説明

貨幣識別装置のプログラム更新システム

【課題】貨幣識別装置のプログラム更新において、使用済みのバージョンアップ用の記録媒体の再利用を不可能とする。
【解決手段】バージョンアップ後に、記録媒体30の特殊エリアにある利用許可情報を不許可に書き換える。再利用する場合は、貨幣識別装置に再利用禁止無効化手段28を搭載した基板40を装着し、利用許可情報を不許可から許可に変更することにより再利用を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣の真偽や金種などを識別する貨幣識別装置の不揮発性メモリ内に記憶された貨幣識別の手順/方法などを示す識別プログラムや、貨幣の情報などを含む識別テーブルをメモリカード等の記録媒体を用いて更新する貨幣識別装置のプログラム更新システムに関するものであり、特に、使用済みの記録媒体からのプログラムの再ダウンロードを不可能にするとともに、所定の条件下においてのみそれを可能とするようなシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の貨幣識別装置は識別プログラムや識別テーブルを貨幣識別装置内のROMに格納しており、これら識別プログラムや識別テーブルの更新の際にはROMそのものの交換を行っていた。この場合、識別プログラムと識別テーブルの整合性は、ROMに貼られたバージョン情報の記されたシールなどを作業者が読んで確認し、作業者自身が判断するようになっている。
【0003】
また、特許文献1には、ROMの代わりにメモリカードに識別プログラムや識別テーブルを格納しておき、更新の際にメモリカードを交換する方法が開示されている。この場合、メモリカード内の識別プログラムや識別テーブルのバージョンが貨幣識別装置の表示部に表示され、これを作業者ないしはオペレータが確認し、識別プログラムや識別テーブルの整合性の良否を判断するようにしている。
【0004】
貨幣識別装置においては、識別する貨幣の種類の増加や変更、新たな偽札への対応、顧客の要求、その他様々な理由により識別プログラムや識別テーブルを更新する必要がしばしば生じ、そのような場合、上述のような従来の技術においては、いずれも整合性の確認は識別プログラムと識別テーブルの対応表などをメーカー側で作成し、作業者又はオペレータがその対応表を見て行わなければならないので、多大な時間、経費、工数がかかってしまうという問題があった。さらに、整合性の確認作業は作業者又はオペレータが行うので人為的ミスの発生が避けられず、そのため、バージョンの不整合により、貨幣識別装置の制御不能、貨幣識別装置の制御異常や識別テーブルデータ異常による識別貨幣のリジェクト多発や金種、真偽の誤認識の発生などの様々な動作不良を確実に防止することができなかった。これらのことは、製品の信頼性、品質保証上大きな問題となっており、その解決が強く望まれていた。
【0005】
かかる問題を解決するものとして、貨幣識別装置に内蔵されている2種類の不揮発性メモリに個別に記憶されている貨幣識別の手順/方法を示す識別プログラム、貨幣の情報を含む識別テーブルを更新用記録媒体(例えばメモリカード)によって更新するものが本願の出願人によって既に提案されている(特許文献2参照)。その際、更新用記録媒体内に記憶されている識別プログラムと識別テーブルの整合性に関する情報を参照して、更新後の識別プログラムと識別テーブルの整合性を判定し、整合する場合のみ更新するか、或は、更新用記録媒体及び貨幣識別装置の各識別プログラムと識別テーブルのバージョンをそれぞれ比較し、更新用記録媒体に記憶されているバージョンの方が新しく、かつ更新後の識別プログラムと識別テーブルが整合する場合のみ更新するようにしている。
これによって、従来は面倒であったバージョンアップ作業が顧客(ユーザー)自身の手で簡単に行えるようになった。
【特許文献1】特許第2824439号公報
【特許文献2】特開2000−231648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかるバージョンアップ用のプログラムの開発にはコストがかかるので、更新用記録媒体を有料で販売して開発コストを回収する必要があるが、一度正規に購入した更新用記録媒体を再利用して同一機種の他の貨幣識別装置のバージョンアップを行うことは可能であるので、バージョンアップされる貨幣識別装置の台数に比例した数の更新用記録媒体又はソフトが売れないという問題がある。
