説明

試薬調製方法

【課題】数cm四方程度の基板上に作製した超小型の溝流路からなる比色法による血液検査チップでは、微量な血液から健康・疾病状態を診断において、試薬は使い切らない内に劣化して破棄しなければならないことが起きる。高価な試薬を有効活用するために、必要な試薬の量に分け、これを長期保存できるような形態にする。
【解決手段】血液検査チップを用いて比色法によって検査する場合、使われる比色用試薬に二糖類、特にトレハロース溶融液を混合し、凍結乾燥して調製することにより長期保存性を向上させ、使用時には乾燥で除去された水分と同量の水分を導入して用いる。更にトレハロースに動物性ゼラチンを混合し、反応開始時間を短縮させる。更に動物性ゼラチンの代わりに人工の有機物ゲルを用いた試薬調製法により長期保存性と反応開始時間の短縮を両立させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英板や高分子樹脂板などの基板に作製した超小型の溝流路から構成される血液検査チップによって血液検体中の被検物質を測定するために、トレハロースなどの二糖類を含む試薬液を乾燥させ、測定時には当該乾燥試薬に乾燥分に相当する溶液を導入することによって調製された試薬を用い、血漿中の被検物質との反応によって生じた発色の度合いを一定時間の後に吸光度測定して被検物質の濃度を検査する血液分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の健康診断や疾病状態の診断は、患者から数ccの多量の血液を採取し、その分析に大規模な自動血液分析装置で得た測定値より行われてきた。通常、このような自動分析装置は、病院などの医療機関に設置されており、規模が大きく、また、その操作は専門の資格を有するものに限られるものであった。
【0003】
しかし、近年、極度に進歩した半導体装置作製に用いられる微細加工技術を応用し、たかだか数mmから数cm四方の基板上に種々のセンサなどの分析装置を配置して、そこに被験者の血液などの体液を導き、被験者の健康状態を瞬時に把握することができる血液検査チップと呼ばれる新しいデバイスの開発とその実用化の気運が高まってきている。このような安価なデバイスの出現により、来たるべき高齢化社会において高齢者が日々の健康管理を在宅で可能にすることなどで増加の一途を辿る健康保険給付金の圧縮を図れる。また救急医療の現場においては被験者の感染症(肝炎、後天性免疫不全症など)の有無などを、本デバイスを用いて迅速に判断できれば適切な対応ができるなど、種々の社会的な効果が期待されるために非常に注目されつつある技術分野である。このように従来の自動分析装置に代わって、血液分析を各家庭で自らの手で実施することを目指した小型簡便な血液分析方法ならびに血液分析装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】 特開2001−258868号公報
【0005】
特許文献1に記載されたマイクロモジュール化された血液分析チップでは、高分子基板上に微細な溝流路が設けられ、その一端には針が取り付けられており、他端からポンプにより針から血液を溝に導入し、U字状流路に導入後、遠心分離で血球と血漿の分離後、当該血漿を電気化学センサに当該ポンプによって導き、血漿中に被検物質の濃度を測定する。その結果、血液中のpH値、酸素、二酸化炭素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、グルコース、乳酸などの各濃度が測定される。
【0006】
しかし、電気化学センサでは肝機能測定用の被検物質であるγ−GTP、GOT、GPT、アミラーゼなどの各酵素の活性度や総コレステロールや中性脂肪などの一般生化学物質の濃度の測定は容易ではなく、γ−GTP、GOT、GPTの各酵素の活性度は、特許文献2と特許文献3では比色法を用いて測定を可能にしている。従って、大規模な自動血液検査装置では、ナトリウムやカリウムなどの電解質のイオンは電気化学的に測定するが、他の項目は比色法が主流である。
【0007】
【特許文献2】 特開2004−109099
【特許文献3】 特開2005−114438
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動血液検査装置では、大量の血液を採取し、遠心法などを用いて分離されて得られた大量の血漿と多量の試薬液との混合を試験管内で行い、その反応を吸光度によって測定される。この試薬液は、薬液製造元から10mL〜100mLのポリプロピレン製などの容器に密封で出荷されるが、一旦その封を開けると、空気や湿気などとの接触により特性が劣化し、高々一ヶ月程度しか保存できない。自動血液検査装置の場合は、多くの血液検査を行なうため、試薬の消費は激しく、有効期限以内に消費される。しかし、微細な流路からなる数cmの高分子などからなる基板に形成された血液検査チップを用いて数μL程度の全血から分離した血漿中の被検物質を測定するためには、高々その量の100倍程度の試薬量しか使わないので、頻繁に使用しないと使い切らない内に劣化してしまうため、廃却することになってしまう。
