説明

誘発駆動ホイール

【課題】伝動部材としてのホイールの伝動ロスを可及的に小とすること
【解決手段】駆動ホイール3とサテライトホイール5とは反対方向に回転可能であり、両者の円周面に設けた多数の区画に磁石が取り付けられる。駆動ホイールに取り付けられるベース磁石7はすべて極性が同一とされ、サテライトホイールに取り付けられるサテライト磁石9は極性が交互に変更され、両者の間に僅少のギャップが設けられる。ベース磁石と同極のサテライト磁石は、ベース磁石との各後端角部7b、9bの位置が一致したとき前端角部9aがサテライトホイールの回転軌跡の接線に対し所定の角度を設けて傾斜される。異極の場合ベース磁石との各前端角部7a、9aの位置が一致したとき後端角部9bがサテライトホイールの回転軌跡の接線に対し所定の角度を設けて傾斜され、異極のベース磁石の取付角度Mが同極のベース磁石の取付角度Lより大である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はエンジンやモータ等の駆動力を伝達する部材の改良に関し、磁力を利用したサテライト型の誘発駆動ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンやモータ等の駆動力はエネルギの伝達時に伝動ロスが生ずる。例えば、駆動源部から実際に仕事をするアクチュエータにエネルギが伝動されるには回転運動を往復運動に変換するなど、種々の部材を経ることにより行われている。この間に伝動ロスが発生するのであるが、従来はこれを不可避的なものとされ有効に対処することができないでいた。
【0003】
この解決策として、磁力の活用が考えられている。これは、ホイールの底面に磁石を設け該磁石に対向するように磁石を固設することで、磁石同士の反発力を利用してホイールを浮上させ、さらにこの反発力を回転にも利用するという考えに基づくものである。
【0004】
しかしながら、上記のように単にホイールの底面に磁石を設け該磁石に対向するように磁石を固設する方法では、磁石の性質である反発及び吸引を十分に活かしきれていなかった。
【特許文献1】特開2005−20978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は上記背景より磁石を使用し、その性質である反発及び吸引を有効利用することにより伝動部材としてのホイールの伝動ロスを可及的に小とすること、とくに駆動ホイールと連動する駆動軸の負荷を可及的に小とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的達成のため、本願発明による誘発駆動ホイールは、径の大なる単一の駆動ホイールと径の小なる複数のサテライトホイールとからなり、上記駆動ホイールと上記サテライトホイールとは反対方向に回転可能であり、上記駆動ホイールと上記サテライトホイールの円周面に設けた多数の区画に磁石が取り付けられ、上記駆動ホイールに取り付けられるベース磁石はすべて極性が同一とされ、上記サテライトホイールに取り付けられるサテライト磁石は極性が交互に変更され、上記ベース磁石と上記サテライト磁石との間には僅少のギャップが設けられ、上記サテライト磁石は上記ベース磁石に対し異極の磁石が同極の磁石より取付角度が大であることを特徴とする。
また、請求項1記載の誘発駆動ホイールにおいて、上記サテライト磁石は、上記ベース磁石と同極の場合ベース磁石と該ベース磁石に接近するサテライト磁石の各後端角部の位置が一致したとき前端角部が上記サテライトホイールの回転軌跡の接線に対し所定の角度を設けて傾斜され、上記ベース磁石と異極の場合ベース磁石と該ベース磁石に接近するサテライト磁石の各前端角部の位置が一致したとき後端角部が上記サテライトホイールの回転軌跡の接線に対し所定の角度を設けて傾斜され、異極のベース磁石の取付角度が同極のベース磁石の取付角度より大であることを特徴とする。
また、請求項1又は請求項2記載の誘発駆動ホイールにおいて、上記サテライトホイールを上記駆動ホイールより速く回転させることを特徴とする。
