説明

調理時オイルミストの捕集状況検出装置及び調理時オイルミストの捕集状況検出方法

【課題】 調理時に発生するオイルミストの捕集状況を検出する。
【解決手段】 調理排気(調理時オイルミスト)25を的確に模擬したトレーサオイルミストをミスト発生装置1で発生させ、レンジフード22を流通したトレーサオイルミストを分析機器31で評価して捕集効率を評価し、トレーサオイルミスト捕集効率により調理排気(調理時オイルミスト)25の捕集効率(捕集状況)を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理時に発生するオイルミストの捕集状況を検出する調理時オイルミストの捕集状況検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調理は特殊な場合を除いて厨房内で行われ、調理排気のオイルミストを捕集する排気システムが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。調理器具としては、ガス調理器やIH調理器による加熱調理が広く実施されている。調理排気を吸引する排気フードに関し、ガス加熱器を用いた場合、吸引するオイルミストに加えて燃焼に用いた空気を吸引して屋外に排出する必要がある。一方、IH調理器を用いた場合、加熱に燃焼を伴わないため、排気フードでは、発生したオイルミストだけを捕集するのに十分な面風速があればよい。
【0003】
このようなことから、調理排気(調理時オイルミスト)の捕集効率を検証・評価することにより、調理器具の違いによる最適な面風速を選択して効率の良い排気システムを構築することができる。調理排気(調理時オイルミスト)の捕集効率を検証・評価するため、硫黄成分や二酸化炭素等を含むトレーサガスを用いた模擬試験が行われている。
【0004】
しかし、調理に伴い発生する調理時オイルミストは粒径が様々であり、極小粒径のミストはトレーサガスにある程度相関した挙動を得ることができると考えられるが、数μm以上のミストはガスと一緒に搬送されるとは限らず、トレーサガスの挙動に相関させることは不可能であり、捕集効率を検証・評価することができないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−91223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、調理排気(調理時オイルミスト)を的確に模擬したトレーサオイルミストにより調理時オイルミストの捕集状況を検出することができる調理時オイルミストの捕集状況検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出装置は、調理用食材及び調理用オイルと異なるオイルが貯留される貯留槽と、前記貯留槽に気体を供給して前記貯留槽の内部の前記オイルの中に気泡を発生させる気泡発生手段と、前記貯留槽の内部に発生した気泡に基づいたオイルミスト雰囲気を排出するミスト排出手段と、前記ミスト排出手段から排出されるオイルミストをトレーサオイルミストとして調理中のレンジフードに流通させるオイルミスト流通手段と、前記レンジフードを流通した後のトレーサオイルミストの状況に基づいて調理時オイルミストの捕集状況を導出する捕集状況検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、気泡発生手段により貯留槽内のオイルに気泡を発生させて調理時オイルミストを模擬したオイルミストを生成し、生成されたオイルミストをトレーサオイルとして調理中のレンジフードに流通させ、レンジフードを流通した後のトレーサオイルミストの状況により、レンジフードで捕集される調理時オイルミストの状況を導出する。このため、調理排気(調理時オイルミスト)を的確に模擬したトレーサオイルミストにより調理時オイルミストの捕集状況を検出することが可能になる。
【0009】
そして、請求項2に係る本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出装置は、請求項1に記載の調理時オイルミストの捕集状況検出装置において、前記ミスト排出手段から排出されるミストの粒子径分布を制御する粒子径分布制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る本発明では、粒子径分布制御手段により、調理の種類に応じてミストの粒径分布を制御し、調理毎のオイルミストを模擬した粒子径分布のオイルミストを生成してトレーサオイルミストとすることができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出装置は、請求項2に記載の調理時オイルミストの捕集状況検出装置において、前記粒子径分布制御手