【0009】
従って、高価な試薬を有効活用するためには、必要な試薬の量に分け、これを長期保存できるような形態にすることが不可欠である。
【0010】
一方、酵素の安定化に糖類が有効であることは良く知られ、酵素水溶液の凍結乾燥操作などにより実用化されている。また、近年は、二糖類であるトレハロースの種々の生理機能が話題になっており、食品、化粧品、医療などの用途で産業的に応用されている。
【0011】
文献1によると糖は、生物が乾燥や凍結により細胞内から水を奪う作用に対し、生命維持のための防御機構として、細胞内に産生し、この糖の水酸基が水の代理機能を果たすことにより、タンパク質や生体膜の破壊を防いでいると云われている。多くの場合、主役となる糖は、D−グルコースが1,1結合した非還元性二糖のトレハロースである。このトレハロースの乾燥ストレスへの防御のモデルとして、水置換説とガラス状態仮説の二つの仮説が提案されている。前者では、完全脱水状態においてトレハロースは細胞膜やタンパク質の表面に直接水素結合し、結果的には結合水の代理をすると考えられている。一方、後者の説では、完全脱水状態に至る前に、濃縮された糖−水混合系がガラス化されてしまうことも有り得、その結果、細胞膜やタンパク質は一種のミクロカプセルの中に閉じ込められることになり、それらの構造は天然状態のまま凍結されてしまうと考えられている。
【文献1】
【0012】
桜井 実、井上義夫、「細胞のストレス耐性と糖の役割−トレハロースは特異な保護剤か−」、Vol.34,No.4,「表面」(1996),pp.213−219.
【0013】
この特異なトレハロースなどの二糖類を、小型化された血液分析装置として知られているドライケミストリー法に適用した例が特許文献4に述べられている。富士写真フイルム株式会社のドライケムの例を取ると、試薬スライド透明支持体(プラスチックフィルム)上に分析反応に必要な試薬を含有した試薬層がコーティングされ、この試薬層には反応に必要な試薬が調製済みにし、ゲル中に乾燥した状態で保持され、更にこの上に反射測光を可能にする反射層と検体を均一に展開させる展開層が積層された4層構造になっている。該展開層に少なくとも酵素及び二糖類を含有する水溶液を供給し、約30〜70℃の温風を当てて乾燥すると、保存性が改善されたと述べられている。トレハロース以外に、シュクロース、マルトース、マンイトール、グルコースなども試されたが、トレハロースが最良の結果を与えた。
【0014】
【特許文献4】 特開2000−35427
【0015】
試薬液を用いた比色法による血液検査チップも、当該ドライケミストリー法と同様に、封を開けた後の未使用の試薬の長期保存性が不可欠となる。そこで、当該試薬にトレハロースなどの二糖類を添加すると長期保存の実現が期待される。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、石英板や高分子樹脂板などの絶縁材基板に作製した超小型の溝流路からなる血液検査チップに微量(数μL程度)の血漿と比色用試薬を導入する際、当該比色用試薬にトレハロースなどの二糖類、及び他の物質が添加された溶液を混合し、その混合液を凍結乾燥し、使用時に乾燥時に放出された同量の水分を当該乾燥試薬に導入して比色用試薬を調製する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願第1発明は、上記の課題を解決するために、石英板や高分子樹脂板などの絶縁材基板に作製した超小型の溝流路からなる血液検査チップを用いた比色法検査において、当該比色用試薬に二糖類、及び他の物質が添加された溶液を混合する工程と、その混合液を凍結乾燥する工程と、使用時に乾燥時に放出された同量の水を当該乾燥試薬に導入する工程からなることを特徴とする比色用試薬の調製方法を提供する。
【0018】
本願第2発明は、本願第1発明において、当該二糖類はトレハラロースであることを特徴とする試薬調製方法を提供する。これにより、試薬液の長期保存化が図れる。
【0019】
本願第3発明は、本願第1発明と本願第2発明において、当該他の物質は動物性由来のゼラチンであることを特徴とする試薬調製方法を提供する。
【0020】
本願第4発明は、本願第1発明と本願第3発明において、当該他の物質は人工の有機物由来のゲルであることを特徴とする試薬調製方法を提供する。
【0021】
