説明

誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法及び金属膜付き誘電体基材

【課題】
大気圧プラズマプロセスとナノレベルの自己組織化との融合により、外部金属種を全く必要としない無公害高効率を実現する誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法及び金属膜付き誘電体基材を提供する。
【解決手段】
誘電体基材の表面を、希ガスを用いた大気圧プラズマ処理して表面に親水性官能基を導入する工程、錯化高分子及びめっき層と同じ金属種を含む前駆体を液相法により塗布し超薄膜を作製する工程、親水性官能基を反応点として錯化高分子が自発的に共有結合を形成し高密度にグラフト化し、錯化高分子に前駆体が配位結合により連結され、この金属イオンを含む錯化高分子膜を、大気圧プラズマ処理して、金属イオンを原子状金属へ還元する工程、生成した原子状金属が自己組織的に凝集してナノサイズのクラスターを形成した後、無電解めっき浴中に浸漬して金属層を形成する工程とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法及び金属膜付き誘電体基材に係わり、更に詳しくはフッ素樹脂等の誘電体基材の表面に金属膜を形成する方法及びそれにより製造された金属膜付き誘電体基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や通信回路などに使用される高周波デバイスは、動作周波数の高速化や低消費電力化への開発が進められている。しかし、デバイスの高速化に伴い配線容量の影響が増大してしまい、信号伝播速度の遅延や消費電力の増加といった技術課題が生じている。これらの課題を解決するため、現在広く使われているポリイミド系絶縁材料(比誘電率3.2〜3.5)よりも誘電率の低い材料が必要とされ、比誘電率が2.1のポリテトラフロロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂が注目されている。フッ素樹脂の誘電特性についてはGHz帯においても優れた特性を有するだけではなく、耐薬品性、耐熱性、電気的特性に極めて優れており、ポリイミドに取って代わる高周波用プリント基板、衛星放送の受信アンテナ等への応用が期待される。
【0003】
フッ素樹脂をこのような用途に応用するには、最近では、薄銅箔を用いたファインエッチング、あるいはレジストパターン内にメッキ配線膜を成長させる、セミアディティブ法を用いることによる高精細配線を形成する必要がある。一般に、銅箔厚さの極端な低下は実装性に支障をきたすことから、セミアディティブ法が主流になりつつある。しかしながら、セミアディティブには実用的な観点から幾つかの課題がある。その一つがシード層の形成である。すなわち、配線用のパターンめっきを行う上で、フッ素樹脂表面に通電用のシード層を形成する必要がある。現状では、シード層はスパッタ法などの乾式成膜法により形成されており、プロセス効率の低下及びコスト高の原因となっている。更には、高い密着性を付与するために、ニッケルやクロムなどの薄膜を接着層として形成させる必要がある。これらは、パターニングにおけるエッチング工程数の増大をもたらす他、ニッケルは磁性金属であるために、高周波用途において支障を引き起こす可能性がある。
【0004】
乾式成膜法によるシード層の形成に関する課題は、例えば無電解めっき等の湿式法によりある程度解消される。プロセス効率が高まり、更にフッ素樹脂上に銅膜などのシード層を直接形成することが可能になると期待できる。フッ素樹脂はその高い化学的安定性のため、他の物質群との接着は極めて困難であり、その表面を機能化するためには適切な前処理が必要となる。更には、高周波応答性の観点からはフッ素樹脂基板と銅層間の界面の凹凸が可能な限り小さいことが望まれる。
【0005】
図14に、現在産業界で主流となっているフッ素樹脂表面の金属化プロセスのフローチャートを示した。従来、無電解めっきは、各種のエッチング方法により被めっき物100の表面を洗浄して油脂などを除去し(図14(a)参照)、それからを被めっき物100の表面を粗面化及び親水化させたのち(図14(b)参照)、被めっき物に無電解めっきの触媒核102を付与し(図14(c)参照)、次いでその触媒核102を活性化したのち(図14(d)参照)、無電解めっき液に浸漬することにより、無電解めっき皮膜104を析出させる(図14(e)参照)。図中符号101は粗面化によって形成された凹凸、103は活性化された触媒核である。無電解めっきにおいては、核付け処理及び活性化処理が重要な工程であり、めっき皮膜の析出性や密着性にも強く関わってくる。
【0006】
化学的に安定なC−F結合を有するフッ素樹脂の場合、成型後の高分子基板表面の指紋や汚れを除去したのち、コンテトラエッチなどの金属ナトリウムを含むアルカリ洗浄剤を利用した脱脂処理、親水化、及び表面の積極的な粗面化を行う(コンディショナー)。表面に作製された凹凸によるアンカー効果を利用して、触媒核の付着性の向上を図っている。次に触媒核付け処理、及びその活性化として、塩化スズ溶液に被めっき物を浸漬し、表面に2価のスズイオンを吸着させたのち、塩化パラジウム溶液に浸漬することにより、パラジウムを還元し、活性なパラジウム触媒核を表面に付着させる方法(センシーアクチ法)や、凹凸構造に直接コロイド状の触媒核を付着させ、アクセレーターと呼ばれる活性化液に浸漬することにより、触媒核を活性化するコロイド法が検討されている。
