調光材料、これを用いた車両、および調光材料の製造方法
【課題】 液晶素子を含む調光材料の有用性を高める手段を提供し、車両や建築物への調光材料の適応性を高める。
【解決手段】 透明な表面層10と、中間層20と、透明な裏面層30とが、この順序で積層している調光材料1であって、中間層20は、少なくとも一軸方向に骨格部21および空隙部が一定間隔で配置された構造体が、表面層10、中間層20および裏面層30の積層方向に積層した構造を有し、空隙部には液晶が充填されている、調光材料である。
【解決手段】 透明な表面層10と、中間層20と、透明な裏面層30とが、この順序で積層している調光材料1であって、中間層20は、少なくとも一軸方向に骨格部21および空隙部が一定間隔で配置された構造体が、表面層10、中間層20および裏面層30の積層方向に積層した構造を有し、空隙部には液晶が充填されている、調光材料である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶が配置された調光材料に関し、特に、反射機能に優れる調光材料に関する。本発明の調光材料は、例えば、車両のフロントガラスやフロントサイドガラスに用いられる。
【背景技術】
【0002】
夏季、炎天下に駐車した車室内への、光および熱の侵入経路としては、面積の大きい、天井、ウィンドシールド、リアガラス、フロントサイドガラス、リアサイドガラス、ドア上部等が挙げられる。
【0003】
従来の車両では、ウィンドシールドには合わせガラス、フロントサイドガラスには単ガラスが用いられることが多い。安全性を向上させるために、強度向上に寄与する中間膜が用いられることもあるが、熱的機能はほぼ無いに等しい。このため、炎天下に駐車した車内には、光エネルギーおよび熱エネルギーが多量に侵入し、車室内環境が非常に苛酷なものとなる。また、空調設備の燃費の低下を招き、巨視的にみれば、環境への悪影響も懸念される。
【0004】
建築物においても、この問題は検討されている。例えば、窓を通じての光エネルギーおよび熱エネルギーの流入によって、室内の空調設備への負荷および人体への負荷が大きくなる。車両の場合と同様に、多量のエネルギーの流入は、空調設備の燃費の低下を招き、巨視的にみれば、環境への悪影響も懸念される。
【0005】
このような問題を解決すべく、近年、建物や車内に流入する光エネルギーおよび熱エネルギーを遮蔽し、室内の温度上昇および冷房負荷を低減させる技術が提案されている。解決策の一例としては、調光機能を有するガラスが提案されている。窓ガラスとしての透明性、および日射エネルギーの遮断のための熱線反射・吸収性の双方の特性を有し、必要に応じてスイッチングできる機能を有していれば、必要なときに必要な光量を室内に侵入させることが可能である。そのような制御が可能であれば、人体や冷房装置にかかる負荷を低減できるほか、省エネルギーの観点からも有益である。
【0006】
ガラスに調光機能を付与するための具体的手段としては、エレクトロクロミック素子(以下「EC素子」という)、および液晶素子が知られている。
【0007】
EC素子は、酸化タングステン、プルシアンブルーなどの電気化学的な酸化還元反応によるスペクトル変化を伴う材料を用い、日射エネルギーの透過量の制御を光の吸収により可能としている。しかしながら、EC素子は、日射エネルギーを吸収するため、室内外を隔てるガラスに用いた場合には、その吸収されたエネルギーが室内に再放出され、室内温度の上昇を招いてしまう。
【0008】
液晶素子は、電圧によって配列が変化する材料からなり、液晶の配列によって光の透視性を変更させる材料である。液晶素子としては、曲線的な配列相のネマティック液晶素子(特許文献1)、相分離法により得られる液晶素子(特許文献2)などが知られている。これらの素子は、以下の原理に基づいて動作する。
【0009】
安価なポリマー中に液晶物質の小滴を分散させた該公報記載の液晶素子は、電圧を印加しない状態では、ポリマー壁の曲面に沿って液晶が配列する。これにより、光路がねじ曲げられ、また、ポリマーと液晶滴との界面において光が反射して散乱し、乳白色に見える。
【0010】
一方、液晶素子に電圧を印加した場合、液晶滴内の液晶は外部電界により電界方向に配列する。このとき、液晶の常光屈折率noとポリマーの屈折率npとを一致するように選択することにより、液晶素子面に垂直に入射した光を、液晶とポリマーとの界面で反射することなく通過させることができ、液晶素子は透明となる。
【0011】
しかしながら、前記液晶素子を室内外を隔てるガラスに適用する場合、改善が望まれている事項がある。例えば、エネルギーの透過量の問題である。前記液晶素子は、電圧印加時には透視性を確保でき、電圧無印加時には非透視性とすることができる。しかしながら、電圧無印加時に液晶素子に入射した光は、そのほとんどが入射側とは反対側に散乱しているため、電圧印加時と比較して日射透過量はほとんど減少していなかった。このため、室内に日射エネルギーが多量に侵入してしまう。
【特許文献1】特表昭58−501631号公報
【特許文献2】特開昭61−502128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、液晶素子を含む調光材料を車両や建築物のガラスなどに適用するためには、改善が望まれている問題がある。そこで、本発明の目的は、液晶素子を含む調光材料の有用性を高める手段を提供し、車両や建築物への調光材料の適応性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、透明な表面層と、中間層と、透明な裏面層とが、この順序で積層している調光材料であって、前記中間層は、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体が、前記表面層、前記中間層および前記裏面層の積層方向に積層した構造を有し、前記空隙部には液晶が充填されている、調光材料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成を有する調光材料によって、調光材料に求められる特性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1は、光学特性に優れる調光材料に関する。具体的には、本発明の第1は、透明な表面層と、中間層と、透明な裏面層とが、この順序で積層している調光材料であって、前記中間層は、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体が、前記表面層、前記中間層および前記裏面層の積層方向に積層した構造を有し、前記空隙部には液晶が充填されている、調光材料である。
【0016】
なお、本願において、「調光材料」とは、入射してきた光の特性を変化させる性質を有する材料一般を意味する。例えば、調光材料の具体例としては、基材がガラスである調光ガラス、基材が樹脂フィルムである調光フィルムなどが挙げられ、これらは調光材料の下位概念に含まれる。
【0017】
図面を参照しながら、本発明の第1について説明する。図1は、調光材料の一実施形態の断面模式図である。調光材料1は、表面層10、中間層20、および裏面層30からなる。中間層20は、少なくとも一軸方向に骨格部21および空隙部22が一定間隔で配置された構造体25が積層した構造を有する。空隙部22には、液晶が充填される。構造体25の積層方向は、表面層10、中間層20、および裏面層30の積層方向である。以下、表面層10、中間層20、および裏面層30の積層方向を単に「積層方向」と呼ぶ。また、積層方向に垂直な方向を「面方向」と呼ぶ。
【0018】
図2は、調光材料の一実施形態の斜視図である。説明の都合上、構造体が4層積層されている態様について示しているが、実際の積層回数や構造体の厚さが図面によって制限されることはない。通常は、表面層10および裏面層30の厚さに比べて、構造体は非常に薄い。中間層を形成する構造体は、一定間隔に配置された構造と、液晶の持つ屈折率により決まる、ある一定の波長の反射性能を持つ。
【0019】
「骨格部」とは、中間層において一定間隔で配置される物体が存在する部位である。「空隙部」とは中間層において骨格部が存在せず、液晶が充填される部位である。本発明の調光材料においては、少なくとも一軸方向に一定間隔で骨格部および空隙部が配置される。「一軸方向」とは、骨格部が配置される、面方向の少なくとも1の方向を意味する。つまり、面方向のいずれかの方向に関して、骨格部および空隙部が一定間隔で配置されていれば、本願の要件を満たす。「一定間隔」は、実質的に一定間隔であればよく、調光作用を果たす上で大きな問題とならない程度であれば、製造過程で生じた誤差が存在していてもよい。
【0020】
骨格部および空隙部の配置例としては、図3〜図5の構造が挙げられる。図3は、直方体形状の骨格部が平行に配列している構造体である。図4は、骨格部が横方向(図中、矢印の方向)および縦方向の二方向に平行に配列している構造体である。図4は、図3の直方体が、配列方向に垂直な方向に分断された構造ともいえる。図5は、骨格部が横方向に配列し、縦方向に関しては骨格部がジグザグに配列されている構造体である。
【0021】
骨格部の形状については、特に限定されない。図2〜図5においては、骨格部の断面が矩形である態様について示したが、3次元に積層可能な形状であれば、特に限定されない。直方体形状(図6)に加えて、例えば、かまぼこ型(図7)、三角形型(図8)、台形型(図9)等の形状が挙げられる。
【0022】
積層構造は、図2の様に直角に交わっている必要は無く、図10および図11に示すような軸がねじれた構造であっても、平面内構造体に周期性があれば、反射機能を発現することができる。
【0023】
骨格部および空隙部の大きさや配置は、反射・透過等の光学機能を考慮して決定することが好ましい。具体的には、構造体における空隙部の長さ:ピッチが、好ましくは1:1〜1:40である。空隙部の長さとは、骨格部および空隙部が一定間隔で配置されている方向に関しての空隙部の長さをいい、図6においてGで示される長さを意味する。ピッチとは、骨格部および空隙部が一定間隔で配置されている方向に関しての、骨格部および空隙部の繰り返し単位の長さをいい、図6においてPで示される長さを意味する。
【0024】
空隙部の長さは、好ましくは50〜400nmである。また、ピッチの幅は、好ましくは100〜800nmである。この範囲とすることにより、光学機能の中でも、可視光域・近赤外光域の調光に適したものとすることができ、建築物や車両におけるエネルギー透過、反射を切り替える上で好適である。
【0025】
平面内構造体の厚さ方向の各平面で切った1周期毎の高さは、50〜800nm程度に設定することが好ましい。一周期毎の高さは、積層される構造体の、1つの構造体の高さを意味し、図12においてTで示される長さである。この範囲とすることで、厚さ方向にも周期性を持たせることが出来、より大きな反射率を得ることが可能となる。
【0026】
