説明

貨物用ラック

コンテナの力学的負担を軽減するとともにラック自体の軽量化をも実現できる貨物用ラックを提供する。 自動車ラック1は、コンテナ3内に配置されて自動車2を載せるラックであって、コンテナ3を内側から補強できるよう構成したものである。載せた自動車2とともにコンテナ3内を長手方向に移動し得るベース部材10と、コンテナ3の内側上部に接触して上向きの力を及ぼす上下突張り部材20とを含めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、コンテナによる貨物輸送に使用すべく、貨物を載せてコンテナ内に配置される貨物用ラックに関するものである。貨物としては、比較的重いもの、たとえば自動車や家具、家庭用電気器具、OA機器、生産機械またはそれらの構成部分などが適している。
【背景技術】
コンテナによる貨物輸送を効率的に行う目的で、ラックと呼ばれる貨物支持手段が使用されることがある。一般にラックには、貨物を上下に収容できる棚状の部分があり、車輪やコロなどを含むベース部材が付属している。棚状の部分があるのは、コンテナの内部にできるだけたくさんの貨物を収容して効率的な輸送が行えるようにするためである。車輪等を含むベース部材を有するのは、天井板を含むボックス状のコンテナの中にクレーン等を使用せずに貨物を搬入できるようにしたものである。
日本特表平9−507188号公報には、コンテナを用いる自動車輸送に使用する自動車用ラックが記載されている。当該文献1に記載されたラックと、それを用いて自動車を収容した状態のコンテナとについての概要は第13図のとおりである。上述のように、ラック1’には棚状の部分があり、一つのコンテナ3’内に自動車2’を上下2段に収容させている。
第13図(特許文献1)に示された例を含め、従来の自動車用ラックには下記a)・b)の点で課題が存在する。
a) 自動車を収容したときコンテナに作用する力学的負担が高いため、その輸送に相当の注意を払う必要がある。力学的負担が高いのは、自動車というかなりの重量物を複数台収容し、それらを載せるラックをも収容するからである。またコンテナには、トラックや船での輸送中やそれら交通手段への荷積み・荷下ろしの際などに種々の外力、揺れ、振動等が発生するからでもある(たとえば高速道路でのカーブの走行時には、コンテナが捩れながら振動する)。最近のコンテナには、剛性の高い骨組み構造ではなく、変形をともないながら全体的に強度を受け持つモノコック構造が多く採用されるため、変形の程度が大きくなりがちであるという事情もある。そのような力学的負担を考慮すると、各コンテナに収容する自動車の台数を減らすなど、事実上は輸送効率が低下することになりがちである。
b) ラックに十分な剛性をもたせる必要があり、そのためにラックが重い物となって取扱いが容易でなくなる傾向にある。ラックに剛性をもたせる必要があるのは、それに載せた自動車がコンテナ内で大きく揺れて他の物と接触することがないようにする必要があるからである。輸送中や荷積み・荷下ろしの際などコンテナはとくに大きく変位し得るが、そのようなときにも、自動車の揺れ(コンテナに対する相対的な揺れ)は十分に抑制されねばならない。なお、剛性を高める結果としてラックの重量が増すと、上記a)にいうコンテナの力学的負担はさらに増大することとなる。
【発明の開示】
本発明は以上のような点を考慮してなしたもので、コンテナの力学的負担を軽減するとともにラック自体の軽量化をも実現できる新しい貨物用ラックを提供するものである。
本発明の貨物用ラックは、コンテナ内に配置される貨物用ラック(貨物を載せるラック)であって、コンテナを内側から補強できるよう構成したことを特徴とする。ここでいう「貨物」は、その種類は問わないが、前述のように比較的重いもの、たとえば自動車や家具、家庭用電気器具、OA機器、生産機械またはそれらの構成部分などが、このラックを使用するうえで適している。なお、このラックについては、棚状に構成するか否かを限定しない。
上記の特徴をもつ貨物用ラックは、コンテナ内で貨物を載せるとともにそのコンテナを補強できる構成をもつことから、つぎのような利点を有する。すなわち、コンテナを補強できるので、コンテナに作用する力学的負担を軽減することが可能である。これにより、コンテナ輸送の安定性・信頼性が増すとともに、各コンテナへの収容貨物数の増加、コンテナの輸送や取扱いの速度・迅速性の向上等を通じて輸送効率を高めることも可能になる。
発明の貨物用ラックは、載せた貨物とともにコンテナ内を長手方向に移動し得るベース部材(たとえば、コンテナの底板上をコンテナの長手方向に円滑に移動するよう車輪やコロ、ローラ等を有するもの)と、コンテナの内側上部に接触して上向きの力を及ぼす上下突張り部材とを含めて構成するのがとくに好ましい。
このような貨物用ラックには、つぎのような利点がある。
i) まず、上記したベース部材を設けているため、重量物である貨物をコンテナ内に容易に収容することができる。上記のように移動可能なベース部材の上に貨物を載せれば、天井板を含むボックス状のコンテナの中へ、クレーン等を使用せずに貨物を搬入できるからである。
ii) 上下突張り部材を設けているため、同部材によってコンテナを内側から効果的に補強できる。上記のベース部材をコンテナの底板上におく一方で上下突張り部材をコンテナの内側上部に接触させて上向きの力を発揮させるなら、当該突張り部材がコンテナの上下各部材に拘束力を及ぼし、たとえば、コンテナの梁や天井板などが上下方向に受ける応力や変形を抑制できるからである。したがって、コンテナの上に他のコンテナを重ねて置く場合等に有利である。
iii) 上下突張り部材を設けたことから、ラック自体の変位が抑制されるという作用もある。ベース部材をコンテナの底板上におくとともに上下突張り部材をコンテナの内側上部に接触させて上向きの力を発揮させると、当該突張り部材やベース部材もコンテナから拘束力を受けることになり、よってラック自体の変形・変位が抑えられるのである。なおそうした拘束力によって位置も固定されるので、上下方向への変形・変位が抑制されるだけでなく前後または左右の方向にラックの位置が変わることも防止される。こういった特徴に基づいて、コンテナ内で自動車等の貨物が揺れて他の物と接触するという不都合が防止される。