【0007】
C−F結合を化学的に切断するための金属ナトリウムの使用は、その高い反応性、毒性、臭気性のため、作業者の健康面や自然環境に対する負荷が極めて大きい。また、粗面化によって触媒核の付着性を向上させるために作製したマイクロメートルサイズの凹凸構造は、10GHz帯域の高周波を用いたデバイス応用においては、その高周波特性の低下を引き起こしてしまう。更には、既述の手法による触媒核の活性化では、その直後の水洗で触媒核が脱落しやすく、被めっき物表面と無電解めっき皮膜の密着性のバラつきが発生しやすいこと、処理工程が多く、高い反応性を有する各種処理液の浴管理が必要なこと、高価な無電解めっき浴の汚染を防ぎ、且つめっき浴への浸漬前には被めっき物表面が常に清浄化させるために、各プロセス間に水洗と酸洗を複数回繰り返す必要があった。膨大な量の洗浄水等の廃棄が必要であり、またスズやパラジウムのイオン化物の一部は高い毒性を有しその回収・廃棄が困難であることなど、種々の問題があった。
【0008】
無電解めっきプロセスによるシード層の形成に重要となる、触媒核の付着性や活性化に常温常圧下で処理が可能な乾式によるプロセスとして、大気圧プラズマプロセスが考案された(例えば、特許文献1)。特許文献1の実施例では、樹脂表面に無電解めっき皮膜を形成する方法において、被めっき物である樹脂表面に貴金属化合物及び樹脂浸透性を有する化合物を含有する液体を塗布したのち、大気圧で励起可能なガスプラズマ処理することにより、貴金属化合物を付着及び活性化させている。しかしながら、特許文献1の実施例に記載されているような、脱脂処理に強アルカリ溶剤を使用していること、被めっき物表面に金属化合物を浸透させるために、被めっき物表面の粗面化を湿式で行っていること、酸化性及び還元ガス雰囲気でプラズマを発生させるために、雰囲気制御としてチャンバープロセスを必要とすること、また密着性が1.5kgfcm-1程度と実用化レベル(2.5kgfcm-1)に到達していないという問題があった。
【0009】
一方、グラフト重合による金属層の密着強度の向上を図る研究は多数存在する(例えば、特許文献2)。通常、樹脂表面から別の高分子をグラフト化する場合は、対応するモノマーと重合開始剤を含む溶液を展開し、紫外線又はプラズマ照射下においてラジカル重合を行う。この場合、グラフト重合とエッチングが同時に進行するため、グラフトされた高分子の分子量や分子構造については調べることは困難である他、高密度にグラフト鎖を形成させるには、脱酸素環境が必要になるなど、多くの制限を受ける。また、グラフト化させられる高分子の種類もラジカル重合で合成が可能なビニル系やアクリル系ポリマーに限定される。
【0010】
また、有機材料を大気圧プラズマで処理し、加工や表面改質を図ることは公知である。例えば、特許文献3には、大気圧プラズマを用いて、有機材料を加工する技術、あるいは金属、半導体若しくは無機物絶縁体の何れかの表面上に形成された有機物質を加工する技術が開示されている。更に、特許文献4には、大気圧プラズマを用いて、フッ素系高分子重合体膜や、セラミックスやガラス類、熱可塑性樹脂などの多孔体の表面を改質(親水化)する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平09−228059号公報
【特許文献2】特開平07−164600号公報
【特許文献3】特許第3366679号公報
【特許文献4】特許第3455610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、常温常圧下において巨大なエネルギーを大面積にわたって均一且つ簡便に供給することが可能な大気圧プラズマプロセスとナノレベルの自己組織化との融合により、Na、Sn、Pdなどの外部金属種を全く必要としない無公害高効率を実現するスマートな無電解めっきプロセスを利用した誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法及び金属膜付き誘電体基材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の課題解決のために、誘電体基材の表面を、希ガスを用いた大気圧プラズマ処理して表面に親水性官能基を導入する工程、既に重合された一次構造が明確な錯化高分子及び目的とするめっき層と同じ金属種を含む前駆体を液相法により誘電体基材の表面に塗布し超薄膜を作製する工程、前記親水性官能基を反応点として、錯化高分子が自発的に共有結合を形成し高密度にグラフト化されるとともに、錯化高分子に前駆体が配位結合により連結され、この金属イオンを含む錯化高分子膜を、希ガスを用いた大気圧プラズマ処理して、金属イオンを原子状金属へ還元する工程、生成した原子状金属が自己組織的に凝集してナノサイズのクラスターを形成した後、無電解めっき浴中に浸漬して、金属ナノクラスターを触媒として金属層を形成する工程、とよりなる誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法を構成した(請求項1)。
【0013】
