説明

調湿性能測定装置における温湿度調整方法及び装置

【課題】 調湿建材の調湿性能試験を効率よく且つ正確に行える調湿性能測定装置における温湿度調整手段を提供する。
【解決手段】 恒温恒湿槽1内に調温建材の試料Fの調湿性能試験を行う調温調湿室2を設けてこの調温調湿室2内の温湿度を測定すると共に、その測定値と調湿試験を行う目標とする設定温湿度とを一定時間毎に中央処理装置の比較演算回路9によって比較演算して調温調湿室2内の温湿度が上記設定温湿度となるように、恒温恒湿槽1内に供給する雰囲気の温湿度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JIS A 1470-1に準拠して調湿建材の性能を測定する調湿性能測定装置において、その調湿測定室内を効率よく設定温度、設定湿度に調整することができる温湿度調整方法と、その方法を実施するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の内装材等として調湿建材を採用することにより、室内空間の相対湿度の変動を緩和することが行われている。このような調湿建材の調湿性能を測定する方法としては、JIS A 1470-1(非特許文献1)に記載の方法が一般的に使用されている。この方法は、一定の温度及び湿度環境に調整された恒温恒湿槽内で、調湿建材の試料の質量を経時的に測定する方法であって、この方法を実施するための装置としては、内部に風防によって囲まれた調湿測定室を設けている恒温恒湿槽と、該調湿測定室内に設置されて測定用の試料を載置させる電子天秤と、電子天秤に載置される試料から50mm上方の調湿測定室内の温度と湿度をそれぞれ検出する温度センサーと湿度センサーと、試料表面の湿気伝達抵抗を一定に保つために試料表面に一定の風速を与える槽内かくはん用ファンと、恒温恒湿槽内を加温、加湿、冷却する温湿度調節手段と、恒温恒湿槽内の温度と湿度をそれぞれ検出する温度センサーと湿度センサーとを備えている。
【0003】
このように構成した調湿性能測定装置は、調湿測定室内を調湿性能試験を行う際の目標とする温度と湿度に設定してこの設定温度と設定湿度下で試料の調湿測定を行うものであるが、調湿測定室は上述したように、恒温恒湿槽のファンによる風の影響を避けるために恒温恒湿槽に対して風防により仕切られているので、加温器や加湿器、冷却器からなる温湿度調節手段によって調温,調湿される恒温恒湿槽内の温度と湿度の測定値と、調湿測定室内の温度と湿度の測定値とは異なった値を示すことになる。
【0004】
加熱器や加湿器の能力を制御することにより恒温恒湿槽内の温度と湿度とを設定温度と湿度とに調整する方法としては、例えば、特許文献1に記載されている手段が知られており、このような制御方法によって上記調湿性能測定装置における恒温恒湿槽内の温度と湿度を容易に自動調整することが可能であるが、風防によって仕切られた調湿測定室内の温度と湿度とを設定温度と設定湿度となるように自動調整することが困難であり、このため、温度センサーと湿度センサーとによって検出される調湿測定室内の温度と湿度との値をモニター等に表示し、この検出値に基づいて恒温恒湿槽内を加温、加湿、冷却する温湿度調節手段を手操作によって制御し、この制御操作を一定時間毎に行って調湿測定室内の温度と湿度とが設定温度と設定湿度となるように調整しているのが現状である。
【0005】
【非特許文献1】JIS A 1470−1(湿度応答法)