骨格部を構成する材料としては、シリカ(SiO2)、紫外線硬化樹脂、汎用樹脂材料などが挙げられ、熱可塑性樹脂を用いると製造上便利である。汎用樹脂としては、例えば、ナイロン66などの脂肪族ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリエーテルエーテルケトン;ポリプロピレン(PP);ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリ乳酸等が挙げられ、これらを用いるのが、加工性、経済性、市場入手性、リサイクル性等の点から好適である。
【0027】
空隙部には液晶が充填される。液晶物質は、特に限定されるものではないが、ネマティック−アイソトロピック転移温度(NI点)が常温域に来るように考慮して選定されることが好ましい。さらに、本発明で使用される液晶が誘電異方性を示す液晶であれば、その常光屈折率または異常光屈折率のどちらかが、温度、光、電圧印加等の刺激によって配列し、その他の成分の屈折率と整合して反射等の機能を発現することが可能である。
【0028】
空隙部に充填される液晶は、等方相を形成することが好ましい。本願において「等方相を形成する」とは、電圧などの特殊な外的ファクターが加わっていない状態で等方相を形成することを意味する。好ましくは、常温で等方相を形成する液晶が充填される。ここで、「常温」とは、一般に調光材料を用いる温度域を意味し、具体的には20〜40℃程度の温度である。本願において「等方相」とは、液晶性を示す液晶分子の単体または混合体が、一定の方向に配列したいわゆる液晶状態になっておらず、配向秩序の無い状態を示す。
【0029】
本発明者らは、等方相を形成し、いわゆる液晶として通常活用される態様を形成していない状態に着目し、等方相を形成する液晶が好ましいことを見出した。つまり、本発明者は、液晶性を示す物質を液晶状態で用いないことに新たな機能を見出した。等方相の液晶を用いることによって、以下のような種々の効果を得ることが可能である。ただし、本発明の技術的範囲が、以下の全ての効果を有する調光材料に限定されるわけではない。
【0030】
炎天下に駐停車されている車両や直射日光が照射する建築物のガラス窓などにおいて、日射エネルギーをガラス内部に侵入させたくない場合に、光を反射させて、日射エネルギーの透過量を低下させることが可能である。つまり、本発明によって、室内環境の改善、冷房負荷の低減などが可能である。
【0031】
等方相を形成する液晶が用いられると、フェールセーフの観点からも好ましい。即ち、車両が故障して液晶に電圧を印加できない状態に陥った場合であっても、ガラスの透光性が保持される。このため、事故により前方が見えなくなるなどの問題が解決されうる。
【0032】
等方相を形成する液晶を用いると、充分な可視光透過率が得られる。例えば、日本においては、車両前方に用いられるガラスの可視光透過率は(Tv)は、70%以上である必要があるが、この基準をクリアすることも可能である。ただし、本発明の調光材料およびその応用品の技術的範囲が、可視光透過率70%以上のものに限定されるわけではない。例えば、建築物のガラスのような可視光透過率が70%以上であることが必要でない用途にも、本発明は適用可能であり、このような用途に用いられる調光材料も、本発明の規定を満たしている、または均等の範囲内であれば、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
さらに、等方相を形成する液晶を用いると、正面からは透明に見えても、別の角度からは透明に見えなくなるという角度依存性の問題も解決可能である。
【0034】
本発明で使用されうる液晶分子は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環等の他、ピリミジン環、ジオキサン環、ピリジン環等のヘテロ環等の環状化合物が2〜4つ結んだものでありうる。その結合部には、メソゲン基と呼ばれるエステル結合、アセチレン結合(エチニレン基)、エタン結合(エチレン基)、エチレン結合(エテニレン基)、アゾ結合等が用いられうる。末端基および側方置換基としては、シアノ基、フルオロ基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基等が用いられる。例えば、アゾキシ系、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルエステル系、シクロヘキサンカルボンサンフェニルエステル系、フェニルピリミジン系、フェニルジオキサン系等の液晶が使用されうる。これらの液晶は単体でも用いるが、実用上は、2種以上の単体の混合体が用いられることが多い。本発明においては、液晶分子の単体および混合物をまとめて、液晶と記載されうる。
【0035】
これらの液晶単体、または混合液晶は、好ましくは常温で等方相を持つように調整される。常温において単体で等方相を形成する液晶分子の具体例としては、4−ペンチル−4’−シアノビフェニル(5CB)、4−ヘキシル−4’−シアノビフェニル(6CB)、4−ヘキシル−4’−シアノフェニルピリジン、4−ヘキシル−4’−プロピルフェニルシクロヘキサン、4−メチル−4’−プロピルジシクロヘキサン、4−ヘキシル−4’−メトキシジシクロヘキサン等が挙げられる。
【0036】
液晶に等方相を形成させるためには、上述のような液晶単体で等方相を形成する材料を用いてもよいし、種々の液晶単体を混合物にして等方相を形成させてもよい。また、分散材を用いて、液晶に等方相を形成させてもよい。分散材によって等方相を形成させる場合、広い温度範囲で等方相を形成させることが可能である。このため、自動車など使用温度領域が広い用途に用いる場合には、有益である。分散材としては、例えば、屈曲型分子などの分散材が用いられる。分散材の具体例としては、用いる液晶に類似の系統で、メソゲン基としてcis−エチレン基、cis−エチレン基の水素をフルオロ基、ブロモ基等のハロゲン基に置換したもの、cis−アゾ基等を骨格に持つものが挙げられる。
【0037】
充填される液晶は、好ましくは、等方相転移温度を−40〜40℃に持ち、その等方相転移温度以上で等方相を形成する液晶である。本発明においては、この等方相転移温度が低いほど好ましいが、等方相転移温度が−40〜40℃の範囲にあれば、一般に調光材料として用いられる環境下では、配列相と等方相との切り替えを行うことが充分に可能である。
【0038】
中間層を変化させて、可視光透過率を低下させるには、液晶の種類に応じて、温度、光、電圧印加等の刺激を使い分けて、液晶分子を配列させる。例えば、電圧印加によって液晶を配列させる。ここでいう「液晶分子を配列させる」とは、液晶分子が電圧印加時に発生する電界に応答して秩序を持ち、電界に対して、液晶分子が直交、あるいは平行に配列することを言う。液晶分子が配列するという条件を満たすものであれば、印加する電圧の波形は限定されない。
【0039】
電圧を印加する場合には、表面層および裏面層に1対の電極を設置し、電極が配置された表面層と裏面層との間に、液晶を配置するとよい。図13は、表面層10および裏面層30に、1対の電極(40、42)が設置され、電極(40、42)の間に液晶を含む中間層20が配置された調光材料の断面模式図である。電極は、好ましくは透明電極である。表面層10と裏面層30とのいずれを正極側または負極側にするかは、表面層10および裏面層30に、正極または負極の一方が配置され、中間層20に存在する液晶に電圧が印加されるのであれば特に限定されない。等方相を形成している液晶を、電圧印加の刺激によって変化させる場合には、液晶は、電極の通電時に等方相を形成し、電極の非通電時に配列相を形成する。これにより、非通電時には可視光透過率(Tv)を確保しつつ、通電時には、配列による調光機能を発現させる。
【0040】
図14は、空隙部22に充填された液晶50の誘電率異方性が正である場合における、電圧印加時の液晶状態の変化を示す模式図である。図15は、空隙部22に充填された液晶50の誘電率異方性が負である場合における、電圧印加時の液晶状態の変化を示す模式図である。図14および図15に示すように制御することにより、液晶の屈折率を変化させ、所望の反射率、透過率を得る。
【0041】
電圧を印加して液晶を配列させる場合の印加電圧は、中間層20の厚さや液晶分子の種類に応じて決定されればよく、特に限定されないが、好ましくは、3〜200V程度である。
【0042】
表面層10および裏面層30は、透明な材料である。本願において「透明」とは、可視光透過率が70%以上であることを意味する。表面層10および裏面層30は、透明な樹脂やガラスなどからなる。透明性が確保されていれば、表面層10および裏面層30は、無色であってもよいし、着色されていてもよい。なお、表面層10とは、光源側に配置される層であることを意味し、裏面層30とは、光源側と反対側に配置される層であることを意味するが、特に厳密な区別が必要とされるわけではない。例えば、表面層10および裏面層30に用いられる材料が同一である場合には、いずれが表面層として用いられてもよい。
【0043】
表面層10および裏面層30の大きさおよび厚さは、調光材料の用途に応じて決定される。例えば、調光材料が自動車のフロントガラスに用いられるのであれば、車両のデザインに応じて表面層10および裏面層30の大きさは決定される。また、厚さも、調光材料の透光率や強度などを考慮して決定される。
【0044】
表面層10および裏面層30として用いられるガラスの素材は特に限定されず、一般に用いられているガラスが適用されうる。ガラスは無色であっても着色されていてもよい。ガラスの具体例としては、クリアガラス、グリーンガラス、ブロンズガラス、グレーガラス、ブルーガラス、UVカット断熱ガラス、熱線吸収ガラス、強化ガラス等が使用されうる。場合によっては、これらが組み合わせられてもよい。
【0045】
表面層10および裏面層30として用いられる樹脂の素材は特に限定されず一般に用いられている樹脂が適用されうる。樹脂は、熱可塑性であってもよいし、熱硬化性であってもよい。適用用途を広げるためには、熱可塑性樹脂がより好適である。具体例としては、ナイロン66などの脂肪族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレンなどからなる各種樹脂フィルムが、加工性、経済性、市場入手性、リサイクル性等の点から好適である。これらの中でも、ポリプロピレン、ポリエステルがより好適で、例えばポリエステルではポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンイソフタレート(PBI)、ポリε−カプロラクトン(PCL)等のほか、PETのエチレングリコール成分を他の異なるグリコール成分で置換したもの(例えば、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT))、またはテレフタル酸成分を他の異なる2塩基酸成分で置換したもの(ポリヘキサメチレンイソフタレート(PHI)、ポリヘキサメチレンナフタレート(PHN))等を用いることができる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0046】
