説明

試験支援器具および低圧気中遮断器の試験方法

【課題】 遮断器の制御回路および補機の組み合わせによらず、補機の試運転に先立って、制御回路のシーケンスを含めた遮断器の試験を行う。
【解決手段】 筐体内に収納され、保護対象の補機と電気的に接続される接続位置からの引き出し量に応じて順次試験位置および断路位置となる引き出し形の低圧気中遮断器の動作試験に用いられる試験支援器具であって、前記筐体内に固定される固定部と、前記筐体内に配置された第1の位置検出スイッチが前記低圧気中遮断器の一部に押下されることによって前記低圧気中遮断器が前記試験位置にあることを検出する場合に、前記筐体内に配置され、前記低圧気中遮断器の一部に押下されることによって前記低圧気中遮断器が前記接続位置にあることを検出する第2の位置検出スイッチを押下する押下部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験支援器具および低圧気中遮断器の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや工場などの施設で用いられる低圧気中遮断器として、例えば特許文献1に開示されている引き出し形のものが知られている。
【0003】
当該引き出し形の遮断器は、図5に示すように、遮断器本体1が接続位置(運転位置)にある場合に、主回路接続部11が主回路端子5と接続されることによって、モータ(電動機)などの保護対象の補機(不図示)と電気的に接続される。この場合、例えば、遮断器本体1の下部に設けられた突起部12に位置検出スイッチ4が押下されることによって、遮断器本体1が接続位置にあることが検出される。
【0004】
また、遮断器を制御する制御回路のシーケンスなどの試験を行う場合には、図6に示すように、遮断器本体1は、接続位置から試験位置まで引き出される。この場合、主回路接続部11と主回路端子5とは接続されず、突起部12に位置検出スイッチ3が押下されることによって、遮断器本体1が試験位置にあることが検出される。
【0005】
また、遮断器の点検などを行う場合には、図7に示すように、遮断器本体1は、試験位置からさらに断路位置まで引き出される。さらに、扉91を備えた開口部を介して、遮断器本体1全体を筐体9から引き出すこともできる。
【0006】
このようにして、引き出し形の遮断器は、接続位置からの引き出し量に応じて順次試験位置および断路位置とすることによって、補機の運転や、遮断器の試験・点検などを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−154315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、施設の定期点検工事などで補機の試運転を行う際に、何らかの理由でシーケンスの開始条件が成立していない場合、遮断器の開閉操作を行うことができず、試運転工程全体が遅延する場合がある。そのため、補機の試運転に先立って、遮断器と補機とを電気的に接続することなく、遮断器の動作試験を行っておくことが望ましい。
【0009】
しかしながら、遮断器の制御回路および補機の構成によっては、遮断器が試験位置にある状態では、遮断器の開閉操作が試験用の押しボタンスイッチによってのみ可能なものもある。そのため、当該組み合わせにおいては、事前に遮断器単体の動作試験を行うことはできるものの、シーケンスの開始条件の成立を確認することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決する主たる本発明は、筐体内に収納され、保護対象の補機と電気的に接続される接続位置からの引き出し量に応じて順次試験位置および断路位置となる引き出し形の低圧気中遮断器の動作試験に用いられる試験支援器具であって、前記筐体内に固定される固定部と、前記筐体内に配置された第1の位置検出スイッチが前記低圧気中遮断器の一部に押下されることによって前記低圧気中遮断器が前記試験位置にあることを検出する場合に、前記筐体内に配置され、前記低圧気中遮断器の一部に押下されることによって前記低圧気中遮断器が前記接続位置にあることを検出する第2の位置検出スイッチを押下する押下部と、を備えることを特徴とする試験支援器具である。
【0011】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遮断器の制御回路および補機の組み合わせによらず、補機の試運転に先立って、制御回路のシーケンスを含めた遮断器の試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における試験支援器具を用いて、遮断器の動作試験を行う場合の位置関係を示す透過側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における試験支援器具を用いて、遮断器の動作試験を行う場合の位置関係を示す透過平面図である。
【図3】本発明の一実施形態における試験支援器具を用いて、遮断器の動作試験を行う場合の位置関係を示す背面図である。