iv) 上記のようにコンテナからの拘束力によってラックの変位が抑制されるので、ラック自体に過大な剛性をもたせる必要がなくなり、したがってラックを軽量化することが可能になる。ラックを軽量化できれば、コンテナに作用する力学的な負担がさらに軽減され、コンテナ輸送の安定性・信頼性・迅速性等の向上にもつながる。
発明の貨物用ラックにおいてはさらに、上記した上下突張り部材として、上下方向に長さ調節が可能であり、コンテナの内側上部のうち左右の各隅に先端部を接触させるものを使用するのがよい。たとえば、第2図・第3図に示すものはこうしたラックの一例であり、上下突張り部材20は、門型をした縦フレーム21の上部に、ネジによって長さ調節の可能な押上げロッド25を連結することにより構成している。そして先端部(押上げロッドの先端金具28)を、コンテナ3の内側上部のうち左右の各隅にあるフレーム部材(トップレール3a)の二面(水平面と鉛直面)に接触させている。
このようにした貨物用ラックについては、コンテナ内にこれを搬入したのち、上を向いた上下突張り部材の長さ調節をしてそれぞれの先端部をコンテナの内側上部のうち左右の各隅に接触させ、かつその接触力が適当な強さになるようにする。そのようにすると、上記したように当該部材がコンテナの上部に上向きの力を及ぼし、もってコンテナを内側から補強するとともにラック自体の変形・変位を抑制することになる。
上下突張り部材が長さ調節の可能なものであるために、高さ等の異なる種々のコンテナにもこのラックを使用することができる。また、コンテナの内側上部のうち左右の各隅に同部材の先端部を接触させるのであるから、振動等を受けてもその接触位置がずれにくいというメリットがある。
発明の貨物用ラックにはさらに、載せた貨物とともにコンテナ内を長手方向に移動し得るベース部材(たとえば、コンテナの底板上をコンテナの長手方向に円滑に移動するよう車輪やコロ、ローラ等を有するもの)と、コンテナの内側両側面に接触して外向きの力を及ぼす左右突張り部材とを設けるのも好ましい。
このような貨物用ラックには、つぎのような利点がある。
i) ベース部材を設けているため、前記したラックと同様、重量物である貨物をコンテナ内に容易に収容することができる。
ii) 左右突張り部材を設けたことから、同部材を使用してコンテナを内側から補強することができる。左右突張り部材をコンテナの内側で左右両側に接触させて外向きに突っ張るように力を発揮させれば、コンテナの左右各部材に拘束力を及ぼして、たとえば水平面内でのコンテナの変形等を抑制できるからである。
iii) 左右突張り部材を設けたことから、ラックの変位をも抑制することができる。左右突張り部材をコンテナの内側で左右両側に接触させて外向きに突っ張るように力を発揮させると、当該突張り部材もコンテナから拘束力を受けることになり、結果としてラック自体の変形・変位が抑えられるのである。拘束力によって位置をも固定されるので、左右方向にも前後方向にもラックの位置変化が防止される。こういった特徴により、コンテナ内で自動車等の貨物が揺れて他の物と接触するといった不都合が効果的に防止される。
iv) 上記のとおりラックの変位が抑制されるので、ラック自体に過大な剛性をもたせる必要がなく、したがってラックの軽量化が可能になる。ラックを軽量化できれば、コンテナに作用する力学的負担がさらに軽減され、コンテナ輸送の安定性・信頼性・迅速性等の向上にもつながる。
発明の貨物用ラックにはさらに、上記した左右突張り部材として、左右方向に長さ調節が可能であり、先端部に取り付けた板状部材の凸部をコンテナの側面における波板の内側凹部に接触させるものを使用するとよい。たとえば、第2図(a)や第3図に示す左右突張り部材30は、ここに記載したものの一例である。左右方向に長さ調節可能な押出しロッド31の先端部に板状部材32を取り付け、その板状部材32の凸部をコンテナ3の側面における波板3bの凹部(コンテナの内側からみて凹部)に接触させている。コンテナ3の側面には、強度を高める目的で波板状に曲げた鋼板等を使用しているので、そのような側面を利用するのである。
このようにした貨物用ラックは、コンテナ内にこれを搬入したのち、左右突張り部材について左右への長さ調節をして各先端部の板状部材をコンテナ側面にある波板の内側に接触させる。板状部材の凸部を波板の内側凹部に接触させてその接触力が適当な強さになるようにすれば、上記したように、コンテナを内側から補強するとともにラック自体の変形・変位を抑制できるようになる。
同部材が長さ調節の可能なものであるために、幅の異なる種々のコンテナにもこのラックを使用することができる。また、コンテナの側面にうち波板の内側凹部に対して同部材の先端凸部を接触させるので、振動等を受けても接触位置がずれにくいというメリットがある。
発明の貨物用ラックには、とくに、貨物を載せるとともに一方の側(たとえば前後のいずれか)が上昇した傾斜状態に配置され得る傾斜支持部材を設けると好ましい。第2図に示す傾斜支持部材40は、このようにしたラックにおけるものの一例である。前後方向(すなわち長手方向)における一端部をピン結合にてベース部材10に取り付け、他方の側の端部を上昇させて図示のように傾斜状態にすることができる。
このような傾斜支持部材を設ければ、その上部と下部との双方に貨物を置くことができるので、大きさの限られたコンテナ内に第1図のように多めに貨物を収容することが可能になる。つまり、棚状、または棚状に近い状態にしてラックを使用するわけである。
発明の貨物用ラックについてはさらに、上下突張り部材を、
・ ベース部材にピン結合(ピンを中心に回転変位し得る結合状態。リンク結合)し、
・ 筋交いとなる斜材と連結したときベース部材上に上向きに立ち、
・ 当該斜材との連結を解いたとき斜材とともにベース部材上に伏すように構成するとよい。
