説明

試験測定装置用信号取込み装置及び入力信号デジタル化方法

【課題】信号取込み装置の取込み可能帯域幅を広げる。
【解決手段】複数のパスに組み込まれたデジタイザの帯域幅に合わせて、高帯域入力信号を分割して複数の分割信号を生成し、これらを対応するミキサに供給する。各ミキサの局部発振部は、対応する係数の行列式を用いて定めた周波数を有する複数の信号を合算した合成信号を受ける。各発振信号は、合算される前に、位相及び振幅を表す係数で乗算される。各ミキサは、合成信号を分割信号と混合し、周波数帯域が多重化された信号を生成する。これら信号は、デジタル化され、元々の入力信号とほぼ同じ波形が再構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験測定装置に関し、特に複数の任意帯域多重化ミキサ装置を有する試験測定装置用の信号取込み装置と、これに関連する帯域多重化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル・オシロスコープを含む試験測定装置の性能は、信号の取込みシステムの入力帯域で制限される。従来の高周波数信号取込み部は、トラック・ホールド・サンプリング回路、アナログ・デジタル変換回路、高速メモリなど、いずれも高機能化した回路が含まれている。しかし、従来のトラック・ホールド・サンプリング回路やアナログ・デジタル変換回路は、効率良く組み立てて使用するには、時間的及び資金的に大きな投資を必要とする。
【0003】
標準的なデジタル化プラットフォーム・アーキテクチャに比較して、システムの帯域をより広くし、低コストでの使用を可能とするための別の手法としては、デジタル化プラットフォームの前段にミキサ(信号混合)技術を用いるものがある。米国特許公開第2004/0128076号公報には、ミキサ技術を用いて利用可能な帯域を広げたリアルタイム・オシロスコープが開示されている。このリアルタイム・オシロスコープは、入力信号を複数の分割信号に分割する。1つの分割信号は、周波数をそのままにしてデジタル化されると同時に、他の分割信号は、ベースバンド周波数範囲に周波数シフトしてからデジタル化される。周波数シフト後にデジタル化された信号は、その元々の周波数範囲へとデジタル的に周波数シフトされ、他のデジタル化信号と合成されて、入力信号を表すデジタル信号が生成さる。入力信号のサブ帯域(入力信号の帯域を小さく複数に分割した帯域)を、複数のサブ帯域のそれぞれに対応するデジタイザの帯域幅内に入るように周波数シフトすることによって、1つのデジタイザの入力帯域幅を超える周波数帯域の入力信号を、この周波数帯域より低い帯域のデジタイザを用いて取り込むことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2004/0128076号公報
【特許文献2】米国特許第7257497号公報
【特許文献3】米国特許第7474972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ミキサの任意の局部発振係数に関し、入力信号の再構成において使用される局部発振係数が逆行列の関係となるようにする帯域多重化の装置及び方法が望まれている。加えて、任意の係数と、効率的な再構成アルゴリズムを利用できるよう配置された狭帯域の4つのデジタイザを用いて、2つの広帯域入力信号を同時にデジタル化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の概念1は、試験測定装置のための信号取込み装置であって、
第1及び第2デジタイザ・パスを有する第1入力チャンネルと、
第3及び第4デジタイザ・パスを有する第2入力チャンネルと、
上記第1及び第2デジタイザ・パスの夫々に組み込まれる第1及び第2ミキサと、
上記第3及び第4デジタイザ・パスの夫々に組み込まれる第3及び第4ミキサと、
対応する上記第1、第2、第3及び第4ミキサと夫々連携する複数の合算部と、
複数の上記合算部の夫々と結合され、複数の第1係数に基いて、発振信号を生成して夫々の上記合算部へ供給するよう構成される第1発振部と、
複数の上記合算部の夫々と結合され、複数の第2係数に基いて、発振信号を生成して夫々の上記合算部へ供給するよう構成される第2発振部とを具えている。
【0007】
本発明の概念2は、概念1の信号取込み装置であって、複数の上記合算部の夫々が、上記第1発振部の上記発振信号と、上記第2発振部の上記発振信号とを合算するよう構成されることを特徴としている。
【0008】
本発明の概念3は、概念1の信号取込み装置であって、
上記第1デジタイザ・パスが、第1ローパス・フィルタ及び第1デジタイザを含み、
上記第2デジタイザ・パスが、第2ローパス・フィルタ及び第2デジタイザを含み、
上記第3デジタイザ・パスが、第3ローパス・フィルタ及び第3デジタイザを含み、
上記第4デジタイザ・パスが、第4ローパス・フィルタ及び第4デジタイザを含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の概念4は、概念1の信号取込み装置であって、
複数の上記合算部が、第1、第2、第3及び第4合算部を含み、
上記第1合算部が上記第1ミキサに結合され、
上記第2合算部が上記第2ミキサに結合され、
上記第3合算部が上記第3ミキサに結合され、
上記第4合算部が上記第4ミキサに結合されることを特徴としている。
【0010】
本発明の概念5は、概念4の信号取込み装置であって、
上記第1合算部は、上記第1発振部からの係数a1に基づく発振信号と、上記第2発振部からの係数b1に基づく発振信号とを合算して第1合成信号を生成するよう構成され、
上記第2合算部は、上記第1発振部からの係数a2に基づく発振信号と、上記第2発振部からの係数b2に基づく発振信号とを合算して第2合成信号を生成するよう構成され、
上記第3合算部は、上記第1発振部からの係数c1に基づく発振信号と、上記第2発振部からの係数d1に基づく発振信号とを合算して第3合成信号を生成するよう構成され、
