説明

負帯電性電荷調整剤及びこれを含有するトナー

【課題】広い温度範囲及び湿度範囲において、優れたブローオフ帯電量と帯電立ち上がり性を有する負帯電性電荷調整剤を提供すること。また、ブローオフ帯電量、帯電立ち上がり性、トナー飛散、画像濃度、画像カブリ、耐久性に優れたトナーを提供すること。
【解決手段】メディアン径(D50)を5〜25μmに調節した一般式(1)で表されるベンジル酸誘導体の錯塩からなる負帯電性電荷調整剤と該負帯電性電荷調整剤を用いて作製したトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い負帯電性を有する負帯電性電荷調整剤及び該負帯電性電荷調整剤を含有する優れた帯電特性を有するトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真は、光導電性物質等により構成された感光体上に潜像を形成し、これをトナーと呼ばれる粉末現像剤で現像して顕像化、ついで熱や圧力によって紙上に定着する方法が一般的である。
【0003】
トナーは、結着樹脂に着色剤、電荷調整剤、流動化剤等を分散させたものと鉄粉又はフェライト粉のキャリアとの混合物よりなる二成分現像剤と、結着樹脂、着色剤、電荷調整剤、流動化剤及び磁性体よりなる一成分現像剤とに分けられる。
【0004】
二成分現像剤は、キャリアとの摩擦により荷電させたトナーを静電潜像に付着させて現像し、一成分現像剤は、二成分現像剤のキャリアと同様の機能を有するブラシ状やプレート状の摩擦部材と摩擦させて現像する、あるいは前記摩擦部材の代わりに磁性体微粉末を分散状態に保ち、該磁性体微粉末と相互摩擦させて現像する。
【0005】
感光体は、正又は負に荷電できるので、オリジナルに基づく露光により正又は負の静電潜像が得られる。得られた静電潜像の極性に応じて、トナーは正又は負に保持される。
【0006】
トナーに荷電を保つためには、キャリア及びその表面の材質とトナーの主成分である樹脂との摩擦帯電性を利用することも提案されているが、トナーの荷電が小さく、かつ固体表面抵抗値が大きいため、得られた画像はカブリ易く、不鮮明なものとなる。そこで所望の摩擦帯電性をトナーに付与するために、電荷調整剤が添加される。
【0007】
電荷調整剤は、帯電極性により正帯電性、負帯電性の2種類に分けられ、正帯電性電荷調整剤としては、ニグロシン、第4級アンモニウム塩化合物等が挙げられ、負帯電性電荷調整剤としては、含金属アゾ化合物、サリチル酸誘導体の金属化合物等が挙げられる。
【0008】
特許文献1には、Cr、Zn等の重金属を含まないため人体に対して安全であり、かつ環境負荷が小さい負帯電性電荷調整剤として、ベンジル酸誘導体の錯塩からなる化合物が開示されている。
【0009】
この化合物を負帯電性電荷調整剤に用いた場合、帯電特性に優れ、溶融混練が充分できる温度まで熱安定性を有しており、樹脂成分への分散性が良好で、更には本化合物が白色である為色調障害を起こす事が無く、カラートナー用としても好適である。
【0010】
特許文献1には、ベンジル酸誘導体のホウ素又はアルミニウム錯体からなる負帯電性電荷調整剤が開示されている。しかしながら、該負帯電性電荷調整剤は、帯電の立ち上がり性の早さ、帯電量に関し、様々な温度、湿度の環境に対する安定性が不十分である問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−010345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、広い温度範囲及び湿度範囲において、優れたブローオフ帯電量と帯電立ち上がり性を有する負帯電性電荷調整剤を提供することである。また、ブローオフ帯電量、帯電立ち上がり性、トナー飛散、画像濃度、画像カブリ、耐久性に優れたトナーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討をした結果、メディアン径(D50)を5〜25μmに調節した一般式(1)で表されるベンジル酸誘導体の錯塩からなる負帯電性電荷調整剤と該負帯電性電荷調整剤を用いて作製したトナーが上記課題を解決することを見出し、本発明の完成に至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
【0015】
第一の発明は、下記一般式(1)で表されるベンジル酸誘導体の錯塩からなる負帯電性電荷調整剤において、メディアン径(D50)が5〜25μmであることを特徴とする負帯電性電荷調整剤である。
【0016】
【化1】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ同一でも異なってもよい、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、Xはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選ばれる1種を示す。)
【0017】
第二の発明は、メディアン径(D50)が、10〜20μmであることを特徴とする第一の発明に記載の負帯電性電荷調整剤である。
【0018】
第三の発明は、粒度分布曲線における粒径の半値幅が、100μm以下であることを特徴とする第一又は第二の発明に記載の負帯電性電荷調整剤である。
【0019】
