以前の実験データに基づいてデザインし、使用することができる。たとえば、デバイスが初めの実験で有用なデータを与えることができない場合、分析成分の型、操作温度、バッファー、タイミングなどのような変数は付加的な実験において変更することができる。
【0025】
いくつかの態様では、本発明の方法、デバイスおよびキットは、個々のmRNA分子のような、個々の標的分析物分子の検出を可能にする。
【0026】
本発明の方法のプロセスおよびデバイスはより詳細に以下に記載される。
支持体
本発明のデバイスは、分析成分が固定化される支持体を含む。
【0027】
支持体はどんな適切な物質でできていてもよい。支持体のための物質の選択は、いくつ
かのデザインの検討によって影響を受け、適切な物質は特定のデバイスの要求に基づいて当業者によって容易に選択されうる。たとえば、物質は使用中にデバイスに適用される試薬に対して安定であり、そして標的分析物を分析するために使用される方法に適合するべきである。
【0028】
いくつかの態様では、デバイスの使用中に使用される試薬に不透過性の物質を使用して支持体が構築される(たとえば、本明細書の実施例1〜10および13を参照されたい)。
【0029】
他の態様では、デバイスの使用中に使用される試薬に透過性の物質を使用して支持体が構築される(たとえば、本明細書の実施例11、12および14を参照されたい)。従って、本発明は、使用中にデバイスに適用される試薬に透過性で、分析成分に固定化される支持体を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのデバイスを提供し、そしてそのような支持体上に、分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする空間配置で、複数の異なる個々の細胞に由来する物質が配置される。そのようなデバイスは支持体の1つの、または両方の表面に試薬を適用するための手段、および/または支持体の1つの、または両方の表面から試薬を除去するための手段を含んでいてもよい。たとえば、デバイスは透過性支持体の1つの、または両方の表面に試薬が適用されることを可能にするための1つ以上の注入口、および/または透過性支持体の1つの、または両方の表面から試薬が除去されることを可能にする1つ以上の放出口を含んでいてもよい。
【0030】
透過性支持体は、たとえばナイロン、ニトロセルロース、GVHP、イモビロン‐Pまたはイモビロン‐FLから構築されていてもよい。
【0031】
いくつかの適用の場合、成分を支持体に共有結合により結合させることが有用であってもよく、従って適切な物質は当業者によって選択されるべきである。いくつかの適用の場合、堅い物質を使用することが望ましくてもよく;他の適用がしなやかな物質を必要としてもよい。検出のために蛍光が使用されることになる場合、物質は励起および発光波長に透過性でなければならず、そしてまた、これらの波長において低い固有の蛍光を持たなければならない。全内部反射によって発光する微細な波長を伝播することができる物質は、ある種の検出技術と一緒の使用にとって好ましくてもよい。
【0032】
従って、本発明の支持体はシリコンオキシド、ポリマー、セラミックス、金属などを含むがそれらに限定されない多様な物質から作ることができる。使用することができる特有の物質には:ガラス;ポリエチレン;PDMS;ポリプロピレン;およびシリコンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
本発明の方法では、試料は分析成分が固定化される支持体に適用される。複数の試料が適用されて試料の空間配置を生み出すことができ、そして分析成分が固定化されうる支持体を使用することができる。支持体は分析成分の単一パッチを使用して、複数の試料が分析されることを可能にする。デバイスの使用中、パッチに適用される個々の試料は液体コミュニケーションを行う、すなわち、それらは溶液相試薬と相互作用する。パッチ上の試料は、デバイスの使用を通して液体コミュニケーションを行う必要がない。パッチ上の試料は、試料が支持体に適用される場合、および/または試料が分析成分との相互作用が許される場合、液体コミュニケーションを行ってもよい。パッチ上の試料は、分析結果が記録される場合のような、本発明の方法の他のステージにおいて液体コミュニケーションを行う必要がない。
【0034】
異なる分析成分が同じ支持体上の異なるパッチに固定化される場合、必要に応じて図1に示す配置が反復される。
【0035】
いくつかの態様では、デバイスの使用中、支持体は支持体上の異なるパッチがお互いに
液体コミュニケーションを行うことを許す。たとえば、異なるパッチが顕微鏡スライドグラスの表面のような、実質的に平坦な表面に配置されてもよい。異なるパッチがお互いに液体コミュニケーションを行う態様はいくつかの態様において好都合であり、なぜならそれらは異なるパッチに適用された試料に同じ溶液相試薬が適用されることを可能にするからである(たとえば、異なる核酸標的分析物を分析する場合)。先に記載のように、異なるパッチはデバイスの使用中、液体コミュニケーションを行う必要がない。
【0036】
他の態様では、それぞれ個々のパッチに適用される異なる試料が液体コミュニケーションを行っていても、デバイスの使用中、支持体は異なるパッチにお互いの体コミュニケーションを行わせない。たとえば、異なるパッチは96‐ウェルマイクロタイタープレートのウェルの中のような、実質的に平坦でない表面上に配置されてもよい。使用中、複数の試料がそれぞれのウェルに適用されて、それぞれのウェルにおける試料の空間配置を生み出すことができた。いくつかの態様では、異なるパッチがお互いに液体コミュニケーションを行わない態様が好都合であり、なぜなら同じ支持体上のたとえばタンパク質および核酸標的分析物を分析するために、それらは溶液相試薬を異なる分析成分に適用することを可能にするからである
いくつかの態様では、デバイスの使用中、とりわけ試料適用および/または(たとえば、個々の試料が支持体の異なるウェルまたはチャンネルに適用されるか、またはそれらの中で分析される)分析ステップの間に、異なる個々の試料が液体コミュニケーションを行わない方法およびデバイスは、本発明の範囲から特に排除される。
【0037】
いくつかの態様では、デバイスの使用中、とりわけ試料適用および/または(たとえば、パッチが支持体の異なるウェルまたはチャンネルの中にある)分析ステップの間に異なるパッチが液体コミュニケーションを行わない方法およびデバイスは、本発明の範囲から特に排除される。
【0038】
本発明の方法における試料の空間配置の維持は、たとえ試料が分析成分の単一パッチに適用され、デバイス使用中のあるステージで液体コミュニケーションを行っても、それぞれの試料から発生するシグナルを区別させる。本発明の使用にとって適切な支持体は当業者に明らかである。
分析成分
本発明のデバイスは、試料中の標的分析物と相互作用し、分析結果を与えることができる分析成分を含む。デバイスは、試料中の異なる標的分析物と相互作用することができる、単一のまたは異なる分析成分を含み、その結果デバイスの異なる部位において、図1に示す配置が必要に応じて反復される。単一分析成分を含むデバイスは、同じ支持体を使用した単一の型の標的分析物の複数の試料のパラレル分析を許す。異なる分析成分を含むデバイスは、同じ支持体を使用した複数の異なる標的分析物に関する複数の試料をパラレルに分析させる。
【0039】
いずれか指定のデバイスにおける分析成分は、関心のある分析データを与えるために、一般に試料型および関心のある標的分析物の知識に基づいて選択される。典型的には、分析成分はハイブリダイゼーションのための核酸分子、抗原結合のための抗体、抗体結合のための抗原、糖および/または糖タンパク質への結合のためのレクチンなどのような生物学的分子である。ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームなどの分析はそのようにして実施することができる。
【0040】
好ましい分析成分はハイブリダイゼーションのための核酸分子、抗原結合のための抗体、抗体結合のための抗原、糖および/または糖タンパク質捕捉のためのレクチンなどのような、固定化結合試薬である。好ましい分析成分は、選択された標的に対して特異的である特異的結合試薬、たとえば関心のある標的に特異的にハイブリダイズするための核酸配
列、関心のある標的抗原を特異的に結合するための抗体である。特異性の程度は個々の実験の必要性に従って変化することができ、たとえば、いくつかの実験では固定化された配列に関してヌクレオチドミスマッチを持つ標的を捕捉することが望ましくてもよいが、他の実験が完全なストリンジェンシーを必要としてもよい。
【0041】
デバイスが単一の分析成分を含む場合、分析成分は好ましくは支持体上の別個のパッチに配置されて、データ解析を促進する。
【0042】
デバイスが一連の異なる分析成分を含む場合、異なる分析成分は好ましくは支持体上の別個のパッチに配置され、データ解析を促進する。異なる分析成分が別個でない場合、異なる標的分析物のどれが観察されるシグナルを生じるかは明らかでなくてもよい。しかし、1つのパッチから発生したシグナルが異なるパッチから発生したシグナルと区別可能ならば、異なる分析成分の隣接したパッチにとって、わずかに重複すること、またはしっかりした境界を持たないことは可能である。いくつかの態様では、パッチにとって重複すること、または異なる分析成分が単一のパッチ上に固定化されることさえが好都合であってもよい(本明細書の他の部分を参照されたい)。
【0043】
デバイスが一連の異なる分析成分を含む場合、異なる分析成分は好ましくは実質的に平坦な表面(たとえば顕微鏡スライドガラス)上に固定化される。しかし、本明細書の他の部分に記載のように、実質的に平坦でない表面(たとえば、異なるウェルまたはチャンネルの中)の異なる部分のパッチに固定化される異なる分析成分を有するデバイスも、予想される。
【0044】
デバイスはハイブリダイゼーションによって特異的な核酸を捕捉するための固定化された核酸を含んでいてもよい。核酸の配列は関心のある標的分析物に従って選択されることになる。いっそう好ましくは、分析成分は特異的mRNA転写物を保持する。固定化された核酸は好ましくはDNAであり、好ましくは1本鎖であり、そして好ましくは(たとえば、約500ヌクレオチドより短い、<450nt、<400nt、<350nt、<300nt、<250nt、<200nt、<150nt、<100nt、<50nt、またはそれより短い)オリゴヌクレオチドである。
【0045】
デバイスはまた、タンパク質を捕捉するための固定化分析成分を含んでいてもよい。これらは典型的には、抗体のような免疫化学試薬であるが、たとえばタンパク質リガンドを捕捉するための受容体および逆の場合のような、他の特異的結合試薬も使用することができる。タンパク質を捕捉するためのアプタマーの使用が予想される。
【0046】
分析成分が、たとえば低分子薬物候補のような低分子であってもよいことも予想される。従って、本発明の方法およびデバイスを低分子スクリーニングアッセイにおいて使用し、試料の成分と相互作用する低分子(たとえば、細胞に由来する物質と相互作用する低分子)を確認するか、または低分子と相互作用する試料の成分を確認することができる。好ましくは、低分子は2000ダルトンより少ない、または1500ダルトンより少ない、または1000ダルトンより少ない、または750ダルトンより少ない、または500ダルトンより少ない、または350ダルトンより少ない、または250ダルトンより少ない分子量を持つ有機分子である。低分子はペプチドまたはペプチド類似体、たとえば少なくとも5アミノ酸残基、少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも25アミノ酸残基、またはそれより多くを含むペプチドまたはペプチド類似体であってもよい。従って、本発明の方法およびデバイスをペプチドおよびペプチド類似体スクリーニングアッセイに使用して、試料の成分と相互作用するペプチドまたはペプチド類似体(たとえば、細胞に由来する物質と相互作用するペプチドまたはペプチド類似体)を確認するか、またはペプチドまたはペプチド類似体と相互作用する試料の成分を確認することができる。
【0047】
本発明の単一のデバイスは核酸およびタンパク質の両方を分析するための分析成分を含むことができる。
【0048】
支持体に分析成分を固定化するための方法は当該技術分野で公知である。マイクロアレイ分野に由来する、ハイブリダイズ可能なフォーマットの支持体に核酸を結合するための方法、たとえば、支持体上のマトリックス、支持体上のゲルなどへのリンカーによる結合などは公知である。最もよく知られた方法は、ガラス支持体上へのヌクレオチドのin situ合成のためのAffymetrixによって使用される写真平板マスキング法であるが、インクジェット沈着法のような電気化学的in situ合成法も公知である。支持体にタンパク質(とりわけ抗体)を結合する方法は同様に公知である。
【0049】
固定化された核酸は前もって合成し、その後支持体に結合することができ、または成長する核酸鎖に前駆体を送達することによって支持体上にin situで合成することができる。これらの方法のいずれかを使用して、本発明のデバイスを構築することができる。好ましい固定化された核酸は、(参考文献2、3&4に記載のように)成長する核酸鎖の電気化学的脱保護を使用してin situ合成により形成される。
【0050】
本発明と一緒に使用することができる分析手順の1つは、固定化された捕捉DNAに対するハイブリダイゼーションによるmRNAの捕捉、続いてプライマーとして固定化されたDNAを使用したmRNAの逆転写を含む。従って、この手順では逆転写酵素が存在しなければならず、そして該酵素はmRNAが固定化された後、dNTPおよび他の試薬と一緒に導入することができる。逆転写プロセスは固定化されたプライマーを伸長して固定化されたcDNAを合成し、そのようにして本発明のデバイスの共有結合による改変を導く。逆転写によるデバイス上のDNAの鎖伸長を促進するために、それは5′末端を介して、または内部ヌクレオチドを介して固定化され、その結果自由な3′末端を持つことになる。この技術のそれ以上の詳細は以下に示す。
【0051】
デバイスは1以上の分析成分を含んでいてもよい。たとえば、デバイスはN個の異なる分析成分を含んでいてもよく、ここでNは2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、400、500またはそれより多い数から選択される。デバイスは少なくとも10N個の異なる分析成分を含んでいてもよく、ここでNは0、1、2、3、4、5またはそれより多い数から選択される。Nまたは10N個の異なる分析成分は、典型的にはそれぞれ支持体上のNまたは10N個の異なるパッチに配置されることになる。
【0052】
デバイスは、同じ分析成分の3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上のパッチのように、2以上の単一分析成分のパッチを含んでいてもよい。
【0053】
分析成分のパッチは少なくとも2つの試料のパラレル分析を可能にするような大きさに作られる。好ましくは、パッチはそれぞれの試料から発生するシグナルを区別させるための適切な間隔で、5以上(たとえば10以上、15以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、150以上、または200以上)の異なる試料をパッチに適用させる大きさに作られる。
【0054】
従って、使用において本発明のデバイスは分析成分が固定化される支持体を含んでいてもよく、そして該支持体には、5以上(たとえば10以上、15以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、150以上、または200以上)の異なる試料が分析成分の単一パッチに配置される。
【0055】
試料のパラレル分析を可能にするために必要なパッチサイズは、それぞれの試料の容積、支持体に適用された場合の試料の分散、検出装置の感度および解像度、およびパッチ上でパラレルに分析されることになる試料数のような因子に依存して変化することになる。好ましくは(図1のように)パッチサイズは、重複せずにパッチの別個の領域に複数の試料を適用してデータ解析を促進させることになり‐異なる試料が適切な間隔で配置されない場合、どの試料が観察されたシグナルを生み出すかは明確でないことになる。しかし、1つの試料から発生したシグナルが別の試料から発生したものと区別することができるならば、隣接する試料にとって、パッチに適用される場合、わずかに重複することは可能である。
【0056】
パッチへの適用後の試料の平均した中心から中心までの距離は好ましくは少なくとも2pであり、ここでpはパッチへの適用後の試料の平均した最長の寸法(長さまたは直径)である。たとえば、試料がパッチへの適用後およそ25μmの平均直径を有する場合、試料の中心から中心までの距離は好ましくは少なくとも50μmである。パッチへの適用後の試料の中心から中心までの距離は3p、4p、5p、6p、8p、10p、またはそれ以上であってもよい。