【特許文献1】特開平7−218421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような調湿測定室内の温湿度調整方法によれば、調湿測定室内の温湿度の検出値が設定温度と設定湿度に近づくように温湿度調節手段を人為的に制御して恒温恒湿槽内の温湿度を変更し、その変更した温度と湿度とによって変化する調湿測定室内の温湿度を一定時間後に検出してその値が設定温度と設定湿度に近づくように温湿度調節手段を再び人為的に制御して恒温恒湿槽内の温湿度を変更し、この操作を繰り返し行うことにより、調湿測定室内を設定温度、設定湿度に調節しているため、その温湿度の変更範囲の設定が煩雑となって上下に大きくぶれる虞れがあり、細かい設定変更ができなくて調湿建材の試料の調湿測定に著しい手間と労力を必要とするといった問題点がある。特に調湿性能試験の開始時及び設定湿度の変更時には、上記恒温恒湿槽内の温湿度の調整が難しくて調湿測定を行う上において大きな難点となっている。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、調湿建材の試料の調湿性能試験を行う恒温恒湿槽内に設けられた調湿測定室内の温度と湿度とを短時間で自動的に所定の設定温度と設定湿度とに調整することができる調湿性能測定装置における温湿度調整方法とその温湿度調整装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、恒温恒湿槽内で調湿建材の調湿性能試験を行う際の温湿度調整方法であって、加温、冷却、加湿を行う温湿度調整手段によって内部を調温、調湿される恒温恒湿槽内の温湿度とこの恒温恒湿槽内に設けている風防によって囲まれた調湿測定室内の温湿度とを測定し、この調湿測定室内の温湿度を中央処理装置に入力してこの温湿度と、予め、中央処理装置に入力している調湿性能試験を行う際の目標とする設定温湿度とを一定時間毎に中央処理装置の比較演算回路により比較演算して調湿測定室内の温湿度が上記設定温湿度になるように制御装置により上記温湿度調整手段から恒温恒湿槽内に供給する雰囲気の温湿度を変更させて上記恒温恒湿槽内の温湿度を調整することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の調湿性能測定装置における温湿度調整方法において、調湿測定室内の測定温度と測定湿度との値が設定温度と設定湿度との値に対してそれぞれ一定の割合を越えた時に、その時の測定温度値と設定温度値との温度差の値と測定湿度値と設定湿度値との湿度差の値を恒温恒湿槽内の温度値と湿度値とからそれぞれ減じた温度値と湿度値となるように制御装置により温湿度調整手段を制御し、調湿測定室内の測定温度値と測定湿度値が設定温度値と設定湿度値に対してそれぞれ一定の割合以下となった時に、その時の設定温度値と測定温度値との温度差の値と設定湿度値と測定湿度値との湿度差の値を恒温恒湿槽内の温度値と湿度値にそれぞれ加算した温度値と湿度値となるように制御装置により温湿度調整手段を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記調湿性能測定装置における温湿度調整方法を実施するための装置であって、内部に風防によって囲まれた調湿測定室を設けている恒温恒湿槽と、調湿測定室内の換気量を一定に調整し且つ調湿測定室内の試料表面に一定の風速を与える換気装置と、調湿測定室内の温度と湿度を検出するセンサーを有する温湿度測定器と、風防外における恒温恒湿槽内の温度と湿度を検出するセンサーを有する温湿度測定器と、恒温恒湿槽内を加温、冷却、加湿する温湿度調整手段と、恒温恒湿槽内の空気を均一に攪拌するファンと、調湿測定室内の温湿度が調湿性能試験を行う際の目標とする設定温湿度となるように上記温湿度調整手段を制御する制御装置とを備えた調湿性能測定装置において、上記調湿性能試験を行う際の目標とする設定温湿度を入力させる中央処理装置を設け、この中央処理装置に上記調湿測定室の温湿度測定器と制御装置とを接続して中央処理装置の比較演算回路により上記設定温湿度値と調湿測定室内の温湿度測定値との差を一定時間毎に比較演算させると共に、調温調湿室内の温湿度が上記設定温湿度になるように上記制御装置により上記温湿度調整手段から恒温恒湿槽内に供給する雰囲気の温湿度を変更させて恒温恒湿槽内の温湿度を調整するように構成している。
【0011】