第四の発明は、水分含有量が、0.2%未満であることを特徴とする第一から第三のいずれかに記載の発明に記載の負帯電性電荷調整剤である。
【0020】
第五の発明は、第一から第四の発明のいずれかに記載の負帯電性電荷調整剤と、結着樹脂と着色剤とを含有されてなることを特徴とするトナーである。
【発明の効果】
【0021】
メディアン径を5〜25μmに調整した一般式(1)で表されるベンジル酸誘導体の錯塩からなる負帯電性電荷調整剤は、ブローオフ帯電量が大きく、帯電立ち上がり性が早いため、トナー中において、樹脂中に均一に負帯電性電荷調整剤を分散することができるため、ブローオフ帯電量が大きく、帯電立ち上がり性が早く、トナー飛散がなく、画像濃度に優れ、画像カブリが見られず、連続印刷における耐久性に優れたトナーを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明に用いるベンジル酸誘導体の錯塩は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0024】
【化2】

【0025】
上記一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ同一でも異なってもよい、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、Xはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選ばれる1種を示す。
【0026】
上記炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0027】
上記炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
【0028】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0029】
本発明である負帯電性電荷調整剤は、一般式(1)で表されるベンジル酸誘導体の錯塩において、メディアン径(D50)が5〜25μmであるものである。メディアン径とは、粒度分布曲線の50%に対応する粒径のことであり、中位径又は50%粒子径ともいう。
メディアン径及び粒度分曲線の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置等の粒度計を用いて、乾式にて測定を行うことで、粒度分布曲線やメディアン径等を測定することができる。
メディアン径(D50)は、5〜25μmが好ましく、10〜20μmがより好ましく挙げられる。5μm未満及び25μm超の場合では、ブローオフ帯電量と帯電立ち上がり性に劣る問題点がある。
【0030】
粒度分布曲線における粒径の半値幅とは、粒度分布曲線の頻度(%)が極大である点をピークとした場合、ピークの半分の高さ(最大値の半分)における粒径の幅のことである。半値幅は、100μm以下が好ましく挙げられ、75μm以下がより好ましく挙げられ、50μm以下が特に好ましく挙げられる。100μm超では、トナーの製造時に、結着樹脂中に均一に分散できない問題点がある。
【0031】
ブローオフ帯電量とは、ブローオフ法によって、ブローオフ帯電装置により測定されるトナーの帯電量のことである。
【0032】
帯電立ち上がり性とは、一定のブローオフ帯電量に達するまでの速度である。
【0033】
負帯電性電荷調整剤中の水分含有量は、0.2%未満が好ましく挙げられ、0.15%未満がより好ましく挙げられ、0.1%未満が特に好ましく挙げられる。
水分含有量を前記範囲に調整することで、結着樹脂中に均一に分散させることが可能となる。
【0034】
また、負帯電性電荷調整剤のメディアン径(D50)を5〜25μmにすることで、トナーを製造する時に、負帯電性電荷調整剤が微粉砕化することができ、結着樹脂中に均一に分散させることができる。その結果、トナー飛散がなく、画像濃度に優れ、画像カブリが見られず、連続印刷における耐久性に優れたトナーを得ることができる。
【0035】
上記一般式(1)で表されるベンジル酸誘導体の錯塩からなる負帯電性電荷調整剤の製造方法を説明する。
【0036】
まず、ホウ酸と、NaOH等の水酸化物を1モル溶解した水溶液に、ベンジル酸を2モル加え、温度80℃で約2時間撹拌しながら反応させ、得られた生成物を濾別、水洗することにより、ベンジル酸誘導体の錯塩を得る。
得られたベンジル酸誘導体の錯塩をジェットミルにて粉砕し、メディアン径(D50)を5〜25μmに調整することで、本発明の負帯電性電荷調整剤を得ることができる。
【0037】
本発明のトナーは、少なくとも上記負帯電性電荷調整剤と、結着樹脂と、着色剤とを含有させてなるものであり、それ以外に内添剤、外添剤を含有させてもよい。
【0038】
結着樹脂としては、周知のトナー用の樹脂が用いられ、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、パラフィンワックス等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、得られるトナーの帯電特性を考慮すると、好ましくはポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂又はエポキシ樹脂が挙げられ、ポリエステル樹脂が特に好ましく挙げられる。
【0039】