ここで、前記誘電体基材が、フッ素含有高分子樹脂、あるいはフッ素含有高分子樹脂とポリエステルなどの液晶性高分子、ポリイミド誘導体との高分子アロイや共重合体であることが好ましい(請求項2)。
【0014】
特に、前記誘電体基材が、ポリテトラフロロエチレンであるとより好ましい(請求項3)。
【0015】
また、前記錯化高分子は、金属イオンと配位結合を形成するような、カルボニル基、低級アミノ基、高級アミノ基、アミド基、ピリジル基、ピロール基、イミダゾール基、水酸基、エーテル基、エステル基、リン酸基、ウレア基の他に、チオール基、ジチオール基、チオウレア基を構造式中に一つ以上含む高分子である(請求項4)。
【0016】
また、金属種としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロディウム、イリジウムなどの貴金属及びそれらの合金を用いる(請求項5)。
【0017】
そして、錯化高分子及び金属前駆体は、スピンコート法、スプレー噴霧法、インクジェット法、浸漬法、ドクターブレードコーティング法のうちの何れかの液相法により誘電体基材表面に塗布することが好ましい(請求項6)。
【0018】
また、本発明は、前述の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法を用いて、誘電体基材表面に金属層を形成したことを特徴とする金属膜付き誘電体基材を提供する(請求項7)。
【0019】
以下に本発明の原理を説明する。本発明は、常温常圧下において巨大なエネルギーを大面積にわたって均一且つ簡便に供給することが可能な大気圧プラズマプロセスとナノレベルの自己組織化を融合させることにより、初めて達成させる無公害高効率なスマートな無電解めっきプロセスによって樹脂等の誘電体基材表面を金属化する技術である。従来行われてきた、ナトリウム処理によるマイクロメートルレベルの凹凸構造をアンカー効果した密着性向上とは原理が異なる。低投入電力によって発生した大気圧下における非平衡プラズマ処理とその後の錯化高分子の自己組織的なグラフト重合により、例えばフッ素樹脂基板表面に新たに分子レベルの凹凸構造を設ける。グラフトされた錯化高分子とめっきしたい金属の前駆体は配位結合により直接連結している。その後、この前駆体を大気圧プラズマにより原子状金属まで還元させ金属クラスターを形成させる。この金属クラスターは無電解めっき工程において触媒として作用し、金属ナノクラスターを起点とした自己触媒反応により樹脂表面に金属層が形成される。フッ素樹脂と錯化高分子、錯化高分子と金属層は全て共有結合性の強い多点相互作用により結びついているため、従来のアンカー効果を用いた場合よりも強い密着強度を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法は、以下に示す顕著な効果を奏するものである。
【0021】
本発明のプロセスは、基板表面への過酸化物形成、及び金属イオンの還元に大気圧プラズマを用いること、大気圧プラズマによりフッ素樹脂基板表面に形成した過酸化物基等の親水性官能基を起点として錯化高分子を自己組織的にグラフト化させていること、大気圧プラズマによって金属イオンを還元して作製した金属ナノクラスターを触媒とすることにより、外部金属種を全く必要とすることなく、無電解金属めっきを行っていることを特徴としている。本発明の大気圧プラズマを援用した環境調和型機能性スマートめっきプロセスの特徴を以下に示す。(a)密着強度の向上にアンカー効果を必要としないため、フッ素樹脂基板表面とめっき層間の界面が比較的平坦である。(b)基板の大面積化が容易に行える。(c)工程数が少なく、全て常温常圧下で一貫して連続して行えるため、高スループット性を有する。(d)原料のロスが原理的に少なく、有害物質の排出量が少ないうえ廃棄物回収が容易に行える。(e)少ない設備投資と加工装置の小型化が可能である。
【0022】
本発明により、常温常圧下の一貫したプロセスにより、ナトリウム、スズやパラジウムなどの有毒物質を一切使用することなく、フッ素樹脂表面を金属化することができる。物理制御性、大面積化、高能率性の特徴をもつ大気圧プラズマグロー放電技術に、ナノレベルの自己組織化をあらたに融合させて、互いの利点を限りなく活かすことによって、これまでは、主として経験的知見に基づいた特別なノウハウを必要とする、ブラックボックス状態であった“めっき”プロセスを先進的な制御プロセスへと発展できる。本発明により、携帯電話や通信回路などに使用される高周波デバイスには欠かせない、優れた高周波特性を有するマイクロ波基板材料及び、基板材料の作製装置を安価に提供することができる。
【0023】
本発明でも用いられているような、グラフト重合による金属層の密着強度の向上を図る研究は多数存在する。通常、樹脂表面から別の高分子をグラフト化する場合は、対応するモノマーと重合開始剤を含む溶液を展開し、紫外線又はプラズマ照射下においてラジカル重合を行う。この場合、グラフト重合とエッチングが同時に進行するため、グラフトされた高分子の分子量や分子構造については調べることは困難であるほか、高密度にグラフト鎖を形成させるには、脱酸素環境が必要になるなど、多くの制限をうける。また、グラフト化させられる高分子の種類もラジカル重合で合成が可能なビニル系やアクリル系ポリマーに限定される。その反面、本プロセスでは比較的安定な過酸化物を反応起点として、既に重合されて、分子構造や分子量が明確な、高分子をフッ素樹脂表面から直接グラフト化できる。つまり要望とする表面に応じて、適宜最適な分子構造を有する高分子を容易にグラフト化でき、原理的には分子構造による制限はないことから、その汎用性が高いことがわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。本実施形態では、誘電体基材としてフッ素樹脂基板を用いてプリント基板を作製する例を示す。特に断わりがない場合、フッ素樹脂はPTFEである。
