調剤制御システム
【課題】 入院調剤の業務能率を向上させる。
【解決手段】 調剤制御システムを、処方データを記憶する記憶手段5と、記憶手段に記憶した処方データを患者毎に併合して調剤機器7を駆動制御することにより調剤を行わせる制御手段4を備えた構成とし、入院指令信号に基づいて、記憶手段に入力された処方データを記憶させ、入院調剤開始指令信号に基づいて、記憶手段に記憶した処方データを、患者毎に併合して調剤処方データを作成し、調剤処方データに基づいて調剤機器7を駆動制御する。
【解決手段】 調剤制御システムを、処方データを記憶する記憶手段5と、記憶手段に記憶した処方データを患者毎に併合して調剤機器7を駆動制御することにより調剤を行わせる制御手段4を備えた構成とし、入院指令信号に基づいて、記憶手段に入力された処方データを記憶させ、入院調剤開始指令信号に基づいて、記憶手段に記憶した処方データを、患者毎に併合して調剤処方データを作成し、調剤処方データに基づいて調剤機器7を駆動制御する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、病院等の医療施設において、薬剤の調剤業務で使用する薬袋印刷機や薬剤分包機等の調剤機器を、処方データに基づいて制御する調剤制御システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、調剤制御システムとして、ホストコンピュータからのデータを、調剤の種類に適合した調剤機の入力装置に割り当てるようにしたものがある(特公平4−57348号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の調剤制御システムでは、外来と入院を区別することなく、処方データの受信順に調剤するだけであり、入院調剤に対する考慮がなされていない。
【0004】このため、同一の患者に対して複数の処方データが発行された場合であっても、発行された処方データ順に、個別に調剤作業が行われる。そして、後作業で、同一の患者に対して個別に調剤した薬剤を1つにまとめなければならない。特に、複数の診療科で処方されると、同種同効薬が指示されたり、薬剤の組み合わせによっては薬剤相互作用が発生する恐れがあるため、薬剤師による総合的な処方箋監査が必要となる。したがって、個別に調剤していたのでは、作業に手間及び時間がかかる上、その管理が煩雑なものとなる。
【0005】また、患者の容態急変等で処方内容が変更されれば、既に調剤された薬剤が無駄となる。
【0006】また、休日前に数日分を調剤する等、調剤業務の都合によって入院調剤の対象と開始を任意に指定することは不可能である。
【0007】また、外来患者への調剤中に、入院患者への処方データを数多く受信した場合、受信順に調剤していると、その後に受信する外来の処方データの調剤が遅れ、外来患者の投薬の待ち時間が長くなる。
【0008】そこで、本発明は、入院調剤の業務能率を向上させることのできる調剤制御システムを提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するための手段として、調剤制御システムを、処方データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶した処方データを患者毎に併合して調剤機器を駆動制御することにより調剤を行わせる制御手段とを備えた構成としたものである。
【0010】この構成により、ある患者に対して複数の処方データが作成された場合であっても、患者毎に処方データを作成することができる。したがって、同一の患者であれば、調剤をまとめて行うことができる。
【0011】前記制御手段により、処方データの調剤待ち件数が一定数を超過すると、外来の処方データを優先して取り出し、該外来の処方データに基づいて調剤機器を駆動制御することにより調剤を行わせるようにすると、外来患者の待ち時間を許容範囲に抑えることが可能となる点で好ましい。
【0012】さらに、印刷手段を備え、前記制御手段により、患者毎に処方データを併合して作成した調剤処方データを入院調剤処方箋として、前記印刷手段により、印刷させるようにすると、処方箋監査で同種同効薬や薬剤相互作用を容易に発見可能となる点で好ましい。
【0013】また、前記制御手段により、入院患者への調剤を開始する前に、調剤対象を指定して入院処方データを取り出し、薬剤別に分類して集計した薬剤別患者・用量・用法一覧表を、前記印刷手段により、印刷させるようにすると、調剤の際に薬剤をまとめて取り揃えて患者別に小分けすることが可能となり、全体での作業の能率を上げることができ、特に、患者に配薬する作業負担を軽減可能となる点で好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0015】図1は、調剤制御システムの構成を示す。この調剤制御システムは、入出力制御のために、液晶ディスプレイ等の表示装置1、キーボード・マウス等の入力装置2、レーザプリンタ等の印刷装置3、中央処理装置4(CPU)、及びハードディスク等の記憶装置5を備え、ホストコンピュータ6(処方データ送信装置)から受信されたる入力装置2から入力される処方データに基づいて薬袋印刷機や薬剤分包機等の調剤機器7を制御する。
