誘導加熱式半田付け装置
【課題】半田付け時間を短縮できる誘導加熱式半田付け装置を提供する。
【解決手段】可動本体部14の下面に、ベース板12上の半田付け材料に対向させて本体カバー41を取付け、可動本体部14とともにこの本体カバー41をベース板12上の半田付け材料に対して進退自在に設ける。本体カバー41の内部にはコイル42を設ける。このコイル42は、高周波電流とともに冷却水の供給を受ける銅管により成形する。その直管部43は、導電性の管継手45および配管46を介し可動本体部14内の電気回路に、さらに外部に設置された高周波電源に接続するとともに、管継手45および配管46を介して冷却水供給源に接続されている。コイル42の内部にはフェライトコア49を嵌着し、コイル42の先端部外周には、耐熱性および非粘着性に優れたコイル先端カバー51を嵌着する。
【解決手段】可動本体部14の下面に、ベース板12上の半田付け材料に対向させて本体カバー41を取付け、可動本体部14とともにこの本体カバー41をベース板12上の半田付け材料に対して進退自在に設ける。本体カバー41の内部にはコイル42を設ける。このコイル42は、高周波電流とともに冷却水の供給を受ける銅管により成形する。その直管部43は、導電性の管継手45および配管46を介し可動本体部14内の電気回路に、さらに外部に設置された高周波電源に接続するとともに、管継手45および配管46を介して冷却水供給源に接続されている。コイル42の内部にはフェライトコア49を嵌着し、コイル42の先端部外周には、耐熱性および非粘着性に優れたコイル先端カバー51を嵌着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け材料を押圧しながら電磁誘導加熱して半田付けする誘導加熱式半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用リード線の半田付け装置としては、リード線押えピンによりリード線を太陽電池の半田バンプ上に押し付けながら、半田こてによりリード線を加熱して半田バンプを溶解し、リード線を半田バンプに接続するもの(例えば、特許文献1参照)、押圧ロッドによりタブリードを太陽電池セルの集電極に押圧しながら、赤外線ヒータによりタブリードに被覆されている半田を加熱溶融して、タブリードを集電極に半田付けするもの(例えば、特許文献2参照)、リード線押さえ機構部によりタブリード線を太陽電池素子の集電電極に押圧しながら、ノズルからタブリード線に向って噴射された加熱気体によりタブリードに被覆されている半田を加熱溶融して、タブリード線を半田付けするもの(例えば、特許文献3参照)、レーザによって半田付けをするものなどがそれぞれ知られている。
【0003】
また、ワーク押さえによりワークの浮き上がりを押さえてから、加熱コイルによりワーク上の半田付け部位を含む空間領域に高周波磁界を作用させて、電磁誘導加熱により半田を発熱溶融させる誘導加熱式半田付け装置がある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−127322号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2003−168811号公報(第1頁、図4)
【特許文献3】特開2006−66570号公報(第1頁、図3)
【特許文献4】特開2000−42730号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半田こて、赤外線ヒータ、加熱気体、レーザによる半田付けは、加熱に要する時間がかかり、3〜5秒程度の半田付け時間を必要としている。また、従来の誘導加熱式半田付け装置は、電磁誘導加熱を行なうに当たって、ワーク押さえによるワーク押さえ工程と、加熱コイルによる誘導加熱工程が必要であり、そのための時間を要している。
【0006】
要するに、従来の半田こて、赤外線ヒータ、加熱気体、レーザおよび電磁誘導加熱による半田付けは、いずれも3〜5秒程度の半田付け時間を必要とし、瞬時の半田付けができない問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、半田付け時間を短縮できる誘導加熱式半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、半田付け材料に対して進退自在に設けられた本体カバーと、この本体カバーの内部に設けられて少なくとも高周波電源に接続されたコイルと、このコイルの先端部外周に嵌着されるとともに上記本体カバーの先端より突出された部分に半田付け材料を押圧する押圧面が形成されたコイル先端カバーとを具備した誘導加熱式半田付け装置である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の誘導加熱式半田付け装置におけるコイルが、冷却水の供給を受ける銅管により成形された誘導加熱式半田付け装置である。