説明

調味ソース

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クリーム風炒めもの等の料理を簡便に調理することのできる調味ソースに関するものであり、更に詳しくは、クリーム感のある良好な乳白色の色調をもつ本格的なクリーム風炒めもの等の料理を簡便に調理することができると共に、保存性にも優れた調味ソースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、一般家庭において本格的な炒めもの料理を簡便に調理するための調味ソース製品が種々開発されている。通常、このような調味ソースは、糖質、食塩、旨味原料、水系原料等を加熱混合して調製され、パウチ等の容器に密封されて販売されている。当該調味ソースによると、例えば肉、野菜等の食材をフライパンで炒め、これに単に加えてからませるだけで、和風、洋風、中華風等様々な炒めもの料理を調理することができる。ところで、嗜好が多様化しかつ高級化した今日ではさらに、現代人の要求する嗜好を満たすために、乳原料の風味をベースとしたクリーム風調味ソースも開発されている。このような乳原料を含む調味ソースは、乳原料がもつ特有の風味を生かすことに加えて、乳原料によって付与されるクリーム感のある乳白色の色調をいかに保持し得るかがその品質を左右する大きな要因となる。しかしながら、上記の調味ソースは、保存時に褐変が生じて、その色調がクリーム感のある乳白色に保持されないという問題があった。また、上記褐変の問題は、調味ソースの保存性を確保するために、Aw(水分活性)を低くした場合にさらに助長された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事情に鑑み、保存時における褐変が防止され、クリーム感のある乳白色の色調をもつ本格的なクリーム風炒めもの等の料理を簡便に調理することができると共に、保存性にも優れた調味ソースの提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らの研究の結果、乳糖含量が0.5重量%以下の乳原料、非還元性糖類、食塩及び旨味原料を含み、かつ特定のAw及びpHを有する調味ソースによって求める品質が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明は、乳糖含量が0.5重量%以下の乳原料、非還元性糖類、食塩及び旨味原料を含み、Aw0.75〜0.88でかつpH6.5以下であることを特徴とする調味ソースを提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明で対象とする調味ソースは、乳糖含量が0.5重量%以下の乳原料、非還元性糖類、食塩及び旨味原料を含み、肉類、野菜類、パスタ等の食材に加えて調理するための液状ないしペースト状のソースであって、具体的には、野菜炒め用ソース、ステーキ用ソース、パスタ用ソース及びこれらの類似品が例示される。
【0007】本発明で用いる原料について説明する。先ず、本発明では、乳糖含量が0.5重量%以下(0〜0.5重量%)の乳原料を用いる。当該乳原料としては、無脂乳固形分として含まれる乳糖の含量が0.5重量%以下に調整された乳原料であれば特に制限されず、具体的には、クリーム、バター、粉末乳、液体乳味原料等が挙げられ、これらは単独で、あるいは適宜組み合せて用いることができる。なお、上記乳原料の乳糖含量が0.5重量%を越える場合には、保存時における褐変が防止されない。
【0008】前記乳原料の使用量は、特に制限されないが、調味ソースに乳原料特有の風味および色調を好適に付与する上で、調味ソースに対して10重量%以上(以下単に%という)、更に好ましくは20〜60%使用するのがよい。
【0009】次に、非還元性糖類としては、ソルビトール、還元水飴等の糖アルコールや、ショ糖、エルロース、トレハロース、ラクトシュクロース等が挙げられ、特にソルビトール、トレハロースが望ましい。本発明では、これらの非還元性糖類を単独で、あるいは適宜組み合せて用いることができる。