このような貨物用ラックなら、上下突張り部材を斜材と連結してベース部材上に立てた状態と、上下突張り部材と斜材とをベース部材上に伏せさせた状態とを、任意に切り換えることができる。たとえば、第4図(b)または同(c)のように上下突張り部材20等を立てた状態と、同(a)のようにそれらをベース部材10上に折り畳んで伏せた状態との間で形態を自在に変更できる。そのような変更が可能であれば、貨物輸送に使用されないラック(次回の輸送のために返送するラックなど)は、コンパクトに折り畳んで複数を積み上げるなどして、少ない数のコンテナを用いて目的地に送り届けることができる。
なお、上下突張り部材は、ベース部材にピン結合されるものではあるが、上記のとおり斜材を筋交いとして連結することから、上向きの十分な大きさの力を発揮することが可能である。
発明の貨物用ラックではさらに、上下突張り部材を、
・ 軸心の一致しない複数のピンによってベース部材にピン結合したときベース部材上に上向きに立ち、
・ 軸心の一致しないピンを含むピン結合を解いたときベース部材上に伏すように構成することも可能である。
前記のように斜材を連結しなくとも、このように軸心の一致しない複数のピンにてピン結合をすれば、上下突張り部材はベース部材上に上向きにしっかりと立てることができる。一方、ピンの数を減らすなど軸心の一致しないピンを含むピン結合を解くことにより、上下突張り部材をベース部材上に伏せた状態にすることができる。したがって、このようにした貨物用ラックによっても、貨物輸送に使用されないとき、コンパクトに折り畳んで少ない数のコンテナを用いて目的地に送り届けることができる。
発明の貨物用ラックに関してはとくに、コンテナ内で隣接する他のラック(貨物用ラック)に対してベース部材同士を連結し得るように構成するのも好ましい。
このようにした貨物用ラックは、コンテナ内に複数を配置するとき、連結されたラック同士が互いの位置関係を拘束し合うため、ラックの位置が一層変化しがたくなる。前記したとおり各ラックは上下突張り部材または左右突張り部材によってコンテナに対し力を及ぼし合い、コンテナにより拘束されて変位・変形を抑制され得るが、このラックのようにラック同士も拘束し合うなら、変位・変形の抑制効果は一層に高いわけである。したがって、コンテナ内で貨物が揺れて他の物と接触するという不都合がさらに効果的に防止される。
発明の貨物用ラックについては、上記の特徴に加えて、
・ ベース部材の後端(コンテナにおける搬入口に近い側に位置する端部)よりも前方に他のラックのベース部材の前端(コンテナの搬入口から遠い側にある端部)を位置させた状態でコンテナ内に複数配置することとし、
・ ベース部材の後部(上記した前端付近以外の部分)に、他のラックのベース部材の前端を拘束してベース部材同士を連結する連結フレームを、前後位置を選んで(または調整して)取り付けるよう構成することとすると特に好ましい。
なお、この明細書・特許請求の範囲において、コンテナやラックについていう「前方」(または「前部」「前端」など)は、コンテナの搬入口から遠い側(つまりコンテナの奥の方)をさし、「後方」(または「後部」「後端」など)は、その逆にコンテナの搬入口に近い側をさすこととする。
第5図および第6図に示す連結フレーム60を有するラック1は、上記の特徴を有する貨物用ラックの一例である。すなわち、前方にあるラック1のベース部材10の後端(図中の右方にある端部)よりも前方に他のラック1のベース部材10の前端を位置させている。また連結フレーム60は、ラック1のベース部材10の後部に前後(図中の左右)位置を選んで取り付け、その連結フレーム60により、隣接するラック1のベース部材10の前端を拘束させている。
このような貨物用ラックは、連結フレームによりラックのベース部材同士が連結されて互いの位置関係を拘束し合うため、前記のとおりラックの位置が変化しがたく、コンテナ内で貨物が他の物と接触する等の不都合が効果的に防止される。
また、連結フレームは、一方のラックのベース部材の後部にその前後位置を選んで取り付けられるため、当該フレームを介して連結するラック間の前後の位置を調整できる。したがって、連結してコンテナ内に収容する複数台のラックの全長(最前部に位置するラックの前端から最後部に位置するラックの後端までの寸法)をコンテナ内部の長さに一致させることができる。このことは、コンテナからはみ出すことがないように、また移動しろとなる空間をコンテナ内に残すことがないように、適切な配置でラックをコンテナに収容できることにほかならない。連結フレームの前後位置を調整できることから、載せる貨物の大きさ等に応じて前後のラック同士の間隔を設定できるという効果もある。
なお、ベース部材の後端よりも前方に他のラックのベース部材の前端を位置させた状態でコンテナ内に複数配置することは、たとえば、前記のように傾斜状態に配置される傾斜支持部材を有するラックに関してとくに有利である。第1図のように使用して多数の貨物(自動車等)を収容することが可能だからである。
発明の貨物用ラックはとくに、ベース部材に対し、上記した長手方向への移動のための車輪(コロやローラ等を含む)とともに、下方に伸長して接地し得るアジャストロッド(ねじなどで伸長度合いを調節できる部材。たとえば第8図の符号17)を設けるとよい。
このような貨物用ラックでは、まず、ベース部材が車輪を有するため、貨物をコンテナ内に収容することが(当然ながらコンテナから外へ運び出すことも)容易である。しかしこのラックではさらに、上記のとおりアジャストロッドを有するため、必要な場合には車輪による移動を確実に停止させておくことができる。アジャストロッドを下方に伸長させて接地させれば、コンテナの床面等から車輪を浮かせるとともに、アジャストロッドでラックの重量を支えた移動しがたい状態になるからである。このように、必要な場合にラックの移動を停止させられるので、貨物の積み卸し作業を行いやすい等の利点がある。
発明の貨物用ラックではさらに、ベース部材の前端または後端にゴムダンパーを設けるのが好ましい。第7図(a)中の符号15や同(b)中の符号45は、かかるゴムダンパーの一例である。