【0016】表示装置1と入力装置2は、調剤制御システム全体の操作入力、処方データや各種マスタのデータ入力に使用する。
【0017】印刷装置3は入院調剤処方箋、及び薬剤別患者・用法・用量一覧表の印刷に使用する。
【0018】中央処理装置4(CPU)は各種データを一時的に記憶するためのメモリ(RAM)を内蔵する。このメモリは処方データを記憶する処方データメモリや処理上の作業メモリ等に使用する。中央処理装置4(CPU)は調剤制御システム全体をプログラム制御する。
【0019】記憶装置5には各種データをデータベースやファイルとして記憶する。記憶されるデータには、入院処方データ、調剤処方データ、及び各種マスタが含まれる。各種マスタは処方データを入力する際の関連情報を記憶し、薬剤マスタ、用法マスタ、患者マスタ、診療科マスタ、医師マスタ、病棟マスタ、処方箋区分マスタ等がある(コードと名称を格納するような簡単な構成のマスタは図示省略)。
【0020】表示装置1、入力装置2、印刷装置3、中央処理装置4(CPU)、及び記憶装置5はパーソナルコンピュータで構成してもよい。なお、ハードウェア機器はこれらに限らず種類と台数は任意に使用できる。
【0021】ホストコンピュータ6は、処方データを送信する機能をもつ装置であり、その処方データを利用して調剤機器7を制御する運用の場合に接続する。ホストコンピュータ6では病院の処方オーダリングシステムや医事会計システムが稼働する。なお、処方データは入力装置2からも入力できるので、ホストコンピュータ6は必ずしも必要なものではない。
【0022】調剤機器7には、薬袋印刷機、薬剤(錠剤、散剤、及び水剤)分包機、散剤調剤監査機、水剤調剤監査機等があり、その種類と台数は任意に構成できる。
【0023】また、記憶装置5が独立したデータベースサーバ装置(CPU内蔵)であって、表示装置、入力装置2、印刷装置3、及び中央処理装置4(CPU)がクライアント端末として、サーバ装置とネットワーク(LAN)で接続したようなクライアント・サーバ構成でもよい。
【0024】ここで、前記記憶装置5に記憶させる薬剤マスタ、処方データ、及び調剤処方データについて説明する。
【0025】薬剤マスタは、調剤制御システムを動作させるために必要な、薬剤についての各種データを薬剤コード毎に登録するデータである。その記憶内容は図2に示す通りである。なお、このデータは、メニュー画面(起動ボタンが並ぶだけの画面なので図示省略)から起動する薬剤マスタ登録の画面(データ構成と同じ画面構成なので図示省略)でキーボード・マウスを使って入力する。
【0026】図2中、薬剤コードとは、薬剤毎に一意なコードを意味する。この例では、薬剤師が入力しやすいように、薬剤の略称から濁点を除いて縮めたようなコードにしている。例えば、外用剤Cの読み「ガイヨウザイシー」から「カイヨシ」とする。薬剤名とは、薬剤の名称を意味する。単位には、薬剤を調剤する場合の単位の名称を使用する。「カプセル」ではCAP、「錠」ではT、「グラム」ではg、「ミリリットル」ではml等を使用する。形態コードとは、調剤作業において薬剤を形態で分類するためのコードを意味する。例えば「分包」は薬剤分包機で分割包装することを意味し、「ヒートシール」は製薬メーカで包装されたヒートシール包装のまま患者に投薬することを意味する。「錠剤・分包」では11、「錠剤・ヒートシール」には12、「カプセル剤・分包」には21、「カプセル剤・ヒートシール」には22、「散剤・分包」には31、「散剤・ヒートシール」には32、「外用剤・貼付」には43等を使用する。
【0027】処方データの記憶内容は、図3に示す通りである。すなわち、処方データのデータ項目には、患者番号、患者名(カナ、漢字)、性別(男=1、女=2)、生年月日(年号:明治=1、大正=2、昭和=3、平成=4)、年齢(歳・ヶ月)、処方日(医師が処方を発行した日付)、入院/外来区分(入院=1、外来=2)、引換番号(外来での「おくすり引換券」の番号)、診療科コード、医師コード、病棟コード、病室番号、処方箋区分コード(外来処方箋=01、入院処方箋=02)、服用日(処方を服用する日付期間。服用開始日と日数でもよい)、処方No.(1つ以上の薬剤と用法とを一組にする処方の連続No.)、薬剤/用法コード(例:「シヨウエ」は薬剤コードであり「/」で始まる「301」は用法コード)、用量(薬剤の用量)、単位(薬剤の単位)等がある。なお、処方データの内容を表示又は印刷する場合は、薬剤名を薬剤マスタ(図2)から取得するように各コードに対応した各マスタから名称を取得する。