【0010】非還元性糖類の使用量は、その種類に関係なく、調味ソースに対して、乾燥重量として2〜35%、更に好ましくは3.5〜10%使用するのがよい。2%に満たないと求めるAwを達成しにくく所望の保存性が得られなくなり、反対に35%を越えると、甘味が強くなり全体としての風味バランスが悪くなる。したがって、前記範囲の使用量によって、後述するAwで保存性に優れ、甘味がやわらかに感じられて風味バランスのよい調味ソースを得ることができる。
【0011】食塩としては、食塩そのものとして、あるいは、醤油、味噌、その他の含塩調味料等として使用でき、これらは単独で、あるいは適宜組み合せて用いることができる。食塩の使用量は、調味ソースに対して、塩分として3〜20%、更に好ましくは5〜13%使用するのがよい。塩分含量が3%に満たないと求めるAwを達成しにくく所望の保存性が得られなくなり、反対に20%を越えると塩味が強くなり全体としての風味バランスが悪くなる。したがって、前記範囲の使用量によって、後述するAwで保存性に優れ、程よい塩味が感じられて風味バランスのよい調味ソースを得ることができる。
【0012】旨味原料としては、グルタミン酸ナトリウム、醤油、発酵調味料、スープストック、エキス類等が挙げられる。本発明では、旨味原料の使用量は特に制限されず、求める調味ソースの種類、風味に応じて任意の量使用することができる。
【0013】また、本発明では、前記原料の他に調味ソースに適度な粘度をつけて食材へのからまりをよくするために、澱粉、ガム質等を用いてもよい。また、特に澱粉の中でも化工澱粉を用いた場合には、調味ソースに所望の粘度とともに澱粉特有のなめらかな食感が付与され、しかも通常の澱粉(未化工の澱粉)を用いた場合に生じる保存時の老化による離水(Awが上がる)が防止される。したがって、この場合には、所望の粘度・特有の食感に加えてAwの上がりにくい保存性に優れた調味ソースが得られるのでよい。なお、ここで化工澱粉とは、ヒドロキシプロピル、エピクロルヒドリン、リン酸、アジミン酸、酢酸等により置換及び/又は架橋された澱粉のことをいう。
【0014】なお、本発明において、前記のように調味ソースに粘度をつける場合には、具体的には、品温25°Cにおいて3000〜20000cp、さらに好ましくは7000〜19000cpを好適な粘度範囲として例示できる。上記粘度が3000cpに満たないと、食材へのからまりが弱く、反対に20000cpを越えるとボテボテとした重い食感となる。したがって、前記範囲の使用量によって、食材へのからまりがよく、食感に優れた調味ソースを得ることができる。
【0015】本発明では、前記原料の他にも、水、香辛料、酢酸等の酸味料、香料等を適宜必要に応じて用いることができる。
【0016】本発明では、以上のような原料を用いて、調味ソースを、全体として、Aw0.75〜0.88、好ましくは0.78〜0.85でかつpH6.5以下、好ましくはpH5.0〜5.8に調整することが重要である。
【0017】前記Aw及びpHの調味ソースにより、食材に乳原料特有のクリーム感のある色調を付与することが可能で、しかも保存性にも優れた調味ソースを得ることができる。なお、Aw、pHのいずれかが上記条件範囲を上回ると、所望の保存性が得られない。一方、Awが上記範囲を下回ると調味ソースの褐変を防止できない。なお、調味ソースを上記pHとするためには、穀物酢、リンゴ酢、クエン酸、酒石酸等の酸味料を添加するのがよい。
【0018】本発明の調味ソースの製法について説明すると、本発明の調味ソースは、基本的には、各原料を任意の方法で加熱混合して製造することができる。また、本発明の調味ソースは、加熱殺菌処理を施さない場合であっても常温で十分保存可能であるが、必要により加熱殺菌処理を施すこともできる。
【0019】加熱殺菌処理を施す場合は、例えば60〜95°C、5〜30分程度の条件で、パウチ、ボトル等の容器にホットパック処理を行うか、あるいは充填密封後に湯殺菌処理を行うことが望ましい。上記殺菌条件によれば、調味ソースの褐変を抑えて、乳原料特有の色調を有効に生かすことができると共に、更に保存性を高めることができる。
【0020】また、酢酸等の酸味料を用いる場合には、予め乳原料を澱粉、ガム質等の他の原料の一部ないし全部と混合して粘度を高めた後に添加することが、乳原料の酸凝固を防止する上で望ましい。