上記第4合算部は、上記第1発振部からの係数c2に基づく発振信号と、上記第2発振部からの係数d2に基づく発振信号とを合算して第4合成信号を生成するよう構成され、
このとき、これら係数a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1及びd2が、後述する数式5及び数式6の関係を満たしていることを特徴としている。
【0011】
本発明の概念6は、概念5の信号取込み装置であって、
上記第1ミキサは、第1入力信号を上記第1合成信号と混合して第1周波数変換信号を生成するよう構成され、
上記第2ミキサは、上記第1入力信号を上記第2合成信号と混合して第2周波数変換信号を生成するよう構成され、
上記第3ミキサは、第2入力信号を上記第3合成信号と混合して第3周波数変換信号を生成するよう構成され、
上記第4ミキサは、上記第2入力信号を上記第4合成信号と混合して第4周波数変換信号を生成するよう構成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の概念7は、概念1の信号取込み装置であって、
夫々が上記第1、第2、第3及び第4デジタイザ・パスの対応する1つに組み込まれ、第1、第2、第3及び第4周波数変換信号の中の1つを夫々補間するように構成される複数の補間部と、
夫々が上記第1、第2、第3及び第4デジタイザ・パスの1つに組み込まれ、上記第1、第2、第3及び第4周波数変換信号の中の1つと、第1、第2、第3及び第4再合成信号の中の1つとを夫々混合するよう構成される複数のミキサと
を含む再構成部を更に具えている。
【0013】
本発明の概念8は、概念7の信号取込み装置であって、上記再構成部が、複数のミキサの中の対応する1つに夫々結合される第1、第2、第3及び第4合算部を更に含んでいることを特徴としている。
【0014】
本発明の概念9は、概念8の信号取込み装置であって、上記再構成部が、該再構成部の上記合算部に夫々結合される第1及び第2発振部を更に含んでいることを特徴としている。
【0015】
本発明の概念10は、概念9の信号取込み装置であって、
上記再構成部の上記第1合算部が、上記第1発振部からの係数g1に基づく発振信号と、上記第2発振部からの係数g3に基づく発振信号とを合算して上記第1再合成信号を生成するよう構成され、
上記再構成部の上記第2合算部が、上記第1発振部からの係数g2に基づく発振信号と、上記第2発振部からの係数g4に基づく発振信号とを合算して上記第2再合成信号を生成するよう構成され、
上記再構成部の上記第3合算部が、上記第1発振部からの係数h1に基づく発振信号と、上記第2発振部からの係数h3に基づく発振信号とを合算して上記第3再合成信号を生成するよう構成され、
上記再構成部の上記第4合算部が、上記第1発振部からの係数h2に基づく発振信号と、上記第2発振部からの係数h4に基づく発振信号とを合算して上記第4再合成信号を生成するよう構成され、
このとき、これら係数g1、g2、g3、g4、h1、h2、h3及びh4は、後述する数式11及び数式12を満たし、a1、a2、c1及びc2は、複数の上記第1係数に対応し、b1、b2、d1及びd2は、複数の上記第2係数に対応することを特徴としている。
【0016】
本発明の概念11は、試験測定装置用の信号取込み装置であって、
入力信号を複数の分割信号に分割するスプリッタと、
複数の係数に基いて複数の発振信号を生成するように夫々構成される複数の発振部と、
関連する複数の上記発振信号を合算して関連する1つの合成信号を夫々生成するよう構成される複数の合算部と、
関連する分割信号を関連する合成信号と混合して周波数変換信号を夫々生成するよう構成される複数のミキサと、
関連する上記周波数変換信号をフィルタ処理するよう夫々構成される複数のローパス・フィルタと、
関連するフィルタ処理信号をデジタル化するよう夫々構成される複数のデジタイザと
を具えている。
【0017】
本発明の概念12は、概念11の信号取込み装置であって、
フィルタ処理及びデジタル化された上記周波数変換信号を受けて、上記入力信号と実質的に等しい再構成波形を生成する再構成部を更に具えている。
【0018】
本発明の概念13は、概念11の信号取込み装置であって、このとき、
上記スプリッタは、上記入力信号をN個の分割信号に分割してN個のパスに供給するよう構成され、
複数の上記ミキサは、N個のミキサに対応し、
上記パスの夫々は、上記N個のミキサの中の対応する1つを含み、
複数の上記合算部は、N個の合算部に対応し、
上記N個のミキサの夫々は、上記N個の合算部の中の対応する1つに結合され、
複数の上記発振部は、N個の発振部に対応し、
上記N個の発振部の夫々は、上記N個の合算部の夫々に結合され、
上記発振部の夫々は、複数のN個の係数に基いてN個の発振信号を生成する構成されることを特徴としている。
【0019】
本発明の概念14は、概念13の信号取込み装置であって、
上記N個の合算部の夫々は、上記N個の発振部からのN個の発振信号を受けて合算し、関連する1つの合成信号を生成するよう構成される。
【0020】
本発明の概念15は、概念14の信号取込み装置であって、
上記N個のミキサの夫々は、関連する上記合成信号を受けて、上記N個の分割信号の対応する1つと混合し、関連する1つの周波数変換信号を生成するよう構成されることを特徴としている。
【0021】
本発明の概念16は、概念11の信号取込み装置であって、
複数の上記発振部が、
係数a1、a2、a3及びa4の第1グループに関連する第1発振部と、
係数b1、b2、b3及びb4の第2グループに関連する第2発振部と、
係数c1、c2、c3及びc4の第3グループに関連する第3発振部と、
係数d1、d2、d3及びd4の第4グループに関連する第4発振部と
を含み、これら係数が、後述する数式1の関係を満たすことを特徴としている。
【0022】
本発明の概念17は、試験測定装置のための入力信号をデジタル化する方法であって、