本願第5発明は、本願第1発明と本願第2発明において、トレハロースの濃度はトレハロース溶融液と比色用試薬の混合液の総量の5%以上であることを特徴とする試薬調製方法を提供する。
【0022】
本願第6発明は、本願第1発明と本願第2発明と願第3発明の試薬調製方法にあって、当該比色用試薬へ混合されるトレハロースの濃度と他の添加物質の各濃度は、その総量の2.5%以上であることを特徴とする試薬調製方法を提供する。
【0023】
本願第7発明は、本願第1発明と本願第2発明の試薬調製方法にあって、当該比色用試薬とトレハロース溶液の混合比は1:1であることを特徴とする試薬調製方法を提供する。
【0024】
本願第8発明は、本願第1発明と本願第2発明と願第3発明にあって、当該比色用試薬とトレハロース溶液と他の添加物質の溶液の混合比は1:0.5:0.5であることを特徴とする試薬調製方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
比色用試薬に二糖類、及び他の物質が添加された溶液を混合する工程と、その混合液を凍結乾燥する工程と、使用時に乾燥時に放出された同量の水を当該乾燥試薬に導入する工程からなることを特徴とする比色用試薬の調製方法にあって、二糖類としてトレハロースを添加することにより、試薬液の長期保存化が図れ、当該他の物質として動物性由来ゼラチンを添加することによりで、反応完了時間を短縮でき、更に動物性由来ゼラチンを人工の有機物由来ゲルに代えることにより当該比色用試薬特性の劣化が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
使用する比色用試薬に二糖類、特にトレハロース溶融液を混合させ、凍結乾燥して調製することにより長期保存性を向上させ、使用時には乾燥で除去された水分と同量の水分を導入して用いる。更に当該トレハロースに加え、動物性ゼラチンを添加することで、反応開始時間を短縮させても好ましい。また、当該動物性ゼラチンの代替として人工の有機物ゲルを用いた試薬調整法を提供することにより長期保存性と反応開始時間の短縮を両立させることが可能となる。
【実施例】
【0027】
<実施例1>
トリグリセライド(中性脂肪)を被検物質の例として本発明を以下に説明する。測定用試薬としてトリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)のキットを用いた。測定法はグリセロール−3−リン酸オキシダーゼ(GPO)を用いた酵素法である。当該キットは緩衝液と発色剤と基準液からなり、発色剤びんを緩衝液1びんで溶解し、発色剤として用いた。更に、当該発色剤に10%と20%のトレハロース水溶液を混合する。トレハロースとして分子量は342.3、純度は99%である無水D−トレハロース(ACROS ORGANICS、USA)を用いた。混合は、発色剤と1.5mLの水に溶かしたトレハロース水溶液の1.5mLを1:1の割合で行い、計3mLにし、これらを−85℃、3Torrで一昼夜凍結乾燥した。凍結乾燥後、乾燥した水分と同量の3mLを導入し、攪拌した。そして、キュベットに(1)〜(3)の溶液を濃度300mg/dLの当該基準液に導入し、1cmの光路長で600nmの光を通し、その吸光度を調べた。図1は、吸光度の時間変化を示す。参照として発色剤のみの場合と比較した。全ての特性が原点を通らないのは、実験開始に少し遅れがあり、その間に反応が進むためである。発色剤のみの場合、300秒付近で吸光度は飽和するが、10%トレハロースを添加すると反応完了時間が450秒付近と遅れ、20%のトレハロース添加では更に550秒付近に遅れた。シュクロース、マルトース、マンイトール、グルコースなども試されたが、似た傾向を示した。これは、発色剤がトレハロースによりタイトに保護され、基準液との反応開始が遅らされたためと考えられる。
【0028】
そこで、トレハロースのタイトに発色剤を包んでいることに対して、当該包含性を緩和することを目的に、トレハロースに10%と20%の動物由来ゼラチンを混合した。動物由来ゼラチンは関東化学株式会社製を用いた。これは、豚の皮膚や軟骨や靭帯から得られたコラーゲンの部分加水分解によって生じた粉状タンパク質である。反応開始が大幅に遅れた20%のトレハロース水溶液に10%、及び20%の動物由来ゼラチンを溶かして1.5mLにし、同様の実験を行った。図2は、その吸光度の時間変化を示す。10%の動物由来ゼラチンを添加すると反応完了時間が350秒付近と相当改善され、20%の動物由来ゼラチン添加では発色剤の300秒とほぼ同じになった。シュクロース、マルトース、マンイトール、グルコースなども試されたが、似た傾向を示した。
【0029】