本発明は上述のような事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、使用済みの更新用記録媒体の再利用を不可能とする貨幣識別装置のプログラム更新システムを提供し、併せて、所定の条件下においてのみ再利用を可能とするような貨幣識別装置のプログラム更新システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、貨幣識別装置のプログラム更新システムに関し、本発明の上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、記録媒体に記録された貨幣識別装置のバージョンアップ用のプログラム及び/又はデータ(以下、プログラム等という。)を前記貨幣識別装置にダウンロードして前記プログラム等を更新する際に、前記記録媒体に記録されたプログラム等による更新回数を制限する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記記録媒体には、少なくとも、前記プログラム等の前記貨幣識別装置へのダウンロードを許可するか否かの情報であるダウンロード許可情報と、前記バージョンアップ用のプログラム等とが格納されており、前記貨幣識別装置は、前記記録媒体から前記ダウンロード許可情報と前記プログラム等とを読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段によって読み出された前記ダウンロード許可情報の内容が、ダウンロード許可に関するものか不許可に関するものかの判定を行う許否判定手段と、バージョンアップされる前のプログラム等が記憶されている記憶手段と、前記バージョンアップされる前のプログラム等を前記バージョンアップ用のプログラム等によって更新するプログラム更新手段とを備えるとともに、前記許否判定手段によってダウンロード許可が判定されて、前記読み出し手段によって前記プログラム等がダウンロードされ、前記プログラム更新手段によって前記プログラム等が更新されると、前記記録媒体内の前記ダウンロード許可情報の内容を不許可に書き換える再利用禁止設定手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項1に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システムによってダウンロード許可情報が不許可に書き換えられた記録媒体を再利用して前記貨幣識別装置の記憶手段に記憶されているプログラム等を更新する貨幣識別装置のプログラム更新システムは、
前記貨幣識別装置が、前記読み出し手段によって読み出された前記ダウンロード許可情報を無効にするための再利用禁止無効化手段をさらに備えるとともに、前記許否判定手段は、前記ダウンロード許可情報の内容がダウンロード不許可に関するものであると判定すると、前記再利用禁止無効化手段に対して所定の信号を送り、前記再利用禁止無効化手段から前記信号に対応した信号が返ってきたときに前記記録媒体からのプログラム等のダウンロードを許可することを特徴とする。
【0009】
本発明は、貨幣識別装置のプログラム更新システムに関し、本発明の上記目的を達成するための請求項3に係る発明は、記録媒体に記録された貨幣識別装置のバージョンアップ用のプログラム等を前記貨幣識別装置にダウンロードして前記プログラム等を更新する際に、前記記録媒体に記録されたプログラム等による更新回数を制限する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記記録媒体には、少なくとも、前記貨幣識別装置へダウンロードされる前記プログラム等による更新を許可するか否かの情報である更新許可情報と、前記バージョンアップ用のプログラム等とが格納されており、前記貨幣識別装置は、前記記録媒体から前記更新許可情報と前記プログラム等とを読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段によって読み出された前記更新許可情報の内容が、更新許可に関するものか不許可に関するものかの判定を行う許否判定手段と、バージョンアップされる前のプログラム等が記憶されている記憶手段と、前記バージョンアップされる前のプログラム等を、前記ダウンロードされたバージョンアップ用のプログラム等によって更新するプログラム更新手段とを備えるとともに、前記許否判定手段によって更新許可が判定されて、前記プログラム更新手段によって前記プログラム等が更新されると、前記記録媒体内の前記更新許可情報の内容を不許可に書き換える再利用禁止設定手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システムによってダウンロード許可情報が不許可に書き換えられた記録媒体を再利用して前記貨幣識別装置の記憶手段に記憶されているプログラム等を更新する貨幣識別装置のプログラム更新システムは、