表面層10および裏面層30は、樹脂フィルムであってもよい。表面層10および裏面層30が樹脂フィルムである場合、フィルム状の薄い調光材料が得られる。フィルム状の調光材料の用途としては、仕切り部、屋内等が挙げられる。
【0047】
フィルム状調光材料とガラスとを一体化して、透明性を確保した調光ガラスとして用いることも好適である。フィルム状調光材料を作製し、これを用いて調光ガラスを作製する場合、調光ガラス作製の際の作業性を向上させることができる。例えば、2枚の合わせガラス間に液晶からなる中間層を形成する場合、ガラスの間に液晶材料を充填するのは比較的手間がかかる困難な作業である。このような工程を経る代わりに、樹脂フィルム間に液晶材料が充填されたフィルム状の調光材料を作製しておき、このフィルム状の調光材料をガラス間に配置する工程を採用することによって、作業性を向上させることができる。
【0048】
樹脂フィルム間に液晶からなる中間層が形成されたフィルム状調光材料を作製した場合、上述のように、樹脂フィルムからなる表面層および裏面層の外層に、1対の透明なガラスが配置されてもよい。または、樹脂フィルムからなる表面層または裏面層の一方の外層に、透明なガラスが配置されてもよい。この態様は、ガラスにフィルム状調光材料を貼り付けることによって作製されうる。
【0049】
表面層10および裏面層30を構成する樹脂フィルムの材料としては、先述の熱可塑性樹脂の他に、スチレン、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、テトラメチレングリコールエーテルなどをモノマーとして得られるポリマーが挙げられる。もちろん、他のモノマーを原料とするポリマーが用いられてもよい。2種以上のモノマーからなるコポリマーが用いられてもよい。例えば、スチレンとメチルメタクリレートとのコポリマー、スチレンとアクリロニトリルとのコポリマー、スチレンとブタジエンとのコポリマー、4,4−チオジフェノールとビスフェノールAとのコポリカーボネート、グルテルイミドとメチルメタクリレートとのコポリマーなどが挙げられる。
【0050】
本発明の調光材料は各種用途に適用されうるが、好適な用途としては、車両のフロントガラス、フロントサイドガラスが挙げられる。自動車のフロントガラスおよびフロントサイドガラスは、日本の法規上は、日射成分のうちの可視光透過率(Tv)が70%以上であることが求められる。本発明の調光材料を用いたフロントガラスおよびフロントサイドガラスは、少なくとも運転時には、定められた可視光透過率(Tv)を満たした上で、日射透過率(Te)を下げる手段として有益である。
【0051】
本発明の調光材料が用いられうる車両は多岐に渡る。例えば、図16に示すようなセダン(日産自動車株式会社:スカイラインTM(V35))、図17に示すようなコンパクトカー(日産自動車株式会社:マーチTM(K12))、図18に示すようなミニバン(日産自動車株式会社:セレナTM(C24))、図19に示すようなワゴン(日産自動車株式会社:プリメーラワゴンTM(WP11))、図20に示すようなスポーティーカー(日産自動車株式会社:フェアレディZTM(Z33))などの各種車型に適用されうる。その他にも、軽自動車、クーペ、SUV、1BOX、2BOX、バン、トラック等の車両にも、勿論適用されうる。車両に適用した場合、車室内環境への熱の出入りを制御することによって、地球温暖化の防止に向けた省エネルギー活動に貢献しうる。
【0052】
本発明の第2は、ナノインプリント法を用いた調光材料の製造方法に関する。即ち、本発明の第2は、ナノインプリント法により、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体を積層させる段階と、前記構造体を、透明な表面層および透明な裏面層で挟持する段階と、前記空隙部に液晶を充填する段階とを含む、調光材料の製造方法である。
【0053】
ナノインプリント法は半導体業界において近年注目されている技術である。ナノインプリント法には、ホットエンボス法やUV硬化法がある。ホットエンボス法は、図21に示すように樹脂層に所定形状の型を押し付けて型を樹脂層に入れ込み、微細な凹凸を形成する技術である。まず、第一の型70を、樹脂基材80に押し付ける。このとき、樹脂基材80の温度を、樹脂のガラス転移温度を超える温度にしておく。樹脂基材80を第一の型70に充填させたら、樹脂基材80を冷却し、樹脂の温度をガラス転移温度未満にする。樹脂が固化したら、第一の型70を樹脂基材80から引き離し、表面に凹凸が形成された樹脂基材82を得る。構造体の2段目以降も、同様のメカニズムで製造可能である(図22)。2段目以降の構造体を作製する場合には、第二の型75に予め樹脂を充填しておく。樹脂が充填された第二の型75を、表面に凹凸が形成された樹脂基材82に接触させる。樹脂の温度を、樹脂のガラス転移温度を超える温度として、表面に凹凸が形成された樹脂基材82の樹脂と、第二の型75に充填された樹脂とを接着させる。その後、樹脂の温度を、ガラス転移温度未満とする。樹脂が固化したら、第二の型75を表面に凹凸が形成された樹脂基材82から引き離し、2段に凹凸が形成された樹脂基材84を得る。UV硬化法は、液状のUV硬化樹脂を型に供給した状態でUV光を照射し、硬化させる技術である。UV硬化法を選択する場合には、UV光が樹脂に十分照射され、樹脂が硬化することが確保されるように留意することが好ましい。ナノインプリント法を用いることによって、容易に、大面積で、安価に3次元構造体が形成された調光材料を得ることができる。
【0054】
ナノインプリント法としてホットエンボス法やUV硬化法などの各種態様のうち、どの製法を用いるかは、特に限定されないが、一般の熱可塑性樹脂を用いるか紫外線等による光硬化性樹脂を用いるかによる材料自体の扱い易さ、コスト、また、装置自体の構成も光硬化のための光源ユニット等が追加で必要になること等を考慮するとホットエンボス法が好ましい。具体的には、前記構造体を積層させる段階は、樹脂製の基材に、前記樹脂のガラス転移温度以上に加熱した第一の型を押し付けて、前記樹脂を前記第一の型に充填する段階と、前記第一の型の温度を前記樹脂のガラス転移温度以下に下げる段階と、前記樹脂のガラス転移温度以下に低下した前記第一の型を、前記基材から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体を形成する段階と、骨格部を形成する樹脂が充填された第二の型を前記構造体上に押し付ける段階と、前記第二の型に充填された樹脂の温度を、前記樹脂のガラス転移温度以下に下げる段階と、前記第二の型を前記構造体から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された第二構造体を形成する段階とを含むことが好ましい。
【0055】
次に、図面を用いて、ナノインプリント法を実施する際に用いられる装置の一例について説明する。ただし、本発明の技術的範囲が、例示する装置を用いる態様に限定されるわけではない。
【0056】
図23は、ナノインプリント法の実施に用いられる装置の概略図である。ナノインプリント装置100の内部には、上部ステージ110および下部ステージ120が設置され、上部ステージ110および下部ステージ120は、それぞれステージに配置された樹脂の温度を制御するための温度調整手段(115、125)を備える。また、装置は圧力制御手段130を備え、ステージ間に配置された樹脂および型に、所望の圧力が印加される。温度制御手段や圧力制御手段の方式は特に限定されない。例えば、圧力制御手段としては、油圧、空気圧、電気制御等が用いられる。
【0057】
図24は、上部ステージ110に第一の型140が配置され、下部ステージ120に樹脂基材150が配置された状態を示す概略図である。下部ステージ120に配置された樹脂基材150は、温度制御手段125による加熱によって、樹脂基材150のガラス転移温度を超える温度にまで加熱される。
【0058】
上部ステージ110を下げ、温度が上昇した樹脂基材150に第一の型140を押し付ける。図25は、上部ステージ110を下げて、第一の型140を樹脂基材150に押し付けた状態を示す概略図である。第一の型140の凹部に樹脂が充填されたら、上部ステージ110および/または下部ステージ120の温度、樹脂の温度をガラス転移温度未満に低下させ、樹脂を固化させる。
【0059】
樹脂が固化したら、上部ステージ110を上げ、上部ステージ110を樹脂基材150から引き離す。図26は、上部ステージ110が上昇し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体160が形成された状態を示す概略図である。
【0060】
次に、2段目の構造体を作製するための第二の型を、上部ステージ110に配置する。第二の型には、骨格部を形成する樹脂を充填しておく。図27は、上部ステージ110に、樹脂が充填された第二の型170が配置された状態を示す概略図である。第二の型170が配置された上部ステージ110を下げて、第二の型170を構造体160上に押し付ける。ガラス転移温度以上に加熱された第二の型中の樹脂を、構造体160と融着させた後、第二の型170に充填されている樹脂の温度を、樹脂のガラス転移温度に下げて、構造体160と第二の型170中の樹脂とを固化させる。そして、第二の型170を前記構造体160から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された第二構造体を形成する。
【0061】
図28は、構造体製造時の樹脂の温度−時間チャートである。当初は、上部ステージと下部ステージとは開いており、上部ステージに第一の型が設置される。上部ステージおよび/または下部ステージに配置された温度調整手段などを用いて、下部ステージに配置された樹脂基材を、樹脂のガラス転移温度以上にまで加熱する。第一の型を閉めて、樹脂に圧力を掛けた状態で一定時間保持して、第一の型の凹部に樹脂を充填する。その後、樹脂の温度はガラス転移温度未満に低下させる。第一の型を開くと、型に従って凹凸が形成された構造体が得られる。次に、2段目の型を上部ステージに設置し、同様の作業によって、2段目の構造体を作製する。3段目以降の構造体も同様にして作製可能である。
【実施例】
【0062】
次に、本発明について、実施例を用いて説明する。
【0063】
(実施例1)
表面層および裏面層として、厚さ2mm、大きさ50mm×10mmのクリアガラス(Tv:94%)を用いた。中間層は、図2に示すように、直方体形状の骨格部が一定間隔で配置された構造体が20層積層した構造体とした。骨格部の材質はPMMMとし、骨格部間のピッチは300nm、空隙部の幅は150nm、骨格部の高さは300nmとした。
【0064】
中間層は、ナノインプリント法を用いて形成した。中間層を作製する際の温度条件は、第一の型を閉じて、第一の型内部にPMMAを充填する際の温度は150℃とした。また、第一の型を閉じた際の印加圧力は100MPaとした。