このように構成した調湿性能測定装置における温湿度調整装置において、請求項4に係る発明は、調湿測定室内に設置している調湿建材の試料の質量を量る電子天秤に一定時間毎に試料の質量値を検出する質量測定器を接続すると共に該質量測定器を中央処理装置のデータ記録装置に接続し、さらに、このデータ記録装置に比較演算回路を接続して上記質量値と共に調湿測定室内と恒温恒湿槽内との温湿度と設定温湿度を表示、及び一定時間毎に記録させるように構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加温、冷却、加湿を行う温湿度調整手段によって内部を調温、調湿される恒温恒湿槽内の温湿度とこの恒温恒湿槽内に設けている風防によって囲まれた調湿測定室内の温湿度とを測定し、この調湿測定室内の温湿度を中央処理装置に入力してこの温湿度と、予め、中央処理装置に入力している調湿性能試験を行う際の目標とする設定温湿度とを一定時間毎に中央処理装置の比較演算回路により比較演算して調湿測定室内の温湿度が上記設定温湿度になるように制御装置により上記温湿度調整手段からの温湿度を変更させて上記恒温恒湿槽内の温湿度を調整するように構成しているので、調湿建材の試料の調湿性能試験を行う恒温恒湿槽内に設けられた調湿測定室内の温度と湿度とを短時間で自動的に且つ正確に所定の設定温度と設定湿度となるように調整することができるものであり、その上、1〜5分間毎というように極めて短時間毎に温湿度調整手段からの温湿度を細かく設定変更を行うことが可能となって、調湿測定室内や恒温恒湿槽内の温度と湿度との検出値の上下のぶれも小さくなるばかりでなく、調湿測定室内を効率よく設定温度と設定湿度に設定することができる。
【0013】
従って、温度センサーと湿度センサーとによって検出される調湿測定室内の温度と湿度との値をモニター等に表示し、この検出値に基づいて恒温恒湿槽内を加温、加湿、冷却する温湿度調節手段を手操作によって制御する従来方法によれば、約10分毎の調整が限度であったが、本発明によれば1〜3分毎の調整が可能となり、特に、調湿性能に優れた調湿建材の調整性能をより正確に且つ効率よく測定することができ、優れた調湿建材の開発が可能となるものである。
【0014】
さらに、本発明によれば、上記調湿測定室内の測定温度と測定湿度とが上記設定温度と設定湿度とに対してそれぞれ一定の割合を越えた時、又は、一定の割合以下となった時に温湿度調整手段を作動させて調整するように構成しておくことによって、一層効率よく且つ正確に調湿測定室内を設定温湿度に調整することができる。
【0015】
また、請求項4に係る発明によれば、上記調湿測定室内に設置した調湿建材の試料の質量を量る電子天秤に一定時間毎に質量値を検出する質量測定器を接続すると共に該質量測定器を中央処理装置のデータ記録装置に接続し、さらに、このデータ記録装置に上記比較演算回路を接続して上記質量値と共に調湿測定室内と恒温恒湿槽内との温湿度、及び、設定温湿度を表示させるように構成しているので、目標に応じて設定した温湿度に基づいて調湿性能測定される試料の質量変化のデータや、短時間毎に入力される温湿度値の変化等のデータを上記設定温湿度と共に保存しておくことができると共にこれらのデータをグラフとして表示させることができ、調湿建材の調湿性能を一目で確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の具体的の実施の形態を図面に基づいて説明すると、図1は調湿性能測定装置における温湿度調整方法を実施するための温湿度調整装置の簡略図であって、この温湿度調整装置は、恒温恒湿槽1内に風防3によって該恒温恒湿槽1と仕切られている調湿測定室2を設けてあり、この調湿測定室2内の底部上に調湿建材の試料Fの質量を測定する電子天秤4を設置していると共に上記風防3の一側面と他側面に給気ファン5と排気ファン6を互いに対向させて設け、給気ファン5によって風防3外の恒温恒湿槽1内の空気を調湿測定室2内に取り込む一方、排気ファン6によって調湿測定室2内の空気を恒温恒湿槽1内に排出させて調湿測定室2内の換気量を一定に調整すると共に、上記電子天秤4がぶれないように試料F表面に該表面に沿って一定の風速を与えるようにしている。