また、請求項1乃至請求項3いずれか一記載の誘発駆動ホイールにおいて、上記駆動ホイール及び上記サテライトホイールとからなる誘発駆動ホイールが同軸上に複数個連設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
駆動ホイールの周囲に複数のサテライトホイールを設け、上記駆動ホイールと上記サテライトホイールとを反対方向に回転可能とし、上記駆動ホイールにすべて極性を同一としたベース磁石を多数取り付け、上記サテライトホイールに極性を交互に変えたサテライト磁石を多数取り付け、上記サテライト磁石は上記ベース磁石に対し異極の磁石の取付角度が同極の磁石の取付角度より大となるよう差を設けたので、反発力が吸引力より常に大となった状態で、サテライトホイールのN極とS極とが機械的に入れ替わるため、駆動ホイールの回転を助勢しホイールの伝動ロスを可及的に小とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本願発明による誘発駆動ホイールをさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0009】
図1は本願発明による誘発駆動ホイール1を示す。誘発駆動ホイール1は径の大なる単一の駆動ホイール3と径の小なる複数のサテライトホイール5とからなる。駆動ホイール3は後述する駆動源部20からの駆動力により時計回りに回転され、サテライトホイール5は反時計回りに回転可能となっている。上記駆動ホイール3は短い円筒状に形成された適宜の金属材からなり、円周面に設けた多数の区画にベース磁石7が取り付けられる。上記サテライトホイール5は適宜の金属材からなり、上記駆動ホイール3の高さに対応する高さを有する短い円筒状に形成され、円周面に設けた多数の区画にサテライト磁石9が上記ベース磁石7に対し僅少のギャップgを設けて取り付けられる。上記ベース磁石7は磁石の外周面側の極性がすべて同極(図示例ではN極)とされる。他方上記サテライト磁石9は磁石の外周面側の極性をN極−S極と交互に変更してなる。上記サテライト磁石9は上記ベース磁石7に対し同極の磁石と異極の磁石の取付角度に差を設け、異極(図示例ではS極)のサテライト磁石9の取付角度Mは同極(図示例ではN極)のサテライト磁石9の取付角度Lより大にする。このように配設された各磁石7、9を有する駆動ホイール3、サテライトホイール5は、各々、駆動ギヤ4、遊動ギヤ6に同期されて回転する。上記サテライトホイール5は上記駆動ホイール3の周面に複数個(図示例では4個)設けられる。回転速度は、図示例の場合、サテライトホイール5を駆動ホイール3の倍速に設定してある。
【0010】
図2に基づいて上記サテライト磁石9の取付角度M、Lについて詳しく述べる。サテライトホイール5の回転の中心点Oから異極(図示例ではS極)のサテライト磁石901の前端角部9aまでの距離r及び同極(図示例ではN極)のサテライト磁石902の後端角部9bまでの距離rがどちらもサテライトホイールの円周軌道の半径rに等しく、サテライトホイール5の回転の中心点Oから同極のサテライト磁石902の前端角部9aまでの距離r1が該半径rより短く、異極のサテライト磁石901の後端角部9bまでの距離r2がこれよりさらに短くなっている。そのため、上記駆動ホイール3に固着されるベース磁石7と異極のサテライト磁石9は、ベース磁石7の前端角部7aと該ベース磁石7に接近するサテライト磁石901の前端角部9aの位置が一致したとき、サテライト磁石901の後端角部9bが上記サテライトホイール5の回転軌跡の接線Tに対し所定の角度M(図示例では30°)になるよう傾斜されて取り付けられる。他方上記ベース磁石7と同極(図示例ではN極)のサテライト磁石9の取付角度は、ベース磁石7の後端角部7bと該ベース磁石7に接近するサテライト磁石902の後端角部9bの位置が一致したとき、サテライト磁石902の前端角部9aが上記サテライトホイール5の回転軌跡の接線Tに対し所定の角度L(図示例では15°)になるよう傾斜されて取り付けられる。