【0065】
次に、ジメチルケトンにPMMAを溶解させ、スピンコート法を用いて、第二の型にPMMAを充填させた後、ジメチルケトンを揮発させた。この樹脂が充填された型を用いて、第一の型を用いて作製された構造体上に、第二の型を積層させた。同様にして、骨格部を20層積層した中間層を作製した。
【0066】
中間層の空隙部に液晶(5CB)を充填し、調光材料を得た。調光のための刺激として、温度条件を変化させ、25℃と40℃で評価を行ったところ、反射率および透過率が大きく変化した。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
表面層および裏面層として、厚さ2mmのITO蒸着ガラス(Tv:79%)を用いた以外は、実施例1と同様にして調光材料を作製した。調光のための刺激として、60Vの直流電圧を表面層および裏面層の電極に付与すると、液晶配列に変化がおき、反射率および透過率が変化した。
【0068】
(実施例3)
表面層および裏面層として、厚さ2mmのITO蒸着ガラス(Tv:79%)を用いた。中間層は、直方体形状の骨格部が一定間隔で配置された構造体が20層積層した構造体を3種類積層させる構造とした。第一の構造体は、骨格部間のピッチが300nm、空隙部の幅が150nm、骨格部の高さが300nmの構造体を20層積層させた構造とした。第2の構造体は、骨格部間のピッチが250nm、空隙部の幅が125nm、骨格部の高さが250nmの構造体を20層積層させた構造とした。第3の構造体は、骨格部間のピッチが200nm、空隙部の幅が100nm、骨格部の高さが200nmの構造体を20層積層させた構造とした。つまり、合計で60層積層させた。骨格部の材質はPMMMとした。また、ナノインプリント法の条件は、骨格部のサイズおよび積層回数を上述のように変更した以外は、実施例1と同様である。調光のための刺激として、60Vの直流電圧を表面層および裏面層の電極に付与すると、液晶配列に変化がおき、反射率および透過率が変化した。特に、反射率の上昇が著しかった。
【0069】
(比較例1)
ランダムに配列している球状空隙の内部に液晶が充填された中間層を有する調光材料(日本板硝子製:UMU)を用い、比較を行なった。調光のための刺激として、温度条件を変化させたが、目立った変化は見られなかった。調光のための刺激として、100Vの直流電圧を表面層および裏面層の電極に付与すると、透過・散乱状態の変化は確認されたが、反射率には大きな変化は見られなかった。
【0070】
(比較例2)
配列がランダムな平面内構造を持つ3次元構造体をナノインプリント法で作製し、空隙に液晶を充填した以外は、実施例2と同様にして調光材料を作製した。調光のための刺激として、温度条件を変化させたが、変化は見られなかった。調光のための刺激として、60Vの直流電圧を表面層および裏面層の電極に付与すると、透過・散乱状態の変化は確認されたが、反射率には大きな変化は見られなかった。
【0071】
(光学特性評価)
光学特性は以下の手法により評価した。可視光透過率(Tv)、可視光反射率(Rv)および日射透過率(Te)は、JIS R3106に準拠し、分光光度計(日立製U−4000)を用いて測定した。なお、評価温度は特に注記が無いものは25℃とした。
【0072】
【表1】
【0073】
(実施例4)
日産スカイラインTM(V35)のフロントガラスに、実施例3の調光材料を設置し、車両温熱特性評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】
(比較例3)
日産スカイラインTM(V35)のフロントガラスに、比較例1の調光材料を設置し、車両温熱特性評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
(温熱特性)
図29は温熱特性を調査した実験において、温度を測定した位置を示す模式図である。図30は車両に降り注ぐ日射が車室内をどのくらい暖めるかを評価する装置の概略図である。太陽灯100による日照量は真夏の炎天下を模し、1000W/m2とした。ドライバー席頭部付近(ヘッドレストから前方へ15cm付近、図29参照)の位置の温度をヴァイサラ社製温湿度計(HMP233LD)、およびK型熱電対を用いて測定した。なお、車両の外気温は35℃とし、太陽灯100の照射開始2時間後の温度を結果として用いた。
【0076】
【表2】
【0077】
表1に示すように、本発明の実施例においては、刺激のON−OFFにより、光学機能を切り替えることが可能であった。また、中間層を2種以上の構造体が積層した構造とすることによって、透過率を低下させ、反射率を上昇させうることが示唆された(実施例3)。表2に示した温熱特性評価結果からは、本発明の調光材料が、車室内の温度低減効果を有することがわかる。
【0078】
これらの特徴は、例えば、車両のフロントガラスに適用された場合には、非常に有用である。本発明の調光材料をフロントガラスに用いた車両は、運転時に必要な透明性を確保できる上、事故や故障によって透過率が低下することが防止されうる。また、車室内への日射エネルギー侵入を防止することもでき、乗員の居住性を快適にするばかりか、冷房負荷を低減することができる。ひいては、燃費の低減、CO2の排出量削減にも大いに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】調光材料の一実施形態の断面模式図である。
【図2】調光材料の一実施形態の斜視図である。
【図3】直方体形状の骨格部が平行に配列している構造体である。
【図4】骨格部が横方向(図中、矢印の方向)および縦方向の二方向に平行に配列している構造体である。
【図5】骨格部が横方向に配列し、縦方向に関しては骨格部がジグザグに配列されている構造体である。
【図6】形状が直方体形状である骨格部を示す模式図である。
【図7】形状がかまぼこ型である骨格部を示す模式図である。
【図8】形状が三角形型である骨格部を示す模式図である。
【図9】形状が台形型である骨格部を示す模式図である。
【図10】軸がねじれた状態で構造体が積層した構造を示す模式図である。
【図11】軸がねじれた状態で構造体が積層した構造を示す模式図である。
【図12】1つの構造体の高さTを示す模式図である。
【図13】表面層10および裏面層30に、1対の電極(40、42)が設置され、電極(40、42)の間に液晶を含む中間層20が配置された調光材料の断面模式図である。
【図14】空隙部22に充填された液晶50の誘電率異方性が正である場合における、電圧印加時の液晶状態の変化を示す模式図である。
【図15】空隙部22に充填された液晶50の誘電率異方性が負である場合における、電圧印加時の液晶状態の変化を示す模式図である。
【図16】スカイライン(V35)の概略図である。
【図17】マーチ(K12)の概略図である。
【図18】セレナ(C24)の概略図である。
【図19】プリメーラワゴン(WP11)の概略図である。
【図20】フェアレディZ(Z33)の概略図である。
【図21】ホットエンボス層を用いて1段目の構造体を作製する方法を示す概略図である。
【図22】2段目の構造体を作製する方法を示す概略図である。
【図23】ナノインプリント法の実施に用いられる装置の概略図である。
【図24】上部ステージ110に第一の型140が配置され、下部ステージ120に樹脂基材150が配置された状態を示す概略図である。
【図25】上部ステージ110を下げて、第一の型140を樹脂基材150に押し付けた状態を示す概略図である。
【図26】図26は、上部ステージ110が上昇し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体160が形成された状態を示す概略図である。
【図27】上部ステージ110に、樹脂が充填された第二の型170が配置された状態を示す概略図である。
【図28】構造体製造時の樹脂の温度−時間チャートである。
【図29】温熱特性を調査した実験において、温度を測定した位置を示す模式図である。
【図30】車両に降り注ぐ日射が車室内をどのくらい暖めるかを評価する装置の概略図である。
【符号の説明】
【0080】
1…調光材料、10…表面層、20…中間層、21…骨格部、22…空隙部、25…構造体、30…裏面層、40…電極、42…電極、50…液晶、70…第一の型、75…第二の型、80…樹脂基材、82…表面に凹凸が形成された樹脂基材、84…2段に凹凸が形成された樹脂基材、100…ナノインプリント装置、110…上部ステージ、115…温度調整手段、120…下部ステージ、125…温度調整手段、130…圧力制御手段、140…第一の型、150…樹脂基材、160…構造体、170…第二の型、G…空隙部の長さ、P…ピッチ、T…一周期毎の高さ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶が配置された調光材料に関し、特に、反射機能に優れる調光材料に関する。本発明の調光材料は、例えば、車両のフロントガラスやフロントサイドガラスに用いられる。
【背景技術】
【0002】
夏季、炎天下に駐車した車室内への、光および熱の侵入経路としては、面積の大きい、天井、ウィンドシールド、リアガラス、フロントサイドガラス、リアサイドガラス、ドア上部等が挙げられる。
【0003】
従来の車両では、ウィンドシールドには合わせガラス、フロントサイドガラスには単ガラスが用いられることが多い。安全性を向上させるために、強度向上に寄与する中間膜が用いられることもあるが、熱的機能はほぼ無いに等しい。このため、炎天下に駐車した車内には、光エネルギーおよび熱エネルギーが多量に侵入し、車室内環境が非常に苛酷なものとなる。また、空調設備の燃費の低下を招き、巨視的にみれば、環境への悪影響も懸念される。
【0004】
建築物においても、この問題は検討されている。例えば、窓を通じての光エネルギーおよび熱エネルギーの流入によって、室内の空調設備への負荷および人体への負荷が大きくなる。車両の場合と同様に、多量のエネルギーの流入は、空調設備の燃費の低下を招き、巨視的にみれば、環境への悪影響も懸念される。
【0005】
このような問題を解決すべく、近年、建物や車内に流入する光エネルギーおよび熱エネルギーを遮蔽し、室内の温度上昇および冷房負荷を低減させる技術が提案されている。解決策の一例としては、調光機能を有するガラスが提案されている。窓ガラスとしての透明性、および日射エネルギーの遮断のための熱線反射・吸収性の双方の特性を有し、必要に応じてスイッチングできる機能を有していれば、必要なときに必要な光量を室内に侵入させることが可能である。そのような制御が可能であれば、人体や冷房装置にかかる負荷を低減できるほか、省エネルギーの観点からも有益である。
【0006】
ガラスに調光機能を付与するための具体的手段としては、エレクトロクロミック素子(以下「EC素子」という)、および液晶素子が知られている。
【0007】