【0057】
パッチへの適用後、試料の平均した中心から中心までの距離は好ましくは少なくとも10Ymであり、ここでYは‐3、‐4、‐5などから選択される。
【0058】
パッチ上の試料の所望する中心から中心までの距離は、本明細書の他の部分で言及したように、異なる試料の溶液または懸濁液の適切な希釈によって成し遂げられてもよい。個々の細胞を分析する場合、細胞を処理して細胞凝集を減らし、所望する中心から中心までの距離を確実にすることが必要であってもよい。
【0059】
現行のマイクロアレイにおけるパッチサイズは直径約1μmから直径約1mmまで変動する。本発明のデバイスでは、パッチは好ましくは少なくとも10Xm2の面積を有し、ここでXは‐2、‐3、‐4、‐5、‐6、‐7、‐8、‐9、‐10、‐11、−12などから選択される。約10μmx10μm(すなわち、10−10m2)のパッチサイズのマイクロアレイは現行の技術を使用して容易に調製される。
【0060】
本発明がパッチ上の個々の細胞のパラレル分析に使用される場合、パッチは少なくとも2つの細胞、または少なくとも2つの細胞に由来する物質をパッチに適用することを可能にする大きさに作られる。これには一般に>2aの面積のパッチを必要とし、ここでaは関心のある細胞型の平均断面積である。通常、パッチはそれぞれの細胞の容積、それぞれの細胞に由来する物質の分散、検出装置の感度および解像度、およびそれぞれのパッチ上でパラレルに分析されることになる細胞数を考慮して、>3a、>4a、>5a、>10a、>15a、>20aまたは>25aである(本明細書の実施例6を参照されたい)。
【0061】
典型的な細胞およびオルガネラの寸法は以下の表に示される:
【0062】
【表1】
【0063】
@0001
従って、分析されることになる細胞に依存して、パッチは1μmより長い、たとえば3μmより長い、5μmより長い、10μmより長い、25μmより長い、50μmより長い、100μmより長い、250μmより長い、500μmより長い、750μmより長い、1000μm(1mm)より長い、最長の寸法(長さまたは直径)を有していてもよい。
【0064】
たとえば、当業者が分析成分の1つのパッチ上で16個の個々のヒトTリンパ球を分析することを望む場合、16個の細胞が容易にパッチ上でパラレルに個々に分析できることを確実にするためには、通常>32μmx32μm(1024μm2)の正方形のパッチが必要である。
【0065】
当業者は関心のある試料の数および型にとって適切なパッチサイズを容易に選択することができる。より大きなパッチは一般に、パッチ上で多数の個々の試料がパラレルに分析されることを可能にする。より大きなパッチはまた、パッチ上の適切な試料間隔を維持しながら、多数の個々の試料が適用されることを可能にしてもよい。より大きなパッチはまた、試料がさらに離れた間隔で配置されうることにより、等価な試料が検出装置によっていっそう容易に解像されることを可能にしてもよい。しかし、パッチの総数が減少しない限りは、より大きなパッチがより大きな支持体を必要としてもよい。
【0066】
本発明のデバイス内のパッチは同じサイズ、または異なるサイズを有していてもよい。
【0067】
パッチの端から端までの距離は好ましくは少なくとも10Ymであり、ここでYは‐3、‐4、‐5などから選択される。近くのパッチは隣接してもよく、重複してもよいが、近くのパッチはギャップによって分離されることが好ましい。
【0068】
パッチは好ましくは長方形または正方形を有するが、円形を有していてもよい。いくつかの態様では、パッチの形およびサイズは支持体の特徴によって確定されることになる(たとえば、支持体がマイクロタイタープレートである場合、パッチのサイズおよび形はウェルベースのサイズおよび形に一致してもよい)。本発明のデバイス内のパッチは同じ形、または異なる形を有していてもよい。
【0069】
本発明の方法は、分析成分のパッチ毎の複数の試料のパラレル分析に使用される場合、とりわけ好都合である。しかし、本発明は、分析成分のパッチ毎の単一試料の分析に使用
することもできる。たとえば、単一細胞が本発明のデバイスのそれぞれのパッチ上で分析されてもよい。たとえば、同一で同期の細胞集団における遺伝子発現のパターンが分析されることになる場合、そのような配置が有用であってもよい。そのような場合、該集団の単一細胞は異なる標的分析物に対してそれぞれのパッチ上で分析することができる。従って、本発明はまた以下のステップ:a)分析成分が固定化される支持体に、個々の細胞に由来する物質を適用すること;およびb)物質を分析成分と相互作用させて、物質の分析を可能にすることを含む、複数の個々の細胞を分析するためのプロセスを提供する。異なる個々の細胞に由来する物質は、支持体上の異なる分析成分のパッチにステップa)で適用され、支持体上の物質の空間配置を生む。空間配置はステップb)で維持され、そのようにして分析結果が個々の細胞に一致することを可能にする。
【0070】
単一細胞が分析成分のパッチ上で分析される場合、本発明の方法は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)による分析に類似性を有する。しかし、本発明の方法では、単一細胞は分析成分が固定化される支持体上で分析される。対照的に、FISHでは単一細胞が分析されるが、分析成分は溶液相において提供され、その結果異なる標的分析物は容易にパラレルに検出することができない。
【0071】
本発明のデバイスおよび方法を使用して、デバイスに適用される細胞の集団から細胞の亜集団を選択してもよいことが予想される。たとえば、細胞周期の特定のステージでの個々の細胞(同期細胞)は、固定化された抗体またはアプタマーを使用して、細胞表面抗原発現に基づいて選択されてもよい。そのような態様では、それぞれのパッチは1つより多い分析成分を含むことによって、複数の細胞型の選択、または単一パッチ上の細胞表面抗原のある種の組み合わせを有する細胞の選択を可能にしてもよい。
【0072】
細胞の選択は、固定化された分析成分に結合しない細胞型を除去するためにデバイスの洗浄を必要としてもよい。
【0073】
細胞の亜集団の選択後、その亜集団は、本発明の方法を使用してさらに分析されてもよい。たとえば、細胞の亜集団が細胞表面抗原発現に基づいて選択される場合、細胞の亜集団がその後溶解され、個々の細胞の内容物が本明細書に記載のようにパラレルに分析されてもよい。そのような態様では、それぞれのパッチは1つより多い型の分析成分(たとえば2つまたは3つの型の分析成分)を含むことによって単一パッチ上、たとえば固定化された抗体および核酸を有する単一パッチ上で細胞の選択および分析を可能にしてもよい。
【0074】
先に記載の固定化された分析成分に加えて、溶液相プローブが本発明のデバイスおよび方法と一緒に使用されてもよいことが予想される。典型的には、溶液相プローブは固定化された分析成分による標的分析物の捕捉後にデバイスに適用されることになる。溶液相プローブは一般に、関心のある分析データを生むために、試料型および関心のある標的分析物の知識に基づいて選択されることになる。典型的には、プローブは本明細書の他の部分に記載のように、生物学的分子である。
【0075】
いくつかの態様では、溶液相プローブはいっそう詳細な試料分析を可能にするため、その使用は好都合である。たとえば、固定化されたオリゴdTのパッチを使用してmRNAを捕捉し、そして細胞のポリA+集団のすべてを表す固定化されたcDNAを生み出した後(本明細書の実施例を参照されたい)、溶液相遺伝子特異的プローブをパッチに適用して、特異的mRNAの確認および定量を可能にしてもよい。付加的な例として、非特異的分析成分(たとえば、相対的に特異的でない抗原)のパッチを使用して抗原を捕捉した後、捕捉された抗原が溶液相プローブ(たとえば、抗原に特異的に結合する抗体)を使用して、いっそう詳細に分析されてもよい。
【0076】
溶液相プローブが使用される態様では、複数の異なる溶液相プローブの組を使用して、
パラレルに複数の異なる標的分析物を分析してもよい。これらの異なる溶液相プローブは、必要とされる分析に依存して、個々の標的分析物に対してそれぞれ特異的(たとえば、個々の遺伝子に特異的)であってもよく、または複数の関連する標的分析物に対して特異的(たとえば、遺伝子を越えて保存される配列に対して特異的)であってもよい。複数の異なる溶液相プローブの組は少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、または少なくとも600の異なるプローブからなっていてもよい。
【0077】
標的分析物が核酸(たとえば、mRNA)である場合、溶液相プローブは遺伝子特異的である必要がなく、そしてたとえば複数の異なる遺伝子によって共有されるヌクレオチド配列、または複数の異なる生物によって共有される配列を確認してもよい。
【0078】
標的分析物が核酸である場合、溶液相プローブは鋳型として固定化されたcDNAを使用してポリメラーゼによる伸長のためのプライマーを形成してもよい。プライマー配列は遺伝子特異的または非特異的伸長に関して選択することができる。
【0079】
異なる溶液相プローブは、たとえばチャンネルまたはピンを含むプローブアプリケ−ターを使用して、単一パッチ(たとえば固定化されたcDNAを持つパッチ)の異なる部分に適用されてもよい。適切なプローブアプリケ−ターは米国意匠特許D413,390号に記載される。1つより多いプローブが使用される場合、適切なラベリングおよび検出方法は当該技術分野で公知のものから選択することができる。たとえば、異なる蛍光色素でラベルされた異なるプローブがパッチに同時に適用されてもよい。あるいは、またはその上、異なるプローブが順次適用されてもよい。この場合、第1プローブ(またはプローブの組)がデバイスに適用され、生み出されたシグナルが観察され、そしてプローブが除去される。第2のプローブ(またはプローブの組)はその後デバイスに適用され、生み出されたシグナルが観察され、そしてプローブが除去される。これらのステップは付加的なプローブにより適宜反復することができる。
デバイスの他の特徴
本発明のデバイスはさらに以下のものを含んでいてもよい:
‐1以上の電極。電極を使用してデバイスを横切る電位を生み出すこと、細胞のエレクトロポレーションを引き起こすこと、試料移動などができる。
‐細胞を溶解するための圧電性デバイス。
‐光源、たとえばレーザー。レーザーを使用して細胞を溶解すること、および/またはデータ収集ができる。
‐検出器、たとえば質量分析機。
標的分析物
本発明の方法を使用して種々の標的分析物の確認および定量ができる。標的分析物は当業者が試料中に検出または定量することを望んでもよい、いずれかの化学的実体でありうる。本発明の方法を使用して生物学的または非生物学的標的分析物を分析することができる。好ましくは、標的分析物は生物学的標的分析物である。
【0080】
本発明はとりわけ、たとえば核酸およびポリペプチドのような、それらに対するマイクロアレイ分析が以前記載されている生物学的標的分析物の分析に適する。適切な核酸標的分析物には、ゲノムDNA、プラスミドDNA、増幅産物(たとえばPCRに由来する)、cDNAおよびmRNAが挙げられるが、それらに限定されない。
【0081】
本発明の方法は、標的分析物の存在または量に関する試料の分析を含む。本発明の方法を使用して試験された試料のすべてが標的分析物を含まないことは理解される。従って、標的分析物を移すこと、標的分析物を検出することなどに対する本明細書における言及は
、試料が標的分析物を含む状況に限定されない(たとえば、病原体のアッセイが陰性結果を生んでもよく、あるいは陰性対照が分析されてもよい)。
試料
本発明の方法を使用して種々の型の試料を分析することができる。
【0082】
試料は、当業者が標的分析物の存在または量を分析することを望む可能性があるどんなものでもあり得る。本発明の方法を使用して生物学的または非生物学試料を分析することができる。好ましくは、試料は、細胞または細胞に由来する物質を含む試料のような、生物学試料である。
【0083】
生物学試料は、真核細胞および原核細胞の両方を含む多様な生物および細胞型を含むか、またはそれらに由来することができる。たとえば、本発明を使用して、大腸菌;枯草菌;髄膜炎菌;淋菌;肺炎球菌;ミュータンス菌;B群連鎖球菌;化膿連鎖球菌;緑膿菌;ピロリ菌;カタル球菌;インフルエンザ菌;百日咳菌;ジフテリア菌;破傷風菌などが挙げられるが、それらに限定されない細菌、または細菌に由来する試料を分析することができる。真核細胞の中で、本発明を使用して、動物細胞、植物細胞、真菌細胞(とりわけ酵母)など、およびそのような細胞に由来する試料を分析することができる。関心のある好ましい動物細胞は哺乳類細胞である。好ましい哺乳類はヒトを含む霊長類である。
【0084】
関心のある特有の細胞型には、とりわけヒトの場合:血液細胞、たとえばリンパ球、ナチュラルキラー細胞、白血球、好中球、単球、血小板など;腫瘍細胞、たとえば、癌腫、リンパ腫、白血病細胞;卵子および精子を含む配偶子;心臓細胞;腎臓細胞;膵臓細胞;肝臓細胞;脳細胞;皮膚細胞;成体幹細胞および胚性幹細胞を含む幹細胞などが挙げられるが、それらに限定されない。細胞系統も分析することができる。
【0085】
試料が細胞、または細胞に由来する物質を含む場合、それぞれの試料は複数の細胞または複数の細胞に由来する物質を含んでいてもよく、その結果本発明は異なる細胞集団のパラレル分析に使用される。あるいは、それぞれの試料は個々の細胞、または個々の細胞に由来する物質を含んでいてもよく、その結果本発明は個々の細胞のパラレル分析に使用される。
【0086】
従って、いくつかの態様ではそれぞれの試料は:1x108より少ない細胞、1x107より少ない細胞、1x106より少ない細胞、1x105より少ない細胞、1x104より少ない細胞、1x103より少ない細胞、100より少ない細胞、50より少ない細胞、25より少ない細胞、20より少ない細胞、15より少ない細胞、10より少ない細胞、5より少ない細胞、3より少ない細胞、または単一細胞を含んでいてもよい。
【0087】
他の態様では、それぞれの試料は:3より多い細胞、5より多い細胞、10より多い細胞、15より多い細胞、20より多い細胞、25より多い細胞、50より多い細胞、100より多い細胞、1x103より多い細胞、1x104より多い細胞、1x105より多い細胞、1x106より多い細胞、1x107より多い細胞、または1x108より多い細胞を含んでいてもよい。
【0088】
他の態様では、それぞれの試料は:1x108より少ない細胞に由来する物質、1x107より少ない細胞に由来する物質、1x106より少ない細胞に由来する物質、1x105より少ない細胞に由来する物質、1x104より少ない細胞に由来する物質、1x103より少ない細胞に由来する物質、100より少ない細胞に由来する物質、50より少ない細胞に由来する物質、25より少ない細胞に由来する物質、20より少ない細胞に由来する物質、15より少ない細胞に由来する物質、10より少ない細胞に由来する物質、5より少ない細胞に由来する物質、または3より少ない細胞に由来する物質を含んでいて
もよい。
【0089】
他の態様では、それぞれの試料は:3より多い細胞に由来する物質、5より多い細胞に由来する物質、10より多い細胞に由来する物質、15より多い細胞に由来する物質、20より多い細胞に由来する物質、25より多い細胞に由来する物質、50より多い細胞に由来する物質、100より多い細胞に由来する物質、1x103より多い細胞に由来する物質、1x104より多い細胞に由来する物質、1x105より多い細胞に由来する物質、1x106より多い細胞に由来する物質、1x107より多い細胞に由来する物質、または1x108より多い細胞に由来する物質を含んでいてもよい。
【0090】
本発明はとりわけ、真核細胞および原核細胞の両方を含む、異なる個々の細胞の分析に適する。たとえば、それぞれの試料が個々の細胞、または個々の細胞に由来する物質を含む場合、本発明を使用して、同じ型(たとえばある細胞系統)であるが、非同時性、すなわち細胞周期の異なるステージにある複数の細胞を分析することができる。本発明を使用して、同じ型に由来し、同時性、すなわち細胞周期の同じステージにある複数の細胞を分析することもできる。
【0091】
本発明のデバイスを使用して単一の型の細胞を分析することができる。本発明のデバイスを使用して、1つより多い、たとえば2以上、3以上、4以上、5以上などの細胞型を分析することもできる。たとえば、本発明のデバイスを使用して、異なる型の細菌を含む試料(たとえば、食物試料)、または異なる型のヒト細胞を含む試料(たとえば、血液または組織試料)を分析することができる。
【0092】