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の誘導加熱式半田付け装置において、コイルの内周面に当接して嵌着されたフェライトコアを具備した誘導加熱式半田付け装置である。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の誘導加熱式半田付け装置において、半田付け材料に対向させて本体カバーを下面に取付けた可動本体部と、この可動本体部を上下方向に案内する案内手段と、この案内手段に沿って可動本体部を上下方向に操作する操作機構と、上記可動本体部の自重に抗してこの可動本体部を上方へ附勢する附勢手段とを具備した誘導加熱式半田付け装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、高周波電源に接続されたコイルが嵌着されたコイル先端カバーであって、本体カバーの先端より突出された部分に、半田付け材料を押圧する押圧面が形成されたので、コイルによる電磁誘導加熱を、コイル先端カバーの押圧面によるワーク押さえと同時に、瞬時に行なうことができ、半田付け時間を著しく短縮できる。さらに、コイル先端カバーの先端に、半田付け材料を押圧する押圧面が形成されたので、半田付け材料の浮き上がりを防止する押圧手段を、加熱手段とは別個に設置する必要がなく、装置をシンプルかつコンパクトに構成できる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、コイルは、冷却水の供給を受ける銅管により成形されたので、このコイルの加熱を冷却水により冷却して、温度上昇による誘導加熱性能の低下を抑制できる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、コイルの内周面に当接して嵌着されたフェライトコアにより、このフェライトコアの延長上で効率の良い誘導加熱作用が得られる。
【0015】
請求項4に記載された発明によれば、上記本体カバーを下面に取付けた可動本体部を、その自重に抗して附勢手段により上方へ附勢しつつ、案内手段に沿って操作機構により上下方向に操作するので、本体カバーの先端に一体化されたコイル先端カバーを、軽微な操作力で上下動できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る誘導加熱式半田付け装置の一実施の形態を示す一部を切欠いた側面図である。
【図2】同上装置の一部を切欠いた正面図である。
【図3】同上装置の一部を切欠いた平面図である。
【図4】同上装置のコイル先端カバーの平面図である。
【図5】同上装置のコイル部拡大断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】同上装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図1乃至図6に示された一実施の形態、図7に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
先ず、図1乃至図6に示された一実施の形態を説明する。
【0019】
図1乃至図3に示されるように、誘導加熱式半田付け装置11は、太陽電池素子のバスバー電極およびこの電極に半田付けされるリード線などの半田付け材料を載せるベース板12上に取付架台13が立設され、この取付架台13の前面に、高周波電源の一部を構成するインピーダンスマッチング用のコイルおよびコンデンサなどを収納した可動本体部14の取付板15が、この可動本体部14を上下方向に案内する案内手段16を介して取り付けられ、この案内手段16に沿って可動本体部14を上下方向に操作する操作機構17と、上記可動本体部14の自重に抗してこの可動本体部14を上方へ附勢する附勢手段18とが設けられている。
【0020】
案内手段16は、取付架台13に1対のガイドロッド21がロッド支持材22により上下方向平行に取り付けられ、これらのガイドロッド21に可動本体部14の取付板15に固定された1対のスライダ23が摺動自在に嵌合されている。
【0021】
操作機構17は、取付架台13の左右側面に軸部材24により1対のリンクアーム25の基端が回動自在に軸支され、これらのリンクアーム25の先端間に取手26が設けられ、さらに、1対のスライダ23の左右側面にリンクピボット27により1対のリンクバー28の一端が回動自在に軸支され、これらのリンクバー28の他端と1対のリンクアーム25の中間部とがそれぞれ軸部材29により回動自在に連結されている。