【0011】
上記構成の誘発駆動ホイール1は、例えば図3Aに示すような駆動装置100に適用される。図3Aにおいて、駆動装置100は駆動源部20と伝動部40とピストン部50とからなり、上記した誘発駆動ホイール1は伝動部40を構成する。詳しく説明すると、駆動源部20は駆動源となるエンジン又はモータからなる。図示例の場合、エンジンは高圧状態で供給される炭酸ガスが大気圧になるときの体積膨張による力によりロータを駆動せしめる炭酸ガスエンジン21からなる。該炭酸ガスエンジン21は、金属製例えばアルミニウム合金製の円筒を横設してなるハウジング22の内部に断面円形の内室23が2個形成され、該2個の内室23にそれぞれロータ24が回転可能に設けられ、所要位置に炭酸ガスの供給口25及び排出口26を設けてなる。図示する炭酸ガスエンジン21は、ロータが5面の複式炭酸ガスエンジンを示し、各ロータ24について炭酸ガスの供給口25及び排出口26を2個ずつ設けてある。
【0012】
上記ロータ24の断面は、正五角形の各辺を内側に向かって5分の1円弧状に凹として、各頂点部を弯曲させた形状となっている。上記頂点部は圧力シールが設けられており、ハウジング内周面とロータ外周面とによってできる5個の作動室内の圧力が保持される。なお、この圧力シールはオイルシールを兼ねる。27はロータシャフトであり、上記2個のロータ24が軸着され、かつ一端部が駆動プーリ28に固着されるとともに、他端部がフライホイール(図示せず)に固着される。この際各ロータ24は出力の円滑性を確保するため、作動面の位相が重ならないようずらせて設ける。29は該フライホイール(図示せず)を内蔵するフライホイールハウジングである。30はスタータである。
【0013】
上記ハウジング22において、各内室23の周壁には2個の供給口25,25と2個の排出口26,26が供給口25・排出口26・他の供給口25・他の排出口26の順に90°おきに等間隔に設けられる。なお、上記排出口26,26は上記供給口25,25より大に形成される。
【0014】
上記各ハウジング22の各内室23には高圧状態の炭酸ガス35a(図3Bに示す)が供給され、該炭酸ガス35aが大気圧になるときの体積膨張による力により上記各ロータ24がロータシャフト27を中心にして回転する。
【0015】
伝動部40は上記構成の誘発駆動ホイール1を複数個(図示例では3個)連設してなり、上記駆動源部20の駆動力をピストン部50に伝達する。詳述すると、41は受動プーリであり、上記駆動プーリ28との間に駆動ベルト42が回転自在に掛け渡され、炭酸ガスエンジン21の駆動力が伝動される。該受動プーリ41は図示を省略するギヤを有し、該ギヤが1次駆動ギヤ43に歯合され、該1次駆動ギヤ43が2次駆動ギヤ44に歯合される。45は上記駆動ホイール3及び上記駆動ギヤ4を軸着するホイール軸であり、上記2次駆動ギヤ44に伝動された炭酸ガスエンジン21の駆動力を各駆動ホイール3及び駆動ギヤ4に伝達する。46は上記ホイール軸45に回転自在に設けられるクランク、47は該クランク46に往復動自在に連結するクランクアームであり、該クランクアーム47にピストン部50を構成するレバーロッド51が回動自在に連結される。
【0016】
ピストン部50は上記レバーロッド51と、上記レバーロッド51に回動自在に連結されるコンロッド52と、該コンロッド52に往復動自在に連結されるピストン53,54,55とからなる。53は1次圧縮ピストン、54は2次圧縮ピストン、55は3次圧縮ピストンであり、56はシリンダブロックである。上記レバーロッド51は支点51aが作用点51b側に偏心して形成される。例えば、図示実施例のように、支点51a・作用点51b間の長さをmとし、支点51aと力点51c間の長さをnとした場合、m:n=1:3とするときは、圧縮の際ピストン53,54,55にかかる負荷力はレバーロッド51についていえば1/3に軽減される。
【0017】