試料の他の成分から関心のある細胞型の分離を可能にする試料調整ステップを含むことが、本発明の方法にとって望ましくてもよい。とりわけ、試料中の他の細胞型から関心のある細胞型を分離することが望ましくてもよい。たとえば、血液試料が本発明のデバイスを使用して分析されることになる場合、白血球の分析の前に試料から赤血球を除去することが望ましくてもよい。従って、いくつかの態様では、本発明の方法は、出発試料中の他の成分から関心のある1以上の細胞型を分離するステップを含んでいてもよい。とりわけ、本発明の方法は出発試料中の他の細胞型から関心のある1以上の細胞型を分離するステップを含んでいてもよい。いくつかの態様では、異なる細胞型の分離は本明細書の他の部分に記載のように、移動基質を使用して成し遂げられてもよい。他の適切な分離法(たとえば、FACS)は当業者に公知である。出発試料中の他の成分から関心のある細胞型を分離後、関心のある細胞は、本発明のデバイスを使用して分析することができる。試料の他の成分(すなわち、関心のある細胞が分離された成分)は廃棄されてもよく、または本発明のデバイスを使用してそれら自体が分析されてもよい。
【0093】
好ましくは、試料の1以上の他の成分から関心のある1以上の細胞型を分離後、結果として生じた、分離された細胞集団の少なくとも75%以上(たとえば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)は所望する型の細胞である。
【0094】
細胞内容を分析することに加えて、真核細胞のオルガネラ、とりわけ細胞核(たとえば、転写因子に関して)、ミトコンドリアおよびプラスチド(たとえば、葉緑体)を分析することが可能である。オルガネラは細胞から調製され、全細胞に関して本明細書で記載のように分析することができる。
支持体への試料の適用
本発明のいくつかの方法では、試料は支持体に直接適用され、試料の空間配置を生み出す。試料は、ピペッティング、プリンティング、スポッティングおよび散布を含むがそれらに限定されない、いずれか適切な方法によって支持体に直接適用することができる。た
とえば、試料は、米国意匠特許第D413,390号に記載された型の試料アプリケ−ターを使用して支持体に適用することができる。
【0095】
試料が細胞を含む場合、細胞は支持体に適用され、その後物質が細胞から遊離されうる。あるいは、物質が細胞から遊離され、その後遊離された物質が支持体に適用されうる。
【0096】
物質はいずれか適切な方法により細胞から遊離することができる。機械的および化学的方法が共に予想され;代表的な方法は以下に記載される。
【0097】
たとえば、溶解溶液は支持体上の細胞に適用することができ、そして細胞はin situで溶解することができる。使用することができる典型的な溶解溶液は以下のような成分を含んでいてもよい:界面活性剤、たとえば核酸を分析する場合のSDSのようなイオン性洗浄剤、またはタンパク質を分析する場合のTriton−X100のような非イオン性洗浄剤;タンパク質を消化するための酵素、たとえばプロテイナーゼK;核酸を消化するための酵素、たとえばDNアーゼおよび/またはRNアーゼ;炭水化物を消化するための酵素(たとえば、β(1−6)およびβ(1−3)グリカナーゼ、マンナーゼ);酵素を不活性化し、細胞成分を可溶化するためのカオトロープ、たとえばグアニジニウムイソチオシアネートのようなグアニジン塩;有機溶媒(たとえば、トルエン、エーテル、フェニルエチルアルコール DMSO、ベンゼン、メタノール、またはクロロホルム);抗生物質;チオニン;キレート剤(たとえば、EDTA);塩基性タンパク質(たとえば、プロタミン、またはキトサン)など。そのような試薬は一般に、大量の細胞溶解のための既存の技術において使用される。試薬の選択は関心のある分析物の性質に依存することになり;たとえば目的がmRNAを分析することである場合、プロテアーゼおよびDNアーゼが溶解溶液に含まれるが、mRNAを分解する試薬が含まれてはならない。
【0098】
単一細胞の機械的破壊については記載されている。参考文献5はショック波を生み出すことによる単一細胞(またはその細胞成分)の迅速溶解のための方法を開示し、そして操作による外傷を最少化するために細胞はレーザーピンセットにより置かれるか、または接着細胞として培養される。参考文献6におけるように、単一細胞を溶解するために以前使用されていたレーザー光と同じように、超音波振動も細胞を溶解するためにデバイスに適用することができる。浸透圧ショックによるマイクロ流体デバイス中の単一細胞の溶解は参考文献7に報告されている。参考文献8は、流動特性が電気泳動および電気浸透によって制御することができる、マイクロ流体ネットワークの異なる部分への、光学ピンセットによる単一細胞の誘導および操縦を記載する。細胞は2つの電極間に捕捉され、そこで電気パルスによって溶解することができる。
【0099】
エレクトロポレーションに使用される電場の大きさに依存して、膜は簡単に開かれて、細胞内容への接近を可能にしてもよく、または破壊されて細胞溶解を導いてもよい(参考文献9を参照されたい)。溶解を起こすために十分な強さの電場が好ましい。
【0100】
試料が支持体に適用される前に、または試料が支持体に適用された後に、試料からある種の成分を除去することおよび/または試料のある種の成分を改変することが望ましくてもよい。標的分析物と分析成分との相互作用に関して、または結果の利用もしくは解釈に関してのいずれかにおいて、生化学的分析は妨害する可能性のある物質を除去するためのそのような精製または改変ステップにしばしば先行される。
【0101】
マイクロアレイによる分析のための試料調製、たとえば細胞破壊、mRNA精製、cDNA調製、ゲノムDNA精製、ポリペプチド精製、ラベリングなどのためのプロトコルは当該技術分野で公知である。
【0102】
たとえば、mRNAが固定化されたプローブによる捕捉にとっての所望する分析物であ
る場合、DNAまたはタンパク質は分析の前に除去されてもよい。本明細書の実施例では、支持体に結合したmRNAの逆転写により試料を分析する場合、細胞タンパク質に由来する非特異的シグナルを減らすために多重特異的プロテアーゼ組成物を使用することが好都合であることが見いだされた。標的分析物および分析されることになる試料の観点から適切な試料プロセッシングステップは当業者には明らかである。
移動基質への試料の適用
本発明のいくつかの方法では、試料は移動基質の異なる部分に適用されて試料の空間配置を生み出し、その後標的分析物は移動基質から支持体に移される。移動基質が使用される場合、支持体への移動後の標的分析物の空間配置は移動基質上の使用の空間配置に一致し、そうして分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。移動基質の使用は試料の適切な空間配置の初期の生成を促進することができる。
【0103】
試料は、ピペッティング、プリンティング、スポッティングおよび散布を含むがそれらに限定されないいずれか適切な方法によって移動基質に適用することができる。たとえば、試料は、米国意匠特許第D413,390号に記載の型の試料アプリケ−ターを使用して移動基質に適用することができる。
【0104】
移動基質はいずれか適切な物質から構築されてもよい。移動基質のための物質の選択はいくつかのデザインの考慮により影響を受け、適切な物質は特定のデバイスの要求に基づいて当業者が容易に選択することができる。たとえば、物質は使用中に移動基質に適用される試薬に対して安定であるべきであり、そして支持体への標的分析物の移動のために選択される方法と適合しなければならない。いくつかの態様では、移動基質はニトロセルロースから作られてもよい。
【0105】
移動基質は実質的に平坦、たとえばシート物質でありうる。移動基質は実質的に平坦でないこともあり得、たとえば、試料の初期の空間配置はスポッターのピン上に生み出すことができる。スポッターは一般にDNAアレイの生産に使用され、本発明の方法において容易に使用することができる。スポッターの個々のピンを使用して、支持体上の異なる分析成分のパッチに異なる個々の試料を適用することができる。スポッターの個々のピンを使用して、支持体上の単一パッチに異なる個々の試料を適用することもできる。当業者により適切なピン配置が選択されて、支持体上のパッチの配置および必要な分析の型を完全にすることができる。
【0106】
移動基質から支持体への標的分析物の移動は、標的分析物の空間配置を維持しながら、多様なやり方で成し遂げることができる。適切な移動方法は、特有の移動基質物質、試料、および関与する標的分析物に基づいて選択することができる。
【0107】
いくつかの態様では、標的分析物の移動は支持体を移動基質と接触させることにより促進される。他の態様では、標的分析物の移動は支持体のごく近くに移動基質を置くことにより促進される。移動基質および/または支持体は、支持体への標的分析物の移動に好都合な条件に供することができる。たとえば、移動試薬は基質および/または支持体に適用することができる。移動試薬は移動基質から支持体への標的分析物の移動を促進することができるいずれかの試薬である。
【0108】
標的分析物は、拡散のような受動的移動法により、または吸引もしくは発電によるような能動的移動法により移動試薬から支持体まで移動することができる。たとえば、移動試薬は電気的に、または磁気的に伝導性物質であってもよく、その結果電位または磁場が移動試薬および/または支持体に適用されて基質から支持体への標的分析物の移動を促進してもよい。
【0109】
いくつかの態様では、移動試薬は標的分析物に不透過性である。移動試薬が標的分析物に不透過性である場合、試料は移動試薬の表面に適用され、その表面は基質から支持体への標的分析物の移動のために支持体と接触して、またはそのごく近くに位置することができる。
【0110】
いくつかの態様では、移動基質は移動試薬に不透過性である。いくつかの態様では、移動基質は標的分析物に、および移動試薬に不透過性である。
【0111】
いくつかの態様では、移動基質は標的分析物および移動試薬に透過性である。移動基質が標的分析物および移動試薬に透過性である場合、移動基質から支持体への標的分析物の移動は、移動基質内を通って、またはその中から外への標的分析物の移動を含んでいてもよい。たとえば、試料は基質の第1の面に適用されて基質上に試料の空間配置を生み出すことができる。移動試薬はその後基質に適用されることができ、その結果標的分析物は基質を通って基質の第2の面に運ばれ、その第2の面からそれらは支持体に移されうる。たとえば、移動基質は多孔性膜であり得、そして移動試薬はバッファーでありうる。
【0112】
従って、移動試薬に透過性の移動基質が使用される場合、移動試薬は移動基質に適用されて移動基質から支持体への標的分析物の移動を引き起こすことができる。移動試薬は、移動試薬に透過性(そして好ましくは、標的分析物にも透過性)の基質と一緒に使用される場合好都合であるが、移動試薬は不透過性基質と一緒に使用することもできる。適切な移動試薬は当業者が選択することができ、そして使用されることになるデバイスの型、および分析されることになる試料に依存することになる。たとえば、移動試薬はバッファーでありうる。
【0113】
いくつかの態様では、試料全体が分析のために支持体に移されることが必要でない。実際、いくつかの態様では、たとえば試料が望ましくない妨害成分を含む可能性がある複合試料(たとえば、細胞)である場合、それぞれの試料のある種の成分だけが移されることが好ましくてもよい。
【0114】
従って、いくつかの態様では、移動基質は標的分析物および標的試薬に透過性であるが、細胞または細胞成分のような試料の他の成分に不透過性である。たとえば、移動基質は全細胞、ある種の細胞型、細胞膜のような細胞フラグメントおよび/またはオルガネラなどに不透過性であってもよい。それらの態様では、細胞(または細胞に由来する物質)を含む試料は、移動基質の第1の面に適用されて移動基質上に試料の空間配置を生み出すことができる。移動試薬はその後基質に適用することができ、その結果標的分析物は基質を通って基質の第2の面に運ばれ、その第2の面からそれらは、全細胞、ある種の細胞型、細胞フラグメント、オルガネラなどの共移動なしに支持体に移されうる。従って、支持体への試料の他の成分の移動を妨害するか、または減らしながら、標的分析物を支持体に移すことによって、移動基質が試料調製を補助してもよい。
【0115】
細胞が移動基質に適用される態様では、移動試薬は好ましくは溶解試薬としても機能し、その結果必要とされる試薬の数は最少限に抑えられる。
【0116】
いくつかの態様では、移動基質は標的分析物以外の、試料の1以上の成分を特異的に、または非特異的に捕捉してもよい。試料成分の特異的、または非特異的捕捉は、それらの成分によって引き起こされたバックグラウンドシグナルを減らし、それによって分析結果を改善してもよい。
【0117】
たとえば、標的分析物がタンパク質の場合、移動基質は特異的に、または非特異的に核酸を捕捉してもよい。核酸の特異的捕捉は、本明細書に記載のような固定化された結合試薬を使用して成し遂げることができる。核酸の非特異的捕捉は、核酸を吸着するか、または吸収するが、タンパク質を吸着または吸収しない移動基質を使用して成し遂げられても
よい。たとえば、正に荷電したある種のナイロンは核酸を吸着するようにデザインされる。
【0118】
たとえば、標的分析物が核酸である場合、移動基質は特異的に、または非特異的にタンパク質を捕捉してもよい。タンパク質の特異的捕捉は、本明細書に記載のような固定化結合試薬を使用して成し遂げることができる。タンパク質の非特異的捕捉は、タンパク質を吸着するか、または吸収するが、核酸を吸着または吸収しない移動基質を使用して成し遂げられてもよい。たとえば、ニトロセルロースはタンパク質および1本鎖DNAを吸着するが、RNAまたは2本鎖DNAを吸着しない。
【0119】
いくつかの態様では、それぞれの試料においてmRNAのような特有の型の標的分析物の50%以上(たとえば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%)は移動基質から支持体まで移される。85%以上((たとえば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%)が移される態様は、標的分析物のいっそう正確な定量を可能にする。
【0120】
いくつかの態様では、それぞれの試料における50%より少ない(たとえば5%より少ない、10%より少ない、20%より少ない、30%より少ない、または40%より少ない)特有の標的分析物、またはmRNAのような特有の型の分析物が移動基質から支持体まで移される。そのような態様は、他の方法、たとえばPCRによるその後の操作のために、支持体上に標的分析物の一部を残す。
【0121】
移動基質から支持体まで適切に標的分析物を移すために使用される方法を変化させることにより、移動基質から支持体まで移されるそれぞれの試料における特有の標的分析物、またはmRNAのような特有の型の分析物の画分は変えることができる。たとえば、支持体への移動基質の接近、使用される移動試薬、電位または磁場の強度、移動が発生する温度、および/または移動が許される時期を変化させて所望するレベルの標的分析物移動を提供することができる。
【0122】
また、酵素反応は、移動基質への適用後であるが、移動基質から支持体への標的分析物の移動前に試料上で実施されてもよいことが予想される。
試料の空間配置
本発明の方法では、試料は支持体または移動基質に適用されて、試料の空間配置を生み出し、そしてその空間配置は方法のその後のステップ中維持される。試料の空間配置、とりわけ標的分析物の空間配置の生成は本発明の重要な特徴である。
【0123】
本発明の方法における試料の空間配置の生成はサザンブロッティングのような、他の方法における分析物の空間配置の生成に類似する。しかし、本発明の方法では、標的分析物の空間配置は分析成分が固定化される支持体上に生み出される。対照的に、たとえば、サザンブロッティングでは、標的分析物の空間配置は支持体上に生み出され、そして、分析成分は溶液相に提供され、その結果異なる標的分析物は容易にパラレルに検出されるはずがない。
試料の空間配置の生成
試料の空間配置は初めに試料が支持体に、または移動基質に適用される場合に生み出される。
【0124】
いくつかの態様では、試料は支持体または移動基質に適用されて、試料の任意の空間配置を生み出す(図4を参照されたい)。たとえば、試料が細胞を含む生物学的試料である
場合、細胞懸濁液は適切に希釈されて支持体または移動基質に適用され、細胞の任意の空間配置を生み出すことができる。そのような方法において生み出された空間配置は、慣用の血球計算機の使用中に観察される細胞の空間配置に類似する。任意の試料適用法は、予め決められた試料適用パターンを必要とせず、より短時間で実行されてもよい。
【0125】
