説明

調味料及びその製造方法

【課題】 いわゆる「三升漬」と呼ばれる調味料をベースとし、料理に好適な独特の風味を引き出した調味料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成後に濾過することによって分離した残留物を除去することにした。
また、本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成後に濾過することによって抽出した濾液を除去することにした。
さらに、本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、唐辛子のエキスを添加することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、唐辛子を細かく破砕し、これに麹を混ぜ合わせ、これらの破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、その後、常温下で所定期間放置することによって熟成させることによって製造する調味料が知られている。
【0003】
この調味料は、唐辛子と麹と醤油とをそれぞれ一升づつ漬け込んで生成されることから、「三升漬」と呼ばれている。
【0004】
この「三升漬」と呼ばれる調味料は、醤油をベースとした調味料でありながら、唐辛子の辛味の効いた風味と麹の甘味の効いた風味とがバランスよく溶け込んでおり、和食、洋食、中華などの様々な料理に適した調味料となっている。この「三升漬」は、食材を漬け込んで漬物を製造するときにも利用されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−222703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の「三升漬」と呼ばれる調味料は、醤油に唐辛子の辛味と麹の甘味とが混在した調味料であるものの、所定期間熟成させて製造されるものであるために、独特の風味が薄らいで中性化された味わいの調味料となっていた。
【0006】
そのため、和食、洋食、中華などの幅広い料理に使用することができても、各料理の食材に最適な独特の風味には欠けており、調味料としての存在感が低減したものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、熟成後に濾過することによって抽出した濾液を主成分とすることにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、熟成後に濾過することによって分離した残留物を主成分とすることにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、唐辛子のエキスを添加することにした。
【0010】
また、請求項4に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、熟成後に濾過することによって分離した残留物を除去することにした。
【0011】
また、請求項5に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、熟成後に濾過することによって抽出した濾液を除去することにした。
【0012】
また、請求項6に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、唐辛子のエキスを添加することにした。
【発明の効果】
【0013】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0014】
すなわち、請求項1に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、熟成後に濾過することによって抽出した濾液を主成分とすることにしているために、いわゆる「三升漬」における唐辛子の辛味の効いた風味が溶け込んだ醤油成分の風味を強調した調味料とすることができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0015】
また、請求項2に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、熟成後に濾過することによって分離した残留物を主成分とすることにしているために、いわゆる「三升漬」における麹の甘味の効いた風味を強調した調味料とすることができ、唐辛子による辛味の効いた風味を残しつつも、麹による甘味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0016】
また、請求項3に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、唐辛子のエキスを添加することにしているために、いわゆる「三升漬」を長期間熟成させることによって失われた辛味の効いた風味を唐辛子エキスによって添加することができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0017】
また、請求項4に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、熟成後に濾過することによって分離した残留物を除去することにしているために、いわゆる「三升漬」における唐辛子の辛味の効いた風味が溶け込んだ醤油成分の風味を強調した調味料とすることができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0018】
また、請求項5に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、熟成後に濾過することによって抽出した濾液を除去することにしているために、いわゆる「三升漬」における麹の甘味の効いた風味を強調した調味料とすることができ、唐辛子による辛味の効いた風味を残しつつも、麹による甘味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0019】