前記貨幣識別装置が、前記読み出し手段によって読み出された前記更新許可情報を無効にするための再利用禁止無効化手段をさらに備えるとともに、前記許否判定手段は、前記更新許可情報の内容が更新不許可に関するものであると判定すると、前記再利用禁止無効化手段に対して所定の信号を送り、前記再利用禁止無効化手段から前記信号に対応した信号が返ってきたときに前記記憶手段内のプログラム等を更新することを許可することを特徴とする。
【0011】
本発明は、貨幣識別装置のプログラム更新システムに関し、本発明の上記目的を達成するための請求項6に係る発明は、記録媒体に記録された貨幣識別装置のバージョンアップ用のプログラム等を前記貨幣識別装置にダウンロードして前記プログラム等を更新する際に、前記記録媒体に記録されたプログラム等の更新回数を制限する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記記録媒体には、少なくとも、暗号化キーと該暗号化キーを用いて暗号化された暗号化プログラム等とが格納されており、前記貨幣識別装置は、前記記録媒体から前記暗号化キーと前記暗号化されたプログラム等とを読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段によって読み出された前記暗号化されたプログラム等を、前記暗号化キーを復号化キーとして用いて復号化する復号化手段と、バージョンアップされる前のプログラム等が記憶されている記憶手段と、前記バージョンアップされる前のプログラム等を前記復号化されたプログラム等によって更新するプログラム更新手段と、該プログラム更新手段によって前記プログラム等が更新されると、前記暗号化キーを所定のアルゴリズムを用いて改変し、該改変された暗号化キーを所定のシーケンスで前記記録媒体に書き込み、前記記録媒体内の暗号化キーを書き換えるキー改変手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システムによって暗号化キーが書き換えられた記録媒体を再利用して前記貨幣識別装置の記憶手段に記憶されているプログラム等を更新する貨幣識別装置のプログラム更新システムは、
前記貨幣識別装置が、前記読み出し手段によって読み出された前記改変された暗号化キーを、前記アルゴリズムと逆のアルゴリズムを用いて元の暗号化キーに復元するキー復元手段をさらに備え、前記復元された暗号化キーを用いて、前記復号化手段により前記暗号化されたプログラム等を復号化し、前記貨幣識別装置の記憶手段に記憶されているプログラム等を更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る貨幣識別装置のプログラム更新システムによれば、バージョンアッププログラムをダウンロードしたり、更新したりした記録媒体の再利用が制限されるので、貨幣識別装置の販売台数に応じたバージョンアッププログラムの販売が期待できる。
また、貨幣識別装置の故障時のバックアップ機との交換の際に、そのバックアップ機をユーザーの仕様に設定するために、使用済みの記録媒体を再利用する場合には、再利用禁止無効化手段(セキュリティ基板)をバックアップ機に一時的に装着すれば、前記記録媒体からのダウンロード及び更新が可能となるので、ユーザーの利便性も確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明を適用することのできる貨幣識別装置の一例を示しており、本体正面上部の載置台10に載置された複数金種の貨幣(この場合は紙幣)は内部に取り込まれ、金種識別されて後方のスタッカ11に放出されると共に、識別不能な紙幣等はリジェクト集積部12にリジェクトされる。また、載置台の後方の装置正面上部には操作を指示したり、必要な情報を入力したりするための操作パネル13が設けられると共に、データや操作案内等を表示する表示部14が設けられている。貨幣識別装置の内部には、紙幣の搬送路及び機構と共に全体の制御を行う回路系の制御基板20が着脱可能に搭載されている。
【0015】