各ピストン53,54,55には流入口53a(図3Cに示す),54a,55a(図3Bに示す)及び流出口53b,54b,55b(図3Bに示す)が設けられる。ピストン53の流入口53aは排気回収タンク80(図3Cに示す)を介して炭酸ガスエンジン21の排出口26と、ピストン54の流入口54aはピストン53の流出口53bと、ピストン55の流入口55aはピストン54の流出口54bとそれぞれ連結されているため、上記炭酸ガスエンジン21から排出された炭酸ガス35b(図3Cに示す)は、該流入口53a,54a,55aから各ピストン53,54,55に流入し、各ピストン53,54,55にて段階的に圧縮され所定の高圧状態とされた後、流出口53b,54b,55bから流出し高圧状態の炭酸ガス35a(図3Bに示す)となって上記炭酸ガスエンジン21に供給されることになる。なお、図3Bに示す60はバージン炭酸ガス35aを貯溜する圧力容器からなる初期タンクであり、切替弁61及び三方切替弁63を介して炭酸ガス35aを供給するパイプに連結される。65は配管内の炭酸ガス35aの濃度(液化純度)を検知するセンサ、67は上記切替弁61及び上記三方切替弁63の制御をするバルブ制御装置であり、配管内の炭酸ガス35aの濃度が低下したとき上記切替弁61及び上記三方切替弁63を作動させて上記初期タンク60よりバージン炭酸ガス35aを配管中に供給する。
【0018】
図3A乃至図3Cに基づき駆動源部20の機構について説明する。まずスタータ30によりフライホイールを回転させる。すると、これに連動しているロータシャフト27及びロータ24が回転する。ハウジング内周面とロータ外周面とによってできる5個の作動室のうち1つの作動室に注目した場合、ロータ24の回転によって、作動室に対し供給口25が「開」になると、高圧状態の炭酸ガス35aが該作動室に流入してくる。この炭酸ガス35aは作動室に流入するとすぐに膨張を開始するが、この膨張はロータ24がさらに回転し作動室に対し供給口25が「閉」になると一旦終了する。これは炭酸ガス35aの膨張が作動室の容積の限度内で行われるためである。これを仮に「亜膨張」と呼ぶ。亜膨張時にロータ24が受ける圧力エネルギは、ガソリンエンジンにおける場合と同様、ロータ面全体で圧力を受けることになる。つまり吸入膨張行程において、炭酸ガス35aは亜膨張エネルギのストレスを溜め保持した状態で次の膨張排出行程に移行することになる。
【0019】
膨張排出行程において、ロータ24の回転により排出口26が「開」となった瞬間、即ち排出口26がピンホール状態となると炭酸ガス35aは大気圧となるため爆発的に膨張する。この爆発的な膨張を伴う排気の作用によって、ロータ24が回転するよう力が加わるのである。炭酸ガスを排気した作動室は、再び供給口25が「開」の位置にくるまで大気圧を保持する。このロータ24の回転の力は、ロータシャフト27及び駆動プーリ28に伝動し、その一部が例えば自動車等の駆動等に利用され、残りが上記伝動部40及び上記ピストン部50に伝動され炭酸ガスの循環に利用される。
【0020】
駆動源部20によって発生した駆動力は、駆動ベルト42を介して受動プーリ41に伝動される。そして、回転比変換のための1次駆動ギヤ43を介して2次駆動ギヤ44が回転し、さらに該2次駆動ギヤ44の回転によってホイール軸45が回転する。該ホイール軸45の回転は各駆動ホイール3及び駆動ギヤ4に伝達するため、駆動ホイール3及び駆動ギヤ4が回転する。すると、駆動ギヤに歯合する遊動ギヤ6が回転し、これに同期してサテライトホイール5が回転を行う。このように駆動ホイール及びサテライトホイールが回転を始めると、駆動ホイールに設けられたN極のベース磁石7に対して、サテライトホイール5に設けられたサテライト磁石9のS極とN極が交互に作用するため、吸引作用と反発作用が繰り返されることになる。このベース磁石7とサテライト磁石9の相互作用によって駆動ホイール3の回転が助勢され、駆動ホイールと連動しているホイール軸45の負荷が可及的に小となる。
【0021】
ホイール軸45の回転はクランク46に伝動され、これによりクランクアーム47が往復運動を行い、この往復運動によってレバーロッド51の力点51cが上下動をするため、51aを支点として作用点51bに設けられたコンロッド52が上下動を行う。そして、このコンロッド52の上下動によって以下のピストン部50が稼動する。