【0017】
電子天秤4は恒温恒湿槽1外に設けた質量測定器7に接続されていると共にこの質量測定器7は中央処理装置(CPU)のデータ記録装置8に接続されていて、電子天秤4上の試料Fの質量値を上記質量測定器7によって一定の時間間隔毎に測定してその測定値をデータ記録装置8に記録させるように構成している。
【0018】
上記調湿測定室2を囲んでいる風防3外における恒温恒湿槽1内の適所には、該恒温恒湿槽1内の温度を検出するための温度センサーaと湿度を検出するための湿度センサーbとが配設されていて、これらの温度センサーaと湿度センサーbとは、それぞれの検出値を一定時間毎に測定する温度測定器Aと湿度測定器Bを介して上記中央処理装置(CPU)における比較演算回路9に接続している。一方、上記調湿測定室2内には、試料Fの表面から約50mmの間隔を存した上方に調湿測定室2内の温度を検出するための温度センサーcと湿度を検出するための湿度センサーdとが配設されていて、これらの温度センサーcと湿度センサーdとは、それぞれの検出値を一定時間毎に測定する温度測定器Cと湿度測定器Dを介して上記恒温恒湿槽1側の温湿度測定器A、Bと共に上記中央処理装置(CPU)における比較演算回路9に接続している。なお、上記温度センサーcと湿度センサーdは、試料の厚みや電子天秤4の高さに応じてその設置位置を上下に位置調整可能にしている。
【0019】
さらに、恒温恒湿槽1の一側にはこの恒温恒湿槽1と連通した調温調湿室10が一体に設けられてあり、この調温調湿室10に加温器11と加湿器12、及び冷却器13とからなる温湿度調整手段14が配設されていてこの温湿度調整手段14により調温調湿室10内の温度と湿度を所望の温度に変更、設定可能にし、その温度と湿度を有する雰囲気を恒温恒湿槽1の一側面に設けられている恒温恒湿槽内の空気を均一に攪拌するファン15等によって恒温恒湿槽1内に送り込むように構成している。
【0020】
上記温湿度調整手段14を構成している加温器11と加湿器12、及び冷却器13は制御装置16によって恒温恒湿槽1内に供給する雰囲気の温湿度を所定の温湿度となるように調整、制御される。この制御装置16は上記中央処理装置(CPU)における比較演算回路9に接続されていて、この比較演算回路9から出力される温度と湿度の演算値に基づいて上記温湿度調整手段14を制御するように構成している。
【0021】
また、中央処理装置(CPU)における上記データ記録装置8はモニター等の表示装置17に接続している。
【0022】
このように構成した調湿性能測定装置によって、調温建材の調湿性能を測定するには、まず、一定厚みを有する矩形板状の木質繊維板等からなる調湿建材の試料Fを作成し、この試料Fの四方周面と裏面とをアルミテープの貼着によって断湿処理したのち、所定の温度と湿度条件でもって養生し、この養生した試料Fを養生時の温度及び湿度と同一温度、同一湿度の雰囲気に調整されている調温調湿室2内の電子天秤4上に断湿されていない表面を上向きにして載置し、この時の質量測定器7により測定される試料Fの質量を0gとしておく一方、調湿性能を試験する際の目標とする設定温度と設定湿度とを中央処理装置(CPU)の比較演算回路9に入力する。
【0023】
この調湿性能試験は、JIS A 1470-1(湿度応答法)に基づいて行われ、上記養生を行う場合の湿度条件は低湿域で33%、中湿域で53%、高湿域で75%であって、吸湿過程の試験では例えば、中湿域で75%の湿度設定となっている。そして、調湿測定室2内を上記養生時の温度(設定温度)とこの設定湿度となるように上記恒温恒湿槽1内の温湿度を調整しながら、試料Fが養生時の湿度53%から吸湿によって変化する一定時間毎の質量を測定してその質量の増加割合の大小によって調湿性能の良否を判定するものである。
【0024】