入力信号を複数の分割信号に分割するステップと、
複数の係数に基いて複数の発振信号を定めるステップと、
複数の上記発振信号を合算して複数の合成信号を生成するステップと、
上記合成信号の夫々を複数の上記分割信号の対応する1つと混合して、関連する1つの周波数変換信号を生成するステップと、
複数の上記周波数変換信号の夫々をフィルタ処理するステップと、
フィルタ処理された上記周波数変換信号の夫々をデジタル化するステップと、
デジタル化された上記周波数変換信号を再合成することによって、実質的に上記入力信号に等しい波形を再構成するステップと
を具えている。
【0023】
本発明の概念18は、概念17の方法であって、このとき、上記波形を再構成するステップが、分割された入力信号の数と等しい係数に従ってデジタル化された上記周波数変換信号を補間するステップを更に含んでいる。
【0024】
本発明の概念19は、概念18の方法であって、複数の上記係数が、複数の上記第1係数に対応し、複数の上記発振信号が複数の上記第1発振信号に対応しており、このとき、上記波形を再構成するステップが、
複数の上記第2係数に基いて複数の第2発振信号を定めるステップと、
複数の上記第2発振信号を合算して複数の再合成信号を生成するステップと、
複数の上記補間信号の夫々を、複数の上記再合成信号の中の対応する1つと混合するステップとを更に含み、複数の上記第1係数が、複数の上記第2係数に対して逆行列の関係にあることを特徴としている。
【0025】
本発明の概念20は、プロセッサで実効したときに、概念17による方法を実行するよう動作する、コンピュータ実行可能な非一時的命令を記憶するコンピュータ読み出し可能な1つ以上の有形なメディアである。
【0026】
本発明の目的、効果及び他の新規な点は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲及び図面とともに読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施形態の例による試験測定装置の信号取込み装置に組み込まれる帯域多重化ミキサ装置の種々の構成要素を含むブロック図である。
【図2】図2は、図1の入力信号の例と、これに関連して、入力信号よりも低い帯域幅に周波数シフトした帯域を有する混合信号を示す。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態例によるもので、試験測定装置の信号取込み装置に組み込まれる帯域多重化ミキサ装置の種々の構成要素を含むブロック図である。
【図4】図4は、図3の入力信号の例と、これに関連して、入力信号よりも低い帯域幅に周波数シフトした帯域を有する混合信号を示す。
【図5】図5は、図3の入力信号の別の例と、これに関連して、入力信号よりも低い帯域幅に周波数シフトした帯域を有する混合信号を示す。
【図6】図6は、本発明の実施形態例による再構成部を示す。
【図7】図7は、本発明の実施形態の例による帯域多重化ミキサ取込みシステムを含む試験測定装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、試験測定装置の信号取込み(Acquisition:アクイジション)帯域幅を広げるための、帯域多重化ミキサ装置及び再構成部を提供する。本発明のコンセプトと実施形態は、デジタル・オシロスコープ、スペクトラム・アナライザ、ベクトル・アナライザ、ミックスド・ドメイン・オシロスコープ(MDO)などの種々の適切な試験測定装置で実現可能である。
【0029】
図1は、本発明の実施形態の例による試験測定装置の信号取込み装置に組み込まれる帯域多重化ミキサ装置100の種々の構成要素を含むブロック図である。
【0030】
スプリッタ102は、広帯域RF入力信号105を受ける。スプリッタは、種々のスプリッタを用いることができる。1例では、スプリッタ102は、抵抗性電力分配器である。スプリッタは、入力信号105を複数の分割信号に分割して複数のパス103に供給するが、このとき、これら分割信号のスペクトラムが、実質的に同一となるようにしている。「実質的に同一」の意味においては、例えば、構成要素/部品の特性のバラツキが原因で生じるバラツキは、同一に含まれるものとする。例えば、スプリッタは、複数の分割信号の全てを同一に生成するように設計しても良い。しかし、各分割信号をわずかに異なるようにしても良く、このような分割信号も、やはり実質的に同一と考えることにする。
【0031】
図1では、パス103の個数は4個としているが、当然ながら任意の個数でも良い。分割信号夫々の全周波数成分(0Hzにおける直流を含む)が、対応するミキサ(例えば、130、135、140及び145)に供給されるようにしても良く、これらミキサは、周波数が変換された周波数変換信号(例えば、110、115、120及び125)を生成する。各ミキサの出力信号は、対応するローパス・フィルタ(例えば、160、162、164及び166)又はデジタイザ(例えば、170、172、174及び176)の入力部に供給される。再構成部180は、デジタイザからのデジタル化信号を受けて、これらデジタル化信号を処理し、元々の入力信号を実質的に再構成し、再構成波形150を出力する。
【0032】
帯域多重化ミキサ装置100には、関連する関数(例えば、f1、f2、f3及びf4)を用いる発振部(例えば、190、192、194及び196)が含まれる。各発振部は、係数に基づいて発振信号を生成する。例えば、発振関数f1は、係数a1、a2、a3及びa4に基いて発振信号を生成する。同様に、発振関数f2は、係数b1、b2、b3及びb4に基いて発振信号を生成する。発振関数f3は、係数c1、c2、c3及びc4に基いて発振信号を生成する。そして、発振関数f4は、係数d1、d2、d3及びd4に基いて発振信号を生成する。
【0033】
a、b、c及びdの係数は、係数の行列の行列式がゼロのならないように、任意に選択可能である。即ち、次の式で示される。
【0034】
【数1】