任意の試料適用法は、確認されることになる試料の空間配置を必要としてもよく、その結果、分析ステップで観察されるシグナルの空間配置は試料の空間配置と相関することができる(図5を参照されたい)。さもなければ、状況によっては陰性結果を確認することが可能でなくてもよい。支持体または移動基質上の試料の空間配置は、いずれか適切な方法、たとえば特異的または非特異的ラベリング(たとえば、試料が細胞を含む場合、タンパク質または膜成分に対する染色)によって可視化されてもよい。支持体または移動基質上の試料の空間配置は、所望する場合、いずれか適切な方法、たとえばデジタル画像捕捉によって記録されてもよい。本明細書の実施例では、ガラス支持体上の個々の細胞の空間配置は明視野顕微鏡または高解像度レーザースキャニングによって確認された。
【0126】
試料の空間配置の確認が必要である場合、支持体または移動基質に対して選択された物質は選択された確認方法に適合するべきである。たとえば、空間配置がデジタル画像捕捉によって確認されることになる場合、半透明もしくは透明な支持体または移動基質が好ましくてもよい。
【0127】
試料が支持体または移動基質に任意に適用されるいくつかの態様では、試料の空間配置を確認することは必要ではない。とりわけ、それぞれのパッチに、またはデバイスに適用された試料の実際の、または平均の数が既知である場合、試料の空間配置を確認することが必要でなくてもよい。たとえば、図5の実験において10個の試料が支持体に適用されていることが既知であった場合、5つのシグナルスポットが観察されれば、試料の半数が標的分析物を含んでいたと結論してもよい。懸濁液の単位容量毎の細胞数は一般に既知であるため、この型の統計解析は細胞の懸濁液が支持体または基質に適用される場合にとりわけ有用である。たとえば、平均50個の細胞が支持体上のそれぞれのパッチに適用され、5個のシグナルスポットだけが特定のパッチ上で観察される場合、約10%の細胞が適切な標的分析物を含んでいたと結論してもよい。
【0128】
他の態様では、試料は支持体または移動基質に適用されて、試料の整った空間配置を生み出す(図4Bを参照されたい)。たとえば、試料それぞれが細胞または細胞集団の内容を含む場合、たとえばプリンターまたはプロッターを使用して、試料は指示された様式で支持体または移動基質に適用されて、支持体または移動基質上の予め決められた試料の空間配置を生み出すことができる。任意でない試料適用法は、先に記載のように試料の空間配置の確認を必要としなくてもよく(なぜならそれは予め決められているため)、そして利用可能な空間のいっそう効率的な使用のために、より多い試料をそれぞれのパッチに適用してもよい。本明細書の実施例では、試料は手動スポッターを使用して支持体に適用された(実施例10を参照されたい)。
【0129】
試料は支持体または移動基質に個々に適用することができる。試料が支持体または移動基質に適用され、試料の整った空間配置を生み出す場合、個々の試料適用が好ましい。
【0130】
試料は1以上の試料のグループで支持体または移動基質に適用することができる。試料が支持体または移動基質に適用されて、試料の任意の空間配置を生み出す場合、グループによる試料適用が好ましい。
【0131】
好ましくは、試料は分析成分の1つのパッチだけに適用され、その結果試料はデバイス上の>1のパッチと接触しない。しかし、いくつかの態様では分析成分の1つより多いパッチに適用されることが試料にとって好ましくてもよく、その結果試料は>1のパッチ、
たとえば2パッチ、3パッチ、4パッチ、またはそれより多いパッチと接触する。
標的分析物の空間配置の維持
支持体または移動基質に試料を適用することによって試料の空間配置が初めに生み出された後、試料中の標的分析物の空間配置はその後のステップ中維持されることになる。標的分析物の空間配置の維持は本発明の重要な特徴である。
【0132】
本発明の方法およびデバイスにおいて使用される試薬および物質は標的分析物の空間配置を考慮して選択されるべきである。標的分析物の空間配置は、分析成分による捕捉前に、3次元における標的分析物の拡散(すなわち、横方向および垂直方向両方への拡散)により影響を受ける。発生する拡散の量は種々の因子、たとえば捕捉前に分析成分への標的分析物の接近、デバイスが使用される温度、試料適用と標的分析物捕捉の期間、および使用される特有の試薬に依存する。
【0133】
従って、本発明のデバイスおよび試薬は標的分析物の横方向および/または垂直方向の拡散を最小限にするために選択された成分を含んでいてもよい。たとえば、溶解バッファーのような液体試薬を試料に適用しながら、透析膜を使用して支持体から離れた標的分析物の垂直方向の拡散を減らしてもよい(本明細書の実施例を参照されたい)。たとえば、試料調製物は標的分析物の横方向の拡散を妨害するために選択された添加剤を含んでいてもよい(本明細書の実施例を参照されたい)。
【0134】
また、本発明の方法における試料操作および分析ステップを最適化して、標的分析物の拡散を減らしてもよい。
【0135】
試料の空間配置は本発明の方法の間維持され、その結果1つの試料の他の試料に比較した著しい動きはない。従って、たとえ本発明の方法の間に標的分析物の多少の分散があり、その結果試料間の間隔(端から端までの距離)が減らされても、試料の中心から中心までの距離における著しい変化はないことになる。1つの試料から発生したシグナルが異なる試料から発生したシグナルと区別することができる試料の空間配置は適切に維持され、分析ステップ中に生み出されたシグナルの空間配置は、試料の初期の空間配置と相関することができる。一般に、試料の3次元配置が維持されない(たとえば、個々の細胞の形が溶解中に失われる)場合でさえ、試料の2次元配置は維持される。
【0136】
いくつかの態様では、標的分析物の空間配置は、固定化された分析成分に関連した標的分析物の著しい動きがないように維持される。従って、いくつかの態様では、試料中の標的分析物の空間配置は、他の試料に比べた標的分析物の著しい動きがないように、および固定化された分析成分に比べた試料の著しい動きがないように維持される。たとえば、いくつかの態様では支持体上の異なるパッチに比べた標的分析物の位置が維持され、支持体の端から端までの標的分析物の著しい動きはない。
【0137】
本明細書の他の部分で言及するように、本発明の方法は異なる試料の差別的ラベリングを必要としない‐個々の試料が適用される支持体または基質の異なる部分は既知であるか、または確認することができ、それゆえそれぞれ個々の試料によって生み出されたシグナルは容易に確認することができる。しかし、本発明のいくつかの態様では差別的ラベリングが有用であってもよい。たとえば、分析成分の単一パッチを使用して、異なる供給源に由来する試料をパラレル分析(たとえば、2つの異なる血液、または食物、試料における個々の細胞のパラレル分析)させるために差別ラベリングが使用されてもよい。本発明と一緒の差別ラベリングの使用は、より多くの情報が分析成分のそれぞれのパッチから読み取れることを可能にしてもよいが、結果の分析を複雑にしてもよい。
【0138】
本発明の方法では、維持されるものはすべての試料成分の空間配置よりむしろ、標的分析物の空間配置である。たとえば、本発明の方法は一部の試料成分がデバイスから失われ
る洗浄ステップを含んでいてもよい。そのような方法では、標的分析物の空間配置は維持されるが、他の試料成分の空間配置は維持されないことになる。
【0139】
本明細書に記載のような試料の空間配置の生成および維持は分析結果を個々の試料に一致させることを可能にする。しかし、分析結果を個々の試料に一致させることが常に必要ではない。個々の試料に分析結果を一致させるステップは従って付加的である。いくつかの態様では、たとえばパッチに対する平均シグナル強度を記録することにより、パッチ全体に渡って観察されるシグナルを分析することが十分であることになる。他の態様では、個々の試料に一致させることが分析結果にとって必要である。たとえば、本発明に記載のデバイスを使用して、食物試料から分析成分のパッチに複数の細胞を適用し、パッチに対する平均シグナルを記録することによって、食物試料中の細菌の存在を検出することができた。その状況では、細菌の存在はシグナルの観察(または陰性対照に比較して増加したシグナルの観察)によって定量的に示されることになった。試料細胞中の細菌の相対的存在量は、所望する場合、いっそう詳細な定量的分析を実施することにより測定することができた。
分析結果
結果を分析するために使用される検出方法は、標的分析物の性質および使用されてもよいいずれかのラベルに依存する。それらはまた、以下でより詳細に説明するように、一定の分析部位におけるシグナルの強度に依存してもよい。DNAおよびタンパク質マイクロアレイと一緒に、および/または膜を基礎にした方法と一緒に使用される検出方法は本発明と共同した使用に適切であり;そのような方法の一部はより詳細に以下に記載される。
【0140】
本発明の方法は標的分析物の定性的および/または定量的検出を含んでいてもよい。定量的検出方法が好ましい。
【0141】
いくつかの態様では、結果を分析することは、生み出されたシグナルの空間配置を試料の空間配置と相関させることを含む(図5を参照されたい)。この相関は手動で実施されてもよいが、好ましくは、たとえばシグナルの空間配置を試料の空間配置と比較するための画像解析ソフトウェアを使用して自動化される。この相関の出力は、試料の空間配置およびシグナルの空間配置の両方が示される合成画像であってもよい。
【0142】
好ましい分析物(mRNAおよびタンパク質)の場合、標的分析物と固定化された結合試薬が相互作用した後に検出可能なラベルを導入するために、付加的な生化学的プロセッシングが必要であってもよい。蛍光ラベルが本発明の使用にとって好ましい。検出される蛍光は2つの生物学的分子、たとえば2つの核酸、抗体&抗原などの特異的結合に起因する。インターカレート色素が標的分析物の検出に使用されてもよい。
【0143】
蛍光はエバネッセント波を使用して励起することができる。これらの波は照明光の波長の約1/2だけ物質の表面から及び、すなわちそれらは外側に約150〜350nmだけ及び、そしてそれは固定化されたオリゴヌクレオチドのパッチ全体にわたって照明を及ぼすために十分以上である。本明細書の他の部分で言及したように、本発明のデバイスはレーザー供給源(および/またはレーザー検出器)を含んでいてもよい。励起のための光の他の供給源、たとえばランプ、LEDなども使用することができる。
【0144】
タンパク質は抗体を利用するいくつかの既知の方法の1つにより検出することができる。たとえば、固定化された抗体によって捕捉されているタンパク質は、第1の抗体に由来する異なるエピトープに特異的な第2のラベルされた抗体を適用して「サンドイッチ」複合体を形成することによって、またはタンパク質の染色を使用することによって検出することができる。
【0145】
RNA分析の場合、検出は逆転写酵素(たとえば、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AM
V)逆転写酵素)のような酵素を使用して蛍光ヌクレオチドを相補鎖に組み込むことにより成し遂げることができる。たとえば、cDNAは支持体上のオリゴヌクレオチドプローブにmRNAをハイブリダイズすること、およびプライマーとして固定化されたプローブを使用することによりin situで作られてもよい。ハイブリダイゼーションの検出を促進するために、逆転写反応は、好ましくはラベルされたヌクレオチドをcDNAに組み込む[10]。これは、結合した適切なフルオロフォアを持つdNTPの使用により成し遂げることができる。シークエンシング反応とは異なり、異なるヌクレオチドに対して異なる着色フルオロフォアを使用することは必要ではなく、なぜなら個々のヌクレオチドは区別されることが必要でないからである。同様に、すべてのヌクレオチドをラベルする必要はなく、それゆえ1、2、3または4個のdATP、dCPT、dGTPおよびdTTPがラベルされてもよく、そしてラベルされた、およびラベルされないdNTPの混合物が使用されうる。cDNAへの多数のフルオロフォアの組み込み(たとえば、≧10%、≧20%、≧30%、≧40%、≧50%、≧75%、またはそれ以上のように、組み込まれたcDNAの少なくとも5%において)は、cDNAが蛍光検出のいずれかよく知られた手段により容易に検出され、それゆえ単一のハイブリダイゼーション事象に対してさえ、陽性シグナルを明らかにできることを意味する。従って、低い存在量のmRNAでさえ、検出することができる。
【0146】
フルオロフォアを直接組み込むよりむしろ、たとえば、逆転写、洗浄などのようなステップの後に、フルオロフォアが後に結合することができる特有の官能基を組み込むこと(「ポストラベリング」)も可能である。
【0147】
しかし、感度の高い技術が単一フルオロフォアの検出に利用可能であり[11、12]、それゆえ複数のフルオロフォアを含む、個々のcDNA/mRNAハイブリッドの検出は十分に現行の技術力の範囲内である。単一フルオロフォアを確認できる現行の装置は約150nmのピクセル解像度を有する。たとえば、参考文献13&14は単一分子リーダー(Upper Austrian Research GmbHの「CytoScout」として市販される)を記載し、その中のCCD検出器は試料スキャニングステージの動きとシンクロナイズし、129nmのピクセルサイズにおいて11分以内に面積5mmx5mmからデータを集めるための継続したデータ獲得を可能にする。本明細書のいくつかの実施例では、専有の高解像度レーザースキャナーを使用して130nm解像度データを得て、単一mRNA分子の検出が可能であった。従って、いくつかの態様では、本発明の方法、デバイスおよびキットは、個々のmRNA分子のような、個々の標的分析物分子を検出させる。
【0148】
insitu逆転写が実施された後、初めにRNA/DNAハイブリッドが存在し、ここで、DNAは典型的には検出のためのラベルを含む。本発明のいくつかの態様では、このハイブリッドのRNA鎖は、たとえばRNアーゼHを使用して除去される。この除去ステップは、固定化されたプライマーの伸長により調製されている1本鎖DNAを残す。除去ステップ後、この1本鎖cDNAは相補的cDNA鎖の合成のための鋳型として使用され、それによって2本鎖cDNAを生じることができる。この第2鎖の合成は、既存のcDNA鎖に相補的なプライマーを使用して開始されることになる。初めの逆転写後、このプライマーの位置まで伸長しているDNAだけが第2鎖合成を開始するために利用可能である。第2のcDNA鎖が同様に合成されてラベルを組み込んでもよく、そしてラベルは第1鎖の合成中に使用されるラベルと同じであること、または異なることがあり得る。
【0149】
固定化された分析成分に結合した標的分析物はまた、ローリングサークル型増幅(RCA、たとえば参考文献15および16)または、多重置換増幅(MDA:たとえば参考文献17および18)により増幅されてもよい。適切な試薬は市販されている(たとえば、Qiagen Ltd.,Crawley)。
【0150】
固定化された分析成分に結合した標的分析物はまた化学ルミネセンス法によって検出されてもよい。化学ルミネセンスにより標的分析物を検出するための適切な方法は報告されていて(たとえば、参考文献19および20)、適切な試薬は市販されている(たとえば、Applied Biosystems,Foster City,CAから)。たとえば、捕捉されたRNAの逆転写は、ビオチン化dNTPを使用して実施し、生成物は(ストレプト)アビジン‐HRPまたは(ストレプト)アビジン‐AP、続いて化学ルミネセンス基質を適用し、そしてその後画像を捕捉することにより検出することができる。
【0151】
本明細書の他の部分で言及するように、本発明のデバイスは質量分析機と連動することもできる。MSとマイクロ流体デバイスの統合は公知である。たとえば、参考文献21は、統合されたHPLCカラム、試料濃縮カラム、およびナノエレクトロスプレイチップを備えたペプチド分析のためのマイクロ流体チップを記載し、そしてこの「HPLC‐Chip/MS Technology」はAgilentから入手可能である。
【0152】
異なる細胞上でパラレルに同一の個々の分析を実施することはとりわけ効果的であり、明らかに同一の細胞において違いを容易に検出させる。
【0153】
本発明は細胞の組の中の標的分析物を含む割合(たとえば、百分率)の定量を可能にする。
【0154】
好ましくは、一定の標的分析物に対してパラレルに分析することができる試料の数は、少なくとも5(たとえば、≧10、≧15、≧20、≧25、≧30、≧35、≧40、≧45、≧50、≧60、≧70、≧80、≧90、≧100、≧200、≧300、≧400、≧500、≧600、≧700、≧800、≧900、≧1000、など)である。
一般
「含む(comprising」という用語は「含む(including)」および「含む(consisting)」を包含し、たとえば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXからなっていてもよく、または付加的なもの、たとえばX+Yを含んでいてもよい。
【0155】
数値に関する「約」という用語は、たとえばx±10%を意味する。必要な場合には、「約」という用語は省略することができる。
【0156】