図2は制御基板20の内部構成例を示す。制御基板20には装置全体の制御を行う制御部21、更新用のプログラム等が格納されている記録媒体(メモリカード)30を差し込むカードコネクタ22が設けられている。また、制御部21には、記録媒体30に格納されているプログラム等及びダウンロード若しくは更新許可情報(以下、単に「許可情報」という。)を所定のシーケンスで読み出す読み出し手段23、読み出された許可情報が「許可」か「不許可」かを判定する許否判定手段24、バージョンアップされるプログラム等が格納されている記憶手段25、ダウンロード若しくは更新が許可されて1回ダウンロード若しくは更新がなされた後に、記録媒体の中の許可情報を不許可に書き換える再利用禁止設定手段26、及び基板用コネクタ27が接続されている。
また、基板用コネクタ27には、許否判定手段24で「不許可」と判定された場合に、不許可の判定を無効とする再利用禁止無効化手段28が搭載されたセキュリティ基板40が着脱可能に挿入される。
このセキュリティ基板が挿入される場合は、次のような場合である。すなわち、ユーザーが購入した貨幣識別装置が故障した場合にメーカーから代替用のバックアップ機が貸与されるが、このバックアップ機はユーザーの仕様(識別プログラムのバージョン、識別可能な紙幣の種類等。)にはなっていないので、ユーザーが保有している記録媒体30を用いてバージョンアップもしくは機能設定(特定種類の紙幣識別機能を有効にすること。)を行う必要があるが、この記録媒体30は1回使用されているので、再利用できない。そこで、バックアップ機にセキュリティ基板40を挿入し、記録媒体30によるバージョンアップ等を可能にするのである。セキュリティ基板によって記録媒体の再利用を可能にする仕組みについては後述する。
なお、制御部21は上記の他、紙幣を搬送する搬送手段(図示せず)にも接続されているが、本発明とは直接関係しないので省略してある。
【0016】
記憶手段25は読み書きが可能な不揮発性メモリであり、大きく3つに分けられる。すなわち、各国貨幣に共通した識別プログラムが格納されているアプリケーション用メモリ25a、国別の貨幣特有の識別論理や画像データ等からなる識別テーブルが格納されているテンプレート用メモリ25b、及び、現時点での機能使用許可情報が格納されている機能設定情報メモリ25cである。機能使用許可情報をさらに詳しく説明すると、テンプレート用メモリ25bにはデフォルトで、例えば、米ドル、ユーロ、中国貨幣用の識別テーブルが格納されているが、標準仕様では米ドルにしか使用できないようになっている。そこで、他の国の貨幣(例えばユーロ)についても使用したい場合は、装置メーカーからユーロ用のキー記録媒体(使用禁止を解除するソフトウェアキーが格納された記録媒体)を購入し、それをカードコネクタ22に挿入して読み込み、機能設定情報メモリ25cの内容を書き換え、ユーロの機能設定を有効にするのである。図3は機能設定情報メモリ25cの内容を表す一例であり、米ドルとユーロの識別機能が有効であることを示している。なお、図3中、「記番号」とは紙幣の記番号印字機能のことである。
本発明では記憶手段25を3つに分けて構成してあるが、物理的に1つのメモリを3つの領域に分けて構成してもよい。
【0017】
図4は記録媒体30(メモリカード)の内部構成を示す図である。特殊エリアとはシステムエリアとも呼ばれているものであり、記録媒体固有の識別情報(ID)、メモリ容量、ボリュームラベル等が書き込まれているエリアであり、通常は読出ししかできず、特殊な装置およびソフトによってのみ書き込み(書き換え)ができるエリアである。通常エリア(データエリア)とは、アプリケーションやテンプレート等が格納されているエリアであり、読み書きが通常行えるエリアである。本発明における識別プログラム、識別テーブル、機能使用許可情報などが格納されるエリアである。なお、許可情報は特殊エリアに書き込まれているが、記録媒体のボリュームラベル等を許可情報として利用してもよい。
記録媒体30は、格納されるデータの種類によって大きく2つに分けられる。一方は、機能使用禁止を解除するソフトウェアキーが格納された記録媒体であるキー記録媒体(上述)であり、他方はアプリケーションやテンプレート等が格納された基本記録媒体である。
なお、記録媒体30の一例としては、SDメモリーカードが好ましい。
【0018】
上記の構成において、本発明に係る貨幣識別装置のプログラム更新システムについてフローチャートを参照して詳細に説明する。
図5は本発明に係る貨幣識別装置のプログラム更新システムの第1の発明に関するフローチャートである。