【0035】
大まかに言えば、発振関数f1は、直流(DC)を含む低帯域における混合処理のために、発振関数f1=1である。発振関数f2=sin(ω2t)であり、このとき、ω2は発振部192の周波数を表し、tは時間を表す。発振関数f3=sin(ω3t)であり、このとき、ω3は発振部194の周波数を表し、tは時間を表す。発振関数f4=sin(ω4t)であり、このとき、ω4は発振部196の周波数を表し、tは時間を表す。これらは代表的な関数の例であり、他の発振関数を用いるように構成しても良い。
【0036】
複数の発振部の夫々は、合算部182、184、186及び188に結合される。各合算部は、関連する複数の発振信号を合算するように構成される。例えば、合算部182は、発振部190からの係数a1に基づく発振信号、発振部192からの係数b1に基づく発振信号、発振部194からの係数c1に基づく発振信号、そして、発振部196からの係数d1に基づく発振信号を合算する。
【0037】
同様に、合算部184は、発振部190からの係数a2に基づく発振信号、発振部192からの係数b2に基づく発振信号、発振部194からの係数c2に基づく発振信号、そして、発振部196からの係数d2に基づく発振信号を合算する。合算部186は、発振部190からの係数a3に基づく発振信号、発振部192からの係数b3に基づく発振信号、発振部194からの係数c3に基づく発振信号、そして、発振部196からの係数d3に基づく発振信号を合算する。合算部188は、発振部190からの係数a4に基づく発振信号、発振部192からの係数b4に基づく発振信号、発振部194からの係数c4に基づく発振信号、そして、発振部196からの係数d4に基づく発振信号を合算する。
【0038】
言い換えると、対応する合算部で合算される前に、各発振信号は係数で重み付けされ、このとき、係数は、数学的な複素数、数学的な実数又はゼロとしても良い。これら係数で、関連する発振関数の位相や振幅を表すことができる。係数による重み付けは、フィルタ回路で実現しても良い。更には、これら係数は、伝送線の長さ、減衰回路、増幅回路などのような複数のパラメータ回路要素で制御しても良い。例えば、位相や振幅を変更できる任意の回路をフィルタとして利用でき、こうした回路によって、これら係数を関係する発振信号に適用できる。
【0039】
各合算部は、関連する複数の発振信号を合算して、関係する1つの合成信号(例えば、191、193、195及び197)を生成するように構成される。複数のミキサ(例えば、130、135、140及び145)は、関係する分割信号を関係する合成信号と混合(ミックス)して、周波数変換された周波数変換信号(例えば、110、115、120及び125)を生成するよう構成される。言い換えると、各ミキサの局部発信部(LO:Local Oscillator)は、複数の発振部の和(sum:合算)を含んでいる。ミキサとその関係する関数は、発振部、電力結合器、フィルタ、周波数乗算器、分周器、方向性結合器などのようなハードウェア・コンポーネントを用いて実現しても良い。
【0040】
本発明における周波数変換とは、信号の1つ以上の周波数帯域が、そのRF入力信号よりも低い帯域幅へと周波数シフトされることを意味する。各ミキサの出力信号は、無用のイメージを除去し、エイリアシングを防止するため、デジタル化する前に関連するフィルタ160、162、164及び166を用いて帯域が制限されるようにしても良い。複数の周波数変換信号は、対応するデジタイザ170、172、174及び176を用いて夫々デジタル化される。デジタイザは、対応する信号をサンプリングし、適切なメモリに波形データとして蓄積させることができる。再構成部180は、デジタル化信号を処理し、広帯域入力信号を再構成する。
【0041】
図2は、図1の入力信号105の例と、関連する周波数変換信号(混合信号)110、115、120及び125を示し、これら混合信号は、入力信号105よりも低い帯域幅に周波数シフトされた帯域を有している。以下、図1及び図2を参照する。
【0042】
上述のように、入力信号105は、複数のパス103に分配される。パス103の夫々は、周波数変換部(つまり、ミキサ)を含み、これらは、そのミキサのLO信号として加えられるマルチトーン混合(ミキシング)関数を有し、RF入力信号105よりも低い帯域幅となるように周波数シフトされた複数の帯域が合算された出力信号を生成する。
【0043】
例えば、図2に示すように、入力信号105は、サブ帯域0、1、2及びnを含む。サブ帯域0、1、2及びnのスペクトラムとして異なる形状が描かれているが、入力信号105次第でスペクトラムの形状は任意のものとして良い。分割信号の夫々は、対応するミキサに供給されるが、ミキサは、サブ帯域1、2及びnを周波数シフトするので、これらサブ帯域がサブ帯域0で重なる(多重化される)。1つ以上のサブ帯域は、ある周波数で折り返された上で周波数がシフト・ダウンすることで、鏡像(左右反転)のサブ帯域となる。図2の例では、サブ帯域1及びnの成分が、周波数変換処理後に、鏡像のサブ帯域としてサブ帯域0に重なって現れている。周波数シフト処理及び異なるサブ帯域の処理の種々の方法の詳細については、本願出願人による米国特許第7257497号公報、米国特許第7474972号公報等に記載されている。サブ帯域1、2及びnの夫々は、サブ帯域0の帯域幅以内の帯域幅まで周波数シフト・ダウンした後、有害な影響が生じるデジタイザの帯域幅制限を行うことなしに、正確にデジタル化される。
【0044】
処理の全体については、米国特許第7474972号公報に詳細に記載されているが、図2では、この処理の一部分について、単純化して示していることに注意されたい。例えば、余分なイメージが生じるのを防止するために入力部分又は各パスに付加的に設けているローパス・フィルタを無くせば、余分なイメージが帯域に重なるが、信号の再構築処理のときに除去するようにしても良い。別のやり方では、ローパス・フィルタをチャンネルの入力部分に配置し、チャンネルに余分なイメージが入らないようにしても良い。いくつかの実施形態では、追加のローパス・フィルタを各パスに配置して、余分なイメージが発生するのを防止しても良い。
【0045】
好ましくは、パス130の個数は、重なることになるサブ帯域の個数と同じとする。パス130の個数は、他の構成要素の個数や関係も定めることになる。具体的には、スプリッタ102は、入力信号105をN個の分割信号に分割し、N個のパスに分配する。各パスは、対応する1つのミキサを含むので、結果としてN個のミキサが存在することになる。そして、N個の対応する合算部があることになる。N個のミキサの夫々は、N個の合算部の中の対応する1つと結合される。いくつかの実施形態では、N個の発振部があり、N個の発振部の夫々は、N個の合算部と夫々結合される。
【0046】
各発振部は、N個の係数に基づいてN個の発振信号を生成するよう構成される。N個の合算部の夫々は、N個の発振部からN個の発振信号を受けて合算し、関連する1つの合成信号を生成するよう構成される。N個のミキサは、関連する合成信号を受けて、N個の分割信号の対応する1つと合成信号とを混合し、関連する周波数変換信号を生成する。
【0047】
重なるサブ帯域の個数とパスの個数を同じにしても良いが、そうしなければならないというものでもないことに注意されたい。実施形態によっては、異なるパスで、異なる個数のサブ帯域が重なるように構成しても良い。
【0048】
図示しないが、入力信号を分けて複数のパスに供給する前に、入力信号105をフィルタ処理するように、スプリッタ102の前に全体に対するローパス・フィルタを配置するようにしても良い。
【0049】
図3は、本発明の別の実施形態例によるもので、試験測定装置の信号取込み装置に組み込まれる帯域多重化ミキサ装置300の種々の構成要素を含むブロック図である。スプリッタや再構成部のようないくつかの構成要素を図3では示していないが、この実施形態例は、本願で開示したような他の構成要素と共に使用できることはいうまでもない。図4は、図3の入力信号305の例と、これに関連する混合信号(周波数変換信号)を示し、これら混合信号は、入力信号よりも低い帯域幅に周波数シフトした帯域を有する。図5は、図3の別の例である入力信号307と、これに関連する混合信号を示し、これら混合信号は、入力信号よりも低い帯域幅に周波数シフトした帯域を有する。以下、図3、4及び5について説明する。
【0050】