【0022】
附勢手段18は、取付架台13の上部前面に取付けられた1対の取付ブラケット31間に、ぜんまいばねなどにより図1反時計方向に附勢されたフランジ付ロール32が回動自在に軸支され、このフランジ付ロール32に帯体33が巻回され、この帯体33の下端が可動本体部14の取付板15に止着されている。
【0023】
可動本体部14の下面には、ベース板12上の半田付け材料に対向させて例えばポリアセタールなどの強度に優れた本体カバー41が取付けられている。その結果、この本体カバー41は、可動本体部14とともにベース板12上の半田付け材料A,B(図6)に対して進退自在に設けられている。この本体カバー41は、上方から順次小径の丸穴が成型された円筒状の中空成型品である。
【0024】
図1および図2に示されるように、本体カバー41の内部にはコイル42が設けられている。このコイル42は、高周波電流とともに冷却水の供給を受ける銅管により成形され、このコイル42の直管部43は、導電性の管継手45および配管46を介して可動本体部14内の電気回路に接続され、さらに図6に示されるように外部に設置された高周波電源44に接続されているとともに、管継手45および配管46を介して冷却水供給源にも接続されている。冷却水供給源には、ポンプなどの冷却水供給部47および冷却用熱交換器48などが設けられている。
【0025】
図5および図6に示されるように、コイル42の内部には、コイル42の内周面に当接してフェライトコア49が嵌着されている。コイル42の先端部外周には、例えばアルミナまたはテフロン(登録商標)などの耐熱性に優れたコイル先端カバー51が嵌着されている。
【0026】
このコイル先端カバー51は、本体カバー41の先端開口縁部52と係合するフランジ部53を有し、さらに上記本体カバー41の先端より突出された部分であって、上記フェライトコア49と対応する部分に開口部54が設けられ、この開口部54の周囲に、半田付け材料A,Bを押圧する押圧面55が形成されている。
【0027】
コイル42およびフェライトコア49の下端面とこの押圧面55との間には、0.3〜0.5mm程度の間隙が設定されているので、コイル42およびフェライトコア49の下端面と半田付け材料Aとの間に僅かな非接触間隙を確保できる。
【0028】
太陽電池素子の半田付けを例にとると、半田付け材料Aとしては、例えば太陽電池素子用のリード線であり、半田付け材料Bとしては、例えば太陽電池素子のバスバー電極であり、これらの半田付け材料A,Bは、板状銅線の全面に半田がコーティングされているので、これらの半田付け材料A,Bを重ねて押圧しつつ電磁誘導加熱することで、コーティングされた半田を溶解して板状銅線どうしを半田付けすることが可能である。
【0029】
図4に示されるように、コイル先端カバー51の開口部54や、コイル42が嵌着されるコイル嵌着溝56は、角形のコア断面に応じて角形に成型され、このコイル嵌着溝56の一側に円弧溝57が成型され、この円弧溝57に図6に示されるように直管部43へのコイル引出部分が嵌合されている。なお、コア断面およびコイル断面は、角形に成形したが、丸形に成形しても良い。
【0030】
次に、図1乃至図6に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0031】
ベース板12上に太陽電池素子などの半田付け材料A,Bをセットして、取手26を下げ、1対のリンクアーム25から1対のリンクバー28を介して1対のスライダ23に押し下げ力を作用させ、フランジ付ロール32から帯体33を引し出しつつ、可動本体部14とともに本体カバー41を下降させ、本体カバー41の先端に設けられたコイル先端カバー51の押圧面55により半田付け材料A,Bを重ねて押圧する。
【0032】
そして、コイル先端カバー51の押圧面55が設定位置まで下降したことを定位置に設置されたリミットスイッチ(図示せず)などにより自動的に検出して通電を開始し、または、コイル先端カバー51の押圧面55による押圧力が所定圧に達したことを、コイル先端カバー51からの押圧反力をコイル42の直管部43を介して可動本体部14内の圧力スイッチ(図示せず)などにより自動的に検出して通電を開始し、または、作業者のスイッチ操作により通電を開始し、可動本体部14からの電力出力をコイル42に0.3秒程度の短時間供給することで、フェライトコア49の延長上に位置する半田付け材料A,B間を非接触で電磁誘導加熱し、2つの板状銅線にコーティングされた半田を溶解して板状銅線どうしを半田付けする。この通電によるコイル42の温度上昇は、冷却水供給部47から供給される冷却水により防止する。
【0033】
