説明

負荷駆動装置

【課題】1つのPWMモジュールを内蔵するマイコンを用いて、2つの異なるPWM信号に基づいて負荷を駆動制御する負荷駆動装置を安価に提供する。
【解決手段】本発明に係る負荷駆動装置は、1つのPWMモジュール12を内蔵するマイコン14を含む制御回路部10aを有し、制御回路部10aは、PWMモジュール12のPWMマスター信号出力端子PWM1Hと接続される第1のスイッチング素子Q1と、PWMモジュール12のPWMスレーブ信号出力端子PWM1Lに接続され、PWMスレーブ信号sをオン/オフ制御する第1のスイッチSW1とを備え、PWMマスター信号mとは位相およびデューティ比の一方または両方が異なるPWM信号を発生させることにより、2つのPWMモジュールを内蔵するマイコンを含む制御回路部と同等に動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷駆動装置に関し、特に、パルス幅変調モジュールを内蔵するマイクロコンピュータを含む制御回路部を備えた負荷駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータまたは発光ダイオード等の負荷を駆動する負荷駆動装置において、図8に示すような、2つのパルス幅変調(PWM)モジュール(PWM1モジュール、PWM2モジュール)を内蔵するマイクロコンピュータ(以下、マイコンともいう)を含む制御回路が用いられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。このような負荷駆動装置は、通常、マイコンに内蔵された2つのPWMモジュール(PWM1モジュール、PWM2モジュール)によって、図9に示すような異なる2つのパルス幅変調(PWM)信号PWM1、PWM2をそれぞれ個別に発生させ、それによって負荷を駆動制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−304326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなマイコンは、内蔵するPWMモジュール数が多い程高価なものとなるため、そのようなマイコンを含む制御回路を用いた負荷駆動装置のコストが増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、1つのPWMモジュールを内蔵するマイコンを用いて、2つの異なるPWM信号に基づいて負荷を駆動制御する負荷駆動装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)駆動回路部と、該駆動回路部に制御信号を出力する制御回路部とを備え、前記駆動回路部によって負荷を駆動制御する負荷駆動装置において、前記制御回路部は、1つのパルス幅変調モジュールを内蔵するマイクロコンピュータを含み、前記パルス幅変調モジュールは、PWMマスター信号を出力するPWMマスター信号出力端子と、前記PWMマスター信号と同周期かつ同デューティ比の信号であるかまたは相補的な信号であるPWMスレーブ信号を出力するPWMスレーブ信号出力端子とを備えており、前記制御回路部は、前記パルス幅変調モジュールの前記PWMマスター信号出力端子と接続される第1のスイッチング素子と、前記パルス幅変調モジュールの前記PWMスレーブ信号出力端子に接続され、前記PWMマスター信号および前記PWMスレーブ信号の一方または両方をオン/オフ制御する第1のスイッチとを備え、前記PWMマスター信号とは位相およびデューティ比の一方または両方が異なるPWM信号を発生させることを特徴とする負荷駆動装置(請求項1)。
【0008】
(2)(1)項に記載の負荷駆動装置において、前記第1のスイッチング素子はバイポーラ型トランジスタであり、前記第1のスイッチング素子のコレクタ端子と前記PWMマスター信号出力端子とが接続され、前記第1のスイッチング素子のベース端子と前記PWMスレーブ信号出力端子とが前記第1のスイッチを介して接続されていることを特徴とする負荷駆動装置(請求項2)。
【0009】