段は、前記貯留槽の内部の前記流体の温度を制御する温度制御手段と、前記気泡発生手段により前記貯留槽に供給される前記気体の流量を制御する流量制御手段とを含み、前記温度制御手段及び前記流量制御手段を制御することで、前記ミスト排出手段から排出されるミストの粒子径分布を制御し、前記ミスト排出手段から排出されるオイルミストの粒子径分布を調理時に発生する調理時オイルミストの粒子径分布に相関させることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る本発明では、温度制御手段により貯留槽内部のオイル温度を所定の温度に制御すると共に、流量制御手段により気体の流量を制御して気泡の発生状態を制御し、調理時オイルミストの粒径分布を模擬した粒子径分布とされたオイルミストを生成してトレーサオイルミストとする。
【0013】
粒子径分布制御手段の態様としては、貯留槽の大きさや形状を変更したり、貯留槽の大きさに対する気泡の出口の状態(大きさ、場所等)を変更することが可能である。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の調理時オイルミストの捕集状況検出装置において、前記気泡発生手段は、気泡を発生させるための多孔部材を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、多孔部材を用いることで所望の大きさの気泡を発生させることができる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出装置は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の調理時オイルミストの捕集状況検出装置において、前記捕集状況検出手段は、前記レンジフードを流通した後の調理時オイルミスト及び前記トレーサオイルミストをサンプリングし、サンプリングしたミストから前記トレーサオイルミストを分析することで、前記レンジフードで捕集されるトレーサオイルミストの状況を検証し、検証状況に基づいて前記レンジフードで捕集される前記調理時オイルミストの状況を導出することを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、レンジフードを流通した後の調理時オイルミスト及びトレーサオイルミストをサンプリングして分析することで、レンジフードにおけるトレーサミストの捕集状況を検証し、調理時オイルミストを模擬したトレーサオイルミストの捕集状況により、レンジフードでの調理時オイルミストの捕集状況を導出する。
【0018】
上記目的を達成するための請求項6に係る本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出方法は、調理時に発生する調理時オイルミストを模擬したトレーサオイルミストを用い、調理中に前記トレーサオイルミストをレンジフードに流通させ、前記レンジフードを流通したオイルミストをサンプリングし、サンプリングした前記オイルミスト中の前記トレーサオイルミストを分析することで、前記調理時オイルミストの捕集状況を検出することを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る本発明では、調理排気のミスト(調理時オイルミスト)を的確に模擬したトレーサオイルミストにより調理時オイルミストの捕集状況を検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出装置及び方法は、調理排気(調理時オイルミスト)を的確に模擬したトレーサオイルミストにより調理時オイルミストの捕集状況を検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ミスト発生装置の全体を表す概略系統図である。
【図2】窒素吐出部位の詳細図である。
【図3】窒素吐出部位の他の例の説明図である。
【図4】トレーサオイルミストの粒子径分布を表すグラフである。
【図5】本発明の一実施例に係る調理時オイルミストの捕集状況検出装置の全体を表す概略系統図である。
【図6】調理排気及びトレーサオイルミストの粒子径分布を表すグラフである。
【図7】調理排気及びトレーサオイルミストの粒子径分布を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出装置におけるミスト発生装置は、オイルに(不活性ガス:例えば、窒素)を送り込み、オイルの中に気泡を発生させてミストを生成することで、調理排気を模擬したトレーサオイルミストを発生させる装置であり、気泡を発生させるための窒素の流量やオイルの加熱温度を制御することで、粒子径分布を所望状態に制御する装置である。また、多孔部材を介してオイルに窒素を送り込むことで、粒子径分布を制御する。オイルに送り込む流体は、不活性ガスに代えて空気を用いることも可能である。