EC素子は、酸化タングステン、プルシアンブルーなどの電気化学的な酸化還元反応によるスペクトル変化を伴う材料を用い、日射エネルギーの透過量の制御を光の吸収により可能としている。しかしながら、EC素子は、日射エネルギーを吸収するため、室内外を隔てるガラスに用いた場合には、その吸収されたエネルギーが室内に再放出され、室内温度の上昇を招いてしまう。
【0008】
液晶素子は、電圧によって配列が変化する材料からなり、液晶の配列によって光の透視性を変更させる材料である。液晶素子としては、曲線的な配列相のネマティック液晶素子(特許文献1)、相分離法により得られる液晶素子(特許文献2)などが知られている。これらの素子は、以下の原理に基づいて動作する。
【0009】
安価なポリマー中に液晶物質の小滴を分散させた該公報記載の液晶素子は、電圧を印加しない状態では、ポリマー壁の曲面に沿って液晶が配列する。これにより、光路がねじ曲げられ、また、ポリマーと液晶滴との界面において光が反射して散乱し、乳白色に見える。
【0010】
一方、液晶素子に電圧を印加した場合、液晶滴内の液晶は外部電界により電界方向に配列する。このとき、液晶の常光屈折率noとポリマーの屈折率npとを一致するように選択することにより、液晶素子面に垂直に入射した光を、液晶とポリマーとの界面で反射することなく通過させることができ、液晶素子は透明となる。
【0011】
しかしながら、前記液晶素子を室内外を隔てるガラスに適用する場合、改善が望まれている事項がある。例えば、エネルギーの透過量の問題である。前記液晶素子は、電圧印加時には透視性を確保でき、電圧無印加時には非透視性とすることができる。しかしながら、電圧無印加時に液晶素子に入射した光は、そのほとんどが入射側とは反対側に散乱しているため、電圧印加時と比較して日射透過量はほとんど減少していなかった。このため、室内に日射エネルギーが多量に侵入してしまう。
【特許文献1】特表昭58−501631号公報
【特許文献2】特開昭61−502128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、液晶素子を含む調光材料を車両や建築物のガラスなどに適用するためには、改善が望まれている問題がある。そこで、本発明の目的は、液晶素子を含む調光材料の有用性を高める手段を提供し、車両や建築物への調光材料の適応性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、透明な表面層と、中間層と、透明な裏面層とが、この順序で積層している調光材料であって、前記中間層は、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体が、前記表面層、前記中間層および前記裏面層の積層方向に積層した構造を有し、前記空隙部には液晶が充填されている、調光材料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成を有する調光材料によって、調光材料に求められる特性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1は、光学特性に優れる調光材料に関する。具体的には、本発明の第1は、透明な表面層と、中間層と、透明な裏面層とが、この順序で積層している調光材料であって、前記中間層は、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体が、前記表面層、前記中間層および前記裏面層の積層方向に積層した構造を有し、前記空隙部には液晶が充填されている、調光材料である。
【0016】
なお、本願において、「調光材料」とは、入射してきた光の特性を変化させる性質を有する材料一般を意味する。例えば、調光材料の具体例としては、基材がガラスである調光ガラス、基材が樹脂フィルムである調光フィルムなどが挙げられ、これらは調光材料の下位概念に含まれる。
【0017】
図面を参照しながら、本発明の第1について説明する。図1は、調光材料の一実施形態の断面模式図である。調光材料1は、表面層10、中間層20、および裏面層30からなる。中間層20は、少なくとも一軸方向に骨格部21および空隙部22が一定間隔で配置された構造体25が積層した構造を有する。空隙部22には、液晶が充填される。構造体25の積層方向は、表面層10、中間層20、および裏面層30の積層方向である。以下、表面層10、中間層20、および裏面層30の積層方向を単に「積層方向」と呼ぶ。また、積層方向に垂直な方向を「面方向」と呼ぶ。
【0018】
図2は、調光材料の一実施形態の斜視図である。説明の都合上、構造体が4層積層されている態様について示しているが、実際の積層回数や構造体の厚さが図面によって制限されることはない。通常は、表面層10および裏面層30の厚さに比べて、構造体は非常に薄い。中間層を形成する構造体は、一定間隔に配置された構造と、液晶の持つ屈折率により決まる、ある一定の波長の反射性能を持つ。
【0019】
「骨格部」とは、中間層において一定間隔で配置される物体が存在する部位である。「空隙部」とは中間層において骨格部が存在せず、液晶が充填される部位である。本発明の調光材料においては、少なくとも一軸方向に一定間隔で骨格部および空隙部が配置される。「一軸方向」とは、骨格部が配置される、面方向の少なくとも1の方向を意味する。つまり、面方向のいずれかの方向に関して、骨格部および空隙部が一定間隔で配置されていれば、本願の要件を満たす。「一定間隔」は、実質的に一定間隔であればよく、調光作用を果たす上で大きな問題とならない程度であれば、製造過程で生じた誤差が存在していてもよい。
【0020】
骨格部および空隙部の配置例としては、図3〜図5の構造が挙げられる。図3は、直方体形状の骨格部が平行に配列している構造体である。図4は、骨格部が横方向(図中、矢印の方向)および縦方向の二方向に平行に配列している構造体である。図4は、図3の直方体が、配列方向に垂直な方向に分断された構造ともいえる。図5は、骨格部が横方向に配列し、縦方向に関しては骨格部がジグザグに配列されている構造体である。
【0021】
骨格部の形状については、特に限定されない。図2〜図5においては、骨格部の断面が矩形である態様について示したが、3次元に積層可能な形状であれば、特に限定されない。直方体形状(図6)に加えて、例えば、かまぼこ型(図7)、三角形型(図8)、台形型(図9)等の形状が挙げられる。
【0022】
積層構造は、図2の様に直角に交わっている必要は無く、図10および図11に示すような軸がねじれた構造であっても、平面内構造体に周期性があれば、反射機能を発現することができる。
【0023】
骨格部および空隙部の大きさや配置は、反射・透過等の光学機能を考慮して決定することが好ましい。具体的には、構造体における空隙部の長さ:ピッチが、好ましくは1:1〜1:40である。空隙部の長さとは、骨格部および空隙部が一定間隔で配置されている方向に関しての空隙部の長さをいい、図6においてGで示される長さを意味する。ピッチとは、骨格部および空隙部が一定間隔で配置されている方向に関しての、骨格部および空隙部の繰り返し単位の長さをいい、図6においてPで示される長さを意味する。
【0024】
空隙部の長さは、好ましくは50〜400nmである。また、ピッチの幅は、好ましくは100〜800nmである。この範囲とすることにより、光学機能の中でも、可視光域・近赤外光域の調光に適したものとすることができ、建築物や車両におけるエネルギー透過、反射を切り替える上で好適である。
【0025】
平面内構造体の厚さ方向の各平面で切った1周期毎の高さは、50〜800nm程度に設定することが好ましい。一周期毎の高さは、積層される構造体の、1つの構造体の高さを意味し、図12においてTで示される長さである。この範囲とすることで、厚さ方向にも周期性を持たせることが出来、より大きな反射率を得ることが可能となる。
【0026】
骨格部を構成する材料としては、シリカ(SiO2)、紫外線硬化樹脂、汎用樹脂材料などが挙げられ、熱可塑性樹脂を用いると製造上便利である。汎用樹脂としては、例えば、ナイロン66などの脂肪族ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリエーテルエーテルケトン;ポリプロピレン(PP);ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリ乳酸等が挙げられ、これらを用いるのが、加工性、経済性、市場入手性、リサイクル性等の点から好適である。
【0027】
空隙部には液晶が充填される。液晶物質は、特に限定されるものではないが、ネマティック−アイソトロピック転移温度(NI点)が常温域に来るように考慮して選定されることが好ましい。さらに、本発明で使用される液晶が誘電異方性を示す液晶であれば、その常光屈折率または異常光屈折率のどちらかが、温度、光、電圧印加等の刺激によって配列し、その他の成分の屈折率と整合して反射等の機能を発現することが可能である。
【0028】
空隙部に充填される液晶は、等方相を形成することが好ましい。本願において「等方相を形成する」とは、電圧などの特殊な外的ファクターが加わっていない状態で等方相を形成することを意味する。好ましくは、常温で等方相を形成する液晶が充填される。ここで、「常温」とは、一般に調光材料を用いる温度域を意味し、具体的には20〜40℃程度の温度である。本願において「等方相」とは、液晶性を示す液晶分子の単体または混合体が、一定の方向に配列したいわゆる液晶状態になっておらず、配向秩序の無い状態を示す。
【0029】
本発明者らは、等方相を形成し、いわゆる液晶として通常活用される態様を形成していない状態に着目し、等方相を形成する液晶が好ましいことを見出した。つまり、本発明者は、液晶性を示す物質を液晶状態で用いないことに新たな機能を見出した。等方相の液晶を用いることによって、以下のような種々の効果を得ることが可能である。ただし、本発明の技術的範囲が、以下の全ての効果を有する調光材料に限定されるわけではない。
【0030】
炎天下に駐停車されている車両や直射日光が照射する建築物のガラス窓などにおいて、日射エネルギーをガラス内部に侵入させたくない場合に、光を反射させて、日射エネルギーの透過量を低下させることが可能である。つまり、本発明によって、室内環境の改善、冷房負荷の低減などが可能である。
【0031】
等方相を形成する液晶が用いられると、フェールセーフの観点からも好ましい。即ち、車両が故障して液晶に電圧を印加できない状態に陥った場合であっても、ガラスの透光性が保持される。このため、事故により前方が見えなくなるなどの問題が解決されうる。
【0032】
等方相を形成する液晶を用いると、充分な可視光透過率が得られる。例えば、日本においては、車両前方に用いられるガラスの可視光透過率は(Tv)は、70%以上である必要があるが、この基準をクリアすることも可能である。ただし、本発明の調光材料およびその応用品の技術的範囲が、可視光透過率70%以上のものに限定されるわけではない。例えば、建築物のガラスのような可視光透過率が70%以上であることが必要でない用途にも、本発明は適用可能であり、このような用途に用いられる調光材料も、本発明の規定を満たしている、または均等の範囲内であれば、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