(3)(1)項に記載の負荷駆動装置において、前記制御回路部は、第2のスイッチング素子と、前記マイクロコンピュータに内蔵され、それぞれハイ/ロウ信号を出力可能な複数のデジタル信号出力端子を有するI/Oモジュールとをさらに備えており、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子はバイポーラ型トランジスタであり、前記第1のスイッチング素子のコレクタ端子と前記PWMマスター信号出力端子とが接続され、前記第1のスイッチング素子のベース端子と前記I/Oモジュールの第1のデジタル信号出力端子とが接続されるとともに、前記第2のスイッチング素子のコレクタ端子に駆動電圧が入力され、前記第2のスイッチング素子のベース端子を、前記第1のスイッチを介して前記PWMスレーブ信号出力端子と接続するか、あるいは、第2のスイッチを介して前記I/Oモジュールの第2のデジタル信号出力端子と接続するかを選択可能な如く構成したことを特徴とする負荷駆動装置(請求項3)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る負荷駆動装置は、その制御回路部を、PWMマスター信号とは位相およびデューティ比の一方または両方が異なるPWM信号を発生するように構成したため、1つのPWMモジュールを内蔵するマイコンを含む制御回路部を、2つのPWMモジュールを内蔵するマイコンを含む制御回路部と同等に動作させることが可能となり、異なる2つのPWM信号に基づいて負荷を駆動制御する負荷駆動装置を安価に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態における負荷駆動装置の制御回路部の基本構成を示す図である。
【図2】図1に示す制御回路部の動作を示す波形図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における負荷駆動装置の回路構成を示す図である。
【図4】図3に示す負荷駆動装置において、調光信号のデューティ比と光出力の関係を示すグラフである。
【図5】図3に示す負荷駆動装置の要部の動作を示す波形図であり、(a)は、調光信号のデューティ比が規定値比以下の場合、(b)は、調光信号のデューティ比が規定値以上の場合をそれぞれ示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における負荷駆動装置の制御回路部の基本構成を示す図である。
【図7】図6に示す制御回路部の動作を示す波形図である。
【図8】従来の、2つのPWMモジュールを内蔵するマイクロコンピュータを示すブロック図である。
【図9】図8に示すマイクロコンピュータ出力されるPWM信号の例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における負荷駆動装置の制御回路部の基本構成を示す図である。図1に示す制御回路部10aは、マイクロコンピュータ(以下、マイコンともいう)14と、第1のスイッチング素子Q1とを備えており、マイコン14は、1つのパルス幅変調モジュール(以下、PWMモジュールともいう)12と、I/Oモジュール13とを内蔵し、第1のスイッチング素子Q1は、バイポーラ型トランジスタからなる。
【0013】
PWMモジュール12は、PWMマスター信号を出力するPWMマスター信号出力端子PWM1Hと、PWMスレーブ信号を出力するPWMスレーブ信号出力端子PWM1Lを有しており、PWMマスター信号出力端子PWM1Hは、マイコン14の第1の出力端子OUT1に接続され、PWMスレーブ信号出力端子PWM1Lは、第1のスイッチSW1を介して、マイコン14の第2の出力端子OUT2に接続されている。また、I/Oモジュール13は、第1、第2のデジタル信号出力端子Port1、Port2を有しており、第1のデジタル信号出力端子Port1は、マイコン14の第3の出力端子OUT3に接続され、第2のデジタル信号出力端子Port2は、第2のスイッチSW2を介して、マイコン14の第2の出力端子OUT2に接続されている。
【0014】
マイコン14の第1の出力端子OUT1は、第1のスイッチング素子Q1のコレクタ端子に接続されて、制御回路部10aの第1の信号ラインAを構成する。また、マイコン14の第2の出力端子OUT2は、それ自体で制御回路部10aの第2の信号ラインBを構成し、マイコン14の第3の出力端子OUT3は、第1のスイッチング素子Q1のベース端子に接続されている。
【0015】