ユーザーが貨幣識別装置のバージョンアップ用のプログラム等が記録された記録媒体30を制御基板のカードコネクタ22に差込み、電源を投入すると、制御部21が記録媒体が装着されたことを検知し(ステップS1)、読出し手段23が記録媒体30の特殊エリアから所定のシーケンスによってダウンロード許可情報を読み出す(ステップS2)。読み出されたダウンロード許可情報が「許可」に関するものか、「不許可」に関するものかを許否判定手段24が判定し(ステップS3)、「許可」であれば記録手段30の通常エリアから更新用のプログラム等をダウンロードする(ステップS4)。もしダウンロードされたデータがアプリケーションかテンプレートであれば記録媒体は基本記録媒体であるので、アプリケーションとテンプレートとのバージョンの整合性を調べ(ステップS6)、バージョンが合っていればアプリケーション用メモリ25a及び/又はテンプレート用メモリ25b内のデータを更新する(ステップS7)。なお、バージョンの整合性の検証は上記特許文献2に記載の技術が利用可能である。
一方、ダウンロードされたデータが機能使用禁止を解除するソフトウェアキーであれば記録媒体はキー記録媒体であるので、機能設定情報メモリ25cの該当する機能を「無効」から「有効」に書き換える(ステップS8)。なお、データの種類の判定は、例えば、データの大きさによって行うことができる。
以上のようにしてメモリ25a〜25cのいずれかが更新されると、使用した記録媒体の再利用を禁止するために、再利用禁止設定手段26によってダウンロード許可情報を不許可に書き換え(ステップS9)、記録媒体30の特殊エリアに書き込む(ステップS10)。
例えば、許可用のダウンロード許可情報を「1」、不許可用のダウンロード許可情報を「0」というように決めておけば、「1」が「0」に書き換えられることになる。
【0019】
次に、ダウンロード許可情報が「不許可:0」に書き換えられた記録媒体を再利用してバックアップ機をユーザーの仕様(識別プログラムのバージョン、識別可能な紙幣の種類等。)に設定する場合について説明する。
ステップS2において読み込まれたダウンロード許可情報が「不許可」になっていると(ステップS3のNo)、許否判定手段24は、セキュリティ基板40にある再使用禁止無効化手段28に対して所定の信号(例えば、不許可を示す「0」)を送る。このときセキュリティ基板が基板用コネクタに装着されていると(ステップS11)、再利用禁止無効化手段28は「0」を「1」に書き換えて許否判定手段24に信号を返す(ステップS12)。許否判定手段24はその信号を受けると「許可」であると判定し、ステップS4以降の処理を行う。なお、ステップS12ではセキュリティ基板の有無の応答のみを行い、応答があれば、制御部において「許可」となるように書き換えるようにしてもよい(許否判定手段24に再利用禁止無効化手段28の機能の一部を持たせる。)。
このようにしてプログラム等の更新が行われると、バックアップ機からセキュリティ基板40が取り外され、以降の更新はできなくなる。
【0020】
図6は本発明に係る貨幣識別装置のプログラム更新システムの第2の発明に関するフローチャートである。第1の発明との違いは、第1の発明は許否判定手段の判定結果に基づいてプログラム等の「ダウンロード」を許可するか否かを決定するが、第2の発明は許否判定手段の判定結果にかかわらずプログラム等のダウンロードは許可するが、許否判定手段の判定結果に基づいてプログラム等の「更新」を許可するか否かを決定する点である。以下、図6に基づいて説明する。
ユーザーが貨幣識別装置のバージョンアップ用のプログラム等が記録された記録媒体30を制御基板のカードコネクタ22に差込み、電源を投入すると、制御部21が記録媒体が装着されたことを検知し(ステップS21)、読出し手段23が記録媒体30の特殊エリアから所定のシーケンスによって更新許可情報を読み出す(ステップS22)。続いて通常エリアから更新用のプログラム等をダウンロードし、制御部21内のRAMに一時保持する(ステップS23)。読み出された更新許可情報が「許可」に関するものか、「不許可」に関するものかを許否判定手段24が判定し(ステップS24)、「許可」であれば、以降のステップ(S25〜S30)を実行する。なお、ステップS29及びS30は前述のS9及びS10の説明における「ダウンロード許可情報」を「更新許可情報」に置き換えれば同じなので、説明は省略する。「不許可」であれば更新されない。
【0021】
次に、更新許可情報が「不許可:0」に書き換えられた記録媒体を再利用してバックアップ機をユーザーの仕様(識別プログラムのバージョン、識別可能な紙幣の種類等。)に設定する場合について説明する。