【0025】
本発明に係る誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法の概念図を図1に示している。図1(a)はフッ素樹脂基板1であり、図1(b)はフッ素樹脂基板1を大気圧プラズマ処理するステップを示している。プリント基板となるフッ素樹脂基板1を二枚の対向する電極間に設置し、主成分として希ガスを用いた誘電体バリア放電処理を大気圧下で行う。プラズマ中に含まれるラジカル、電子、イオン等により、フッ素樹脂表面の脱フッ素によるダングリングボンドの形成を誘起する。その後、大気に数分から10分程度でさらすことにより、大気中の水成分と反応して、ダングリングボンドに過酸化物基、水酸基、カルボニル基が自発的に形成される(図1(c)参照)。
【0026】
このように親水性官能基が表面に導入されフッ素樹脂基板の表面に、既に重合された一次構造が明確な錯化高分子をスピンコート法等の液相法により塗布し超薄膜を作製する(図1(d)参照)。このとき、フッ素樹脂表面に形成した過酸化物基を反応点として、錯化高分子2と自発的に共有結合を形成し、フッ素樹脂表面から錯化高分子が高密度にグラフトされる(図1(e)参照)。また、目的とするめっき層と同じ金属種を含む前駆体をスピンコート法等の液相法により塗布し超薄膜を作製する(図1(f)参照)。また、同時に錯化高分子と前駆体間は配位結合により連結しているため、錯化高分子を介して、フッ素樹脂表面に金属イオンが強固に固定されたことになる(図1(g)参照)。ここで、前記錯化高分子と金属前駆体を混合して同時にスピンコート法等の液相法により塗布し超薄膜を作製しても良い。
【0027】
次に、フッ素樹脂基板1の表面に積層された金属イオンを含む錯化高分子膜を再び希ガスを用いた大気圧プラズマに曝すことにより(図1(h)参照)、プラズマ中に含まれる電子及び、大気中の水より発生した水素ラジカル等により、金属イオンは原子状金属へ還元される(図1(i)参照)。このとき、生成した原子状金属は自己組織的に凝集し、ナノサイズのクラスター3を形成する。錯化高分子2を介してフッ素樹脂表面に金属ナノクラスター3が担持されることになる。最後に、無電解めっき浴中にフッ素樹脂基板1を浸漬して無電解めっきを行う(図1(j)参照)。配位結合により強固に固定された金属ナノクラスター3を触媒として、自己触媒的な反応により金属層4が形成される。
【0028】
この場合、ベースとなるフッ素樹脂基板には、フッ素含有高分子樹脂の他、フッ素含有高分子樹脂とポリエステル系に代表されるような液晶性高分子、ポリイミド誘導体との高分子アロイや共重合体が用いられることになる。これらの高分子膜の膜厚は特に限定されない。また、それらの高分子膜中にはガラスクロスなどの無機物を含むものが用いられることが考えられる。
【0029】
また、大気圧プラズマの発生には、50Hzから2.45GHzの高周波電源を用いる。対向電極には、少なくとも片側が誘電体で被覆された円筒状又は平板状の金属を用いることができる。対向させた電極間の距離は5mm以下が望ましい。プラズマを発生させるために、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの希ガスを主成分として、適量の酸素や窒素、水素、アンモニア、アルコール類を混合させておくことが考えられる。チャンバーを用いた雰囲気制御条件及び希ガスを電極部にフローさせる形態をとる、完全大気開放条件においてプラズマを発生させることが考えられる。
【0030】
錯化高分子には、金属イオンと配位結合を形成するような、カルボニル基、低級アミノ基、高級アミノ基、アミド基、ピリジル基、ピロール基、イミダゾール基、水酸基、エーテル基、エステル基、リン酸基、ウレア基の他に、チオール基、ジチオール基、チオウレア基などを構造式中に一つ以上含む全ての高分子を用いることが考えられる。
【0031】
金属種としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロディウム、イリジウム、などの貴金属及びそれらの合金を用いることが考えられる。
【0032】
ナノクラスター析出のための、金属前駆体には、めっきしたい金属を含む無機化合物、及び有機金属錯体を用いることが考えられる。
【0033】
無電解めっき浴には、通常の市販されている各種のものを用いることができるが、めっきする金属以外の金属イオン種を含まないものを用いる。
【0034】
錯化高分子及び金属ナノクラスター前駆体は、スピンコート法やスプレー噴霧法、インクジェット法、浸漬法、ドクターブレードコーティング法などの液相法によりフッ素樹脂表面に塗布する。図1に示した全プロセスは、全て常温常圧下において行うことができるので、連続して一貫して処理を行うロールツーロールプロセスの適用ができる。