この実施形態例では、2つの広帯域入力信号(例えば、305及び307)を受けて処理する。広帯域入力信号の夫々は、2つのデジタイザ・パスに沿って伝送される。言い換えると、入力信号305は、デジタイザ・パス1及び2に沿って伝送され、入力信号307は、デジタイザ・パス3及び4に沿って伝送される。言い換えると、複数のデジタイザ・パス又はチャンネルが、1つの入力信号と関連する。
【0051】
各デジタイザ・パスは、ミキサ、ローパス・フィルタ及びデジタイザを含む。例えば、デジタイザ・パス1は、ミキサ330、ローパス・フィルタ360及びデジタイザ370を含む。デジタイザ・パス2は、ミキサ335、ローパス・フィルタ362及びデジタイザ372を含む。デジタイザ・パス3は、ミキサ340、ローパス・フィルタ364及びデジタイザ374を含む。デジタイザ・パス4は、ミキサ345、ローパス・フィルタ366及びデジタイザ376を含む。2つのデジタイザ・パスが、2つの入力信号の1つに夫々使用される。
【0052】
2つの入力信号夫々のDCを含む全ての周波数は、対応する2つのミキサに供給される。例えば、入力信号305は、ミキサ330及び335に供給され、入力信号307はミキサ340及び345に供給される。ミキサは、周波数変換信号(例えば、310、315、320及び325)を生成する。具体的には、ミキサ及びデジタイザ・パスの夫々について、高帯域は周波数変換されるか、DCから始まる低周波数帯域に周波数シフトされるので、高い方のサブ帯域は、低い方のサブ帯域に重なる(多重化される)。各ミキサの出力信号は、対応するローパス・フィルタ(例えば、360、362、364及び366)又はデジタイザ(例えば、370、372、374及び376)の入力部に供給される。
【0053】
装置300は、関連する関数(例えば、f1及びf2)を用いる複数の発振部(例えば、392及び394)を含んでいる。各発振部は、複数の係数に基づいて、複数の発振信号を生成する。例えば、発振関数f1は、係数a1、a2、c1及びc2に基いて、複数の発振信号を生成する。同様に、発振関数f2は、係数b1、b2、d1及びd2に基いて、複数の発振信号を生成する。各ミキサに関するマルチトーン混合方法は、他のパスに係る他のミキサのものとは異なっている。係数と、ミキサの発振関数及び局部発振部(LO)と係数の関係については、以下で詳細に説明する。
【0054】
複数の発振部の夫々は、合算部382、384、386及び388の夫々に結合される。各合算部は、関連する複数の発振信号を合算するように構成される。例えば、合算部382は、発振部392から係数a1に基づく発振信号と、発振部394から係数b1に基づく発振信号を受けて、これらを合算する。同様に、合算部384は、発振部392から係数a2に基づく発振信号と、発振部394から係数b2に基づく発振信号を受けて、これらを合算する。合算部386は、発振部392から係数c1に基づく発振信号と、発振部394から係数d1に基づく発振信号を受けて、これらを合算する。合算部388は、発振部392から係数c2に基づく発振信号と、発振部394から係数d2に基づく発振信号を受けて、これらを合算する。
【0055】
言い換えると、各発振信号は、対応する合算部で合算される前に、係数によって重み付けされ、このとき、係数は、数学的な複素数、数学的な実数、又はゼロとしても良い。係数は、関係する発振関数の位相や振幅を表すものとすることができる。係数による重み付けは、フィルタ回路によって実現しても良い。更には、これら係数は、伝送線の長さ、減衰回路、増幅回路などのような複数のパラメータ回路要素で制御しても良い。例えば、位相や振幅を変更できる任意の回路をフィルタとして利用でき、こうした回路によって、これら係数を関係する発振信号に適用できる。
【0056】
各合算部は、関連する複数の発振信号を合算して、関係する1つの合成信号(例えば、391、393、395及び397)を生成するように構成される。例えば、合算部382は合成信号391を生成し、合算部384は合成信号393を生成し、合算部386は合成信号395を生成し、合算部388は合成信号397を生成する。
【0057】
複数のミキサ(例えば、330、335、340及び345)は、関連する入力信号(例えば、305、307)を関連する合成信号と混合し、周波数変換信号(例えば、310、315、320及び325)を生成する。言い換えると、各ミキサの局部発信部(LO)は、複数の発振部の和(sum)を含んでいる。好ましくは、デジタイザ・パスの個数は、ミキサの個数と等しく、これは、混合処理(ミキシング)関数における項数と等しい。ミキサとその関係する関数は、発振部、電力結合器、フィルタ、周波数乗算器、分周器、方向性結合器などのようなハードウェア・コンポーネントを用いて実現しても良い。
【0058】
具体的には、ミキサ330は、入力信号305を合成信号391と混合して周波数変換信号310を生成するように構成される。ミキサ335は、入力信号305を合成信号393と混合し、周波数変換信号315を生成するように構成される。ミキサ340は、入力信号307を合成信号395と混合し、周波数変換信号320を生成するように構成される。ミキサ345は、入力信号307を合成信号397と混合し、周波数変換信号325を生成するように構成される。合算部382は、ミキサ330に結合される。合算部384は、ミキサ335に結合される。合算部386は、ミキサ340に結合される。合算部388は、ミキサ345に結合される。
【0059】
図4及び5に示すように、広帯域入力信号305及び307は、周波数シフトされ、高帯域は、関連する入力信号の低帯域に重ねられる。サブ帯域0及び1のスペクトラムの形状として異なるものが示されているが、これらスペクトラムは、入力信号305や307に応じて任意の形状として良い。係数a1、a2、b1及びb2は、入力信号305が混合処理によって、最終的にどのように周波数変換信号310及び315に変換されるかに影響する。同様に、係数c1、c2、d1及びd2は、入力信号307が混合処理によって、最終的にどのように周波数変換信号320及び325に変換されるかに影響する。例えば、サブ帯域が前よりも低い帯域へと周波数シフトされるだけでなく、破線に示すように、位相もまた異なるものとなりえる。更に、上述の広帯域入力信号がXGHzの帯域幅の範囲を占めるとした場合、その周波数変換信号は、およそX/2GHzの帯域幅の範囲を占める。なお、特に、2以上のデジタイザ・パスがある場合では、2以上のサブ帯域が、より低い帯域へと周波数シフトされるようにしても良いことは言うまでもない。
【0060】
各ミキサの出力信号は、無用のイメージを除去し、エイリアシングを防止するため、デジタル化する前に関連するフィルタ360、362、364及び366を用いて帯域が制限されるようにしても良い。複数の周波数変換信号は、対応するデジタイザ370、372、374及び376を用いて夫々デジタル化される。デジタイザは、対応する信号をサンプリングし、適切なメモリに波形データとして蓄積させることができる。好ましくは、デジタイザは、上述のように、広帯域入力信号から得られた最小で2つの周波数帯域(つまり、低帯域及び高帯域)を有し、これらが一緒に合算された信号を受けるのが良い。好ましくは、これら帯域の夫々の帯域幅がほぼ等しく、デジタイザ・パスの帯域幅よりわずかに小さいのが良い。
【0061】
b1、b2、d1及びd2の発振関数f2の係数は、数学的には複素数で表現されても良く、これらは関連する正弦関数において乗算されるか、又は、重み付けに利用される。係数は、発振部の位相及び振幅を表すことができ、これによって、ミキサのLO入力端子に加えられる合成信号が定まる。ミキサのLO入力端子に供給される合成信号は、実数信号成分と虚数信号成分とに別々に分離する必要はなく、むしろ、多くは、複数の信号源(f1、f2など)からの数学的に実数成分のみの信号の和(合算)である。f1は、好ましくはDC値なので、数学的には実数の係数(例えば、a1、a2、c1及びc2)を用いて表すことができる。しかし、もし係数が数学的に虚数として表されるとしても、その等式は解くことが可能である。
【0062】
広帯域入力信号(例えば、305及び307)は、フィルタhwide308及び309によって帯域が制限されるようにしても良い。このとき、広帯域入力信号305をx1で表し、広帯域入力信号307をx2で表すと、これら信号は次のようにフィルタ処理されるとすることができる。
【0063】
【数2】

