説明

試料中のエクオールの免疫測定法

【課題】試料中のエクオールを測定する方法において、試料の前処理が必須となっており、測定結果を得るまでに多大な時間を要する。
【解決手段】エクオールを認識する抗体の作製において、免疫抗原の合成を適切に行うことにより、親和力が強く、類似物質との交差性が低い、エクオールを特異的に認識する抗体が得られる。この抗体を用いて免疫測定法を構築することにより、脱抱合処理なしに測定できる免疫測定法が確立された。その結果、試料の前処理を実施することなく、短時間でのエクオールの測定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原抗体反応を利用した、試料中のエクオールの免疫測定法である。
【背景技術】
【0002】
大豆中に含まれるイソフラボンが、乳癌、前立腺癌などに対する予防効果(抗エストロゲン効果)を有すること、および更年期障害、閉経後の骨粗鬆症・高脂血症・高血圧などに対して改善効果(エストロゲン様効果)を有することは、広く知られている。
【0003】
最近になって、大豆イソフラボンによる直接の臨床効果が疑問視され、該大豆イソフラボンに代わって大豆イソフラボンの活性代謝物であるエクオールが、臨床応用における有効性の鍵を握ると報告されている。すなわち、乳癌、前立腺癌、更年期障害および閉経後の骨粗鬆症に対して、大豆イソフラボンよりもその代謝物であるエクオールのほうが有効である旨の報告が種々見られ、現在では、エクオールが大豆イソフラボンの有効性の本体であることが支持されている。
【0004】
また、エクオールは、腸内細菌によって生成されるため、腸内の菌叢によりその生成量に違いがあり、個人差が存在することが報告されている。それゆえ、大豆加工品を摂取しても所望の抗エストロゲン効果、エストロゲン様効果が期待できないヒトが存在することは否めない。
【0005】
その後、エクオールを効率的に産生する乳酸菌が単離・同定され(特許文献1)、該乳酸菌製剤を経口摂取して乳酸菌を腸内に定着させることにより、エクオールの体内への効率的な取り込みが期待される。この時、例えば尿中のエクオールを測定することにより、該乳酸菌の腸内での定着の有無を確認することが可能となる。
【0006】
このエクオールの測定法としては、血液試料では液体クロマトグラフ質量分析装置あるいはガスクロマトグラフ質量分析計を用い、尿試料では高速液体クロマトグラフィー法などの機器分析を用いる方法が知られているが、より簡便な測定系が期待されている。
【0007】
また、イムノアッセイによるエクオールの測定法としては、時間分解蛍光イムノアッセイ法を用いたLabmaster TR−FIA Research Reagents for the Measurement of Equol(LABMASTER DIAGNOSTIC社)が市販されているが(非特許文献1)、酵素などによる試料の前処理工程が必須となっており、短時間での多検体の測定の障害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−296434号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】E. Brouwersら、Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology、2003年、84巻、p.577−588
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
簡便な測定系であるイムノアッセイ法を用いて、エクオールの測定を短時間で行えるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
エクオールの測定において、最も時間を必要とする工程は、試料の酵素などによる前処理工程である。それゆえ、該工程を必要としない測定試薬の組成を考えなければならない。また、測定の簡便性を考慮すると、イムノアッセイ法が望ましい。
【0012】
また、イムノアッセイ法において、その性能を大きく左右するものとして、抗体がある。この抗体の性質としては、抗原との結合の強さである親和力の他、類似物質との交差反応性の指標となる特異性が知られている。
【0013】
そこで、エクオールのイムノアッセイ法による測定に用いる抗体の作製法を検討したところ、包接体との結合の有無にかかわらず、同等にエクオールを測定することが可能となった。
【0014】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)試料中のエクオールを免疫法によって測定する方法において、抱合体からの脱抱合処理なしに測定することを特徴とするエクオールの免疫測定法。
(2)前記抱合体が、硫酸抱合体、グルクロン酸抱合体である(1)記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