【0028】調剤処方データは、調剤用の処方データ(図3)を順番に記憶するデータである。図11の例では、処方データ(図3の主要なデータ項目のみを示す概略)が2件、つまり、入院処方データ(図4)から服用日「2001.03.22〜2001.03.22」を調剤対象として取り出して、患者毎に併合した患者名「山田 太郎」診療科「内科」医師「川上 花子」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」診療科「外科」医師「小林 進一」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」の処方データと、患者名「渡辺 明美」診療科「内科」医師「井口 洋子」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」の処方データとがある。
【0029】入院処方データは、入院の処方データを記憶するデータである。図4の例では、処方データ(図3の主要なデータ項目のみを示す概略。病棟は3階病棟)が3件、つまり、患者名「山田 太郎」診療科「内科」医師「川上 花子」服用日「2001.03.22〜2001.03.24」の処方データと、患者名「渡辺明美」診療科「内科」医師「井口 洋子」服用日「2001.03.20〜2001.03.22」の処方データと、患者名「山田 太郎」診療科「外科」医師「小林 進一」服用日「2001.03.21〜2001.03.23」の処方データとがある。
【0030】次に、前記制御装置による処理内容を説明する。
【0031】図5は、調剤制御システムに於けるデータの流れを示す。すなわち、処方入力処理で処方データを入力し、処方データが入院の場合は入院処方データに保存し、外来の場合は調剤処方データに追加する。入院調剤処理は調剤対象を指定して入院処方データから取り出し、患者毎に併合した処方データを調剤処方データに追加する。調剤制御処理は調剤処方データから処方データを取り出して調剤機器7を制御する。
【0032】処方入力処理を図6のフローチャートに従って説明する。なお、この処理(図6)は、システム開始時に自動的に起動してシステム終了まで動作する。
【0033】まず、処方データの入力状況を監視する入力モニタ画面(図示省略)を表示する(ステップS1)。そして、ホストコンピュータ6からの受信や入力装置2により処方データ(図3)の入力があったか否かを判断する(ステップS2)。なお、入力装置による入力の場合、図3と同様の処方データ入力画面(図示省略。メニュー画面から起動)で、キーボード・マウスを使って入力されたか否かを判断する。
【0034】処方データの入力がなければ、そのまま待機し、処方データの入力があれば、処方データ(図3)の入院/外来区分が入院であるか否かを判断する(ステップS3)。但し、この判断は、処方データ(図3)の処方箋区分コードで行ってもよい。そして、入院であると判断されれば、処方データを入院処方データ(図4)に保存し(ステップS4)、処方データの入力から繰り返す。処方データに追加・変更・削除の指令がある場合は入院処方データに対して実行する。一方、入院でなければ、外来なので、処方データを調剤処方データ(図11R>1)に追加し(ステップS5)、処方データの入力から繰り返す。
【0035】続いて、入院調剤処理を図7のフローチャートに従って説明する。
【0036】まず、図示しないメニュー画面から起動して入院調剤画面(図8)を表示する(ステップS11)。調剤対象の初期表示では、服用日は調剤日の翌日1日分(例:2001年03月22日〜2001年03月22日)であり、病棟は全病棟(例:3階病棟〜7階病棟)である。そして、入院調剤画面(図8)で服用日と病棟を入力することにより、調剤対象を指定する(ステップS12)。但し、初期表示の内容と違う場合のみキーボード・マウスを使って上書き入力する。患者番号は特定の患者を指定する場合のみ入力する。「入院調剤 開始」ボタンがマウスでクリックされれば、調剤対象の件数(例:123件)を表示する。なお、「終了」ボタンをマウスでクリックするとメニュー画面に戻る。また、調剤対象を指定するデータ項目に朝、昼、夕等の服用時を追加してもよい。
【0037】続いて、入院処方データから調剤対象の処方データを取り出す(ステップS13)。図4の例では服用日が「2001年03月22日〜2001年03月22日」で全病棟の1日分を取り出す。
【0038】そして、取り出した処方データを患者毎に併合する(ステップS14)。図4の例では患者名「山田 太郎」診療科「内科」医師「川上 花子」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」の処方データと、患者名「山田 太郎」診療科「外科」医師「小林 進一」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」の処方データとを併合する。