この半田付け後は、取手26を上げ、可動本体部14とともに本体カバー41を上昇させ、本体カバー41の先端に設けられたコイル先端カバー51の押圧面55を半田付け材料A,Bから離反させるが、このとき、フランジ付ロール32が帯体33を巻き取る方向に附勢している附勢手段18により、上げ操作をサポートする。
【0034】
このように、高周波電源44に接続されたコイル42が嵌着されたコイル先端カバー51であって、本体カバー41の先端より突出された部分に、半田付け材料A,Bを押圧する押圧面55が形成されたので、コイル42による電磁誘導加熱を、コイル先端カバー51の押圧面55によるワーク押さえと同時に、0.3秒程度の短時間で瞬時に行なうことができ、半田付け時間を著しく短縮できる。さらに、コイル先端カバー51の先端に、半田付け材料A,Bを押圧する押圧面55が形成されたので、半田付け材料A,Bの浮き上がりを防止する押圧手段を、加熱手段とは別個に設置する必要がなく、装置をシンプルかつコンパクトに構成できる。
【0035】
コイル42は、冷却水の供給を受ける銅管により成形されたので、このコイル42の加熱を冷却水により冷却して、温度上昇による誘導加熱性能の低下を抑制できる。さらに、コイル42の内部に嵌着されたフェライトコア49も冷却することができ、フェライトコア49の温度上昇による磁気特性の低下を抑制でき、延いては、誘導加熱性能の低下を抑制できる。
【0036】
コイル42の内周面に当接して嵌着されたフェライトコア49により、このフェライトコア49の延長上で効率の良い誘導加熱作用が得られる。
【0037】
上記本体カバー41を下面に取付けた可動本体部14を、その自重に抗して附勢手段18により上方へ附勢しつつ、案内手段16に沿って操作機構17により上下方向に操作するので、本体カバー41の先端に一体化されたコイル先端カバー51を、軽微な操作力で上下動できる。
【0038】
次に、図7に示された他の実施の形態を説明する。なお、図1乃至図6に示された実施の形態と同様の部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
可動本体部14の一側面および他側面に回動支軸61が設けられ、この回動支軸61を中心とする円の円周上にコイル42、フェライトコア49、コイル先端カバー51などが配置され、そのコイル先端カバー51の開口部54および押圧面55と対向する位置に半田付け材料が設置される。
【0040】
また、本体カバー41aおよびコイル42の直管部43aは、半田付け材料の設置箇所や大きさに応じて、本体カバー41aに嵌着されて一体化された本体カバー41bおよび直管部43aに一体的に接続された直管部43bにより延長されている。
【0041】
そして、可動本体部14を時計方向に回動することで、本体カバー41bの先端に設けられたコイル先端カバー51の押圧面55により2つの半田付け材料を重ねて押圧しつつ、可動本体部14からの電力出力をコイル42に短時間供給することで、フェライトコア49の延長上に位置する複数の半田付け材料間を非接触で電磁誘導加熱し半田付けする。半田付け後は、可動本体部14を反時計方向に回動して、本体カバー41の先端に設けられたコイル先端カバー51の押圧面55を半田付け材料から離反させる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の誘導加熱式半田付け装置は、太陽電池パネルなどの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
14 可動本体部
16 案内手段
17 操作機構
18 附勢手段
41 本体カバー
42 コイル
44 高周波電源
49 フェライトコア
51 コイル先端カバー
55 押圧面
A,B 半田付け材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け材料を押圧しながら電磁誘導加熱して半田付けする誘導加熱式半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用リード線の半田付け装置としては、リード線押えピンによりリード線を太陽電池の半田バンプ上に押し付けながら、半田こてによりリード線を加熱して半田バンプを溶解し、リード線を半田バンプに接続するもの(例えば、特許文献1参照)、押圧ロッドによりタブリードを太陽電池セルの集電極に押圧しながら、赤外線ヒータによりタブリードに被覆されている半田を加熱溶融して、タブリードを集電極に半田付けするもの(例えば、特許文献2参照)、リード線押さえ機構部によりタブリード線を太陽電池素子の集電電極に押圧しながら、ノズルからタブリード線に向って噴射された加熱気体によりタブリードに被覆されている半田を加熱溶融して、タブリード線を半田付けするもの(例えば、特許文献3参照)、レーザによって半田付けをするものなどがそれぞれ知られている。
