説明

警報器

【課題】 センサの検出機能を簡易に点検することができ、適正な取付位置が把握できる警報器を提供する。
【解決手段】 警報器は検出対象の物理量を検出するセンサ1と、当該センサ1によって検出した物理量が所定値以上の場合に警報を出力する警報出力手段4とを備えると共に、センサ1によって検出した物理量を音声で提示する情報提示手段5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の物理量を検出するセンサと、当該センサによって検出した物理量が所定値以上の場合に警報を出力する警報出力手段とを備える警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、警報器は、例えば都市ガス濃度等の検出対象の物理量が所定値以上になったことを検知した場合、すなわち異常を検知した場合には警報動作し、使用者にその異常を知らせる。そして、中には、検知した異常の状態に応じて異なる警報動作を行い、その警報の種類によって使用者にどのような異常が発生しているのかを知らせることができるものもある。
【0003】
警報器は異常が発生して初めて警報動作を行うものであり、通常動作時には、使用者はどのような警報が出力されるのか、或いはどの警報がどのような異常状態を表しているかを知ることができないため、使用者には事前に警報器について説明しておく必要がある。また、一定期間以上使用している警報器に関しては、警報動作の定期的な点検が必要な場合もある。これまで警報器を新たに取り付ける場合、若しくは既に取り付けた警報器の定期点検を行う場合には、実際に異常状態を発生させて、例えば、ガス警報器の場合には点検用の被検知ガスをセンサ部分に吹きかけて警報動作を行わせており、点検には手間がかかるものであった。
【0004】
このため、電源を投入した時、或いはスイッチを操作した時に、警報内容を知らせる複数の音声メッセージを順次発声させることにより、事前に使用者に説明することができるガス警報器(例えば、特許文献1参照)が検討されている。このようなガス警報器は、異常時に発声する音声メッセージを点検時に使用者に実際に聴かせることができるため、説明に便利であり、その説明自体を判りやすくすることができるというメリットがある。また、発声機能を定期点検する場合にも役立つ。
【0005】
また、同様にガス警報器の点検を簡易に行うために、点検の際にはガスセンサ等の点検は省き、音、光、警報信号等の警報動作のみを点検し、警報を必要とする時に不動作となることを未然に防止するガス警報器(例えば、特許文献2参照)も知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−124776号公報
【特許文献2】特開平11−16068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の警報器は、上述の通り警報動作が正しく行われるか否かの点検を簡易に行うことができ、また使用者に対しても事前に警報情報を示して説明することができるため、便利なものであった。
【0008】
しかし、警報動作の点検は簡易に行えるものの、警報動作機能と共に、警報器において重要な機能の一つであるセンサの検出機能については点検するものではないから、そのセンサについては、メーカー等が保証する一定の期間は確実に機能することを前提にして保証期間毎の交換のみを行っていた。
【0009】
他方、センサが所定値以上の物理量を検出した場合に警報動作する警報器にあっては、実際の物理量が所定値以上になった時に、これをセンサが検出して警報器が正しく動作するか否か、すなわち、センサが検出する物理量と実際の物理量とが一致しているか否かについて使用者に不安を抱かせていた。
【0010】
また、警報器を取り付けた際には、適正な位置に取り付けられているか否か、例えば、異常が発生した場合にいち早く所定値以上の物理量が検出できる位置であるか否か等については、確かめる術がなかった。このため、異常が発生してから警報動作するまでにタイムラグがあったり、反対に日常の生活を考慮せず、生活を送る上で当然に所定値以上の物理量が発生する位置に警報器を取り付けてしまったために、異常でもないのに警報動作するという場合があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、センサの検出機能を簡易に点検することができ、適正な取付位置が把握できる警報器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る警報器の第1特徴構成は、検出対象の物理量を検出するセンサと、当該センサによって検出した物理量が所定値以上の場合に警報を出力する警報出力手段とを備えると共に、点検操作時に前記センサによって検出した物理量を音声で提示する情報提示手段を備える点にある。
ここで物理量とは、温度、炭化水素ガス・一酸化炭素ガス・水素ガス等の各種ガス濃度、煙の濃度等、一般的な検出対象を測定して得られるセンサ出力をいう。
【0013】
つまり、この構成によれば、点検操作時においては、センサが検出した物理量を提示するから、センサが正常に機能しているか否かを簡易に点検することができる。特にセンサはリアルタイムの物理量を検出し提示するから、物理量を実測することによりセンサが正しい測定機能を有しているか否かを調べることができる。