着色剤としては、周知の顔料や染料が用いられ、通常用いられているものであれば特に限定されない。例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック等の黒色着色剤、黄鉛、カドミウムイエロー等の黄色着色剤、パーマネントオレンジ、モリブデンオレンジ等の橙色着色剤、酸化鉄、アンバー等の褐色着色剤、ベンガラ、ローズベンガラ等の赤色着色剤、コバルト紫、ファーストバイオレット等の紫色着色剤、メチレンブルー、アニリンブルー等の青色着色剤、クロムグリーン、ピグメントグリーンB等の緑色着色剤が挙げられる。
【0040】
内添剤としては、溶融トナーを基材に融着固定させる時の強度向上用定着剤となるポリプロピレン、溶融トナーのローラー付着をぼうしする離型剤となるポリエチレン、ポリプロピレン等の合成ワックスや天然ワックスが挙げられる。
【0041】
外添剤としては、トナー粉体の流動性を向上させる流動化剤となる疎水性シリカ、感光体上のクリーニング特性を向上させるクリーニング剤となるアルミナ、酸化チタン、樹脂系超微粒子等が挙げられる。
【0042】
本発明のトナーは、通常、キャリアと混合して二成分現像剤として用いられるが、磁性材料を含有させて一成分現像剤としても用いられる。
【0043】
二成分現像剤でのキャリアとしては、鉄、フェライト、鋼、磁鉄鉱、ニッケル等の磁性材料をシリコーン樹脂又はアクリル樹脂で被覆した周知のものが用いられる。
【0044】
また、一成分現像剤での磁性材料としては、周知のマグネタイト、フェライト等の酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケル等の金属又はアルミニウム、コバルト、銅、鉛、亜鉛、ビスマス、カルシウム等の合金あるいはその混合物が用いられる。
【0045】
本発明のトナーは、ブローオフ帯電量が大きく、帯電立ち上がり性が早く、トナー飛散がなく、画像濃度に優れ、画像カブリが見られず、連続印刷における耐久性に優れる特徴を有している。
【0046】
次に、トナーの製造方法について説明する。
【0047】
本発明のトナーは、結着樹脂中に、着色剤及び負帯電性電荷調整剤、さらに必要に応じて内添加剤又は外添加剤を加え、ブレンダーで混合後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の加熱混練機を用いて溶融、混練して、分散又は溶解させ、ついで、冷却、固化させた後、ハンマーミル、カッターミル等の粉砕機で粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕、分級することにより得ることができる。
【0048】
他の方法としては、結着樹脂中に、着色剤及び負帯電性電荷調整剤を分散させた後に、噴霧乾燥する方法、あるいは結着樹脂中に、着色剤及び負帯電性電荷調整剤を混合させて、乳化懸濁液とした後、重合させる方法が挙げられる。
【0049】
本発明のトナーにおいて、本発明の負帯電性電荷調整剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5〜5質量部である。0.1質量部未満及び10質量部超の場合、結着樹脂中に負帯電性電荷調整剤が均一に分散できない可能性がある。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について実施例を挙げ、より詳細に説明する。なお、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。また、実施例中の「部」は、「質量部」を表す。
【0051】
(実施例1)
水溶媒中に、ベンジル酸2モル、ホウ酸1モル、水酸化カリウム1モル添加し、80℃2時間撹拌した。反応後、ろ過し、水で洗浄した。乾燥させた後、ジェットミルで粉砕して、メディアン径(D50)5μm、水分含有量0.05%、半値幅34μmである下記化合物(A)で表されるベンジル酸誘導体の錯塩からなる負帯電性電荷調整剤を得た。メディアン径(D50)の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J、島津社製)を用いて測定した。光源は半導体レーザーを用い、波長680nm、出力3mWにて測定をした。
【0052】
【化3】

【0053】
(実施例2)
実施例1において、メディアン径(D50)5μm、水分量0.05%、半値幅34μmを、メディアン径(D50)10μm、水分含有量0.05%、半値幅42μmに代えた以外は同様の方法にて、負帯電性電荷調整剤を得た。
【0054】
(実施例3)
実施例1において、メディアン径(D50)5μm、水分量0.05%、半値幅34μmを、メディアン径(D50)15μm、水分含有量0.05%、半値幅33μmに代えた以外は同様の方法にて、負帯電性電荷調整剤を得た。
【0055】
(実施例4)
実施例1において、メディアン径(D50)5μm、水分量0.05%、半値幅34μmを、メディアン径(D50)20μm、水分含有量0.05%、半値幅38μmに代えた以外は同様の方法にて、負帯電性電荷調整剤を得た。
【0056】
(実施例5)
実施例1において、メディアン径(D50)5μm、水分量0.05%、半値幅34μmを、メディアン径(D50)25μm、水分含有量0.05%、半値幅40μmに代えた以外は同様の方法にて、負帯電性電荷調整剤を得た。