この際、温度センサーaと湿度センサーbによって検出される恒温恒湿槽1内の温度と湿度、及び、温度センサーcと湿度センサーdによって検出される調湿測定室2内の温度と湿度は、温度測定器A、Cと湿度測定器B、D、とによってそれぞれ一定時間毎、例えば、1分毎に測定されてそれぞれの温湿度のデータ値を中央処理装置(CPU)の比較演算回路9に入力する一方、これらの温湿度の測定データ値と設定温湿度の値とを比較演算回路9によって比較し、調湿測定室2内の温湿度が上記設定温湿度になるように、恒温恒湿槽1内を調温、調湿する温湿度調整手段14からの温湿度を演算してその値を制御装置16に入力し、温湿度調整手段14をその温湿度値に調整して作動させる。
【0025】
この場合、比較演算回路9からの上記演算された温湿度値の出力信号は、常に数分毎に制御装置16に入力されるが、温度センサーcと湿度センサーdとによって検出される調湿測定室2内の温度と湿度が上記設定温度と設定湿度に対して一定の割合、例えば、JIS A1470-1に規定された温度が±0.5 ℃、湿度が±3%内であれば、温湿度調整手段14からの温湿度の制御値を変更することなく前の制御値による温湿度でもって恒温恒湿槽1内の調温、調湿を行い、上記値を越えた時と値以下になった時に、比較演算回路9によって温湿度調整手段14の温湿度の制御値を変更して恒温恒湿槽1内がその変更した温湿度となるように調整する。この場合、特に、上記一定の割合を、温度を±0.5 ℃未満且つ湿度を3%未満、好ましくは温度を±0.2 〜0.3 ℃程度且つ湿度を±0.5 〜1.5 %程度にしておくことで、JIS A 1470-1に定められた温度が±0.5 ℃以内且つ湿度が±3.0 %以内の環境条件で調湿測定室2内を制御できるだけでなく、頻繁に温湿度調整手段14が作動することが無いので上下のぶれが少なくなり、非常に安定した測定が可能である。
【0026】
具体的には、温度センサーcと湿度センサーdとによって検出される調湿測定室内の測定温湿度が上記設定温湿度に対してそれぞれ上記一定の割合を越えた時に、比較演算回路9によってその時の調湿測定室2内の測定温湿度と上記設定温湿度との温度差と湿度差の値を演算すると共に、温度センサーcと湿度センサーdとによって検出される恒温恒湿槽1内の温度値と湿度値とからこれらの温度差の値と湿度差の値をそれぞれ減じた温度値と湿度値を演算し、これらの温度値と湿度値の信号を制御装置16に入力して制御装置16により加温器11と加湿器12及び冷却器13とからなる温湿度調整手段14をその温湿度となるように制御、調整する。
【0027】
また、温度センサーcと湿度センサーdとによって検出される調湿測定室内の測定温湿度が上記設定温湿度に対してそれぞれ上記一定の割合以下の時には、比較演算回路9によって設定温湿度とその時の調湿測定室2内の測定温湿度との温度差と湿度差の値を演算すると共に、その時の温度センサーcと湿度センサーdとによって検出される恒温恒湿槽1内の温度値と湿度値にこれらの温度差の値と湿度差の値をそれぞれ加算した温度値と湿度値を演算し、これらの温度値と湿度値の信号を制御装置16に入力して制御装置16により加温器11と加湿器12及び冷却器13とからなる温湿度調整手段14をその温湿度となるように制御、調整する。
【0028】
こうして、自動的に制御、調整される調湿測定室2内の温湿度下で、電子天秤4上に載置した試料Fの質量を一定時間、例えば、10分間隔毎に質量測定器7によって測定し、その測定値を中央処理装置(CPU)のデータ記録装置8に入力して記録、保持させる。このデータ記録装置8には、比較演算回路9から上記設定温度、設定湿度、及び、一定時間毎に測定される恒温恒湿槽1内と調湿測定室2内の温湿度、比較演算回路9によって演算処理された温湿度値も入力されて記録、保持され、表示装置17にこれらの記録データを表示させると共に印刷を可能にしている。
【0029】
(実施例1)