また、リアルタイムの物理量を提示させることにより、位置毎の物理量を把握することができるから適正な位置に警報器を取り付けることができる。特に物理量は音声で提示するため、取り付け作業等、他の作業を行いながらでも検出する物理量を確認することができる。
【0014】
本発明に係る警報器の第2特徴構成は、前記物理量を検出するセンサは、温度センサである点にある。
【0015】
つまり、この構成によれば、温度を検知して警報を出力する火災警報器に適用することができる。そして、リアルタイムの温度を提示することができるため、例えば、台所に火災警報器を設置する場合には、ガスコンロ等の熱源を使用しても温度が高くなり過ぎない位置等、適正な設置場所を選定することができる。
【0016】
本発明に係る警報器の第3特徴構成は、前記センサによって検出した物理量を音声で提示すると供に、前記警報出力手段が有する全ての種類の警報情報を提示する点にある。
【0017】
つまり、この構成によれば、センサの測定機能を点検すると共に、警報動作の点検を行うことができる。
また、使用者への説明も容易になる。
【0018】
本発明に係る警報器の第4特徴構成は、前記情報提示手段を起動させる起動スイッチを備える点にある。
【0019】
つまり、この構成によれば、起動スイッチを備えることにより、任意に物理量を提示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る警報器の一実施形態として、検出対象の物理量が温度である火災警報器に適用した場合について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る火災警報器は、図1に示すように、温度を検出する温度センサ1、温度センサ1で検出した情報を制御する制御部2、温度センサ1で検出された情報に基づき警報を出力するか否かを判断する警報制御部3、警報を出力する警報出力手段4、温度センサ1で検出された情報を音声で提示する情報提示手段5を備えて構成される。
【0021】
火災警報器が設置された通常の状態、すなわち火災警報器が火災を監視している場合には、制御部2は温度センサ1で検出した温度情報を警報制御部3に伝達する。警報制御部3では、伝達された温度が所定値以上であるか否かを判断する。そして、温度が所定値に達していない場合には通常の状態を維持するが、所定値以上であった場合には火災であると判断し、警報出力手段4によって警報を出力させる。なお、警報制御部3は、上述の通り温度が所定値以上であるか否かを判断するものであるが、閾値を複数設けて、温度センサ1で検出した温度に応じて、警報の出力を段階的に制御することもできる。
【0022】
警報出力手段4は、警報制御部3が火災と判断した場合に、警報としては、音、音声、光、外部への信号等の一つまたは複数を出力するものであるが、検出した温度に応じて、音の種類や鳴り方、音声メッセージの種類、光の色や光り方、外部への信号の有無等を変えたものを警報として出力することができる。すなわち、例えば、使用者に注意喚起を促す場合には、電子音とランプの点滅のみの警報を出力し、外部との通信は行わないようにし、火災が発生して急を要する場合には、音声メッセージによる警報を出力する共に、通信によって外部へ信号を出力し、使用者や外部の管理者等に状況を知らせるようにすることもできる。
【0023】
なお、その他、通常状態における火災警報器の構成、機能については、従来公知の温度検知型火災警報器と同様である。
【0024】
本実施形態に係る火災警報器が点検操作時の場合、すなわち温度センサ1で検出したリアルタイムの温度情報を提示する場合には、制御部2は、温度センサ1で検出した温度情報を情報提示手段5に伝達する。
【0025】
制御部2は、上述の通り通常の状態では、温度センサ1で検出した温度情報を警報制御部3に伝達するものである。そして、点検状態となると、前記温度情報は情報提示手段5に伝達されるようになる。この場合、制御部2は温度センサ1が検出したリアルタイムの温度情報を任意の間隔で情報提示手段に伝達することができる。
制御部2は、例えば、警報器の電源を投入することによって点検状態とすることができ、また、起動スイッチ(図示しない)を操作することによって通常状態と点検状態とを任意に切り替えることもできる。さらには制御部2にタイマーを設けておいて、電源投入後、または起動スイッチを操作した後、一定時間経過すると、通常の状態となるように制御することもできる。
【0026】
情報提示手段5では、伝達された温度情報に基づき、その具体的な値を音声で提示し、その提示は制御部2から伝達される間隔と同様の間隔で、点検操作中連続して行われる。
本実施形態に係る火災警報器は、温度センサ1で実際に検出した温度の値を提示するため、温度センサ1が正常に機能しているか否かを容易に知ることができる。また、実測した温度の値と比べることによって、温度センサ1で検出した温度の値が正しいか否かを調べることもできる。そして、実測した値と温度センサ1で検出した値とに誤差が生じている場合には、例えば、制御部2に補正機能を設けることによって、温度センサ1で検出した温度情報を制御部2で補正し、正確な情報を警報制御部3及び情報提示部5へ伝達することができる。
また、警報器を取り付ける際には、その取り付け位置におけるリアルタイムの温度情報を提示することができるため、適正な取り付け位置を把握することができる。
【0027】