ゴムダンパーを設けたために、ラック同士が接触したとき(とくにコンテナ内に複数のラックを収容するために順次にラックを送り込むとき接触しやすい)の衝撃が小さくて好ましい。そのほか、前記したように複数台のラックの全長をコンテナ内部の長さに一致させるとき、ゴムダンパーがコンテナの前端または後端の壁面に接触して大きな摩擦力を生じるので、貨物用ラックをコンテナ内に効果的に固定できる(浮き上がりにくくする)というメリットもある。
発明の貨物用ラックにおいてはとくに、上下突張り部材を有する前記の貨物用ラックについて、上下突張り部材の先端部に、コンテナの内側上部のうち左右の各隅の形状に合わせたアタッチメントを取り付けることとし、その取付け位置を選べるようにするとよい。第9図中の符号29は、こうしたアタッチメントの一例である。
コンテナの内側上部のうち、貨物用ラックにおける上下突張り部材の先端部を接触させる上記各隅の形状は、コンテナの形式によって相違することが少なくない。その点、この貨物用ラックでは、当該各隅の形状に合わせたアタッチメントを上下突張り部材の先端部に取り付けるので、異なる形式のコンテナにラックを収容する場合にも上下突張り部材を効果的に機能させることができる。アタッチメントの取付け位置を選べるようにもしているので、たとえば、同じコンテナであっても場所により上記各隅の形状が異なるような場合に有利である。
発明の貨物用ラックではとくに、傾斜支持部材を有する前記のラックにおいて、傾斜支持部材の後方をフォークリフトを用いて上昇および下降させ得るよう、傾斜支持部材の後端部付近の下部に、フォークの上面に接触して支えられる接触片を設けるとともに、その接触片の前方に、上方にスペースをもつ空洞部を設けると特に好ましい。第10図(b)において下向きに突出した接触片47と、その前方にある空洞部48とは、ここでいう接触片および空洞部の一例である。接触片には、貨物等の荷重を受けても変形等することのない高強度部材を使用するのがよい。
このようにした貨物用ラックは、上記のとおり接触片と空洞部とを有するので、フォークリフトのフォーク(昇降する爪)によって傾斜支持部材を円滑に上昇および下降させることができる。フォークは地面とほぼ平行に前方に伸びたまま上昇・下降するのに対して傾斜支持部材は昇降の高さに応じて地面に対する角度が変わるが、それにもかかわらずこの貨物用ラックでは、たとえば第10図(b)に示すように、上昇・下降の間、傾斜支持部材がつねに同じ接触片を介してフォークと接触し続けるからである。同じ接触片を介して接触し続けると、接触箇所が変化して接触状態が不安定に(滑りやすく)なったり、傾斜の速度が一定でなくなったりすることがない。つまり、上のようにした貨物用ラックによると、傾斜支持部材の上昇・下降(つまり傾斜させること)を円滑に行えることになる。
また、フォークリフトを用いて傾斜支持部材を上昇・下降させ得ることは、当該部材のために特別な操作手段を用意する必要がなく、またその昇降操作が容易であることにほかならない。つまり、傾斜支持部材の上昇・下降のために油圧ジャッキや油圧ポンプ等をラックに搭載しておく必要がなく、どの港湾等にもあるフォークリフトを使用して、当該部材をつねにスムーズに昇降させることができる。油圧ジャッキ等を搭載する必要がないことから、ラックの軽量化がはかれるという利点もある。
発明の貨物用ラックにおいては、さらに、ラックの全体をフォークリフトにて持ち上げ(かつ移動させ)得るよう、傾斜支持部材またはベース部材に、フォークを根元付近まで挿入できる奥行きをもつ扁平の中空枠を設けると好ましい。中空枠の奥行きはたとえば2m程度とし、少なくとも1m以上にする。扁平の程度については、内部にフォークを挿入でき、上下にはあまり大きな隙間ができないように、20cm程度以上の幅と15センチ程度以下の(または奥行きの5分の1程度以下の)高さ寸法をもたせるとよい。第10図(a)に示す鉄製の角パイプでできた中空枠46は、ここにいう中空枠の一例である。
このようにする貨物用ラックは、十分な容量をもつフォークリフトによってフォークを挿入したうえ上昇させれば、当該フォークリフトによりラックの全体を持ち上げて移動させることが可能である。奥行きのある扁平な中空枠に対してフォークを根元付近まで挿入して持ち上げるので、中空枠がフォークの先の方と根元付近とに接触することにより、当該中空枠を有する傾斜支持部材またはベース部材がほぼ水平姿勢に保たれ、そのままフォークリフトにて持ち上げられるのである。なお、傾斜支持部材とベース部材とは、互いの角度が変化しないようにピン等を用いて事前に連結しておく。こうしてラックの全体をフォークリフトで持ち上げて移動させることができると、コンテナ内にラックを収容する作業をとくに簡単に、かつ迅速に行うことができる。
発明の貨物用ラックでは、前記のように上下突張り部材が伏すことのできる構造にしたうえ、上下突張り部材がベース部材上に伏した状態で上方または下方に突出するように、段積み用のポストを設けるのがとくに好ましい。ポストは、ベース部材もしくは上下突張り部材またはその両方に取り付けるとよい。第11図に示すポスト19・49は、ここでいう段積み用ポストの一例である。
前記したように上下突張り部材が伏すことのできるラックは、前記のようにコンパクトに畳んで返送等に適した状態にすることができる。しかし上のように段積みポストを設けた貨物用ラックはさらに、コンパクトに畳んだ状態のラックを、整然と、安定した状態に積み上げることができる。そのため、ラックを返送等する際にコンテナ内に収容したり取り出したりする作業を行いやすい。
発明の貨物用ラックでは、地上とラック上との間での貨物の移動を容易にすべく後端部に連結され得るスロープ部材を、取り出し可能な状態で後端部付近に収納するのがさらに好ましい。たとえば、第12図(a)・(b)のように傾斜支持部材40の後端部に連結され得るスロープ部材を、同(c)のように同部材40の後部に収納できるラック1は、ここにいう貨物用ラックの一例である。