【0057】
(比較例1)
実施例1において、メディアン径(D50)5μm、水分量0.05%、半値幅34μmを、メディアン径(D50)1μm、水分含有量0.05%、半値幅28μmに代えた以外は同様の方法にて、負帯電性電荷調整剤を得た。
【0058】
(比較例2)
実施例1において、メディアン径(D50)5μm、水分量0.05%、半値幅34μmを、メディアン径(D50)30μm、水分含有量0.05%、半値幅48μmに代えた以外は同様の方法にて、負帯電性電荷調整剤を得た。
【0059】
実施例1〜5、比較例1、2により得られた負帯電性電荷調整剤は以下の方法により、ブローオフ帯電量と帯電立ち上がり性を測定した。測定は、常温・常湿下(温度25℃、湿度50%)(条件Aとする)、高温・高湿下(温度35℃、湿度80%)(条件Bとする)、低温・低湿下(温度10℃、湿度15%)(条件Cとする)の条件にて測定した。
【0060】
(ブローオフ帯電量の測定)
負帯電性電荷調整剤をブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製)により、窒素ガス中、1kg/cmの圧力下で30秒間ブローし、負帯電性電荷調整剤のブローオフ帯電量を測定した。
【0061】
(帯電立ち上がり性の評価)
負帯電性電荷調整剤0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを条件A、B、Cで8時間調湿した後、ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm、10分間摩擦攪拌し、時間毎に帯電量を測定した。「摩擦時間1分の帯電量/摩擦時間10分の帯電量」を計算し、帯電の立ち上がり性を下記の基準で評価した。
◎:帯電立ち上がり性 0.7超
○:帯電立ち上がり性 0.7〜0.6
△:帯電立ち上がり性 0.6〜0.5
×:帯電立ち上がり性 0.5未満
【0062】
実施例1〜5、比較例1、2で得られた負帯電性電荷調整剤のブローオフ帯電量と帯電の立ち上がり性の測定結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

表中の略語
A:条件A(温度25℃、湿度50%)
B:条件B(温度35℃、湿度80%)
C:条件C(温度10℃、湿度15%)
【0064】
表1より、メディアン径を5〜25μmにすることで、優れたブローオフ帯電量と帯電立ち上がり性が得られることがわかる。特に10〜20μmにおいては、ブローオフ帯電量と帯電立ち上がり性に優れていることがわかる。
【0065】
(実施例6)
結着樹脂としてポリエステル樹脂(ポリエスターHP301(登録商標)、日本合成化学工業社製)100部、着色剤としてカーボンブラック5部、実施例1より得られた負帯電性電荷調整剤(5μm)、内添剤としてポリプロピレン系ワックス(ビスコール550P(登録商標)、三洋化成工業社製)5部をブレンダーで混合した後、二軸押出し型混練機で溶融混練し、放冷後、ハンマーミル(不二パウダル社製)を用いて粗粉砕し、さらにジェットミル(セイシン企業社製)を用いてメディアン径(D50)10μmに微粉砕した。得られた微粒子に外添剤として疎水性シリカ0.4部を混合して黒色トナーを得た。この黒色トナー4部とシリコーン被覆フェライトキャリア100部とを、ブレンダーを用いて混合し、二成分現像剤を得た。
【0066】
(実施例7)
実施例6の「実施例1より得られた負帯電性電荷調整剤(5μm)」を、「実施例2より得られた負帯電性電荷調整剤(10μm)」に代えた以外は、実施例6と同様にして二成分現像剤を得た。
【0067】
(実施例8)
実施例6の「実施例1より得られた負帯電性電荷調整剤(5μm)」を、「実施例3より得られた負帯電性電荷調整剤(15μm)」に代えた以外は、実施例6と同様にして二成分現像剤を得た。
【0068】
(実施例9)
実施例6の「実施例1より得られた負帯電性電荷調整剤(5μm)」を、「実施例4より得られた負帯電性電荷調整剤(20μm)」に代えた以外は、実施例6と同様にして二成分現像剤を得た。
【0069】
(実施例10)
実施例6の「実施例1より得られた負帯電性電荷調整剤(5μm)」を、「実施例5より得られた負帯電性電荷調整剤(25μm)」に代えた以外は、実施例6と同様にして二成分現像剤を得た。
【0070】
(比較例3)
実施例6の「実施例1より得られた負帯電性電荷調整剤(5μm)」を、「比較例1より得られた負帯電性電荷調整剤(1μm)」に代えた以外は、実施例6と同様にして二成分現像剤を得た。
【0071】
(比較例4)
実施例6の「実施例1より得られた負帯電性電荷調整剤(5μm)」を、「比較例2より得られた負帯電性電荷調整剤(30μm)」に代えた以外は、実施例6と同様にして二成分現像剤を得た。
【0072】
実施例6〜10、比較例3、4より得られた二成分現像剤のブローオフ帯電量、帯電立ち上がり性、トナー飛散、画像濃度、画像カブリ、耐久性の評価を実施した。測定は、常温・常湿下(温度25℃、湿度50%)(条件Aとする)、高温・高湿下(温度35℃、湿度80%)(条件Bとする)、低温・低湿下(温度10℃、湿度15%)(条件Cとする)の条件にて測定した。評価方法を以下に示す。
【0073】
<ブローオフ帯電量、帯電立ち上がり性、トナー飛散、画像濃度、画像カブリ、耐久性の測定>