さらに、等方相を形成する液晶を用いると、正面からは透明に見えても、別の角度からは透明に見えなくなるという角度依存性の問題も解決可能である。
【0034】
本発明で使用されうる液晶分子は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環等の他、ピリミジン環、ジオキサン環、ピリジン環等のヘテロ環等の環状化合物が2〜4つ結んだものでありうる。その結合部には、メソゲン基と呼ばれるエステル結合、アセチレン結合(エチニレン基)、エタン結合(エチレン基)、エチレン結合(エテニレン基)、アゾ結合等が用いられうる。末端基および側方置換基としては、シアノ基、フルオロ基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基等が用いられる。例えば、アゾキシ系、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルエステル系、シクロヘキサンカルボンサンフェニルエステル系、フェニルピリミジン系、フェニルジオキサン系等の液晶が使用されうる。これらの液晶は単体でも用いるが、実用上は、2種以上の単体の混合体が用いられることが多い。本発明においては、液晶分子の単体および混合物をまとめて、液晶と記載されうる。
【0035】
これらの液晶単体、または混合液晶は、好ましくは常温で等方相を持つように調整される。常温において単体で等方相を形成する液晶分子の具体例としては、4−ペンチル−4’−シアノビフェニル(5CB)、4−ヘキシル−4’−シアノビフェニル(6CB)、4−ヘキシル−4’−シアノフェニルピリジン、4−ヘキシル−4’−プロピルフェニルシクロヘキサン、4−メチル−4’−プロピルジシクロヘキサン、4−ヘキシル−4’−メトキシジシクロヘキサン等が挙げられる。
【0036】
液晶に等方相を形成させるためには、上述のような液晶単体で等方相を形成する材料を用いてもよいし、種々の液晶単体を混合物にして等方相を形成させてもよい。また、分散材を用いて、液晶に等方相を形成させてもよい。分散材によって等方相を形成させる場合、広い温度範囲で等方相を形成させることが可能である。このため、自動車など使用温度領域が広い用途に用いる場合には、有益である。分散材としては、例えば、屈曲型分子などの分散材が用いられる。分散材の具体例としては、用いる液晶に類似の系統で、メソゲン基としてcis−エチレン基、cis−エチレン基の水素をフルオロ基、ブロモ基等のハロゲン基に置換したもの、cis−アゾ基等を骨格に持つものが挙げられる。
【0037】
充填される液晶は、好ましくは、等方相転移温度を−40〜40℃に持ち、その等方相転移温度以上で等方相を形成する液晶である。本発明においては、この等方相転移温度が低いほど好ましいが、等方相転移温度が−40〜40℃の範囲にあれば、一般に調光材料として用いられる環境下では、配列相と等方相との切り替えを行うことが充分に可能である。
【0038】
中間層を変化させて、可視光透過率を低下させるには、液晶の種類に応じて、温度、光、電圧印加等の刺激を使い分けて、液晶分子を配列させる。例えば、電圧印加によって液晶を配列させる。ここでいう「液晶分子を配列させる」とは、液晶分子が電圧印加時に発生する電界に応答して秩序を持ち、電界に対して、液晶分子が直交、あるいは平行に配列することを言う。液晶分子が配列するという条件を満たすものであれば、印加する電圧の波形は限定されない。
【0039】
電圧を印加する場合には、表面層および裏面層に1対の電極を設置し、電極が配置された表面層と裏面層との間に、液晶を配置するとよい。図13は、表面層10および裏面層30に、1対の電極(40、42)が設置され、電極(40、42)の間に液晶を含む中間層20が配置された調光材料の断面模式図である。電極は、好ましくは透明電極である。表面層10と裏面層30とのいずれを正極側または負極側にするかは、表面層10および裏面層30に、正極または負極の一方が配置され、中間層20に存在する液晶に電圧が印加されるのであれば特に限定されない。等方相を形成している液晶を、電圧印加の刺激によって変化させる場合には、液晶は、電極の通電時に等方相を形成し、電極の非通電時に配列相を形成する。これにより、非通電時には可視光透過率(Tv)を確保しつつ、通電時には、配列による調光機能を発現させる。
【0040】
図14は、空隙部22に充填された液晶50の誘電率異方性が正である場合における、電圧印加時の液晶状態の変化を示す模式図である。図15は、空隙部22に充填された液晶50の誘電率異方性が負である場合における、電圧印加時の液晶状態の変化を示す模式図である。図14および図15に示すように制御することにより、液晶の屈折率を変化させ、所望の反射率、透過率を得る。
【0041】
電圧を印加して液晶を配列させる場合の印加電圧は、中間層20の厚さや液晶分子の種類に応じて決定されればよく、特に限定されないが、好ましくは、3〜200V程度である。
【0042】
表面層10および裏面層30は、透明な材料である。本願において「透明」とは、可視光透過率が70%以上であることを意味する。表面層10および裏面層30は、透明な樹脂やガラスなどからなる。透明性が確保されていれば、表面層10および裏面層30は、無色であってもよいし、着色されていてもよい。なお、表面層10とは、光源側に配置される層であることを意味し、裏面層30とは、光源側と反対側に配置される層であることを意味するが、特に厳密な区別が必要とされるわけではない。例えば、表面層10および裏面層30に用いられる材料が同一である場合には、いずれが表面層として用いられてもよい。
【0043】
表面層10および裏面層30の大きさおよび厚さは、調光材料の用途に応じて決定される。例えば、調光材料が自動車のフロントガラスに用いられるのであれば、車両のデザインに応じて表面層10および裏面層30の大きさは決定される。また、厚さも、調光材料の透光率や強度などを考慮して決定される。
【0044】
表面層10および裏面層30として用いられるガラスの素材は特に限定されず、一般に用いられているガラスが適用されうる。ガラスは無色であっても着色されていてもよい。ガラスの具体例としては、クリアガラス、グリーンガラス、ブロンズガラス、グレーガラス、ブルーガラス、UVカット断熱ガラス、熱線吸収ガラス、強化ガラス等が使用されうる。場合によっては、これらが組み合わせられてもよい。
【0045】
表面層10および裏面層30として用いられる樹脂の素材は特に限定されず一般に用いられている樹脂が適用されうる。樹脂は、熱可塑性であってもよいし、熱硬化性であってもよい。適用用途を広げるためには、熱可塑性樹脂がより好適である。具体例としては、ナイロン66などの脂肪族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレンなどからなる各種樹脂フィルムが、加工性、経済性、市場入手性、リサイクル性等の点から好適である。これらの中でも、ポリプロピレン、ポリエステルがより好適で、例えばポリエステルではポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンイソフタレート(PBI)、ポリε−カプロラクトン(PCL)等のほか、PETのエチレングリコール成分を他の異なるグリコール成分で置換したもの(例えば、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT))、またはテレフタル酸成分を他の異なる2塩基酸成分で置換したもの(ポリヘキサメチレンイソフタレート(PHI)、ポリヘキサメチレンナフタレート(PHN))等を用いることができる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0046】
表面層10および裏面層30は、樹脂フィルムであってもよい。表面層10および裏面層30が樹脂フィルムである場合、フィルム状の薄い調光材料が得られる。フィルム状の調光材料の用途としては、仕切り部、屋内等が挙げられる。
【0047】
フィルム状調光材料とガラスとを一体化して、透明性を確保した調光ガラスとして用いることも好適である。フィルム状調光材料を作製し、これを用いて調光ガラスを作製する場合、調光ガラス作製の際の作業性を向上させることができる。例えば、2枚の合わせガラス間に液晶からなる中間層を形成する場合、ガラスの間に液晶材料を充填するのは比較的手間がかかる困難な作業である。このような工程を経る代わりに、樹脂フィルム間に液晶材料が充填されたフィルム状の調光材料を作製しておき、このフィルム状の調光材料をガラス間に配置する工程を採用することによって、作業性を向上させることができる。
【0048】
樹脂フィルム間に液晶からなる中間層が形成されたフィルム状調光材料を作製した場合、上述のように、樹脂フィルムからなる表面層および裏面層の外層に、1対の透明なガラスが配置されてもよい。または、樹脂フィルムからなる表面層または裏面層の一方の外層に、透明なガラスが配置されてもよい。この態様は、ガラスにフィルム状調光材料を貼り付けることによって作製されうる。
【0049】
表面層10および裏面層30を構成する樹脂フィルムの材料としては、先述の熱可塑性樹脂の他に、スチレン、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、テトラメチレングリコールエーテルなどをモノマーとして得られるポリマーが挙げられる。もちろん、他のモノマーを原料とするポリマーが用いられてもよい。2種以上のモノマーからなるコポリマーが用いられてもよい。例えば、スチレンとメチルメタクリレートとのコポリマー、スチレンとアクリロニトリルとのコポリマー、スチレンとブタジエンとのコポリマー、4,4−チオジフェノールとビスフェノールAとのコポリカーボネート、グルテルイミドとメチルメタクリレートとのコポリマーなどが挙げられる。
【0050】
本発明の調光材料は各種用途に適用されうるが、好適な用途としては、車両のフロントガラス、フロントサイドガラスが挙げられる。自動車のフロントガラスおよびフロントサイドガラスは、日本の法規上は、日射成分のうちの可視光透過率(Tv)が70%以上であることが求められる。本発明の調光材料を用いたフロントガラスおよびフロントサイドガラスは、少なくとも運転時には、定められた可視光透過率(Tv)を満たした上で、日射透過率(Te)を下げる手段として有益である。
【0051】
本発明の調光材料が用いられうる車両は多岐に渡る。例えば、図16に示すようなセダン(日産自動車株式会社:スカイラインTM(V35))、図17に示すようなコンパクトカー(日産自動車株式会社:マーチTM(K12))、図18に示すようなミニバン(日産自動車株式会社:セレナTM(C24))、図19に示すようなワゴン(日産自動車株式会社:プリメーラワゴンTM(WP11))、図20に示すようなスポーティーカー(日産自動車株式会社:フェアレディZTM(Z33))などの各種車型に適用されうる。その他にも、軽自動車、クーペ、SUV、1BOX、2BOX、バン、トラック等の車両にも、勿論適用されうる。車両に適用した場合、車室内環境への熱の出入りを制御することによって、地球温暖化の防止に向けた省エネルギー活動に貢献しうる。