【0022】
ピストン部50では、上記コンロッド52に連動して各ピストン53,54,55が上下動を行い、炭酸ガス35bを段階的に圧縮していく。まず、排気口26から排気回収タンク80を介して送気される炭酸ガス35bは、1次圧縮ピストン53の上昇に伴い流入口53aからシリンダ内に流入し、1次圧縮ピストン53の降下によって圧縮されながら1次圧縮炭酸ガスとして流出口53bから流出する。次に、この1次圧縮炭酸ガスは2次圧縮ピストン54の上昇に伴い流入口54aからシリンダ内に流入し、2次圧縮ピストン54の降下によってさらに圧縮されながら2次圧縮炭酸ガスとして流出口54bから流出する。そして、この2次圧縮炭酸ガスは3次圧縮ピストン55の上昇に伴い流入口55aからシリンダ内に流入し、3次圧縮ピストン55の降下によってさらに圧縮されながら流出口55bから流出する。このように炭酸ガス35bは、3回に亘って圧縮されるから圧縮が円滑に行なわれる。かくして圧縮された炭酸ガスは所定の圧力である炭酸ガス35aとして炭酸ガスエンジン21に供給される。
【0023】
図4は駆動ホイール3とサテライトホイール5の回転に伴うベース磁石7とサテライト磁石9の位置関係を示す。異極(図示例ではS極)のサテライト磁石901がA位置よりB位置にきたとき、つまりベース磁石7の前端角部7aと該ベース磁石7に接近するサテライト磁石901の前端角部9aの位置が一致したとき、サテライト磁石901の後端角部9bが上記接線Tに対し所定の角度M(図示例では30°)になる。なおA位置では、異極(図示例ではS極)のサテライト磁石901と同極(図示例ではN極)のサテライト磁石912の上記接線Tに対する角度M1と同L1とが等しい(図示例ではいずれも37.5°)。次いでサテライト磁石901が回転しC位置に至ると、次のサテライト磁石902の前端角部9aがベース磁石701の後端角部7bのところまできている。このときサテライト磁石901の角度M2は所定の角度Mより小となっている(図示例では22.5°)。D位置乃至F位置では次のサテライト磁石902がベース磁石701にその磁界の影響を及ぼすようになる。先行するサテライト磁石901の上記接線Tに対する角度M3、M4はD位置、E位置となるに従い徐々に小となり、E位置では上記接線Tに対する角度M4と後続のサテライト磁石902の上記接線Tに対する角度L1とが等しくなる(図示例ではいずれも7.5°)。F位置つまりベース磁石701の後端角部7bと該ベース磁石701に接近するサテライト磁石902の後端角部9bの位置が一致したとき、サテライト磁石902の前端角部9aが上記接線Tに対し所定の角度L(図示例では15°)になる。次いでG位置になるとサテライト磁石902の角度L2は所定の角度Lより大となり(図示例では22.5°)、H位置になると角度L3は所定の角度Lよりさらに大となる(図示例では30°)。このときつまりG位置では次のサテライト磁石903(S極)が接近してきており、またH位置では次のサテライト磁石903(S極)の角度M0は所定の角度Mより大となっている(図示例では45°)。
【0024】
図5は上記各位置における磁石の有効磁界と出力分布を模式的に示す。図5下段のグラフにおいて、縦軸は磁石の有効磁界面積と駆動ホイール3及びサテライトホイール5の前後の端角部間の距離を表わし、横軸はホイール軸45の回転方向を示す。A乃至Hの符号は図4の駆動ホイール3とサテライトホイール5の回転に伴うベース磁石7とサテライト磁石9の位置関係を示す。F1は異極(S極)のサテライトホイール5と駆動ホイール3との間に吸引力が作用する吸引磁界を、F2は同極(N極)のサテライトホイール5と駆動ホイール3との間に反発力が作用する反発磁界を夫々示す。また便宜上上段に上記位置関係のときの駆動ホイール3とサテライトホイール5の図を略記する。
【0025】
次に図4及び図5に基づいて本願発明による誘発駆動ホイール1の作動原理を説明してみる。