また、請求項6に係る本発明では、破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、唐辛子のエキスを添加することにしているために、いわゆる「三升漬」を長期間熟成させることによって失われた辛味の効いた風味を唐辛子エキスによって添加することができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0020】
このように、請求項1〜請求項6に係る本発明は、いわゆる「三升漬」と呼ばれる調味料をベースとしながら料理に好適な独特の風味を引き出すといった技術的特徴を共通に有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態を模式的に示した図であり、この図に沿って説明していく。
【0023】
まず、唐辛子として完熟前に採取した青唐辛子を使用し、所定量の青唐辛子を水洗いし、表皮部分の水分を完全に除去した後に、2mm角程度の大きさに破砕しておく。
【0024】
ここで、唐辛子を破砕したときに液状のエキスが生じるが、このエキスは、破砕した唐辛子とともに後述するように醤油に漬け込んでもよく、また、冷凍して保存しておき、最終的に生成される調味料(後述する濾液)の使用前或いは出荷前に解凍して添加してもよい。このように、調味料に唐辛子のエキスを添加することにより、長期間の熟成によって失われた辛味の効いた風味を再び添加することができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0025】
また、麹としては、米麹を使用し、所定量の麹を用意しておく。
【0026】
次に、容器の中に所定量の醤油を入れ、さらに、予め用意しておいた破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込む。
【0027】
ここで、唐辛子、麹、醤油は、1:1:1の重量比としている。この比率は、これに限られたものではなく、好みに応じて変更してもよく、たとえば、辛味を強くしたい場合には唐辛子の量を増やし、甘味を強くしたい場合には麹の量を増やしてもよい。
【0028】
唐辛子と麹とを醤油に漬け込んだ容器を密封し、所定期間常温下で放置して、熟成させる。なお、熟成中は、定期的(たとえば、1日1回。)に内部全体を撹拌する。
【0029】
ここで、熟成期間は、短くてもよいが、長く(たとえば、6ヶ月程度。)なればなるほど熟成が進み、醤油かどがとれて辛味と甘味がバランス良く溶け込んだ旨味のある調味料となる。
【0030】
従来はこのままでいわゆる「三升漬」として料理に使用していたが、このままでは麹による甘味の効いた風味が、かえって唐辛子の辛味の効いた風味が溶け込んだ醤油成分の風味を凌駕してしまい、特に醤油を多用する和食には存在感の薄い調味料となってしまう。
【0031】
そこで、本発明では、所定期間熟成させた後に、不織布で濾過し、液体分の多い濾液と固体分の多い残留物とに分離することにした。この濾過には、種々の方法が用いられるが、ここでは、常温常圧下で一晩放置して行った。
【0032】
このように、いわゆる「三升漬」を熟成後に濾過することによって不織布上の残留物を除去し、濾液を主成分とする調味料を生成した。
【0033】
この調味料は、いわゆる「三升漬」における唐辛子の辛味の効いた風味が溶け込んだ醤油成分の風味を強調することができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができた。
【0034】
この調味料は、和食、洋食、中華などの幅広い料理に使用することができるが、特に醤油味が好まれる和食に好適な調味料として使用することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態を模式的に示した図であり、この図に沿って説明していく。
【0036】
第1の実施形態において説明したと同様に、まず、唐辛子として完熟前に採取した青唐辛子を使用し、所定量の青唐辛子を水洗いし、表皮部分の水分を完全に除去した後に、2mm角程度の大きさに破砕しておき、また、麹としては、米麹を使用し、所定量の麹を用意しておく。
【0037】
なお、唐辛子を破砕したときに生じる液状のエキスは、破砕した唐辛子とともに後述するように醤油に漬け込んでもよく、また、冷凍して保存しておき、最終的に生成される調味料(後述する残留物)の使用前或いは出荷前に解凍して添加してもよい。このように、調味料に唐辛子のエキスを添加することにより、長期間の熟成によって失われた辛味の効いた風味を再び添加することができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0038】
次に、容器の中に所定量の醤油を入れ、さらに、予め用意しておいた破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、その後、唐辛子と麹とを醤油に漬け込んだ容器を密封し、所定期間常温下で放置して、熟成させる。なお、熟成中は、定期的(たとえば、1日1回。)に内部全体を撹拌する。ここで、唐辛子、麹、醤油は、1:1:1の重量比としている。この比率は、これに限られたものではなく、好みに応じて変更してもよく、たとえば、辛味を強くしたい場合には唐辛子の量を増やし、甘味を強くしたい場合には麹の量を増やしてもよい。また、熟成期間は、短くてもよいが、長く(たとえば、6ヶ月程度。)なればなるほど熟成が進み、醤油かどがとれて辛味と甘味がバランス良く溶け込んだ旨味のある調味料となる。
【0039】
従来はこのままでいわゆる「三升漬」として料理に使用していたが、このままでは液体状の醤油成分の風味が強く現れるため、特に生野菜に付けて使用する場合には存在感の薄い調味料となってしまう。
【0040】
そこで、本発明では、所定期間熟成させた後に、不織布で濾過し、液体分の多い濾液と固体分の多い残留物とに分離することにした。この濾過には、種々の方法が用いられるが、ここでは、常温常圧下で一晩放置して行った。
