説明

調理済み食品包装体

【課題】調理された料理が見える状態で、且つ、料理の状態が維持されて陳列できるようにする食品の包装体を提供する。
【解決手段】本発明の調理済み食品包装体は、電子レンジ加熱が可能な容器入り調理済み食品の包装体であって、記容器周縁に溶着され、調理済み食品を密着状態で覆う透明な非透水性フィルムによって真空包装され、調理済み食品は移動が抑制され容器に盛り付けられた状態に維持されている。容器はトレー状又は丼状であり、容器周縁にはフランジ部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理された食品の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食材を調理し、これを包装して提供される調理済み食品は、電子レンジ等にて簡単に加熱するだけでよいことから広く普及している。そして、このような調理済み食品の保存性を高めるために、凍結や乾燥もしくは真空包装等の処理がなされている。このような技術として、特開昭51−141092号公報には、透明な熱可塑性単一フィルムまたはラミネートで食料品を包装する技術が開示され、支持部材の両面上にスキン包装された食料品が設けられている。また、特開昭53−30543号公報には、周縁部に適宜直径およびピッチをもって複数列のテーパー状小孔を貫通して設けた発泡スチロール製トレー内に、被包装物品を載置するとともに上面より被包して真空接着したトレーを用いた食品等の真空スキン包装体が開示されている。
【0003】
さらに、実開昭62−101754号のスキン包装体は、複数個のフィルム挿入穴を設けた印刷可能な台紙上に物品を配設し、プラスチックフィルムで当該物品の表面を密着するように覆い、台紙下方に設ける減圧手段により台紙下面を減圧し、プラスチックフィルムの一部を挿入穴の内方に吸引してプラスチックフィルムを挿入穴に掛止めたものである。そして、台紙がダンボール紙等の比較的嵩高の素材で構成すること、及び、フィルム挿入穴は多角形状をしたパンチ穴で形成することが記載されている。
【特許文献1】特開昭51−141092号公報
【特許文献2】特開昭53−30543号公報
【特許文献3】実開昭62−101754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は調理された料理が見える状態で、且つ、料理の状態が維持されて陳列できるようにする食品の包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明による調理済み食品包装体は、電子レンジ加熱が可能な容器入り調理済み食品の包装体であって、前記容器周縁に溶着され、前記調理済み食品を密着状態で覆う透明な非透水性フィルムによって真空包装され、前記調理済み食品は移動が抑制され容器に盛り付けられた状態に維持されていることを特徴とする。
【0006】
このような調理済み食品包装体において、容器がトレー状又は丼状であることが好ましく、また、容器周縁にはフランジ部が設けられていてもよい。
さらに、容器が合成樹脂材、セラミック材、木材、紙材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされたセラミック材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされた木材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされた紙材から選ばれた材料からなることが好ましく、さらにまた、非透水性フィルムがアイオノマー樹脂を含む材質からなることが好適である。
そして、調理済み食品は、食肉類、野菜類を含む食品原料を用いて調理されており、調理時の滲み出し液、調味液、タレ、ダシから1以上選ばれる液状物を含むことを特徴とする。また、透明な非透水性フィルムが溶着された容器周縁のフランジ部に係止される透明な蓋を設け、この蓋の内側面中央付近には、先端が容器底面側に向くと共に食品最上面に密着する非透水性フィルム外面とは離隔する針状の突起が複数形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、食品包装体は調理された状態の料理を外側から見えるようにして陳列できる。さらに、調理済み食品が真空包装されているので、大気圧で食品が容器に押し付けられることになり、容器に盛り付けられた料理の状態が維持できる。
容器をトレー状又は丼状とすることにより、電子レンジで加熱された料理を、そのまま食卓にのせることができる。
容器周縁に設けられたフランジ部はフィルムを溶着する部分であり、上方から被せることにより、フランジ部でフィルムを溶着させることができる。
容器は、合成樹脂材、セラミック材、木材、紙材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされたセラミック材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされた木材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされた紙材から選ばれた材料で形成でき、これらの材料で容器を形成することにより、それぞれ、盛り付けられる料理に適したものとすることができる。
アイオノマー樹脂を含む積層フィルムとすることで、透明性に優れ、また、料理に押圧力が加わった時に、料理を押し潰すことがないフィルムとすることができる。さらに、冷凍時、霜が発生しないので、料理の見映えがよい。
また、別途蓋を設けると共に、その蓋に非透水性フィルム外面とは離隔する針状の突起を複数形成した場合には、フィルムを外し忘れ電子レンジで加熱した場合でも、発生する内部蒸気圧によってフィルムが盛り上った時点で、フィルムを貫通する通気口を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の調理済み食品包装体について、図面を基に詳細に説明する。図1は、食品包装体10の容器1が調理済み食品5を収納し、フィルム2で覆われることを示した斜視図であり、図2は、フィルム2が被せられて真空包装されていることを示した縦断面図である。これら図1、2に示されるように、フィルム2が容器1のフランジ部3に溶着されることにより、調理済み食品5は、調理済み食品5を密着して覆っている。この食品包装体10は、保存のために冷凍されているが、これを解凍して加熱するだけで、目で見たとおりの調理済み食品5を食すことができるようになる。
【0009】
この調理済み食品包装体10は、先ず、真空チャンバー内に、料理(調理済み食品5)が盛られた容器1を置き、フィルム2を被せ、この状態から容器1のフランジ部3にフィルム2を密着させ溶着し、真空チャンバー内から料理が盛られた容器1を取り出すことにより製造される。これにより、フィルム2は、大気圧で押し潰され、ほぼ、盛られた料理の形状で、料理が固定される。
【0010】