ここで、マイコン14は、中央演算処理部(CPU)、内蔵のプログラムメモリ及びデータメモリ、タイマー等を備えた周知のマイクロコンピュータ(または、マイクロコントローラ)システムとして構成される。マイコン14において、PWMモジュール12は、例えば、専用のレジスタに所定の定数値を設定することによって、それらの定数値に応じた周期及びデューティ比を有するPWMマスター信号m及びPWMスレーブ信号sを出力する。ここで、PWMスレーブ信号sは、PWMマスター信号mと同周期かつ同デューティ比の信号であるか、または、PWMマスター信号mとハイ/ロウの論理が反転した相補的な信号であり、マイコン14は、PWMスレーブ信号sとしていずれの信号を出力するかを設定可能なものであってもよい。また、マイコン14において、I/Oモジュール13は、第1、第2のデジタル信号出力端子Port1、Port2の出力のハイ(High)/ロウ(Low)のレベルを、ソフトウェアの制御に従って切替えることによって、所定のデジタル信号(ハイ/ロウ信号)P1、P2を出力するものである。
【0016】
以上のように構成された制御回路部10aの動作について、図2を参照して説明する。尚、以下の説明において、PWMスレーブ信号sは、PWMマスター信号mと同一の信号である(すなわち、PWMマスター信号mと同周期かつ同デューティ比の信号が同位相で出力されている)ものとする。
【0017】
図2(a)に示すように、制御回路部10aの第1の信号ラインAに発生する信号は、I/Oモジュール13の第1のデジタル信号出力端子Port1から出力されるハイ/ロウ信号P1によって、次のように制御される。すなわち、ハイ/ロウ信号P1がロウレベルのとき、第1のスイッチング素子Q1はオフとなり、制御回路部10aの第1の信号ラインAには、PWMマスター信号mが発生する。一方、ハイ/ロウ信号P1がハイレベルのとき、第1のスイッチング素子Q1はオンとなり、制御回路部10aの第1の信号ラインAは、ロウレベルに固定される。
【0018】
制御回路部10aにおいて、その第2の信号ラインBに発生する信号は、図2(b)、(c)に示すように、第1、第2のスイッチSW1、SW2のうちのいずれか一方のみをオンにすることによって、次のように選択される。すなわち、第1のスイッチSW1をオンかつ第2のスイッチSW2をオフとした場合、図2(b)に示すように、制御回路部10aの第2の信号ラインBには、PWMスレーブ信号sが発生する。また、第1のスイッチSW1をオフかつ第2のスイッチSW2をオンとした場合、図2(c)に示すように、制御回路部10aの第2の信号ラインBには、I/Oモジュール13の第2のデジタル信号出力端子Port2から出力されるハイ/ロウ信号P2が発生する。
【0019】
この際、ハイ/ロウ信号P2の波形は、マイコン14に組み込まれたソフトウェアの制御に従って任意の波形に設定することができ、例えば、PWMマスター信号mと同一の信号でも相補的な信号ではない、異なるPWM信号とすることができる。図2(c)に示す例では、ハイ/ロウ信号P2は、PWMマスター信号m(この例の場合、PWMスレーブ信号sと同一の信号)とは異なる周期及びデューティ比を有するPWM信号である。あるいは、ハイ/ロウ信号P2は、PWMモジュール12のマスター信号mと、(同周期かつ同デューティ比であっても)、異なる位相を有するPWM信号となるように設定するものであってもよい。
【0020】
図3〜図5を参照して後述するように、制御回路部10aは、典型的には、次のような2つの動作状態を有する。第1の動作状態は、第1のスイッチSW1をオンかつ第2のスイッチSW2をオフにして第2の信号ラインBにPWMスレーブ信号sを発生させ、同時に、第1のスイッチング素子Q1をオンにして、第1の信号ラインAをロウレベルに固定した(言い換えれば、デューティ比が0%のPWM信号を発生させた)状態である。そして、第2の動作状態は、第1のスイッチング素子Q1をオフにして第1の信号ラインAにPWMマスター信号mを発生させ、同時に、第1のスイッチSW1をオフかつ第2のスイッチSW2をオンにして、第2の信号ラインBに、ハイ/ロウ信号P2からなるPWM信号を発生させた状態である。
【0021】
制御回路部10aによれば、例えば、上記第1、第2の動作状態のように、第1、第2の出力ラインA、Bの一方にPWMマスター信号m(または、それと同一のPWMスレーブ信号s)を発生させるとともに、他方に、PWMマスター信号mとは異なるPWM信号を発生させることにより、1つのPWMモジュール12を内蔵するマイコン14を用いて、第1、第2の信号ラインA、Bに、互いに異なる2つのPWM信号を発生させることが可能となる。このように、制御回路部10aは、2つのPWMモジュールを内蔵するマイコンと比較して安価な1つのPWMモジュール12を内蔵するマイコン14を用いて、2つのPWMモジュールを内蔵するマイコンを含む制御回路部と同等の動作を可能としたものである。
【0022】