【実施例1】
【0035】
以下の5つのプロセスにより、PTFEシート表面に無電解銅メッキを行った。(1)PTFEシート表面への親水基導入、(2)ポリ4−ビニルピリジン(P4VP)のグラフト化、(3)酢酸銅(II)薄膜の作製、(4)酢酸銅(II)の還元、(5)無電解銅めっきの各工程である。
【0036】
本発明で使用した容量結合型大気圧プラズマ処理装置の概念図を図2に示す。本装置は、13.56MHz高周波電源10、マッチングユニット11、チャンバー12、真空排気系13、電極14、電極昇降機構15、走査ステージ16、走査ステージ制御部から構成されている。前記電極14は図2(b)に示すように、棒状形状になっており、直径3mmの銅ロッド17に内径3mm、外径5mmのアルミナパイプ18を被覆した構造である。走査ステージ16上に設置したアルミ合金製試料ホルダー19(20mm×50mm)との間にプラズマを発生させた。これにより、誘電体バリア放電条件下でのグロー放電を実現している。電極間距離は2.5mmに設定した。チャンバー12内を10Paまで真空排気した後、Heガスを大気圧になるまで流入し、投入電力を15Wの条件で大気圧プラズマを発生させた。走査ステージを0.67mm/sの速度で操作しながら、プラズマ処理を行った。このとき、マッチングユニット11を利用して反射電力が0Wになることを確認した。ここで、大気圧プラズマの発生に用いるガスは、空気、希ガス、ハロゲン系ガス、アンモニア、酸素等である。プラズマ照射時間は、
【0037】
走査ステージ16の走査速度を制御して基板表面に対するプラズマ発生領域の滞在時間で制御する。走査ステージの移動速度は0.67mm/sで固定した。走査ステージが静止した状態でのプラズマ処理において、親水化した領域は棒状電極の中心の直下から前後に5mmずつ、10mmの領域であった。このことから、上記の走査速度においては、1passにつき15秒のプラズマ処理がおこなわれる。処理時間の増減はpass回数を変化させることにより行った。
【0038】
日本バルカー工業製PTFEシート(300×300×1mm)を、20×20×1mmの小片に切り分けたものを試料として用いた。アセトン、超純水中で超音波洗浄をそれぞれ30秒行った。15Wの電力を電極間に投入し、大気圧下において誘電体バリア放電を15秒間行い脱フッ素化した後、大気中に10分程度曝した。PTFE表面に過酸化物基、水酸基、カルボニル基の導入を行った。
【0039】
PTFE基板の濡れ性評価は、超純水に対する静的接触角を静適法により、接触角計(協和界面科学,DropMaster300)を用いて測定した。超純水がPTFE表面に接触して5秒後の接触角を測定した。プラズマ処理条件を以下のように設定し、それぞれの処理後5分以内に接触角を測定した。投入電力を15Wで固定し、処理時間を15、60、120、300、600、1200秒と変化させた。図3にPTFE表面を投入電力15Wでプラズマ処理したときの、処理時間に対する水の静的接触角の変化を示す。初期状態では110°程度であった接触角が、15秒のプラズマ処理後60°程度まで減少することがわかった。それ以上処理時間を長くした場合も接触角は60°程度で一定であった。また、投入電力にかかわらず、処理後のPTFE表面の接触角は60°程度になることも確認している。従って、処理時間15秒、投入電力15Wを最適条件として親水化を行った。次に上記の条件において親水化されたPTFE表面について、その表面の安定性を調査するために、大気中での暴露による接触角の経時変化を調べた。また、プラズマ処理したPTFE基板について、室温で大気中に放置し、処理直後から1、2、4、10日後までの接触角の変化を測定した結果を図4に示す。処理直後は62°程度であった接触角が、一日あたり0.55°ずつ増加していくことが分かった。
【0040】
プラズマ処理後のPTFE基板をX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, XPS)による化学構造解析を行った。測定装置はULVAC-PHI製PHI Quantum 2000を用いた。試料として、洗浄のみを行ったPTFE基板と最適条件でプラズマ処理を行ったPTFE基板を比較した。以降、洗浄のみを行ったPTFE基板を未処理PTFE、最適条件で親水化プラズマ処理を行ったPTFE基板を親水化PTFEと称する。図5に未処理および親水化PTFEのC1sスペクトルを示す。未処理PTFEについて、292.4eVに−CF2に由来するメインピークが、284.5eV付近にそのサテライトピークが観察された。一方、親水化PTFEは−CF2に由来するピーク強度が減少しており、−C=O(288.5eV)、−C−O(286.2eV)、−C=C−や−CH2(284.6eV)などに由来するブロードなピークが確認された。この結果は、大気圧プラズマ処理によって表面が脱フッ素化され、親水基が導入されたことを示している。これにより、PTFE表面の水に対する接触角の減少は、水との極性相互作用の向上に起因するものであることがわかった。
【0041】