(3)前記免疫測定法がELISA法である(1)または(2)記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
(4)前記免疫測定法がRIA法である(1)または(2)記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
(5)前記免疫測定法がイムノクロマト法である(1)または(2)記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
(6)前記免疫測定法がラテックス凝集法である(1)または(2)記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
(7)試料中のエクオールを免疫法によって測定する方法において用いる抗体が、ポリクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体である、(1)〜(6)のいずれか一項記載の免疫測定法。
(8)前記試料が、血液試料または尿試料である、(1)〜(7)のいずれか一項記載の免疫測定法。
【0015】
本発明の測定対象であるエクオールは低分子のハプテン抗原であるため、それ自体では免疫原性を有していない。そのため、免疫測定法に用いる抗体を得るためには、抗原支持物質との結合体を合成し、免疫抗原を作製しなければならばならない。
【0016】
前記抗原支持物質としては、高分子物質(分子量1万以上、好ましくは5万〜100万)が好ましく、その中でもタンパク質、脂質等が好ましい。好ましいタンパク質の例として、抗体、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、フェリチン等を挙げることができ、脂質の例として、グロポシド型糖脂質、ガングリオシド型糖脂質、リン脂質等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0017】
また、ハプテン抗原と抗原支持物質とを結合させるには、共有結合が好ましく、公知の技術を適宜用いることができる。例えば、抗原支持物質としてタンパク質を用いる場合は、N−ヒドロキシサクシイミド活性化エステル法により、ハプテン抗原に導入したサクシイミド基とタンパク質又は糖タンパク質のアミノ基とを反応させ、ハプテン抗原と抗原支持物質とを結合させることができる。
【0018】
さらに、ハプテン抗原と抗原支持物質との結合に際し、ハプテン抗原と抗原支持物資の間の距離を拡げるために、ハプテン抗原にスペーサー化合物を導入してから抗原支持物質と結合させることにより、抗体との親和性、抗体の特異性に変化を与えることができる。
【0019】
抗体の存在を検出する標識化ハプテン抗原については、前記抗原支持物質の代わりに標識物を用いることにより、同様に作製することができ、ハプテン抗原と標識物の間にスペーサー化合物を導入することにより、検出する抗体との親和性を調整することができる。
【0020】
本発明においては、エクオール、スペーサーおよび抗原支持物質または標識物質の適合性を検討した結果、抱合体からの脱抱合処理が不要な免疫測定法が可能となった。
【0021】
免疫測定法に用いるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体については、公知の方法で実施することにより作製することができる。すなわち、ポリクローナル抗体は、エクオールと抗原支持物質を結合させた免疫抗原とFreund’s complete adjuvantを混和して免疫剤を調製し、調製した免疫剤を定期的にウサギ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、ニワトリ等の皮下および/または皮内に複数回注射した後に得られる抗血清を精製または希釈することで調製できる。
【0022】
モノクローナル抗体は、エクオールと抗原支持物質を結合させた免疫抗原とFreund’s complete adjuvantを混和して免疫剤を調製し、調製した免疫剤を定期的にマウス、ラット等の皮下および/または皮内に複数回注射した後に前記免疫抗原を単独で静脈内または腹腔内注射し、数日後に摘出した脾臓より調製した脾細胞とミエローマ細胞を融合して融合細胞を選択培養する。
【0023】
増殖した融合細胞をクローン化培養し、エクオールに特異的に結合するIgG抗体を産生する細胞株を選定する。選定した細胞株を培養して得られる培養上清を精製または希釈することで調製できる。
【0024】
次に、エクオールの免疫測定法の例を以下に示すが、本発明の本質はこれらの例により限定されるものではない。
【0025】