ここで、制御回路部10aにおいて、第1、第2のスイッチSW1、SW2は、任意の適切なハードウェアまたはソフトウェア、あるいはその組合せを用いてマイコン14に実装することが可能である。例えば、マイコン14は、第2の出力端子OUT2の出力信号として、PWMスレーブ信号sまたはハイ/ロウ信号P2のいずれを出力するかを、ソフトウェアにより選択可能なように構成され、その選択によって実質的に第1、第2のスイッチSW1、SW2のオン/オフ機能を実現するものであってもよい。
さらに、第1、第2のスイッチSW1、SW2は、マイコン14に内蔵されるものではなく、任意の適切なスイッチ素子からなる第1、第2のスイッチSW1、SW2をマイコン14に外付けし、そのオン/オフ制御をマイコン14により実施するものであってもよい。
【0023】
次に、図3〜図5を用いて、本発明の第1の実施形態における負荷駆動装置について説明する。図3に示す負荷駆動装置1は、交流電源Vacに接続され力率改善(PFC)回路部21、PFC回路部21に接続された降圧コンバータ回路部22を備え、降圧コンバータ回路部22には、負荷である発光ダイオード(LED)23が接続されており、交流電源Vacの交流入力電圧を所望の直流電圧に変換してLED23に印加することによって、LED23を点灯駆動するLED駆動装置である。そして、負荷駆動装置1は、降圧コンバータ回路部22にLED駆動信号を出力して、LED23を駆動制御するLEDドライバ(駆動回路部)24、LEDドライバ24に制御信号を出力する制御回路部10b、制御回路部10bに調光信号を出力する調光信号生成部25を備えている。
【0024】
負荷駆動装置1の制御回路部10bは、その基本構成として図1に示す制御回路部10a(以下、制御回路部10bに含まれる制御回路部10aを基本構成部10aともいう)を含むとともに、さらに、バイポーラ型トランジスタからなる第2のスイッチング素子Q2を備えている。第2のスイッチング素子Q2のコレクタ端子には駆動電圧(図示の例では、5V)が入力され、ベース端子には基本構成部10aの第2の信号ラインBが接続されている。また、第2のスイッチング素子Q2のコレクターエミッタ間には、抵抗R2とコンデンサC1の並列回路と抵抗R1との直列回路が接続されている。
【0025】
制御回路部10bにおいて、基本構成部10aの第1の信号ラインAに発生するPWM信号は、制御信号aとしてLEDドライバ24に出力され、基本構成部10aの第2の信号ラインBに発生するPWM信号は、制御回路部10b内で、第2のスイッチング素子Q2のオン/オフ駆動に使用される。そして、制御回路部10bでは、第3の信号ラインCに発生するコンデンサC1の両端間電圧が、制御信号bとしてLEDドライバ24に出力される。
【0026】
負荷駆動装置1は、調光信号生成部25から制御回路部10bに出力されるPWM信号からなる調光信号のデューティ比に応じてLED23の光出力(輝度)を調整するように構成されている。具体的には、図4に示すように、LED23の光出力(輝度)は、調光信号のデューティ比が0%から所定の下限値までが最高出力に対応し、調光信号のデューティ比の所定の上限値から100%までが最低出力に対応し、上記下限値から上限値までの範囲において、調光信号のデューティ比が増大する程低下するように制御される。
【0027】
そして、負荷駆動装置1では、調光信号のデューティ比が規定値よりも小さい(所望のLEDの輝度が比較的高い)場合、降圧コンバータ回路部22からLED23に印加される駆動電圧(ひいては、LED23に通電する駆動電流)の増減によりLED23の輝度を調整するDC制御を実施し、調光信号のデューティ比が規定値よりも大きい(所望のLEDの輝度が比較的低い)場合、DC制御のみによりLED23の輝度を抑制することが難しいため、LED23を点滅させることによって平均輝度を調整するPWM制御をDC制御と併用し、LED23の輝度を調整する。
【0028】
LED23の上述したDC制御及びPWM制御は、LEDドライバ24が、制御回路部10bから入力する制御信号a、bに基づいて、所定のデューティ比を有するPWM信号からなるLEDドライブ信号を、出力端子Dから降圧コンバータ回路部22に出力し、降圧コンバータ回路部22が、入力したLEDドライブ信号に基づいて、その出力電圧(すなわち、LED23に印加される駆動電圧)を調整することによって実行される。
【0029】