【0064】
ここで、「:=」は代入演算子である。言い換えると、x1はx1*hwideとなり、同様に、x2はx2*hwideとなる。
【0065】
大雑把に言えば、DCを含む低帯域で混合を行うため、発振関数f1=1である。発振関数f2=sin(2πft)であり、このとき、fは周期的な信号の周波数を表し、tは時間を表す。好ましくは、発振関数f2は、フィルタhwide308及び309の帯域幅ほどの周波数で、ミキサの高い側の発振部と等しい。なお、これらは、代表的な関数の例であって、別の設定に合わせた発振関数を用いても良いことはいうまでもない。
【0066】
ここで、合成信号391は、ミキサ330用の局部発振部LO1に対応し、合成信号393は、ミキサ335用の局部発振部LO2に対応し、合成信号395は、ミキサ340用の局部発振部LO3に対応し、合成信号397は、ミキサ345用の局部発振部LO4に対応するとすると、局部発振部は、次に示すように、複数の係数及び発振関数に基づいて定めることができる。
【0067】
【数3】

【0068】
【数4】

【0069】
複数のミキサのLO入力信号を定める複数の等式が線形で独立であるようにするため、係数行列の行列式がゼロとならないようにすれば、a、b、c及びdの係数は、任意に選択可能となる。つまり、次の条件で表される。
【0070】
【数5】

【0071】
【数6】

【0072】
好ましくは、ミキサ330、335、340及び345は、DCを扱えるように設計される。このように、合成信号(例えば、391、393、395及び397)は、f1によって生成される発振信号とf2によって生成される発振信号に基いて定めることができ、これは、結果として、対応するミキサの出力において、高帯域及び低帯域の和(合算)になる。
【0073】
別のやり方としては、もしDC入力信号を扱えるミキサを利用できなければ、高周波数帯域のみをミキサによって混合により周波数ダウンし、低周波数帯域とほぼ同じ帯域を占めるようにしても良い。そして、電力結合器を用いて2つのサブ・パスを1つに合算し、帯域幅制限を行って、デジタイザに加えるようにしても良い。
【0074】
いくつかの実施形態では、ローパス・フィルタ(例えば、360、362、364、366)でフィルタ処理する前に、デジタイザ(例えば、370、372、374及び376)が、周波数変換信号(例えば、310、315、320及び325)をデジタル化しても良い。例えば、入力信号305がx1に対応し、入力信号307がx2に対応し、信号310がs1に対応し、信号315がs2に対応し、信号320がs3に対応し、信号325がs4に対応するとすれば、信号s1、s2、s3及びs4は、次のように定めることができる。
【0075】
【数7】

【0076】
【数8】

【0077】
続いて、ローパス・フィルタが、以下のように、周波数変換信号s1、s2、s3及びs4に適用されても良い。
【0078】
【数9】

【0079】
【数10】

【0080】
このとき、hlpは、ローパス・フィルタ360、362、364及び366のいずれかの1つに対応し、また、「:=」は代入演算子である。言い換えると、p1はs1*hlpとなり、p2はs2*hlpとなる。加えて、p3はs3*hlpとなり、p4はs4*hlpとなる。なお、フィルタ処理をデジタル化処理の前に行っても良いが、その逆でも良いことはいうまでもない。デジタル化値p1、p2、p3及びp4は、パス1、パス2、パス3及びパス4に沿って流れる信号に夫々対応する。
【0081】
図6は、本発明の実施形態例による再構成部600を示す。再構成部600は、複数の補間部(例えば、603、604、608及び609)を含み、各補間部は、第1、第2、第3及び第4デジタイザ・パス(例えば、パス1、パス2、パス3及びパス4)の対応する1つのパスに組み込まれる。補間部は、対応する周波数変換信号(例えば、図3の310、315、320及び325)を補間し、補間信号(例えば、610、615、620及び625)を生成する。パス1、パス2、パス3及びパス4を伝送されて受けたデジタル化周波数変換信号の夫々は、パスの個数と等しい係数で補間しても良い。パスの個数は、言い換えると、入力信号を分割した数であり、この例では4である。再構成部のミキサ(例えば、630、635、640及び645)の夫々は、第1、第2、第3及び第4デジタイザ・パス(例えば、パス1、パス2、パス3及びパス4)の対応する1つのパスに組み込まれる。ミキサは、関連する周波数変換信号を関連する再合成信号(例えば、691、693、695及び697)と混合する。
【0082】
再構成部600は、更に、合算部(例えば、682、684、686及び688)を含んでいる。各合算部は、対応する1つのミキサに結合される。例えば、合算部682は、ミキサ630に結合され、合算部684は、ミキサ635に結合され、合算部686はミキサ640に結合され、合算部688はミキサ645に結合される。
【0083】
再構成部600は、更に、発振部692及び694を含んでいる。発振部692及び694の夫々は、合算部682、684、686及び688に夫々結合される。合算部682は、発振部692からの係数g1に基づく発振信号と、発振部694からの係数g3に基づく発振信号とを合算し、再合成信号691を生成するよう構成される。合算部684は、発振部692からの係数g2に基づく発振信号と、発振部694からの係数g4に基づく発振信号とを合算し、再合成信号693を生成するよう構成される。合算部686は、発振部692からの係数h1に基づく発振信号と、発振部694からの係数h3に基づく発振信号とを合算し、再合成信号695を生成するよう構成される。合算部688は、発振部692からの係数h2に基づく発振信号と、発振部694からの係数h4に基づく発振信号とを合算し、再合成信号697を生成するよう構成される。
【0084】
係数g1、g2、g3、g4と、h1、h2、h3、h4は、上述の係数a1、a2、b1、b2と、c1、c2、d1、d2の関係を示す行列の逆行列に基づいて定められる。具体的には、次のようになる。
【0085】
【数11】

