説明

試験装置

【課題】圧力の制御が可能なガス放出の少ない可燃性ガスの試験装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の試験装置1は、被試験物を水素に曝して試験を行う装置であって、環状のガス管10と、水素を流動させる圧縮機20と、上流側蓄圧槽30と、下流側蓄圧槽40と、下流側圧力計41と、バイパス管50と、第一弁51と、ガス収容槽52と、下流側圧力計41が所定の圧力以上であると開く第二弁53と、第三弁54と、を備える。
従って、上流側蓄圧槽30および下流側蓄圧槽40では吸収できないほど圧力上昇した場合、第一弁51が開き、バイパス管50に設けられたガス収容槽52へ水素を収容することができる。このため、水素の使用量を増大させる必要をなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスの試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池等の装置では、水素、その他の可燃性ガスが流通される部品機器が用いられている。この可燃性ガスに曝される部品や機器の耐久性の性能試験を行うために試験装置が用いられている。この試験装置は、環状のガス管に被試験体と圧縮機とを配置し、この圧縮機の上流側と下流側とにそれぞれ蓄圧槽を設けた構成である。
ガスを圧縮機により循環させる場合、特許文献1のような圧縮機の上流側と下流側とにバイパス流路を設けて圧縮機前後の圧力変動を抑えることが知られている。可燃性ガスの試験装置においても圧縮機前後の圧力変動を抑えることが望まれており、特許文献1に近似した技術が援用されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−267431号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明では、可燃性ガスを循環させると、圧縮機により可燃性ガスが徐々に暖められて試験装置内圧が上昇する。この際、圧縮機の上流側および下流側に設けられた蓄圧槽によって試験装置内の圧力変動を吸収している。しかしながら、可燃性ガスを連続的に循環させた場合、試験装置内の温度が著しく上昇し、蓄圧槽では吸収できないほど圧力が上昇することがある。このため、このような際は、可燃性ガスを試験装置外へと安全に放出する必要がある。従って、試験装置を連続使用する場合、放出ロス分を補充する必要があるため可燃性ガスの使用量が増大するという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、ガスを放出せずに圧力の制御が可能な可燃性ガスの試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の試験装置は、被試験物を可燃性ガスに曝して試験を行う装置であって、前記ガスが循環流動するとともに前記被試験物が露出される環状のガス管と、前記ガスを前記ガス管内で一方向に流動させる圧縮機と、前記ガス管の前記圧縮機に対して上流側の部位に設けられ上流側の圧力を蓄える上流側蓄圧槽と、前記ガス管の前記圧縮機に対して下流側の部位に設けられ前記圧縮機側の圧力を蓄える下流側蓄圧槽と、前記下流側蓄圧槽に設けられ前記下流側蓄圧槽内の圧力を検出する下流側圧力計と、前記上流側蓄圧槽と前記下流側蓄圧槽とを連結するバイパス管と、前記バイパス管に設けられ前記下流側蓄圧槽が所定の圧力以上になると開く第一弁と、前記第一弁と前記上流側蓄圧槽との間の前記バイパス管に設けられ、前記第一弁から前記ガスが流入されるガス収容槽と、前記ガス収容槽と前記上流側蓄圧槽との間の前記バイパス管に設けられ、前記下流側圧力計が所定の圧力以上であると開く第二弁と、前記第二弁と前記上流側蓄圧槽との間の前記バイパス管に設けられ、前記第二弁側の圧力が前記上流側蓄圧槽側の圧力より高くなると開く第三弁と、を備えることを特徴とする試験装置である。
なお、本発明における被試験物は、被試験物自体が環状に形成され、この被試験物の両端が環状のガス管に接続される構成、若しくは、被試験物全体が環状のガス管内に収容される構成である。