【0052】
本発明の第2は、ナノインプリント法を用いた調光材料の製造方法に関する。即ち、本発明の第2は、ナノインプリント法により、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体を積層させる段階と、前記構造体を、透明な表面層および透明な裏面層で挟持する段階と、前記空隙部に液晶を充填する段階とを含む、調光材料の製造方法である。
【0053】
ナノインプリント法は半導体業界において近年注目されている技術である。ナノインプリント法には、ホットエンボス法やUV硬化法がある。ホットエンボス法は、図21に示すように樹脂層に所定形状の型を押し付けて型を樹脂層に入れ込み、微細な凹凸を形成する技術である。まず、第一の型70を、樹脂基材80に押し付ける。このとき、樹脂基材80の温度を、樹脂のガラス転移温度を超える温度にしておく。樹脂基材80を第一の型70に充填させたら、樹脂基材80を冷却し、樹脂の温度をガラス転移温度未満にする。樹脂が固化したら、第一の型70を樹脂基材80から引き離し、表面に凹凸が形成された樹脂基材82を得る。構造体の2段目以降も、同様のメカニズムで製造可能である(図22)。2段目以降の構造体を作製する場合には、第二の型75に予め樹脂を充填しておく。樹脂が充填された第二の型75を、表面に凹凸が形成された樹脂基材82に接触させる。樹脂の温度を、樹脂のガラス転移温度を超える温度として、表面に凹凸が形成された樹脂基材82の樹脂と、第二の型75に充填された樹脂とを接着させる。その後、樹脂の温度を、ガラス転移温度未満とする。樹脂が固化したら、第二の型75を表面に凹凸が形成された樹脂基材82から引き離し、2段に凹凸が形成された樹脂基材84を得る。UV硬化法は、液状のUV硬化樹脂を型に供給した状態でUV光を照射し、硬化させる技術である。UV硬化法を選択する場合には、UV光が樹脂に十分照射され、樹脂が硬化することが確保されるように留意することが好ましい。ナノインプリント法を用いることによって、容易に、大面積で、安価に3次元構造体が形成された調光材料を得ることができる。
【0054】
ナノインプリント法としてホットエンボス法やUV硬化法などの各種態様のうち、どの製法を用いるかは、特に限定されないが、一般の熱可塑性樹脂を用いるか紫外線等による光硬化性樹脂を用いるかによる材料自体の扱い易さ、コスト、また、装置自体の構成も光硬化のための光源ユニット等が追加で必要になること等を考慮するとホットエンボス法が好ましい。具体的には、前記構造体を積層させる段階は、樹脂製の基材に、前記樹脂のガラス転移温度以上に加熱した第一の型を押し付けて、前記樹脂を前記第一の型に充填する段階と、前記第一の型の温度を前記樹脂のガラス転移温度以下に下げる段階と、前記樹脂のガラス転移温度以下に低下した前記第一の型を、前記基材から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体を形成する段階と、骨格部を形成する樹脂が充填された第二の型を前記構造体上に押し付ける段階と、前記第二の型に充填された樹脂の温度を、前記樹脂のガラス転移温度以下に下げる段階と、前記第二の型を前記構造体から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された第二構造体を形成する段階とを含むことが好ましい。
【0055】
次に、図面を用いて、ナノインプリント法を実施する際に用いられる装置の一例について説明する。ただし、本発明の技術的範囲が、例示する装置を用いる態様に限定されるわけではない。
【0056】
図23は、ナノインプリント法の実施に用いられる装置の概略図である。ナノインプリント装置100の内部には、上部ステージ110および下部ステージ120が設置され、上部ステージ110および下部ステージ120は、それぞれステージに配置された樹脂の温度を制御するための温度調整手段(115、125)を備える。また、装置は圧力制御手段130を備え、ステージ間に配置された樹脂および型に、所望の圧力が印加される。温度制御手段や圧力制御手段の方式は特に限定されない。例えば、圧力制御手段としては、油圧、空気圧、電気制御等が用いられる。
【0057】
図24は、上部ステージ110に第一の型140が配置され、下部ステージ120に樹脂基材150が配置された状態を示す概略図である。下部ステージ120に配置された樹脂基材150は、温度制御手段125による加熱によって、樹脂基材150のガラス転移温度を超える温度にまで加熱される。
【0058】
上部ステージ110を下げ、温度が上昇した樹脂基材150に第一の型140を押し付ける。図25は、上部ステージ110を下げて、第一の型140を樹脂基材150に押し付けた状態を示す概略図である。第一の型140の凹部に樹脂が充填されたら、上部ステージ110および/または下部ステージ120の温度、樹脂の温度をガラス転移温度未満に低下させ、樹脂を固化させる。
【0059】
樹脂が固化したら、上部ステージ110を上げ、上部ステージ110を樹脂基材150から引き離す。図26は、上部ステージ110が上昇し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体160が形成された状態を示す概略図である。
【0060】
次に、2段目の構造体を作製するための第二の型を、上部ステージ110に配置する。第二の型には、骨格部を形成する樹脂を充填しておく。図27は、上部ステージ110に、樹脂が充填された第二の型170が配置された状態を示す概略図である。第二の型170が配置された上部ステージ110を下げて、第二の型170を構造体160上に押し付ける。ガラス転移温度以上に加熱された第二の型中の樹脂を、構造体160と融着させた後、第二の型170に充填されている樹脂の温度を、樹脂のガラス転移温度に下げて、構造体160と第二の型170中の樹脂とを固化させる。そして、第二の型170を前記構造体160から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された第二構造体を形成する。
【0061】
図28は、構造体製造時の樹脂の温度−時間チャートである。当初は、上部ステージと下部ステージとは開いており、上部ステージに第一の型が設置される。上部ステージおよび/または下部ステージに配置された温度調整手段などを用いて、下部ステージに配置された樹脂基材を、樹脂のガラス転移温度以上にまで加熱する。第一の型を閉めて、樹脂に圧力を掛けた状態で一定時間保持して、第一の型の凹部に樹脂を充填する。その後、樹脂の温度はガラス転移温度未満に低下させる。第一の型を開くと、型に従って凹凸が形成された構造体が得られる。次に、2段目の型を上部ステージに設置し、同様の作業によって、2段目の構造体を作製する。3段目以降の構造体も同様にして作製可能である。
【実施例】
【0062】
次に、本発明について、実施例を用いて説明する。
【0063】
(実施例1)
表面層および裏面層として、厚さ2mm、大きさ50mm×10mmのクリアガラス(Tv:94%)を用いた。中間層は、図2に示すように、直方体形状の骨格部が一定間隔で配置された構造体が20層積層した構造体とした。骨格部の材質はPMMMとし、骨格部間のピッチは300nm、空隙部の幅は150nm、骨格部の高さは300nmとした。
【0064】
中間層は、ナノインプリント法を用いて形成した。中間層を作製する際の温度条件は、第一の型を閉じて、第一の型内部にPMMAを充填する際の温度は150℃とした。また、第一の型を閉じた際の印加圧力は100MPaとした。
【0065】
次に、ジメチルケトンにPMMAを溶解させ、スピンコート法を用いて、第二の型にPMMAを充填させた後、ジメチルケトンを揮発させた。この樹脂が充填された型を用いて、第一の型を用いて作製された構造体上に、第二の型を積層させた。同様にして、骨格部を20層積層した中間層を作製した。
【0066】
中間層の空隙部に液晶(5CB)を充填し、調光材料を得た。調光のための刺激として、温度条件を変化させ、25℃と40℃で評価を行ったところ、反射率および透過率が大きく変化した。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
表面層および裏面層として、厚さ2mmのITO蒸着ガラス(Tv:79%)を用いた以外は、実施例1と同様にして調光材料を作製した。調光のための刺激として、60Vの直流電圧を表面層および裏面層の電極に付与すると、液晶配列に変化がおき、反射率および透過率が変化した。
【0068】
(実施例3)
表面層および裏面層として、厚さ2mmのITO蒸着ガラス(Tv:79%)を用いた。中間層は、直方体形状の骨格部が一定間隔で配置された構造体が20層積層した構造体を3種類積層させる構造とした。第一の構造体は、骨格部間のピッチが300nm、空隙部の幅が150nm、骨格部の高さが300nmの構造体を20層積層させた構造とした。第2の構造体は、骨格部間のピッチが250nm、空隙部の幅が125nm、骨格部の高さが250nmの構造体を20層積層させた構造とした。第3の構造体は、骨格部間のピッチが200nm、空隙部の幅が100nm、骨格部の高さが200nmの構造体を20層積層させた構造とした。つまり、合計で60層積層させた。骨格部の材質はPMMMとした。また、ナノインプリント法の条件は、骨格部のサイズおよび積層回数を上述のように変更した以外は、実施例1と同様である。調光のための刺激として、60Vの直流電圧を表面層および裏面層の電極に付与すると、液晶配列に変化がおき、反射率および透過率が変化した。特に、反射率の上昇が著しかった。
【0069】
(比較例1)
ランダムに配列している球状空隙の内部に液晶が充填された中間層を有する調光材料(日本板硝子製:UMU)を用い、比較を行なった。調光のための刺激として、温度条件を変化させたが、目立った変化は見られなかった。調光のための刺激として、100Vの直流電圧を表面層および裏面層の電極に付与すると、透過・散乱状態の変化は確認されたが、反射率には大きな変化は見られなかった。
【0070】
(比較例2)
配列がランダムな平面内構造を持つ3次元構造体をナノインプリント法で作製し、空隙に液晶を充填した以外は、実施例2と同様にして調光材料を作製した。調光のための刺激として、温度条件を変化させたが、変化は見られなかった。調光のための刺激として、60Vの直流電圧を表面層および裏面層の電極に付与すると、透過・散乱状態の変化は確認されたが、反射率には大きな変化は見られなかった。
【0071】
(光学特性評価)
光学特性は以下の手法により評価した。可視光透過率(Tv)、可視光反射率(Rv)および日射透過率(Te)は、JIS R3106に準拠し、分光光度計(日立製U−4000)を用いて測定した。なお、評価温度は特に注記が無いものは25℃とした。