次に、調湿建材として採用されている調湿機能を有する火山性ガラス質複層板(大建工業株式会社製、商品名さらりあ)の調湿性能を上記調湿性能測定装置を用いて測定する場合の温度及び湿度の具体的な制御調整方法を説明する。この方法は、JIS A 1470-1(湿度応答法)に準拠し、中湿域での調湿性能を測定した。まず、上記調湿建材を250mm 角の大きさに切断して試料Fを作成し、この試料Fの四方端面と裏面をアルミテープで被覆して断湿処理したのち、この試料Fを温度23℃、湿度53%の条件で48時間養生した。さらに、この養生した試料Fを上記調湿性能測定装置における給気ファン5と排気ファン6によって表面気流を校正設定している調湿測定室2内の電子天秤4上に載置し、この状態で上記温度23℃、湿度53%の条件で24時間保持した。
【0030】
保持後に質量測定器7によって測定される試験開始時の上記試料Fの質量を0gに設定すると共に中央処理装置(CPU)の比較演算回路9に目標とする設定温度23℃、設定湿度75%を入力し、しかるのち、試験を開始してまず、加熱器11、加湿器12、冷却器13からなる温湿度調整手段14をこの設定温度と設定湿度とに等しい温度と湿度でもって作動させて恒温恒湿槽1内の雰囲気をこれらの温度と湿度に調整し、この雰囲気を給気ファン5によって調湿測定室2内に取り込み、排気ファン6によって恒温恒湿槽1内に排気することにより、調湿測定室2内の温湿度を調整する。
【0031】
恒温恒湿槽1内と調湿測定室2内の温湿度をそれぞれ検出するセンサーa〜dを備えた温度測定器A、Cと湿度測定器B、Dによる測定は1分毎に行われて比較演算回路9に入力され、質量測定器7による試料Fの質量の測定は10分毎に行われて中央処理装置(CPU)の記録装置に入力されるように設定されている。さらに、温度センサーcと湿度センサーdによって検出される調湿測定室2内の温度値と湿度値が、上記設定温度23℃、設定湿度75%よりもそれぞれ+0.3 ℃、+0.5 %以上高くなると、その時の調湿測定室2内の測定温度値と設定温度値との温度差の値と測定湿度値と設定湿度値との湿度差の値を、恒温恒湿槽1内の温度値と湿度値とからそれぞれ減じた温度値と湿度値となるように比較演算回路9によって演算処理し、これらの温度値と湿度値との信号を制御装置16に5分毎に入力して温湿度調整手段14を制御するように構成している。
【0032】
同様に、温度センサーcと湿度センサーdによって検出される調湿測定室2内の温度値と湿度値とが、上記設定温度23℃、設定湿度75%よりもそれぞれ0.3 ℃、0.5 %以上低くなった時に、上記設定温度値とその時の調湿測定室2内の測定温度値との温度差の値と上記設定湿度値とその時の調湿測定室2内の測定湿度値との湿度差の値を、恒温恒湿槽1内の温度値と湿度値にそれぞれ加算した温度値と湿度値となるように比較演算回路9によって演算処理し、これらの温度値と湿度値との信号を制御装置16に5分毎に入力して温湿度調整手段14を制御するように構成している。従って、調湿測定室2内の温度値と設定温度値との差が±0.3 ℃以内で、且つ、調湿測定室2内の湿度値と設定湿度値との差が±0.5%以内の場合には温湿度調整手段14による恒温恒湿槽1内の温湿度の変更は行われない。
【0033】
このような設定条件によって上記試料Fの調湿測定を行った結果、測定を開始して5分後の温度測定器Cによる調湿測定室2内の測定温度が23.2℃、湿度測定器Dによる調湿測定室2内の測定湿度が69.6%であった。この場合には測定温度が設定温度よりも0.2 ℃だけ高いが±0.3 ℃の範囲内であるので変更されることはないが、測定湿度が設定湿度より5.4 %低いので、この値を設定湿度75%に加えて湿度測定器Bにより測定される恒温恒湿槽1内の湿度が80.4%となるように比較演算回路9から制御装置16に信号が送られ、温湿度調整手段14による恒温恒湿槽1内の湿度がその値となるように制御、調整する。
【0034】