【0003】
また、ワーク押さえによりワークの浮き上がりを押さえてから、加熱コイルによりワーク上の半田付け部位を含む空間領域に高周波磁界を作用させて、電磁誘導加熱により半田を発熱溶融させる誘導加熱式半田付け装置がある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−127322号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2003−168811号公報(第1頁、図4)
【特許文献3】特開2006−66570号公報(第1頁、図3)
【特許文献4】特開2000−42730号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半田こて、赤外線ヒータ、加熱気体、レーザによる半田付けは、加熱に要する時間がかかり、3〜5秒程度の半田付け時間を必要としている。また、従来の誘導加熱式半田付け装置は、電磁誘導加熱を行なうに当たって、ワーク押さえによるワーク押さえ工程と、加熱コイルによる誘導加熱工程が必要であり、そのための時間を要している。
【0006】
要するに、従来の半田こて、赤外線ヒータ、加熱気体、レーザおよび電磁誘導加熱による半田付けは、いずれも3〜5秒程度の半田付け時間を必要とし、瞬時の半田付けができない問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、半田付け時間を短縮できる誘導加熱式半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、半田付け材料に対して進退自在に設けられた本体カバーと、この本体カバーの内部に設けられて少なくとも高周波電源に接続されたコイルと、このコイルの先端部外周に嵌着されるとともに上記本体カバーの先端より突出された部分に半田付け材料を押圧する押圧面が形成されたコイル先端カバーとを具備した誘導加熱式半田付け装置である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の誘導加熱式半田付け装置におけるコイルが、冷却水の供給を受ける銅管により成形された誘導加熱式半田付け装置である。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の誘導加熱式半田付け装置において、コイルの内周面に当接して嵌着されたフェライトコアを具備した誘導加熱式半田付け装置である。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の誘導加熱式半田付け装置において、半田付け材料に対向させて本体カバーを下面に取付けた可動本体部と、この可動本体部を上下方向に案内する案内手段と、この案内手段に沿って可動本体部を上下方向に操作する操作機構と、上記可動本体部の自重に抗してこの可動本体部を上方へ附勢する附勢手段とを具備した誘導加熱式半田付け装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、高周波電源に接続されたコイルが嵌着されたコイル先端カバーであって、本体カバーの先端より突出された部分に、半田付け材料を押圧する押圧面が形成されたので、コイルによる電磁誘導加熱を、コイル先端カバーの押圧面によるワーク押さえと同時に、瞬時に行なうことができ、半田付け時間を著しく短縮できる。さらに、コイル先端カバーの先端に、半田付け材料を押圧する押圧面が形成されたので、半田付け材料の浮き上がりを防止する押圧手段を、加熱手段とは別個に設置する必要がなく、装置をシンプルかつコンパクトに構成できる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、コイルは、冷却水の供給を受ける銅管により成形されたので、このコイルの加熱を冷却水により冷却して、温度上昇による誘導加熱性能の低下を抑制できる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、コイルの内周面に当接して嵌着されたフェライトコアにより、このフェライトコアの延長上で効率の良い誘導加熱作用が得られる。
【0015】
請求項4に記載された発明によれば、上記本体カバーを下面に取付けた可動本体部を、その自重に抗して附勢手段により上方へ附勢しつつ、案内手段に沿って操作機構により上下方向に操作するので、本体カバーの先端に一体化されたコイル先端カバーを、軽微な操作力で上下動できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る誘導加熱式半田付け装置の一実施の形態を示す一部を切欠いた側面図である。