この際、制御回路部10bの第3の信号ラインCに発生する制御信号bはDC制御用の信号であり、この例では、LEDドライバ24は、制御信号bのレベルが低くなる程、LEDドライブ信号のデューティ比を減少させるように構成され、また、降圧コンバータ回路部22は、LEDドライブ信号のデューティ比が減少する程、その出力電圧を低下させるように構成されている。そして、制御回路部10bの第1の信号ラインAに発生する制御信号aはPWM制御用の信号であり、この例では、LEDドライバ24は、制御信号aがハイレベルの期間中、LEDドライブ信号の出力を停止する(出力端子Dをロウレベルに固定する)ように構成され、降圧コンバータ回路部22は、LEDドライブ信号が入力されない(LEDドライブ信号がロウレベルを持続している時間が一定の時間を超えた)場合、その出力電圧が、少なくともLED23が消灯する閾値電圧以下(例えば、0V)に低下するように構成されている。
【0030】
尚、本発明は、降圧コンバータ回路部22及びLEDドライブ信号の具体的態様によって限定されるものではないが、例えば、降圧コンバータ回路部22は、周知のスイッチング方式のDC―DCコンバータからなり、LEDドライブ信号は、DC―DCコンバータのスイッチング素子を、LEDドライブ信号のデューティ比に応じたデューティ比を有するようにオン/オフ動作させる駆動信号として用いられるものであってもよい。
【0031】
以上のように構成された負荷駆動装置1におけるLED23の駆動制御について具体的に説明すれば、次の通りである。
まず、マイコン14は、調光信号生成部25から入力される調光信号のデューティ比に応じて、PWMモジュール12のPWMマスター信号m(したがって、PWMスレーブ信号s)のデューティ比を決定する。この例では、マイコン14は、調光信号のデューティ比が増大する程、PWMマスター信号m(及びPWMスレーブ信号s)のデューティ比が増大するように、PWMモジュール12を設定する。
【0032】
そして、マイコン14は、調光信号のデューティ比と所定の規定値とを比較し、調光信号のデューティ比が規定値よりも小さい場合、制御回路部10bの基本構成部10aを、上述した第1の動作状態により動作させる。このとき、図5(a)に示すように、第1のスイッチSW1はオンかつ第2のスイッチSW2はオフとなって、制御回路部10bの第2のスイッチング素子Q2のベース端子は、PWMモジュール12のPWMスレーブ信号出力端子PWM1Lに接続される。また、I/Oモジュール13の第1のデジタル信号出力端子Port1から出力されるハイ/ロウ信号P1はハイレベルとなり、これにより第1のスイッチング素子Q1がオンとなって、第1の信号ラインAはロウレベルに固定される。
【0033】
第1の動作状態では、第2の信号ラインBにPWMスレーブ信号sが発生するため、第2のスイッチング素子Q2は、このPWMスレーブ信号sによってオン/オフ駆動される。そして、PWMスレーブ信号sがロウレベルのとき、第2のスイッチング素子 Q2がオフとなってコンデンサC1が充電され、PWMスレーブ信号sがハイレベルのとき、第2のスイッチング素子 Q2がオンとなってコンデンサC1が放電される。この充放電動作の繰り返しにより、第3の信号ラインCに、コンデンサC1の両端間電圧であるDC制御用の制御信号bが発生し、LEDドライバ24に出力される。コンデンサC1の両端間電圧(すなわち、制御御信号b)は、PWMスレーブ信号sのデューティ比が増大すると、上記の充放電動作の繰り返しにおける放電時間の割合が増大するため、低下する。
【0034】
そして、第1の動作状態では、第1の信号ラインA(したがって、PWM制御用の制御信号a)はロウレベルに固定されているため、LEDドライバ24は、LEDドライブ信号を、その出力端子Dから降圧コンバータ回路部22に、(出力の停止期間を設けることなく)連続して出力する。このとき、上述したように、LEDドライブ信号のデューティ比は、制御信号bが低下するにつれて小さくなるように設定され、また、降圧コンバータ回路部22は、LEDドライブ信号のデューティ比が小さくなる程、その出力電圧が低下するように構成されているため、調光信号のデューティ比が増大するにつれて、LED23に印加される駆動電圧(ひいては、LED23に通電される駆動電流)が低下し、LED23の輝度が低下する。負荷駆動装置1では、調光信号のデューティ比が規定値よりも小さい場合、このようにしてLED23の輝度のDC制御が実施される。
【0035】