【0023】
ミストを発生させるためのオイルは、調理用の食材や調理用オイル、環境中に含まれないオイル、または、環境中に極微量にしか含まれないオイルであり、また、調理用の食材や調理用オイルと物性が類似しているものが適用される。例えば、ヘプタデカン酸やノナデカン酸を適用することが望ましい。また、分子中の炭素や水素等を同位元素で置き換えたリノール酸、ステアリン酸等を適用することも可能である。また、脂肪酸に類似したオイル、例えば、脂肪酸エステル(ヘプタデカン酸エチル、へプタデカン酸プロピル等)を用いることも可能である。
【0024】
図1から図4に基づいてミスト発生装置を説明する。
【0025】
図1には本発明の一実施例に係る調理時オイルミストの捕集状況検出装置に適用されるミスト発生装置の全体を表す概略系統、図2には窒素吐出部位の詳細、図3には窒素吐出部位の他の例、図4にはトレーサオイルミストの粒子径分布を示してある。
【0026】
図1に示すように、ミスト発生装置1には、オイル(ヘプタデカン酸)2を貯留する貯留槽3が備えられている。貯留槽3の周囲には温度制御手段としてのヒータ4が設けられ、ヒータ4によりオイルが昇温される。また、貯留槽3のオイル2に気泡5を発生させる気泡発生手段6が備えられている。オイルの温度を高くすることにより、オイルの粘性を下げることができ、気泡の膜厚を薄くして弾けやすくすることができ、ミストを微小化することができる。
【0027】
オイルとしては、調理時に発生するオイルミストに類似した物理化学的特性を有し、実際の調理排気に含まれる成分の妨害を受けないものが適用される。このため、脂肪酸ないしそれに類似する成分のものが使用され、本実施例ではヘプタデカン酸が適用されている。
【0028】
気泡発生手段6には、気泡発生用のガス(不活性ガス:窒素)を供給するための窒素供給手段7が備えられている。窒素供給手段7と貯留槽3は供給管8で接続され、供給管8の先端が貯留槽3のオイル2の内部に臨んでいる。供給管8には乾燥部9及び流量制御手段10が備えられ、流量制御手段10により湿度が管理された窒素が所望の流量に制御されてオイル2の内部に供給される。
【0029】
気泡発生用のガスとして、窒素(不活性ガス)を用いたので、オイルが酸化されることがなく、オイルの色が変化することがない。気泡発生用のガスとしては、空気を用いることも可能である。空気を用いた場合、オイルの粘性を上げることができ、気泡の膜厚を厚くしてはじけ難くすることができる。また、空気を用いた場合、オイルの酸化が生じることがあるため、酸化したオイルに基づく調理排気の挙動を把握することができる。
【0030】
図1、図2に示すように、供給管8の先端(窒素吐出部)には多孔部材としての板フィルター11が取り付けられている。板フィルター11は、例えば、ガラス繊維の板状のフィルターであり、板面が貯留槽3の底面に沿って配置されるように供給管8の先端に取り付けられている。供給管8から送られた窒素は、板フィルター11で平面状に分散されて多数の微小の泡となり、微小の泡が会合して気泡5が形成される。
【0031】
貯留槽3の内部で気泡5を発生させることにより、気泡5がオイル2を浮上して貯留槽3のオイル2の気液界面に達する。気液界面に達した気泡5は膜厚が薄くなって弾け、弾けた際にミスト(オイルミスト)が飛散する。流量制御手段10で制御される窒素の流量、ヒータ4で制御されるオイル2の昇温状態、板フィルター11のメッシュで規制される気泡5の大きさや分散状況、オイル2の量等により、オイルミストの粒子径分布が任意の状態に制御される(粒子径分布制御手段)。また、貯留槽3の大きさや形状等によりオイルミストの粒子径分布が任意の状態に制御される。
【0032】
図3(a)に示すように、多孔部材を取り付けずに供給管8の先端をオイル2の内部に臨ませ、供給管8の径に応じた気泡5を発生させることも可能である。また、図3(b)に示すように、供給管8の先端口に供給管8の径と同径のフィルター12を取り付け、供給管8の先端口で小さな気泡5を多数発生させることも可能である。フィルターの形状は図示のものに限定されず、任意の形状のフィルターを適用することが可能である。
【0033】
図1に示すように、オイル2の上部の貯留槽3にはミスト排出手段としての排出管15が接続され、貯留槽3の上部に生成されたオイルミストが排出管15から排出される。排出管15の出口部には希釈管16が取り付けられ、希釈管16には測定機器17が接続されるようになっている。希釈管16の中に排出されたオイルミストは、測定機器17で、例えば、粒子径分布が測定される。
【0034】