【図2】同上装置の一部を切欠いた正面図である。
【図3】同上装置の一部を切欠いた平面図である。
【図4】同上装置のコイル先端カバーの平面図である。
【図5】同上装置のコイル部拡大断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】同上装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図1乃至図6に示された一実施の形態、図7に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
先ず、図1乃至図6に示された一実施の形態を説明する。
【0019】
図1乃至図3に示されるように、誘導加熱式半田付け装置11は、太陽電池素子のバスバー電極およびこの電極に半田付けされるリード線などの半田付け材料を載せるベース板12上に取付架台13が立設され、この取付架台13の前面に、高周波電源の一部を構成するインピーダンスマッチング用のコイルおよびコンデンサなどを収納した可動本体部14の取付板15が、この可動本体部14を上下方向に案内する案内手段16を介して取り付けられ、この案内手段16に沿って可動本体部14を上下方向に操作する操作機構17と、上記可動本体部14の自重に抗してこの可動本体部14を上方へ附勢する附勢手段18とが設けられている。
【0020】
案内手段16は、取付架台13に1対のガイドロッド21がロッド支持材22により上下方向平行に取り付けられ、これらのガイドロッド21に可動本体部14の取付板15に固定された1対のスライダ23が摺動自在に嵌合されている。
【0021】
操作機構17は、取付架台13の左右側面に軸部材24により1対のリンクアーム25の基端が回動自在に軸支され、これらのリンクアーム25の先端間に取手26が設けられ、さらに、1対のスライダ23の左右側面にリンクピボット27により1対のリンクバー28の一端が回動自在に軸支され、これらのリンクバー28の他端と1対のリンクアーム25の中間部とがそれぞれ軸部材29により回動自在に連結されている。
【0022】
附勢手段18は、取付架台13の上部前面に取付けられた1対の取付ブラケット31間に、ぜんまいばねなどにより図1反時計方向に附勢されたフランジ付ロール32が回動自在に軸支され、このフランジ付ロール32に帯体33が巻回され、この帯体33の下端が可動本体部14の取付板15に止着されている。
【0023】
可動本体部14の下面には、ベース板12上の半田付け材料に対向させて例えばポリアセタールなどの強度に優れた本体カバー41が取付けられている。その結果、この本体カバー41は、可動本体部14とともにベース板12上の半田付け材料A,B(図6)に対して進退自在に設けられている。この本体カバー41は、上方から順次小径の丸穴が成型された円筒状の中空成型品である。
【0024】
図1および図2に示されるように、本体カバー41の内部にはコイル42が設けられている。このコイル42は、高周波電流とともに冷却水の供給を受ける銅管により成形され、このコイル42の直管部43は、導電性の管継手45および配管46を介して可動本体部14内の電気回路に接続され、さらに図6に示されるように外部に設置された高周波電源44に接続されているとともに、管継手45および配管46を介して冷却水供給源にも接続されている。冷却水供給源には、ポンプなどの冷却水供給部47および冷却用熱交換器48などが設けられている。
【0025】
図5および図6に示されるように、コイル42の内部には、コイル42の内周面に当接してフェライトコア49が嵌着されている。コイル42の先端部外周には、例えばアルミナまたはテフロン(登録商標)などの耐熱性に優れたコイル先端カバー51が嵌着されている。
【0026】
このコイル先端カバー51は、本体カバー41の先端開口縁部52と係合するフランジ部53を有し、さらに上記本体カバー41の先端より突出された部分であって、上記フェライトコア49と対応する部分に開口部54が設けられ、この開口部54の周囲に、半田付け材料A,Bを押圧する押圧面55が形成されている。
【0027】
コイル42およびフェライトコア49の下端面とこの押圧面55との間には、0.3〜0.5mm程度の間隙が設定されているので、コイル42およびフェライトコア49の下端面と半田付け材料Aとの間に僅かな非接触間隙を確保できる。
【0028】