【0026】
A位置では、上記接線Tに対し大なる角度をつけた異極のサテライト磁石901が、あたかも飛行機が滑走路に着陸するかの如く前端角部9aを下にして駆動ホイール3に接近しており、このとき図5下段のグラフに示すように急激に吸引力が大きくなっていく。その後、B位置及びC位置に示すようにサテライト磁石901の前端角部9aが駆動ホイール3から急速に離反していくため、図5下段のグラフに示すようにA位置で吸引力が最大となった直後から吸引力が急激に減少していく。このように異極のサテライト磁石901は、上記接線Tに対し後端角部9b側に大なる角度をつけているため、駆動ホイール3に対し前端角部9a側が線状の状態で急激に接近し磁界の作用をするので、吸引力が主として回転方向を決定することに利用される。
【0027】
C位置からD位置にかけて、上記接線Tに対し小なる角度をつけて設けた同極のサテライト磁石902が駆動ホイール3に接近してくる。このとき、サテライト磁石902はベース磁石701に対し略平行に接近するため、図5下段のグラフに示すように反発力が大きくなっていく。
【0028】
そして、E位置及びF位置では、上記接線Tに対し略平行を保っていたサテライト磁石902が、あたかも飛行機が滑走路から離陸するかの如く前端角部9aを上にしてベース磁石701から離反するため、このときの大きな反発力(図5下段のグラフに示す)によって駆動ホイール3の回転を助勢する。このように、同極のサテライト磁石が上記接線Tに対し前端角部L側に小なる角度をつけて設けられるため、駆動ホイール3に対しサテライト磁石902が面状の状態で徐々に接近するので、同極のサテライト磁石より長時間に亘り強い反発力が作用し効率的に回転に利用される。サテライト磁石902はベース磁石701に対し回転方向に拡開しているため、反発力が駆動ホイール3への押出力となって回転を助勢するのである。
【0029】
その後、G位置ではサテライト磁石902がさらに離反するにつれて図5下段のグラフに示すように反発力が弱くなる。H位置まで進むと次の異極のサテライト磁石903が接近してくるので、徐々に吸引力が増加してくる。
【0030】
ここで、図6を参照してサテライト磁石901(S極)とベース磁石701(N極)の磁界の変化をみてみる。図6(A)は接近するサテライト磁石9がベース磁石7に対し異極(S極)の場合の磁界の変化を模式的に示した図であり、この場合ベース磁石7上に吸引磁界F1が有効磁界として作用するが、磁石の裏側の反発磁界F2が非有効磁界となっている。一方図6(B)は同極(N極)の場合の磁界の変化を模式的に示すもので、この場合は反発磁界F2が有効磁界として作用し、吸引磁界F1が非有効磁界となる。このように磁石の磁界は、A位置乃至H位置のどの位置においてもクロスハッチングで示す有効磁界とそれ以外の非有効磁界とが交錯している。これを各位置ごとに整理してみると、A位置からC位置まではサテライト磁石901(S極)の吸引磁界F1が有効磁界として作用し、C位置からG位置までは次のサテライト磁石902(同極)から生ずる反発磁界F2が有効磁界として作用する。次いでG位置からH位置を経てA位置へと繰返すステップでは次のサテライト磁石903(S極)の吸引磁界F1が有効磁界として作用するのである。そしてC位置及びG位置は後続する異なる有効磁界の転換点となり、これによりサテライトホイール5の回転方向の決定と駆動ホイール3に対する回転助勢が得られるのである。
【0031】
サテライト磁石9が異極(S極)の場合、各磁石901,903・・・はサテライトホイール5の回転によって円弧運動動作をするが、この動作は取付角度Mが大であるためベース磁石7に急角度で接近するとともにベース磁石7から急角度で離反する。また、接近及び離反いずれの場合も前端角部9aを前のめりに傾斜させた状態で行なう。つまり、サテライト磁石9が異極(S極)の場合は急速にベース磁石7に接近し、しかもその接近状態はベース磁石7に対し線状の姿勢となっている。これにより急激にしかも短時間に増大又は減少する吸引磁界F1が生じ、これにより駆動ホイール3の回転方向が決定される。