「実質的に」という語は「完全に」を排除せず、たとえば「実質的にYを含まない」組成物は完全にYを含まなくてもよい。必要な場合には、「実質的に」という語は本発明の定義から省略されてもよい。
【0157】
要素に関した「直径」および「外周」のような用語の使用は、要素が円形(または三次元の状況では球形)であることを必ずしも意味しない。
【0158】
「抗体」という用語は、種々の天然の、および合成の抗体、ならびに入手可能な抗体に由来するタンパク質、およびそれらの誘導体のいずれかを含み、たとえばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単一ドメイン抗体、全抗体、F(ab′)2およびF(ab)フラグメントのような抗体フラグメント、Fvフラグメント(共有結合でないヘテロダイマー)、1本鎖Fv分子(scFv)のような1本鎖抗体、ミニボディー、オリゴボディー、二量体もしくは三量体抗体フラグメントまたはコンストラクトなどを含むが、それらに限定されない。「抗体」という用語は、いずれか特定の起源を意味せず、ファージディスプレイのような、慣用でないプロセスによって得られる抗体を含む。本発明の抗体はいずれのイソ型(たとえば、IgA、IgG、IgM、すなわち、α、γまたはμ重鎖)からなることもでき、そしてκまたはλ軽鎖を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】図1は単一分析成分だけが使用される場合の一般的方法を図解して説明する。
【図2】図2は異なる分析成分が支持体上の異なるパッチに固定化される場合の一般的方法を図解して説明する。
【図3】図3は移動基質が使用される場合の本発明の一般的方法を図解して説明する。
【図4】図4は試料の任意の(図4A)および任意でない(図4B)空間配置の生成を説明する。
【図5】図5はシグナルの空間配置が試料の空間配置とどのように相関しうるかを説明する。
【図6】図6は本明細書実施例1で使用されるデバイスを図解して説明する。
【図7】図7は本明細書実施例1で使用される2枚のスライドの走査画像を示す。
【図8】図8は本明細書実施例1で使用される2枚のスライドの領域をより詳細に示す。
【図9】図9は本明細書実施例2で使用されるデバイスを図解して説明する。
【図10】図10は本明細書実施例2で使用される2枚のスライドの走査画像を示す。
【図11】図11は本明細書実施例3で使用されるデバイスを図解して説明する。
【図12】図12は本明細書実施例3で使用されるスライドの領域を詳細に示す。
【図13】図13は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域を示す。
【図14】図14は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域を示す。
【図15】図15は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域を示す。
【図16】図16は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域をより詳細に示す。
【図17】図17は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域をより詳細に示す。
【図18】図18は本明細書実施例5で使用されるスライドの領域をより詳細に示す。
【図19】図19は本明細書実施例8で使用されるスライドの領域を示す。
【図20】図20は本明細書実施例9で使用されるスライドの領域を示す。
【図21】図21は本明細書実施例10で使用されるスライドを示す。
【図22】図22は透過性支持体を含む、可能なデバイスを図解して説明する。
【図23】図23Aは、実施例12で使用されるプローブ適用パターンを図解して説明する。図23Bは、実施例12における10秒暴露の結果を説明する。
【図24】図24Aは、実施例13で使用されるプローブ適用パターンを図解して説明する。図24Bは、実施例13で使用される試料適用パターンを図解で説明する。
【図25】図25Aは、ハイブリダイゼーション後であるが、逆転写前の、実施例13で使用されるスライドの走査画像を示す。図25Bは、ハイブリダイゼーションおよび逆転写後の実施例13で使用されるスライドの付加的な走査画像を示す。図25Cは、ハイブリダイゼーション、逆転写およびSDS溶液中で一晩混合後の、実施例13で使用されるスライドの付加的な走査画像を示す。
【図26】実施例14で使用される試料適用パターンを図解して説明する。
【図27】実施例14における異なる暴露の結果を示す。
【実施例】
【0160】
実施例1:個々の細胞の分析
予備実験を実施し、個々の試料、とりわけ個々の細胞が支持体に適用されて試料の空間配置を生み出しうること、および試料の空間配置がその後の操作および分析ステップ中に維持されうることを確証した。
物質と方法
オリゴdT30ガラススライドは、1μl(100μM)オリゴdT30を100μlのリン酸バッファー(pH9.0):DMSOの1:1混合物に添加することにより調製した。オリゴおよびカップリングバッファー混合物は、21mmx40mmx0.1mmHybriwellチャンバー(Sigma)を使用してNHS誘導体化スライド(Scott)に適用した。オリゴは15分間スライドに結合させた。Hybriwellチャンバーは除去し、スライドは蒸留水で5分間洗浄した。陰性対照スライドはオリゴの3′結合により調製した。
【0161】
マウス骨髄腫懸濁液(非接着性)細胞系統が使用された。3000細胞/μlの懸濁液は反復した遠心分離および1xPBS中での洗浄により調製した。細胞は20%のPEG2000および20%のPEG200と混合した。PEG200を使用して支持体表面の疎水性に起因する細胞の凝集を妨げた。PEG2000を使用してポリマー排除による横方向の拡散を妨げた。
【0162】
いくつかの態様では、プロナーゼが1mg/mlで細胞懸濁液に添加された。プロナーゼはエンド−およびエキソ−プロテイナーゼの混合物であり、ほとんどすべてのペプチド結合を開裂することが可能である。
【0163】
0.5μlの細胞懸濁液はスライド上に散布し、乾燥させた。細胞懸濁液中にプロナーゼを含む細胞はスライドの左側に散布した。細胞懸濁液中にプロナーゼを含まない細胞はスライドの右側に散布した。
【0164】
水中に10%ポリアクリルアミド(19:1)の100mmx100mmx1mmのポリアクリルアミドゲルパッドを注ぎ、凝固させた。約5mmx5mmの長方形ゲルが切断され、1%SDS溶解バッファー(1%SDS、3xSSC)に少なくとも30分間浸漬させた。
【0165】
透析膜を試料細胞に接触して置き、標的分析物の垂直方向の拡散を最少化させた。ゲルパッドはセルロースニトレート膜に接触して置き、膜を通して溶解バッファーを拡散させて細胞と接触させた。ガラススライドはゲルパッドの先端に置き、ゲルパッド、膜、および試料細胞間で十分に液体接触させた。組み立てられたデバイスは図6に図解して説明する。
【0166】
組み立てられたデバイスは50℃で30分間インキュベーションし、細胞タンパク質のプロナーゼによる消化を促進させた。次にデバイスは室温で30分間インキュベーションし、細胞mRNAをオリゴdT結合試薬にハイブリダイゼーションさせた。インキュベーションステップ後、スライドは洗浄し、結合したmRNAは100μl反応容量中で逆転写された。Hybriwellチャンバーはそれぞれのスライドに適用し、50℃でインキュベーションし、その後逆転写ミックスを適用した。100μl逆転写ミックスには:水(63.6μl)、5xFSバッファー(20μl)、RNasin(1μl)、0.1M DTT(10μl)、25mM dNTPミックス(0.4μl)、CY3 dCTP(1μl)SuperscriptIII酵素(4μl)が含まれた。反応物は50℃で30分間インキュベーションした。その後スライドは洗浄し、Agilent G2563BAスキャナーでスキャンした。
結果
オリゴdTおよび陰性対照スライドの走査画像は図7に示す。
【0167】
図7のオリゴdTスライドの右側を見ると、明らかに個々の細胞に由来するシグナルに対応する多数のスポットが見られる。しかし、スポットは図7の陰性対照スライドの右側
にも見られ、このことはスポットの一部は非特異的シグナルに起因することを示唆する。非特異的シグナルは細胞タンパク質と色素の相互作用から発生する可能性があると見なされた。従って、実験の第2シリーズでは、プロナーゼ処理した細胞が分析された。図7の左側を見ると、プロナーゼの添加が観察される非特異的シグナルの顕著な減少を提供することを明確に認めることができる。2つのスライドの左および右側の領域は図8により詳細に示される。その図は、プロナーゼの添加が観察される非特異的シグナルの顕著な減少を提供することをさらに説明する。
【0168】
図8のプロナーゼ処理した細胞のオリゴdTコーティングスライド上で見られた特徴は、オリゴ結合mRNAのプライマー伸長に由来する特異的シグナルである可能性がある。幅8〜10ピクセル(幅40〜50μm)の等しいサイズの画像が観察され、強度は細胞内容の分散が限定された、単一細胞の10μmの転写物の検出と一致した。
結論
これらの実験は、支持体上に細胞の空間配置が生み出され、細胞の空間配置を維持しながら細胞が分析されうることを説明する。これらの実験は、mRNAのような特有の細胞標的分析物の分析の場合、タンパク質のような他の試料成分の除去が非特異的シグナルを減らすために必要であってもよいことを示唆する。
実施例2:溶解の時間経過
別の一連の実験を実施し、観察されたシグナルに対して溶解の時間経過を変化させる効果を検討した。実施例1に記載されたものと類似のデバイスが使用された。
【0169】
実施例1と同じように、マウス骨髄腫懸濁液(非接着性)細胞系統が使用された。これらの実験の細胞懸濁液には20%のPEG2000、20%のPEG200、および1mg/mlプロナーゼ中に3000細胞/μlが含まれた。3μlの細胞懸濁液はオリゴdTスライドに散布し、乾燥させ、透析膜で覆った。2つの同一のオリゴdTスライドが調製され、1つは逆転写酵素を省くことにより陰性対照として使用した。それぞれ2つのオリゴdTスライドの上で、実施例1と同じように4つの別個のポリアクリルアミドゲルパッドを使用して、20分間、55分間、1時間30分または1時間45分、細胞を溶解した。インキュベーションステップ後、スライドは逆転写およびスキャニングにより実施例1に記載のように分析した。
【0170】
組み立てられたデバイスは図9で図解して説明する。2枚のスライドの走査画像は図10に示す。
【0171】
逆転写酵素を含むスライドの場合、20分間溶解後に観察されたシグナルが55分間溶解後のそれより高かったことを除いて、シグナル強度は溶解時間が減少するに従って減少することが見いだされた。これはおそらく、20分後の細胞タンパク質の不完全な消化から発生する非特異的シグナルに起因する。
【0172】
逆転写酵素が添加されていない対照スライド全面にわたり、シグナルはほとんど観察されなかった。
【0173】
従って、これらの実験は完全に細胞を溶解し、標的分析物を捕捉し、そして細胞成分を消化させるためにはより長いインキュベーション時間が好ましいことを示唆する。
実施例3:コロジオンの使用
この実験では、実施例1のデバイスで使用される透析膜がコロジオンの薄膜に置き換えられた。コロジオンはエーテルまたはアセトン中のニトロセルロースの溶液で、時にはアルコールが添加され、そして一般にパイロキシリン溶液と表される。
【0174】
100μlのコロジオンはスライドの一方の末端にピペットにより添加し、その後スライド全体に広げられた。インキュベーションステップ後、スライドは洗浄し、コロジオンは少量のMgCl2を含むアセトン中でスライドを洗浄することにより除去し、結合した
mRNAは他の部分に記載のように逆転写された。
【0175】
この実験で使用される組み立てられたデバイスは図11に図解して説明する。画像は図12に示したスライドの部分を捕らえた。この実験では、個々の細胞から発生した画像は比較的小さく、コロジオンは細胞内容の横方向の拡散を妨げることにおいて効果的であるように見える。とりわけ、図12では、画像は15μmの細胞サイズに対して20〜25μmであり、細胞内容の広がりはほとんど起きなかったことを示す。
実施例4:他の実験
また、細胞の空間配置の生成および維持、標的分析物の検出ならびに偽陽性の減少に影響を与える因子を検討するために他の実験が実施されている。
【0176】
実験の1つでは、ポリアクリルアミドゲルパッドはスライドの表面上に散布されている細胞に直接適用し、空気乾燥させた。別の実験では、細胞は溶融した低いTmのアガロースと混合し、スライドの表面上に薄い層として散布され、その後ポリアクリルアミドゲルパッドがアガロースに直接適用された。別の実験では、細胞はセルロースニトレート膜に散布され、細胞が適用された膜の面はスライドの表面に置かれ、ポリアクリルアミドゲルパッドは膜の他の面に置かれた。それらの実験の結果も、細胞の空間配置が支持体上で生み出され、細胞の空間配置を維持しながら細胞内容が分析されうることを確証する。
【0177】
いくつかの実験では、Triton溶解バッファー(320mM スクロース、5mM
MgCl2、10mM Hepesバッファー、1% Triton X−100、0.2% トリパンブルー染料)をSDS溶解バッファーの代わりに使用した。Triton溶解バッファーはSDSバッファーが使用された場合に生み出されたものとおおよそ等しい結果を生むことが見いだされた。
実施例5:個々の細胞の付加的な分析
この実施例は、個々の細胞の空間配置が支持体上に生み出され、細胞の空間配置が確認され、そして分析ステップで観察されたシグナルの空間配置が個々の細胞の空間配置と相関しうることを証明する。
物質と方法
実施例1と同じように、5′‐固定化オリゴdT30でコーティングしたガラススライドが使用された。実施例1と同じように、マウス骨髄腫懸濁液細胞系統が使用された。この実験では、細胞は80% MeOHを使用してスライドに固定された。スライドは予め(65℃に)温められた。MeOHは予め温められたスライドから速やかに蒸発し、スライドの表面に最も少ない凝集で細胞を固定した。およそ50,000の細胞がスライド上にピペットで移された。この実験では、PEG2000またはPEG200は全く使用されなかった。スライドに固定した後、細胞はコーティング(ピペッティングおよび散布)、またはエアロゾル噴霧のいずれかにより、10mg/mlプロナーゼで覆われた。
【0178】
スライドは、英国特許出願第GB0618131.7号およびGB0618133.3号に記載のように、専有の高解像度レーザースキャナー(130nmピクセル解像度)でスキャンされた。
【0179】
その後細胞は、(実施例1と同じように)ポリアクリルアミドゲルパッチを使用してSDS溶解バッファー中で溶解され、遊離されたmRNAは支持体に捕捉された(50℃で1時間)。捕捉されたmRNAはその後、先のように固定化されたオリゴdT30プライマーから逆転写された。スライドは同じ高解像度レーザースキャナーを使用して再びスキャンされ、蛍光逆転写生成物が確認された。
結果
図13は、明視野顕微鏡によって観察された、プロナーゼ処理前(図13A)および後(図13B)のスライド上の細胞の空間配置を説明する。細胞配置の比較を補助するため
に三角形のアラインメントガイドを示す。それらのアラインメントガイドによって強調されるように、スライド上の細胞の空間配置はプロナーゼ処理後に維持される。
【0180】
図13はまた、明視野顕微鏡を使用して支持体上の個々の細胞の空間配置を確認できることを説明する。
【0181】
図14は、明視野顕微鏡(図14AおよびC)または高解像度レーザースキャニング(図14BおよびD)によって観察された、プロナーゼで処理された、およびプロナーゼで処理されない、スライド上の個々の細胞の空間配置を示す。対角線より上の領域はプロナーゼ処理でされなかった(図14AおよびB)。対角線より下の領域はプロナーゼで処理された(図14CおよびD)。半円形のアラインメントガイドは図14CおよびDに示され、細胞配置の比較を補助した。それらのアラインメントガイドによって強調されるように、支持体上の個々の細胞の空間配置は、プロナーゼ処理およびレーザースキャニング後に維持される。プロナーゼの添加後、個々の細胞は自己蛍光により明確に目に見える(図14D)。従って、プロナーゼの添加は自己蛍光による個々の細胞の空間配置の確認を促進し、その上非特異的シグナルを減らす(実施例1を参照されたい)。
【0182】
図15は、明視野顕微鏡(図15A)または高解像度レーザースキャニング(図15BおよびC)によって観察された、支持体上の個々の細胞の空間配置を示す。図15Bはプロナーゼ処理した細胞の自己蛍光を示し、一方図15Cは捕捉されたmRNAの逆転写後に観察された蛍光シグナルを示す。アラインメントガイドは図15に示し、細胞配置の比較を補助する。それらのアラインメントガイドによって強調されるように、支持体上のmRNAの空間配置は逆転写中に維持され、その結果、図15Cで観察された蛍光シグナルの空間配置は図15AおよびBにおける個々の細胞の空間配置と容易に相関させることができる。