【0086】
【数12】

【0087】
これら逆行列を別のやり方で表現すると、次のようになる。
【0088】
【数13】

【0089】
【数14】

【0090】
結果として、全ての周波数帯域は、それらの元々の周波数位置に復元される。このように、各パスの信号は、そのパスの元の分割信号に復元されることはない。
【0091】
上記逆関数夫々の2つの等式をよく見ると、係数の値として避けるべきものがわかる。例えば、a1・b2−a2・b1の値は、ゼロにはできない。また、a1・b2がa2・b1とほぼ同じという状況も、分母がゼロに近い値になってしまうので、避けるのが望ましい。
【0092】
ここで、復元信号648がyy1に対応し、復元信号652がyy2に対応し、補間信号610がパス1(Path1)に対応し、補間信号615がパス2(Path2)に対応し、補間信号620がパス3(Path3)に対応し、補間信号625がパス4(Path4)に対応するとすると、次の式を用いることができる。
【0093】
【数15】

【0094】
【数16】

【0095】
ここで、f1は発振部692に係る発振関数、f2は発振部694に係る発振関数である。f2に乗算される係数の4は、ミキサの変換利得損失を補償するためのものである。例えば、最初のハードウェア・ミキサは、信号を2つのイメージに分け、1つはフィルタ処理で除去される。同じ又は同様なことがソフトウェア・ミキサでも起こる。そのため、係数の4が、振幅を元に戻すために利用される。
【0096】
復元信号648及び652は、位相や振幅を修正するために、フィルタ662及び664を用いて夫々フィルタ処理しても良い。ここで、再構成波形650がy1に対応し、再構成波形655がy2に対応するとすると、hfinalフィルタ662及び664で修正された位相及び振幅は、次のように表される。
【0097】
【数17】