本実施形態における火災警報器は、点検操作時においては、温度センサ1で検出した温度情報を提示すると共に、警報出力手段4が有する全ての警報情報を提示することもできる。すなわち、制御部2は、温度センサ1で検出した温度情報を情報提示手段5に伝達した後、警報出力手段4へ全ての種類の警報情報を提示するように指示を出す。これによって、火災警報器は、点検操作中は温度情報の提示と、警報情報の提示とを繰り返すことができる。なお警報情報の提示は、警報出力手段4が有する全ての警報情報が提示できれば、特に限定されず、例えば、音と光を同時に出力したり、音声メッセージを出力すると同時に外部へ信号を出力すること等、任意の設定が可能である。
また、本実施形態に係る火災警報器は、別途スイッチ(図示しない)を設けることによって、点検操作時において、温度情報のみを提示する場合と、温度情報及び警報情報を提示する場合とに切り替えることも可能である。
【0028】
さらに、本実施形態における火災警報器は、外部との双方向通信機能を備えることができ、これにより、上述のように警報として外部へ信号を出力できるだけでなく、管理者等が外部から火災警報器の点検や設定等をすることも可能となる。
【0029】
本実施形態の火災警報器は、以上のように構成されており、以下、一般家庭の台所に取り付ける場合を例にとって説明する。なお、以下の説明は、火災警報器の取り付け位置の選定と、初期の点検についての説明であり、その他については、従来の火災警報器と同様である。
【0030】
まず、台所にあるガスコンロ等の熱源を使用状態にしておく。そして、温度情報のみを提示できる状態に設定し、火災警報器の電源を投入する。火災警報器は、電源を投入することによって点検状態になっている。
火災警報器を設置予定位置の付近に持っていき、提示される温度情報を調べる。そして、例えば、提示した温度情報が周囲の温度に比べて極端に高い場合は、その位置はガスコンロ等の熱源からの影響を受けているため警報器を設置しても、日常の生活において誤作動する虞があることを示している。一方、クーラーや扇風機の風が直接当たる位置では、逆に周囲の温度よりも低くなっており、火災の際にも正しく検知しない可能性があることを示している。このため、火災警報器の位置を少しずつ移動させ、その位置で提示される温度情報に基づいて、適正な位置を探す。
なお、温度情報を提示する間隔は、30秒〜1分程度に設定しておくと、効率よく位置を設定することができる。
【0031】
このようにして取り付け位置を決め、取り付けた後は、温度情報と共に警報情報も提示できるように設定を切り替えておく。
そして、起動スイッチを操作して、温度情報の提示させた後に、警報出力手段4が有する全ての種類の警報情報を順次提示させる。これにより、使用者に温度センサ1が正しく機能していることを確認させると共に、全ての種類の警報情報を実際に聴かせることにより、火災警報器について容易に説明することができる。
【0032】
(別実施形態)
以下に、本発明に係る警報器の別実施形態について説明する。
上記実施形態では、温度センサ1を備えた火災警報器としたが、煙センサを備えた火災警報器とすることもできる。また、センサとしてガスセンサを用いることにより、ガス警報器として用いることもできる。この場合、情報提示手段は、煙及びガスの濃度値を提示することができる。
その他、汚れセンサを備えた空気汚染警報器等に適用することもできる。
【0033】
また、本発明に係る警報器はセンサを複数備えていてもよく、例えば、温度センサとガスセンサを備えた火災、ガス警報器とすることもできる。この場合の情報提示手段は、温度、ガス濃度のいずれか一方のみを提示するものでも、両方を順次提示するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る警報器は、火災警報器、ガス警報器、煙警報器等、様々な警報器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る警報器の一例を示す概略ブロック図
【符号の説明】
【0036】
1 温度センサ
4 警報出力手段
5 情報提示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量を検出するセンサと、当該センサによって検出した物理量が所定値以上の場合に警報を出力する警報出力手段とを備えると共に、点検操作時に前記センサによって検出した物理量を音声で提示する情報提示手段を備える警報器。
【請求項2】
前記物理量を検出するセンサは、温度センサである請求項1に記載の警報器。
【請求項3】
前記センサによって検出した物理量を音声で提示すると共に、前記警報出力手段が有する全ての種類の警報情報を提示する請求項1または2に記載の警報器。
【請求項4】
前記情報提示手段を起動させる起動スイッチを備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の警報器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−31621(P2006−31621A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213214(P2004−213214)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】