また、走査型電子顕微鏡(SEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による表面形状観察を行った。表面の濡れ性を議論するうえで、表面の粗さは重要である。ウエンゼルの式から、濡れ性は、固体表面の化学的性質と表面粗さという二つの因子の積で決まる。すなわち、固体表面の凹凸化によって、撥水的な表面はより撥水的になり、親水的表面はより親水的になる。また、高周波基板材料としてPTFE基板を用いる際に、表面粗さは高周波特性に影響を及ぼす。その結果、プラズマ処理前後で表面粗さが増加していないことがわかった。このことから、大気圧プラズマによるPTFE表面の親水化は、親水基形成による化学的性質の変化が主な原因であると考えられる。フッ素樹脂表面を粗面化せず、純粋な化学結合だけで銅箔を形成できれば、周波数の安定性の面からも有利である。この前処理として、PTFE表面の粗面化を伴わずに親水化が可能な大気圧プラズマ処理は、非常に有効な手法であるといえる。
【0042】
また、プラズマによる親水化処理後のPTFE表面を、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)分光装置で観察した。0秒、15秒、60秒間プラズマ処理した後、320から350mTまで磁場を走査して、ESRスペクトルを測定した。図6にESRスペクトルを示す。332.5mTあたりを中心にみられるブロードなピーク強度がプラズマ処理時間増加に伴って増大している。これは、プラズマによる親水化処理後のPTFE表面に過酸化物ラジカルが形成されていることを示唆している。
【0043】
先ず、P4VPがグラフト化することを確認するため、P4VPのみを親水化PTFEにコーティングした。3.9×10-2M及び3.9×10-3MのP4VPエタノール溶液をコーティング液として調製した。調製後の溶液を振動撹拌器でよく撹拌した後、1日以上放置したものを使用した。親水化PTFE基板上にP4VPエタノール溶液を300μL滴下し、2000rpmで20秒間スピンコートを行った。得られたP4VPコーティングPTFE基板について、45℃のエタノール中で24時間洗浄を行った。
【0044】
本発明の特徴は、モノマーとして4-ビニルピリジンを用いた逐次的なフリーラジカルグラフト重合ではなく、市販されている重合体のP4VPをプラズマ活性化されたPTFE表面に塗布した後重合によるグラフト化である。ピリジンが過酸化水素や過カルボン酸などで酸化されると、ピリジン環の窒素上に酸素原子が結びついたピリジンN−オキシドが生成することが知られている。大気圧ヘリウムプラズマ処理とそれに続く大気暴露過程を経てPTFE表面に導入した過酸化物を反応サイトとしたP4VPのグラフト重合について検討した。塗布後、水に対する接触角が61度から48度まで低下することがわかった。塗布前後のC1sおよびN1s軌道XPS測定結果をそれぞれ図7(a)、(b)に示す。プラズマ処理後のC1sと比べると、P4VPを塗布することにより284.6eVに中心をもつブロードピークの増強が確認された。ピーク分離を行ったところ、アルキレン(−CH2−CH2−)基および芳香族ニトリル基(−R−C≡N)に由来したシグナルであった。また、プラズマ処理後には観測されていたパーフルオロアルキレン基(−CF2−CF2−)由来ピークの消失が確認された。これらの結果から、プラズマ活性化されたPTFE表面にP4VP薄膜が成膜されていることがわかった。また、光学顕微鏡レベルではピンホールのない緻密な膜が形成されていることが示唆された。N1sスペクトルからも、塗布後の表面からは鋭い芳香族ニトリル基由来のピークが観測され、既述の結果を強く支持している。興味深いことに、ニトリル基由来の急峻なピークは、ピークセンターに対して非対称であることがわかった。これは、ピリジン環のイミン構造とは異なった化学結合状態を有するイミン誘導体またはアミンオキシド基の形成を示唆している。
【0045】
後重合によるPTFE表面へのP4VPのグラフト化を実験的に明らかにするために、P4VPスピン塗布後のPTFE基板をP4VPの良溶媒であるホットエタノール中に一晩浸漬した。浸漬前後のC1sおよびN1s軌道XPSスペクトル変化を図8に示す。エタノールに浸漬することにより、アルキレン鎖由来の284.6eVに中心をもつC1sピーク強度とN1sピーク強度の低下、および292.4eVのパーフルオロアルキレン基(−CF2−CF2−)由来のピークの増大が確認できた。これは、PTFE表面からP4VPの一部のみが剥離し、大半が良溶媒で洗浄した後でも安定にPTFE表面に滞在していることを意味している。この実験では、エタノールを使用しているため、ピリジン基とカルボキシル基、エーテル基、ケトン基などの水素結合は全て解離する。このことから、PTFE基板とP4VPは共有結合を介してグラフト化されていることが示唆された。
【0046】
スピン塗布法による高分子膜製膜は、その溶液濃度を変化させることにより膜厚を変化させることができる。そこで、上記の実験よりも十倍高濃度のP4VP溶液を調整し、厚膜を成膜し同様の洗浄操作を行ったところ、洗浄後に得られたC1sとN1s軌道のXPSスペクトル強度が低濃度から成膜し、洗浄した試料と全く一致することがわかった(図9)。また、未処理のPTFEに溶媒乾燥法により堆積させたP4VPを同様に洗浄すると、P4VP由来のXPSピークが完全に消失することがわかった。これらの結果は、プラズマ処理によってPTFE表面に生成された過酸化物を起点として、その近傍にいるP4VPのみが選択的に相互作用し、耐溶剤性が著しく増強されていることを如実に表した結果といえる。PTFE表面に形成された過酸化物とピリジン環の酸化またはP4VP主鎖の開裂によるグラフト化によって耐溶剤性が向上したと考えている(図10)。