【0183】
図16は、この実施例で使用されるプロトコルのそれぞれのステージにおけるスライドの領域のより詳細な視野を示す。図16Aは、オリゴdT30結合前のブランクガラススライドを示す。図16Bは、オリゴdT30結合後のスライドを示す。図16Cは、細胞が固定された後のオリゴdT30にコーティングされたスライドを示す。図16Dはプロナーゼ添加後のスライドを示す。図16Eは細胞が溶解された後のスライドを示す。図16Fは固定化されたmRNAの逆転写後のスライドを示す。この一連の画像により説明されるように、プロナーゼの添加は、固定化された細胞の観察された自己蛍光の原因となる(とりわけ、図16Dを参照されたい)。プロナーゼで処理した細胞の自己蛍光は細胞溶解後に失われる(図16E)。
【0184】
図16によって説明されるように、個々の細胞の空間配置が支持体上で生み出され、細胞の空間配置が確認され、そして分析ステップで観察されたシグナルの空間配置は試料の空間配置と相関させることができる。
結論
これらの結果は、実施例1〜4の結果を強固にし、そして個々の細胞の空間配置が支持体上で生み出され、細胞の空間配置が確認され、そして分析ステップで観察されたシグナルの空間配置が試料の空間配置と相関しうることをさらに確証した。
実施例6:標的分析物分散の分析
この実施例は細胞溶解後の標的分析物分散を検討する。図17は、実施例5で観察された2つの細胞(AおよびB)の蛍光シグナルの詳細な分析を示す。その図で説明されるように、細胞溶解後の試料フットプリントにおいて3〜4倍の増大(15〜20μmから50〜80μmまで)がある。これらの結果は、溶解後の標的分析物重複を妨げるためにそれぞれ個々の細胞によって必要とされる最少面積はおよそ100μm2であることを示唆する。本発明の付加的な最適化後には、より小さい最少面積が可能である。
実施例7:単一mRNA分子の検出
この実施例は、支持体が高解像度レーザースキャナー(130nmピクセル解像度)によりスキャンされる場合、実施例5における手順が単一mRNA分子の検出を可能にすることを証明する。図18Aは、支持体の250μmx250μmの領域で観察された蛍光シグナルを示し‐個々の細胞が区別されうる。図18BおよびCは、個々の細胞に由来するmRNAの逆転写後に観察された蛍光シグナルの詳細な分析を示す。図18Bは、10μmグリッドオーバーレイにより、単一細胞から観察された蛍光シグナルを示す。図18Cは図18B内の単一分子解像の領域を示す。図18Cの蛍光強度プロットによって強調されるように、連続した4つの個々の蛍光分子がおよそ1μmの間隔で観察された。それらの観察されたシグナルは4つの個々のmRNA分子の逆転写に由来する。従って、本発明の方法は、単一mRNA転写物の検出を可能にする。これは、遺伝子‐特異的分析成分を使用した特異的mRNAの検出にとりわけ有用である(以下の実施例8を参照されたい)。
実施例8:特異的mRNAの検出
この実施例では、オリゴdT30でスライドをコーティングするかわりに、スライドをArbpハウスキーピング遺伝子に特異的な50‐マーオリゴヌクレオチドによりコーティングした以外は、実施例5の手順に従った。従って、この実施例では、支持体を使用して全細胞mRNAよりむしろ、特異的転写物を検出した。図19Aは支持体の250μmx250μmの領域で観察された蛍光シグナルを示す。個々の細胞から観察されたシグナルは図19Aでは丸で囲まれる。図19Bは、10μmグリッドオーバーレイによる、単一細胞に由来する遺伝子‐特異的逆転写物の検出を示す。この実施例は本発明の方法が、遺伝子‐特異的分析成分を使用した特異的mRNAの検出に使用できることを証明する。実施例9:最適試料密度の計算
図20は、細胞が500細胞/mm2の密度で負荷された後、ガラススライドに固定されたマウス骨髄腫細胞の自己蛍光細胞マップを示す。(実施例5と同じように)細胞を固定し、高解像度レーザースキャニング後、自己蛍光細胞マップは111細胞/mm2を明らかにする。この分析は、実施例5の手順に従った場合、最大細胞負荷密度は、およそ100細胞/mm2になるべきであることを示唆する。
実施例10:試料スポッティング
先の実施例では、個々の細胞は支持体に適用されて細胞の任意の空間配置を生み出した。この実施例では、RNA試料はオリゴヌクレオチドプローブの大きなパッチ上の既知の位置にスポットされ、任意でない試料の空間配置を生み出した。
【0185】
5′‐NH2を持つ、ポリA(すなわち、オリゴdT)、HPRTに対するmRNA、ならびに大腸菌K12およびO157系統の16SリボソームRNAに相補的なオリゴヌクレオチドは、カバースリップ下にオリゴヌクレオチド溶液を適用することにより、図21に示すパターンで、NHSエステル誘導体化ガラススライドに結合させた
培養したマウスリンパ母細胞から、および大腸菌K12から抽出されたRNAは、3xSSCに約1.5mg/mlの濃度で溶解した。それぞれのRNA溶液1μlは384ウェルマイクロタイタープレートの中の2つのウェルにピペットで移した。試料は、Schleicher and Schuell手動スポッターを使用して、ピン間隔9mmでプローブのパッチに適用した。図21に示すように、マウスRNAは文字「M」のパターンで、そして大腸菌RNAは文字「C」のパターンで、全部で4つのパッチ全体にわたって適用された。溶液は室温で乾燥させ、スライドは−20℃に冷却した。次にそれらは、実施例5に記載のように、洗浄され、cDNAがin situで合成され、Cy3ラベルされたdCTPを組み込んだ。スライドのスキャン(図21)は、マウスRNAが特異的に捕捉され、オリゴdTおよびHPRTパッチ上に逆転写され、そして大腸菌RNAは16Sオリゴヌクレオチドパッチ上に逆転写されることを示す。
【0186】
従って、この実施例は、試料が任意でなく支持体に適用されて、任意でない試料の空間配置を生み出しうること、および試料の空間配置がその後の操作および分析ステップの間
中維持されうることを証明する。
【0187】
実施例11:膜上での増幅
本発明者らによって予想されるいくつかの態様では、デバイスの使用中に、使用される試薬に透過性の物質を使用して支持体が構築される。そのような支持体はいくつかの態様では好都合であり、なぜならそれらは、試薬が支持体を通過することを可能にし、そのことが細胞捕捉、細胞溶解、標的分析物捕捉および/または標的分析物の分析を促進してもよいからである。
【0188】
可能な配置は図22Aに図解して説明し、その中でデバイスはデバイス中に形成されるチャンバー内に配置される(固定化された分析成分を持つ)透過性支持体を含む。デバイスは、試薬を添加する、および/または除去するための1以上の注入口および/または排出口をさらに含んでいてもよい。注入口および/または排出口の使用は支持体への試薬の適用、および支持体からの試薬の除去を促進する。図22Aでは、デバイスは2つのそのような出入り口を含み、そして透過性支持体は、1つの出入り口が支持体の第1の面とコミュニケーションし、他の出入り口が支持体の第2の面とコミュニケーションするように、チャンバー内に配置される。このことは、出入り口の1つを注入口(すなわち、支持体に試薬を適用するため)として使用させ、他の出入り口を排出口(すなわち、支持体から試薬を除去するため)として使用させる。この型の配置を使用して試料と試薬を容易にデバイスに適用し、そして(たとえば、注入または吸引により)デバイスから除去することができる。
【0189】
また、図22Aのデバイスは蓋を含み、使用中に、蓋を使用してデバイス内に試薬を保持することができる。蓋はデバイスの一部分を成すが、(図22Aおよび図22Bのように)標的分析物を容易に検出させるために除去可能であってもよい。デバイスが蛍光による検出に使用されることになる場合、蓋および/またはデバイスの他の構成要素は蛍光検出に使用される励起及び発光波長に透過性であってもよく、そしてこれらの波長において低い固有の蛍光を有していてもよい。
【0190】
図22に示す配置では試薬は注入口を通って透過性支持体に適用され、排出口を通ってデバイスから除去されうる。たとえば、細胞の懸濁液はデバイスに適用され、そして細胞は透過性支持体物質に捕捉されうる(図22B)。次に溶解溶液が適用されて捕捉された細胞を溶解し、そして個々の細胞に由来する標的分析物を支持体の異なる部分にハイブリダイゼーションさせることができる。その後、異なる個々の細胞における標的分析物の存在は適切な方法によって分析することができる。
【0191】
透過性支持体を含むデバイスと一緒に使用してもよい検出方法を検討するために、膜に閉じ込められたDNAが「Multiple Displacement Amplification」(MDA,Qiagen)により増幅されうるかを確定するための実験が実施された。予備実験が実施され、MDAに使用されるポリメラーゼ酵素が膜によって阻害されないことを示した。
【0192】
大腸菌K12DNAは15ml L‐ブロス中で一晩培養した細胞から調製された。細胞は遠心分離により集め、1ml PBSに再懸濁した。50μl リゾチーム(10mg/ml)が添加された。細胞は遠心分離により集め、300mM NaOAcに再懸濁し、SDS2%にし、30分間60℃に保った。フェノールにより1回、クロロホルムにより2回抽出後、水層が抜かれ、DNAは1容積のi−プロパノールの添加後、巻き取られた。80% EtOHで洗浄後、DNAは100μl TEに溶解した。DNAの理論的収率は25μgである。大腸菌K12ストックは1mg/mlであった。
【0193】
ストックはREPLI−g変性溶液(Qiagen)およびREPLI−g中和溶液(Qiagen)中2.5:10に希釈された。0.2μlのDNA溶液はナイロンおよびセルロースニトレート片(約1mmx6mm)に適用された。MDA Master Mix(MM)は取り扱い説明書(Qiagen)に従って作製された。およそ15μlのMMはそれぞれの細片に適用され、細片は湿ったチャンバー中、30℃でインキュベーションした。ナイロン細片は約1.5時間後に乾燥しているように見えた。水がナイロンおよびセルロースニトレート細片の両方に添加された。
【0194】
他の関連する実験も実施され、その中では0.2μl大腸菌DNAミックスを負荷した膜細片(約1mmx6mm)は試験管内の5μlのMMに浸漬した。対照試験管はDNAおよび膜を全く含まなかった。増幅反応は16時間および68時間後に、4μl溶液に1μlの停止溶液を添加することにより停止した。反応生成物は1%アガロースゲルに適用された。ミックスにより湿らされている細片はゲル負荷スロットに挿入された。
【0195】
結果は、セルロースニトレートがおそらく酵素を吸着することにより増幅を阻害するが、ナイロンは反応を阻害しないことを示唆する。ナイロンに結合した1本鎖DNAは高収率で増幅され、大部分の増幅された産物はナイロン上に残される。
【0196】
この実施例は、個々のDNA分子が膜上in situで増幅できることを証明することから、透過性基質と一緒に非常に感度の高い検出方法が使用可能なはずである。捕捉された標的分析物のin situでの増幅は、たとえばリボソームRNAよりむしろ単一コピー遺伝子からの細菌タイピング、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、単一ヌクレオチド多形(SNP)検出および単一分子シークエンシングのような広範な役に立つ適用を可能にするはずである。
実施例12:膜上での逆転写
先に言及したように、本発明者らによって予想されるいくつかの態様では、デバイスの使用中に使用される試薬に透過性の物質を使用して支持体が構築される。透過性支持体を含むデバイスと一緒に使用してもよい検出方法をさらに検討するために実験が実施され、透過性支持体に固定化されたプローブにハイブリダイズしたRNAの逆転写を検討した。物質&方法
それぞれ5′−NH2末端を持つ、HPRTに対するmRNAの3′末端、および大腸菌K12系統の16SリボソームRNAに相補的なプローブが使用された。これらの実験では、HPRT‐Endプローブは陽性対照として、そしてC1プローブは陰性対照としての役割を果たす。プローブの配列は以下のとおりであった:
HPRT‐End
5′[アミノC6]TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT
TTT TTT AAT TTT TAG CAT TTA TTT ATT TGC
ATT TAA AAG GA3′(65マー)
K12 16S rRNAに相補的なC1プローブ
5′[アミノC6]TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT
TTT TTT TGT TCC CGA AGG CAC ATT CT3′(50マー)
7つの異なる透過性支持体物質:ポリアミド、ナイロン、ニトロセルロース、Durapore GVHP、イモビロンPSQ、イモビロンPおよびイモビロンFLが試験された。それぞれの膜物質はおよそ1cmx2.5cmの大きさに切断された。PVDF膜(GVHP、イモビロンPSQ、イモビロンPおよびイモビロンFL)は初めにメタノール、その後TEバッファー(10mM Tris/HClおよび1mM EDTA)で湿らせ、一方他の膜は直接TEバッファーで湿らせた。PVDF膜は疎水性が非常に高く、予め湿らせないと水性溶液で湿らないため、メタノールで予め湿らせた。その後膜はTEバッファー中で湿らせた組織上に置かれ、プローブが適用された。
【0197】
とりわけ、TEバッファー中に濃度5μMの2つのプローブが作られ、その後2つの0.2μlのそれぞれのプローブが図23Aに示すパターンで7種の膜のそれぞれに適用された。その後プローブは、Stratalinkerクロスリンカー(Stratalinkerは10分間温め、その後湿った組織上のStratalinkerに膜が置かれた)を使用して、2分間膜にクロスリンクさせた。クロスリンク後、膜は15mlのFalconチューブ(Falcon毎に3または4種の膜)に入れ、55℃の回転インキュベーター中、5xSSPE/0.5% SDSで30分間洗浄した。
【0198】
これらの実験においてプローブに適用された標的は、長さおよそ1250塩基のマウスHPRT mRNAのラベルされないin vitro転写物(IVT)であった。HPRT IVTはEpicentre AmpliCap T7 High Yield Messenger Maker Kitを使用して調製された。in vitroでの転写後、Qiagen RNeasy MinElute Spin Columnを使用してRNAを取り除いた。
【0199】
20mlのハイブリダイゼーションバッファー(参考文献22)は50mlFalconチューブ中に作製された。10.2μlのラベルされないHPRT IVTは20mlのハイブリダイゼーションバッファー(2ug/10ml)に添加された。次に5xSSPE/0.5% SDSはそれぞれのFalconチューブから除去され、10mlのハイブリダイゼーションバッファーはそれぞれのFalconチューブに添加された。チューブは回転インキュベーター中に、45℃で1時間入れられた。インキュベーション後、ハイブリダイゼーションバッファーは除去され、10mlの1xFSバッファー(5x=250mM Tris−HCl、15mM MgCl2および375mM KCl)がそれぞれのFalconチューブに添加された。その後、Falconチューブは逆転写の用意ができるまで回転シェイカーに入れられた(約10分間)。
【0200】
逆転写はニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素を使用して実施された。500μlの逆転写ミックスは以下のように作られた:428μl 水、50μl 10xAMV 逆転写酵素反応バッファー(New England Biolabs、1x=50mM Tris−HCl、75mM 酢酸カリウム、8mM 酢酸マグネシウムおよび10mM DTT)、5μl RNasin、5μl ビオチン dUTP、2μl 25mM dNTP、および10μl AMV逆転写酵素(New England Biolabs、MO277S 10000ユニット/ml)。膜はFalconチューブから除去され、それぞれの膜は、3つの面が熱シールでシールされた、小さなプラスチック容器(すなわち、それらは一面だけ開かれたままであった)に入れられた。70μlの逆転写ミックスがそれぞれの膜に添加され、その後容器はヒートシーラーを使用してシールされ、インキュベーターに42℃で1時間入れられた。
【0201】