ELISA法による尿中のエクオールの測定については、尿検体に検体希釈液を加えて希釈尿検体液を調製し、予め抗ウサギヤギ抗体を固相化しておいたマイクロプレートのウェルに調製した希釈尿検体液、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識エクオールおよび希釈した抗エクオールウサギ抗血清を加えて一定時間反応させる。反応後、ウェルを洗浄して発色基質液を加えて一定時間反応させ、一定時間後に反応を停止させて吸光度を測定し、同様に測定した検量線から、試料中のエクオール濃度を算出する。
【0026】
RIA法による尿中のエクオールの測定については、尿検体に検体希釈液を加えて希釈尿検体液を調製し、予め抗ウサギヤギ抗体を固相化しておいたマイクロプレートのウェルに調製した希釈尿検体液、125I標識エクオールおよび希釈した抗エクオール抗体産生細胞培養上清を加えて一定時間反応させる。反応後、ウェルを洗浄した後にマイクロプレートのウェルの放射線活性を測定し、同様に測定した検量線から、試料中のエクオール濃度を算出する。
【0027】
イムノクロマト法による血中のエクオールの測定については、血清検体に金コロイド標識抗エクオールマウスモノクローナル抗体を加えて希釈血清検体液を調製し、イムノクロマトストリップのサンプルパッド部に希釈血清検体液を滴下して一定時間反応させる。反応後、エクオールを固定化した捕捉部の金コロイド標識物による着色を測定し、同様に測定した検量線から、試料中のエクオール濃度を算出する。
【0028】
ラテックス凝集法による血中のエクオールの測定については、吸光度測定用セルに血清検体および抗エクオールウサギポリクローナル抗体と反応して凝集する凝集抗原を加えて一定時間反応させる。反応後、抗エクオールウサギポリクローナル抗体固定化ラテックス溶液を加えて一定時間後に2回吸光度を測定して2回の吸光度差を求め、同様に求めた検量線から、試料中のエクオール濃度を算出する。
【0029】
なお、エクオールを測定する検体としては、前記尿検体および血清検体の他、血漿検体、便検体、組織抽出物、細胞抽出物、食材等が挙げられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明を実施することにより、試料中のエクオールの測定が短時間で行われるだけでなく、前処理試薬に含まれる化合物などによる免疫反応の阻害を抑制するために、前処理済検体を希釈することによる低感度化を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1はELISA法の直接法および酵素処理法で測定した結果の相関図である。(実施例5)
【図2】図2はELISA法の直接法およびHPLC法で測定した結果の相関図である。(実施例6)
【発明を実施するための形態】
【0032】
低分子のエクオールを免疫法によって測定するときに用いる抗体の良否は、合成免疫原に左右される。さらに、包合体との結合の有無にかかわらず、エクオールを同等に測定する抗体の作製が重要となる。
以下に抗体の作製、評価および該抗体を用いた測定について説明する。
【実施例1】
【0033】
免疫原の合成
100mgのエクオール(Equol)を400μLのDMSOに溶解し、58μLのMethyl Bromoacetateおよび140mgのKCOを加えて、25℃で4時間反応させる。反応終了後に塩酸を用いて酸性に調整した後、酢酸エチルを用いて抽出を行い、脱水後に蒸発乾固した。
【0034】
続いて、展開溶媒としてクロロホルムメタノール(19:1)を用いて薄層クロマトグラフィー(1.05717、メルク ジャパン社)上で展開分離し、1分子のEquolに1分子のCME(carboxymethylether)−methylesterが導入された分画のみを回収した。
【0035】
回収した1分子ずつ結合したEquol−CME−methylesterに8Nの水酸化ナトリウムを加えて50℃で20分間加熱する。加熱後に塩酸を用いて酸性に調整した後、酢酸エチルを用いて抽出を行い、蒸発乾固してEquol−CME−acidを得た。
【0036】
得られたEquol−CME−acidの2mgに、1.5mgのN−hydroxysuccinimide(NHS)、1.5mgの水溶性カルボジイミド(WSC)を加えて20μLのDMSOに溶解して25℃で1時間反応させ、Equol−CME−NHSを得た。
【0037】
20mg/mLのBSA溶液(ウシ血清アルブミン20mgを50mM炭酸緩衝液(pH9.7)1mLに溶解)250μLに、Equol−CME−NHS(10mg/mLDMF溶液)10μLを添加して25℃で30分間反応させる。反応終了後にゲルろ過により未反応物を除き、Equol−CME−BSA抗原の原液とした。
【実施例2】
【0038】
抗血清の作製