一方、マイコン14は、調光信号のデューティ比と所定の規定値とを比較して、調光信号のデューティ比が規定値よりも大きい場合、制御回路部10bの基本構成部10aを、上述した第2の動作状態により動作させる。このとき、図5(b)に示すように、第1のスイッチSW1はオフかつ第2のスイッチSW2はオンとなって、制御回路部10bの第2のスイッチング素子Q2のベース端子は、I/Oモジュール13の第2のデジタル信号出力端子Port2に接続される。また、I/Oモジュール13の第1のデジタル信号出力端子Port1から出力されるハイ/ロウ信号P1はロウレベルとなり、これにより第1のスイッチング素子Q1がオフとなって、第1の信号ラインAにPWMマスター信号mが発生する。
【0036】
第2の動作状態では、第2の信号ラインBにハイ/ロウ信号P2が発生するため、第2のスイッチング素子Q2は、このハイ/ロウ信号P2によってオン/オフ駆動される。そして、ハイ/ロウ信号P2がロウレベルのとき、第2のスイッチング素子 Q2がオフとなってコンデンサC1が充電され、ハイ/ロウ信号P2がハイレベルのとき、第2のスイッチング素子 Q2がオンとなってコンデンサC1が放電される。この充放電動作の繰り返しにより、第3の信号ラインCに、コンデンサC1の両端間電圧であるDC制御用の制御信号bが発生し、LEDドライバ24に出力される。コンデンサC1の両端間電圧(すなわち、制御御信号b)は、ハイ/ロウ信号P2のデューティ比が増大すると、上記の充放電動作の繰り返しにおける放電時間の割合が増大するため、低下する。
【0037】
但し、第2の動作状態では、ハイ/ロウ信号P2は、マイコン14に組み込まれたソフトウェアの制御に従って、PWMモジュール12の設定に依存することなく設定された波形を有しており、典型的には、PWMマスター信号mとは異なる周期及びデューティ比を有している。例えば、ハイ/ロウ信号P2は、調光信号のハイレベルへの立ち上がりと同期してハイレベルに立ち上げ、例えばタイマー割込みを用いて、所定の時間経過後にロウレベルに立ち下げる動作を繰り返すことによって、発生させるものであってもよい。このとき、ハイ/ロウ信号P2のデューティ比は、好ましくは、調光信号のデューティ比の規定値に対応するPWMマスター信号mのデューティ比以上のデューティ比を有するように設定され、さらに、この例では、ハイ/ロウ信号P2のデューティ比は、調光信号のデューティ比に依らずに、一定となるように設定されているものとする。
【0038】
一方、第2の動作状態において、第1の信号ラインAにはPWMマスター信号mが発生し、この信号がPWM制御用の制御信号aとしてLEDドライバ24に出力される。これによって、LEDドライバ24は、PWMマスター信号mがロウレベルである間、その出力端子Dから降圧コンバータ回路部22へ、制御信号bのレベルに応じたデューティ比を有するLEDドライブ信号を出力し、PWMマスター信号mがハイレベルである間、LEDドライブ信号の出力を停止して、その間、LED23は消灯する。したがって、LED23は、その全駆動時間にわたって、ハイ/ロウ信号P2のデューティ比に応じてDC制御された輝度で点灯する点灯時間とLED23を消灯する消灯時間とを、PWMマスター信号mに同期して交互に繰り返することになり、調光信号のデューティ比の増大につれてPWMマスター信号mのデューティ比が増大すると、LED23の全駆動時間における消灯時間の割合が増大するため、ハイ/ロウ信号P2のデューティ比(したがって、制御信号bのレベル)が一定であっても、平均輝度が低下する。
【0039】
負荷駆動装置1では、調光信号のデューティ比が規定値よりも大きい場合、このようにしてPWM制御とDC制御とを併用し、LED23の輝度を制御するものである。尚、本例では、ハイ/ロウ信号P2のデューティ比は、調光信号のデューティ比に依らずに一定となるように設定されているものとしたが、ハイ/ロウ信号P2のデューティ比も、例えばタイマー割込みの値を、調光信号のデューティ比に応じて設定させることによって、調光信号の増大に伴って増大させるものであってもよい。
【0040】
このように、負荷駆動装置1によれば、1つのPWMモジュール12を内蔵するマイコン14を含む制御回路部10bを、2つのPWMモジュールを内蔵するマイコンを含む制御回路部と同等に動作させることが可能となり、第1、第2の信号ラインA、Bに発生する2つの異なるPWM信号に基づいて負荷(LED23)を駆動制御する負荷駆動装置を、安価に提供することが可能となる。
【0041】