【0021】本発明の調味ソースの用途としては、各種食材に加えて調理するすべての場合に用い得るが、特に炒めもの料理に好適に使用される。具体的には、例えばフライパン、ナベ等の調理器材で炒めた食材に振りかけてからませるようにすればよい。なお、炒めた食材(加熱により組織が軟化している食材)に食塩をある程度含むソースを用いる場合、浸透圧により食材からの離水が生じて出来上がりが水っぽいものとなりやすいが、本発明の調味ソースを前述した好適な粘度範囲として用いる場合には、上記離水が好適に防止されるのでよい。
【0022】また、本発明の調味ソースを用いて調理される食材としては、特に制限されず、キャベツ、白菜、玉葱、人参、もやし、ジャガイモ、ナス、カボチャ、トマト、ピーマン等の野菜類、牛、豚、鶏等の肉類、エビ、タコ、イカ、サケ、マギロ、カキ等の魚介類、パスタ等を任意に用いることができる。
【0023】
【実施例】
(1)クリーム風野菜炒め用ソースの製造乳糖含量が0.08重量%のクリーム30重量部(以下、部と略称する)、マーガリン10部、ソルビトール水溶液(濃度70%)30部、食塩5部、発酵調味料10部、肉エキス5部、化工澱粉4部、香辛料2部、およびグルタミン酸ナトリウム3.85部を85°Cで加熱しながら混合撹拌し、爾後これに酢酸0.15部を加えてさらに混合撹拌した。次いで、これをパウチに充填、密封した後、85°C、15分間の条件で湯殺菌処理してクリーム風野菜炒め用ソースを得た。上記ソースは、非還元性糖類含量(乾燥重量)21%、塩分含量7.5%、およびAw0.82、pH5.75、25°Cにおける粘度約10000cpのものであった。また、上記ソースは、40°Cの温度下で14日間保存しても、製造時と同様の色調および品質が保たれていることが確認された。
【0024】(2)調理例フライパンを用いて、もやし、キャベツ、玉葱からなる野菜300gを食用油で炒め、この上から上記ソース30gをかけて、これを軽くかき混ぜながらからませて野菜炒めを得た。得られた野菜炒めには、良好な乳白色の色調を呈するソースが均一にからまっており、これを食したところ、当該野菜炒めは、乳原料と野菜の風味が十分に醸し出されたものであった。
【0025】
【比較例】乳糖含量0.08重量%のクリームに代えて乳糖含量8重量%のクリーム、ソルビトール水溶液に代えて上白糖、水を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーム風野菜炒め用ソースを得た。上記ソースは、40°Cの温度下で14日間保存したところ、褐変が激しくクリーム感のある乳白色の色調を有するものではなかった。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、保存時における褐変が防止され、クリーム感のある乳白色の色調をもつ本格的なクリーム風炒めもの等の料理を簡便に調理することができると共に、保存性にも優れた調味ソースを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 乳糖含量が0.5重量%以下の乳原料、非還元性糖類、食塩及び旨味原料を含み、Aw0.75〜0.88でかつpH6.5以下であることを特徴とする調味ソース。
【請求項2】 60〜95°Cで加熱殺菌処理されてなる請求項1記載の調味ソース。

【特許番号】特許第3065543号(P3065543)
【登録日】平成12年5月12日(2000.5.12)
【発行日】平成12年7月17日(2000.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−296945
【出願日】平成8年11月8日(1996.11.8)
【公開番号】特開平10−136931
【公開日】平成10年5月26日(1998.5.26)
【審査請求日】平成10年10月27日(1998.10.27)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【参考文献】
【文献】特開 昭58−183067(JP,A)
【文献】特開 平3−10656(JP,A)
【文献】特開 昭59−88062(JP,A)
【文献】特開 昭61−56054(JP,A)
【文献】特開 昭63−68055(JP,A)
【文献】特開 平8−89206(JP,A)