次に、トレハロースの添加目的の長期保存性について調べた。図3は、発色剤のみ、20%トレハロース添加、それに20%動物由来ゼラチン添加の3つの場合に対して、凍結乾燥後に直ぐ融解させた場合と30日間4℃に冷蔵保存後融解させた後の吸光度の変化を調べた結果である。発色剤のみの場合、30日後は吸光度が激減し、劣化が著しく進んだが、20%トレハロース添加の場合は80%の劣化に留まった。それに対して、20%トレハロースに20%動物由来ゼラチンを添加した場合は、融解直後の使用の場合の50%程度に劣化した。これは、当該ゼラチンが動物性由来であり、凍結乾燥を行なっても動物が有する酵素が発色液と長期間で徐々に反応すると考えられる。本実施例では、動物由来のゼラチンを用いたが、魚由来のゼラチンは更に劣化が激しく、30日後は反応をほとんど示さなかった。しかしながらトレハロース添加、あるいはトレハロース+動物性ゼラチンの場合には発色剤のみの場合と比較して、長期保存性が大きく向上していることが示された。
【0030】
<実施例2>
発色剤の性能をトレハロースによる包含を用いた長期保存性能を維持し、更に反応開始時間を早めるゼラチンの添加効果を両立させるため、動物由来のゼラチンの代わりに人工の有機物ゲルの添加を試みた。そこで、水に可溶な有機マトリックスとしてポリビニールアルコール(PVA)を選択した。PVAは重合度が500のものを用い、50℃で超音波中で水に溶解させた。20%のトレハロース水溶液に10%、及び20%のPVAを溶かして1.5mLにし、実施例1に述べた実験を行った。図4は、その吸光度の時間変化を示す。結果は、図2に示した特性と遜色が無く、20%のPVAでは発色剤の300秒とほぼ同じになった。しかし、吸光度は全体的に低目を示したが、この原因は不明である。一方、図3に示した凍結乾燥後に直ぐ融解させた場合と30日間4℃に冷蔵保存ご融解させた後の吸光度の比較では、当該発色剤に20%ゼラチンを添加した場合の20%の劣化とほぼ同じ値を示した。
【0031】
<実施例3>
図5は、発色剤とトレハロースなどを混ぜた試薬の凍結乾燥と水溶液に戻す容器の一例を示す。容器材料は比較的軟らかく、しかも空気成分の透過性の低い高分子を用いる。まず、(a)で、101は当該混合液を格納された容器であり、102は凍結後に水溶液に戻すための水を格納される予定の容器である。103の混合液導入口から混合液が注入され、104はその混合液を示す。105は、水導入口であり、106は混合液と水を隔てるための壁であり、107はその断面を示し、圧力を掛けるとスリットが割れるラプチャー・ディスクと呼ばれる構造になっている。(b)は凍結乾燥後を示し、108は凍結乾燥試薬である。その後、103の混合液導入口は、短く高周波や超音波などにより閉じられる。109は閉じられた構造を示し、溶液が滞留しない構造にする。(c)では、この容器を逆にし、105の水導入口から凍結乾燥時に蒸発した分と同量の水110を102内に注入する。(d)では、105の水導入口を同じく高周波や超音波などにより閉じられる。111は閉じ口を示す。次に、112の部分を指で強く押し、ラプチャー・ディスク106を破って水を凍結乾燥剤に導入し、そして手で振って攪拌する。113は水で戻された混合液である。最後に使用時の(e)では111の閉じ口を鋏やナイフ114で切り、混合液を検査チップの導入口に導入する。
【0032】
図6は、調製試薬を用いた血液検査実験用チップを示す。201は、当該チップの裏基板であり、その上にマイクロ流路が形成された上層基板の202が貼り付けられる。大きさは、(横)23mm×(縦)27mm×(厚さ)3mmである。両基板は共にPET(ポリエチレンテレフタレート)製であり、流路パターンは、ガラス板状に塗布したSU−8レジストに光露光・スプレー現像で形成され、PET板上に100℃、0.15MPaで押し付けて作られ、両基板は熱圧着された。203は、試薬と血漿を導入するリザーバであり、これはエンドミル加工で開けられ、低部の直径は8mmΦ、深さは2.5mmである。血漿と試薬を導入するため、このリザーバの上部に直径1mmΦの孔204が開けられている。また、このリザーバは上部の直径は7mmΦのテーパ形状になっており、これは、遠心回転中心205を中心として回転させる時、血漿と試薬が外部に漏れないようにするためである。206は血漿と試薬を混合させるための流路であり、100μm角の断面積になっている。血漿と試薬が混合されたのに、1mm角の断面を有する測定流路207に導入される。流路207を混合液で満たした後、余った混合液は、100μm角の断面積を有する案内流路208を経て、500μm角の断面で長さ10mmのウェステ209に溜められる。210は空気抜き用流路である。211は直径1mmΦのプスラスチックファイバーであり、片方から白色光が入射され、片方で分光計測される。
【0033】
図5では、発色剤とトレハロースなどを混ぜた試薬の凍結乾燥と水溶液に戻す容器の一例を示したが、図6の血液検査実験用チップの203のリザーバに予め混合試薬溶液を導入し、チップの中で凍結乾燥させ、そのまま保存し、使用時には乾燥により蒸発した水分と同量の水分を孔204に注入して測定に用いることも出来る。