次に、図6及び図7を参照して、本発明の第2の実施形態における負荷駆動装置について説明する。但し、本発明に係る負荷駆動装置は、その制御回路部を主要な特徴を有するものであり、制御回路部から出力される制御信号を入力する駆動回路部を備え、駆動回路部によって負荷を駆動制御する負荷駆動装置である限り、その具体的構成には依らないものであるため、以下の説明では、負荷駆動装置の備える制御回路部について詳述する。また、以下の説明において、上述した第1の実施形態における制御回路部10a、10bと同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付して参照する。
【0042】
図6は、本発明の第2の実施形態における負荷駆動装置の制御回路部の基本構成を示す図である。図6に示す制御回路部10cは、1つのPWMモジュール12を内蔵するマイコン14と、第1のスイッチング素子Q1とを備えており、第1のスイッチング素子Q1は、バイポーラ型トランジスタからなる。PWMモジュール12は、PWMマスター信号mを出力するPWMマスター信号出力端子PWM1Hと、PWMスレーブ信号sを出力するPWMスレーブ信号出力端子PWM1Lを有しており、PWMマスター信号出力端子PWM1Hは、マイコン14の第1の出力端子OUT1に接続され、PWMスレーブ信号出力端子PWM1Lは、第1のスイッチSW1を介して、マイコン14の第2の出力端子OUT2に接続されている。
【0043】
マイコン14の第1の出力端子OUT1は、第1のスイッチング素子Q1のコレクタ端子に接続されて、制御回路部10cの第1の信号ラインAを構成する。また、マイコン14の第2の出力端子OUT2は、第1のスイッチング素子Q1のベース端子に接続されて、制御回路部10cの第2の信号ラインBを構成する。
【0044】
ここで、マイコン14は、中央演算処理部(CPU)、内蔵のプログラムメモリ及びデータメモリ、タイマー等を備えた周知のマイクロコンピュータ(または、マイクロコントローラ)システムとして構成される。マイコン14において、PWMモジュール12は、例えば、専用のレジスタに所定の定数値を設定することによって、それらの定数値に応じた周期及びデューティ比を有するPWMマスター信号m及びPWMスレーブ信号sを出力する。
【0045】
ここで、図7を参照して、制御回路部10cの動作を説明すれば、次の通りである。図7に示すように、マイコン14のPWMスレーブ信号出力端子PWM1L端子から出力されるPWMスレーブ信号sは、PWMマスター信号出力端子PWM1Hから出力されるPWMマスター信号mと同一の信号である(すなわち、PWMマスター信号mと同周期かつ同デューティ比の信号が同位相で出力されている)。
【0046】
そして、制御回路部10cでは、第1のスイッチSW1は、PWMマスター信号m(及びPWMスレーブ信号s)に同期して、それらの2倍の周期でオン/オフされる。これによって、PWMマスター信号m(及びPWMスレーブ信号s)の2周期間を、次の4つのフェーズに分類することができる。すなわち、(1)PWMマスター信号mがハイレベル、PWMスレーブ信号sがハイレベル、第1のスイッチSW1がオンの第1フェーズ、(2)PWMマスター信号mがロウレベル、PWMスレーブ信号sがロウレベル、第1のスイッチSW1がオンの第2フェーズ、(3)PWMマスター信号mがハイレベル、PWMスレーブ信号sがハイレベル、第1のスイッチSW1がオフの第3フェーズ、(4)PWMマスター信号mがロウレベル、PWMスレーブ信号sがロウレベル、第1のスイッチSW1がオフの第4フェーズである。
【0047】
第1及び第2フェーズでは、第1のスイッチSW1がオンであるため、第2の信号ラインBには、PWMスレーブ信号sのハイ/ロウ信号がそのまま発生する。さらに、この間、PWMモジュール12のPWMスレーブ信号出力端子PWM1Lは、第1のスイッチング素子Q1のベース端子に接続される。したがって、第1フェーズにおいて、PWMスレーブ信号sがハイレベルである間、第2のスイッチング素子Q2はオンとなるため、第1の信号ラインAはロウレベルに固定される。また、第2フェーズにおいて、PWMスレーブ信号sがロウレベルである間、第2のスイッチング素子Q2はオフとなり、第1の信号ラインAには、PWMマスター信号mのロウレベルが発生する。
【0048】
第3及び第4フェーズでは、第1のスイッチSW1がオフであるため、第2の信号ラインBはロウレベルに固定される。さらに、この間、第1のスイッチング素子Q1はオフであるため、第1の信号ラインAには、PWMマスター信号mのハイ/ロウ信号がそのまま発生する。
【0049】
このように、制御回路部10cでは、より簡易な構成によって、第1、第2の信号ラインA、Bに、PWMマスター信号m(及びPWMスレーブ信号s)とは周期及びデューティ比が異なるとともに、互いに位相が180°ずれている点で異なる2つのPWM信号を発生させることができる。