【0007】
この発明によれば、可燃性ガスを連続的に循環させて、試験装置内の温度上昇が著しくなり蓄圧槽では吸収できないほど圧力上昇した場合、つまり、下流側圧力計が所定以上の圧力を検出した場合、第一弁が開き、バイパス管に設けられたガス収容槽へ可燃性ガスを収容することができるので、可燃性ガスを試験装置外へと放出することなく装置内の圧力を下げることができる。このため、試験装置を連続使用する場合でも、可燃性ガスの使用量を増大させる必要をなくすことができる。
さらに、ガス収容槽に収容された可燃性ガスは、圧縮機を通過しないため、収容される間に放熱し、温度が下がる。このため、ガス収容槽の可燃性ガスは、装置内を循環する可燃性ガスよりも温度が低い。従って、ガス収容槽に収容された可燃性ガスが第二弁および第三弁を通過して上流側蓄圧槽へと戻ることで、温度上昇した装置内の可燃性ガスを冷却することができる。
【0008】
本発明の試験装置は、前記上流側蓄圧槽と前記下流側蓄圧槽とを連結する連結管と、前記連結管の前記上流側蓄圧槽に設けられ、前記上流側蓄圧槽内の圧力を検出する上流側圧力計と、前記上流側圧力計が感知する圧力に連動して開度を調節する第四弁と、を備えることを特徴とする試験装置である。
【0009】
この発明によれば、例えば、試験装置を停止および緊急停止するような場合、第四弁は閉じた状態となっているため、圧縮機の吸入と吐出とによって圧縮機の上流側と下流側との圧力差が大きくなる。このとき、上流側圧力計は圧縮機の吸入により陰圧を検出する。そして、第四弁は上流側蓄圧槽の圧力を検出する上流側圧力計に連動して開度を調節する。
このため、第四弁は上流側圧力計の検出する圧力により開度を調節しながら緩やかに開閉することができるため、急激な圧力変動を伴うことなく上流側蓄圧槽と下流側蓄圧槽とを一定の圧力にすることができる。従って、急激な圧力変動による試験装置の損傷を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。図1は本実施形態の装置の概略構成図である。
【0011】
〔試験装置の構成〕
図1に示すように、本実施形態の試験装置1は、環状に配置されたガス管10と、可燃性ガスとしての水素を一方向に流動させる圧縮機20と、圧縮機20の上流側に設けられる上流側蓄圧槽30と、圧縮機20の下流側に設けられる下流側蓄圧槽40と、上流側蓄圧槽30と下流側蓄圧槽40とを連結するバイパス管50と、バイパス管50とは異なる管であって上流側蓄圧槽30と下流側蓄圧槽40とを連結する連結管60と、を備える。
なお、本実施形態の試験装置1は、圧縮機20が3段圧縮式で動力90kW、吸入圧力0.08〜0.1MPaG、吐出圧力3.5MPaGであり、上流側蓄圧槽30および下流側蓄圧槽40が各々容積300Lおよび容積200Lであり、ガス収容槽52が容積210Lである。
【0012】
ガス管10は、被試験物を水素に曝す試験部11と、試験部11の水素の圧力を一定に調整する圧力調整機構12と、を備えている。試験部11は、ガス管10に両端が接続された筒状体を備え、この筒状体に図示しない被試験体を収納するものである。本実施形態では被試験体が管状部材であれば、その両端開口部が、ガス管10に直接接続されてもよい。また、被試験体としては、例えば、水素自動車や燃料自動車、その他の燃料に用いられる部材を例示できる。
上流側蓄圧槽30は、上流側蓄圧槽30の圧力を検出する上流側圧力計31を備えている。
下流側蓄圧槽40は、下流側蓄圧槽40の圧力を検出する下流側圧力計41を備えている。
バイパス管50は、第一弁51と、第一弁51を通過して流入する水素を収容するガス収容槽52と、下流側圧力計41が所定以上の圧力を検出した場合に開く制御弁である第二弁53と、第三弁54とを備えている。また、第一弁51と第三弁54とは、弁の前後圧力差が所定以上となった場合に開く構成であって、かつ、一方向へのみ水素を通過させる閉止弁となっている。
連結管60は、上流側圧力計31の感知する圧力に連動して開度を調節する制御弁である第四弁61を備えている。
【0013】
〔試験装置の動作〕