貨物用ラックのベース部材または傾斜支持部材(上昇させていない状態のもの)の上に貨物を載せるとき、ラックの後端部にスロープ部材が連結されると好都合である。その貨物が台車によってラック上に搬入されるものであっても、あるいは自走可能な自動車等であっても、地上面とラックとの間の段差をスロープ部材を用いて乗り越えられるなら、搬入作業は当然にスムーズになる。
ここに述べた貨物用ラックでは、ラックの後端部に連結され得るそのようなスロープ部材を、取り出し可能な状態でラックの後端部付近に収納している。こうしてスロープ部材を貨物用ラックに付属させておくと、輸送先において当該貨物をラックから搬出するときにも(また再び貨物を搬入するときにも)、同じスロープ部材をラックから取り出して容易に使用することができる。したがって、港湾などコンテナを取り扱う場所で、貨物の積み卸しのたびに適切なスロープ部材を用意するという煩わしさがともなわない。
発明の貨物用ラックは、貨物としてとくに自動車を載せて使用するのが有利である。
自動車は、コンテナを利用して多数輸送されるものであるが、コンテナの負担を大きくする重量物であるうえラックにも相当の剛性を要することから、コンテナ輸送の効率化やラックの取扱いの容易化がとくに強く求められていた。ここに述べたラックなら、そのような技術的要求を適切に満たし、コンテナによる貨物輸送を大きく改善することが可能である。なお、自動車として普通乗用車を載せる場合には、第1図のようにコンテナ内に多数を収容できるよう、傾斜支持部材を設けて使用するのがとくに好ましい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、発明の実施に関する一形態を示す図であって、貨物としての自動車2を複数台、複数の自動車ラック1を用いてコンテナ3内に収容した状態を示す側面図(断面にてコンテナ3の内部を示したもの)である。
第2図は、コンテナ3内に入れたラック1等を示すもので、第2図(a)は平面図(同(b)におけるa−a矢視図)であり、同(b)は側面図である。
第3図は、ラック1の正面図(第2図(b)におけるIII−III矢視図)であって、第3図(a)は全体的な正面図、同(b)は同(a)中の右側部分の詳細図、同(c)は同(a)中の右側上部の詳細図である。
第4図は、ラック1の使用態様を示す側面図であって、第4図(a)は未使用状態のラック1に関するもの、同(b)は自動車2を載せる過程を示すもの、同(c)は傾斜支持部材40とともに自動車2を斜めに上昇させる過程を示すものである。
第5図はコンテナ3内の平面図であって、第1図におけるV−V矢視図である。
第6図は連結フレーム60等を示す図であって、第6図(a)は第5図におけるVI部の詳細図、第6図(b)は同(a)におけるb−b断面図である。
第7図はラック1の前端および後端の部分を示す図で、第7図(a)は第5図におけるVIIa断面図、第7図(b)は第5図におけるVIIb断面図である。
第8図は、第2図(b)におけるVIII部の詳細図である。
第9図は、コンテナ1における内側上部の隅の形状が第3図の場合と異なる場合の押上げロッド25およびアタッチメント29の使用要領を示す図で、第9図(a)は全体的な正面図、同(b)は同(a)におけるb−b矢視図、同(c)は同(b)におけるc−c矢視図である。そして同(d)は、同(c)の場合とは異なるアタッチメント29の使用要領を示す図である。
第10図はフォークリフトによる操作要領を示す図であり、第10図(a)は第5図におけるX断面図であって傾斜支持部材40における中空枠46の構造を示す図、同(b)は同じ中空枠46付近の接触片47および空洞部48の構造およびそれらの使用方法を示す図である。
第11図はラック1の細部の構造を示す図であって、(a)・(b)のそれぞれは、第4図(a)におけるXIa部・XIbの各詳細図である。
第12図(a)〜(c)は、第4図(b)のXII部に示すスロープ部材70についての詳細を示す図である。
第13図は、従来の自動車用ラックと、それを用いて自動車を収容した状態のコンテナとを示す概略の側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
第1図〜第12図に、発明の実施についての形態を紹介する。
第1図等に示す自動車ラック1は、自動車(普通乗用車)2を搭載・支持した状態でコンテナ3内に搬入し、船舶や車両等による当該コンテナの輸送中、その搭載・支持状態を維持できるようにしたもので、形鋼などの鋼材を材料として第2図および第3図のように構成している。
すなわち、まず、コンテナ3の床面(底板)上に載ってその長手方向に移動し得るようにベース部材10を組み付けている。ベース部材10の下部には回転可能な車輪(コロ)11を複数個所に設け、もってコンテナ3内への上記搬入を容易にする。自動車2を載せた状態で作業員が押すなどすることにより、その自動車2とともにラック1をコンテナ3の内部へ移動できるのである。
そうしたベース部材10の一部に上下突張り部材20を連結し、他の一部に斜材50を連結している。上下突張り部材20は、ピン22を介して鉛直面内で旋回可能なようにベース部材10上に連結し、斜材50は、ピン51を介して同様にベース部材10に連結する。その斜材50の先端部は、上下突張り部材20に対しピン52によって解除可能に連結する。上下突張り部材20をベース部材10上に立てたうえ、ピン52によって斜材50と連結すると、上下突張り部材20は安定的に鉛直に立つことになる。
上下突張り部材20は、上記のとおりベース部材10に連結した門型の縦フレーム21と、その上部に取り付けた押上げロッド25とによって構成している。押上げロッド25は、第3図(c)のように、ネジ部を含むロッド本体27aと、それに対して2個のナット27bを介して位置変更可能に連結した伸縮バネ部材27cと、当該バネ部材27cの先に取り付けた先端金具(先端部)28とを含むもので、基端部を連結ピン26を介して縦フレーム21上に取り付けている。連結ピン26の位置は縦フレーム21の上部において幅方向の端部からやや内側に入った個所とし、先端金具28は、コンテナ3の上部左右の隅に長手方向に配置されたトップレール(フレーム部材)3aの内側の角(およびそれをはさむ2面)に押し当てる。バネ部材27cのバネ定数を適切に設定しておき、ナット27bの位置変更により押上げロッド25の全長を調節して上記の押し当てに係る力を適切な大きさにすれば、コンテナ3がたとえば横断面を菱形または平行四辺形状にするような変形を受けても、押上げロッド25は安定的にトップレール3aを上向き(外向きの成分を含むやや斜め上向き)に押し続ける。