太陽電池素子の半田付けを例にとると、半田付け材料Aとしては、例えば太陽電池素子用のリード線であり、半田付け材料Bとしては、例えば太陽電池素子のバスバー電極であり、これらの半田付け材料A,Bは、板状銅線の全面に半田がコーティングされているので、これらの半田付け材料A,Bを重ねて押圧しつつ電磁誘導加熱することで、コーティングされた半田を溶解して板状銅線どうしを半田付けすることが可能である。
【0029】
図4に示されるように、コイル先端カバー51の開口部54や、コイル42が嵌着されるコイル嵌着溝56は、角形のコア断面に応じて角形に成型され、このコイル嵌着溝56の一側に円弧溝57が成型され、この円弧溝57に図6に示されるように直管部43へのコイル引出部分が嵌合されている。なお、コア断面およびコイル断面は、角形に成形したが、丸形に成形しても良い。
【0030】
次に、図1乃至図6に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0031】
ベース板12上に太陽電池素子などの半田付け材料A,Bをセットして、取手26を下げ、1対のリンクアーム25から1対のリンクバー28を介して1対のスライダ23に押し下げ力を作用させ、フランジ付ロール32から帯体33を引し出しつつ、可動本体部14とともに本体カバー41を下降させ、本体カバー41の先端に設けられたコイル先端カバー51の押圧面55により半田付け材料A,Bを重ねて押圧する。
【0032】
そして、コイル先端カバー51の押圧面55が設定位置まで下降したことを定位置に設置されたリミットスイッチ(図示せず)などにより自動的に検出して通電を開始し、または、コイル先端カバー51の押圧面55による押圧力が所定圧に達したことを、コイル先端カバー51からの押圧反力をコイル42の直管部43を介して可動本体部14内の圧力スイッチ(図示せず)などにより自動的に検出して通電を開始し、または、作業者のスイッチ操作により通電を開始し、可動本体部14からの電力出力をコイル42に0.3秒程度の短時間供給することで、フェライトコア49の延長上に位置する半田付け材料A,B間を非接触で電磁誘導加熱し、2つの板状銅線にコーティングされた半田を溶解して板状銅線どうしを半田付けする。この通電によるコイル42の温度上昇は、冷却水供給部47から供給される冷却水により防止する。
【0033】
この半田付け後は、取手26を上げ、可動本体部14とともに本体カバー41を上昇させ、本体カバー41の先端に設けられたコイル先端カバー51の押圧面55を半田付け材料A,Bから離反させるが、このとき、フランジ付ロール32が帯体33を巻き取る方向に附勢している附勢手段18により、上げ操作をサポートする。
【0034】
このように、高周波電源44に接続されたコイル42が嵌着されたコイル先端カバー51であって、本体カバー41の先端より突出された部分に、半田付け材料A,Bを押圧する押圧面55が形成されたので、コイル42による電磁誘導加熱を、コイル先端カバー51の押圧面55によるワーク押さえと同時に、0.3秒程度の短時間で瞬時に行なうことができ、半田付け時間を著しく短縮できる。さらに、コイル先端カバー51の先端に、半田付け材料A,Bを押圧する押圧面55が形成されたので、半田付け材料A,Bの浮き上がりを防止する押圧手段を、加熱手段とは別個に設置する必要がなく、装置をシンプルかつコンパクトに構成できる。
【0035】
コイル42は、冷却水の供給を受ける銅管により成形されたので、このコイル42の加熱を冷却水により冷却して、温度上昇による誘導加熱性能の低下を抑制できる。さらに、コイル42の内部に嵌着されたフェライトコア49も冷却することができ、フェライトコア49の温度上昇による磁気特性の低下を抑制でき、延いては、誘導加熱性能の低下を抑制できる。
【0036】
コイル42の内周面に当接して嵌着されたフェライトコア49により、このフェライトコア49の延長上で効率の良い誘導加熱作用が得られる。
【0037】
上記本体カバー41を下面に取付けた可動本体部14を、その自重に抗して附勢手段18により上方へ附勢しつつ、案内手段16に沿って操作機構17により上下方向に操作するので、本体カバー41の先端に一体化されたコイル先端カバー51を、軽微な操作力で上下動できる。
【0038】
次に、図7に示された他の実施の形態を説明する。なお、図1乃至図6に示された実施の形態と同様の部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
可動本体部14の一側面および他側面に回動支軸61が設けられ、この回動支軸61を中心とする円の円周上にコイル42、フェライトコア49、コイル先端カバー51などが配置され、そのコイル先端カバー51の開口部54および押圧面55と対向する位置に半田付け材料が設置される。
【0040】