次いで、測定を開始して10分後の温度測定器Cによる調湿測定室2内の測定温度が23.1℃、湿度測定器Dによる調湿測定室2内の測定湿度が75.6%であったので、上記同様に湿度だけ79.8%に調整、変更され、15分後の調湿測定室2内の測定温度が23.0℃、測定湿度が74%であったので、湿度だけ80.8%に調整、変更される。以下同様にして5分毎に恒温恒湿槽1内の温度と湿度とを調整して調湿測定室2内の温度と湿度とを設定温度と設定湿度に短時間で近づけ、その温度と湿度とを長時間に亘って略一定に保持しながら試料Fの調湿試験が行われた。その実験結果によって得られた調湿性能曲線を図2に示す。
【0035】
この図2から明らかなように、試験開始後、略15分間で調湿測定室2内の湿度を設定湿度の近傍部にまで調整することができ、その後、試験が終了する480 分間に亘って設定湿度と同じ湿度又は極めて近い湿度を保持しながら調湿測定試験が行われている。
【0036】
(実施例2)
厚さが12mmの石膏ボードの表面にビニルクロスを貼着してなる壁材について、上記実施例1と同様に、JIS A 1470-1(湿度応答法)に準拠して中湿域での調湿性能を測定した。まず、上記表面にビニルクロスを貼着している石膏ボードを250mm 角の大きさに切断して試料Fを作成し、この試料Fの四方端面と裏面をアルミテープで被覆して断湿処理したのち、温度23℃、湿度53%の条件で48時間養生した。さらに、この養生した試料Fを上記調湿性能測定装置における給気ファン5と排気ファン6によって表面気流を校正設定している調湿測定室2内の電子天秤4上に載置し、この状態で上記温度23℃、湿度53%の条件で24時間保持した。
【0037】
保持後に質量測定器7によって測定される試験開始時の上記試料Fの質量を0gに設定すると共に中央処理装置(CPU)の比較演算回路9に目標とする設定温度23℃、設定湿度75%を入力すると共に恒温恒湿槽1内と調湿測定室2内との温湿度の測定時間や、恒温恒湿槽1内の温湿度制御変更等の制御方法を上記実施例1と同じ条件でもって試料Fの調湿測定を行った。
【0038】
測定を開始して5分後の温度測定器Cによる調湿測定室2内の測定温度が22.9℃、湿度測定器Dによる調湿測定室2内の測定湿度が74.7%であった。この場合には測定温度と設定温度との差が±0.3 ℃の範囲内であり、測定湿度と設定湿度との差が±0.5 %の範囲内であるので、いずれも設定変更変更されることはない。次いで、測定を開始して10分後の温度測定器Cによる調湿測定室2内の測定温度が22.9℃、湿度測定器Dによる調湿測定室2内の測定湿度が74.7%であり、15分後の調湿測定室2内の測定温度が22.8℃、湿度測定器Dによる調湿測定室2内の測定湿度が75.0%であったので、上記同様に設定変更されることはない。
【0039】
さらに、測定を開始して20分後の調湿測定室2内の測定温度が22.7℃、測定湿度が74.9%であったので、恒温恒湿槽1内の温度のみが23.0℃から23.3℃に設定変更され、測定を開始して25分後の調湿測定室2内の測定温度が22.9℃、測定湿度が77.0%であったので、恒温恒湿槽1内の湿度のみが79.7%から77.7%に設定変更される。以下同様にして5分毎に恒温恒湿槽1内の温度と湿度とを調整して調湿測定室2内の温度と湿度とを設定温度と設定湿度に短時間で近づけ、その温度と湿度とを長時間に亘って略一定に保持しながら試料Fの調湿試験が行われた。その実験結果によって得られた調湿性能曲線を図3に示す。
【0040】
この図3から明らかなように、試験開始後、略15分間で調湿測定室2内の湿度を設定湿度の近傍部にまで調整することができ、その後、試験が終了する480 分間に亘って設定湿度と同じ湿度又は極めて近い湿度を保持しながら調湿測定試験が行われている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】温湿度調整装置の簡略図。
【図2】調湿建材の吸湿実験結果を示す調湿性能曲線図。
【図3】別な調湿建材の吸湿実験結果を示す調湿性能曲線図。
【符号の説明】
【0042】
1 恒温恒湿槽
2 調湿測定室
3 風防
4 電子天秤
5 給気ファン
6 排気ファン
7 質量測定器
8 データ記録装置