上下突張り部材20の縦フレーム21には、第3図(a)・(b)のとおり左右突張り部材30を取り付けてもいる。すなわち、縦フレーム21に対し、幅方向(コンテナの幅方向。第3図の左右方向)への位置調整(突出量調整)を可能にして押出しロッド31を複数本取り付け、それらの先に板状部材32を取り付けている。板状部材32は、ラック1の左右各側に一組ずつ取り付けたもので、第2図(a)のとおりそれぞれの外向き表面に、上下に延びた凹凸を形成している。その凸部の数は、図示のように板状部材32の一枚につき二つ程度とし、各凸部がコンテナ3の側板をなす波板3bの凹部(内側からみての凹部)にはまるようにした。押出しロッド31の位置を調整して板状部材32(の凸部)をコンテナ3の波板3b(の凹部)に押し当てると、自動車ラック1はコンテナ3(の波板3b)により拘束される結果、その左右および前後の位置が固定され、また上下突張り部材20が一層確実に鉛直状態に保持されることになる。
上下突張り部材20や斜材50を取り付けたベース部材10には、さらに、第2図(b)に示すとおり傾斜支持部材40を取り付けている。傾斜支持部材40は、長手方向の一方の端部付近をピン41にてベース部材10に連結したもので、通常はベース部材10とほぼ同一の平面内に平行に存在するが、他方の端部の側を上昇させることにより全体が傾斜状態になる部材である。その上面には自動車2を載せることができる。傾斜状態にしたとき、上昇させた端部付近は、上下突張り部材20の縦フレーム21に設けた支持ピン42によって上昇状態に保持するようにしている。
以上のように構成した自動車ラック1は、下記1)〜5)の要領で使用することが可能である。第4図(a)〜(c)を用いてその使用例を紹介すると、
1) まず、使用しないときは、第4図(a)のとおり、上下突張り部材20(縦フレーム21)や傾斜支持部材40、斜材50を、折り畳むようにしてベース部材10とほぼ重なる位置におき、ラック1の全体を概ね平面的な形状にする。その状態では、図示のように多数のラック1をコンパクトに上方へ積み上げることも可能である。
このラック1では、ベース部材10における前端付近(第4図における左方)の両側(車幅方向の両側)2箇所に上向きの段積みポスト19を設け、上下突張り部材20の2箇所にも同様の段積みポスト49を取り付けているので、上記のような積み上げは整然と安定的に行える。段積みポスト19については、第11図(a)に示すとおり上端に突起19aを設け、ラック1を積み重ねる際にこの突起19aが上のラック1におけるポスト19の下部穴19bにはまるようにしている。上下突張り部材20に設けた段積みポスト49にも同様に上端に突起49aを形成し、積み重ねた状態ではこれが上のラック1の穴(図示せる)にはまるようにしている。なお、第4図(a)のように積み重ねる際には、第3図に示した左右突張り部材30は縦フレーム21から緩めてその向きを変えておく。
2) 自動車2をコンテナ3に入れる際には、第4図(b)のように、ベース部材10の上に斜材50を用いて上下突張り部材20を立て、そうしたラック1の上に自動車2を乗り入れさせる。なお、このときラック1はコンテナ3の入口付近に配置しておく。
自動車2の乗り入れについては、ラック1の端部と地上との間に第4図(b)のとおりスロープ部材70を架けると、その乗り入れと後の搬出とがスムーズに行える。図示のラック1では、そのスロープ部材70を、第12図(c)のとおりラック1の傾斜支持部材40のうちに収納できるようにしている。傾斜支持部材40に収納部71を設け、通常はそこにスロープ部材70を収納して端部の開閉カバー72を閉じておくが、自動車2の乗り入れや搬出の際には、カバー72を開いてスロープ部材70を取り出す。取り出したスロープ部材70は、第12図(b)のように、傾斜支持部材40(未傾斜状態)の後端にある留め具73に掛けて使用する。なお、第12図(a)は、留め具73に掛けた状態のスロープ部材70に関する平面図である。
3) 自動車2を乗り入れさせると、コンテナ3の入口付近にあるそのラック1において第4図(c)のように傾斜支持部材40の片側をフォークリフトにて上昇させ、前記の支持ピン42によりその状態(片側が上昇し全体が傾斜した状態)に保持させる。ラック1内に乗り入れた自動車2の車輪(タイヤ)は傾斜支持部材40の上面に接地しているので、フォークリフトのフォーク4を傾斜支持部材40の先端部下面に当てて図示矢印のように持ち上げれば、自動車2を載せたまま傾斜支持部材40を傾斜状態にすることができる。なお、フォークリフトはどこの港湾等にもあって容易に利用できる。フォークリフトにて傾斜支持部材40を上昇させるなら、ジャッキアップ用の機器(流体圧シリンダやポンプなど)を付設する必要がないので、ラック1の構成を簡素化・軽量化するうえで極めて有利である。
ラック1をコンテナ3の入口付近に置くこと、および傾斜支持部材40を上記のように傾斜状態にすることに関して、このラック1ではつぎの工夫を施している。すなわち、まず第10図(a)(および第5図)に示すように、傾斜支持部材40に、前後に長い鋼製の中空枠46を二つ平行に設けている。それぞれの中空枠46は奥行きが2m以上あって、その横断面における内部寸法は縦が約10cm、横が約20cmであるため、第10図(a)のように、大型のフォークリフトがフォーク4を根元まで挿入することができ、しかもフォーク4と中空枠46の内面との間に大きな隙間は発生しない。そのため、傾斜支持部材40とベース部材10との間をたとえば第8図に示すピン23により結合させた状態で、第10図(a)のように中空枠46にフォーク4を挿入して上昇させれば、ラック1の全体をフォークリフトにて持ち上げ、任意の箇所に移動することができる。十分な能力のあるフォークリフトを使用すれば、自動車2を載せた状態でラック1を持ち上げてコンテナ3の入口付近に搬入することも可能である。