フィルム2は、大気圧で押し潰された際に、料理(調理済み食品5)をも押し潰すことがないように、ある程度の弾力性を備え、料理品の熱で塑性変形する特性を有した合成樹脂がよい。そして、好ましくはガスバリアー性を備えていることが好ましい。しかし、基本的には、製造後すぐ冷凍されるので、非透水性を備えていればよい。このような機能を持ったものとして、アイオノマーとエチレンー酢酸ビニル共重合体との積層構造を有する合成樹脂フィルム2が利用できる(例えば、大森化成株式会社の商品名ハイミランータイトSV)。この合成樹脂フィルム2は、上述した機能のほかに、内部に収納された料理(調理済み食品5)が視認できる透明部材であり、有害物質をブリードアウトすることがない素材であり、さらに、自己粘着性を持つ。
【0011】
合成樹脂フィルム2の自己粘着性は、合成樹脂フィルム2を加熱することによって発揮されるが、接着強度を好適なものとするために溶着温度が調節される。因みに、本発明の調理済み食品包装体10を加熱する際には、フィルム2を手で剥がしてから加熱する。したがって、手で容易に剥がせる程度の接着力で接着されていることが好ましい。フランジ部3に接着剤を塗布して密封性を向上させてもよいが、この場合には、電子レンジの加熱による容器内部の蒸気圧の上昇を減圧する手段を別途設ける。溶着されるフィルム2は、容器1の周縁部分から全体又は一部が外側にはみ出た状態とする。このようにフィルム2を容器1の周縁部分からはみ出させた場合には、フィルム2が剥がし易くなる。
【0012】
蒸気圧の上昇を減圧する手段の一例として、透明なフィルム2が溶着されたフランジ部3の下面に係止させて透明な蓋(図省略)を設け、この蓋の内側面中央付近に、容器1の底面側に向けて針状の突起を複数形成する。これにより、フィルム2を外し忘れ電子レンジで加熱した場合でも、発生する蒸気圧によってフィルム2が膨張した時点で、フィルム2を貫通する通気口が形成されるようにする。
【0013】
容器1の形状は、そのまま食卓に載せられるように、料理の種類に合わせてトレー状又は丼状にするのがよい。その素材は、電子レンジでの加熱に耐えられる程度の耐熱性と、冷凍温度に耐えられる耐寒性を備えていればよく、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂材、セラミック材、木材、紙材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされたセラミック材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされた木材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされた紙材等が利用できる。
【0014】
トレー状や丼状に形成した容器1に盛り付けられる料理は、食肉類、野菜類を含む食品原料を用いて調理されており、調理時の滲み出し液(ドリップ)、調味液、タレ、ダシから1以上選ばれる液状物を含んでいてもよい。一例として、ハンバーグにジャガイモ、ニンジン、インゲン豆などを添えて盛り付けた形態、パスタにミートソース等を絡めた状態のもの、調理された酢豚、ソースがかけられた調理済みのハンバーグステーキ、調味液がかけられた焼鶏肉(ジャガイモ、ニンジン、インゲン豆等の添え物を含む)等、日常、食卓やレストランで目にする程度のものであれば、容器1に盛り付けられる。
【0015】
このように製造される調理済み食品包装体10は、消費者にとっては食卓に上がるお皿が、そのまま見た目で選べる。店頭もしくはレストラン等では、実際、お皿に盛り付けて提供される食品の形態でのディスプレーが可能になる等の有益性がある。しかも、店頭やレストランで利用されるほか、調理の手間が省けることから、機内食や病院食としても利用可能である。病院食として利用する場合には、例えば、高血圧の人用、糖尿病の人用、子供用など個人差に対応させて、料理を工夫し提供するようにする。そして、料理のカロリーを計算し、そのカロリー表示と共に調理済み食品包装体10を提供した場合には、カロリーコントロールを必要としている人にとって有益なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の食品包装体の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の食品包装体の縦断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 容器
2 フィルム
3 フランジ部
4 取っ手
5 調理済み食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ加熱が可能な容器入り調理済み食品の包装体であって、
前記容器周縁に溶着され、前記調理済み食品を密着状態で覆う透明な非透水性フィルムによって真空包装され、
前記調理済み食品は移動が抑制され容器に盛り付けられた状態に維持されていることを特徴とする調理済み食品包装体。
【請求項2】
前記容器は、トレー状又は丼状であることを特徴とする請求項1に記載の調理済み食品包装体。
【請求項3】
前記容器周縁にはフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の調理済み食品包装体。
【請求項4】
前記容器は、合成樹脂材、セラミック材、木材、紙材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされたセラミック材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされた木材、表面に合成樹脂が積層又はコーティングされた紙材から選ばれた材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の調理済み食品包装体。
【請求項5】
前記非透水性フィルムは、アイオノマー樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の調理済み食品包装体。
【請求項6】
前記調理済み食品は、食肉類、野菜類を含む食品原料を用いて調理されており、調理時の滲み出し液、調味液、タレ、ダシから1以上選ばれる液状物を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の調理済み食品包装体。
【請求項7】
前記透明な非透水性フィルムが溶着された容器周縁のフランジ部に係止される透明な蓋を設け、この蓋の内側面中央付近には、先端が容器底面側に向くと共に食品最上面に密着する非透水性フィルム外面とは離隔する針状の突起が複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の調理済み食品包装体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−327658(P2006−327658A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156368(P2005−156368)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000118497)伊藤ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】