【0039】さらに、調剤対象の処方データで患者毎に併合した処方データを入院調剤処方箋(図9)を印刷する(ステップS15)。図9の例では、服用日「2001年03月22日」の1日分で患者名「山田 太郎」は併合してあり、患者名「渡辺明美」は併合していない。なお、服用日が2日以上になる場合は服用開始日と日数で表現してもよい。
【0040】また、調剤対象の処方データを薬剤別に分類して集計した薬剤別患者・用量・用法一覧表(図10R>0)を印刷する(ステップS16)。薬剤別の合計量を見て薬剤をまとめて取り揃えて患者別に小分けするのに便利である。図10の例では、薬剤の形態コード別にして「錠剤・ヒートシール」と「カプセル剤・ヒートシール」をまとめて印刷している。
【0041】その後、調剤対象の処方データで患者毎に併合した処方データを調剤処方データ(図11)に追加する(ステップS17)。
【0042】次いで、調剤制御処理を図12のフローチャートに従って説明する。なお、この処理は、システム開始時に自動的に起動してシステム終了まで動作する。
【0043】まず、処方データの調剤状況を監視する調剤モニタ画面(図示省略)を表示する(ステップS21)。そして、調剤処方データ(図11)の待ち件数が予め設定する一定数を超過したか否かを判断する(ステップS22)。一定数はシステム設定画面(図示省略)で設定する。そして、待ち件数が一定数を超過すれば、調剤処方データ(図11)から外来の処方データを取り出す(ステップS23)。外来の判断は処方データ(図3)の入院/外来区分か処方箋区分コードで行う。一方、待ち件数が一定数以下であれば、調剤処方データ(図11)から処方データを順番通り取り出す(ステップS24)。その後、取り出した処方データに基づいて薬袋印刷機や薬剤分包機等の調剤機器7を制御し(ステップS25)、待ち件数超過判断から繰り返す。
【0044】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、記憶手段に記憶した処方データを、患者毎に併合して調剤処方データを作成するようにしたので、指示管理の手間と薬剤ロスを削減することにより入院調剤業務を適切に行わせることができ、調剤機器の動作を統合して合理化可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態に係る調剤制御システムの機器構成を示すブロック図である。
【図2】 図1の記憶装置に記憶する薬剤マスタの記憶内容を示す図である。
【図3】 図1の記憶装置に記憶する処方データの記憶内容を示す図である。
【図4】 図1の記憶装置に記憶する入院処方データの記憶内容の概略を示す図である。
【図5】 図1の調剤制御システムに於けるデータ処理の構成を示すブロック図である。
【図6】 図1の制御装置による処方入力の処理を示すフローチャートである。
【図7】 図1の制御装置による入院調剤の処理を示すフローチャートである。
【図8】 図1の表示装置に表示する入院調剤の画面を示す図である。
【図9】 図1の印刷手段によって印刷される入院調剤処方箋を示す図である。
【図10】 図1の印刷手段によって印刷される薬剤別患者・用量・用法一覧表の印刷を示す図である。
【図11】 図1の記憶装置に記憶する調剤処方データの記憶内容の概略を示す図である。
【図12】 図1の制御装置による調剤制御の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…表示装置
2…入力装置
3…印刷装置
4…中央処理装置
5…記憶装置
6…ホストコンピュータ
7…調剤機器
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、病院等の医療施設において、薬剤の調剤業務で使用する薬袋印刷機や薬剤分包機等の調剤機器を、処方データに基づいて制御する調剤制御システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、調剤制御システムとして、ホストコンピュータからのデータを、調剤の種類に適合した調剤機の入力装置に割り当てるようにしたものがある(特公平4−57348号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の調剤制御システムでは、外来と入院を区別することなく、処方データの受信順に調剤するだけであり、入院調剤に対する考慮がなされていない。
【0004】このため、同一の患者に対して複数の処方データが発行された場合であっても、発行された処方データ順に、個別に調剤作業が行われる。そして、後作業で、同一の患者に対して個別に調剤した薬剤を1つにまとめなければならない。特に、複数の診療科で処方されると、同種同効薬が指示されたり、薬剤の組み合わせによっては薬剤相互作用が発生する恐れがあるため、薬剤師による総合的な処方箋監査が必要となる。したがって、個別に調剤していたのでは、作業に手間及び時間がかかる上、その管理が煩雑なものとなる。