【0072】
【表1】
【0073】
(実施例4)
日産スカイラインTM(V35)のフロントガラスに、実施例3の調光材料を設置し、車両温熱特性評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】
(比較例3)
日産スカイラインTM(V35)のフロントガラスに、比較例1の調光材料を設置し、車両温熱特性評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
(温熱特性)
図29は温熱特性を調査した実験において、温度を測定した位置を示す模式図である。図30は車両に降り注ぐ日射が車室内をどのくらい暖めるかを評価する装置の概略図である。太陽灯100による日照量は真夏の炎天下を模し、1000W/m2とした。ドライバー席頭部付近(ヘッドレストから前方へ15cm付近、図29参照)の位置の温度をヴァイサラ社製温湿度計(HMP233LD)、およびK型熱電対を用いて測定した。なお、車両の外気温は35℃とし、太陽灯100の照射開始2時間後の温度を結果として用いた。
【0076】
【表2】
【0077】
表1に示すように、本発明の実施例においては、刺激のON−OFFにより、光学機能を切り替えることが可能であった。また、中間層を2種以上の構造体が積層した構造とすることによって、透過率を低下させ、反射率を上昇させうることが示唆された(実施例3)。表2に示した温熱特性評価結果からは、本発明の調光材料が、車室内の温度低減効果を有することがわかる。
【0078】
これらの特徴は、例えば、車両のフロントガラスに適用された場合には、非常に有用である。本発明の調光材料をフロントガラスに用いた車両は、運転時に必要な透明性を確保できる上、事故や故障によって透過率が低下することが防止されうる。また、車室内への日射エネルギー侵入を防止することもでき、乗員の居住性を快適にするばかりか、冷房負荷を低減することができる。ひいては、燃費の低減、CO2の排出量削減にも大いに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】調光材料の一実施形態の断面模式図である。
【図2】調光材料の一実施形態の斜視図である。
【図3】直方体形状の骨格部が平行に配列している構造体である。
【図4】骨格部が横方向(図中、矢印の方向)および縦方向の二方向に平行に配列している構造体である。
【図5】骨格部が横方向に配列し、縦方向に関しては骨格部がジグザグに配列されている構造体である。
【図6】形状が直方体形状である骨格部を示す模式図である。
【図7】形状がかまぼこ型である骨格部を示す模式図である。
【図8】形状が三角形型である骨格部を示す模式図である。
【図9】形状が台形型である骨格部を示す模式図である。
【図10】軸がねじれた状態で構造体が積層した構造を示す模式図である。
【図11】軸がねじれた状態で構造体が積層した構造を示す模式図である。
【図12】1つの構造体の高さTを示す模式図である。
【図13】表面層10および裏面層30に、1対の電極(40、42)が設置され、電極(40、42)の間に液晶を含む中間層20が配置された調光材料の断面模式図である。
【図14】空隙部22に充填された液晶50の誘電率異方性が正である場合における、電圧印加時の液晶状態の変化を示す模式図である。
【図15】空隙部22に充填された液晶50の誘電率異方性が負である場合における、電圧印加時の液晶状態の変化を示す模式図である。
【図16】スカイライン(V35)の概略図である。
【図17】マーチ(K12)の概略図である。
【図18】セレナ(C24)の概略図である。
【図19】プリメーラワゴン(WP11)の概略図である。
【図20】フェアレディZ(Z33)の概略図である。
【図21】ホットエンボス層を用いて1段目の構造体を作製する方法を示す概略図である。
【図22】2段目の構造体を作製する方法を示す概略図である。
【図23】ナノインプリント法の実施に用いられる装置の概略図である。
【図24】上部ステージ110に第一の型140が配置され、下部ステージ120に樹脂基材150が配置された状態を示す概略図である。
【図25】上部ステージ110を下げて、第一の型140を樹脂基材150に押し付けた状態を示す概略図である。
【図26】図26は、上部ステージ110が上昇し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体160が形成された状態を示す概略図である。
【図27】上部ステージ110に、樹脂が充填された第二の型170が配置された状態を示す概略図である。
【図28】構造体製造時の樹脂の温度−時間チャートである。
【図29】温熱特性を調査した実験において、温度を測定した位置を示す模式図である。
【図30】車両に降り注ぐ日射が車室内をどのくらい暖めるかを評価する装置の概略図である。
【符号の説明】
【0080】
1…調光材料、10…表面層、20…中間層、21…骨格部、22…空隙部、25…構造体、30…裏面層、40…電極、42…電極、50…液晶、70…第一の型、75…第二の型、80…樹脂基材、82…表面に凹凸が形成された樹脂基材、84…2段に凹凸が形成された樹脂基材、100…ナノインプリント装置、110…上部ステージ、115…温度調整手段、120…下部ステージ、125…温度調整手段、130…圧力制御手段、140…第一の型、150…樹脂基材、160…構造体、170…第二の型、G…空隙部の長さ、P…ピッチ、T…一周期毎の高さ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な表面層と、中間層と、透明な裏面層とが、この順序で積層している調光材料であって、
前記中間層は、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体が、前記表面層、前記中間層および前記裏面層の積層方向に積層した構造を有し、
前記空隙部には液晶が充填されている、調光材料。
【請求項2】
前記表面層および前記裏面層に、前記中間層に充填された液晶に電圧を印加する電極が設置されてなる、請求項1に記載の調光材料。
【請求項3】
前記表面層および前記裏面層はガラスまたは樹脂からなる、請求項1または2に記載の調光材料。
【請求項4】
前記表面層および前記裏面層は樹脂フィルムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項5】
樹脂フィルムからなる前記表面層および前記裏面層の外層に、ガラスが配置されてなる、請求項4に記載の調光材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の調光材料が、フロントガラスまたはフロントサイドガラスの少なくとも一方に用いられてなる車両。
【請求項7】
ナノインプリント法により、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体を積層させる段階と、
前記構造体を、透明な表面層および透明な裏面層で挟持する段階と、
前記空隙部に液晶を充填する段階と、
を含む、
調光材料の製造方法。
【請求項8】
前記構造体を積層させる段階は、
樹脂製の基材に、前記樹脂のガラス転移温度以上に加熱した第一の型を押し付けて、前記樹脂を前記第一の型に充填する段階と、
前記第一の型の温度を前記樹脂のガラス転移温度以下に下げる段階と、
前記樹脂のガラス転移温度以下に低下した前記第一の型を、前記基材から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体を形成する段階と、
骨格部を形成する樹脂が充填された第二の型を前記構造体上に押し付ける段階と、
前記第二の型に充填された樹脂の温度を、前記樹脂のガラス転移温度以下に下げる段階と、
前記第二の型を前記構造体から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された第二構造体を形成する段階と、
を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項1】
透明な表面層と、中間層と、透明な裏面層とが、この順序で積層している調光材料であって、
前記中間層は、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体が、前記表面層、前記中間層および前記裏面層の積層方向に積層した構造を有し、
前記空隙部には液晶が充填されている、調光材料。
【請求項2】
前記表面層および前記裏面層に、前記中間層に充填された液晶に電圧を印加する電極が設置されてなる、請求項1に記載の調光材料。
【請求項3】
前記表面層および前記裏面層はガラスまたは樹脂からなる、請求項1または2に記載の調光材料。
【請求項4】
前記表面層および前記裏面層は樹脂フィルムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項5】
樹脂フィルムからなる前記表面層および前記裏面層の外層に、ガラスが配置されてなる、請求項4に記載の調光材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の調光材料が、フロントガラスまたはフロントサイドガラスの少なくとも一方に用いられてなる車両。
【請求項7】
ナノインプリント法により、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体を積層させる段階と、
前記構造体を、透明な表面層および透明な裏面層で挟持する段階と、
前記空隙部に液晶を充填する段階と、
を含む、
調光材料の製造方法。
【請求項8】
前記構造体を積層させる段階は、
樹脂製の基材に、前記樹脂のガラス転移温度以上に加熱した第一の型を押し付けて、前記樹脂を前記第一の型に充填する段階と、
前記第一の型の温度を前記樹脂のガラス転移温度以下に下げる段階と、
前記樹脂のガラス転移温度以下に低下した前記第一の型を、前記基材から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された構造体を形成する段階と、
骨格部を形成する樹脂が充填された第二の型を前記構造体上に押し付ける段階と、
前記第二の型に充填された樹脂の温度を、前記樹脂のガラス転移温度以下に下げる段階と、
前記第二の型を前記構造体から引き離し、少なくとも一軸方向に骨格部および空隙部が一定間隔で配置された第二構造体を形成する段階と、
を含む、請求項7に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2006−126371(P2006−126371A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312900(P2004−312900)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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