また、傾斜支持部材40を傾斜させるためのフォークリフトの使用が容易になるよう、第10図(b)のとおり、傾斜支持部材40の後端部付近であって中空枠46の下部となる位置に接触片47を溶接にて一体化するとともに、その接触片46の前方に、上方への進入スペースをもつ空洞部48を設けている。接触片47は、鋼製の角棒とその前方につづく曲面部材とからなり、傾斜支持部材40および自動車2の荷重を受けても変形しない強度をもつ。また、前方に曲面(前方に到るほど鉛直に近くなる曲面)を有するので、フォーク4が上昇して傾斜支持部材40の傾斜が進む際にも、フォーク4との接触面積が狭くならず、かつ、限られた範囲で接触箇所が滑らかに移動する。接触片47は、機械的強度が高いうえ中空枠46と一体化しているので、第10図(a)のようにフォーク4を使用してラック1を持ち上げる際にも中空枠46が変形を起こしにくい。
4) 自動車2を載せたラック1を、作業員が押してコンテナ3の奥の方へ搬入する。ラック1のベース部材10には前記のとおり車輪11(第3図(a)など参照)を付設しているので、自動車2とともにラック1を移動するのは容易である。コンテナ3内の所定の位置までラック1を搬入すると、そこで上下突張り部材20および左右突張り部材30をそれぞれコンテナ3の上部および側部に押し付けて、コンテナ3の補強およびラック自体の変位防止とする。ラック1のベース部材10には、第8図のようにアジャストロッド17を設けているので、ラック1を固定する際には、まずこれを床面または地面に接地させることにより車輪11を浮かせておく。アジャストロッド17は、ねじ部をベース部材10のねじ穴にはめたうえ、下端部に接地板を設けたもので、上端の頭部17aを回転させて下方への伸長度を変更し、留めナット17bを締めて緩み止めとする。アジャストロッド17によるラックの固定は、コンテナ3の内部においてばかりでなく地面の上などでも行える。
5) 上記の1)〜4)を繰り返す(幾つかのラック1については傾斜支持部材40を傾斜させないで搬入する)ことにより、第1図のように複数台の自動車2をコンテナ3内に収容する。各ラック1が、コンテナ3を補強する一方で、コンテナ3の揺れ等にともなう変位が抑制される状態にあるので、コンテナ3とともに各自動車2を安定的かつ効率的に輸送することが可能になる。
各ラック1の前端には第7図(a)に示すゴムダンパー15を取り付け、後端には第7図(b)のゴムダンパー45を取り付けている。このようにゴムダンパー15・45を設けておけば、ラック1がコンテナ3または他のラック1等と接触したとき、発生する衝撃が小さくなる。各ゴムダンパー15・45は、図示のように横断面がD字形状になった中空のもので、D字の膨出部に設けた穴から操作できるボルト15a・45aによって、ベース部材10の前端および傾斜支持部材40の後端にそれぞれ取り付けている。
コンテナ3内には、第1図または第5図に示すように、前方のラック1におけるベース部材10の後端よりも前方に、後方に隣接する他のラック1のベース部材の前端を位置させる状態で、複数のラック1を収容する。このようにしても、一部の自動車2を傾斜支持部材40によって傾斜させるので、自動車2が他の自動車2やラック1等と接触し合うことが避けられる。
前後に隣接する二つのラック1は、第5図および第6図(a)・(b)に示す連結フレーム60を介して互いに連結する。第6図に示すように、連結フレーム60は、前方のラック1のベース部材10にフレーム60を固定するためのピン61(ボルト等でもよい)と、後方のラック1のゴムダンパー15に接触して上下方向の相対変位を互いに拘束する枠62とを含む。ベース部材10にはピン61の挿入穴を前後方向に複数設けているので、ベース部材10に対する連結フレーム60の取付け位置は適宜に選択することができる。こうした連結フレーム60を使用すれば、
a) ラック1同士が連結されるため、各ラック1の前後および上下方向への変位が顕著に抑制される。したがって、輸送等の間に自動車2が他の物と接触することが効果的に防止される。
b) 各ラック1の前後方向の位置関係を、自動車2やコンテナ3の寸法に合わせて適切に定めることができる。
c) 一つのコンテナ3に収容する複数台のラック1について、最前部に位置するラック1の前端から最後部に位置するラック1の後端までの寸法をコンテナ3の内部寸法に一致させることができる。そのため、第7図(a)・(b)のように、最前部のラック1における前端のゴムダンパー15をコンテナ3の奥の壁3cに押し付けるとともに、最後部のラック1における後端のゴムダンパー45をコンテナ3の入口扉3d(閉じた状態のもの)に押し付ける、といった状態で全ラック1をコンテナ3に収容できる。こうしてゴムダンパー15・45をコンテナ3の壁3c・3dに押し付けると、輸送中のコンテナ3に振動等が発生する際にも、ゴムによる摩擦の作用でラック1の端部がコンテナ3から浮き上がり難くなるので、極めて安定的に自動車2を輸送できる。
以上に説明した自動車ラック1は、その細部の構造を下記のように改変することが可能である。すなわち、第一には、上下突張り部材20を、第2図(b)等に示す斜材50を使用しないでベース部材10上に立てることも可能である。第8図のように、軸心の一致しない複数のピン22(22a・22b)によって上下突張り部材20を立て、ピン22a・22b間に十分な距離をおいてそれぞれに十分な機械的強度をもたせれば、射材50がなくても上下突張り部材20をベース部材10上にしっかりと立たせることができる。第4図(a)のようにラック1を積み上げる等の目的で上下突張り部材20をベース部材10上に倒す際には、第8図に示すピン22a・22bのうち一方(22b)を抜き取ったうえ上下突張り部材20を傾ければよい。