上述したミスト発生装置1では、ヒータ4を所定の温度(例えば、180℃、200℃等)に制御して貯留槽3のオイル2を所定の温度に昇温し、流量制御手段10により所定の流量(例えば、1L/minから4L/min等)に制御して窒素をオイル2に送り込む。窒素が送り込まれたオイル2の内部に気泡5が発生し、気泡5がオイル2を浮上して気液界面で弾けてミスト(オイルミスト)が飛散する。生成されたオイルミスト18は排出管15から排出される。
【0035】
ヒータ4を所定の温度(例えば、180℃、200℃等)に制御してオイル2を昇温することにより、オイル2の粘性や表面張力が低下し、気液界面に到達する気泡5の膜厚を薄くすることができる。このため、気液界面で弾けて飛散するミストを微小化することができ、オイルミスト18の発生量を増加させることができる。
【0036】
排出管15から排出されるオイルミスト18は、例えば、調理中にレンジフードに流通させ、レンジフードを流通した調理排気と共にオイルミスト18がサンプリングされる。サンプリングされたミスト中のオイルミスト18を分析して検証することにより、レンジフードでのオイルミスト18の捕集効率を求めることができる。
【0037】
流量制御手段10で制御される窒素の流量、ヒータ4の加熱温度(オイルの昇温状態)、板フィルター11のメッシュで規制される気泡5の大きさや分散状況により、オイルミスト18の粒子径分布が任意の状態に制御されるので、調理排気の粒子分布に近似した粒子分布のオイルミスト18を生成することができる。
【0038】
希釈管16の中に排出されたオイルミスト18の粒子径分布を測定機器17で測定した結果の一例を図4に示す。
【0039】
図4に示すように、例えば、ヒータ4の加熱温度を180℃に制御し(180℃でオイルを昇温し)、流量制御手段10により窒素の流量を1L/min(○)、2L/min(△)、4L/min(□)に制御することで、極微細な径(nmレベル)の粒子と微細な径(数μmレベル)の粒子がピークを示す粒子径分布を有するオイルミストにすることができる。
【0040】
また、図4に示すように、例えば、ヒータ4の加熱温度を200℃に制御し(200℃でオイルを昇温し)、流量制御手段10により窒素の流量を2L/min(▲)、4L/min(■)に制御することで、同様に極微細な径(nmレベル)の粒子と微細な径(数μmレベル)の粒子がピークを示す粒子径分布を有するオイルミストにすることができる。
【0041】
図4に示すように、極微細な径(nmレベル)と微細な径(数μmレベル)の両方にピークを持つ二山の粒径分布を持たせたオイルミスト18とすることができる。
【0042】
このため、粒子径分布を実際の調理時の排気に合わせることで、オイルミスト18を調理排気(調理時オイルミスト)のトレーサオイルミストとして用いることができる。トレーサオイルミストを用いることで、レンジフードでの調理時オイルミストの捕集効率を導出(類推)することができる。
【0043】
上述したミスト発生装置1を用いた調理時オイルミストの捕集状況検出装置を説明する。
【0044】
本発明の調理時オイルミストの捕集状況検出装置は、上述したミスト発生装置1でオイルミストを発生させ、発生したオイルミストを調理排気のトレーサオイルミストとして用いたものである。即ち、調理排気を模擬した状態のオイルミストを発生させてトレーサオイルミストとし、調理排気と共にトレーサオイルミストをレンジフードに通し、レンジフードを通過したトレーサオイルミストを評価し、レンジフードでのトレーサオイルミストの捕集効率を求める。そして、トレーサオイルミストの捕集効率に基づいて実際の調理における調理排気のレンジフードでの捕集効率を導出(検出)する。
【0045】
このため、調理排気(調理時オイルミスト)を的確に模擬したトレーサオイルミストにより、レンジフードでの調理時オイルミストの捕集状況(捕集効率)を検出することが可能になる。調理に応じて調理時オイルミストの捕集効率を検出することで、調理器具(ガス加熱器、IH調理器等)に応じたレンジフードの能力の規格を設定することが可能になる。また、調理の種類に応じてレンジフードの能力を制御したり、指標として表示したりすることができる。
【0046】
図5には本発明の一実施例に係る調理時オイルミストの捕集状況検出装置の全体を表す概略系統、図6、図7には調理排気及びトレーサオイルミストの粒子径分布を示してある。
【0047】
調理器具(ガス加熱器、IH調理器等)21の上部にはレンジフード22が配され、レンジフード22にはダクト23が接続されている。ダクト23には図示しない駆動機構が接続され、駆動機構により調理排気がレンジフード22に吸引される。吸引速度は、例えば、4m/minとされる。
【0048】