【図4】本発明の一実施形態における試験支援器具の形状を示す斜視図である。
【図5】遮断器が接続位置にある場合の位置関係を示す透過側面図である。
【図6】遮断器が試験位置にある場合の位置関係を示す透過側面図である。
【図7】遮断器が断路位置にある場合の位置関係を示す透過側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0015】
===遮断器の構成および作用の概略===
以下、図1ないし図3を参照して、本発明の一実施形態における試験支援器具を用いて動作試験が行われる遮断器の構成および作用の概略について説明する。
なお、図1は、筐体9を透過した側面図であり、図2は、筐体9および遮断器本体1を透過した平面図であり、図3は、筐体9内を背面(図1および図2において左側)の開口部を介して見た背面図である。また、図1ないし図3に示されている試験支援器具2についての詳細な説明は後述する。
【0016】
図1に示されている遮断器は、例えばビルや工場などの施設で用いられる引き出し形の低圧気中遮断器であり、筐体9内には、遮断器本体1のほか、位置検出スイッチ3、4、および主回路端子5が収納されている。
【0017】
筐体9の背面には、遮断器本体1全体を引き出すことができる開口部が設けられており、当該開口部には、開閉可能な扉91が取り付けられている。なお、図3は、扉91が開放された状態を示している。また、筐体9内の奥側の壁面には、主回路端子5が配置され、筐体9内の底面には、位置検出スイッチ3および4が配置されている。
【0018】
遮断器本体1は、主回路接続部11、突起部12、および車輪13を備えている。また、主回路接続部11は、主回路端子5と対抗するように設けられ、突起部12および車輪13は、遮断器本体1の下部に設けられている。なお、車輪13は、レール(不図示)などによって案内され、遮断器本体1は、筐体9内を直線方向(図1および図2において左右方向)に移動することができる。
【0019】
位置検出スイッチ3(第1の位置検出スイッチ)は、遮断器本体1が試験位置にある場合に突起部12に押下されるように配置されている。したがって、位置検出スイッチ3は、突起部12に押下されることによって、遮断器本体1が試験位置にあることを検出することができる。なお、図1ないし図3は、遮断器本体1が試験位置にある状態を示している。そして、この状態においては、主回路接続部11と主回路端子5とは接続されず、試験用の押しボタンスイッチ(不図示)などによって遮断器単体の動作試験のみが可能となっている。
【0020】
位置検出スイッチ4(第2の位置検出スイッチ)は、遮断器本体1が接続位置にある場合に突起部12に押下されるように配置されている。したがって、位置検出スイッチ4は、突起部12に押下されることによって、遮断器本体1が接続位置にあることを検出することができる。そして、この状態においては、主回路接続部11が主回路端子5と接続されることによって、遮断器本体1がモータなどの保護対象の補機(不図示)と電気的に接続され、当該補機の運転が可能となっている。
【0021】
なお、位置検出スイッチ3および4としては、例えばマイクロスイッチなどが用いられる。また、遮断器本体1が試験位置からさらに引き出され、位置検出スイッチ3および4がいずれも押下されない断路位置にある場合には、インターロック機構によって電源がロックされ、遮断器側や補機側の点検を安全に行うことが可能となっている。
【0022】
===試験支援器具の構成および作用の概略===
以下、図1ないし図4を参照して、本発明の一実施形態における試験支援器具の構成および作用について説明する。
なお、図1ないし図3は、試験支援器具2を用いて遮断器の動作試験を行う場合の位置関係を示しており、試験支援器具2は、遮断器本体1が試験位置にある状態で用いられる。また、図4は、試験支援器具2の形状を示す斜視図である。
【0023】
試験支援器具2は、1本の金属線材を折り曲げて、図4に示すような形状に形成されている。当該金属線材は、少なくとも位置検出スイッチ4を押下することができるとともに、折り曲げて形成することができる程度の剛性を有している。このような金属線材としては、例えばある程度の線径(直径5mmないし10mm程度)を有する軟銅線などを用いることができる。また、当該金属線材は、感電事故などを防止するため、少なくとも数百V以下の低圧に対して絶縁性を有する絶縁部材で覆われている。このような絶縁部材としては、例えば絶縁用ビニールテープなどを用いることができる。
【0024】
試験支援器具2の一端(図4においてA部)は、筐体9内に固定される固定部である。本実施形態では、固定部の先端を若干折り曲げ、筐体9の開口部の端に引っ掛けることによって、試験支援器具2を固定する構成となっている。一方、他端(図4においてB部)は、位置検出スイッチ4を押下する押下部である。本実施形態では、押下部の先端を筐体9の底面の方向に略90°折り曲げることによって、位置検出スイッチ4が押下される構成となっている。また、固定部と押下部とをつなぐ中間部分は、遮断器本体1の突起部12や車輪13と干渉しないような形状に形成されている。