【0032】
一方、サテライト磁石9が同極(N極)の場合、各磁石902、904・・・の円弧運動動作は取付角度Lが小であるためベース磁石7に徐々に接近するとともにベース磁石7から徐々に離反する。この接近及び離反はいずれの場合も前端角部9aを拡開させた状態で行なわれる。つまり、サテライト磁石9が同極(N極)の場合はベース磁石7に徐々に接近し、しかもその接近状態はベース磁石7に対し面状の姿勢となっている。これにより徐々にしかも長時間の間増大する反発磁界が生じ、これにより駆動ホイール3の回転を助勢する。
【0033】
このようなサテライト磁石9とベース磁石7との吸引・反発の相互作用は、磁界の及ぼす面積と時間の差により図5下段のグラフに模式的に示すように、吸引の相互作用が瞬間的に、反発の相互作用が長時間に亘るので、丁度電気モータの回転磁界と同様の局部的作用を得る結果となる。
【0034】
このように、磁石の反発と吸引という特性を利用し反発力を吸引力より大として、かつ、サテライトホイール5のN極とS極との機械的な変換による磁力の吸引及び反発の相互作用の連続的繰り返しが駆動ホイール3の回転を助勢するため、駆動ホイールと連動しているホイール軸45の負荷が可及的に小となる。
【0035】
本願発明は上記実施例に限定されない。例えば、誘発駆動ホイール1は単一個で用いることを妨げない。
【0036】
また上記駆動ホイール3とサテライトホイール5との回転数は任意であり、両者の回転数を同一としてもよい。
【0037】
サテライトホイール5の個数は複数個であればよく、4個に限定されない。図7はサテライトホイール5の個数を8個とする場合である。
【0038】
サテライト磁石の取付角度は、ベース磁石に対し異極の磁石が同極の磁石より取付角度が大であればよく、取付角度M、Lの数値は上記した例に限定されない。図7の例では、サテライトホイール5の回転の中心点Oから同極のサテライト磁石902の前端角部9a及び後端角部9b並びに異極のサテライト磁石901の前端角部9aまでの距離が全てサテライトホイールの円周軌道の半径rに等しく、サテライトホイール5の回転の中心点Oから異極のサテライト磁石901の後端角部9bの距離r3がこれより短くなっている。つまり、同極のサテライト磁石902は、サテライトホイール5の回転軌跡上に磁石の両端部が位置するように設けられ、異極のサテライト磁石901はベース磁石7と該ベース磁石に接近するサテライト磁石901の各前端角部9a,7aの位置が一致したとき該サテライト磁石の前端角部9aが上記サテライトホイール5の回転軌跡上に位置されるとともに後端角部9bが上記接線Tに対し所定の角度M(図示例では20°)を設けて傾斜される。
【0039】
駆動ホイール3、サテライトホイール5等の材質は適宜のものを用いることができる。
【0040】
駆動ホイール3のベース磁石7はS極であってもよく、この場合サテライトホイール5のサテライト磁石9のS極、N極の取付角度は図示とは反対になる。
【0041】
さらに、図3の装置は本願発明による誘発駆動ホイールの適用例の一であり、適用される機械、装置は例えば、上記装置の各部の全部又は一部を欠くものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明による誘発駆動ホイールは、例えばエンジンやモータの駆動力を伝達する伝動部材や発電装置の駆動力を伝達する伝動部材等に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(A)は本願発明による誘発駆動ホイールの実施の形態を示す正面図、(B)は(A)の右側面図である。
【図2】図1の駆動ホイールとサテライトホイールの関係及びベース磁石及びサテライト磁石の詳細を示す正面図である。
【図3A】本願発明による誘発駆動ホイールを適用した駆動装置を示す斜視図である。
【図3B】図3Aに供給系の配管を書き込んだ図である。
【図3C】図3Aに回収系の配管を書き込んだ図である。