合成した免疫原Equol−CME−BSA(2.5mg/mL)とFreund’s complete adjuvantを等量混和し、免疫剤を作製した。該免疫剤を用い、3週間毎に1mL/回をウサギの背部の数箇所に皮下注射した。免疫開始12週目から3週間毎に採血を開始し、5回の部分採血の後に全採血を実施した。採血した抗血清の抗体力価を表1に示す。
【0039】
【表1】

【実施例3】
【0040】
エクオール測定ELISAキットの作製
1.抗ウサギヤギ抗体固相化プレートの作製
96穴マイクロプレートの各ウェルに10μg/mLの抗ウサギヤギ抗体溶液を100μL加える。4℃で2晩静置した後に抗ウサギヤギ抗体溶液を吸引除去する。
【0041】
吸引除去した96穴マイクロプレートの各ウェルに0.5mg/mLのウシ血清アルブミン溶液を300μL加える。4℃で18時間静置した後に、ウシ血清アルブミン溶液を吸引除去し、真空乾燥して抗ウサギヤギ抗体固相化プレートとする。
【0042】
2.西洋ワサビパーオキシダーゼ標識エクオールの作製
100mgのエクオール(Equol)を400μLのDMSOに溶解し、58μLの4−Bromo−n−butylic Acidおよび140mgのKCOを加えて、25℃で4時間反応させる。反応終了後に塩酸を用いて酸性に調整した後、酢酸エチルを用いて抽出を行い、脱水後に蒸発乾固した。
【0043】
続いて、展開溶媒としてクロロホルムメタノール(19:1)を用いて薄層クロマトグラフィー(1.05717、メルク ジャパン社)上で展開分離し、1分子のEquolに1分子のCPE(carboxypropylether)−methylesterが導入された分画のみを回収した。
【0044】
回収した1分子ずつ結合したEquol−CPE−methylesterに8Nの水酸化ナトリウムを加えて50℃で20分間加熱する。加熱後に塩酸を用いて酸性に調整した後、酢酸エチルを用いて抽出を行い、蒸発乾固してEquol−CPE−acidを得た。
【0045】
得られたEquol−CPE−acidの2mgに、1.5mgのN−hydroxysuccinimide(NHS)、1.5mgの水溶性カルボジイミド(WSC)を加えて20μLのDMSOに溶解して25℃で1時間反応させ、Equol−CPE−NHSを得た。
【0046】
20mg/mLのHRP溶液(西洋ワサビペルオキシダーゼ20mgを50mM炭酸緩衝液(pH9.7)1mLに溶解)250μLに、Equol−CPE−NHS (10mg/mLDMF溶液)10μLを添加して25℃で30分間反応させる。反応終了後にゲルろ過により未反応物を除き、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識エクオール溶液の原液とした。
【0047】
3.検体希釈液、標準希釈液
100%ヒトフリー血清(SERACON II:CD INTERGEN社)を用いた。
【0048】
4.試験緩衝液の組成
150mM塩化ナトリウム、0.5%ウシ血清アルブミン、0.01%tween20、0.1%プロクリン300、50μg/mL塩酸ロメフロキサシン、5μg/mLラクトパーオキシダーゼ含有0.1Mりん酸緩衝液(pH7.5)を試験緩衝液とした。
また、100mM塩化ナトリウム、0.025%tween20含有0.3mMりん酸緩衝液(pH7.5)を洗浄液とした。
【0049】
5.基質
0.05%過酸化水素水、2.2mg/mL OPD(o−フェニレンジアミン二塩酸塩)含有50mMくえん酸緩衝液(pH5.5)を基質とした。
【0050】
6.反応停止液
3N硫酸を反応停止液とした。
【0051】
7.酵素液
検体の前処理用の酵素液として、0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)2mLに、β−グルクロニダーゼ(ROCHE社)2.48μLおよび精製水で100mg/mLに溶解したスルファターゼ(SIGMA社)26.4μL加えて調製した。
【実施例4】
【0052】
ELISAキットによるエクオールの測定(直接法)
尿検体20μLに検体希釈液200μL加えて、11倍希釈尿検体を調製する。抗ウサギヤギ抗体固相化プレートのウェルに、11倍希釈尿検体20μL、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識エクオール溶液50μLおよび抗エクオールウサギ抗血清溶液50μLを加え、攪拌後に25℃で1時間静置する。
【0053】
抗ウサギヤギ抗体固相化プレートのウェルから反応溶液を除去した後に洗浄液を用いて3回ウェルを洗浄する。洗浄後、抗ウサギヤギ抗体固相化プレートのウェルに基質を100μL加え、25℃で30分間静置する。その後、抗ウサギヤギ抗体固相化プレートのウェルに反応停止液を100μL加え、波長490nmの吸光度を測定し、同様に測定した検量線から、試料中のエクオール濃度を算出する。
【0054】
ELISAキットによるエクオールの測定(酵素処理法)