レンジフード22の後流側のダクト23から分岐してサンプリングダクト26が備えられ、サンプリングダクト26には捕集状況検出制御手段としての分析機器31が設けられている。レンジフード22のレンジフィルター24を通過した調理時オイルミストを含むミストの一部(例えば、700L/min)がサンプリングダクト26を通してサンプリングされる。サンプリングされたミストの状況は、分析機器31で分析される。
【0049】
調理器具21の近傍にはミスト発生装置1が備えられている。ミスト発生装置1の排出管15から排出されるオイルミスト18がトレーサオイルミストとして調理排気25に混入され、レンジフード22ではトレーサオイルミストが混入した調理排気25(ミスト)が吸引される。
【0050】
オイルミスト18は、流量制御手段10で制御される窒素の流量、ヒータ4の加熱によるオイル2の温度、板フィルター11のメッシュで規制される気泡5の大きさや分散状況、オイル2の量、貯留槽3の形状等により、粒子径分布が調理排気25の粒子分布に近似した状態に制御されている。
【0051】
また、オイル2が調理用の食材や調理用オイル、環境中に含まれないオイル2であり、また、調理用の食材や調理用オイルと物性が類似しているオイル2であるので、オイルミスト18(トレーサオイルミスト)の挙動は調理排気25の挙動とほぼ同じであり、トレーサオイルミストと調理排気25を区別することができる。
【0052】
上述した調理時オイルミストの捕集状況検出装置では、調理の種類に応じた調理排気25を模擬したオイルミスト18をミスト発生装置1で発生させ、オイルミスト18をトレーサオイルミストとする。トレーサオイルミストを調理排気25に混入し、レンジフード22で吸引する。レンジフード22を流通した後の調理排気25及びトレーサオイルミストの一部がサンプリングダクト26を通してサンプリングされ、分析機器31でミストの状況が分析される。
【0053】
具体的には、分析機器31でトレーサオイルミストの量が検出されることで、レンジフード22で捕集されたトレーサオイルミストの量が評価される。これにより、レンジフード22でのトレーサオイルミストの捕集効率を求める(検証する)ことができる。レンジフード22でのトレーサオイルミストの捕集効率を検証することで、トレーサオイルミストの捕集効率に基づいて実際の調理における調理排気25のレンジフード22での捕集効率を導出(検出)する。
【0054】
このため、調理排気(調理時オイルミスト)25を的確に模擬したトレーサオイルミストにより、レンジフード22での調理時オイルミストの捕集状況(捕集効率)を検出することが可能になる。調理に応じて調理時オイルミストの捕集効率を検出することで、調理器具(ガス加熱器、IH調理器等)に応じたレンジフードの能力の規格を設定することが可能になる。また、調理の種類に応じてレンジフードの能力を制御したり、指標として表示したりすることができる。
【0055】
図6、図7に基づいて実際の調理における調理排気とトレーサオイルミストの粒子径分布の状況を説明する。
【0056】
図6に示した調理排気の粒子径分布は、IH調理器でハンバーグ焼きを行った際のものである。
【0057】
図に△印で示したように、実際にハンバーグ焼きを実施した際の調理排気の粒子径分布は、nmレベルの粒子が増減してピークを示すと共に、数μmレベルの粒子が増減してピークを示す粒子径分布となった。
【0058】
これに対し、110mLのオイル2を200℃で加熱して昇温し、流量制御手段10により窒素の流量を2L/minに制御(係数を乗じて補正)した場合のトレーサオイルミストは、図に▲印で示したように、実際にハンバーグ焼きを実施した際の調理排気の粒子径分布に沿った状態の粒子径分布となった。
【0059】
このため、所定の状態に制御して発生させたトレーサオイルミストを用いることで、IH調理器でハンバーグ焼きを行った際の調理排気の捕集効率を検出することが可能になることが判る。
【0060】
図7に示した調理排気の粒子径分布は、IH調理器で魚(秋刀魚)焼きを行った際のものである。
【0061】
図に□印で示したように、実際に魚(秋刀魚)焼きを実施した際の調理排気の粒子径分布は、nmレベルの粒子が徐々に増加してピークを示し、ピーク後に急激に減少すると共に、数μmレベルの粒子が徐々に増減してピークを示す粒子径分布となった。
【0062】
これに対し、110mLのオイル2を200℃で加熱して昇温し、流量制御手段10により窒素の流量を4L/minに制御(係数を乗じて補正)した場合のトレーサオイルミストは、図に■印で示したように、実際に魚(秋刀魚)焼きを実施した際の調理排気の粒子径分布に沿った状態の粒子径分布となった。この場合のミスト発生装置では、板フィルターに代えて供給管の径と同径の棒状のフィルター12(図3(b)参照)を用いた。
【0063】
このため、所定の状態に制御して発生させたトレーサオイルミストを用いることで、IH調理器で魚(秋刀魚)焼きを行った際の調理排気の捕集効率を検出することが可能になることが判る。