【0025】
このようにして、試験支援器具2を用いることによって、遮断器本体1が試験位置にあり、位置検出スイッチ4が押下された状態で遮断器の動作試験を行うことができる。したがって、位置検出スイッチ4は、遮断器本体1が補機と電気的に接続されていない状態で、遮断器本体1が接続位置にあることを検出するため、補機の試運転に先立って、制御回路のシーケンスを含めた遮断器の試験を行うことができる。
【0026】
前述したように、図1ないし図4に示した試験支援器具2において、引き出し形の低圧気中遮断器の筐体9内に固定部(A部)を固定し、位置検出スイッチ3が押下されている状態で押下部(B部)が位置検出スイッチ4を押下することによって、位置検出スイッチ4は、遮断器本体1が補機と電気的に接続されていない状態で、遮断器本体1が接続位置にあることを検出するため、遮断器の制御回路および補機の組み合わせによらず、補機の試運転に先立って、制御回路のシーケンスを含めた遮断器の試験を行うことができる。
【0027】
また、遮断器本体1の下部に突起部12を設けることによって、筐体9内の底面に配置された位置検出スイッチ3および4は、突起部12に押下され、遮断器本体1がそれぞれ試験位置および接続位置にあることを検出することができる。
【0028】
また、1本の金属線材を折り曲げて形成することによって、試験支援器具2を低コストで作成することができる。
【0029】
また、金属線材として軟銅線を用いることによって、試験支援器具2は、少なくとも位置検出スイッチ4を押下することができるとともに、折り曲げて形成することができる程度の剛性を備えることができる。
【0030】
また、金属線材を絶縁部材で覆うことによって、試験支援器具2を用いた遮断器の動作試験における感電事故などを防止することができる。
【0031】
また、絶縁部材として絶縁用ビニールテープを用いることによって、試験支援器具2は、少なくとも数百V以下の低圧に対して絶縁性を備えることができる。
【0032】
また、試験支援器具2を用いることによって、遮断器本体1が試験位置にあり、位置検出スイッチ4が押下された状態で遮断器の動作試験を行うことができ、遮断器の制御回路および補機の組み合わせによらず、補機の試運転に先立って、制御回路のシーケンスを含めた遮断器の試験を行うことができる。
【0033】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 遮断器本体
2 試験支援器具
3、4 位置検出スイッチ
5 主回路端子
9 筐体
11 主回路接続部
12 突起部
13 車輪
91 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に収納され、保護対象の補機と電気的に接続される接続位置からの引き出し量に応じて順次試験位置および断路位置となる引き出し形の低圧気中遮断器の動作試験に用いられる試験支援器具であって、
前記筐体内に固定される固定部と、
前記筐体内に配置された第1の位置検出スイッチが前記低圧気中遮断器の一部に押下されることによって前記低圧気中遮断器が前記試験位置にあることを検出する場合に、前記筐体内に配置され、前記低圧気中遮断器の一部に押下されることによって前記低圧気中遮断器が前記接続位置にあることを検出する第2の位置検出スイッチを押下する押下部と、
を備えることを特徴とする試験支援器具。
【請求項2】
前記第1および第2の位置検出スイッチは、前記筐体内の底面に配置され、前記低圧気中遮断器の下部に設けられた突起部に押下されることによって前記低圧気中遮断器がそれぞれ前記試験位置および前記接続位置にあることを検出することを特徴とする請求項1に記載の試験支援器具。
【請求項3】
前記固定部および前記押下部は、1本の金属線材を折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の試験支援器具。
【請求項4】
前記金属線材は、軟銅線であることを特徴とする請求項3に記載の試験支援器具。
【請求項5】
前記金属線材は、絶縁部材で覆われていることを特徴とする請求項3または請求項4の何れかに記載の試験支援器具。
【請求項6】
前記絶縁部材は、ビニールテープであることを特徴とする請求項5に記載の試験支援器具。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れかに記載の試験支援器具を用いて、前記低圧気中遮断器が前記試験位置にあり、前記第2の位置検出スイッチが押下された状態で前記低圧気中遮断器の動作試験を行うことを特徴とする低圧気中遮断器の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−19631(P2012−19631A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155896(P2010−155896)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】