【0005】また、患者の容態急変等で処方内容が変更されれば、既に調剤された薬剤が無駄となる。
【0006】また、休日前に数日分を調剤する等、調剤業務の都合によって入院調剤の対象と開始を任意に指定することは不可能である。
【0007】また、外来患者への調剤中に、入院患者への処方データを数多く受信した場合、受信順に調剤していると、その後に受信する外来の処方データの調剤が遅れ、外来患者の投薬の待ち時間が長くなる。
【0008】そこで、本発明は、入院調剤の業務能率を向上させることのできる調剤制御システムを提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するための手段として、調剤制御システムを、処方データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶した処方データを患者毎に併合して調剤機器を駆動制御することにより調剤を行わせる制御手段とを備えた構成としたものである。
【0010】この構成により、ある患者に対して複数の処方データが作成された場合であっても、患者毎に処方データを作成することができる。したがって、同一の患者であれば、調剤をまとめて行うことができる。
【0011】前記制御手段により、処方データの調剤待ち件数が一定数を超過すると、外来の処方データを優先して取り出し、該外来の処方データに基づいて調剤機器を駆動制御することにより調剤を行わせるようにすると、外来患者の待ち時間を許容範囲に抑えることが可能となる点で好ましい。
【0012】さらに、印刷手段を備え、前記制御手段により、患者毎に処方データを併合して作成した調剤処方データを入院調剤処方箋として、前記印刷手段により、印刷させるようにすると、処方箋監査で同種同効薬や薬剤相互作用を容易に発見可能となる点で好ましい。
【0013】また、前記制御手段により、入院患者への調剤を開始する前に、調剤対象を指定して入院処方データを取り出し、薬剤別に分類して集計した薬剤別患者・用量・用法一覧表を、前記印刷手段により、印刷させるようにすると、調剤の際に薬剤をまとめて取り揃えて患者別に小分けすることが可能となり、全体での作業の能率を上げることができ、特に、患者に配薬する作業負担を軽減可能となる点で好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0015】図1は、調剤制御システムの構成を示す。この調剤制御システムは、入出力制御のために、液晶ディスプレイ等の表示装置1、キーボード・マウス等の入力装置2、レーザプリンタ等の印刷装置3、中央処理装置4(CPU)、及びハードディスク等の記憶装置5を備え、ホストコンピュータ6(処方データ送信装置)から受信されたる入力装置2から入力される処方データに基づいて薬袋印刷機や薬剤分包機等の調剤機器7を制御する。
【0016】表示装置1と入力装置2は、調剤制御システム全体の操作入力、処方データや各種マスタのデータ入力に使用する。
【0017】印刷装置3は入院調剤処方箋、及び薬剤別患者・用法・用量一覧表の印刷に使用する。
【0018】中央処理装置4(CPU)は各種データを一時的に記憶するためのメモリ(RAM)を内蔵する。このメモリは処方データを記憶する処方データメモリや処理上の作業メモリ等に使用する。中央処理装置4(CPU)は調剤制御システム全体をプログラム制御する。
【0019】記憶装置5には各種データをデータベースやファイルとして記憶する。記憶されるデータには、入院処方データ、調剤処方データ、及び各種マスタが含まれる。各種マスタは処方データを入力する際の関連情報を記憶し、薬剤マスタ、用法マスタ、患者マスタ、診療科マスタ、医師マスタ、病棟マスタ、処方箋区分マスタ等がある(コードと名称を格納するような簡単な構成のマスタは図示省略)。
【0020】表示装置1、入力装置2、印刷装置3、中央処理装置4(CPU)、及び記憶装置5はパーソナルコンピュータで構成してもよい。なお、ハードウェア機器はこれらに限らず種類と台数は任意に使用できる。
【0021】ホストコンピュータ6は、処方データを送信する機能をもつ装置であり、その処方データを利用して調剤機器7を制御する運用の場合に接続する。ホストコンピュータ6では病院の処方オーダリングシステムや医事会計システムが稼働する。なお、処方データは入力装置2からも入力できるので、ホストコンピュータ6は必ずしも必要なものではない。
【0022】調剤機器7には、薬袋印刷機、薬剤(錠剤、散剤、及び水剤)分包機、散剤調剤監査機、水剤調剤監査機等があり、その種類と台数は任意に構成できる。
【0023】また、記憶装置5が独立したデータベースサーバ装置(CPU内蔵)であって、表示装置、入力装置2、印刷装置3、及び中央処理装置4(CPU)がクライアント端末として、サーバ装置とネットワーク(LAN)で接続したようなクライアント・サーバ構成でもよい。