【0034】
図6の血液検査実験用チップを用い、発色剤に20%トレハロースとそれに20%PVAを添加し、凍結乾燥した試薬に、乾燥分と同量の水を入れ、試薬を溶液状に戻し、当該試薬と血清の混合比が150:1になるよう秤量して、リザーバ203の上部の導入孔204から導入した。次に、回転中心205を中心に、3000回転/分で回転し、遠心力で206の混合させるための流路で混合して、測定流路207に導入され、吸光度が測られた。図7は100mg/dL、200mg/dL、300mg/dL、596.1mg/dLの基準液の濃度変化に対して吸光度を測定したトリグリセライドの検量線を示す。正常人の値は50〜130mg/dLであり、異常値に対して正確に測定できることを示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】発色剤のみ、及び発色剤に10%と20%のトレハロース水溶液を混合し、凍結乾燥後、乾燥した同量の水分を導入して溶液に戻し、基準液との反応時間と吸光度の時間変化を示す図である。
【図2】発色剤に20%のトレハロース水溶液を混合し、更に10%と20%の動物性ゼラチンを添加し、図1と同じ方法によって得られた基準液との反応時間と吸光度の時間変化を示す図である。
【図3】発色剤のみ、発色剤に20%のトレハロース水溶液を混合し場合、20%の動物性ゼラチンを添加し場合に対して、凍結乾燥の直後、及び30日経過後に各々水溶液に戻してその吸光度の変化を比較した図である。
【図4】発色剤に20%のトレハロース水溶液を混合し、更に10%と20%のPVAを添加し、図1と同じ方法によって得られた基準液との反応時間と吸光度の時間変化を示す図である。
【図5】凍結乾燥し、水を添加して試薬液にし、チップに導入する容器を示す図である。
【図6】トリグレセライドの検量線を得るために用いられた実験用検査チップの概略を示す図である。
【図7】トリグレセライドの検量線を示す図である。
【符号の説明】
101 当該混合液を格納された容器
102 凍結後に水溶液に戻すための水を格納される予定の容器
103 混合液導入口
104 混合液を
105 水導入口
106 混合液と水を隔てるための壁
107 混合液と水を隔てるための壁断面
108 凍結乾燥試薬
109 閉じられた構造
110 凍結乾燥時に蒸発した分と同量の水(110)
105 水導入口の閉鎖
111 閉じ口
112 圧力印加部分
113 水で戻された混合液
114 鋏等のカッター
201 チップの裏基板
202 上層基板
203 リザーバ
204 試薬と血漿の導入孔
205 回転中心
206 血漿と試薬の混合用流路
207 比色測定用流路
208 案内流路
209 ウエステ
210 空気抜き用流路
211 プスラスチックファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英板や高分子樹脂板などの絶縁材基板に作製した超小型の溝流路からなる血液検査チップを用いた比色法検査にあって、比色用試薬に二糖類、及び他の物質が添加された溶液を混合する工程と、その混合液を凍結乾燥する工程と、使用する時に乾燥時に放出された同量の水を当該乾燥試薬に導入する工程からなることを特徴とする比色用試薬の調製方法。
【請求項2】
請求項1の試薬調製方法にあって、当該二糖類はトレハロースであることを特徴とする試薬調製方法。
【請求項3】
請求項1の試薬調製方法にあって、他の当該物質は動物性由来ゼラチンであることを特徴とする試薬調製方法。
【請求項4】
請求項1の試薬調製方法にあって、他の当該物質は人工の有機物由来のゲルであることを特徴とする試薬調製方法。
【請求項5】
請求項1と2の試薬調製方法にあって、トレハロースの濃度はトレハロース溶融液と比色用試薬の混合液の総量の5%以上であることを特徴とする試薬調製方法。
【請求項6】
請求項1と2と3の試薬調製方法にあって、当該比色用試薬へ混合されるトレハロースの濃度と他の添加物質の各濃度は、その総量の2.5%以上であることを特徴とする試薬調製方法。
【請求項7】
請求項1と2の試薬調製方法にあって、当該比色用試薬とトレハロース溶液の混合比は1:1であることを特徴とする試薬調製方法。
【請求項8】
請求項1と2と3の試薬調製方法にあって、当該比色用試薬とトレハロース溶液と他の添加物質の溶液の混合比は1:0.5:0.5であることを特徴とする試薬調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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