【0050】
以上、本発明を好ましい実施形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1、第2のスイッチング素子Q1、Q2は、バイポーラ型トランジスタに限定されるものではなく、MOSFET等の他のスイッチング素子であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:負荷駆動装置、10a:制御回路部(基本構成部)、10b、10c:制御回路部、12:PWMモジュール、13:I/Oモジュール、14:マイクロコンピュータ(マイコン)、21:力率改善(PFC)回路部、22:降圧コンバータ回路部、23:発光ダイオード(LED)、24:LEDドライバ(駆動回路部)、25:調光信号生成部、A:第1の信号ライン、a:PWM制御用の制御信号、B:第2の信号ライン、b:DC制御用の制御信号、C:第3の信号ライン、C1:コンデンサ、D:(LEDドライバの)出力端子、m:PWMマスター信号、OUT1:(マイコンの)第1の出力端子、OUT2:(マイコンの)第2の出力端子、OUT3:(マイコンの)第3の出力端子、P1、P2:ハイ/ロウ信号、Port1:第1のデジタル信号出力端子、Port2:第2のデジタル信号出力端子、Q1:第1のスイッチング素子、Q2:第2のスイッチング素子、R1、R2:抵抗、s:PWMスレーブ信号、Vac:交流電源、SW1:第1のスイッチ、SW2:第2のスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路部と、該駆動回路部に制御信号を出力する制御回路部とを備え、前記駆動回路部によって負荷を駆動制御する負荷駆動装置において、
前記制御回路部は、1つのパルス幅変調モジュールを内蔵するマイクロコンピュータを含み、前記パルス幅変調モジュールは、PWMマスター信号を出力するPWMマスター信号出力端子と、前記PWMマスター信号と同周期かつ同デューティ比の信号であるかまたは相補的な信号であるPWMスレーブ信号を出力するPWMスレーブ信号出力端子とを備えており、
前記制御回路部は、前記パルス幅変調モジュールの前記PWMマスター信号出力端子と接続される第1のスイッチング素子と、前記パルス幅変調モジュールの前記PWMスレーブ信号出力端子に接続され、前記PWMマスター信号および前記PWMスレーブ信号の一方または両方をオン/オフ制御する第1のスイッチとを備え、前記PWMマスター信号とは位相およびデューティ比の一方または両方が異なるPWM信号を発生させることを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチング素子はバイポーラ型トランジスタであり、前記第1のスイッチング素子のコレクタ端子と前記PWMマスター信号出力端子とが接続され、前記第1のスイッチング素子のベース端子と前記PWMスレーブ信号出力端子とが前記第1のスイッチを介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置。
【請求項3】
前記制御回路部は、第2のスイッチング素子と、前記マイクロコンピュータに内蔵され、それぞれハイ/ロウ信号を出力可能な複数のデジタル信号出力端子を有するI/Oモジュールとをさらに備えており、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子はバイポーラ型トランジスタであり、前記第1のスイッチング素子のコレクタ端子と前記PWMマスター信号出力端子とが接続され、前記第1のスイッチング素子のベース端子と前記I/Oモジュールの第1のデジタル信号出力端子とが接続されるとともに、前記第2のスイッチング素子のコレクタ端子に駆動電圧が入力され、前記第2のスイッチング素子のベース端子を、前記第1のスイッチを介して前記PWMスレーブ信号出力端子と接続するか、あるいは、第2のスイッチを介して前記I/Oモジュールの第2のデジタル信号出力端子と接続するかを選択可能な如く構成したことを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−34493(P2012−34493A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171994(P2010−171994)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】