ステップS22において読み込まれた更新許可情報が「不許可」になっていると(ステップS24のNo)、許否判定手段24は、セキュリティ基板40にある再使用禁止無効化手段28に対して所定の信号(例えば、不許可を示す「0」)を送る。このときセキュリティ基板が基板用コネクタに装着されていると(ステップS31)、再利用禁止無効化手段28は「0」を「1」に書き換えて許否判定手段24に信号を返す(ステップS32)。許否判定手段24はその信号を受けると「許可」であると判定し、ステップS25以降の処理を行う。このようにしてプログラム等の更新が行われると、バックアップ機からセキュリティ基板40が取り外され、以降の更新はできなくなる。
【実施例1】
【0022】
記録媒体30の通常エリアに格納されているバージョンアップ用のプログラム等が暗号化されており、特殊エリアにはその暗号化キーが格納されている場合を例として、本発明の第2発明の実施例を説明する。
なお、以下の説明において復号化手段は上記の許否判定手段24に、キー改変手段は上記の再利用禁止設定手段26に、キー復元手段は上記の再利用禁止無効化手段28に、それぞれ相当するものとする。
図7は本発明の第2発明の実施例の処理の流れを示すフローチャートである。以下、図7に基づいて説明する。
ユーザーが貨幣識別装置のバージョンアップ用の暗号化プログラム等が記録された記録媒体30を制御基板のカードコネクタ22に差込み、電源を投入すると、制御部21が記録媒体が装着されたことを検知し(ステップS41)、読出し手段23が記録媒体30の特殊エリアから所定のシーケンスによって暗号化キーを読み出すとともに、通常エリアから更新用の暗号化プログラム等をダウンロードし、制御部21内のRAMに一時保持する(ステップS42)。読み出された暗号化キーを用いて復号化手段によって復号化する(ステップS43)。正常に復号化できたとすると、読み出された暗号化キーは改変されていないものであると判定されるので、以降のステップ(S45〜S50)を実行する。なお、ステップS49及びS50は前述のS29及びS30の説明における「更新許可情報」を「暗号化キー」に置き換えれば同じなので、説明は省略する。ステップS43において復号化ができなかった場合は当然ながら更新できない。
【0023】
次に、暗号化キーが所定のアルゴリズムで書き換えられた記録媒体を再利用してバックアップ機をユーザーの仕様(識別プログラムのバージョン、識別可能な紙幣の種類等。)に設定する場合について説明する。
ステップS43における復号化に失敗(例えば、復号化後のデータのチェックコードの確認によって判断する。)すると(ステップS44のNo)、復号化手段は、セキュリティ基板40にあるキー復元手段に対して改変された暗号化キーを送る。このときセキュリティ基板が基板用コネクタに装着されていると(ステップS51のYes)、キー復元手段は改変された暗号化キーを上記アルゴリズムと逆のアルゴリズムを用いて、改変された暗号化キーを元の暗号化キーに復元し、復号化手段に返信する(ステップS52)。復号化手段はその信号を受けるとセキュリティ基板が装着されていると判断し、復元された暗号化キーで再度復号化を行う。セキュリティ基板からの信号が返ってこない場合は基板が装着されていないので、処理は終了する。復号化に成功すると、ステップS45以降の処理を行う。
なお、ステップS52ではセキュリティ基板の有無の応答のみを行い、応答があれば、制御部において暗号化キーの復元を行ってもよい(許否判定手段24に再利用禁止無効化手段28の機能の一部を持たせる。)。
このようにしてプログラム等の更新が行われると、バックアップ機からセキュリティ基板40が取り外され、以降の更新はできなくなる。
なお、暗号化キーとして、特殊エリアに格納されている記録媒体固有の識別情報やボリュームラベル等を利用してもよい。また、暗号化プログラムとしては、例えば、一般的な共通鍵暗号化方式(DES等)が利用できる。
【0024】
本願発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載したとおりであり、上記の実施例に限定されるものではなく、上記範囲を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、複数台の装置を更新する場合、更新回数は1回でなく、複数回でもよい。この場合は、更新のたびに更新可能回数を1ずつ減算していくようにする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用することのできる貨幣識別装置の一例を示す図である。
【図2】制御基板の内部構成例を示す図である。
【図3】機能設定情報メモリの内容を表す一例である。