【0024】ここで、前記記憶装置5に記憶させる薬剤マスタ、処方データ、及び調剤処方データについて説明する。
【0025】薬剤マスタは、調剤制御システムを動作させるために必要な、薬剤についての各種データを薬剤コード毎に登録するデータである。その記憶内容は図2に示す通りである。なお、このデータは、メニュー画面(起動ボタンが並ぶだけの画面なので図示省略)から起動する薬剤マスタ登録の画面(データ構成と同じ画面構成なので図示省略)でキーボード・マウスを使って入力する。
【0026】図2中、薬剤コードとは、薬剤毎に一意なコードを意味する。この例では、薬剤師が入力しやすいように、薬剤の略称から濁点を除いて縮めたようなコードにしている。例えば、外用剤Cの読み「ガイヨウザイシー」から「カイヨシ」とする。薬剤名とは、薬剤の名称を意味する。単位には、薬剤を調剤する場合の単位の名称を使用する。「カプセル」ではCAP、「錠」ではT、「グラム」ではg、「ミリリットル」ではml等を使用する。形態コードとは、調剤作業において薬剤を形態で分類するためのコードを意味する。例えば「分包」は薬剤分包機で分割包装することを意味し、「ヒートシール」は製薬メーカで包装されたヒートシール包装のまま患者に投薬することを意味する。「錠剤・分包」では11、「錠剤・ヒートシール」には12、「カプセル剤・分包」には21、「カプセル剤・ヒートシール」には22、「散剤・分包」には31、「散剤・ヒートシール」には32、「外用剤・貼付」には43等を使用する。
【0027】処方データの記憶内容は、図3に示す通りである。すなわち、処方データのデータ項目には、患者番号、患者名(カナ、漢字)、性別(男=1、女=2)、生年月日(年号:明治=1、大正=2、昭和=3、平成=4)、年齢(歳・ヶ月)、処方日(医師が処方を発行した日付)、入院/外来区分(入院=1、外来=2)、引換番号(外来での「おくすり引換券」の番号)、診療科コード、医師コード、病棟コード、病室番号、処方箋区分コード(外来処方箋=01、入院処方箋=02)、服用日(処方を服用する日付期間。服用開始日と日数でもよい)、処方No.(1つ以上の薬剤と用法とを一組にする処方の連続No.)、薬剤/用法コード(例:「シヨウエ」は薬剤コードであり「/」で始まる「301」は用法コード)、用量(薬剤の用量)、単位(薬剤の単位)等がある。なお、処方データの内容を表示又は印刷する場合は、薬剤名を薬剤マスタ(図2)から取得するように各コードに対応した各マスタから名称を取得する。
【0028】調剤処方データは、調剤用の処方データ(図3)を順番に記憶するデータである。図11の例では、処方データ(図3の主要なデータ項目のみを示す概略)が2件、つまり、入院処方データ(図4)から服用日「2001.03.22〜2001.03.22」を調剤対象として取り出して、患者毎に併合した患者名「山田 太郎」診療科「内科」医師「川上 花子」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」診療科「外科」医師「小林 進一」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」の処方データと、患者名「渡辺 明美」診療科「内科」医師「井口 洋子」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」の処方データとがある。
【0029】入院処方データは、入院の処方データを記憶するデータである。図4の例では、処方データ(図3の主要なデータ項目のみを示す概略。病棟は3階病棟)が3件、つまり、患者名「山田 太郎」診療科「内科」医師「川上 花子」服用日「2001.03.22〜2001.03.24」の処方データと、患者名「渡辺明美」診療科「内科」医師「井口 洋子」服用日「2001.03.20〜2001.03.22」の処方データと、患者名「山田 太郎」診療科「外科」医師「小林 進一」服用日「2001.03.21〜2001.03.23」の処方データとがある。
【0030】次に、前記制御装置による処理内容を説明する。
【0031】図5は、調剤制御システムに於けるデータの流れを示す。すなわち、処方入力処理で処方データを入力し、処方データが入院の場合は入院処方データに保存し、外来の場合は調剤処方データに追加する。入院調剤処理は調剤対象を指定して入院処方データから取り出し、患者毎に併合した処方データを調剤処方データに追加する。調剤制御処理は調剤処方データから処方データを取り出して調剤機器7を制御する。
【0032】処方入力処理を図6のフローチャートに従って説明する。なお、この処理(図6)は、システム開始時に自動的に起動してシステム終了まで動作する。