【0047】
次に、P4VPコーティングPTFE基板上にCuAc水溶液を600μL滴下し、2000rpmで20秒スピンコートを行った。このようにしてP4VPとCuAcを積層させた膜を、以降P4VP/CuAc積層膜と記載する。
【0048】
図11に、(a)Cu2p,(b)N1sについてのXPSスペクトルを示した。Cu2pのスペクトルについて、CuAcスピンコート後の表面には、明確なCu2p3/2およびCu2p1/2ピークが観察された。Cu2p3/2およびCu2p1/2ピークは、強度に若干のムラが見られるものの、表面全体に見られた。N1sのスペクトルについて、CuAcスピンコート前の表面で、P4VPのピリジン環中に存在する、イミンに由来する398.3eVのピークが観察された。CuAcスピンコート後は、このピークが398.8eVにシフトすることが確認された。このような高エネルギー側へのピークシフトは、Nに銅イオンが配位結合し、Cu*−N錯体を作ったことに由来すると考えられる。同様のピークシフトが、ピリジン環中のNへPd(2+)が配位結合し、Pd*−N錯体を形成した場合にも起こることがわかっている。図中、*および**はCu2+の存在やCu2p1/2ピークのサテライトKαを示す。
【0049】
そして、P4VP/CuAc積層PTFE基板について、投入電力15Wで大気圧プラズマ処理を行った。図12(a)に、投入電力15Wで0、15、150、600秒間プラズマ処理したときのCu2pスペクトルを示す。また、図12(b)に、C(0)に由来する933.1eVピークとCu(+2)に由来する943.0eVピークについて、ピーク強度のプラズマ処理時間性を示す。プラズマ処理後の表面では、934eV付近のCu2p3/2ピークが若干低エネルギー側にシフトし、ピーク強度が増加した。また、943.0eV付近のブロードなピークの強度が減少した。エネルギーシフトおよび強度の増減から、銅イオンの還元によって金属銅が形成されていることが示唆される。
【0050】
次に、硫酸銅とP4VPをモル比で1:2になるよう秤量し、エタノール中に溶解させた。エタノール溶液を、PTFEシート表面全体に均一に塗布した。P4VPの膜厚は100nm以下が望ましい。P4VPと混合させて塗布することにより、硫酸銅の微結晶析出を抑制することができる。このとき、PTFE表面に形成されている過酸化物基がP4VPのピリジン環と反応し、自発的に共有結合を介して、グラフト化されることをXPS等により確認した。
【0051】
P4VPと硫酸銅膜の混合膜を積層したPTFEシートを、投入電力30Wの条件で600秒大気圧プラズマ処理をおこない、硫酸銅を還元し、銅ナノクラスターを形成させた。シート表面の一部には、金属銅光沢を有する銅膜が析出していることが肉眼で確認できた。図13は、プラズマ処理を行って親水化したPTFE基板表面に錯化高分子と銅イオンを含む混合超薄膜を成膜した後、プラズマ還元処理を行った表面のSEM像である。薄膜の表面全面に、銅ナノクラスターが形成されていることがわかる。
【0052】
最後に、表面に銅ナノクラスターが形成されたPTFEシートを、市販の銅めっき浴(奥野製薬株式会社 MOON−700 カッパー)に浸漬させ、毎秒100nmの速度で銅薄膜を析出させた。試料表面に銅めっき膜の形成が確認された。銅の析出は主に試料端部およびその周辺から起こり、浸漬時間に応じて試料中央部へ広がっていく様子が観察された。浸漬時間1〜2分までは、銅の析出による表面の被膜が顕著に起こったが、それ以降の被膜速度は減少し、10分以上浸漬しても被覆率はほとんど変化しなかった。簡易的な密着試験として、粘着テープ(スコッチテープ:住友スリーエム社商品名)による剥離テストを行ったところ、析出させた銅膜の剥離は全く観測されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、携帯電話や通信回路などに使用される高周波デバイスには欠かせない、優れた高周波特性を有するマイクロ波基板材料、高周波用フレキシブル配線基板を作製することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法の各工程、手順を示す説明図である。
【図2】大気圧プラズマ処理装置の概念図であり、(a)は全体側面図、(b)は棒状電極と基板との関係を示す平面図である。
【図3】PTFE表面を15Wで大気圧プラズマ処理したときの静的接触角の処理時間依存性を示すグラフである。
【図4】大気圧プラズマ処理(15W、15秒)したPTFE表面を大気暴露したときの静的接触角の経時変化を示すグラフである。
【図5】未処理およびプラズマ処理後(15W、15秒)のPTFE表面のC1s軌道XPSスペクトルを示す。
【図6】大気圧プラズマ処理による親水化処理後のPTFE表面のESRスペクトルを示す。
【図7】親水化処理後およびP4VPスピンコート後のPTFE表面についての、(a)C1s軌道XPSスペクトル、(b)N1s軌道XPSスペクトルをそれぞれ示す。