【図4】記録媒体(メモリカード)の内部構成を示す図である。
【図5】本発明に係る貨幣識別装置のプログラム更新システムの第1の発明に関するフローチャートである。
【図6】本発明に係る貨幣識別装置のプログラム更新システムの第2の発明に関するフローチャートである。
【図7】本発明の第2発明の実施例の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
20 制御基板
21 制御部
22 カードコネクタ
23 読み出し手段
24 許否判定手段
25 記憶手段
25a アプリケーション用メモリ
25b テンプレート用メモリ
25c 機能設定情報メモリ
26 再利用禁止設定手段
27 基板用コネクタ
28 再利用禁止無効化手段
30 記録媒体(メモリカード)
40 セキュリティ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録された貨幣識別装置のバージョンアップ用のプログラム及び/又はデータ(以下、プログラム等という。)を前記貨幣識別装置にダウンロードして前記プログラム等を更新する際に、前記記録媒体に記録されたプログラム等による更新回数を制限する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記記録媒体には、少なくとも、前記プログラム等の前記貨幣識別装置へのダウンロードを許可するか否かの情報であるダウンロード許可情報と、前記バージョンアップ用のプログラム等とが格納されており、
前記貨幣識別装置は、
前記記録媒体から前記ダウンロード許可情報と前記プログラム等とを読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段によって読み出された前記ダウンロード許可情報の内容が、ダウンロード許可に関するものか不許可に関するものかの判定を行う許否判定手段と、
バージョンアップされる前のプログラム等が記憶されている記憶手段と、
前記バージョンアップされる前のプログラム等を前記バージョンアップ用のプログラム等によって更新するプログラム更新手段と、
を備えるとともに、
前記許否判定手段によってダウンロード許可が判定されて、前記読み出し手段によって前記プログラム等がダウンロードされ、前記プログラム更新手段によって前記プログラム等が更新されると、前記記録媒体内の前記ダウンロード許可情報の内容を不許可に書き換える再利用禁止設定手段を備えたことを特徴とする貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項2】
前記貨幣識別装置のプログラム更新システムによってダウンロード許可情報が不許可に書き換えられた記録媒体を再利用して前記貨幣識別装置の記憶手段に記憶されているプログラム等を更新する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記貨幣識別装置は、
前記読み出し手段によって読み出された前記ダウンロード許可情報を無効にするための再利用禁止無効化手段をさらに備えるとともに、
前記許否判定手段は、前記ダウンロード許可情報の内容がダウンロード不許可に関するものであると判定すると、前記再利用禁止無効化手段に対して所定の信号を送り、前記再利用禁止無効化手段から前記信号に対応した信号が返ってきたときに前記記録媒体からのプログラム等のダウンロードを許可することを特徴とする請求項1に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項3】
記録媒体に記録された貨幣識別装置のバージョンアップ用のプログラム等を前記貨幣識別装置にダウンロードして前記プログラム等を更新する際に、前記記録媒体に記録されたプログラム等による更新回数を制限する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記記録媒体には、少なくとも、前記貨幣識別装置へダウンロードされる前記プログラム等による更新を許可するか否かの情報である更新許可情報と、前記バージョンアップ用のプログラム等とが格納されており、
前記貨幣識別装置は、
前記記録媒体から前記更新許可情報と前記プログラム等とを読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段によって読み出された前記更新許可情報の内容が、更新許可に関するものか不許可に関するものかの判定を行う許否判定手段と、
バージョンアップされる前のプログラム等が記憶されている記憶手段と、