【0041】
このように、いわゆる「三升漬」を熟成後に濾過することによって濾液を除去し、不織布上の残留物を主成分とする調味料を生成した。
【0042】
この調味料は、唐辛子の辛味の効いた風味が麹の甘味の効いた風味にほどよく溶け込んだ湿った粒状の風味の調味料とすることができ、唐辛子による辛味の効いた風味を残しつつも、麹による甘味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができた。
【0043】
この調味料は、和食、洋食、中華などの幅広い料理に使用することができるが、特にきゅうりやにんじんといった生野菜などの固形状の食材に好適な調味料として使用することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態を模式的に示した図であり、この図に沿って説明していく。
【0045】
第1及び第2の実施形態において説明したと同様に、まず、唐辛子として完熟前に採取した青唐辛子を使用し、所定量の青唐辛子を水洗いし、表皮部分の水分を完全に除去した後に、2mm角程度の大きさに破砕しておき、また、麹としては、米麹を使用し、所定量の麹を用意しておく。
【0046】
なお、唐辛子を破砕したときに生じる液状のエキスは、破砕した唐辛子とともに後述するように醤油に漬け込んでもよく、また、冷凍して保存しておき、最終的に生成される調味料の使用前或いは出荷前に解凍して添加してもよい。このように、調味料に唐辛子のエキスを添加することにより、長期間の熟成によって失われた辛味の効いた風味を再び添加することができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0047】
次に、容器の中に所定量の醤油を入れ、さらに、予め用意しておいた破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、その後、唐辛子と麹とを醤油に漬け込んだ容器を密封し、所定期間常温下で放置して、熟成させる。なお、熟成中は、定期的(たとえば、1日1回。)に内部全体を撹拌する。ここで、唐辛子、麹、醤油は、1:1:1の重量比としている。この比率は、これに限られたものではなく、好みに応じて変更してもよく、たとえば、辛味を強くしたい場合には唐辛子の量を増やし、甘味を強くしたい場合には麹の量を増やしてもよい。また、熟成期間は、短くてもよいが、長く(たとえば、6ヶ月程度。)なればなるほど熟成が進み、醤油かどがとれて辛味と甘味がバランス良く溶け込んだ旨味のある調味料となる。
【0048】
従来はこのままでいわゆる「三升漬」として料理に使用していたが、熟成させることによってかえって麹による甘味の効いた風味が唐辛子の辛味の効いた風味が溶け込んだ醤油成分の風味を凌駕してしまい、辛味が薄らいだ風味となって存在感の薄い調味料となってしまう。
【0049】
そこで、本発明では、最終的に生成された調味料の熟成後の使用前或いは出荷前に唐辛子のエキスを添加することにした。
【0050】
すなわち、青唐辛子をミキサーを用いて破砕し、液状の唐辛子のエキスだけを分離し、このエキスを最終的に生成された調味料の熟成後の使用前或いは出荷前に添加することにした。なお、添加するエキスは、予め冷凍保存しておいてもよく、また、添加直前に生成してもよい。
【0051】
このように、調味料に唐辛子のエキスを添加することにより、長期間の熟成によって失われた辛味の効いた風味を再び添加することができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができる。
【0052】
これにより、いわゆる「三升漬」を熟成後に冷凍保存した唐辛子のエキスを添加した調味料を生成した。
【0053】
この調味料は、いわゆる「三升漬」における唐辛子の辛味の効いた風味を強調することができ、麹による甘味の効いた風味を残しつつも、唐辛子による辛味の効いた風味が強調された存在感のある調味料とすることができた。
【0054】
この調味料は、和食、洋食、中華などの幅広い料理に使用することができるが、特に香辛料が好まれる食材に好適な調味料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1の実施形態に係る調味料の製造方法を示す説明図。
【図2】第2の実施形態に係る調味料の製造方法を示す説明図。
【図3】第3の実施形態に係る調味料の製造方法を示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、
熟成後に濾過することによって抽出した濾液を主成分とする調味料。
【請求項2】
破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、
熟成後に濾過することによって分離した残留物を主成分とする調味料。
【請求項3】
破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料において、
唐辛子のエキスを添加したことを特徴とする調味料。
【請求項4】
破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、
熟成後に濾過することによって分離した残留物を除去することを特徴とする調味料の製造方法。
【請求項5】
破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、
熟成後に濾過することによって抽出した濾液を除去することを特徴とする調味料の製造方法。
【請求項6】
破砕した唐辛子と麹とを醤油に漬け込み、熟成させることによって生成する調味料の製造方法において、
唐辛子のエキスを添加することを特徴とする調味料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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