【図8】P4VP(3.9×10-3M)スピンコートPTFE表面についての、エタノール洗浄前(破線)、エタノール洗浄後(実線)の(a)C1s軌道XPSスペクトル、(b)N1s軌道XPSスペクトルをそれぞれ示す。
【図9】P4VP(3.9×10-2M)スピンコートPTFE表面についての、エタノール洗浄前(破線)、エタノール洗浄後(実線)の(a)C1s軌道XPSスペクトル、(b)N1s軌道XPSスペクトルをそれぞれ示す。
【図10】P4VPコーティングした未処理PTFE表面についての、エタノール洗浄前(破線)、エタノール洗浄後(実線)の(a)C1s軌道XPSスペクトル、(b)N1s軌道XPSスペクトルをそれぞれ示す。
【図11】P4VPコーティングPTFE基板上にCuAcをスピンコートする前後の表面のXPSスペクトルであり、(a)Cu2p軌道XPSスペクトル、(b)N1s軌道XPSスペクトルをそれぞれ示す。
【図12】P4VP/CuAc積層PTFEを投入電力15Wで0、15、150、600秒間プラズマ処理したときの表面のCu2p軌道XPSスペクトル、(b)(○)932eV、(◇)943eVのピーク強度の還元処理時間依存性を示す。
【図13】プラズマ還元処理を行った表面のSEM像である。
【図14】従来のめっき処理方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 フッ素樹脂基板、
2 錯化高分子、
3 金属クラスター、
4 金属層、
10 高周波電源、
11 マッチングユニット、
12 チャンバー、
13 真空排気系、
14 電極、
15 電極昇降機構、
16 走査ステージ、
17 銅ロッド、
18 アルミナパイプ、
19 アルミ合金製試料ホルダー、
100 被めっき物、
101 凹凸、
102 触媒核、
103 活性化された触媒核、
104 無電解めっき皮膜。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基材の表面を、希ガスを用いた大気圧プラズマ処理して表面に親水性官能基を導入する工程、
既に重合された一次構造が明確な錯化高分子及び目的とするめっき層と同じ金属種を含む前駆体を液相法により誘電体基材の表面に塗布し超薄膜を作製する工程、
前記親水性官能基を反応点として、錯化高分子が自発的に共有結合を形成し高密度にグラフト化されるとともに、錯化高分子に前駆体が配位結合により連結され、この金属イオンを含む錯化高分子膜を、希ガスを用いた大気圧プラズマ処理して、金属イオンを原子状金属へ還元する工程、
生成した原子状金属が自己組織的に凝集してナノサイズのクラスターを形成した後、無電解めっき浴中に浸漬して、金属ナノクラスターを触媒として金属層を形成する工程、
とよりなる誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法。
【請求項2】
前記誘電体基材が、フッ素含有高分子樹脂、あるいはフッ素含有高分子樹脂とポリエステルなどの液晶性高分子、ポリイミド誘導体との高分子アロイや共重合体である請求項1記載の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法。
【請求項3】
前記誘電体基材が、ポリテトラフロロエチレンである請求項1記載の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法。
【請求項4】
前記錯化高分子は、金属イオンと配位結合を形成するような、カルボニル基、低級アミノ基、高級アミノ基、アミド基、ピリジル基、ピロール基、イミダゾール基、水酸基、エーテル基、エステル基、リン酸基、ウレア基、チオール基、ジチオール基、チオウレア基を構造式中に一つ以上含む高分子である請求項1〜3何れかに記載の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法。
【請求項5】
金属種としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロディウム、イリジウムなどの貴金属及びそれらの合金を用いる請求項1〜4何れかに記載の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法。
【請求項6】
錯化高分子及び金属前駆体は、スピンコート法、スプレー噴霧法、インクジェット法、浸漬法、ドクターブレードコーティング法のうちの何れかの液相法により誘電体基材表面に塗布する請求項1〜5何れかに記載の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法。
【請求項7】
前記請求項1〜6何れかに記載の誘電体基材表面の触媒フリー金属化方法を用いて、誘電体基材表面に金属層を形成したことを特徴とする金属膜付き誘電体基材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図6】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−156022(P2010−156022A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335528(P2008−335528)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】