インキュベーション後、膜はプラスチック容器から除去され、ペトリ皿(1つのペトリ皿に7種の膜すべて)、25mlの洗浄バッファー(参考文献22)が添加され、そして膜はシェイカー上で5分間洗浄された。洗浄バッファーはその後除去し、第2の洗浄バッファー(参考文献22)と交換し、そして膜はさらに5分間洗浄された。第2の洗浄バッファーはその後除去し、PBS/0.1% Tweenと交換し、そして膜は5分間洗浄された。PBS/0.1% Tweenは新しいPBS/0.1% Tweenと交換し、そしてその後膜はさらに5分間洗浄された。
【0202】
ストレプトアビジン‐ホースラディッシュペルオキシダーゼは膜に結合させた。PBS/0.1% Tween(50ml中1g)中2%のブロッキングバッファー(ECL Advance Western Blotting Detection Kit:G
E RPN2135に由来する)が作られ、必要になるまで4℃に保たれた。PBS/0.1% Tweenは除去され、ペトリ皿毎に25mlのブロッキングバッファーと交換された。皿はその後1時間振り混ぜられた。別の25mlのブロッキングバッファーに、5μlのECLストレプトアビジン‐ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(GE:RPN1231に由来する)が添加され、その後古いブロッキングバッファーは除去され、ストレプトアビジンを含むブロッキングバッファー25mlが添加された。膜はシェイカー上で1時間、ストレプトアビジン‐HRP溶液中でインキュベーションした。溶液を捨て、膜は回転ミキサー上で15分間、25mlのPBS/0.1% Tween中で洗浄された。その後PBS/0.1Tweenを捨て、新しいPBS/0.1%
Tweenと交換し、膜は回転ミキサー上でさらに15分間洗浄された。ここで膜は化学ルミネセンス検出の用意ができた。
【0203】
化学ルミネセンス検出はECL Advanceにより実施した。検出試薬は開封前に室温まで平衡化させた。1mlの検出溶液Aは、1mlの検出溶液Bと混合した(ECL
Advance Western Blotting Detection Kit:GE RPN2135に由来する)。過剰な洗浄バッファーは膜から汲み出し、その後膜はサランラップの1片にオリゴ面を上にして平らに置いた。100μlの混合検出溶液は湿った膜のそれぞれの上に適用し、その後膜は室温で5分間インキュベーションした。過剰な検出溶液は膜をピンセットでつかみ、組織のそばに端を触れることにより汲み出された。その後膜はプラスチック片上にオリゴ面を下に向けて置き、プラスチックは折りたたみ、膜は完全に平らになってプラスチックに包まれるように、シールされた。シール前に空気泡を注意深く取り除いた。
【0204】
検出はBiomax XARフィルムを使用して実施した。シールした膜は、オリゴ面を上にして、カセットの片側半分の上に置いた。カセットは暗室に持って行き、7種の膜の上面に1つのフィルムを置き、10秒間曝し、その後除去した。フィルムは現像液(Sigma製、水で5倍希釈したものを500ml)に1分間入れ、その後水で5〜10秒間すすいだ。フィルムは固定液(Sigma製、水で5倍に希釈したものを500ml)に1分間入れた。その後フィルムを除去し、水で完全に洗浄し、一晩つるして乾燥させた。このプロセスは5秒間および30秒間暴露時間に対して反復された。
結果と結論
10秒間暴露の結果は図23Bに示す。5秒間および30秒間暴露時間の結果は実質的に同じであった。これらの結果は、逆転写が、ニトロセルロースおよびGVHP上でAMV逆転写酵素を使用することにより十分に行われ、そしてイモビロン‐Pおよびイモビロン‐FLを使用することによりやや劣って行われることを示唆した。従って、これらの結果はRNA分子が膜上、in situで逆転写できることを確証するから、感度の高い検出方法が透過性支持体と一緒に使用できるはずである。結果はまた、透過性物質を使用して支持体を構築する場合、特定の支持体物質の選択が、使用されるべき検出方法に影響を与えてもよいという実施例11の発見を確証する。これらの実験は、透過性支持体上に固定化された分析成分にハイブリダイズした標的分析物が、標的分析物の空間配置を維持しながら、化学ルミネセンス法によって検出されてもよいことをさらに確証する。
実施例13:移動基質の使用
先に言及したように、発明者らにより予想されるいくつかの態様では、試料は初めに移動基質に適用されて、試料の空間配置を生み出し、その後標的分析物は移動基質から支持体まで移される。移動基質の使用をさらに検討するために、移動基質上の細菌細胞溶解、続く基質から支持体への標的分析物移動を検討するための実験が実施された。
物質&方法
これらの実験では、支持体はガラススライドであり、それは大腸菌K12系統の16S
rRNAのハイブリダイゼーションおよび逆転写、その後のCY3 cDNAの検出に使用された。支持体は図24Aに示すようにデザインされ、C1プローブ1パッチおよび
HPRTプローブ1パッチを有した。これらの実験は、実施例12と同じプローブを使用したが、今回はC1プローブを陽性対照とし、そしてHPRTプローブを陰性対照として使用した。
【0205】
ガラスNHS誘導体化スライド(Scott)はフリーザーから取り出し、室温まで温めてからケースを除いた。10μl C1オリゴ(100μM)は、90μlの1:1の0.2M リン酸バッファー(pH9):DMSOで希釈し、最終オリゴ濃度を10μMのとした。10μl HPRTオリゴ(100μM)は90μlの1:1の0.2M リン酸バッファー(pH9):DMSOで希釈し、10μMの最終オリゴ濃度を生じた。リフタースリップは2つに切断し、NHS誘導体化スライドとリフタースリップ間のスペーサーとしてのカバースリップと共にスライドの上面に置いた。10μMのC1オリゴ100μlは左側のリフタースリップの眞下に適用した。10μMのHPRTオリゴ100μlは右側のリフタースリップの眞下に適用した。スライドは室温に30分間置き、オリゴをスライドに結合させた。結合の最後にスライドは水のペトリ皿に置き、表面の残部を非活性化した。スライドは水と共にFalconチューブに入れ、回転ミキサー上で30分間洗浄した。
【0206】
SDS/ポリアクリルアミドゲルは以下のように調製した。キャスティングジグは2枚の大きな顕微鏡スライドと2枚の小さな顕微鏡スライドにより調製し、ブルドッグクリップを使用してそれをあわせてつかんだ。ゲルミックス(1ml 水、625μl アクリルアミド、500μl 10% SDS、375μl 10xSSCバッファー、30μl 10% AMPSおよび5μl TEMED)を調製し、その後キャスティングユニットに適用し、気泡がないことを確かめた。ゲルはおよそ30分間放置して固まらせた。ゲルは使用直前にキャスティングユニットから除去した。
【0207】
大腸菌細胞は、以下のようにRNAハイブリダイゼーションに対して調製した。細胞3mlをLB培地7mlに添加し、その後37℃のインキュベーターに約2時間入れた。調製された培養物1mlを1.5mlのエッペンドルフチューブに取り、125μlの冷たいエタノール中の5%フェノールを添加した。チューブの内容は逆さにして混合して大腸菌を殺し、8.8rpmで2分間回転させた。上清を除去し、1xPBSを添加した。細胞は吸引により再懸濁し、その後8.8rpmで2分間回転させた。上清を除去し、1mlの1xPBSを添加した。大腸菌は再び吸引により再懸濁した。再懸濁した細胞は8.8rpmで2分間回転させ、上清を再び除去した。これらのステップは痕跡量のフェノールをすべて除去する。
【0208】
200μlの0.5mg/ml リゾチーム(10μlの10mg/ml ストック+190μlの1xPBSバッファー)を添加し、その後大腸菌細胞を吸引により再懸濁した。混合物は室温に3〜5分間放置し、細胞壁を消化させた。細胞はここで膜に適用する準備が整った。2片のニトロセルロース膜はスライド上にフィットするサイズに切断した。膜は熱いPBS中に5〜10分間入れた(PBSは水浴中で90℃に加熱した)。膜は熱いPBSから除去し、PBSに浸漬されている組織片上に置いた。4x1μlの細胞は、図24Bに示すパターンで膜のそれぞれに適用した。10mg/mlのプロナーゼ溶液2μlは膜上のそれぞれの試料の表面に適用した。
【0209】
スライドは45℃の熱いブロックに置いた。調製された膜は表面を下にしてスライドに適用し、その結果細胞は直接プローブパッチに接した。膜は成型されたポリアクリルアミドゲルで覆い、ブランク顕微鏡スライドは、図24Cのようにゲルの表面に置いた。組み立て品は30分間放置してハイブリダイゼーションさせた。スライドはその後熱いブロックから除去し、ゲルパッドおよび膜を除去した。スライドは洗浄バッファー(参考文献22)を含む50mlのFalconチューブに入れ、回転ミキサー上に置き、5分間洗浄
された。その後、スライドは50mlの第2洗浄バッファー(参考文献22)に移し、回転ミキサーに置き、5分間洗浄された。スライドはAxon GenePix 4000Bスキャナーを使用してスキャンされた(図25Aを参照されたい)。
【0210】
捕捉された16S rRNAは、CY3−dCTPを使用して逆転写された。250μlのRTミックス(水 159μl、5xFSバッファー 50μl、RNasin 2.5μl、0.1M DTT 25μl、25mM dNTPミックス 1μl、CY3−dCTP 2.5μl、SuperscriptIII酵素 10μl)が作られた。スライドは45℃の熱いブロックに置かれ、HybriWellチャンバーが表面に置かれた。250μlのRTミックスをスライドに適用し、その後HybriWellの表面はスライド上に置かれた。スライドは45℃で30分間インキュベーションされた。HybriWellチャンバーはスライドから除去し、そしてスライドはFalconチューブに入れた。50mlの洗浄バッファー(参考文献22)を添加し、回転ミキサー上で5分間混合した。スライドは新しいFalconチューブに移し、50mlの第2洗浄バッファー(参考文献22)を添加し、その後回転ミキサー上で5分間混合した。スライドはその後、Axonスキャナーを使用して再びスキャンした(図25Bを参照されたい)。スライドは、回転ミキサー上、一晩1% SDS溶液に入れ、再び、Axon GenePix 4000Bスキャナーを使用してスキャンされた(図25Cを参照されたい)。結果と結論
図25A〜Cから明らかなように、CY3 cDNAに由来する蛍光シグナルは、大腸菌細胞が適用されるニトロセルロース膜上の部分に対応する支持体の部分においてだけ観察された。細胞が移動基質に適用されるパターン(図24B)は蛍光シグナルパターンによって反映される(図25A〜C)。その上、CY3 cDNAに由来する蛍光シグナルは、C1プローブが存在する支持体の部分においてだけ観察され、シグナルが実際に大腸菌16S RNAの逆転写に由来することを確証する。言い換えると、プローブが移動基質に適用されるパターン(図24A)も蛍光シグナルパターンによって反映される(図25A〜C)。
【0211】
従ってこれらの実験は、試料が移動基質に適用されて試料の空間配置を生み出し、その後標的分析物の空間配置を維持しながら、標的分析物が移動基質から支持体まで移されうることを確証する。これらの実験はまた、本発明の方法およびデバイスが真核および原核細胞の両方に適用できることを確証する。
実施例14:膜化学ルミネセンスの付加的な検討
透過性支持体物質と一緒の化学ルミネセンス検出の使用を検討するための付加的な実験を実施した。
物質&方法
2枚のナイロン膜を切断し、顕微鏡スライド上にフィットさせた。膜はペトリ皿に置き、TEバッファーで湿らせた。膜は湿った組織上に置き、オリゴ適用のために湿気を保った。
【0212】
(実施例12および13と同じように)100μMのHPRT‐EndはTEバッファーで20倍に希釈し、最終濃度5μM(200μl TE中10μl)を得た。
【0213】
殺菌チューブ(UVランプ)ハウジングが調製された。殺菌チューブは使用前10分間スイッチを入れ、温めた。100μlのHPRT‐Endオリゴはそれぞれの膜に適用し、プローブで膜全体を覆った。膜は湿った組織上に置かれ、その後殺菌チューブハウジングに移され、プローブは2分間クロスリンクさせた。殺菌チューブはスイッチを切り、膜はハウジングから除去し、照射面を曝して50mlのFalconチューブに置いた。25mlの5xSSPE/0.5% SDSを添加し、膜は回転インキュベーター中、55℃で30分間、洗浄された。その後5xSSPE/0.5% SDSは廃棄された。
【0214】
これらの実験では、転写中にビオチン化ヌクレオチドを組み込むことによりIVTがビオチン化される以外は、ハイブリダイゼーションのためのHPRT IVT RNAは実施例12にと同じように調製された。ビオチン化IVTを使用し、以下の濃度:0.7ug/ul、0.6ug/ul、0.5ug/ul、0.4ug/ul、0.3ug/ul、0.2ug/ul、0.1ug/ul、および0.05ug/ulのRNAを、RNアーゼフリー水を使用して調製した。
【0215】
10mlのハイブリダイゼーションバッファー(参考文献22)が調製された。膜は50mlのFalconチューブに入れ、10mlのハイブリダイゼーションバッファーを添加した。膜は45℃で30分間、または必要なだけインキュベーションした。膜はペトリ皿中の温かいハイブリダイゼーションバッファーに浸漬されていた組織の表面に置かれた。それぞれの濃度3x0.5μlがカラムの膜上にスポットされた(図26を参照されたい)。
【0216】
ペトリ皿にふたをし、皿は30分間、45℃のインキュベーターに入れた。膜は除去し、Falconチューブに入れた。50mlの洗浄バッファー(参考文献22)を添加し、Falconチューブは回転ミキサーに置き、5分間洗浄された。膜は50mlの第2洗浄バッファー(参考文献22)に移し、回転ミキサー上でさらに5分間洗浄された。膜は50mlFalconチューブに表面を上にして置いた。50mlのPBS/0.1%
Tweenが添加された。Falconチューブは回転ミキサーに置き、15分間洗浄された。PBS/0.1% Tweenは新しいPBS/0.1% Tweenと交換し、膜はさらに15分間洗浄された。
【0217】
1mlの混合したECL Advance 検出溶液が湿ったナイロン膜のそれぞれに適用された以外は、化学ルミネセンス検出は本質的に実施例12に記載のように実施された。
結果&結論
試験したビオチン化IVTの濃度のすべては、基質としてHRPを使用して化学ルミネセンスにより検出可能であった(図27を参照されたい)。これらの実験は、透過性支持体に固定化された分析成分にハイブリダイズされた標的分析物は化学ルミネセンス法により検出されてもよいというさらに付加的な確証を提供する。これらの実験は化学ルミネセンス検出の限界を計算させた。化学ルミネセンス検出の限界は最適化システムの使用により高められることが期待される。要するに、これらの実験は、高度に発現された遺伝子は、最適下検出システムを使用してさえ、化学ルミネセンスにより検出されうることを示す。背面照射型CCDカメラでの近接検出のような高い外部量子収率を持つ、代わりとなる検出法はさらにより低い検出限界を提供し、低レベルで発現される遺伝子でさえ化学ルミネセンスにより検出させるべきである。
【0218】
本発明は例としてだけ記載されていて、詳細の改変が本発明の意図および範囲から逸脱することなく行われてもよい。
参考文献(それらの内容はすべて参照として本明細書に援用される)
[表2]
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a)特異的結合試薬が固定化される支持体に個々の細胞に由来する物質を適用すること;および
b)物質を特異的結合試薬と相互作用させて、物質の分析を可能にすることを含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのプロセスであって、
ステップa)で異なる個々の細胞に由来する物質が支持体の異なる部分に対して適用されて、支持体に物質の空間配置を生むこと、および当該空間配置がステップb)で維持されて、分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする、プロセス。
【請求項2】
分析結果を個々の細胞に適合させることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップa)が:
(i)支持体に細胞を適用すること;次に
(ii)細胞から物質を遊離すること
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップa)が:
(i)細胞から物質を遊離すること;次に
(ii)当該遊離された物質を支持体に適用すること
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(i)が基質の異なる部分に細胞から物質を遊離し、基質上に物質の空間配置を生むことを含み、ステップ(ii)がステップ(i)で生み出された空間配置を維持しながら、基質から支持体まで標的分析物を移すことを含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