前記バージョンアップされる前のプログラム等を、前記ダウンロードされたバージョンアップ用のプログラム等によって更新するプログラム更新手段と、
を備えるとともに、
前記許否判定手段によって更新許可が判定されて、前記プログラム更新手段によって前記プログラム等が更新されると、前記記録媒体内の前記更新許可情報の内容を不許可に書き換える再利用禁止設定手段を備えたことを特徴とする貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項4】
前記貨幣識別装置のプログラム更新システムによって更新許可情報が不許可に書き換えられた記録媒体を再利用して前記貨幣識別装置の記憶手段に記憶されているプログラム等を更新する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記貨幣識別装置は、
前記読み出し手段によって読み出された前記更新許可情報を無効にするための再利用禁止無効化手段をさらに備えるとともに、
前記許否判定手段は、前記更新許可情報の内容が更新不許可に関するものであると判定すると、前記再利用禁止無効化手段に対して所定の信号を送り、前記再利用禁止無効化手段から前記信号に対応した信号が返ってきたときに前記記憶手段内のプログラム等を更新することを許可することを特徴とする請求項3に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項5】
前記再利用禁止無効化手段の少なくとも一部が、前記貨幣識別装置に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2又は4に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項6】
記録媒体に記録された貨幣識別装置のバージョンアップ用のプログラム等を前記貨幣識別装置にダウンロードして前記プログラム等を更新する際に、前記記録媒体に記録されたプログラム等の更新回数を制限する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記記録媒体には、少なくとも、暗号化キーと該暗号化キーを用いて暗号化された暗号化プログラム等とが格納されており、
前記貨幣識別装置は、
前記記録媒体から前記暗号化キーと前記暗号化されたプログラム等とを読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段によって読み出された前記暗号化されたプログラム等を、前記暗号化キーを復号化キーとして用いて復号化する復号化手段と、
バージョンアップされる前のプログラム等が記憶されている記憶手段と、
前記バージョンアップされる前のプログラム等を前記復号化されたプログラム等によって更新するプログラム更新手段と、
該プログラム更新手段によって前記プログラム等が更新されると、前記暗号化キーを所定のアルゴリズムを用いて改変し、該改変された暗号化キーを所定のシーケンスで前記記録媒体に書き込み、前記記録媒体内の暗号化キーを書き換えるキー改変手段と、
を備えたことを特徴とする、貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項7】
前記貨幣識別装置のプログラム更新システムによって暗号化キーが書き換えられた記録媒体を再利用して前記貨幣識別装置の記憶手段に記憶されているプログラム等を更新する貨幣識別装置のプログラム更新システムであって、
前記貨幣識別装置は、
前記読み出し手段によって読み出された前記改変された暗号化キーを、前記アルゴリズムと逆のアルゴリズムを用いて元の暗号化キーに復元するキー復元手段をさらに備え、
前記復元された暗号化キーを用いて、前記復号化手段により前記暗号化されたプログラム等を復号化し、前記貨幣識別装置の記憶手段に記憶されているプログラム等を更新することを特徴とする、請求項6に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項8】
前記キー復元手段の少なくとも一部が、前記貨幣識別装置に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−199927(P2007−199927A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16440(P2006−16440)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】