【0033】まず、処方データの入力状況を監視する入力モニタ画面(図示省略)を表示する(ステップS1)。そして、ホストコンピュータ6からの受信や入力装置2により処方データ(図3)の入力があったか否かを判断する(ステップS2)。なお、入力装置による入力の場合、図3と同様の処方データ入力画面(図示省略。メニュー画面から起動)で、キーボード・マウスを使って入力されたか否かを判断する。
【0034】処方データの入力がなければ、そのまま待機し、処方データの入力があれば、処方データ(図3)の入院/外来区分が入院であるか否かを判断する(ステップS3)。但し、この判断は、処方データ(図3)の処方箋区分コードで行ってもよい。そして、入院であると判断されれば、処方データを入院処方データ(図4)に保存し(ステップS4)、処方データの入力から繰り返す。処方データに追加・変更・削除の指令がある場合は入院処方データに対して実行する。一方、入院でなければ、外来なので、処方データを調剤処方データ(図11R>1)に追加し(ステップS5)、処方データの入力から繰り返す。
【0035】続いて、入院調剤処理を図7のフローチャートに従って説明する。
【0036】まず、図示しないメニュー画面から起動して入院調剤画面(図8)を表示する(ステップS11)。調剤対象の初期表示では、服用日は調剤日の翌日1日分(例:2001年03月22日〜2001年03月22日)であり、病棟は全病棟(例:3階病棟〜7階病棟)である。そして、入院調剤画面(図8)で服用日と病棟を入力することにより、調剤対象を指定する(ステップS12)。但し、初期表示の内容と違う場合のみキーボード・マウスを使って上書き入力する。患者番号は特定の患者を指定する場合のみ入力する。「入院調剤 開始」ボタンがマウスでクリックされれば、調剤対象の件数(例:123件)を表示する。なお、「終了」ボタンをマウスでクリックするとメニュー画面に戻る。また、調剤対象を指定するデータ項目に朝、昼、夕等の服用時を追加してもよい。
【0037】続いて、入院処方データから調剤対象の処方データを取り出す(ステップS13)。図4の例では服用日が「2001年03月22日〜2001年03月22日」で全病棟の1日分を取り出す。
【0038】そして、取り出した処方データを患者毎に併合する(ステップS14)。図4の例では患者名「山田 太郎」診療科「内科」医師「川上 花子」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」の処方データと、患者名「山田 太郎」診療科「外科」医師「小林 進一」服用日「2001.03.22〜2001.03.22」の処方データとを併合する。
【0039】さらに、調剤対象の処方データで患者毎に併合した処方データを入院調剤処方箋(図9)を印刷する(ステップS15)。図9の例では、服用日「2001年03月22日」の1日分で患者名「山田 太郎」は併合してあり、患者名「渡辺明美」は併合していない。なお、服用日が2日以上になる場合は服用開始日と日数で表現してもよい。
【0040】また、調剤対象の処方データを薬剤別に分類して集計した薬剤別患者・用量・用法一覧表(図10R>0)を印刷する(ステップS16)。薬剤別の合計量を見て薬剤をまとめて取り揃えて患者別に小分けするのに便利である。図10の例では、薬剤の形態コード別にして「錠剤・ヒートシール」と「カプセル剤・ヒートシール」をまとめて印刷している。
【0041】その後、調剤対象の処方データで患者毎に併合した処方データを調剤処方データ(図11)に追加する(ステップS17)。
【0042】次いで、調剤制御処理を図12のフローチャートに従って説明する。なお、この処理は、システム開始時に自動的に起動してシステム終了まで動作する。
【0043】まず、処方データの調剤状況を監視する調剤モニタ画面(図示省略)を表示する(ステップS21)。そして、調剤処方データ(図11)の待ち件数が予め設定する一定数を超過したか否かを判断する(ステップS22)。一定数はシステム設定画面(図示省略)で設定する。そして、待ち件数が一定数を超過すれば、調剤処方データ(図11)から外来の処方データを取り出す(ステップS23)。外来の判断は処方データ(図3)の入院/外来区分か処方箋区分コードで行う。一方、待ち件数が一定数以下であれば、調剤処方データ(図11)から処方データを順番通り取り出す(ステップS24)。その後、取り出した処方データに基づいて薬袋印刷機や薬剤分包機等の調剤機器7を制御し(ステップS25)、待ち件数超過判断から繰り返す。
【0044】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、記憶手段に記憶した処方データを、患者毎に併合して調剤処方データを作成するようにしたので、指示管理の手間と薬剤ロスを削減することにより入院調剤業務を適切に行わせることができ、調剤機器の動作を統合して合理化可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態に係る調剤制御システムの機器構成を示すブロック図である。