図1に示すように、試験装置1は、ガス管10内に充填された水素が圧縮機20により一方向に流動される。この流動される水素は、ガス管10に設けられた試験部11において試験に供される。また、試験部11内の圧力は、圧力調整機構12によって、圧力変動のない状態に保たれている。
【0014】
圧縮機20の上流側は圧縮機20のポンプ作用により絶えず圧力変動を起こすが、上流側蓄圧槽30によって圧力変動が吸収されるため安定した圧力を維持している。これと同様に圧縮機20の下流側も下流側蓄圧槽40により圧力変動が吸収されるため安定した圧力を維持している。
しかしながら、長時間に亘り循環運転を続けると、試験装置1内を循環する水素が圧縮機20により暖められ、試験装置1内の圧力が徐々に上昇する。そして、試験装置1内の圧力が設定値より大きくなると上昇した下流側蓄圧槽40の圧力は、バイパス管50に設けられた第一弁51が開くことによりガス収容槽52へと逃がされる。このとき、第一弁51は、下流側蓄圧槽40の圧力が所定以下になるまで開き続け、さらに、ガス収容槽52から下流側蓄圧槽40への逆流を防ぐ。
【0015】
長時間連続運転を繰り返してもガス収容槽52の圧力は規定圧力以上となる事はない。また、試験装置1のガス量が足りなくなる事は下流側蓄圧槽40の圧力を見る圧力計41の圧力が、設定圧力値以下となる事で検知できるのでこの場合第二弁53および第三弁54を開きガス収容槽52の水素ガスを上流蓄圧槽30に戻す事で防止する事が出来る。
【0016】
次に、試験装置1を停止および緊急停止する場合、本試験装置1では連結管60に設けられた第四弁61を閉じた状態とする事が本装置の特徴である。本試験装置1では上流部、下流部に大きな容積の蓄圧槽を持っているため急な装置停止においても上流側、下流側とも設備仕様を外れる圧力状態とはならない。また、第四弁61を開かない事により高圧の下流側蓄圧槽40の水素が上流側蓄圧槽30および圧縮機低圧段に流入しこれらを仕様圧力以上の高圧とする事を防ぎ、試験装置1の損傷を防止する効果がある。
【0017】
〔試験装置の作用効果〕
本実施形態の試験装置1は、水素が循環流動するとともに被試験物が露出される環状のガス管10と、水素をガス管10内で一方向に流動させる圧縮機20と、圧縮機20に対して上流側に設けられた上流側蓄圧槽30と、圧縮機20に対して下流側に設けられた下流側蓄圧槽40と、下流側蓄圧槽40に設けられた下流側蓄圧槽40内の圧力を検出する下流側圧力計41と、上流側蓄圧槽30と下流側蓄圧槽40とを連結するバイパス管50と、このバイパス管50に設けられ、下流側蓄圧槽40が所定の圧力以上になると開く第一弁51と、この第一弁51から水素が流入されるガス収容槽52と、下流側圧力計41が所定の圧力以上であると開く第二弁53と、第二弁53側の圧力が上流側蓄圧槽30側の圧力より高くなると開く第三弁54と、を備える。
【0018】
従って、水素を連続的に循環させて、試験装置1内の温度上昇が著しくなり上流側蓄圧槽30および下流側蓄圧槽40では吸収できないほど圧力上昇した場合、つまり、下流側圧力計41が所定以上の圧力を検出した場合、第一弁51が開き、バイパス管50に設けられたガス収容槽52へ水素を収容することができるので、水素を試験装置1外へと放出することなく試験装置1内の圧力を下げることができる。
このため、試験装置1を連続使用する場合でも、水素の使用量を増大させる必要をなくすことができる。また、水素を試験装置1外へ放出しないため、火災および爆発事故などのおそれをなくすことができる。
さらに、ガス収容槽52に収容された水素は、圧縮機20を通過せずに収容されているので、ガス収容槽52で放熱されて温度が下がる。従って、ガス収容槽52の水素は、試験装置1内を循環する水素よりも温度が低い。このため、ガス収容槽52に収容された水素が第二弁53および第三弁54を通過して上流側蓄圧槽30へと戻ることで、温度上昇した試験装置1内の水素を冷却し、試験装置1内の圧力上昇を緩和することができる。
【0019】
本実施形態の試験装置1は、バイパス管50とは異なる、上流側蓄圧槽30と下流側蓄圧槽40とを連結する連結管60と、上流側蓄圧槽30内の圧力を検出する上流側圧力計31と、上流側圧力計31が感知する圧力に連動して開度を調節する第四弁61と、を備える。