尿検体20μLに検体希釈液200μL加えて、11倍希釈尿検体を調製する。11倍希釈尿検体50μLに酵素液50μL加え、攪拌後に37℃で1晩静置する。その後、中和液(0.5Mりん酸2Na(pH8.8))を50μL加えて、酵素処理検体とする。
抗ウサギヤギ抗体固相化プレートのウェルに、該酵素処理検体20μL、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識エクオール溶液50μLおよび抗エクオールウサギ抗血清溶液50μLを加え、攪拌後に25℃で1時間静置する。
【0055】
抗ウサギヤギ抗体固相化プレートのウェルから反応溶液を除去した後に洗浄液を用いて3回ウェルを洗浄する。洗浄後、抗ウサギヤギ抗体固相化プレートのウェルに基質を100μL加え、25℃で30分間静置する。その後、抗ウサギヤギ抗体固相化プレートのウェルに反応停止液を100μL加え、波長490nmの吸光度を測定し、同様に測定した検量線から、試料中のエクオール濃度を算出する。
【実施例5】
【0056】
酵素処理の有無によるエクオールのELISA測定値の比較
尿検体9例について、ELISAキットによるエクオールの測定を、直接法および酵素処理法を用いて実施した。得られた測定値の比較を図1に示すが、直接法では酵素処理法と比較して測定値が約1/3と低値を示したが、相関係数r=0.993と高い相関性を示した。
【実施例6】
【0057】
HPLC法との相関
HPLC法による測定結果が得られている尿検体12例について、エクオールの直接法によるELISA測定を実施した。得られた測定値とHPLC法での測定値の比較を図2に示すが、EISA法の測定値はHPLC法と比較して測定値が約1/4と低値を示したが、相関係数r=0.979と高い相関性を示した。
【実施例7】
【0058】
交差反応性
エクオールの希釈系列及び、交差反応性確認用抗原希釈系列を測定し、標準0の50%の吸光度を示す濃度(50%抑制濃度:IC50)を比較し、エクオールの希釈系列のIC50に対する比率を交差反応率とした。
【0059】
結果を表2に示すが、エクオールの前駆物質であるダイゼインをはじめとして、類似構造を有する他の物質との交差性は1%以下であった。
【0060】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0061】
抗エストロゲン効果、エストロゲン様効果を期待して、大豆加工品を摂取する際に、尿中、血液中のエクオール濃度を測定することにより、その効果の有無が判断されるが、その測定には長時間を要し、日常の測定には適さない。
【0062】
しかし、本発明により、尿中、血液中のエクオールを短時間で測定することが可能となり、エクオールを産生する安全な乳酸菌製剤の投与の効果の判断も含め、大豆加工品の摂取の効果を類推することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のエクオールを免疫法によって測定する方法において、抱合体からの脱抱合処理なしに測定することを特徴とするエクオールの免疫測定法。
【請求項2】
前記抱合体が、硫酸抱合体、グルクロン酸抱合体である請求項1記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
【請求項3】
前記免疫測定法がELISA法である請求項1または2記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
【請求項4】
前記免疫測定法がRIA法である請求項1または2記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
【請求項5】
前記免疫測定法がイムノクロマト法である請求項1または2記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
【請求項6】
前記免疫測定法がラテックス凝集法である請求項1または2記載の試料中のエクオールの免疫測定法。
【請求項7】
試料中のエクオールを免疫法によって測定する方法において用いる抗体が、ポリクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体である、請求項1〜6のいずれか一項記載の免疫測定法。
【請求項8】
前記試料が、血液試料または尿試料である、請求項1〜7のいずれか一項記載の免疫測定法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−169507(P2010−169507A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11668(P2009−11668)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)