また、本体カバー41aおよびコイル42の直管部43aは、半田付け材料の設置箇所や大きさに応じて、本体カバー41aに嵌着されて一体化された本体カバー41bおよび直管部43aに一体的に接続された直管部43bにより延長されている。
【0041】
そして、可動本体部14を時計方向に回動することで、本体カバー41bの先端に設けられたコイル先端カバー51の押圧面55により2つの半田付け材料を重ねて押圧しつつ、可動本体部14からの電力出力をコイル42に短時間供給することで、フェライトコア49の延長上に位置する複数の半田付け材料間を非接触で電磁誘導加熱し半田付けする。半田付け後は、可動本体部14を反時計方向に回動して、本体カバー41の先端に設けられたコイル先端カバー51の押圧面55を半田付け材料から離反させる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の誘導加熱式半田付け装置は、太陽電池パネルなどの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
14 可動本体部
16 案内手段
17 操作機構
18 附勢手段
41 本体カバー
42 コイル
44 高周波電源
49 フェライトコア
51 コイル先端カバー
55 押圧面
A,B 半田付け材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田付け材料に対して進退自在に設けられた本体カバーと、
この本体カバーの内部に設けられて少なくとも高周波電源に接続されたコイルと、
このコイルの先端部外周に嵌着されるとともに上記本体カバーの先端より突出された部分に半田付け材料を押圧する押圧面が形成されたコイル先端カバーと
を具備したことを特徴とする誘導加熱式半田付け装置。
【請求項2】
コイルは、冷却水の供給を受ける銅管により成形された
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱式半田付け装置。
【請求項3】
コイルの内周面に当接して嵌着されたフェライトコア
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の誘導加熱式半田付け装置。
【請求項4】
半田付け材料に対向させて本体カバーを下面に取付けた可動本体部と、
この可動本体部を上下方向に案内する案内手段と、
この案内手段に沿って可動本体部を上下方向に操作する操作機構と、
上記可動本体部の自重に抗してこの可動本体部を上方へ附勢する附勢手段と
を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の誘導加熱式半田付け装置。
【請求項1】
半田付け材料に対して進退自在に設けられた本体カバーと、
この本体カバーの内部に設けられて少なくとも高周波電源に接続されたコイルと、
このコイルの先端部外周に嵌着されるとともに上記本体カバーの先端より突出された部分に半田付け材料を押圧する押圧面が形成されたコイル先端カバーと
を具備したことを特徴とする誘導加熱式半田付け装置。
【請求項2】
コイルは、冷却水の供給を受ける銅管により成形された
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱式半田付け装置。
【請求項3】
コイルの内周面に当接して嵌着されたフェライトコア
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の誘導加熱式半田付け装置。
【請求項4】
半田付け材料に対向させて本体カバーを下面に取付けた可動本体部と、
この可動本体部を上下方向に案内する案内手段と、
この案内手段に沿って可動本体部を上下方向に操作する操作機構と、
上記可動本体部の自重に抗してこの可動本体部を上方へ附勢する附勢手段と
を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の誘導加熱式半田付け装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−25257(P2011−25257A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171336(P2009−171336)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(509206556)アロニクス株式会社 (2)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(509206556)アロニクス株式会社 (2)
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