【0098】
finalフィルタ662及び664は、再構成信号の広帯域幅全体に渡る全周波数の位相や振幅を修正するのに利用できる。また、これらは、f2用の非同期LOが原因で生じる高帯域の信号取込み位相のバラツキに対して、信号取込み処理を修正する。2つの関連するパスからの信号は、hfinalフィルタに供給される前に、ローパス・フィルタ処理され、最終合算ブロックを用いて合算されるようにしても良い。例えば、信号661及び663は、ローパス・フィルタ処理され、最終合算ブロック660を用いて合算されるようにしても良い。同様に、信号667及び668は、ローパス・フィルタ処理され、最終合算ブロック665を用いて合算されるようにしても良い。
【0099】
発振部694に係る発振関数f2は、試験測定装置のサンプリング・クロックや、取り込まれた波形のトリガ位置に対して、非同期としても良い。このとき、LO再生ユニット698は、取込み波形上の時間基準点(好ましくは、トリガ位置)に対する位相を定めるのに利用できる。波形に対するLOの動きによって、高域側の混合処理(ミキシング)に関するLO位相角度シフトを正負反転したものと等しい一定位相角度のシフトが、ミキサで変換された帯域中の全周波数に生じる。
【0100】
いくつかの実施形態では、hfinalフィルタ662及び664の夫々が、2つのフィルタ・ブロックに分割される。1つめのフィルタ・ブロックは、高帯域でカバーされる周波数の帯域について一定の位相遅延を生じさせるオールパス(振幅はそのままで、位相だけ変化させる)型のフィルタとしても良い。このフィルタ・ブロックは、ある信号取込みと、その次の信号取込みとで、f2発振部の入力波形上の時間基準点に対するオフセットを補償するために、係数を変化させることができる。第2のフィルタ・ブロックは、ローパス・フィルタしても良く、これは、再構成信号の帯域幅全体について、位相及び振幅を修正する。このフィルタ・ブロックは、ある信号取込みと、その次の信号取込みとにおいて、係数は一定のままとして良い。更に、これらフィルタ・ブロックは、製造時に、既知の技術を用いて校正しても良い。hfinalフィルタ662及び664の出力信号は、波形650及び655で表される元々の再構成信号と実質的に夫々対応する。
【0101】
加えて、信号取込み波形のトリガ位置に対するサンプリング・クロックの非同期が原因で生じる、ある信号取込みと、その次の信号取込みとにおける位相のバラツキを除去するのに、オールパス型の遅延時間一定の修正フィルタ(図示せず)を用いても良い。このフィルタは、信号を再構成処理するために混合して周波数アップする前のデジタル化波形に対して適用できる。
【0102】
発振部の基準位相は、再生(リカバリ)でき、再構成部の複素混合関数を再生成するために、校正定数と共に利用できる。
【0103】
図7は、信号取込みシステム710を含む試験測定装置705のブロック図である。取込みシステム710は、取込みメモリ720、任意帯域多重化ミキサ装置715を含み、種々の実施形態において、上述のように、種々の形態を取り得る。任意帯域多重化ミキサ装置715の任意の構成要素(再構成部を含む)は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの組合せを用いて実現できることはいうまでもない。
【0104】
特定の実施形態を説明してきたが、本発明の原理は、これら実施形態に限定されるものではない。例えば、局部発振部の生成及び再生によって、各パス中の各ミキサに適用される関数の項の位相を決定する手段を提供できる。決定した位相は、複数のデジタル化信号から元々の広帯域信号を再構成するのに必要な混合(ミキシング)関数を正確に生成するのに利用できる。もしこれら項が、単一の基準発振部から生成されると、他の項は、その基準発振部に同期され、周波数に関して乗算されるか分周され、そして、複素混合関数を構築するのに利用される。加えて、システム中の使用していない余分なデジタイザの帯域幅に収まるように分割した周波数を取込むことができ、また、このデジタイザの帯域幅に収まる混合処理済みの異なる周波数を分割した複数の周波数を用いることもできる。
【0105】
種々の発振部からの分配信号を、デジタイザ・トリガ・システム中の時間補間回路ブロックに加えて、付加的な比較器ハードウェア(図示せず)に供給しても良く、これによって、発振部のゼロ交差点から取込み波形トリガ時点までの時間を測定できる。基準発振部は、ハードウェアを用いてデジタイザのサンプリング・クロック・システムに同期されるようにしても良いし、デジタイザのサンプリング・クロック・システムに非同期としても良い。
【0106】
製造時に、再構成信号の位相及び振幅応答を測定できる校正システムを用いても良い。これによって、望ましい応答に合うように、この応答を補正するフィルタを計算できる。
【0107】
波形上の基準時間点から局部発振信号までの再生遅延時間は、オールパス型一定位相補正フィルタを計算するのに利用できる。このフィルタは、もし局部発振部が取込み波形上の基準時間点に対して非同期の場合に、ある信号取込みと、その次の信号取込みとで係数を異なるものにできる。このフィルタは、各信号取込みに関して、校正帯域幅エンハンス・フィルタと畳み込み積分することで、最終的なフィルタを構築できる。
【0108】
いくつかの実施形態には、コンピュータで実行可能な命令を記憶する1つ以上の有形のコンピュータ読み出し可能メディアが含まれ、上記命令は、プロセッサで実行したときに、上述の方法を実行するように動作する。本発明は、その原理から逸脱することなく、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
100 帯域多重化ミキサ装置
102 スプリッタ
103 複数のパス
105 入力信号
110 周波数変換信号
115 周波数変換信号
120 周波数変換信号
125 周波数変換信号
130 ミキサ
135 ミキサ
140 ミキサ
145 ミキサ
150 再構成波形
160 LPF
162 LPF
164 LPF
166 LPF
170 デジタイザ
172 デジタイザ
174 デジタイザ
176 デジタイザ
180 再構成部
182 合算部
184 合算部
186 合算部
188 合算部
190 発振部
191 合成信号
192 発振部
193 合成信号
194 発振部
195 合成信号
196 発振部
197 合成信号
300 帯域多重化ミキサ装置
305 入力信号
307 入力信号
308 フィルタ
309 フィルタ
310 周波数変換信号
315 周波数変換信号
320 周波数変換信号
325 周波数変換信号
330 ミキサ
335 ミキサ
340 ミキサ
345 ミキサ
360 LPF
362 LPF
364 LPF
366 LPF
370 デジタイザ
372 デジタイザ
374 デジタイザ
376 デジタイザ
382 合算部
384 合算部
386 合算部
388 合算部
391 合成信号
392 発振部
393 合成信号
394 発振部
395 合成信号
397 合成信号
600 再構成部
603 補間部
604 補間部
608 補間部
609 補間部
610 補間信号
615 補間信号
620 補間信号
625 補間信号
630 ミキサ
635 ミキサ
640 ミキサ
645 ミキサ
650 再構成波形
655 再構成波形
660 最終合算ブロック
662 フィルタ
664 フィルタ
665 最終合算ブロック
682 合算部
684 合算部
686 合算部
688 合算部
691 合成信号
692 発振部
693 合成信号
694 発振部
695 合成信号
697 合成信号
698 LO再生ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2デジタイザ・パスを有する第1入力チャンネルと、
第3及び第4デジタイザ・パスを有する第2入力チャンネルと、
上記第1及び第2デジタイザ・パスの夫々に組み込まれる第1及び第2ミキサと、
上記第3及び第4デジタイザ・パスの夫々に組み込まれる第3及び第4ミキサと、
対応する上記第1、第2、第3及び第4ミキサと夫々連携する複数の合算部と、
複数の上記合算部の夫々と結合され、複数の第1係数に基いて、発振信号を生成して夫々の上記合算部へ供給するよう構成される第1発振部と、
複数の上記合算部の夫々と結合され、複数の第2係数に基いて、発振信号を生成して夫々の上記合算部へ供給するよう構成される第2発振部と
を具える試験測定装置用信号取込み装置。
【請求項2】
入力信号を複数の分割信号に分割するスプリッタと、
複数の係数に基いて複数の発振信号を生成するように夫々構成される複数の発振部と、
関連する複数の上記発振信号を合算して関連する1つの合成信号を夫々生成するよう構成される複数の合算部と、
関連する分割信号を関連する合成信号と混合して周波数変換信号を夫々生成するよう構成される複数のミキサと、
関連する上記周波数変換信号をフィルタ処理するよう夫々構成される複数のローパス・フィルタと、
関連するフィルタ処理信号をデジタル化するよう夫々構成される複数のデジタイザと
を具える試験測定装置用信号取込み装置。
【請求項3】
入力信号を複数の分割信号に分割するステップと、
複数の係数に基いて複数の発振信号を定めるステップと、
複数の上記発振信号を合算して複数の合成信号を生成するステップと、
上記合成信号の夫々を複数の上記分割信号の対応する1つと混合して、関連する1つの周波数変換信号を生成するステップと、
複数の上記周波数変換信号の夫々をフィルタ処理するステップと、
フィルタ処理された上記周波数変換信号の夫々をデジタル化するステップと、
デジタル化された上記周波数変換信号を再合成することによって、実質的に上記入力信号に等しい波形を再構成するステップと
を具える試験測定装置用入力信号デジタル化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−83652(P2013−83652A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227282(P2012−227282)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(391002340)テクトロニクス・インコーポレイテッド (234)
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.