第二に、上下突張り部材20における第3図の押上げロッド25の先端金具28には、第9図のように適当なアタッチメント29を取り付けるようにするのもよい。コンテナ3における内側上部の左右各隅には、第3図に示す形状のトップレール3aが必ずあるとは限らない。第9図の例のような薄型のフラットバー3a’しかない場合も珍しくない。そのような場合にも押上げロッド25を機能させ得るように、先端金具28に対し位置や形状・寸法を選んでアタッチメント29を取り付けるのである。第9図(a)〜(c)の例では、高い位置にあるフラットバー3a’の内側の角に押し当てられるとともに、コンテナ3の側壁である波板3b’の凹部に凸部がはまって接触し得るように、板材29aと台形状ブロック29bとで形成したアタッチメント29を取り付けている。先端金具28の位置が波板3b’のどの部分に接触するかによって、第9図(d)のように台形状ブロック29bの配置を適宜に変更するのがよい。
【産業上の利用可能性】
コンテナを利用して自動車等の重量物を輸送する場合に、効率的に、しかも、コンテナが振動等を受ける場合にも貨物の安定性を保って確実に、貨物輸送を行える。すなわち、本発明は、とくに物流産業において利用価値が高い。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ内に配置される貨物用ラックであって、
コンテナを内側から補強できる機能をもつことを特徴とする貨物用ラック。
【請求項2】
載せた貨物とともにコンテナ内を長手方向に移動し得るベース部材と、コンテナの内側上部に接触して上向きの力を及ぼす上下突張り部材とを有することを特徴とする請求の範囲1に記載の貨物用ラック。
【請求項3】
上記した上下突張り部材が、上下方向に長さ調節が可能であり、コンテナの内側上部のうち左右の各隅に先端部を接触させるものであることを特徴とする請求の範囲2に記載の貨物用ラック。
【請求項4】
載せた貨物とともにコンテナ内を長手方向に移動し得るベース部材と、コンテナの内側両側面に接触して外向きの力を及ぼす左右突張り部材とを有することを特徴とする請求の範囲1〜3のいずれかに記載の貨物用ラック。
【請求項5】
上記した左右突張り部材が、左右方向に長さ調節が可能であり、先端部に取り付けられた板状部材の凸部をコンテナの側面における波板の内側凹部に接触させるものであることを特徴とする請求の範囲4に記載の貨物用ラック。
【請求項6】
貨物を載せるとともに一方の側が上昇した傾斜状態に配置され得る傾斜支持部材を有することを特徴とする請求の範囲2〜5のいずれかに記載の貨物用ラック。
【請求項7】
上下突張り部材がベース部材にピン結合されていて、筋交いとなる斜材と連結されたときベース部材上に上向きに立ち、当該斜材との連結を解かれたとき斜材とともにベース部材上に伏すものであることを特徴とする請求の範囲2または3に記載の貨物用ラック。
【請求項8】
上下突張り部材がベース部材に、軸心の一致しない複数のピンによりピン結合されたときベース部材上に上向きに立ち、軸心の一致しないピンを含むピン結合を解かれたときベース部材上に伏すものであることを特徴とする請求の範囲2または3に記載の貨物用ラック。
【請求項9】
コンテナ内で隣接する他のラックに対してベース部材同士が連結され得るよう構成されていることを特徴とする請求の範囲2〜8のいずれかに記載の貨物用ラック。
【請求項10】
ベース部材の後端よりも前方に他のラックのベース部材の前端を位置させた状態でコンテナ内に複数配置され、
ベース部材の後部に、他のラックのベース部材の前端を拘束してベース部材同士を連結する連結フレームが、前後位置を選んで取り付けられることを特徴とする請求の範囲9に記載の貨物用ラック。
【請求項11】
ベース部材が、上記した長手方向への移動のための車輪とともに、下方に伸長して接地し得るアジャストロッドを有することを特徴とする請求の範囲2〜10のいずれかに記載の貨物用ラック。
【請求項12】
ベース部材の前端または後端にゴムダンパーを有することを特徴とする請求の範囲2〜11のいずれかに記載の貨物用ラック。
【請求項13】
上下突張り部材の先端部に、コンテナの内側上部のうち左右の各隅の形状に合わせたアタッチメントが位置を選んで取り付けられることを特徴とする請求の範囲3に記載の貨物用ラック。
【請求項14】
傾斜支持部材の後方をフォークリフトを用いて上昇および下降させ得るよう、傾斜支持部材の後端部付近の下部に、フォークの上面に接触して支えられる接触片が設けられ、その接触片の前方に、上方にスペースをもつ空洞部が設けられていることを特徴とする請求の範囲6に記載の貨物用ラック。
【請求項15】
ラックの全体をフォークリフトにて持ち上げ得るよう、傾斜支持部材またはベース部材に、フォークを根元付近まで挿入できる奥行きをもつ扁平の中空枠を有することを特徴とする請求の範囲2〜14に記載の貨物用ラック。
【請求項16】
上下突張り部材がベース部材上に伏した状態で上方または下方に突出するよう、段積み用のポストが設けられていることを特徴とする請求の範囲7または8に記載の貨物用ラック。
【請求項17】
地上とラック上との間での貨物の移動を容易にすべく後端部に連結され得るスロープ部材が、取り出し可能な状態で後端部付近に収納されていることを特徴とする請求の範囲1〜16のいずれかに記載の貨物用ラック。
【請求項18】
貨物として自動車を載せることを特徴とする請求の範囲1〜17のいずれかに記載の貨物用ラック。

【国際公開番号】WO2005/035397
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514525(P2005−514525)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008665
【国際出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【出願人】(501172084)株式会社ロッコーエンジニアリング (6)
【Fターム(参考)】