【図4】本願発明にかかる駆動ホイールとサテライトホイールの回転に伴うベース磁石とサテライト磁石の関係を示す図である。
【図5】本願発明による誘発駆動ホイールの有効磁界と出力分布を示す図である。
【図6】ベース磁石及びサテライト磁石の有効磁界を示す図であり、(A)は異極の場合、(B)は同極の場合を示す。
【図7】駆動ホイールとサテライトホイールの関係及びベース磁石及びサテライト磁石の詳細を示す他の実施例の正面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 誘発駆動ホイール
3 駆動ホイール
4 駆動ギヤ
5 サテライトホイール
6 遊動ギヤ
7 ベース磁石
7a 前端角部
7b 後端角部
701 ベース磁石
702 ベース磁石
703 ベース磁石
9 サテライト磁石
9a 前端角部
9b 後端角部
901 サテライト磁石
902 サテライト磁石
903 サテライト磁石
20 駆動源部
21 炭酸ガスエンジン
22 ハウジング
23 内室
24 ロータ
25 供給口
26 排出口
27 ロータシャフト
28 駆動プーリ
29 フライホイールハウジング
30 スタータ
40 伝動部
41 ギヤ
42 駆動ベルト
43 1次駆動ギヤ
44 2次駆動ギヤ
45 ホイール軸
46 クランク
47 クランクアーム
50 ピストン部
51 レバーロッド
51a 支点
51b 作用点
51c 力点
52 コンロッド
53 ピストン
54 ピストン
55 ピストン
56 シリンダブロック
60 初期タンク
61 切替弁
63 三方切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径の大なる単一の駆動ホイールと径の小なる複数のサテライトホイールとからなり、上記駆動ホイールと上記サテライトホイールとは反対方向に回転可能であり、上記駆動ホイールと上記サテライトホイールの円周面に設けた多数の区画に磁石が取り付けられ、上記駆動ホイールに取り付けられるベース磁石はすべて極性が同一とされ、上記サテライトホイールに取り付けられるサテライト磁石は極性が交互に変更され、上記ベース磁石と上記サテライト磁石との間には僅少のギャップが設けられ、上記サテライト磁石は上記ベース磁石に対し異極の磁石が同極の磁石より取付角度が大であることを特徴とする誘発駆動ホイール。
【請求項2】
請求項1記載の誘発駆動ホイールにおいて、上記サテライト磁石は、上記ベース磁石と同極の場合ベース磁石と該ベース磁石に接近するサテライト磁石の各後端角部の位置が一致したとき前端角部が上記サテライトホイールの回転軌跡の接線に対し所定の角度を設けて傾斜され、上記ベース磁石と異極の場合ベース磁石と該ベース磁石に接近するサテライト磁石の各前端角部の位置が一致したとき後端角部が上記サテライトホイールの回転軌跡の接線に対し所定の角度を設けて傾斜され、異極のベース磁石の取付角度が同極のベース磁石の取付角度より大であることを特徴とする誘発駆動ホイール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の誘発駆動ホイールにおいて、上記サテライトホイールを上記駆動ホイールより速く回転させることを特徴とする誘発駆動ホイール。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3いずれか一記載の誘発駆動ホイールにおいて、上記駆動ホイール及び上記サテライトホイールとからなる誘発駆動ホイールが同軸上に複数個連設されることを特徴とする誘発駆動ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−228781(P2009−228781A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74705(P2008−74705)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(300045248)有限会社新科学開発研究所 (18)