9 比較演算回路
14 温湿度調整手段
16 制御装置
A.C 温度測定器
B、D 湿度測定器
F 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温恒湿槽内で調湿建材の調湿性能試験を行う際の温湿度調整方法であって、加温、冷却、加湿を行う温湿度調整手段によって内部を調温、調湿される恒温恒湿槽内の温湿度とこの恒温恒湿槽内に設けている風防によって囲まれた調湿測定室内の温湿度とを測定し、この調湿測定室内の温湿度を中央処理装置に入力してこの温湿度と、予め、中央処理装置に入力している調湿性能試験を行う際の目標とする設定温湿度とを一定時間毎に中央処理装置の比較演算回路により比較演算して調湿測定室内の温湿度が上記設定温湿度になるように制御装置により上記温湿度調整手段から恒温恒湿槽内に供給する雰囲気の温湿度を変更させて上記恒温恒湿槽内の温湿度を調整することを特徴とする調湿性能測定装置における温湿度調整方法。
【請求項2】
調湿測定室内の測定温度と測定湿度との値が設定温度と設定湿度との値に対してそれぞれ一定の割合を越えた時に、その時の測定温度値と設定温度値との温度差の値と測定湿度値と設定湿度値との湿度差の値を恒温恒湿槽内の温度値と湿度値とからそれぞれ減じた温度値と湿度値となるように制御装置により温湿度調整手段を制御し、調湿測定室内の測定温度値と測定湿度値が設定温度値と設定湿度値に対してそれぞれ一定の割合以下となった時に、その時の設定温度値と測定温度値との温度差の値と設定湿度値と測定湿度値との湿度差の値を恒温恒湿槽内の温度値と湿度値にそれぞれ加算した温度値と湿度値となるように制御装置により温湿度調整手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の調湿性能測定装置における温湿度調整方法。
【請求項3】
内部に風防によって囲まれた調湿測定室を設けている恒温恒湿槽と、調湿測定室内の換気量を一定に調整し且つ調湿測定室内の試料表面に一定の風速を与える換気装置と、調湿測定室内の温度と湿度を検出するセンサーを有する温湿度測定器と、風防外における恒温恒湿槽内の温度と湿度を検出するセンサーを有する温湿度測定器と、恒温恒湿槽内を加温、冷却、加湿する温湿度調整手段と、恒温恒湿槽内の空気を均一に攪拌するファンと、調湿測定室内の温湿度が調湿性能試験を行う際の目標とする設定温湿度となるように上記温湿度調整手段を制御する制御装置とを備えた調湿性能測定装置において、上記調湿性能試験を行う際の目標とする設定温湿度を入力させる中央処理装置を設け、この中央処理装置に上記調湿測定室の温湿度測定器と制御装置とを接続して中央処理装置の比較演算回路により上記設定温湿度値と調湿測定室内の温湿度測定値との差を一定時間毎に比較演算させると共に、調湿測定室内の温湿度が上記設定温湿度になるように上記制御装置により上記温湿度調整手段から恒温恒湿槽内に供給する雰囲気の温湿度を変更させて恒温恒湿槽内の温湿度を調整するように構成したことを特徴とする調湿性能測定装置における温湿度調整装置。
【請求項4】
調湿測定室内に設置している調湿建材の試料の質量を量る電子天秤に一定時間毎に試料の質量値を検出する質量測定器を接続すると共に該質量測定器を中央処理装置のデータ記録装置に接続し、さらに、このデータ記録装置に比較演算回路を接続して上記質量値と共に調湿測定室内と恒温恒湿槽内との温湿度と設定温湿度を表示、及び一定時間毎に記録させるように構成していることを特徴とする請求項3に記載の調湿性能測定装置における温湿度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−92446(P2009−92446A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261591(P2007−261591)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】