【図2】 図1の記憶装置に記憶する薬剤マスタの記憶内容を示す図である。
【図3】 図1の記憶装置に記憶する処方データの記憶内容を示す図である。
【図4】 図1の記憶装置に記憶する入院処方データの記憶内容の概略を示す図である。
【図5】 図1の調剤制御システムに於けるデータ処理の構成を示すブロック図である。
【図6】 図1の制御装置による処方入力の処理を示すフローチャートである。
【図7】 図1の制御装置による入院調剤の処理を示すフローチャートである。
【図8】 図1の表示装置に表示する入院調剤の画面を示す図である。
【図9】 図1の印刷手段によって印刷される入院調剤処方箋を示す図である。
【図10】 図1の印刷手段によって印刷される薬剤別患者・用量・用法一覧表の印刷を示す図である。
【図11】 図1の記憶装置に記憶する調剤処方データの記憶内容の概略を示す図である。
【図12】 図1の制御装置による調剤制御の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…表示装置
2…入力装置
3…印刷装置
4…中央処理装置
5…記憶装置
6…ホストコンピュータ
7…調剤機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】 処方データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶した処方データを患者毎に併合して調剤機器を駆動制御することにより調剤を行わせる制御手段とを備えたことを特徴とする調剤制御システム。
【請求項2】 前記制御手段は、処方データの調剤待ち件数が一定数を超過すると、外来の処方データを優先して取り出し、該外来の処方データに基づいて調剤機器を駆動制御することにより調剤を行わせることを特徴とする請求項1に記載の調剤制御システム。
【請求項3】 さらに、印刷手段を備え、前記制御手段は、患者毎に処方データを併合して作成した調剤処方データを入院調剤処方箋として、前記印刷手段により、印刷させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の調剤制御システム。
【請求項4】 さらに、印刷手段を備え、前記制御手段は、入院患者への調剤を開始する前に、調剤対象を指定して入院処方データを取り出し、薬剤別に分類して集計した薬剤別患者・用量・用法一覧表を、前記印刷手段により、印刷させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の調剤制御システム。
【請求項1】 処方データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶した処方データを患者毎に併合して調剤機器を駆動制御することにより調剤を行わせる制御手段とを備えたことを特徴とする調剤制御システム。
【請求項2】 前記制御手段は、処方データの調剤待ち件数が一定数を超過すると、外来の処方データを優先して取り出し、該外来の処方データに基づいて調剤機器を駆動制御することにより調剤を行わせることを特徴とする請求項1に記載の調剤制御システム。
【請求項3】 さらに、印刷手段を備え、前記制御手段は、患者毎に処方データを併合して作成した調剤処方データを入院調剤処方箋として、前記印刷手段により、印刷させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の調剤制御システム。
【請求項4】 さらに、印刷手段を備え、前記制御手段は、入院患者への調剤を開始する前に、調剤対象を指定して入院処方データを取り出し、薬剤別に分類して集計した薬剤別患者・用量・用法一覧表を、前記印刷手段により、印刷させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の調剤制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
【図7】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2002−334155(P2002−334155A)
【公開日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−140181(P2001−140181)
【出願日】平成13年5月10日(2001.5.10)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【公開日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年5月10日(2001.5.10)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
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