【0020】
試験装置1が運転開始時および運転中に循環水素流量が変化する事に対し本試験装置1では、上流側圧力計31の圧力が設定圧力以下となった場合、設定圧力との偏差に応じ第四弁61開度を調整し上流側蓄圧槽30の圧力を一定に保つ事が出来る。この事により試験装置1は試験物に循環流通する水素量が0L/分〜最大定格流量の範囲で安定作動する事が出来る。
【0021】
試験部11は、ガス管10に両端が接続された筒状体を備え、この筒状体に図示しない被試験体を収納するものである。本実施形態では被試験体が管状部材であれば、その両端開口部が、ガス管10に直接接続されてもよい。
このため、被試験体が管状部材である場合はガス管10に直接接続することができるので、試験部11の筒状体を備える必要がなく、試験部11の構成を簡素なものにすることができる。
【0022】
〔本実施形態の変形例〕
なお、本実施形態では、本発明の試験装置1は、循環させる可燃性ガスとして水素を用いているが、これに限らず、メタン、エタン、プロパンなど、いずれに対しても適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、可燃性ガスに曝される部品や機器の耐久性の性能試験を行う試験装置に利用できる他、耐久性の性能試験を行う試験装置以外の各種試験装置にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の試験装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0025】
1…試験装置
10…ガス管
20…圧縮機
30…上流側蓄圧槽
31…上流側圧力計
40…下流側蓄圧槽
41…下流側圧力計
50…バイパス管
51…第一弁
52…ガス収容槽
53…第二弁
54…第三弁
60…連結管
61…第四弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験物を可燃性ガスに曝して試験を行う装置であって、前記可燃性ガスが循環流動するとともに前記被試験物が露出される環状のガス管と、前記可燃性ガスを前記ガス管内で一方向に流動させる圧縮機と、前記ガス管の前記圧縮機に対して上流側の部位に設けられ上流側の圧力を蓄える上流側蓄圧槽と、前記ガス管の前記圧縮機に対して下流側の部位に設けられ前記圧縮機側の圧力を蓄える下流側蓄圧槽と、前記下流側蓄圧槽に設けられ前記下流側蓄圧槽内の圧力を検出する下流側圧力計と、前記上流側蓄圧槽と前記下流側蓄圧槽とを連結するバイパス管と、前記バイパス管に設けられ前記下流側蓄圧槽が所定の圧力以上になると開く第一弁と、前記第一弁と前記上流側蓄圧槽との間の前記バイパス管に設けられ、前記第一弁から前記ガスが流入されるガス収容槽と、前記ガス収容槽と前記上流側蓄圧槽との間の前記バイパス管に設けられ、前記下流側圧力計が所定の圧力以上であると開く第二弁と、前記第二弁と前記上流側蓄圧槽との間の前記バイパス管に設けられ、前記第二弁側の圧力が前記上流側蓄圧槽側の圧力より高くなると開く第三弁と、を備えることを特徴とする試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載された試験装置において、前記上流側蓄圧槽と前記下流側蓄圧槽とを連結する連結管と、前記連結管の前記上流側蓄圧槽に設けられ、前記上流側蓄圧槽内の圧力を検出する上流側圧力計と、前記上流側圧力計が感知する圧力に連動して開度を調節する第四弁と、を備えることを特徴とする試験装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−145178(P2009−145178A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322265(P2007−322265)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000155986)株式会社鈴木商館 (4)
【Fターム(参考)】