【0074】
(ブローオフ帯電量)
二成分現像液をブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製)により、窒素ガス中、1kg/cmの圧力下で30秒間ブローし、負帯電性電荷調整剤のブローオフ帯電量を測定した。
【0075】
(帯電立ち上がり性)
二成分現像液0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを条件A、B、Cで8時間調湿した後、ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm、10分間摩擦攪拌し、時間毎に帯電量を測定した。「摩擦時間1分の帯電量/摩擦時間10分の帯電量」を計算し、帯電の立ち上がり性を下記の基準で評価した。
◎:帯電立ち上がり性 0.7超
○:帯電立ち上がり性 0.7〜0.6
△:帯電立ち上がり性 0.6〜0.5
×:帯電立ち上がり性 0.5未満
【0076】
(トナー飛散)
トナー飛散は、トナー担持ローラーの真下に白紙をひき、画像形成時と同じように電圧を印加しながらトナー担持ローラーを線速180[mm/sec]で1分間回転させ、白紙の汚れ具合で評価した。
○:トナー飛散が見られないもの
×:トナー飛散が発生したもの
【0077】
(画像濃度の測定)
「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)で、直径5mm丸の画像の反射濃度を5点測定し、その平均値により評価した。
◎:反射濃度 1.45超
○:反射濃度 1.45〜1.40
△:反射濃度 1.39〜1.35
×:反射濃度 1.35未満
【0078】
(画像カブリの測定)
「反射濃度計」(リフレクトメーター モデルTC−6DS 東京電色社製)を用いて、画像形成前の転写紙の反射濃度(Dr)と、ベタ白画像をコピーした後の反射濃度の最悪値を(Ds)とを測定し、その差分(Ds−Dr)をカブリ値として評価した。
◎:カブリ値 0.1未満
○:カブリ値 0.1〜1.0
△:カブリ値 1.1〜2.0
×:カブリ値 2.0超
【0079】
(耐久性の測定)
同一トナーカートリッジをモノクロモード、白ベタ印字でA4紙を1,000枚印刷した後、ベタ画像を印字し画質の評価を行った。
○:画質の乱れのないもの
△:画質乱れが多少あるもの
×:かすれ筋、ムラ等の画質乱れがあるもの
【0080】
測定したブローオフ帯電量、帯電立ち上がり性、トナー飛散、画像濃度、画像カブリ、耐久性の評価結果を表2、3に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

表中の略語
A:条件A(温度25℃、湿度50%)
B:条件B(温度35℃、湿度80%)
C:条件C(温度10℃、湿度15%)
【0083】
表2、3のより、実施例6〜10の方が広い温度範囲及び湿度範囲において、トナー飛散、画像濃度、画像カブリ、耐久性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明である負帯電性電荷調整剤は、優れたブローオフ帯電量と帯電立ち上がり性を有するため、各種用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例1〜5、比較例1、2に用いた負帯電性電荷調整剤の粒度分布をプロットしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるベンジル酸誘導体の錯塩からなる負帯電性電荷調整剤において、メディアン径(D50)が5〜25μmであることを特徴とする負帯電性電荷調整剤。
【化1】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ同一でも異なってもよい、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、Xはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選ばれる1種を示す。)
【請求項2】
メディアン径(D50)が、10〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の負帯電性電荷調整剤。
【請求項3】
粒度分布曲線における粒径の半値幅が、100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の負帯電性電荷調整剤。
【請求項4】
水分含有量が、0.2%未満であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の負帯電性電荷調整剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の負帯電性電荷調整剤と、結着樹脂と着色剤とを含有されてなることを特徴とするトナー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−68313(P2012−68313A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211035(P2010−211035)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】