【0064】
上述したミスト発生装置1を用いた調理時オイルミストの捕集状況検出装置及び方法は、調理排気(調理時オイルミスト)を的確に模擬したトレーサオイルミストにより調理時オイルミストの捕集効率(捕集状況)を検出することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、調理時に発生するオイルミストの捕集状況を検出する調理時オイルミストの捕集状況検出装置及び方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ミスト発生装置
2 オイル
3 貯留槽
4 ヒータ
5 気泡
6 気泡発生手段
7 窒素供給手段
8 供給管
9 乾燥部
10 流量制御手段
11 板フィルター
12 フィルター
15 排出管
16 希釈管
17 測定機器
18 オイルミスト
21 調理器具
22 レンジフード
23 ダクト
24 レンジフィルター
25 調理排気(調理時オイルミスト)
26 サンプリングダクト
31 分析機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理用食材及び調理用オイルと異なるオイルが貯留される貯留槽と、
前記貯留槽に気体を供給して前記貯留槽の内部の前記オイルの中に気泡を発生させる気泡発生手段と、
前記貯留槽の内部に発生した気泡に基づいたオイルミスト雰囲気を排出するミスト排出手段と、
前記ミスト排出手段から排出されるオイルミストをトレーサオイルミストとして調理中のレンジフードに流通させるオイルミスト流通手段と、
前記レンジフードを流通した後のトレーサオイルミストの状況に基づいて調理時オイルミストの捕集状況を導出する捕集状況検出手段とを備えた
ことを特徴とする調理時オイルミストの捕集状況検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の調理時オイルミストの捕集状況検出装置において、
前記ミスト排出手段から排出されるミストの粒子径分布を制御する粒子径分布制御手段を備えた
ことを特徴とする調理時オイルミストの捕集状況検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の調理時オイルミストの捕集状況検出装置において、
前記粒子径分布制御手段は、
前記貯留槽の内部の前記流体の温度を制御する温度制御手段と、
前記気泡発生手段により前記貯留槽に供給される前記気体の流量を制御する流量制御手段とを含み、
前記温度制御手段及び前記流量制御手段を制御することで、前記ミスト排出手段から排出されるミストの粒子径分布を制御し、
前記ミスト排出手段から排出されるオイルミストの粒子径分布を調理時に発生する調理時オイルミストの粒子径分布に相関させる
ことを特徴とする調理時オイルミストの捕集状況検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の調理時オイルミストの捕集状況検出装置において、
前記気泡発生手段は、気泡を発生させるための多孔部材を備えた
ことを特徴とする調理時オイルミストの捕集状況検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の調理時オイルミストの捕集状況検出装置において、
前記捕集状況検出手段は、
前記レンジフードを流通した後の調理時オイルミスト及び前記トレーサオイルミストをサンプリングし、サンプリングしたミストから前記トレーサオイルミストを分析することで、前記レンジフードで捕集されるトレーサオイルミストの状況を検証し、検証状況に基づいて前記レンジフードで捕集される前記調理時オイルミストの状況を導出する
ことを特徴とする調理時オイルミストの捕集状況検出装置。
【請求項6】
調理時に発生する調理時オイルミストを模擬したトレーサオイルミストを用い、調理中に前記トレーサオイルミストをレンジフードに流通させ、前記レンジフードを流通したオイルミストをサンプリングし、サンプリングした前記オイルミスト中の前記トレーサオイルミストを分析することで、前記調理時オイルミストの捕集状況を検出する
ことを特徴とする調理時オイルミストの捕集状況検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−7515(P2013−7515A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139934(P2011−139934)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000173809)一般財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】