基質が細胞または細胞成分に対して不透過性であるが、標的分析物および移動試薬に対しては透過性である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
支持体を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのデバイスであって、当該支持体に特異的結合試薬が固定化され、かつ、複数の異なる個々の細胞に由来する物質が、分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に適合させることを可能にする空間配置で支持体上に配置される、デバイス。
【請求項8】
(i)特異的結合試薬が固定化される支持体;および
(ii)溶解試薬および標的分析物に透過性であるが、細胞または細胞成分に不透過性である移動基質
を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するデバイスであって、移動基質が支持体と接触して、またはそのごく近くに位置する、デバイス。
【請求項9】
(i)特異的結合試薬が固定化される支持体;および
(ii)分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に適合させることを可能にする空間配置で、複数の異なる個々の細胞に由来する物質を支持体に適用するための物質アプリケ−ター
を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのキット。
【請求項10】
物質アプリケ−ターが細胞を支持体に適用し、次に細胞から物質を遊離するためのアプリケ−ターである、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
物質アプリケ−ターが細胞から物質を遊離し、次に遊離された物質を支持体に適用するためのアプリケ−ターである、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
物質アプリケ−ターが溶解試薬および標的分析物に透過性であるが、細胞または細胞成分に不透過性である基質を含む、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
以下のステップ:
a)移動基質の異なる部分に細胞又は細胞に由来する物質を適用し、移動試薬上に細胞又は細胞に由来する物質の空間配置を生むこと;次に
b)特異的結合試薬が固定化される支持体に移動基質から標的分析物を移すこと;および
c)標的分析物を特異的結合試薬と相互作用させて、細胞又は細胞に由来する物質の分析を可能にすること
を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのプロセスであって、
標的分析物の空間配置がステップb)およびc)で維持されて、分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする、プロセス。
【請求項14】
分析結果を個々の細胞に一致させることをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
移動基質が標的分析物および移動試薬に透過性である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップb)で移動試薬が移動基質に適用されて、移動基質から支持体への標的分析物の移動を可能にする、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
移動基質がステップb)の支持体と接触して、またはそのごく近くに位置し、移動基質から支持体への標的分析物の移動を促進する、請求項13〜16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
以下:
(i)特異的結合試薬が固定化される支持体;
(ii)標的分析物および移動試薬に透過性である移動基質;および
(iii)標的分析物が支持体に移される場合に、基質上の細胞又は細胞に由来する物質の空間配置を維持することを可能にする、基質から支持体に標的分析物を移すための物質移動体(transferor)
を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのキット。
【請求項19】
物質移動体が移動試薬である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
支持体が、デバイスの使用中にデバイスに適用される試薬に不透過性である、請求項1〜19のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項21】
支持体が、デバイスの使用中にデバイスに適用される試薬に透過性である、請求項1〜19のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項22】
特異的結合試薬が核酸である、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項23】
特異的結合試薬が抗体または抗体フラグメントである、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項24】
特異的結合試薬がアプタマーである、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項25】
特異的結合試薬が低分子である、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項26】
低分子が2000ダルトンより少ない分子量の有機分子である、請求項25に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項27】
低分子が少なくとも5アミノ酸残基を含むペプチドまたはペプチド類似体である、請求項25に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項28】
異なる特異的結合試薬が支持体上のパッチに固定化される、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項29】
単一細胞が特異的結合試薬のパッチに適用される、請求項28に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項30】
それぞれのパッチが少なくとも2つの試料のパラレル分析を可能にする大きさに作られる、請求項28に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項31】
少なくとも2つの細胞が特異的結合試薬のパッチに適用される、請求項30に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項32】
それぞれ個々の試料が単一細胞を含む、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項1】
以下のステップ:
a)特異的結合試薬が固定化される支持体に個々の細胞に由来する物質を適用すること;および
b)物質を特異的結合試薬と相互作用させて、物質の分析を可能にすることを含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのプロセスであって、
ステップa)で異なる個々の細胞に由来する物質が支持体の異なる部分に対して適用されて、支持体に物質の空間配置を生むこと、および当該空間配置がステップb)で維持されて、分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする、プロセス。
【請求項2】
分析結果を個々の細胞に適合させることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップa)が:
(i)支持体に細胞を適用すること;次に
(ii)細胞から物質を遊離すること
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップa)が:
(i)細胞から物質を遊離すること;次に
(ii)当該遊離された物質を支持体に適用すること
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(i)が基質の異なる部分に細胞から物質を遊離し、基質上に物質の空間配置を生むことを含み、ステップ(ii)がステップ(i)で生み出された空間配置を維持しながら、基質から支持体まで標的分析物を移すことを含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
基質が細胞または細胞成分に対して不透過性であるが、標的分析物および移動試薬に対しては透過性である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
支持体を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのデバイスであって、当該支持体に特異的結合試薬が固定化され、かつ、複数の異なる個々の細胞に由来する物質が、分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に適合させることを可能にする空間配置で支持体上に配置される、デバイス。
【請求項8】
(i)特異的結合試薬が固定化される支持体;および
(ii)溶解試薬および標的分析物に透過性であるが、細胞または細胞成分に不透過性である移動基質
を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するデバイスであって、移動基質が支持体と接触して、またはそのごく近くに位置する、デバイス。
【請求項9】
(i)特異的結合試薬が固定化される支持体;および
(ii)分析成分を使用して分析結果を個々の細胞に適合させることを可能にする空間配置で、複数の異なる個々の細胞に由来する物質を支持体に適用するための物質アプリケ−ター
を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのキット。
【請求項10】
物質アプリケ−ターが細胞を支持体に適用し、次に細胞から物質を遊離するためのアプリケ−ターである、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
物質アプリケ−ターが細胞から物質を遊離し、次に遊離された物質を支持体に適用するためのアプリケ−ターである、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
物質アプリケ−ターが溶解試薬および標的分析物に透過性であるが、細胞または細胞成分に不透過性である基質を含む、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
以下のステップ:
a)移動基質の異なる部分に細胞又は細胞に由来する物質を適用し、移動試薬上に細胞又は細胞に由来する物質の空間配置を生むこと;次に
b)特異的結合試薬が固定化される支持体に移動基質から標的分析物を移すこと;および
c)標的分析物を特異的結合試薬と相互作用させて、細胞又は細胞に由来する物質の分析を可能にすること
を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのプロセスであって、
標的分析物の空間配置がステップb)およびc)で維持されて、分析結果を個々の細胞に一致させることを可能にする、プロセス。
【請求項14】
分析結果を個々の細胞に一致させることをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
移動基質が標的分析物および移動試薬に透過性である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップb)で移動試薬が移動基質に適用されて、移動基質から支持体への標的分析物の移動を可能にする、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
移動基質がステップb)の支持体と接触して、またはそのごく近くに位置し、移動基質から支持体への標的分析物の移動を促進する、請求項13〜16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
以下:
(i)特異的結合試薬が固定化される支持体;
(ii)標的分析物および移動試薬に透過性である移動基質;および
(iii)標的分析物が支持体に移される場合に、基質上の細胞又は細胞に由来する物質の空間配置を維持することを可能にする、基質から支持体に標的分析物を移すための物質移動体(transferor)
を含む、複数の異なる個々の細胞を分析するためのキット。
【請求項19】
物質移動体が移動試薬である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
支持体が、デバイスの使用中にデバイスに適用される試薬に不透過性である、請求項1〜19のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項21】
支持体が、デバイスの使用中にデバイスに適用される試薬に透過性である、請求項1〜19のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項22】
特異的結合試薬が核酸である、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項23】
特異的結合試薬が抗体または抗体フラグメントである、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項24】
特異的結合試薬がアプタマーである、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項25】
特異的結合試薬が低分子である、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項26】
低分子が2000ダルトンより少ない分子量の有機分子である、請求項25に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項27】
低分子が少なくとも5アミノ酸残基を含むペプチドまたはペプチド類似体である、請求項25に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項28】
異なる特異的結合試薬が支持体上のパッチに固定化される、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項29】
単一細胞が特異的結合試薬のパッチに適用される、請求項28に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項30】
それぞれのパッチが少なくとも2つの試料のパラレル分析を可能にする大きさに作られる、請求項28に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項31】
少なくとも2つの細胞が特異的結合試薬のパッチに適用される、請求項30に記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【請求項32】
それぞれ個々の試料が単一細胞を含む、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス、デバイスまたはキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−181206(P2012−181206A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115879(P2012−115879)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2009−542228(P2009−542228)の分割
【原出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(506128466)オックスフォード・ジーン・テクノロジー・アイピー・リミテッド (7)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2009−542228(P2009−542228)の分割
【原出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(506128466)オックスフォード・ジーン・テクノロジー・アイピー・リミテッド (7)
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